特許第6790507号(P6790507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790507
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】円すいころ軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 19/36 20060101AFI20201116BHJP
   F16C 33/46 20060101ALI20201116BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20201116BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   F16C19/36
   F16C33/46
   F16C33/66 Z
   F16C33/58
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-130150(P2016-130150)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-3937(P2018-3937A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌本 繁夫
(72)【発明者】
【氏名】村田 順司
(72)【発明者】
【氏名】獅子原 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】中濱 成仁
【審査官】 古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−153664(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102008020069(DE,A1)
【文献】 特開2015−021515(JP,A)
【文献】 特開2014−214771(JP,A)
【文献】 特開2007−154936(JP,A)
【文献】 米国特許第04425011(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00−19/56
F16C 33/00−33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向一方側から他方側に向かって拡径する円すい状の内軌道面を外周側に有する内輪と、軸方向一方側から他方側に向かって拡径する円すい状の外軌道面を内周側に有する外輪と、前記内輪と前記外輪との間に形成されている環状空間に設けられ前記内軌道面及び前記外軌道面を転動する複数の円すいころと、複数の前記円すいころを保持している環状の保持器と、を備え、
前記保持器は、前記円すいころの軸方向一方側に位置している小環状部と、前記円すいころの軸方向他方側に位置している大環状部と、前記小環状部と前記大環状部とを連結している複数の柱部と、を有し、当該保持器は前記外輪の内周面に接触可能であり当該接触により径方向の位置決めがされ、
前記保持器には、前記小環状部と前記大環状部との間であって周方向で隣り合う前記柱部の間に前記円すいころを収容するポケットが形成されており、
前記小環状部には、軸方向一方側の軸受外側から前記環状空間に潤滑油を導入可能とする導入流路が形成されていて、
前記ポケットの周方向位置と前記導入流路の周方向位置とが一致していると共に、前記導入流路は前記ポケットで開口していて、
前記内輪は、軸方向他方側に、前記円すいころの大端面と滑り接触する大鍔部を有し、
前記柱部の径方向内側面に、前記小環状部から前記大環状部側へ延びている溝が形成されており、当該溝は当該小環状部の内周面で開口している、円すいころ軸受。
【請求項2】
前記導入流路は、前記小環状部の外周側に形成されている溝からなる、請求項1に記載の円すいころ軸受。
【請求項3】
前記小環状部と前記内輪の軸方向一方側の一部との間に、軸方向一方側の軸受外部に存在する潤滑油を前記環状空間に通過可能とさせる環状の空間部が形成されている、請求項1又は2に記載の円すいころ軸受。
【請求項4】
前記内輪及び前記外輪それぞれと前記大環状部との間に隙間が形成されている、請求項1〜いずれか一項に記載の円すいころ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円すいころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
円すいころ軸受は、各種機械に広く用いられており、その一例として、普通自動車のデフピニオン用の軸受に用いられている。普通自動車の場合、各部の回転抵抗の低減が燃料消費低減に貢献することから、特に走行駆動系に用いられる円すいころ軸受において低トルク化が要求されている。円すいころ軸受が回転した際に生じる抵抗には、潤滑油の撹拌抵抗が含まれることから、普通自動車のデフピニオン用として円すいころ軸受を用いる場合、軸受内部に過剰な潤滑油が供給されないように、保持器によって潤滑油の流入を制限しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的に説明すると、円すいころ軸受では、回転すると軸方向一方側(図7では左側)から他方側(図7では右側)へ潤滑油を流すポンプ作用が発生することから、軸方向一方側の軸受外部における潤滑油が内輪91と外輪92との間の軸受内部(環状空間96)に流入するのを抑制するために、保持器93が有する小環状部94と内輪91の軸方向一方側の端部95との間の隙間を小さくしている。また、小環状部94と外輪92との間においても隙間を小さくしている。これにより、前記ポンプ作用によって環状空間96に過剰な潤滑油が供給されず、潤滑油の撹拌抵抗を低減することができ、燃料消費低減に貢献することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−202341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
普通自動車と異なり、例えばホイールローダ等の建設機械は、過酷な環境で用いられる場合が多いことから、このような建設機械用の円すいころ軸受では、軸受回転時の潤滑油の撹拌抵抗の低減よりも低昇温化が望まれている。また、このような建設機械では、普通自動車よりも、前進後退の進行方向の切り替えが頻繁に行われることから、デフピニオン等の走行駆動系に用いられる円すいころ軸受では、正転逆転が頻繁に切り替わる。この場合、内輪と外輪との間に設けられている円すいころの姿勢が不安定であると、円すいころがスキューして滑り等の発生により軌道面の損傷の原因となる。更に、建設機械は、普通自動車のような定期的なメンテナンスが行われない場合が多く、潤滑油が消費されて少ない環境になることがある。潤滑油が少ない環境で使用され、円すいころ軸受に潤滑油が供給されないと、温度が上昇し、焼き付き等の原因となる。
【0006】
そこで、本発明は、円すいころを安定して保持することが可能であると共に、軸受の昇温を抑えることが可能となる円すいころ軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の円すいころ軸受は、軸方向一方側から他方側に向かって拡径する円すい状の内軌道面を外周側に有する内輪と、軸方向一方側から他方側に向かって拡径する円すい状の外軌道面を内周側に有する外輪と、前記内輪と前記外輪との間に形成されている環状空間に設けられ前記内軌道面及び前記外軌道面を転動する複数の円すいころと、複数の前記円すいころを保持している環状の保持器と、を備え、前記保持器は、前記円すいころの軸方向一方側に位置している小環状部と、前記円すいころの軸方向他方側に位置している大環状部と、前記小環状部と前記大環状部とを連結している複数の柱部と、を有し、当該保持器は前記外輪の内周面に接触可能であり当該接触により径方向の位置決めがされ、前記小環状部には、軸方向一方側の軸受外側から前記環状空間に潤滑油を導入可能とする導入流路が形成されている。
【0008】
この円すいころ軸受によれば、軸受回転の際、保持器は外輪により径方向の位置決めがされ安定して回転することができ、このような保持器により円すいころが保持されることから、円すいころ軸受が正転逆転を繰り返すような回転機械に用いられた場合であっても、円すいころの挙動を安定させスキューの発生を低減することができる。このように保持器を外輪により位置決めするためには、外輪と保持器との隙間を狭くする必要があり、これにより軸受外側の潤滑油が外輪と保持器との間を通って前記環状空間に入り難いが、前記円すいころ軸受では、小環状部に前記導入流路が形成されていることで環状空間に潤滑油を導入することができる。以上より、外輪により案内される保持器によって、円すいころを安定して保持することが可能であると共に、潤滑油を内輪と外輪との間の環状空間に導入して潤滑性を確保することができ、軸受の昇温を抑えることが可能となる。
【0009】
なお、円すいころ軸受は回転すると軸方向一方側から他方側へ潤滑油を流す作用(ポンプ作用)を生じさせるが、この作用により、前記導入流路を通じて環状空間に潤滑油を導入することができ、また、円すいころ軸受の回転が停止している状態でも、軸方向一方側に存在する潤滑油が、自重によって前記導入流路を通じて環状空間へ流れることができる。このため、周囲の潤滑油が少なくなっていても、その少ない潤滑油を可及的に環状空間に導入し、潤滑に寄与させ、軸受の昇温を抑えることが可能となる。
【0010】
また、前記導入流路は、前記小環状部の外周側に形成されている溝からなるのが好ましく、この場合、円すいころ軸受は、保持器の小環状部の外周面と外輪の内周面との間の一部(導入流路)から、潤滑油を環状空間に導入することができる。
【0011】
また、前記小環状部と前記内輪の軸方向一方側の一部との間に、軸方向一方側の軸受外部に存在する潤滑油を前記環状空間に通過可能とさせる環状の空間部が形成されているのが好ましい。この場合、保持器の小環状部と内輪との間からも、潤滑油を環状空間に導入することができる。
【0012】
また、前記内輪は、軸方向他方側に、前記円すいころの大端面と滑り接触する大鍔部を有し、前記柱部の径方向内側面に、前記小環状部から前記大環状部側へ延びている溝が形成されており、当該溝は当該小環状部の内周面で開口しているのが好ましい。この場合、軸方向一方側の潤滑油が、小環状部の内周面で開口している溝に入り、この溝に沿って軸方向他方側に流れることができる。これにより、溝に沿って流れた潤滑油を、円すいころと内輪の大鍔部との間の滑り接触部に供給し易くなり、これら円すいころと大鍔部との間の潤滑に寄与させることができ、昇温を効果的に抑制することが可能となる。
【0013】
また、前記保持器には、前記小環状部と前記大環状部との間であって周方向で隣り合う前記柱部の間に前記円すいころを収容するポケットが形成されており、前記ポケットの周方向位置と前記導入流路の周方向位置とが一致しているのが好ましい。この場合、導入流路を通じて導入された潤滑油がポケットに供給され易くなり、内輪、外輪及びポケットそれぞれと、円すいころとの間の潤滑性を高めることができる。
【0014】
また、前記内輪及び前記外輪それぞれと前記大環状部との間に微小隙間が形成されているのが好ましい。この場合、前記環状空間の軸方向他方側を大環状部が(微小隙間は存在するが)塞ぐことが可能となる。これにより、環状空間に導入させた潤滑油が軸方向他方側の軸受外部へ流出するのを抑制することができる。この結果、環状空間の潤滑油を有効に活用することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の円すいころ軸受によれば、円すいころを安定して保持すると共に、軸受の昇温を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】円すいころ軸受の実施の一形態を示す断面図である。
図2】保持器の斜視図である。
図3図1に示す断面図から円すいころを取り除いた断面図である。
図4図1のV矢視の図である。
図5】保持器の柱部の径方向内側を示す拡大図である。
図6】円すいころ軸受の軸方向他方側を示す拡大断面図である。
図7】従来の円すいころ軸受の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は円すいころ軸受の実施の一形態を示す断面図である。この円すいころ軸受10は、例えばホイールローダ等の建設機械のデフピニオンに用いられ、ハウジング81内において、ピニオンと共に回転する軸82を回転可能として支持する。ハウジング81内には、潤滑油(オイル)が溜められており、この潤滑油は円すいころ軸受10の潤滑に用いられる。なお、以下に説明する円すいころ軸受10の用途は、他であってもよい。
【0018】
円すいころ軸受10は、内輪2と、外輪3と、複数の円すいころ4と、保持器5とを備えている。内輪2、外輪3、及び保持器5は、共通する軸線Cを中心とする環状の部材である。
【0019】
内輪2は、軸受鋼や機械構造用鋼等を用いて形成されており、その外周側に、複数の円すいころ4が転動する内軌道面12を有している。内軌道面12は、軸方向一方側(図1では左側)から軸方向他方側(図1では右側)に向かって拡径する円すい状(テーパ形状)となっている。内輪2は、内軌道面12の軸方向一方側に設けられ径方向外側に突出する小鍔部14と、内軌道面12の軸方向他方側に設けられ径方向外側に突出する大鍔部15と、小鍔部14から軸方向一方側に延びている円筒部17とを有している。
【0020】
外輪3は、軸受鋼や機械構造用鋼等を用いて形成されており、その内周側に、前記内軌道面12に対向し複数の円すいころ4が転動する外軌道面13を有している。外軌道面13は、軸方向一方側から軸方向他方側に向かって拡径する円すい状(テーパ形状)となっている。
【0021】
円すいころ4は、軸受鋼等を用いて形成された部材である。円すいころ4は、内輪2と外輪3との間に形成されている環状空間7に設けられており、内軌道面12及び外軌道面13を転動可能である。円すいころ4は、軸方向一方側に直径の小さい小端面18を有し、軸方向他方側に直径の大きい大端面19を有している。大端面19は、内輪2の大鍔部15の鍔面(側面)16と接触しており、円すいころ軸受10(本実施形態では内輪2)が回転すると、大端面19と鍔面16とは滑り接触する。
【0022】
保持器5は、環状空間7に複数の円すいころ4と共に設けられており、これら複数の円すいころ4を保持している。図2は、保持器5の斜視図である。図1及び図2において、保持器5は、円すいころ4の軸方向一方側に位置している環状の小環状部21と、円すいころ4の軸方向他方側に位置している環状の大環状部22と、これら小環状部21と大環状部22とを連結している複数の柱部23とを有している。大環状部22は小環状部21よりも外径が大きく、本実施形態では内径も大きい。柱部23は、周方向に間隔をあけて設けられている。小環状部21と大環状部22との間であって周方向で隣り合う二つの柱部23,23の間に形成される空間が、円すいころ4を収容(保持)するポケット24となる。なお、周方向とは、円すいころ軸受10の軸線C回りの方向である。本実施形態の保持器5は樹脂製(合成樹脂製)であり、射出成形によって成形されている。
【0023】
円すいころ軸受10では、軸受(内輪2)が回転すると、軸方向一方側から軸方向他方側へ潤滑油が流れるポンプ作用が発生する。この発生のメカニズムは、次のとおりである。環状空間7に存在する潤滑油及びエアは、軸受の回転に起因する遠心力によって径方向外側に向かう力成分を有する。外輪3の外軌道面13は前記のとおり円すい形状であることから、環状空間7の潤滑油及びエアは外軌道面13に沿って軸方向他方側へ流れる。この流れが発生すると、軸方向一方側の軸受外部に存在している潤滑油及びエアを環状空間7に引き込む作用が発生する。これにより、円すいころ軸受10には、軸方向一方側から軸方向他方側へ潤滑油が流れるポンプ作用が生まれる。
【0024】
図3は、図1に示す断面図から円すいころ4を取り除いた断面図である。保持器5は、柱部23の軸方向一方側であってその径方向外側(外輪3側)に、外輪3の内周面(外軌道面13)の一部に接触可能である第一ガイド面31を有している。また、保持器5は、柱部23の軸方向他方側であってその径方向外側(外輪3側)に、外輪3の内周面(外軌道面13)の他部に接触可能である第二ガイド面32を有している。第一ガイド面31と第二ガイド面32との間は、外輪3の内周面から離れている凹面33となっている。
【0025】
保持器5と外輪3とが同心状に配置された状態(図3に示す状態)では、第一ガイド面31と外輪3の内周面との間には微小隙間が形成されており、また、第二ガイド面32と外輪3の内周面との間には微小隙間が形成されている。これに対して、外輪3に対して保持器5が径方向に変位すると、第一ガイド面31は外輪3の内周面に接触し、第二ガイド面32は外輪3の内周面に接触することができる。以上より、この保持器5は、外輪3の内周面に接触可能であり、この接触により径方向の位置決めがされる。つまり、この円すいころ軸受10は、外輪3により保持器5が案内される外輪案内の軸受である。
【0026】
図3に示すように、保持器5の小環状部21には、導入流路35が形成されている。この導入流路35は、軸方向一方側の軸受外側から環状空間7に潤滑油を導入可能とする流路である。導入流路35は、小環状部21を軸方向に貫通する孔(図示せず)であってもよいが、本実施形態の導入流路35は、小環状部21の外周側に形成されている溝からなる。つまり、小環状部21の外周面は、図2に示すように、周方向に沿って凹凸形状となっており、凹部が前記導入流路35となっている。なお、凹凸形状の内の凸部36の外周面37が、前記第一ガイド面31と連続しており、これら外周面37と第一ガイド面31とで一つの径方向外側面38が構成されている。この径方向外側面38の一部が、保持器5を外輪案内とするために、外輪3の内周面と接触可能となる。
【0027】
前記のとおり(図2参照)、保持器5には周方向に沿って複数のポケット24が形成されており、これらポケット24それぞれの周方向位置と、導入流路35の周方向位置とが一致している。つまり、導入流路35は、ポケット24で開口している。
以上のように、導入流路35は、小環状部21の外周面において軸方向に形成された溝であり、図3に示すように、軸方向一方側の軸受外部に向かって開口していると共に、環状空間7(ポケット24)で開口している。このため、保持器5の前記径方向外側面38が、外輪3の内周面の一部に接触した状態であっても、軸方向一方側の潤滑油は導入流路35を通じて環状空間7(ポケット24)に流入することが可能となる。
【0028】
図4は、図1のV矢視の図(保持器5及びその周囲を円すいころ4の中心線に沿った方向から見た斜視図)である。導入流路35は、円すいころ4の中心線に略平行な方向に沿って直線的に形成されており、図4に示すように、軸方向一方側の軸受外部から導入流路35を通して円すいころ4の一部が見える。本実施形態では、導入流路35は、その深さ(溝深さ)hが溝長手方向(軸受外部から環状空間7に向かう方向)に沿って一定であり、深さhよりも幅方向(周方向)Bに広い偏平形状の溝からなる。深さhは、軸方向一方側の潤滑油が自重によって導入流路35を通過可能となる値に設定されており、例えば、深さhを1ミリメートルとすることができる。なお、導入流路35の断面形状は、図4に示す矩形以外の形状であってもよい。
【0029】
図1及び図3に示すように、保持器5の小環状部21と外輪3とは接近しているが(又は接触可能であるが)、小環状部21と内輪2とは離れており、これら小環状部21と内輪2の軸方向一方側の円筒部17(一部)との間に、環状の空間部25が形成されている。この空間部25の径方向寸法S(図3参照)は、小環状部21の凸部36の外周面37と外輪3の外軌道面13との間に形成される隙間の径方向寸法よりも大きく、空間部25は、軸方向一方側の軸受外部に存在する潤滑油を環状空間7に通過可能とさせる。図3において、空間部25の径方向寸法Sは、例えば、内輪2(円筒部17)の外周面17aと外輪3の内径が最小となる円筒面3aとの間の径方向寸法Pの30%以上であり60%未満とすることができる。
【0030】
図5は、保持器5の柱部23の径方向内側を示す拡大図である。図2図3及び図5に示すように、各柱部23の径方向内側面には、小環状部21から大環状部22側へ延びている溝26が形成されている。溝26の軸方向一方側の端部26aは、小環状部21の内周面29で開口している。つまり、溝26の軸方向一方側の端部26aは、小環状部21の内周面29と繋がっている。軸方向他方側において、柱部23の径方向内側には、大環状部22の内周面28と連続する柱内側面27が形成されており、溝26はこの柱内側面27と繋がっている。このため、図3において、保持器5の小環状部21の内周側に存在し前記ポンプ作用によって軸方向他方側に流れる潤滑油は、溝26に進入することができ、この溝26に沿って流れる。そして、溝26に沿って流れた潤滑油は、柱内側面27に到達する。内輪2の大鍔部15と大環状部22とは接近しており、大環状部22の内周面28と大鍔部15の外周面15aとの間には微小隙間8が形成され、潤滑油の通りぬけが阻害される構成となっている。このため、保持器5の柱部23の溝26に沿って流れ柱内側面27に到達した潤滑油のほとんどは、微小隙間8を通らずに環状空間7に留まることができ、特に、柱内側面27に到達した潤滑油は、大鍔部15の鍔面16と円すいころ4(図1参照)の大端面19との間に供給される。前記のとおり、軸受が回転すると、鍔面16と大端面19とは滑り接触することから、前記溝26を通じて供給された潤滑油は、この滑り接触部の潤滑に寄与することができる。
【0031】
図1において、前記のとおり、内輪2の大鍔部15の外周面15aは円筒面からなり、保持器5の大環状部22の内周面28は円筒面からなり、これら円筒面は径方向に微小隙間8を有して対向している。
また、外輪3側について説明すると、保持器5の大環状部22の外周面30と、円すいころ4の大端面19が対向するポケット側面39とは交差しており、図6の拡大断面図に示すように、これら外周面30とポケット側面39とは鋭角で交差している。外周面30とポケット側面39との交差部40は、外輪3の内周面(外軌道面13)の径方向内側に位置している。交差部40と外輪3の内周面(外軌道面13)とは接近しており、これらの間に微小隙間9が形成されている。このため、内輪2側の微小隙間8(図1参照)と同様に、外輪3側の微小隙間9(図6参照)により、環状空間7に存在している潤滑油の通りぬけが阻害される。つまり、環状空間7において前記ポンプ作用により軸方向他方側へ向かって流れる潤滑油は、微小隙間9を通過するよりも、ポケット側面39に沿って流れやすく、この結果、環状空間7に留まることができる。更に、ポケット側面39に沿って流れた潤滑油は、その延長上に位置する大鍔部15(図1参照)の鍔面16に誘導され、前記滑り接触部の潤滑に寄与することができる。
【0032】
前記のような各構成を備えている円すいころ軸受10によれば(図1参照)、円すいころ4を安定して保持することができると共に、軸受の昇温を抑えることが可能となる。すなわち、保持器5は外輪3により案内される外輪案内の軸受であるため、軸受回転の際、保持器5は安定して回転することができる。このように安定した保持器5によって複数の円すいころ4は保持されることから、円すいころ軸受10が頻繁に正転逆転を繰り返すような回転機械(ホイールローダ等の建設機械の走行駆動系)に用いられた場合であっても、転動体案内の軸受と比較して、円すいころ4の挙動を安定させスキューの発生を低減することができる。なお、前記の転動体案内の軸受とは、保持器が円すいころにより径方向の位置決めがされる軸受である。
そして、このように保持器5を外輪3により位置決めするためには、外輪3と保持器5との隙間を狭くする必要があり、これにより軸方向一方側の軸受外側の潤滑油が、外輪3と保持器5との間を通って環状空間7に入り難いが、本実施形態の円すいころ軸受10では、小環状部21に導入流路35が形成されていることで環状空間7に潤滑油を導入することができる。
このように、本実施形態の円すいころ軸受10によれば、保持器5が外輪3により径方向の位置決めがされる構成を有し、円すいころ4を安定して保持することが可能であると共に、軸方向一方側の潤滑油を導入流路35によって内輪2と外輪3との間の環状空間7に導入して、円すいころ軸受10の潤滑性を確保することができる。
【0033】
外輪3の軸方向一方側の円筒面3aに対して、この円筒面3aに対向する小環状部21の外周面は、軸方向一方側に向かって縮径する円すい状(テーパ状)となっている。このため、円筒面3aと小環状部21の外周面との間に形成される環状の空間41は、軸方向一方側に向かって広くなっている。この構成によれば、軸方向一方側の軸受外部に存在している潤滑油を、この空間41に取り入れやすくなり、そして、この空間41を構成している小環状部21の外周面に導入流路35が形成されていることから、空間41に取り入れた潤滑油を、効率よく導入流路35を通じて環状空間7へ導入させることが可能となる。
【0034】
そして、円すいころ軸受10の軸方向他方側に着目すると、前記のとおり、内輪2の大鍔部15と保持器5の大環状部22との間には微小隙間8が形成されていると共に、この大環状部22と外輪3との間にも微小隙間9が形成されており、環状空間7の軸方向他方側を大環状部22が(微小隙間8,9は存在するが)塞ぐことが可能となる。これにより、環状空間7に導入させた潤滑油が軸方向他方側の軸受外部へ流出するのを抑制することができる。この結果、円すいころ軸受10の周囲が潤滑油の少ない環境であっても、環状空間7に導入した潤滑油を有効に活用することが可能となる。
【0035】
前記のとおり、円すいころ軸受10は回転すると軸方向一方側から他方側へ潤滑油を流す作用(ポンプ作用)を生じさせるが、この作用により、導入流路35を通じて環状空間7に潤滑油を導入することができる。また、円すいころ軸受10の回転が停止している状態でも、軸方向一方側に存在する潤滑油が、自重によって導入流路35を通じて環状空間7へ流れることができる。このため、周囲の潤滑油が少なくなっていても(例えば、ハウジング81に溜められている潤滑油の油面Fが図1に示す位置であっても)その少ない潤滑油を可及的に環状空間7に導入し、潤滑に寄与させ、円すいころ軸受10の昇温を抑えることが可能となる。
【0036】
また、円すいころ軸受10の周囲の潤滑油が比較的多い場合、つまり、油面Fが図1に示す位置(小環状部21の内周面29)よりも上である場合、小環状部21と内輪2(円筒部17)との間に環状の空間部25が形成されていることから、小環状部21と内輪2との間からも、潤滑油を環状空間7に導入することができる。
【0037】
また、保持器5(図3参照)の柱部23の径方向内側面に溝26が形成されており、この溝26は小環状部21の内周面29で開口しているので、軸方向一方側の潤滑油が、溝26に入り、この溝26に沿って軸方向他方側に流れることができる。これにより、溝26に沿って流れた潤滑油を、円すいころ4と内輪2の大鍔部15との間の滑り接触部に供給し易くなり、これら円すいころ4と大鍔部15との間の潤滑に寄与させることができ、昇温を効果的に抑制することが可能となる。なお、円すいころ4と大鍔部15とは滑り接触することから、これらの間が軸受回転時の発熱の原因部位となるが、この原因部位に潤滑油を供給することで、発熱を効果的に抑制することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態では、図2により説明したように、保持器5のポケット24それぞれの周方向位置と、導入流路35の周方向位置とが一致していることから、導入流路35を通じて導入された潤滑油がポケット24に供給され易くなり、内輪2、外輪3及びポケット24それぞれと、円すいころ4との間の潤滑性を高めることができる。
【0039】
以上のように、導入流路35及び環状の空間部25の一方又は双方により、潤滑油を環状空間7に効果的に取り込むことができ、軸受内部全体の潤滑性を向上させることが可能となり、また、発熱が特に大きくなる内輪2の大鍔部15の鍔面16に対する潤滑油の供給を、溝26により促進することができ、この結果、円すいころ軸受10の昇温を抑えることが可能となる。
【0040】
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の円すいころ軸受は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
前記実施形態では、円すいころ軸受10は、建設機械のデフピニオン用とした場合について説明したが、その他の回転機械に用いられてもよい。
【符号の説明】
【0041】
2:内輪 3:外輪 4:円すいころ
5:保持器 7:環状空間 8:微小隙間
9:微小隙間 10:円すいころ軸受 12:内軌道面
13:外軌道面 15:大鍔部 19:大端面
21:小環状部 22:大環状部 23:柱部
24:ポケット 25:空間部 26:溝
35:導入流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7