(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
粉砕ローラ及び回転テーブルを備えて、回転テーブル上に投入した原料を、粉砕ローラで粉砕するとともに、回転テーブルの下方から供給したガスにより吹き上げて、回転テーブルの上方に配した分級機構を介して上部取出口からガスとともに取り出す竪型粉砕機であって、
垂直方向に延びる複数枚の板を間隔をあけて環状に並べて配した固定式分級羽根と、固定式分級羽根の内周側に垂直方向に延びる複数枚の板を間隔をあけて環状に並べて配した回転式分級羽根とを備えた分級機構を配して、回転式分級羽根が環状の旋回軌道を自在に回転するように設けるとともに、固定式分級羽根の外周側にある分級機ケーシングの形状を上方に向かって10度から15度の範囲の一定角度で縮径する切頭円錐形状とし、
且つ、回転式分級羽根の回転中心軸から延びる直線と、回転式分級羽根の幅方向に延びる直線が形成する傾斜角度について、回転式分級羽根を上下方向に均等に3分割して形成して、回転式分級羽根の上側部分が下側部分より、回転式分級羽根の旋回軌道の外周側から内周側に向かって回転式分級羽根の回転方向側に大きく傾斜するように形成し、最下段の回転式分級羽根の角度を0度とし、最上段の回転式分級羽根まで、その角度を下側から上側へ向かって順に0度、15度、30度として形成し、一定割合で角度を増加させることを特徴とする竪型粉砕機。
【背景技術】
【0002】
原料を効率よく微粉砕する装置として、竪型粉砕機(竪型ミル、或いは竪型ローラミルと称されることもある)と呼ばれる粉砕機が用いられている。
竪型粉砕機は、被粉砕物(本明細書においては単に原料と称することもある)を効率的に粉砕することができるという優れた特性を備えている。
【0003】
竪型粉砕機の基本的な粉砕挙動等について簡略に説明する。
竪型粉砕機は、回転テーブル上に粉砕ローラが配されており、粉砕ローラは回転テーブルの方向に押圧されるよう構成されている。粉砕ローラは、回転テーブルが回転することにより、回転テーブルに対して原料を介して従動し回転する。
【0004】
竪型粉砕機に投入された原料は、原料投入用のシュート等を介して回転テーブル上に投入されて粉砕ローラに噛み込まれ粉砕される。回転テーブルと粉砕ローラに噛み込まれて粉砕された原料は、回転テーブルの外周部とケーシングとの間にある環状隙間へ向かう。
【0005】
竪型粉砕機には様々なタイプがあるが、原料を微粉砕して取り出すことに優れた上抜き式(エアスエプト式等と呼ばれることもある)タイプの竪型粉砕機の場合には、回転テーブルの下方からガスが導入されており、機内において下方から上方に流れるガスの気流が生じている。前述の環状隙間へ流れた原料の多くは、ガスの気流により吹き上げられて、機内上部へと向かう。そして、所望の寸法となった原料が、回転テーブルの上方に配した上部取出口からガスとともに取り出される。
【0006】
なお、所望の寸法まで粉砕されていない原料は、ガスにより吹き上げられず、そのままテーブル下方に落下する、或いは、ガスにより一旦吹き上げられても、上部取出口に到達する前にガスの流れから逸脱し落下し、回転テーブル上に落下する等して、再度、粉砕される。即ち、原料を微粉砕する際に、一度の粉砕で所望する粒度まで微粉砕できなかった原料は、機内で繰り返し粉砕されることになる。
【0007】
ここで、従来から、分級効率の向上を目的として機内上部に分級機構が設けられた竪型粉砕機が多く使用されている。分級機構の方式としては、様々である。代表的な分級機構として、例えば、固定式分級羽根を機内に配して機内を流れるガスの気流を整流することによって分級効率を向上させるタイプ、回転式分級羽根を配することにより機内を流れるガスの気流を強く旋回させることによって分級効率を向上させるタイプ、又、固定式分級羽根と回転式分級羽根の両方を備えて分級効率を向上させるタイプ等、が一般的に良く知られている。
【0008】
近年、原料を微粉砕する際には、分級能力に優れたタイプの竪型粉砕機として、固定式と回転式の両方の分級羽根を備えたタイプの竪型粉砕機が使用される機会が多くなってきている。前述した固定式と回転式の両方を備えたタイプの竪型粉砕機においては、回転式分級羽根の外周側に整流用の固定式分級羽根(ガイドベーンと称されることもある)を配した分級機構を採用するケースが一般的である。回転式分級羽根の外周側に整流用の固定式分級羽根を配した分級機構を備えた竪型粉砕機の1例を特許文献1に示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、竪型粉砕機内部において、ガスの気流をスムーズに流す目的で、
図5(1)に示す形状のような分級機ケーシング101Bが採用されるケースがある。
図5(1)に示す分級機ケーシング101Bは、固定式分級羽根114の外周側にある分級機ケーシング101Bの形状が、上方に向かって縮径する切頭円錐形状となっており、垂直方向に伸びている回転式分級羽根113と分級機ケーシング101の間に形成される環状の隙間が下方から上方に向かって小さくなるように構成されている。
【0011】
例えば、竪型粉砕機101の上部が水平な天井で構成されていた場合におけるガスの気流を考察すると、天井に衝突したガスの気流が乱流となって、新たに下側から上昇してくるガスの気流に影響を与えてしまう可能性がある。
それに比較して、
図5(1)に示す構成であれば、ガスの気流が分級機ケーシング101Bに沿ってスムーズに上昇して、回転式分級羽根113側に流れ込むことが可能である。その結果、下側から上昇してくるガスの気流に影響を与える可能性が小さくなる。したがって、ガスの気流がスムーズに流れ、ガスの気流が機内を上昇する際における圧力損失も小さくなるので効率的な分級が可能になる。
【0012】
しかしながら、分級機ケーシング101Bの形状を、上方に向かって縮径する切頭円錐形状とした場合においては、回転式分級羽根113の上方になるほどガスの中心方向速度が早くなるという傾向が生じる。言い換えれば、回転式分級羽根113の上下でガスの中心方向速度が異なるという状態が生じる。
【0013】
図7(1)又
図7(2)に、分級機構115におけるガス気流の方向と理論分級点dの関係を示す。詳細については後述するが、ガスの気流が機内の中心方向に向かって流れる速度を、ガスの気流の中心方向速度Vg(m/s)とした場合において、理論分級点dは、中心方向速度Vg
0.5に比例する。
【0014】
即ち、回転式分級羽根113の上下で中心方向速度Vgが異なるという状態が生じると、理論分級点dが、回転式分級羽根113の上下で相違した状態になる。
図5(1)に示すタイプの分級機構115は、分級効率の優れた分級機構であるが、近年、さらなる分級効率の向上が求められてきており、理論分級点が回転式分級羽根の上下で相違した状態になるという前述の課題を解決すべく、それを解決した分級機構を備える竪型粉砕機の開発が求められていた。
【0015】
本発明は、以上、説明したような問題点に鑑みてなされたものであり、分級機ケーシングの形状を下方から上方に向かって縮径する切頭円錐形状とした場合において好適な分級機構を備える竪型粉砕機の技術に関する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するため、本発明による竪型粉砕機は、
(1) 粉砕ローラ及び回転テーブルを備えて、回転テーブル上に投入した原料を、粉砕ローラで粉砕するとともに、回転テーブルの下方から供給したガスにより吹き上げて、回転テーブルの上方に配した分級機構を介して上部取出口からガスとともに取り出す竪型粉砕機
であって、
垂直方向に延びる複数枚の板を間隔をあけて環状に並べて配した固定式分級羽根と、固定式分級羽根の内周側に垂直方向に延びる複数枚の板を間隔をあけて環状に並べて配した回転式分級羽根とを備えた分級機構を配して、回転式分級羽根が環状の旋回軌道を自在に回転するように設けるとともに、固定式分級羽根の外周側にある分級機ケーシングの形状を上方に向かって
10度から15度の範囲の一定角度で縮径する切頭円錐形状とし、
且つ、回転式分級羽根の回転中心軸から延びる直線と、回転式分級羽根の幅方向に延びる直線が形成する傾斜角度について、回転式分級羽根を上下方向に
均等に3分割して形成して、回転式分級羽根の上側部分が下側部分より、回転式分級羽根の旋回軌道の外周側から内周側に向かって回転式分級羽根の回転方向側に大きく傾斜するように形成し、最下段の回転式分級羽根の角度を0度とし、最上段の回転式分級羽根まで、
その角度を下側から上側へ向かって
順に0度、15度、30度として形成し、一定割合で角度を増加させる。
【0017】
(2)
粉砕ローラ及び回転テーブルを備えて、回転テーブル上に投入した原料を、粉砕ローラで粉砕するとともに、回転テーブルの下方から供給したガスにより吹き上げて、回転テーブルの上方に配した分級機構を介して上部取出口からガスとともに取り出す竪型粉砕機であって、垂直方向に延びる複数枚の板を間隔をあけて環状に並べて配した固定式分級羽根と、固定式分級羽根の内周側に垂直方向に延びる複数枚の板を間隔をあけて環状に並べて配した回転式分級羽根とを備えた分級機構を配して、回転式分級羽根が環状の旋回軌道を自在に回転するように設けるとともに、固定式分級羽根の外周側にある分級機ケーシングの形状を上方に向かって10度から15度の範囲の一定角度で縮径する切頭円錐形状とし、且つ、回転式分級羽根の回転中心軸から延びる直線と、回転式分級羽根の幅方向に延びる直線が形成する傾斜角度について、回転式分級羽根を上下方向に均等に4分割して形成して、回転式分級羽根の上側部分が下側部分より、回転式分級羽根の旋回軌道の外周側から内周側に向かって回転式分級羽根の回転方向側に大きく傾斜するように形成し、最下段の回転式分級羽根の角度を0度とし、最上段の回転式分級羽根まで、その角度を下側から上側へ向かって順に0度、10度、20度、30度として形成し、一定割合で角度を増加させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、回転式分級羽根を上下方向に複数個分割して形成するとともに、回転式分級羽根の傾斜角度について、回転式分級羽根の旋回軌道の外周側から内周側に向かって回転式分級羽根の回転方向側に傾斜させる。
そして、回転式分級羽根の上下部分で傾斜角度を異ならせて、回転式分級羽根の下側部分より上側部分の傾斜角度を大きく形成する。
【0020】
本発明は前述の構成により、分級機ケーシングの縮径によるガスの気流速度の影響を、回転式分級羽根の傾斜角度による旋回流の強さによって緩和することができるので、回転式分級羽根の上下方向で均一な分級が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面等に基づき本発明の好ましい実施形態の1例を詳細に説明する。
図1から
図4は本発明の実施形態に係わり、その好ましい例を示したものである。
図1は竪型粉砕機の全体構成を説明する図である。
図2は分級機構の構成及び配置を説明する図であり、(1)が側面から観察した概念図であり、(2)が(1)のA−A断面方向から観察した図である。
図3は回転式分級羽根の構成及び配置を説明する概念図であり、(2)が(1)のA−A断面方向から観察した図であり、(3)が(1)のB−B断面方向から観察した図である。
【0023】
図4は他の実施形態による回転式分級羽根の構成及び配置を説明する図であり、(2)が(1)のA−A断面方向から観察した図であり、(3)が(1)のB−B断面方向から観察した図であり、(4)が(1)のC−C断面方向から観察した図である。
【0024】
なお、
図5は本発明を理解する上で参考となる図であり、
図5は竪型粉砕機のケーシング形状と分級羽根配置を説明する図であり、(1)が側面から観察した概念図であり、(2)が(1)のA−A断面方向から観察した図である。また、
図6は回転式分級羽根の傾斜による気流の方向を説明する参考図であり、
図7は理論分級点を説明する図である。
【0025】
以下、本実施形態に係る竪型粉砕機1の好ましい構成の1例を説明する。
本実施形態に係る竪型粉砕機1は、
図1に示すように竪型粉砕機1の外郭を形成する分級機ケーシング1B、及びミルケーシング1A、並びに、竪型粉砕機1の下部に設置された減速機2Bと図示しない駆動モータによって駆動される回転テーブル2、コニカル型の粉砕ローラ3を備えている。また、
図1に示す竪型粉砕機1は、一般的にセンターシュート方式と呼ばれるタイプの竪型粉砕機1であり、竪型粉砕機1の上部から回転テーブル2の中心方向に向かって鉛直下方に伸びる原料供給シュート35を備えている。
【0026】
そして、
図1に示した竪型粉砕機1は、回転テーブル2の駆動用電源として図示しないインバータ電源等を備えて、運転中、回転テーブル2の回転速度が任意に変更可能な可変速式の竪型粉砕機1である。
【0027】
図1に示した竪型粉砕機1は、内部に分級機構15を備えた上抜き式である。回転テーブル2の上方には、形状が略逆円錐型の内部コーン19を備えており、内部コーン19の上部に固定式の一次分級羽根である固定式分級羽根14が配されている。そして、内部コーン19の上方で固定式分級羽根14の内側には、回転式分級羽根13が配されている。
【0028】
本実施形態においては、原料供給シュート35の外側に、原料供給シュート35を内挿した形で回転筒18が配されている。そして、竪型粉砕機1の上部には分級機モータ20が配されており、回転筒18と分級機モータ20がベルトで連結されている。本実施形態は前述の構成により、分級機モータ20を回転させると、ベルトで連結された回転筒18が回転する構成となっている。
【0029】
そして、
図1に示すように本実施形態においては、回転筒18から放射状に伸びる支持部材に対して回転式分級羽根13が取り付けられている。したがって、分級モータ20を駆動することにより回転筒18を介して回転式分級羽根13は自在に回転する構成となっている。なお、本明細書においては、回転式分級羽根13と固定式分級羽根14を合わせて分級機構15と称する。
【0030】
また、本実施形態においては、
図2(1)に示すように、固定式分級羽根14と分級機ケーシング1Bの間に形成される環状の隙間L1が下方から上方に向かって小さくなるように、固定式分級羽根14の外周側にある分級機ケーシング1Bの形状を上方に向かって縮径する切頭円錐形状としている。なお、固定式分級羽根14の外周側にある分級機ケーシング1Bの形状を上方に向かって縮径する切頭円錐形状としたことにより、固定式分級羽根14の内側にある回転式分級羽根13と分級機ケーシングの間に形成される環状の隙間についても、下方から上方に向かって小さくなる。
【0031】
竪型粉砕機1の回転テーブル2の下方には、ガスを導入するためのガス導入口33と、重量の大きな原料を取り出すための排出シュート34(下部取出口34と称することもある)を備えている。また、回転テーブル2上方には、前述したように機内に原料を投入するための原料供給シュート35が配されるとともに、ガスと共に製品(粉砕されて所望の粒径となった原料)を取り出す上部取出口39を備えている。
【0032】
回転テーブル2の外周部分に対向する位置にあるミルケーシング1Aの内周面は、円筒状になっており、回転テーブル2の外周部分と竪型粉砕機1のミルケーシング1Aとの間で環状の隙間30(環状隙間30)を形成する。また、粉砕ローラ3は、回転テーブル2の外周部分に位相を90度ずつずらした形で4個配されている。
【0033】
以下、固定式分級羽根14と回転式分級羽根13の構成及び配置について説明する。
固定式分級羽根14は、
図2(1)又(2)に示すように、垂直方向に延びる複数枚の板を間隔をあけて環状に並べて配した構成となっている。そして、固定式分級羽根14の上端と分級機ケーシング1Bの間は閉止されており、分級機ケーシング1Bに沿って上昇したガスの気流が、複数枚並べられた固定式分級羽根14同士の間の隙間を通過せずにショートカットして、機内上方の上部取出口39側に侵入することを防止している。
【0034】
なお、本実施形態において、固定式分級羽根14は、
図2(2)等に示すように、その幅方向が、後述する回転式分級羽根13の回転中心軸から放射状に伸びる直線方向に沿って伸びるように形成されている。しかし、本発明の適応の範囲はこれに限らず、必要に応じて適宜傾斜させても良く、例えば、竪型粉砕機1の機内における整流効果を高めてガスの気流をスムーズに機内を流すという目的等によって、回転式分級羽根13と同様に、外周側から内周側に向かって回転式分級羽根13の回転方向側に向かうようにして傾斜させることは好ましい構成の1つである。
【0035】
次に回転式分級羽根13の構成について説明する。
固定式分級羽根14の内周側に配された回転式分級羽根13は、垂直方向に延びる複数枚の板を間隔をあけて環状に並べて配した構成となっている。
本実施形態においては、回転式分級羽根13について、垂直方向に延びる板を、上下方向で2分割して形成しており、上部の羽根を回転式分級羽根13Aとし、下部の羽根を回転式分級羽根13Bとした。
【0036】
前述したように、回転式分級羽根13を構成している回転式分級羽根13Aと13Bは、回転筒18等を介して分級機モータ20により駆動されて、環状に形成された旋回軌道を自在に回転する。
【0037】
ここで、回転式分級羽根13の回転中心軸から延びる直線と、回転式分級羽根13の幅方向に延びる直線が形成する傾斜角度αについて説明すれば、回転式分級羽根13の旋回軌道の外周側から内周側に向かって回転式分級羽根13の回転方向側に傾斜させるとともに、回転式分級羽根13の上下部分で前述の傾斜角度を異ならせて、下側部分にある回転式分級羽根13Bより上側部分にある回転式分級羽根13Aの傾斜角度を大きく形成する。
図2(2)に回転式分級羽根13A(13B)の回転方向を示す。
【0038】
本実施形態においては、
図3(1)から(3)に示すように、回転式分級羽根13Aの傾斜角度α1とし、下側部分にある回転式分級羽根13Bの傾斜角度α2とし、上側部分にある回転式分級羽根13Aの傾斜角度を下側部分にある回転式分級羽根13Bより大きく形成して、α1>α2とした。後述するが
図3に示す実施形態において、α1は30度であり、α2は0度である。
【0039】
なお、本実施形態おいて回転式分級羽根13は、
図3に示すように、その幅方向が直線状に伸びる形状とした。しかし、回転式分級羽根13の剛性を高める目的などにより、
図5(2)に示すように、例えば、一部を屈曲させてL字型等にすることが好ましく、その場合の傾斜角度αは、幅方向に長い部分を基準として設定すれば良い。
【0040】
また、回転式分級羽根13の剛性を高める目的により、回転式分級羽根13を全体的にわずかに屈曲させた場合には、幅方向両端を結ぶ直線を基準として傾斜角度αを設定すれば良い。
【0041】
以下、竪型粉砕機1の粉砕挙動等について簡略に説明する。
前述したように、
図1に示した竪型粉砕機1は、回転テーブル2上に粉砕ローラ3が配されており、それぞれの粉砕ローラ3が、回転テーブル2の方向に押圧されるよう構成されている。そして、粉砕ローラ3は、回転テーブル2が回転することにより、回転テーブル2に対して、原料を介して従動して回転する。
【0042】
竪型粉砕機1の原料供給シュート35からに投入された原料(本実施形態においては高炉スラグ)は、回転テーブル2の中央付近に投入されて、渦巻き状の軌跡を描きながら、回転テーブル2の外周側に移動する。そして、回転テーブル2の外周側に移動した原料は、粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕される。
【0043】
回転テーブル2と粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕された原料は、回転テーブル2の外縁部に周設されたダムリング5を乗り越えて、回転テーブル2の外周部とミルケーシング1Aとの間に形成された環状隙間30の領域に移動する。そして、環状隙間30に移動した原料は、ガスにより吹き上げられてケーシング内を上昇する。この際において吹き上げられるガスの流れは、回転式分級羽根13の回転による影響を受けて、旋回流となる。
【0044】
旋回流となったガスの中に同伴されて吹き上げられた原料は、回転テーブル2の上方に配した分級機構15の方向に向かって旋回しながら流れる。そして、分級機構15を通過した径の小さな原料が、上部取出口39から製品として取り出される。
【0045】
分級機構15を通過できなかった原料の多くは、機内を落下し、再度、回転テーブル2まで戻されて粉砕される、或いは、内部コーン19に捕集されて、再度、回転テーブル2上に供給されて粉砕される。一方、原料の中で極端に重量の大きなものは、ガスにより吹き上げられず、回転テーブル2の下方に向かって落下する。回転テーブル2の下方に落下した原料は、竪型粉砕機1の底面部に達し、図示しないスクレーパ等によって排出シュート34から機外に取り出される。
【0046】
以下、本実施形態による分級機構15の作用効果について説明する。
分級機は粒度分布のある粒子群を、ある粒子径を境界として微粉(製品)と粗粉に選別して振り分ける分級操作を行っている。この境界となる粒子径は、一般的に理論分級点と呼ばれるものである。
【0047】
図5及び
図7に竪型粉砕機1の分級機能を説明するための図を示す。
理論分級点は、粒子の運動方程式を羽根間の中心方向速度Vgと旋回方向速度Vθにより整理することで以下の数式1のように表される。
【0049】
dは理論分級点(μm)、Vθは気流の旋回方向速度(m/s)、Vg(m/s)は気流中心方向速度である。
【0050】
前述したように、分級機ケーシング1Bの形状を、上方に向かって縮径する切頭円錐形状とした場合においては、分級機ケーシング1Bの形状に沿ってガスの気流が流れるために、回転式分級羽根13の上方になるほどガスの中心方向速度Vgが早くなるという傾向が生じている。
【0051】
図6(1)に従来技術の例による回転式分級羽根113による気流の方向を概念的に示す。回転式分級羽根113が回転することにより、気流の旋回方向速度Vθが増加する。
しかし、回転式分級羽根113が上下で同じ場合には、回転式分級羽根113の上下で同じ旋回方向速度Vθとなる。そのため、回転式分級羽根113の上下方向で中心方向速度Vgが異なると、理論分級点dが異なってしまい分級効率を向上させる際の障害になる可能性がある。
【0052】
本実施形態においては、回転式分級羽根13を上下方向に2つに分割して形成しており、回転式分級羽根13の上下部分で傾斜角度αを異ならせて、回転式分級羽根13Bの傾斜角度α2より回転式分級羽根13Aの傾斜角度α1を大きく形成している。
【0053】
前述した数式1から考察すれば、分子にある中心方向速度Vgが大きい場合には分母にある旋回方向速度Vθを大きくし、分子にある中心方向速度Vgが小さい場合には分母にある旋回方向速度Vθを小さくすることが好ましいと想定される。
【0054】
しかし、本出願人は鋭意研究の結果、分級機ケーシング1Bに沿って上昇してくるガスの気流の流れに対向する気流を機内で新たに生じさせることによって、回転式分級羽根13の上下部分で異なる理論分級点dの相違を緩和することができることを知見した。
【0055】
即ち、本実施形態においては、回転式分級羽根13の上下で、回転式分級羽根13A又回転式分級羽根13Bの傾斜角度αを相違させて気流の方向を変化させている。
回転式分級羽根13を傾斜角度αで傾斜させると、
図6(2)に示すようにガス気流の旋回方向速度Vθが変化すると同時に、旋回軌道の内周側から外周側に向かうガスの流れが反中心方向速度Vg2として生じる。
【0056】
そして、回転式分級羽根13の旋回軌道の内周側から外周側に向かおうとする気流の流れは、分級機ケーシング1Bに沿って上昇してくる気流の流れに対向し、反中心方向速度Vg2が中心方向速度Vgを減速させる。その結果、回転式分級羽根13の上下部分で異なる理論分級点dの相違を緩和することができる。
【0057】
なお、傾斜角度αについて説明すると、その最大は45度になる。それ以上、大きい場合には、旋回流等を強くする効果が弱くなる。
【0058】
コンピュータによる理論分級点dの解析を行った結果、固定式分級羽根14の長さを基準として、回転式分級羽根13の全体長さを固定式分級羽根14と略同一の長さとし、分級機ケーシング1Bが鉛直方向から10度から15度(本実施形態では約13度)程度傾いた状態で縮径して行く場合を想定した場合に、回転式分級羽根13の上端部の傾斜角度αについて、概ね30度が好ましいと判断した。したがって、本実施形態においては、回転式分級羽根13を上下均等に2分割し、回転式分級羽根13Aの傾斜角度α1を30度とし、回転式分級羽根13Bの傾斜角度α2を0度とした。
【0059】
なお、理論分級点dの相違を緩和するという観点において、回転式分級羽根13を
図4に示すように均等3分割にする構成は好ましい。前述した実施形態と異なる点は、回転式分級羽根16を、上下方向に均等に3分割として、その角度を下側から上側に向かって順に、α3を0度、α2を15度、α1を30度として形成した点である。
【0060】
また、さらに回転式分級羽根13を、上下方向に均等に4分割とした場合には、その角度を下側から上側に向かって順に、0度、10度、20度、30度として形成することが好ましい。