特許第6790466号(P6790466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6790466-ゴム押出機 図000002
  • 特許6790466-ゴム押出機 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790466
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】ゴム押出機
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/76 20190101AFI20201116BHJP
   B29C 48/693 20190101ALI20201116BHJP
   B29C 48/375 20190101ALI20201116BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20201116BHJP
【FI】
   B29C48/76
   B29C48/693
   B29C48/375
   B29K21:00
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-109132(P2016-109132)
(22)【出願日】2016年5月31日
(65)【公開番号】特開2017-213774(P2017-213774A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】本田 慎一郎
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−076623(JP,A)
【文献】 特開2000−141366(JP,A)
【文献】 特開平06−091726(JP,A)
【文献】 特開平03−023922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00−48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫ゴムを混練して押し出すためのゴム押出機であって、
前記未加硫ゴムを投入するための投入口を有する第1押出部と、前記第1押出部の下流側に配されかつ前記未加硫ゴムを吐出するための吐出口を有する第2押出部と、前記第1押出部と前記第2押出部とを前記未加硫ゴムが連通可能に接続する連結部とを含み、
前記連結部は、前記未加硫ゴム内の異物を除去するための網状のストレーナと、前記未加硫ゴム内の空気を吸引するための脱気部とを有し、
前記ストレーナは、目開きが0.1〜1.0mmの金網により形成され、
前記脱気部は、前記ストレーナの下流側で、前記ストレーナに隣接して設けられることを特徴とするゴム押出機。
【請求項2】
記ストレーナ及び前記脱気部は、前記第1スクリュー軸の下流側に設けられる請求項1に記載のゴム押出機。
【請求項3】
記第1押出部は、前記未加硫ゴムを前記第2押出部側に押し出すための第1スクリュー軸を有し、
前記第2押出部は、前記未加硫ゴムを前記吐出口に押し出すための前記第1スクリュー軸とは別の第2スクリュー軸を有する請求項1又は2に記載のゴム押出機。
【請求項4】
前記第2押出部には、未加硫ゴム内の異物を除去するためのストレーナが設けられていない請求項1乃至3のいずれかに記載のゴム押出機。
【請求項5】
前記第2押出部は、前記第1押出部よりも大型である請求項1乃至4のいずれかに記載のゴム押出機。
【請求項6】
前記脱気部は、真空装置に接続されている請求項1乃至5のいずれかに記載のゴム押出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未加硫ゴムを混練して押し出すためのゴム押出機に関する。
【背景技術】
【0002】
未加硫ゴムを混練して押し出すためのゴム押出機として、スクリュー軸を有するゴム押出機が知られている。従来のスクリュー軸を有するゴム押出機は、投入口から投入された未加硫ゴムを、スクリュー軸で混練して、吐出口から吐出している。
【0003】
このようなゴム押出機による未加硫ゴムの押出成形において、未加硫ゴムには、投入時の空気の巻き込みや、ゴム押出機内で発生する揮発成分ガス等により、未加硫ゴム内に空隙が生じる場合があった。未加硫ゴム内の空隙は、押出成形品の破断や最終製品の破損等の原因となっていた。
【0004】
そこで、下記特許文献1では、第1及び第2のスクリュー部間に脱気部を設け、当該脱気部より未加硫ゴム内の空気及びガスを吸引するゴム押出機を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−302660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的なゴム押出機は、未加硫ゴム内の異物を除去するための網状のストレーナを有している。未加硫ゴム内の異物も、未加硫ゴム内の空隙と同様に、押出成形品の破断や最終製品の破損等の原因となるためである。このようなストレーナは、通常、ゴム押出機のスクリュー軸の下流側に配される。
【0007】
上記特許文献1のゴム押出機において、例えば、第1及び第2のスクリュー部の下流側に位置するスクリューヘッド部にストレーナが配された場合、脱気部で空気が吸引された未加硫ゴムが、下流側のストレーナで分断され、その後、再び合流される。このため、特許文献1のゴム押出機では、未加硫ゴムが、ストレーナの通過時に再び空気を巻き込むことになり、依然として未加硫ゴム内に空隙を生じるという問題があった。
【0008】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、脱気部をストレーナの下流側に設けることを基本として、未加硫ゴム内の空気及びガスを効率よく吸引し得るゴム押出機を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、未加硫ゴムを混練して押し出すためのゴム押出機であって、前記未加硫ゴム内の異物を除去するための網状のストレーナと、前記未加硫ゴム内の空気を吸引するための脱気部とを有し、前記脱気部は、前記ストレーナの下流側で、前記ストレーナに隣接して設けられることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るゴム押出機において、前記未加硫ゴムを押し出すためのスクリュー軸を有し、前記ストレーナ及び前記脱気部は、前記スクリュー軸の下流側に設けられるのが望ましい。
【0011】
本発明に係るゴム押出機において、前記未加硫ゴムを投入するための投入口を有する第1押出部と、前記第1押出部の下流側に配されかつ前記未加硫ゴムを吐出するための吐出口を有する第2押出部と、前記第1押出部と前記第2押出部とを前記未加硫ゴムが連通可能に接続する連結部とを含み、前記第1押出部は、前記未加硫ゴムを前記第2押出部側に押し出すための第1スクリュー軸を有し、前記第2押出部は、前記未加硫ゴムを前記吐出口に押し出すための前記第1スクリュー軸とは別の第2スクリュー軸を有し、前記連結部は、前記ストレーナと、前記脱気部とを有するのが望ましい。
【0012】
本発明に係るゴム押出機において、前記第2押出部には、未加硫ゴム内の異物を除去するためのストレーナが設けられていないのが望ましい。
【0013】
本発明に係るゴム押出機において、前記第2押出部は、前記第1押出部よりも大型であるのが望ましい。
【0014】
本発明に係るゴム押出機において、前記脱気部は、真空装置に接続されているのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のゴム押出機は、未加硫ゴム内の異物を除去するための網状のストレーナと、未加硫ゴム内の空気を吸引するための脱気部とを有している。このようなゴム押出機は、未加硫ゴム内の異物を除去できるとともに、未加硫ゴム内に巻き込まれた空気及び未加硫ゴム内で発生したガス等を吸引することができ、均質な未加硫ゴムを押し出すことができる。
【0016】
本発明のゴム押出機の脱気部は、ストレーナの下流側で、ストレーナに隣接して設けられる。このような脱気部は、ストレーナで分断された未加硫ゴムが、再び合流する部位近傍を負圧にできるため、未加硫ゴム内の空気及びガスを効率よく吸引することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のゴム押出機の一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明のゴム押出機の他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のゴム押出機1を示す断面図である。図1に示されるように、本実施形態のゴム押出機1は、未加硫ゴムGを混練して押し出している。ゴム押出機1は、略円筒状のケーシング2と、ケーシング2の内部に収容されたスクリュー軸3とを有しているのが望ましい。
【0019】
ケーシング2は、例えば、長手方向の一端側で閉鎖された閉鎖部2aと、他端側で開放された開放部2bと、閉鎖部2a及び開放部2b間を連結する側面部2cとを有している。側面部2cの一端側には、未加硫ゴムGを投入するための投入口4が設けられるのが望ましい。すなわち、未加硫ゴムGは、一端側の投入口4からケーシング2内に投入され、他端側の開放部2bから押し出される。本実施形態の開放部2bの断面積は、側面部2cの断面積よりも小さい。このような開放部2bは、未加硫ゴムGを密に押し出すことができる。
【0020】
スクリュー軸3は、ケーシング2内の未加硫ゴムGを押し出すためのものである。本実施形態のスクリュー軸3は、軸本体3Aと、軸本体3Aからスクリュー軸3の径方向外側に突出する螺旋翼3Bとを備えている。
【0021】
軸本体3Aは、ケーシング2の長手方向に沿って、直線状に配されるのが望ましい。螺旋翼3Bは、例えば、スクリュー軸3の軸方向にずれながら周方向に連続して形成されている。このような螺旋翼3Bは、ケーシング2内の未加硫ゴムGを、閉鎖部2aから開放部2bに向かって混練しながら押し出すことができる。スクリュー軸3は、ケーシング2の閉鎖部2a側の外部に配された駆動装置Mにより駆動されるのが望ましい。
【0022】
本実施形態のゴム押出機1は、ケーシング2の開放部2b近傍に、未加硫ゴムG内の異物を除去するための網状のストレーナ5と、未加硫ゴムG内の空気を吸引するための脱気部6とを有している。ストレーナ5及び脱気部6は、スクリュー軸3の下流側に設けられるのが望ましい。このようなゴム押出機1は、未加硫ゴムG内の異物を除去できるとともに、未加硫ゴムG内に巻き込まれた空気及び未加硫ゴムG内で発生したガス等を吸引することができ、均質な未加硫ゴムGを押し出すことができる。
【0023】
ストレーナ5は、金属製であるのが望ましい。ストレーナ5は、目開きが0.1〜1.0mmの金網により形成されているのが好ましい。ストレーナ5は、未加硫ゴムGがストレーナ5を通過する時に未加硫ゴムGを分断し、未加硫ゴムGのせん断発熱を促進することができる。このようなストレーナ5は、このせん断発熱により、未加硫ゴムG内の揮発成分のガス化を促進し、より均質な未加硫ゴムGを成形することができる。ストレーナ5は、例えば、パンチングメタルにより形成されていてもよい。
【0024】
脱気部6は、真空装置Pに接続されているのが望ましい。このような脱気部6は、ゴム押出機1の内部を負圧にすることができる。
【0025】
脱気部6は、ストレーナ5の下流側で、ストレーナ5に隣接して設けられるのが望ましい。このような脱気部6は、ストレーナ5で分断された未加硫ゴムGが再び合流する部位近傍を負圧にできるため、未加硫ゴムGが合流する際に巻き込んだ空気を効率よく吸引することができる。
【0026】
本実施形態では、脱気部6の上流側は、ストレーナ5に押し付けられる未加硫ゴムGにより密閉され、脱気部6の下流側は、開放部2bの断面積の縮小に伴い密となった未加硫ゴムGにより密閉されている。このため、脱気部6近傍のゴム押出機1の内部は、両端が未加硫ゴムGにより密閉された小さな空間となり得る。その結果、脱気部6は、ストレーナ5で分断された未加硫ゴムGが再び合流する部位近傍を効率よく負圧にすることができ、未加硫ゴムG内の空気及びガスをより確実に吸引することができる。
【0027】
図2は、他の実施形態のゴム押出機10を示す断面図である。図2に示されるように、この実施形態のゴム押出機10は、第1押出部11と、第1押出部11の下流側に配される第2押出部12と、第1押出部11と第2押出部12とを未加硫ゴムGが連通可能に接続する連結部13とを含んでいる。
【0028】
第1押出部11は、未加硫ゴムGを投入するための投入口14を有するのが望ましい。第2押出部12は、未加硫ゴムGを吐出するための吐出口15を有するのが望ましい。すなわち、未加硫ゴムGは、第1押出部11の投入口14からゴム押出機10内に投入され、第1押出部11、連結部13及び第2押出部12を経て、第2押出部12の吐出口15から押し出される。
【0029】
この実施形態では、ゴム押出機10の下流側にギヤポンプ16が設けられている。ギヤポンプ16は、第2押出部12の吐出口15に連結されるのが望ましい。このため、吐出口15から吐出された未加硫ゴムGは、ギヤポンプ16に供給される。ギヤポンプ16は、例えば、未加硫ゴムGを帯状ゴムに成形している。
【0030】
第1押出部11は、略円筒状の第1ケーシング17と、第1ケーシング17の内部に収容された第1スクリュー軸18とを有しているのが望ましい。
【0031】
第1ケーシング17は、例えば、長手方向の一端側で閉鎖された第1閉鎖部17aと、他端側で開放された第1開放部17bと、第1閉鎖部17aと第1開放部17bとを連結する第1側面部17cとを有している。第1側面部17cの一端側には、投入口14が設けられるのが望ましい。また、第1開放部17bは、連結部13に接続されるのが望ましい。すなわち、未加硫ゴムGは、一端側の投入口14から第1ケーシング17内に投入され、他端側の第1開放部17bから連結部13に押し出される。
【0032】
第1スクリュー軸18は、第1ケーシング17の第1閉鎖部17a側の外部に配された第1駆動装置M1により、駆動されるのが望ましい。このような第1スクリュー軸18は、未加硫ゴムGを第2押出部12側に押し出している。
【0033】
第2押出部12は、略円筒状の第2ケーシング19と、第2ケーシング19の内部に収容された第2スクリュー軸20とを有しているのが望ましい。
【0034】
第2ケーシング19は、例えば、長手方向の一端側で閉鎖された第2閉鎖部19aと、他端側で開放された第2開放部19bと、第2閉鎖部19aと第2開放部19bとを連結する第2側面部19cとを有している。第2側面部19cの一端側には、連結部13が接続されるのが望ましい。また、第2開放部19bには、吐出口15が設けられるのが望ましい。すなわち、第1押出部11から押し出された未加硫ゴムGは、一端側の連結部13から第2ケーシング19内に投入され、他端側の吐出口15からギヤポンプ16へ押し出される。
【0035】
この実施形態の第2ケーシング19は、第2側面部19cの断面積が、第1ケーシング17の第1側面部17cの断面積より大きい。すなわち、第2押出部12は、第1押出部11よりも大型であるのが望ましい。このような第2押出部12は、未加硫ゴムGを吐出口15に円滑に押し出すことができる。
【0036】
第2スクリュー軸20は、第1スクリュー軸18とは別のものであって、第2ケーシング19の第2閉鎖部19a側の外部に配された第2駆動装置M2により、駆動されるのが望ましい。このような第2スクリュー軸20は、第1スクリュー軸18とは異なる速さで回転させることができるので、未加硫ゴムGを吐出口15により円滑に押し出すことができる。
【0037】
連結部13は、例えば、第1押出部11の第1開放部17bと、第2押出部12の第2側面部19cとを、未加硫ゴムGが連通可能に接続している。この実施形態の連結部13は、未加硫ゴムG内の異物を除去するための網状のストレーナ21と、ゴム押出機10内の空気を吸引するための脱気部22とを有している。
【0038】
ストレーナ21は、金属製であるのが望ましい。ストレーナ21は、目開きが0.1〜1.0mmの金網により形成されているのが好ましい。ストレーナ21は、未加硫ゴムGがストレーナ21を通過時に、未加硫ゴムGを分断し、未加硫ゴムGのせん断発熱を促進することができる。
【0039】
脱気部22は、真空装置P1に接続されているのが望ましい。このような脱気部22は、連結部13の内部を負圧にすることができる。
【0040】
脱気部22は、ストレーナ21の下流側で、ストレーナ21に隣接して設けられるのが望ましい。このような脱気部22は、ストレーナ21で分断された未加硫ゴムGが再び合流する部位近傍を負圧にできるため、未加硫ゴムG内の空気及びガスを効率よく吸引することができる。
【0041】
この実施形態では、脱気部22の上流側は、ストレーナ21に押し付けられる未加硫ゴムGにより密閉され、脱気部22の下流側は、連結部13と第2押出部12との接続部近傍の未加硫ゴムGにより密閉されている。このため、連結部13の内部は、両端が未加硫ゴムGにより密閉された小さな空間となり得る。その結果、脱気部22は、ストレーナ21で分断された未加硫ゴムGが再び合流する部位近傍を効率よく負圧にすることができ、未加硫ゴムG内の空気及びガスをより確実に吸引することができる。
【0042】
この実施形態では、脱気部22の下流側に位置する第2押出部12には、未加硫ゴムG内の異物を除去するためのストレーナが設けられていない。このため、脱気部22で空気吸引された未加硫ゴムGは、再び分断されることなく吐出口15から押し出されるので、より均質な未加硫ゴムGを押し出すことができる。
【0043】
この実施形態のゴム押出機10では、1つの第1押出部11が第2押出部12に連結部13を介して接続されていたが、例えば、2つ以上の第1押出部11が第2押出部12に接続されていてもよい。このようなゴム押出機10は、第1押出部11と同数の連結部13を有し、各連結部13は、それぞれ、ストレーナ21と脱気部22とを有しているのが望ましい。
【0044】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施し得る。
【符号の説明】
【0045】
1,10 ゴム押出機
5,21 ストレーナ
6,22 脱気部
G 未加硫ゴム
図1
図2