(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態における流路基板10を例示する図である。流路基板10は、
図1に示されるように、導入口110、導出口120、フィルタ機構201を有する。
【0011】
導入口110は、
図1において流路基板10の上面側に開口を有する円形の有底孔であり、流路基板10の一端側に形成されている。導入口110には、検査等に用いられる流体が供給される。
【0012】
導出口120は、
図1において流路基板10の上面側に開口を有する円形の有底孔であり、流路基板10の他端側に形成されている。導出口120は、流路基板10の内部に形成されている流路によって導入口110と連通している。導出口120は、導入口110に供給されて流路を通過した流体が排出される。
【0013】
フィルタ機構201は、導入口110と導出口120とを連通する流路に形成され、流路を流れる流体に含まれている粒子を取り除く。フィルタ機構201の構成については後述する。
【0014】
流路基板10は、上記した構成を有し、検査等に用いられる流体が導入口110に供給され、フィルタ機構201によって流体に含まれている不純物粒子等を除去して、不純物粒子を取り除いた流体を導出口120に排出する。
【0015】
導入口110に供給される流体は、例えば粉砕等されて溶解した食品を含む液体である。導入口110に供給された液体は、フィルタ機構201によって液体中に残存する食品の粒子が取り除かれる。食品等の粒子が除去された液体は導出口120に排出され、食品におけるアレルギー原因物質の有無や汚染等が検査される。なお、流路基板10は、気体、あるいは気体と液体との混合物等から、不要な粒子を除去することも可能である。
【0016】
流路基板10は、例えば樹脂材料を用いて金型により成形された複数枚の基板が積層されることで形成される。また、流路基板10は、例えばエッチング等によりフィルタ機構201等が形成されたガラス板が積層されることで形成されてもよく、上記以外の方法により形成されてもよい。
【0017】
なお、流路基板10の構成は、
図1に例示される構成に限られるものではない。例えば、流路基板10には、フィルタ機構201の他に、希釈機構、撹拌機構等といった様々な機能を有する機構が導入口110と導出口120との間の流路に形成されてもよい。
【0018】
次に、流路基板10に形成されているフィルタ機構201について説明する。
【0019】
図2は、第1の実施形態におけるフィルタ機構201の構成を例示する図である。また、
図3に、
図2に例示されるフィルタ機構201のXZ断面概略図を示す。
【0020】
なお、以下に示す図面において、X方向は、流路205における流体の流通方向に平行な方向である。また、Y方向は、流路205の幅方向である。Z方向は、鉛直方向であり、流路205の高さ方向である。また、以下に示す図面では、流路205を流れる流体の流通方向が白抜き矢印で示されている。
【0021】
フィルタ機構201は、
図2及び
図3に示されるように、第1フィルタ部210、第2フィルタ部220を有し、流路基板10において流体が流れる流路205に形成されている。
【0022】
本実施形態における流路205は、例えばY方向の幅及びZ方向の高さが1mmの矩形管状に形成されている。なお、流路205のYZ断面形状は、例えば円形状や多角形状等の異なる形状であってもよい。
【0023】
第1フィルタ部210は、複数の柱211で構成されている。各柱211は、軸方向がZ方向に平行になるように配置され、両端が流路205の内壁面に固定支持されている。第1フィルタ部210は、隣接する柱211同士のY方向の間隔が第1間隔d1となるようにY方向に沿って配置された柱211の列が、X方向に3列設けられている。
【0024】
第2フィルタ部220は、複数の柱221で構成され、流路205において第1フィルタ部210の下流側に設けられている。各柱221は、軸方向がZ方向に平行になるように配置され、両端が流路205の内壁面に固定支持されている。第2フィルタ部220は、隣接する柱221同士のY方向の間隔が第1間隔d1よりも狭い第2間隔d2となるようにY方向に沿って配置された柱221の列が、X方向に3列設けられている。
【0025】
なお、第1フィルタ部210及び第2フィルタ部220は、それぞれ1列以上の柱211,221で構成され、柱211,221の列数が異なってもよい。
【0026】
柱211,221は、例えば直径が20μm〜100μmであり、隣接する柱同士の間隔d1,d2が5μm〜40μmになるように並んで配置されている。なお、柱211及び柱221は、多角柱等であってもよいが、流体が流れ易くなるように、円柱として図示しているがこれに限られるものではなく、例えば多角柱や錐体、平板状(金属片等)であってよいし、それぞれ異なる形状であってもよい。また、柱211及び柱221は、例えば「歯抜け」や「一部分だけ粗さが異なる」というように完全な並列配置でなくともよい。
【0027】
ここで、上流側の第1フィルタ部210の柱211には、下流側の第2フィルタ部220の柱221よりも、流路205を流れる流体から受ける圧力が大きい。そこで、流路205を流れる流体からの圧力に耐えられるように、例えば上流側の柱211の直径を下流側の柱221の直径より大きくしてもよい。
【0028】
以上で説明したフィルタ機構201によれば、流路205を流れる流体に含まれている粒径d1以上の粒子が第1フィルタ部210によって取り除かれ、さらに粒径d1未満且つ粒径d2以上の粒子が第2フィルタ部220によって取り除かれる。このように、流路基板10の導入口110に供給されて流路205に導入された流体は、フィルタ機構201によって粒径d2以上の粒子が除去されて導出口120に排出される。
【0029】
このように、フィルタ機構201は、流体に含まれている粒径の異なる多様な粒子を除去することができる。また、フィルタ機構201は、第1フィルタ部210及び第2フィルタ部220で、それぞれ異なる粒径の粒子を段階的に処理するため、例えば柱221の間隔が狭い第2フィルタ部220だけで流体を処理する場合に比べて目詰まりが起こり難く、より多くの流体を処理できる。
【0030】
ここで、フィルタ機構201には、
図4に例示されるように、第1フィルタ部210の上流側であって流路205の鉛直方向下側に、第1孔部240が設けられてもよい。第1孔部240は、例えばX方向の最大幅が1mm〜5mmであり、Z方向の深さが200μm〜1mmである。
【0031】
流路205を流れる流体に含まれている粒子は、例えば自重によって第1フィルタ部210に到達する前に第1孔部240に落下する。また、第1フィルタ部210によって堰き止められた粒子が、第1孔部240に落下する。なお、第1フィルタ部210の柱211の間隔d1よりも小さい粒径の粒子も、例えば自重によって、あるいは第1フィルタ部210の柱211に衝突して第1孔部240に落下する。
【0032】
このように、流路205を流れる流体に含まれている粒子が第1フィルタ部210の上流側に設けられている第1孔部240に落下することで、第1フィルタ部210及び第2フィルタ部220において除去すべき粒子が減少する。したがって、フィルタ機構201は、第1フィルタ部210及び第2フィルタ部220で目詰まりを起こすことなく、より多量の流体を処理することが可能になる。
【0033】
第1孔部240は、
図5に示されるように、X方向の間隔が鉛直方向上方に向かって徐々に大きくなるように、第1フィルタ部210側の壁面240aが鉛直方向に対して傾斜するように形成されてもよい。
【0034】
また、第1孔部240は、
図6(A)に示されるように、第1フィルタ部210側の壁面240aに階段状の段差部240bが形成されてもよく、
図6(B)に示されるように、第1フィルタ部210側の壁面240aに多段階の段差部240cが形成されてもよい。
【0035】
さらに、第1孔部240は、
図7に示されるように、第1フィルタ部210側の壁面240aに、段差部240dと、X方向の間隔が鉛直方向上方に向かって徐々に大きくなるような傾斜面240eとが形成されてもよい。
【0036】
第1孔部240の第1フィルタ部210側の壁面に形成された段差部240b,240c,240d,傾斜面240eには、例えばZ方向の位置によって粒径や比重等が異なる粒子が堆積する。そこで、流体の処理後に、例えば第1孔部240の壁面240a、段差部240b,240c,240d,傾斜面240e等に堆積している粒子を採取して様々な分析を行うことが可能になる。
【0037】
また、フィルタ機構201には、
図8に示されるように、X方向において第1フィルタ部210と第2フィルタ部220との間であって流路205の鉛直方向下側に、第2孔部250が設けられてもよい。
【0038】
流路205を流れる流体に含まれ、第1フィルタ部210を通過した粒子は、例えば自重によって第2フィルタ部220に到達する前に第2孔部250に落下する。また、第2フィルタ部220によって堰き止められた粒子が、第2孔部250に落下する。なお、第2フィルタ部220の柱221の間隔d2よりも小さい粒径の粒子も、例えば自重によって、あるいは第2フィルタ部220の柱221に衝突して第2孔部250に落下する。
【0039】
このように、流路205を流れる流体に含まれている粒子が第1フィルタ部210と第2フィルタ部220との間に設けられている第2孔部250に落下することで、第2フィルタ部220において除去すべき粒子が減少する。したがって、フィルタ機構201は、第2フィルタ部220で目詰まりを起こすことなく、より多量の流体を処理することが可能になる。
【0040】
なお、第2孔部250は、第1孔部240と同様に、第2フィルタ部220側の壁面に、段差部や傾斜面等が設けられてもよく、第1孔部240とは異なる形状であってもよい。
【0041】
また、フィルタ機構201は、
図9(A)に示されるように、第2フィルタ部220の下流側に、X方向の間隔が第2フィルタ部220の柱221の間隔d2よりも小さくなるように並んで配置された複数の柱231で構成された第3フィルタ部230が設けられてもよい。
【0042】
フィルタ機構201は、第1フィルタ部210、第2フィルタ部220及び第3フィルタ部230で、流路205を流れる流体に含まれている粒子を段階的に除去することで、例えば粒径等が異なる多様な粒子に対応可能になる。また、各フィルタ部210,220,230における目詰まりの発生が抑制されて流体の処理可能量が増える。
【0043】
また、フィルタ機構201は、
図9(B)に示されるように、第1フィルタ部210の上流側に第1孔部240、第1フィルタ部210と第2フィルタ部220との間に第2孔部250、第2フィルタ部220と第3フィルタ部230との間に第3孔部260が設けられてもよい。
【0044】
各孔部240,250,260に粒子が自重等により落ちることで、各フィルタ部210,220,230において除去すべき粒子が減少する。したがって、フィルタ機構202は、各フィルタ部210,220,230において目詰まりを起こすことなく、多量の流体を処理することが可能になる。
【0045】
なお、第1孔部240、第2孔部250及び第3孔部260は、互いに異なる形状であってもよい。また、第1孔部240、第2孔部250及び第3孔部260のうち少なくとも1つの下流側壁面に、段差部や傾斜面等が形成されてもよい。
【0046】
また、フィルタ機構201には、流路205において第3フィルタ部230の下流側に、上流側のフィルタ部の柱の間隔よりも狭くなるように並んで配置された複数の柱で構成されたフィルタ部が1つ以上設けられてもよい。また、フィルタ機構201には、第3フィルタ部230の下流側であって流路205の鉛直方向下側に、1つ以上の孔部が設けられてもよい。
【0047】
なお、フィルタ機構201に設けられるフィルタ部を構成する複数の柱は、例えば軸方向がZ方向に対して傾くように並んで配置されてもよく、軸方向がY方向に平行になるように並んで配列されてもよい。また、フィルタ機構201に設けられる孔部は、フィルタ部の直上流に間隔を空けずに形成されることが好ましい。フィルタ部によって堰き止められた粒子が孔部に落下し易くなり、フィルタ部における目詰まりが低減し、フィルタ機構201でより多量の流体を処理することが可能になる。また、フィルタ機構201に設けられる孔部は、例えばZ方向に対して傾斜する方向に窪むように形成されてもよい。
【0048】
以上で説明したように、第1の実施形態におけるフィルタ機構201は、それぞれ複数の柱が並んで配置されて隣接する柱同士の間隔が異なる複数のフィルタ部で、流路205を流れる流体に含まれている粒子を除去する。フィルタ機構201は、隣接する柱同士の間隔が異なる複数のフィルタ部を有することで、流体に含まれている粒径の異なる多様な粒子に対応できる。また、フィルタ機構201は、複数のフィルタ部でそれぞれ異なる粒径の粒子を段階的に処理できるため、各フィルタ部において目詰まりが起こり難くなり、流体の処理可能量が増大する。
【0049】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、既に説明した実施形態と同一構成部分についての説明は省略する。
【0050】
図10は、第2の実施形態におけるフィルタ機構202を例示する図である。また、
図11は、
図10に例示されるフィルタ機構202のXZ断面概略図である。
【0051】
フィルタ機構202は、
図10及び
図11に示されるように、第1フィルタ部270、第1孔部290を有し、第1の実施形態におけるフィルタ機構201と同様に、流路基板10の導入口110と導出口120とを連通する流路205に形成される。
【0052】
第1フィルタ部270は、複数の柱271で構成されている。各柱271は、例えば直径が20μm〜100μmであり、軸方向がZ方向に平行になるように配置され、両端が流路205の内壁面に固定支持されている。第1フィルタ部270は、例えば隣接する柱271同士のY方向の間隔が5μm〜40μmの所定の大きさとなるようにY方向に沿って配置された柱271の列が、X方向に3列設けられている。なお、第1フィルタ部270は、少なくとも1列以上の柱271で構成される。また、本実施形態における柱271は、流体が流れ易くなるように円柱として図示しているがこれに限られるものではなく、例えば多角柱や錐体、平板状(金属片等)であってよいし、それぞれ異なる形状であってもよい。また、柱271は、例えば「歯抜け」や「一部分だけ粗さが異なる」というように完全な並列配置でなくともよい。
【0053】
第1孔部290は、流路205において第1フィルタ部270の上流側であって、流路205の鉛直方向下側に設けられている。第1孔部290は、例えばX方向の最大幅が1mm〜5mmであり、Z方向の深さが200μm〜1mmである。
【0054】
流路205を流れる流体に含まれている粒子は、例えば自重によって第1フィルタ部270に到達する前に第1孔部290に落下する。また、第1フィルタ部270によって堰き止められた粒子が、第1孔部290に落下する。なお、第1フィルタ部270の柱271の間隔よりも小さい粒径の粒子も、例えば自重によって、あるいは第1フィルタ部270の柱271に衝突して第1孔部290に落下する。
【0055】
このようにフィルタ機構202では、第1フィルタ部270及び第1孔部290によって、流路205を流れる流体に含まれている多様な粒子を除去できる。また、流体に含まれている粒子が第1フィルタ部270の上流側に設けられている第1孔部290に落ちることで、第1フィルタ部270において除去すべき粒子が減少する。したがって、フィルタ機構202は、第1フィルタ部270で目詰まりを起こすことなく、より多量の流体を処理することが可能になる。
【0056】
また、フィルタ機構202には、
図12に示されるように、第1フィルタ部270の下流側に、第1フィルタ部270の柱271の間隔よりも小さい間隔で並んで配置された複数の柱281で構成された第2フィルタ部280が設けられてもよい。
【0057】
フィルタ機構202は、複数のフィルタ部270,280によって流路205を流れる流体に含まれている粒子を段階的に除去することで、例えば粒径等が異なる多様な粒子に対応可能になる。また、各フィルタ部270,280における目詰まりの発生が抑制されて流体の処理可能量が増大する。
【0058】
また、フィルタ機構202には、
図12に示されるように、第1フィルタ部270と第2フィルタ部280との間であって流路205の鉛直方向下側に、第2孔部291が設けられてもよい。
【0059】
流路205を流れる流体に含まれ、第1フィルタ部270を通過した粒子は、例えば自重によって第2フィルタ部280に到達する前に第2孔部291に落下する。また、第2フィルタ部280によって堰き止められた粒子が、第2孔部291に落下する。なお、第2フィルタ部280の柱281の間隔よりも小さい粒径の粒子も、例えば自重によって、あるいは第2フィルタ部280の柱281に衝突して第2孔部291に落下する。
【0060】
このように、流路205を流れる流体に含まれている粒子が第1フィルタ部270と第2フィルタ部280との間に設けられている第2孔部291に落下することで、第2フィルタ部280において除去すべき粒子が減少する。したがって、フィルタ機構202は、第2フィルタ部280で目詰まりを起こすことなく、より多量の流体を処理することが可能になる。
【0061】
なお、第1孔部290及び第2孔部291は、異なる形状であってもよい。また、第1孔部290及び第2孔部291の少なくとも一方は、第1の実施形態における第1孔部240と同様に、例えば下流側の壁面に段差部や傾斜面等が形成されてもよい。
【0062】
フィルタ機構202には、流路205において第2フィルタ部280の下流側に、上流側のフィルタ部の柱の間隔よりも狭くなるように並んで配置された複数の柱で構成されたフィルタ部が1つ以上設けられてもよい。また、フィルタ機構202には、第2フィルタ部280の下流側であって、流路205の鉛直方向下側に1つ以上の孔部が設けられてもよい。
【0063】
なお、フィルタ機構202に設けられるフィルタ部を構成する複数の柱は、例えば軸方向がZ方向に対して傾くように並んで配置されてもよく、軸方向がY方向に平行になるように並んで配置されてもよい。また、フィルタ機構202に設けられる孔部は、フィルタ部の直上流に間隔を空けずに形成されることが好ましい。フィルタ部によって堰き止められた粒子が孔部に落下し易くなり、フィルタ部における目詰まりが低減し、フィルタ機構202でより多量の流体を処理することが可能になる。また、フィルタ機構202に設けられる孔部は、例えばZ方向に対して傾斜する方向に窪むように形成されてもよい。
【0064】
以上で説明したように、第2の実施形態におけるフィルタ機構202は、第1フィルタ部270及び第1孔部290によって、流路205を流れる流体に含まれている粒子を除去する。フィルタ機構202は、第1フィルタ部270で柱271の間隔以上の粒径の粒子を除去するだけでなく、柱271の間隔未満の粒径の粒子も第1孔部290で除去可能であり、多様な粒子に対応できる。また、流体に含まれている粒子が、例えば自重によって、あるいは第1フィルタ部270の柱271に堰き止められて第1孔部290に落下するため、第1フィルタ部270において目詰まりが起こり難く、流体の処理可能量が増大する。
【0065】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、既に説明した実施形態と同一構成部分についての説明は省略する。
【0066】
図13は、第3の実施形態におけるフィルタ機構203を例示する図である。また、
図14は、
図13に例示されるフィルタ機構203のXZ断面概略図である。
【0067】
フィルタ機構203は、
図13及び
図14に示されるように、フィルタ部310、孔部340を有し、上記した各実施形態におけるフィルタ機構201、202と同様に、流路基板10の導入口110と導出口120とを連通する流路205に形成されている。
【0068】
フィルタ部310は、柱311aと柱311bとが交互に並ぶように設けられている。各柱311a、311bは、例えば金属材料等の導電性を有する材料(ワイヤ等)で円柱状に形成されている。各柱311a、311bは、例えば直径が20μm〜200μmであり、軸方向がY方向に平行になるように配置されている。柱311aと柱311bとの間隔は、例えば50μm〜250μmである。
【0069】
なお、フィルタ部310は、柱311a、311bを含む列が2列以上設けられてもよい。柱311a、311bの形状は、円柱に限られるものではなく、例えば多角柱や錐体、平板状(金属片等)であってもよく、それぞれ異なる形状であってもよい。また、柱311a、311bは、例えば「歯抜け」や「一部分だけ粗さが異なる」というように完全な並列配置でなくともよい。
【0070】
孔部340は、流路205においてフィルタ部310の鉛直方向下端部よりも上流側であって、流路205の鉛直方向下側に設けられている。第3の実施形態におけるフィルタ機構203では、フィルタ部310において鉛直方向で最も下方に設けられている柱311aよりも上流側に孔部340が設けられている。孔部340は、例えば、X方向の最大幅が1mm〜5mmであり、Z方向の深さが200μm〜1mmである。
【0071】
流路205を流れる流体に含まれている粒子は、例えば自重によってフィルタ部310に到達する前に孔部340に落下する。また、フィルタ部310によって堰き止められた粒子が孔部340に落下する。
【0072】
ここで、柱311a及び柱311bは、一方が正極となり他方が負極となるように、不図示の電源装置からそれぞれに交流電圧が印加される。このように交流電圧が印加されることで、柱311aと柱311bとの間には、周期的に向きが変わる電界が形成される。
【0073】
柱311aと柱311bとの間に上記したような電界が形成されると、流路205においてフィルタ部310の近傍を流れる帯電粒子に、フィルタ部310から離れる方向に作用する誘電泳動力が生じる。帯電粒子に生じる誘電泳動力は、粒子径が大きいほど大きくなる。
【0074】
このため、
図14に示されるように、フィルタ部310から受ける誘電泳動力が、流路205を流れる流体から受ける圧力よりも大きい大径粒子351は、フィルタ部310にはね返されて孔部340に落下する。また、フィルタ部310から受ける誘電泳動力が、流路205を流れる流体から受ける圧力よりも小さい小径粒子352は、柱311aと柱311bとの間を通過する。
【0075】
柱311aと柱311bとの間隔や、柱311a及び柱311bのそれぞれに印加される電圧の大きさ及び周期等は、フィルタ部310を通過させる粒子の径等に応じて適宜設定される。
【0076】
第3の実施形態におけるフィルタ部310は、
図14に示されるように、柱311aと柱311bとが交互に配列されることにより形成されているフィルタ面312が、鉛直方向上側が下側よりも上流側に傾斜するように形成されている。このような構成により、フィルタ部310においてはね返された粒子は、フィルタ部310において滞留することなく孔部340に落ちて沈んでいく。このため、フィルタ機構203は、フィルタ部310の上流側で粒子が滞留したり、柱311aと柱311bとの間に粒子が目詰まりを起こしたりすることなく、より多量の流体を処理することが可能になる。
【0077】
第3の実施形態におけるフィルタ機構203では、
図14に示されるフィルタ部310のフィルタ面312と流路205の底面との角度θが45°となるように形成されている。なお、フィルタ部310のフィルタ面312と流路205の底面との角度θは、本実施形態において例示した構成に限られるものではなく、例えば0°〜90°の間で任意の大きさに設定される。
【0078】
孔部340の形状は、第3の実施形態において例示した形状とは異なる形状であってもよく、第1の実施形態における第1孔部240と同様に、例えば下流側の壁面に段差部や傾斜面等が形成されてもよい。また、フィルタ機構203に設けられる孔部340は、フィルタ部310のフィルタ面312の下端部の直上流に間隔を空けずに形成されることが好ましい。フィルタ部310によりはね返された粒子が孔部340に落下し易くなり、フィルタ部310における目詰まりや粒子の滞留等が低減し、フィルタ機構203でより多量の流体を処理することが可能になる。また、フィルタ機構203に設けられる孔部は、例えばZ方向に対して傾斜する方向に窪むように形成されてもよい。
【0079】
また、フィルタ機構203には、フィルタ部310の下流側に、フィルタ部310と同様の構成を有するフィルタ部が1つ以上設けられてもよい。また、フィルタ部310と、フィルタ部310の下流側に設けられるフィルタ部との間に孔部が設けられてもよい。例えば、フィルタ部310と、フィルタ部310の下流側に設けられるフィルタ部とで、柱の間隔、印加する交流電圧の大きさや周期等を変えることで、流体に含まれている粒子の濾過を異なる条件で複数回行うことが可能になる。
【0080】
以上で説明したように、第3の実施形態におけるフィルタ機構203は、フィルタ部310及び孔部340によって、流路205を流れる流体に含まれる粒子のうち、粒子径が所定の径よりも大きい粒子を除去することができる。また、フィルタ部310においてはね返された粒子が孔部340に落下することで、フィルタ部310における目詰まりや粒子の滞留が起こり難く、流体の処理可能量が増大する。
【0081】
以上、実施形態に係るフィルタ機構について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。なお、上記した実施形態における各部の寸法は、例示した値に限定されるものではない。