(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面に屈折率1.45以下のオーバーコート層を有し、前記オーバーコート層側の表面が前記凹凸面である請求項1〜4の何れか1項に記載のタッチパネル用筆記シート。
表面にシートを有するタッチパネルであって、前記シートとして、請求項1〜5の何れか1項に記載のタッチパネルペン用筆記シートの前記凹凸面がタッチパネルの表面を向くように配置してなるタッチパネル。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のタッチパネルペン用筆記シート、タッチパネル、表示装置、及びタッチパネルペン用筆記シートの選別方法の実施の形態を説明する。
【0015】
[タッチパネルペン用筆記シート]
本発明のタッチパネルペン用筆記シートは、少なくとも一方の表面が凹凸面であり、前記凹凸面が下記条件1−1及び条件1−2を満たすものである。
以下、タッチパネルペン用筆記シートのことを「筆記シート」と称する場合がある。
【0016】
<条件1−1>
前記タッチパネル用筆記シートの前記凹凸面とは反対側の面に、透明粘着剤層を介して黒色板を貼り合わせたサンプルを作製する。前記サンプルの前記凹凸面側に向けて、法線から+15度の角度で可視光線を照射し、反射光の反射強度を測定する。反射強度の測定では、前記可視光線の正反射方向である法線から−15度の方向を基準角度(0度)として、基準角度を含む−12度〜+12度の方向の反射強度を1度ごとに測定する。基準角度からプラス方向側の角度であって、基準角度の反射強度の1/2以下の反射強度に最初に到達する角度を+α
15、基準角度からマイナス方向側の角度であって、基準角度の反射強度の1/2以下の反射強度に最初に到達する角度を−α
15とする。−α
15の絶対値と、+α
15との平均をα
15とした際に、4.5度≦α
15の関係を示す。
【0017】
<条件1−2>
前記サンプルの前記凹凸面側に向けて、法線から+75度の角度で可視光線を照射し、反射光の反射強度を測定する。反射強度の測定では、前記可視光線の正反射方向である法線から−75度の角度を基準角度(0度)として、基準角度を含む−12度〜+12度の範囲の反射強度を1度ごとに測定する。基準角度からプラス方向側の角度であって、基準角度の反射強度の1/2以下の反射強度に最初に到達する角度を+α
75、基準角度からマイナス方向側の角度であって、基準角度の反射強度の1/2以下の反射強度に最初に到達する角度を−α
75とする。−α
75の絶対値と、+α
75との平均をα
75とした際に、α
75と前記α
15とが、α
15/α
75≦4.5の関係を示す。
【0018】
<条件1−1及び条件1−2>
本発明のタッチパネルペン用筆記シートは、少なくとも一方の表面が凹凸面であり、該凹凸面が上記条件1−1及び条件1−2を満たすものである。
まず、
図3を引用して、条件1−1の反射強度の測定方法を説明する。
【0019】
まず、タッチパネル用筆記シート10の凹凸面とは反対側の面に、透明粘着剤層20を介して黒色板30を貼り合わせたサンプル100を作製する(
図3)。
サンプル100は、界面反射を防止するため、筆記シート10の透明粘着剤層と接する部材(基材、易接着層等)と透明粘着剤層20との屈折率差を0.15以内とすることが好ましく、0.10以内とすることがより好ましい。
また、黒色板は、JIS K7361−1:1997の全光線透過率が1%以下のものが好ましく、0%のものがより好ましい。
【0020】
次に、サンプル100の凹凸面側に向けて、サンプルの法線方向から+15度の角度で可視光線を照射し、反射光の反射強度を測定する。
図3の符号40がサンプルの法線、符号41がサンプル100の凹凸面側に向けて照射される可視光線に該当する。
反射強度の測定では、可視光線の正反射方向である法線から−15度の角度を基準角度(0度)として、基準角度を含む−12度〜+12度の範囲の反射強度を1度ごとに測定する。
図3の符号42が可視光線の正反射方向(≒基準角度の方向)に該当し、符号43が示す範囲が反射強度の測定範囲(≒基準角度を含む−12度〜+12度の範囲)に該当する。
【0021】
反射強度は、例えば、変角光度計(ゴニオフォトメーター)で測定することができる。具体的には、変角光度計の受光器を1度ごとに走査して、基準角度を含む−12度〜+12度の範囲の反射強度を測定する。反射強度を測定する際は光源の明るさを一定とする。また、反射強度を測定する際は、受光器の絞りにより検出する受光器の開口角を1度とする。このため、例えば、基準角度(0度)の測定では−0.5度〜+0.5度の範囲を測定し、+1度の測定では0.5度〜1.5度の範囲を測定し、−1度の測定では−0.5度〜−1.5度の範囲を測定することになる。
変角光度計としては、例えば、日本電色工業社製の商品名GC5000L(光束径:約3mm、光束内傾斜角:0.8度以内、光源:ハロゲンランプ)が挙げられる。
なお、条件1−2の反射強度は、可視光線の照射角度をサンプルの法線から+75度に変更し、さらに、可視光線の正反射方向である法線から−75度の角度を基準角度(0度)と変更する以外は、上述した方法に準じて測定することができる。
【0022】
次に、条件1−1及び条件1−2の技術的意義について説明する。
人間が書き味を良好に感じる例として、紙に鉛筆で筆記する際の書き味が挙げられる。紙の表面では多くの繊維が絡み合っており、筆記具が繊維を乗り越える際に適度な摩擦が生じ、人間は心地よい書き味を感じる。このため、筆記シートの表面形状を適度に凹凸化することにより、筆記シートの書き味を良好にし得ると考えられる。
表面形状に関するJIS規格(JIS B0601)は、接触式の表面形状測定器を用いて表面形状を測定することを定めている。しかし、触針の形状と表面形状との関係から、測定結果が表面形状を正確に反映できない場合がある。そこで、本発明者らは、反射強度によって表面形状を間接的に表すことを見出した。
【0023】
条件1−1は、照射角度を法線から+15度とした際の反射強度に関するパラメータ(α
15)である。筆記シートの表面が略平滑な場合、該シートに法線から+15度の角度で可視光線を照射した場合、反射光の殆どは正反射方向に向かう。一方、筆記シートの表面が凹凸面の場合、反射光は凹凸面の傾斜により拡散される。また、凹凸の程度が大きいほど、拡散の度合いは大きくなる。
図4の実線は、実施例1の筆記シートから作製したサンプルの凹凸面に、法線から+15度の角度で可視光線を照射した際の反射強度分布図であり、
図4の破線は、比較例2の筆記シートから作製したサンプルの凹凸面に、法線から+15度の角度で可視光線を照射した際の反射強度分布図である。後述する実施例において、実施例1及び比較例2の筆記シートの表面粗さを示すが、比較例2の筆記シートよりも実施例1の筆記シートは、算術平均粗さRaが大きい。そして、
図4の実線(実施例1)と、
図4の破線(比較例2)とを比べると、表面粗さが大きい方が、大きな角度に拡散する割合が多いことが分かる。
なお、
図4の実線及び破線は、何れも反射強度の最大値を100として、各角度の反射強度を規格化している。また、
図4の反射強度分布図は、可視光線の正反射方向(サンプルの法線から−15度の角度)を基準角度(0度)としている。
【0024】
また、
図4では、実線の+α
15が+7.5度、実線の−α
15が−8.8度、破線の+α
15が+1.7度、破線の−α
15が−2.2度と算出できる。そして、−α
15の絶対値と、+α
15との平均値である「α
15」は、実線のα
15が8.2度、破線のα
15が1.9度である。つまり、表面粗さが大きく反射光が大きな角度に拡散する割合が多いと、α
15が大きくなる。
+α
15及び−α
15、並びに、後述する+α
75及び−α
75は、1度ごとの反射強度の値の直線補間による近似曲線で作成した強度分布図から読み取ることができる。
なお、本明細書において、上記α
15、並びに、後述するα
75、S
15、S
75及びP
12は、10回測定した平均値とする。
【0025】
条件1−1では、4.5度≦α
15であることを要求している。α
15が4.5度未満の場合、凹凸が不十分であり、書き味を良好にすることができない。なお、凹凸が大きすぎる場合、表示素子の視認性、耐磨耗性及び触感の低下を招いたり、タッチパネルペンが摩耗しやすくなる場合がある。このため、α
15は、4.5度≦α
15≦12.0度であることが好ましく、6.0度≦α
15≦10.5度であることがより好ましく、7.5度≦α
15≦9.0度であることがさらに好ましい。
【0026】
条件1−2は、照射角度を法線から+15度とした際の反射強度に関するパラメータ「α
15」と、照射角度を法線から+75度とした際の反射強度に関するパラメータ「α
75」との比(α
15/α
75)が所定の値であることを示している。
筆記シートの表面が略平滑な場合、筆記シートに法線から+15度の角度で可視光線を照射した際の反射強度分布図と、筆記シートに法線から+75度の角度で可視光線を照射した際の反射強度分布図とは、略同一となる。しかし、筆記シートの表面が凹凸面である場合、凹凸の程度が大きくなるほど、+15度の反射強度分布図と、+75度の反射強度分布図とは、分布の形状が大きく相違する。
【0027】
+15度の反射強度分布図と、+75度の反射強度分布図との形状が大きく違う理由は、以下のように説明できる。
例えば、凹凸面の任意の箇所に適切な凹凸領域Aが存在し、該領域Aの隣に急峻な山を有する凹凸領域Bが存在したとする。領域B側から可視光線が進んでくることを前提とした場合、+15度の可視光線は、領域Bの急峻な山に入射する確率が小さく、隣の領域Aに入射する確率が大きい一方で、+75度の可視光線は、領域Bの急峻な山に入射する確率が高く、隣の領域Aに入射する確率が小さい。そして、急峻な山に入射した可視光線は、基準角度を含む−12度〜+12度の方向には原則として反射しないため、両者の反射強度分布に違いが生じる。
したがって、+15度の反射強度分布図と、+75度の反射強度分布図との形状が近い場合、凹凸の中に急峻な山が少なく、全体がなだらかな凹凸であることを示し、逆に、+15度の反射強度分布図と、+75度の反射強度分布図との形状が大きく異なる場合、凹凸の中に急峻な山が多いことを示すことになる。
【0028】
図5の実線は、実施例1の筆記シートから作製したサンプルの凹凸面に、法線から+15度の角度で可視光線を照射した際の反射強度分布図であり、
図5の破線は、実施例1の筆記シートから作製したサンプルの凹凸面に、法線から+75度の角度で可視光線を照射した際の反射強度分布図である。
図6の実線は、比較例3の筆記シートから作製したサンプルの凹凸面に、法線から+15度の角度で可視光線を照射した際の反射強度分布図であり、
図6の破線は、比較例3の筆記シートから作製したサンプルの凹凸面に、法線から+75度の角度で可視光線を照射した際の反射強度分布図である。
なお、
図5及び
図6の実線及び破線は、何れも反射強度の最大値を100として、各角度の反射強度を規格化している。また、
図5及び
図6の反射強度分布図は、可視光線の正反射方向(サンプルの法線から−15度又は−75度の角度)を基準角度(0度)としている。
【0029】
実施例1の筆記シートの算術平均粗さRaが0.61μmである一方で、比較例3の筆記シートの算術平均粗さRaは0.55μmであり、両者の粗さの程度は同程度である。しかし、後述する実施例に示すように、比較例3の筆記シートは実施例1の筆記シートよりも、凹凸の平均間隔Sm及び局部山頂平均間隔Sが小さい。つまり、比較例3の筆記シートの凹凸形状は、実施例1の筆記シートの凹凸形状よりも短い周期で同等の高さを付与しているため、急峻な凹凸が多いことになる。このため、
図5に示すように、実施例1の反射強度分布図は、+15度照射と+75度照射との形状に大きな違いが確認されない一方で、比較例3の筆記シートの反射強度分布図は、+15度照射と+75度照射との形状に大きな違いが確認されることになる。
【0030】
条件1−2では、α
15/α
75が4.5以下であることを要求している。α
15/α
75が4.5を超えることは、凹凸の中に急峻な山が多く存在することを意味している。そして、凹凸の中に急峻な山が多く存在すると、筆記シートの表面についた埃、指紋等を布等で拭取る際に、急峻な山を形成する粒子が起点となって粒子及び樹脂の部分的な剥離が生じやすくなり、白化が生じ、耐摩耗性を良好にすることができない。また、凹凸の中に急峻な山が多く存在すると、タッチパネルペンの摩耗が進みやすくなる。
α
15/α
75は、3.0以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましく、1.3以下であることがよりさらに好ましい。なお、α
15/α
75は1.0超であることが好ましい。
【0031】
また、本発明の筆記シートは、さらに、下記条件1−3を満たすことが好ましい。
<条件1−3>
前記条件1−1において測定した「サンプルの法線から+15度の角度で照射した可視光線の反射強度」の最大値を100として、各角度の反射強度を規格化する。規格化した各角度の反射強度の総和をS
15とする。
前記条件1−2において測定した「サンプルの法線から+75度の角度で照射した可視光線の反射強度」の最大値を100として、各角度の反射強度を規格化する。規格化した各角度の反射強度の総和をS
75とする。
S
15とS
75とが、S
15/S
75≦2.0の関係を示す。
【0032】
条件1−3を満たすことにより、筆記シートの耐摩耗性をより良好にすることができるとともに、タッチパネルペンの摩耗を抑制しやすくできる。
S
15/S
75は、1.8以下であることがより好ましく、1.6以下であることがさらに好ましく、1.4以下であることがよりさらに好ましい。
【0033】
また、本発明の筆記シートは、さらに、下記条件1−4を満たすことが好ましい。
<条件1−4>
前記条件1−1において測定した「サンプルの法線から+15度の角度で照射した可視光線の反射強度」の最大値を100として、各角度の反射強度を規格化する。前記条件1−1において設定した基準角度(0度)に対して、−12度の規格化した反射強度と、+12度の規格化した反射強度との平均値をP
12とする。
P
12が、10.0≦P
12の関係を示す。
【0034】
P
12を10.0以上とすることにより、凹凸が大きくなり、書き味をより良好にすることができる。なお、凹凸が大きすぎる場合、表示素子の視認性、耐磨耗性及び触感の低下を招いたり、タッチパネルペンが摩耗しやすくなる場合がある。このため、P
12は、20.0≦P
12≦45.0であることがより好ましく、25.0≦P
12≦35.0であることがさらに好ましい。
【0035】
また、本発明の筆記シートは、下記条件2−1を満たすことが好ましい。
<条件2−1>
JIS K7136:2000のヘイズが25.0%以上
【0036】
ヘイズを25.0%以上とすることにより、ギラツキ(映像光に微細な輝度のばらつきが見える現象)を抑制しやすくできる。
ギラツキ抑制の観点から、ヘイズは35.0%以上であることがより好ましく、45.0%以上であることがさらに好ましい。また、表示素子の解像性の低下の抑制の観点から、ヘイズは90.0%以下であることが好ましく、70.0%以下であることがより好ましく、65.0%以下であることがさらに好ましく、63.0%以下であることがよりさらに好ましい。
ヘイズ及び後述の全光線透過率を測定する際は、条件1−1及び条件1−2を満たす凹凸面とは反対側の表面から光を入射するものとする。筆記シートの両面が条件1−1及び条件1−2を満たす場合、光入射面はどちらの面であってもよい。なお、ヘイズ及び全光線透過率は、10回測定した際の平均値とする。
【0037】
また、本発明の筆記シートは、下記条件2−2を満たすことが好ましい。
<条件2−2>
JIS K7361−1:1997の全光線透過率が87.0%以上
【0038】
全光線透過率を87.0%以上とすることにより、表示素子の輝度の低下を抑制できる。
全光線透過率は88.0%以上であることがより好ましく、89.0%以上であることがさらに好ましい。
【0039】
また、本発明の筆記シートは、下記条件3−1を満たすことが好ましい。
<条件3−1>
前記凹凸面の純水の接触角が94度以上。
【0040】
凹凸面の純水の接触角を94度以上とすることにより、汚れの付着を抑制しやすくできるとともに、表面に付着した塵、埃等の拭取り性を良好にしやすくでき、さらに、指で触れた際の触感(指の滑り具合)を良好にしやすくできる。また、凹凸面の純水の接触角を94度以上とすることにより、耐摩耗性を良好にしやすくでき、タッチパネルペンの摩耗も抑制しやすくできる。
凹凸面の純水の接触角は100度以上であることがより好ましく、105度以上であることがさらに好ましい。
【0041】
純水の接触角及び後述するヘキサデカンの接触角は、凹凸面に1.5μLの試料(純水又はヘキサデカン)を滴下し、着滴1秒後に、θ/2法に従って、滴下した液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、凹凸面に対する角度から算出できる。接触角は5回測定した平均値とする。また、接触角を測定する際の室内温度は20℃とする。なお、接触角を算出するに当たり、試料が接触している凹凸面の両端は直線とみなすものとする。
【0042】
また、本発明の筆記シートは、下記条件3−2を満たすことが好ましい。
<条件3−2>
前記凹凸面のヘキサデカンの接触角が40度以上。
【0043】
凹凸面のヘキサデカンの接触角を40度以上とすることにより、指紋の付着を抑制しやすくできるとともに、表面に付着した指紋の拭取り性を良好にしやすくでき、さらには、指で触れた際の触感を良好にできる。また、凹凸面のヘキサデカンの接触角を40度以上とすることにより、耐摩耗性を良好にしやすくでき、タッチパネルペンの摩耗も抑制しやすくできる。
凹凸面のヘキサデカンの接触角は50度以上であることがより好ましく、60度以上であることがさらに好ましい。
【0044】
また、本発明の筆記シートは、凹凸面の耐擦傷性を向上する観点から、凹凸面のJIS K5600−5−4:1999の鉛筆硬度が2H以上であることが好ましく、3H以上であることがより好ましく、5H以上であることがさらに好ましい。
【0045】
<筆記シート全体の構成>
本発明のタッチパネルペン用筆記シートは、少なくとも一方の表面が凹凸面であり、前記凹凸面が条件1−1及び条件1−2を満たしていれば、その構成は特に限定されない。
図1及び
図2は、本発明のタッチパネルペン用筆記シート10の一実施形態を示す断面図である。
図1のタッチパネルペン用筆記シート10は、基材1の一方の面に凹凸層2を有し、凹凸層2の表面が凹凸面となっている。
図2のタッチパネルペン用筆記シート10は、基材1の一方の面に凹凸層2、オーバーコート層3を有し、オーバーコート層3の表面が凹凸面となっている。
筆記シートは、条件1−1及び条件1−2を満たす凹凸面を筆記シートの両面に有していてもよいが、取り扱い性、表示素子の視認性の観点から、条件1−1及び条件1−2を満たす凹凸面を片面に有し、他方の面は略平滑(Ra0.02μm以下)であることが好ましい。
なお、図示しないが、本発明のタッチパネルペン用筆記シート10の構成は、基材を有さない構成であってもよい。
【0046】
凹凸面は、「エンボス、サンドブラスト、エッチング等の物理的又は化学的処理」、「型による成型」、「コーティング」等により形成することができる。これら方法の中では、表面形状の再現性の観点からは「型による成型」が好適であり、生産性及び多品種対応の観点からは「コーティング」が好適である。
【0047】
筆記シートが条件1−1及び条件1−2等を満たすためには、筆記シートの凹凸面が以下の物性(a)〜(f)を満たすことが好ましい。以下の物性(a)〜(f)は、10回の測定の平均値とする。
なお、後述するRa、Rz、θa、λa等を算出する際のカットオフ値は何れも0.8mmである。カットオフ値を0.8mmとした理由は、JIS B0633に規定されるカットオフの中から、タッチパネルペンのペン先の直径(1.0mm前後)に近い値を選択したためである。
【0048】
(a)凹凸面のJIS B0601:1994の算術平均粗さRaが0.25μm以上1.00μm以下。
(b)凹凸面のJIS B0601:1994の十点平均粗さRzが2.0μm以上4.0μm以下。
(c)凹凸面の平均傾斜角θaが3.0度以上9.5度以下。
(d)前記θa及び前記Raから、式[λa=2π×(Ra/tan(θa))]に基づき算出される平均波長λaが、40μm以上150μm以下。
(e)凹凸面のJIS B0601:1994の凹凸の平均間隔Smが48μm以上150μm以下。
(f)凹凸面のJIS B0601:1994の局部山頂平均間隔Sが20μm以上80μm以下。
【0049】
上記物性(a)〜(f)のうち、(a)〜(c)は凹凸の大きさの程度を表しており、(d)〜(f)は凹凸の周期を表している。したがって、物性(a)〜(f)を満たすことにより、所定の大きさの凹凸を有しながら、凹凸の中の急峻な山の割合を少なくすることができ、条件1−1及び条件1−2を満たしやすくできる。このため、物性(a)〜(f)を満たすことは、書き味及び耐摩耗性を良好にすることにもつながる。
また、上記物性(a)〜(f)を満たすことにより、凹凸面への指紋の付着防止性及び指で触れた際の触感を良好にしやすくできるとともに、ギラツキ及びタッチパネルペンのペン先の磨耗を抑制しやすくできる。例えば、凹凸が大きく、かつ凹凸の周期が適度な範囲であれば、指と凹凸面との接触面積が減少して、凹凸面への指紋の付着防止性及び指で触れた際の触感を良好にしやすくできる。しかし、凹凸が大きく、かつ凹凸の周期が適度な範囲であっても、凹凸が大き過ぎる場合には手触りが悪くなる。また、凹凸の大きさ及び凹凸の周期が適度な範囲であれば、タッチパネルペンのペン先が凸部の先端を滑るようにして動き、適度な書き味を有しつつ、タッチパネルペンの摩耗を抑制することができる。
【0050】
上記(a)のRaは、0.40μm以上0.75μm以下であることがより好ましく、0.50μm以上0.70μm以下であることがさらに好ましい。
上記(b)のRzは、2.5μm以上3.8μm以下であることがより好ましく、3.0μm以上3.6μm以下であることがさらに好ましい。
上記(c)のθaは、4.5度以上9.0度以下であることがより好ましく、8.5度以上7.5度以下であることがより好ましい。
上記(d)のλaは、45μm以上100μm以下であることがより好ましく、50μm以上70μm以下であることがさらに好ましい。
上記(e)のSmは、50μm以上100μm以下であることがより好ましく、50μm以上70μm以下であることがさらに好ましい。
上記(f)のSは、22μm以上50μm以下であることがより好ましく、24μm以上30μm以下であることがさらに好ましい。
【0051】
上記(d)のλaを算出する元となる「平均傾斜角θa」は、小坂研究所社製の表面粗さ測定器(商品名:SE−3400)の取り扱い説明書(1995.07.20改訂)に定義されている値であり、
図7に示すように、基準長さLに存在する凸部高さの和(h
1+h
2+h
3+・・・+h
n)のアークタンジェントθa=tan
−1{(h
1+h
2+h
3+・・・+h
n)/L}で求めることができる。
【0052】
コーティングによる凹凸面の形成は、樹脂成分、粒子及び溶剤を含有してなる凹凸層形成塗布液を、グラビアコーティング、バーコーティング等の公知の塗布方法により基材上に塗布、乾燥、硬化することにより形成できる。
コーティングにより形成した凹凸面が条件1−1及び条件1−2等を満たしやすくするためには、粒子の平均粒子径、粒子の含有量、及び凹凸層の厚み等を後述の範囲とすることが好ましい。
また、凹凸の中の急峻な山の割合を少なくして条件1−2を満たしやすくする観点からは、凹凸層上にオーバーコート層を有することが好ましい。凹凸層上にオーバーコート層を形成することにより、凹凸層の溝が部分的に埋まり、条件1−2を満たしやすくすることができる。
【0053】
凹凸層の粒子は、有機粒子及び無機粒子の何れも用いることができる。
有機粒子としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル−スチレン共重合体、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ベンゾグアナミン−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン、フッ素系樹脂及びポリエステル系樹脂等からなる粒子が挙げられる。
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、アンチモン、ジルコニア及びチタニア等からなる粒子が挙げられる。無機粒子の中では透明性に優れるシリカが好適である。また、無機粒子は表面を疎水化処理したものが好ましい。疎水化処理した無機粒子は、凹凸層形成塗布液中での分散性が良好となり、凝集が抑制され、条件1−1及び条件1−2等を満たしやすくできる。また、疎水化処理した無機粒子は、樹脂成分との親和性が良いため、塗膜からの脱落を抑制しやすくできる。
粒子の形状は、球形、不定形の何れであってもよい。球形粒子はなめらかな凹凸を形成するのに適し、不定形粒子はギラツキの抑制に優れている。
これらの粒子は、単独で用いても良いが、二種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
凹凸層の粒子は、有機粒子と無機粒子とを併用し、かつ、無機粒子の平均粒子径よりも有機粒子の平均粒子径を大きくすることが好ましい。かかる構成とすることで、粒子径の大きい有機粒子でなめらかな凹凸を形成する一方、無機粒子で細かな凹凸を形成し、書き味を良好にすることができる。また、無機粒子が小さいため、無機粒子により塗膜に硬さを付与できる一方で、硬い無機粒子が塗膜から多く突出することによるタッチパネルペンの摩耗を抑制できる。
有機粒子と無機粒子とを併用する場合、有機粒子の形状は、なめらかな凹凸を形成する観点から球形であることが好ましい。有機粒子と無機粒子とを併用する場合、無機粒子の形状は特に限定されないが、ギラツキを抑制する観点から不定形であることが好ましい。
【0055】
凹凸層中の粒子の平均粒子径は、凹凸層の厚みにより異なるため一概には言えないが、条件1−1及び条件1−2等を満たしやすくする観点、粒子の脱落を抑制する観点、及びタッチパネルペンの磨耗抑制の観点から、1.0〜10.0μmが好ましく、2.0〜8.0μmであることがより好ましく、3.0〜6.0μmであることがさらに好ましい。粒子が凝集している場合、凝集粒子の平均粒子径が前記範囲を満たすことが好ましい。
また、有機粒子と無機粒子とを併用する場合、有機粒子の平均粒子径と無機粒子の平均粒子径とが、1.0<[有機粒子の平均粒子径/無機粒子の平均粒子径]≦1.5とすることが好ましく、1.1≦[有機粒子の平均粒子径/無機粒子の平均粒子径]≦1.4とすることがより好ましい。
粒子の平均粒子径は、以下の(y1)〜(y3)の作業により算出できる。
(y1)本発明の筆記シートを光学顕微鏡にて透過観察画像を撮像する。倍率は500〜2000倍が好ましい。
(y2)観察画像から任意の10個の粒子を抽出し、個々の粒子の粒子径を算出する。粒子径は、粒子の断面を任意の平行な2本の直線で挟んだとき、該2本の直線間距離が最大となるような2本の直線の組み合わせにおける直線間距離として測定される。
(y3)同じサンプルの別画面の観察画像において同様の作業を5回行って、合計50個分の粒子径の数平均から得られる値を 凹凸層中の粒子の平均粒子径とする。
【0056】
粒子は、粒子径分布が広いもの(単一粒子で粒子径分布が広いもの、あるいは、粒子径分布が異なる2種類以上の粒子を混合した混合粒子の粒子径分布が広いもの)であってもよいが、ギラツキを抑制する観点、粒子の脱落を抑制する観点、及びタッチパネルペンの磨耗抑制の観点から、粒子径分布が狭い方が好ましい。具体的には、粒子の粒子径分布の変動係数は、25%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましい。
【0057】
凹凸層中の粒子の含有量は、条件1−1及び条件1−2等を満たしやすくする観点から、樹脂成分100質量部に対して、10〜25質量部であることが好ましく、13〜23質量部であることがより好ましく、15〜20質量部であることがさらに好ましい。
なお、有機粒子と無機粒子とを併用する場合、有機粒子:無機粒子は質量比で、1:1〜1:20であることが好ましく、1:3〜1:15であることがより好ましく、1:5〜1:10であることがさらに好ましい。
【0058】
凹凸層の膜厚の好適な範囲は、凹凸層の実施形態によって若干異なる。例えば、粒子を含む凹凸層の厚みは、条件1−1及び条件1−2等を満たしやすくする観点、凹凸面の鉛筆硬度を向上させる観点及びカールを抑制する観点から、2.0〜8.0μmが好ましく、2.5〜6.0μmがより好ましく、3.0〜4.5μmがさらに好ましい。
また、条件1−1及び条件1−2等を満たしやすくする観点、粒子の脱落を抑制する観点及びタッチパネルペンの磨耗抑制の観点から、[粒子の平均粒子径]/[粒子を含む凹凸層の膜厚]の比は、0.7〜1.8であることが好ましく、0.8〜1.7であることがより好ましく、0.9〜1.5であることがさらに好ましい。
凹凸層の膜厚は、例えば、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した断面の画像から20箇所の厚みを測定し、20箇所の値の平均値から算出できる。STEMの加速電圧は10kv〜30kV、STEMの倍率は1000〜7000倍とすることが好ましい。
【0059】
凹凸層の樹脂成分は、熱硬化性樹脂組成物又は電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましく、凹凸面の鉛筆硬度を向上する観点から、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことがより好ましく、その中でも紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことがさらに好ましい。
【0060】
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。
熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
【0061】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、及びエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。電離放射線硬化性化合物としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する、多官能性(メタ)アクリレート系化合物が更に好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマー及びオリゴマーのいずれも用いることができる。
なお、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
【0062】
多官能性(メタ)アクリレート系化合物のうち、2官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記(メタ)アクリレート系モノマーは、分子骨格の一部を変性しているものでもよく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされたものも使用することができる。
【0063】
また、多官能性(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等のアクリレート系重合体等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール及び有機ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。
また、好ましいエポキシ(メタ)アクリレートは、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と多塩基酸と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、及び2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等とフェノール類と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。
上記電離放射線硬化性化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
電離放射線硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、電離放射線硬化性組成物は、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシルオキシムエステル、チオキサンソン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
これら光重合開始剤は、融点が100℃以上であることが好ましい。光重合開始剤の融点を100℃以上とすることにより、筆記シートの製造過程や、タッチパネルの透明導電膜の形成過程で、残留した光重合開始剤が昇華して、製造装置や透明導電膜の汚染を防止することができる。
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0065】
凹凸層形成塗布液には、通常、粘度を調節したり、各成分を溶解または分散可能とするために溶剤を用いる。溶剤の種類によって、塗布、乾燥過程した後の凹凸層の表面状態が異なるため、溶剤の飽和蒸気圧、透明基材への溶剤の浸透性等を考慮して溶剤を選定することが好ましい。具体的には、溶剤は、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、アルコール類(ブタノール、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)等が例示でき、これらの混合物であってもよい。
溶剤の乾燥が遅すぎる場合、凹凸層のレベリング性が過度になること、及び/又は粒子の凝集が進行することにより、条件1−1及び条件1−2等を満たしやすい表面形状を形成しづらくなる。したがって、溶剤としては、蒸発速度(n−酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの相対蒸発速度)が180以上である溶剤を、全溶剤中の50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましい。相対蒸発速度が180以上の溶剤としては、トルエンが挙げられる。トルエンの相対蒸発速度は195である。
【0066】
また、表面形状を適度に滑らかにして、筆記シートの表面形状を上述した範囲にしやすくする観点からは、凹凸層形成塗布液には、レベリング剤を含有させることが好ましい。レベリング剤は、フッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、フッ素シリコーン共重合体系レベリング剤等が挙げられる。レベリング剤の添加量としては、凹凸層形成塗布液の全固形分に対して0.01〜0.30質量%が好ましく、0.02〜0.10質量%がより好ましい。また、レベリング剤は触感を良好にすることにもつながる。
【0067】
<オーバーコート層>
凹凸層上には、オーバーコート層を有し、オーバーコート層の表面を前記凹凸面とすることが好ましい。凹凸層上にオーバーコート層を形成することにより、凹凸層の溝が部分的に埋まり、条件1−2を満たしやすくすることができる。
上記の観点から、オーバーコート層中には平均粒子径200nm以上の粒子を実質的に含有しないことが好ましい。具体的には、オーバーコート層の全固形分に占める平均粒子径200nm以上の粒子が1.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることがさらに好ましい。
また、上記の観点から、オーバーコート層の厚みは、30〜350nmであることが好ましく、130〜300nmであることがより好ましく、150〜250nmであることがさらに好ましい。
オーバーコート層の膜厚は、例えば、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した断面の画像から20箇所の厚みを測定し、20箇所の値の平均値から算出できる。STEMの加速電圧は10kv〜30kV、STEMの倍率は5万〜30万倍とすることが好ましい。
【0068】
オーバーコート層は、樹脂成分及び溶剤、並びに必要に応じて添加する機能性材料を含有してなるオーバーコート層形成塗布液を、グラビアコーティング、バーコーティング等の公知の塗布方法により基材上に塗布、乾燥、硬化することにより形成できる。必要に応じて添加する機能性材料としては、低屈折率剤、防汚剤及び帯電防止剤等が挙げられる。
なお、オーバーコート層を形成する段階では、凹凸層の熱硬化性樹脂組成物又は電離放射線硬化性樹脂組成物を半硬化の状態としておくことが好ましい。かかるステップでオーバーコート層を形成することにより、凹凸層とオーバーコート層との密着性を良好にすることができる。
【0069】
ここで、条件1−1及び条件1−2を満たしやすくする観点から、オーバーコート層形成塗布液の固形分は、1.5〜5.0質量%とすることが好ましく、2.0〜3.0質量%とすることがより好ましく、2.2〜2.7質量%とすることがさらに好ましい。オーバーコート層形成塗布液の固形分を前述した範囲とすることにより、凹凸層の凸部分へのオーバーコート層の固形分付着量が少ない一方で、凹凸層の溝部分(特に、急峻な山の周囲の溝部分)へのオーバーコート層の固形分付着量が多くなり、条件1−1及び条件1−2を満たしやすくできる。また、凹凸層の溝部分(特に、急峻な山の周囲の溝部分)へのオーバーコート層の固形分付着量を多くすることにより、タッチパネルペンの摩耗を抑制することができる。
なお、凹凸層の表面に均等にオーバーコート層の固形分が付着した場合、凹凸層が全体的に滑らかとなり、書き味が低下する傾向にある。つまり、オーバーコート層形成塗布液の固形分を上記範囲とすることは、書き味の低下の抑制にもつながる点で好ましい。
【0070】
オーバーコート層の樹脂成分は、上述した凹凸層の樹脂成分と同様のものを用いることができる。
【0071】
オーバーコート層形成塗布液の溶剤は、凹凸層形成塗布液で例示したものと同様のものを使用することができる。
オーバーコート層形成塗布液の溶剤の乾燥が遅すぎる場合、オーバーコート層形成塗布液が凹凸層の溝部分に過度に流れ込み、条件1−1及び条件1−2等を満たしやすい表面形状を形成しづらくなる。したがって、溶剤としては、蒸発速度(n−酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの相対蒸発速度)が150以上である溶剤を、全溶剤中の50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがさらに好ましい。相対蒸発速度が150以上の溶剤としては、メチルイソブチルケトンが挙げられる。メチルイソブチルケトンの相対蒸発速度は160である。
【0072】
オーバーコート層は、屈折率が1.45以下であることが好ましく、1.26〜1.40であることがより好ましく、1.28〜1.38であることがさらに好ましい。オーバーコート層の屈折率を前述の範囲として、オーバーコート層の表面を前記凹凸面とすることにより、筆記シート表面の反射を抑制することができる。筆記シートの表面が条件1−1を満たす場合、反射光の拡散によって筆記シートの白さが増加する傾向にあるが、屈折率が1.45以下のオーバーコート層を形成することにより、書き味が良好でありながら、筆記シートの白さを抑制することができる。
オーバーコート層の屈折率を1.45以下とするには、オーバーコート層中に低屈折率剤を含有させることが好ましい。
オーバーコート層の屈折率は、例えば、反射光度計により測定した反射スペクトルと、フレネル係数を用いた多層薄膜の光学モデルから算出した反射スペクトルとのフィッティングにより算出することができる。本明細書において、屈折率とは波長550nmにおける屈折率のことをいう。
【0073】
低屈折率剤としては、シリカ、フッ化マグネシウム等が挙げられる。また、屈折率を低下させる観点から、多孔質の低屈折率剤、中空の低屈折率剤が好適である。低屈折率剤としては、多孔質シリカ、中空シリカが好適であり、オーバーコート層形成塗布液中での分散性を良好にするため、疎水化処理した多孔質シリカ、中空シリカがより好適である。
低屈折率剤の含有量は、屈折率及び塗膜強度のバランスの観点から、オーバーコート層の全固形文中の20〜70質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましく、40〜50質量%であることがさらに好ましい。
低屈折率剤が粒子形状の場合、その平均一次粒子径は、200nm未満であることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましく、20〜80nmであることがさらに好ましい。
【0074】
粒子状の低屈折率剤の平均一次粒子径は、以下の(z1)〜(z3)の作業により算出できる。
(z1)筆記シートの断面をTEM又はSTEMで撮像する。TEM又はSTEMの加速電圧は10kv〜30kV、倍率は5万〜30万倍とすることが好ましい。
(z2)観察画像から任意の10個の粒子を抽出し、個々の粒子の粒子径を算出する。粒子径は、粒子の断面を任意の平行な2本の直線で挟んだとき、該2本の直線間距離が最大となるような2本の直線の組み合わせにおける直線間距離として測定される。
(z3)同じサンプルの別画面の観察画像において同様の作業を5回行って、合計50個分の粒子径の数平均から得られる値を粒子状の低屈折率剤の平均一次粒子径とする。
【0075】
オーバーコート層中には防汚剤を含有することが好ましい。オーバーコート層中に防汚剤を含有することにより、汚れの付着性を抑制しやすくできるとともに、表面に付着した汚れの拭取り性を良好にしやすくでき、さらには、指で触れた際の触感を良好にしやすくできる。また、オーバーコート層中に防汚剤を含有することにより、耐摩耗性を良好にしやすくでき、タッチパネルペンの摩耗も抑制しやすくできる。
【0076】
防汚剤としては、フッ素含有化合物、ポリオルガノシロキサン、分子内にフッ素を含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。汚れの付着の抑制及び汚れの拭取り性の観点からはフッ素含有化合物が好ましく、触感(滑り性)及びタッチパネルペンの磨耗抑制の観点からはポリオルガノシロキサンが好ましい。また、分子内にフッ素を含むポリオルガノシロキサンは、汚れの付着の抑制、汚れの拭取り性、触感及びタッチパネルペンの磨耗抑制に優れる点で好適である。
分子内にフッ素を含むポリオルガノシロキサンは、シロキサン結合を有する構造を基本骨格として、該シロキサン結合の側鎖にフッ素を含む有機基を有する構造を有することが好ましい。また、フッ素は、汚れの付着の抑制及び汚れの拭取り性の観点から、パーフルオロポリエーテル基として有機基に含まれていることが好ましい。
また、防汚剤は、防汚剤の特性を長期間維持するために、分子内に電離放射線硬化性官能基を有することが好ましい。
【0077】
最も好ましい防汚剤は、分子内にフッ素及び電離放射線硬化性官能基を含むポリオルガノシロキサンである。該防汚剤の構造は、シロキサン結合を有する構造を基本骨格として、該シロキサン結合の側鎖に二以上の有機基を有し、少なくとも一つの有機基の中にパーフルオロポリエーテル基を有し、かつ、少なくとも一つの有機基の中に電離放射線硬化性官能基を有する構造であることが好ましい。パーフルオロポリエーテル基を含む有機基と、電離放射線硬化性官能基を有する有機基とは別の有機基であることが好ましい。
【0078】
防汚剤の含有量は、防汚剤による特性の付与及び塗膜強度のバランスの観点から、オーバーコート層の全固形文中の0.25〜15質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、2.5〜7質量%であることがさらに好ましい。
【0079】
<基材>
基材としては、光透過性を有するプラスチックフィルムが好適である。
光透過性を有するプラスチックフィルムは、ポリエステル、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン及び非晶質オレフィン(Cyclo−Olefin−Polymer:COP)等の樹脂から形成することができる。
これらプラスチックフィルムの中でも、機械的強度、寸法安定性及び上記物性(f)を満たしやすくする観点からは、延伸加工、特に二軸延伸加工されたポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムの中では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が好ましい。
基材の厚みは、5〜200μmであることが好ましく、10〜150μmであることがより好ましい。
基材には凹凸層等の密着性を向上させるために易接着層が形成されていてもよい。なお、界面反射を抑制するため、基材と易接着層との屈折率差は0.15以内とすることが好ましく、0.10以内とすることがより好ましい。
【0080】
[タッチパネル]
本発明のタッチパネルは、表面にシートを有するタッチパネルであって、前記シートとして、本発明のタッチパネルペン用筆記シートの前記凹凸面(条件1−1及び条件1−2を満たす凹凸面)がタッチパネルの表面を向くように配置してなるものである。
【0081】
タッチパネルとしては、抵抗膜式タッチパネル、静電容量式タッチパネル、インセルタッチパネル、光学式タッチパネル、超音波式タッチパネル及び電磁誘導式タッチパネル等が挙げられる。
【0082】
抵抗膜式タッチパネル100は、
図8に示すように、導電膜300を有する上下一対の透明基板200の導電膜300同士が対向するようにスペーサー400を介して配置されてなる基本構成に、図示しない回路が接続されてなるものである。抵抗膜式タッチパネルの場合、上部透明基板200として本発明の筆記シート10を用い、該筆記シート10の前記凹凸面がタッチパネル1000の表面を向くようにして用いる。なお、上部透明基板200は、筆記シートに別の基材を貼り合わせた構成であってもよい。
【0083】
静電容量式タッチパネルは、表面型及び投影型等が挙げられ、投影型が多く用いられている。投影型の静電容量式タッチパネルは、X軸電極と、該X軸電極と直交するY軸電極とを絶縁体を介して配置した基本構成に、回路が接続されてなるものである。該基本構成をより具体的に説明すると、1枚の透明基板上の別々の面にX軸電極及びY軸電極を形成する態様、透明基板上にX軸電極、絶縁体層、Y軸電極をこの順で形成する態様、
図9に示すように、透明基板200上にX軸電極500を形成し、別の透明基板200上にY軸電極600を形成し、接着剤層等の絶縁体層700を介して積層する態様等が挙げられる。また、これら基本態様に、さらに別の透明基板を積層する態様が挙げられる。
静電容量式タッチパネルの場合、表面側の透明基板200として本発明の筆記シート10を用い、該筆記シート10の前記凹凸面がタッチパネル1000の表面を向くようにして用いる。なお、表面側の透明基板200は、筆記シートに別の基材を貼り合わせた構成であってもよい。
【0084】
電磁誘導式タッチパネルは、磁界を発生する専用ペンを用いるタッチパネルである。電磁誘導式タッチパネルは、ペンから生じる電磁エネルギーを検出するセンサー部を少なくとも有し、さらにセンサー部上に透明基板を有する。該透明基板は多層構成であってもよい。電磁誘導式タッチパネルの場合、センサー部上に位置する透明基板のうち、最表面の透明基板として、本発明の筆記シートを用い、該筆記シートの前記凹凸面がタッチパネルの表面を向くようにして用いる。
【0085】
インセルタッチパネルは、2枚のガラス基板に液晶を挟んでなる液晶素子の内部に、抵抗膜式、静電容量式、光学式等のタッチパネル機能を組み込んだものである。
インセルタッチパネルの場合、表面側のガラス基板上に、本発明の筆記シートの前記凹凸面がタッチパネルの表面を向くように配置して用いる。なお、インセルタッチパネルの表面側のガラス基板と、本発明の筆記シートとの間には、偏光板等の他の層を有していてもよい。
【0086】
[タッチパネル付きの表示装置]
本発明のタッチパネル付きの表示装置は、表示素子上にタッチパネルを有する表示装置であって、前記タッチパネルが本発明のタッチパネルであるものである。
【0087】
表示素子としては、液晶表示素子、EL表示素子、プラズマ表示素子、電子ペーパー素子等が挙げられる。表示素子が液晶表示素子、EL表示素子、プラズマ表示素子、電子ペーパー素子の場合、これらの表示素子上に本発明のタッチパネルを載置する。
【0088】
[タッチパネルペン用筆記シートの選別方法]
本発明のタッチパネルペン用筆記シートの選別方法は、少なくとも一方の表面が凹凸面であり、前記凹凸面が下記条件1−1及び条件1−2を満たすものをタッチパネル用筆記シートとして選別するものである。
【0089】
<条件1−1>
前記タッチパネル用筆記シートの前記凹凸面とは反対側の面に、透明粘着剤層を介して黒色板を貼り合わせたサンプルを作製する。前記サンプルの前記凹凸面側に向けて、法線から+15度の角度で可視光線を照射し、反射光の反射強度を測定する。反射強度の測定では、前記可視光線の正反射方向である法線から−15度の方向を基準角度(0度)として、基準角度を含む−12度〜+12度の方向の反射強度を1度ごとに測定する。基準角度からプラス方向側の角度であって、基準角度の反射強度の1/2以下の反射強度に最初に到達する角度を+α
15、基準角度からマイナス方向側の角度であって、基準角度の反射強度の1/2以下の反射強度に最初に到達する角度を−α
15とする。−α
15の絶対値と、+α
15との平均をα
15とした際に、4.5度≦α
15の関係を示す。
【0090】
<条件1−2>
前記サンプルの前記凹凸面側に向けて、法線から+75度の角度で可視光線を照射し、反射光の反射強度を測定する。反射強度の測定では、前記可視光線の正反射方向である法線から−75度の角度を基準角度(0度)として、基準角度を含む−12度〜+12度の範囲の反射強度を1度ごとに測定する。基準角度からプラス方向側の角度であって、基準角度の反射強度の1/2以下の反射強度に最初に到達する角度を+α
75、基準角度からマイナス方向側の角度であって、基準角度の反射強度の1/2以下の反射強度に最初に到達する角度を−α
75とする。−α
75の絶対値と、+α
75との平均をα
75とした際に、α
75と前記α
15とが、α
15/α
75≦4.5の関係を示す。
【0091】
本発明のタッチパネルペン用筆記シートの選別方法によれば、書き味及び耐磨耗性が良好なタッチパネルペン用筆記シートを正確に選別することができ、筆記シートの製品設計、品質管理を効率よくすることができる。
【0092】
筆記シートを選別する条件は、(1−1)4.5度≦α
15であること、(1−2)α
15/α
75≦4.5であることを必須条件とする。
選別条件(1−1)のα
15、及び、選別条件(1−2)のα
15/α
75の好適な範囲は、本発明の筆記シートで示した好適な範囲と同様である。
【0093】
また、本発明のタッチパネルペン用筆記シートの選別方法は、書き味及び耐磨耗性が良好なタッチパネルペン用筆記シートをより正確に選別する観点等から、以下に挙げる(1−3)、(1−4)、(2−1)、(2−2)、(3−1)及び(3−2)の群から選ばれる一以上を追加の選別条件とすることが好ましい。追加の選別条件は、前記群の二以上とすることがより好ましく、四以上とすることがさらに好ましく、全部とすることがよりさらに好ましい。
【0094】
<条件1−3>
前記条件1−1において測定した「サンプルの法線から+15度の角度で照射した可視光線の反射強度」の最大値を100として、各角度の反射強度を規格化する。規格化した各角度の反射強度の総和をS
15とする。
前記条件1−2において測定した「サンプルの法線から+75度の角度で照射した可視光線の反射強度」の最大値を100として、各角度の反射強度を規格化する。規格化した各角度の反射強度の総和をS
75とする。
S
15とS
75とが、S
15/S
75≦4.5の関係を示す。
<条件1−4>
前記条件1−1において測定した「サンプルの法線から+15度の角度で照射した可視光線の反射強度」の最大値を100として、各角度の反射強度を規格化する。前記条件1−1において設定した基準角度(0度)に対して、−12度の規格化した反射強度と、+12度の規格化した反射強度との平均値をP
12とする。
P
12が、10.0≦P
12の関係を示す。
<条件2−1>
筆記シートのJIS K7136:2000のヘイズが25.0%以上
<条件2−2>
筆記シートのJIS K7361−1:1997の全光線透過率が87.0%以上
<条件3−1>
前記凹凸面の純水の接触角が94度以上。
<条件3−2>
前記凹凸面のヘキサデカンの接触角が40度以上。
【0095】
追加の選別条件の好適な範囲は、本発明の筆記シートで示した好適な範囲と同様である。
【実施例】
【0096】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
【0097】
1.測定及び評価
実験例で作製又は準備したタッチパネルペン用筆記シートについて、以下の測定及び評価を行った。
【0098】
1−1.反射強度
タッチパネル用筆記シートの凹凸面とは反対側の面(基材側の面)に、東レ社製の光学透明粘着シート(屈折率:1.47、厚み100μm)を介して、縦10cm×横10cmの大きさの黒色板(クラレ社製、商品名:コモグラス 品番 :DFA502K、厚み2.0mm)を貼り合わせたサンプルを作製した。
サンプルの凹凸面側に向けて、法線から+15度の角度で可視光線を照射し、反射光の反射強度を測定した。反射強度の測定では、可視光線の正反射方向である法線から−15度の方向を基準角度(0度)として、基準角度を含む−12度〜+12度の方向の反射強度を1度ごとに測定した。
さらに、サンプルの凹凸面側に向けて、法線から+75度の角度で可視光線を照射し、反射光の反射強度を測定した。反射強度の測定では、可視光線の正反射方向である法線から−75度の方向を基準角度(0度)として、基準角度を含む−12度〜+12度の方向の反射強度を1度ごとに測定した。
上記の測定結果に基づき、明細書本文の記載に基づき、条件1−1〜1−4に関する数値を算出した。結果を表1に示す。
【0099】
1−2.ヘイズ、全光線透過率
ヘイズメーター(HM−150、村上色彩技術研究所製)を用いて、ヘイズ(JIS K−7136:2000)、及び全光線透過率(JIS K7361−1:1997)を測定した。光入射面は基材側とした。結果を表1に示す。
【0100】
1−3.接触角
凹凸面に1.5μLの試料(純水又はヘキサデカン)を滴下し、着滴1秒後に、θ/2法に従って、滴下した液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、凹凸面に対する角度から試料(純水又はヘキサデカン)の接触角を算出した。接触角は5回測定した平均値とした。また、接触角を測定する際の室内温度は20℃とした。光入射面は基材側とした。結果を表1に示す。
【0101】
1−4.表面形状
表面粗さ測定器(型番:SE−3400/小坂研究所株式会社製)を用いて、下記の測定条件により、下記の測定項目について、タッチパネルペン用筆記シートの凹凸層側の表面形状を測定した。結果を表1に示す。
<測定条件>
[表面粗さ検出部の触針]
小坂研究所社製の商品名SE2555N(先端曲率半径:2μm、頂角:90度、材質:ダイヤモンド)
[表面粗さ測定器の測定条件]
・触針の送り速さ:0.1mm/s
・縦倍率:2000倍
・横倍率:10倍
・評価長さ:4mm
・予備長さ:0.8mm
<測定項目>
・カットオフ値0.8mmのJIS B0601:1994の算術平均粗さRa
・カットオフ値0.8mmのJIS B0601:1994の十点平均粗さRz
・カットオフ値0.8mmの平均傾斜角θa
・カットオフ値0.8mmの平均波長λa
・カットオフ値0.8mmのJIS B0601:1994の凹凸の平均間隔Sm
・カットオフ値0.8mmのJIS B0601:1994の局部山頂平均間隔S
【0102】
1−5.書き味
タッチパネルペン用筆記シートの凹凸層側の面と反対側の面をガラス板に貼り合わせ、タッチパネルペン(キングジム社製、商品名「BB−2付属ペン」)を用いて書き味を評価した。
書き味が良好であるものを2点、普通であるものを1点、良好でなかったものを0点として、20人が評価を行った。20人の平均点が1.6点以上のものを「A」、1.0以上1.6点未満のものを「B」、1.0点未満のものを「C」とした。結果を表1に示す。
【0103】
1−6.耐摩耗性
筆記シートの凹凸面に対し、日本スチールウール社製のスチールウール(商品名:ボンスターB−204、等級:#0000」を用いて、2つの荷重条件(300g/m
2、400g/m
2)でラビング試験を10往復回実施し、粒子の脱落に伴う塗膜の白化が生じているか否かを目視で評価した。荷重400g/m
2でも白化が生じないものを「A」、荷重300g/m
2では白化が生じないが荷重400g/m
2で白化が生じたものを「B」、荷重300g/m
2で白化が生じたものを「C」とした。結果を表1に示す。
【0104】
1−7.ペンの磨耗
図10に示すように、タッチパネルペン用筆記シート10の凹凸層側の表面に、タッチパネルペン(キングジム社製、商品名「BB−2付属ペン」)51を60度の角度で接触させ、保持具54で固定した。保持具上部の土台55に100gの重り53を乗せ、タッチパネルペン51に垂直荷重100gfがかかるようにした。荷重をかけたまま、筆記シート10を固定した可動台52を14mm/秒の速度で、片道40mmの長さを往復移動する動作を50回繰り返す動作を1サイクルとして、最大4サイクル繰り返した。
各サイクル完了後に、タッチパネルペンのペン先の磨耗が目視で容易に確認できるか否かを確認した。その結果、4サイクル完了後でも摩耗が確認できないものを「A」、3サイクル完了後では摩耗が確認できないが、4サイクル完了後に摩耗が確認できたものを「B」、1〜3サイクル完了後に摩耗が確認できたものを「C」とした。結果を表1に示す。
測定装置は新東科学社製の商品名「HEIDON−14DR」を用い、モードは「一定荷重往復の摩擦測定モード」とし、評価時の温度は23℃とした。
【0105】
1−8.触感(滑り性)
タッチパネルペン用筆記シートの凹凸層側の面に指の腹を押し当て、上下左右に動かす動作を行った。
触感(滑り性)が良好であるものを2点、普通であるものを1点、良好でなかったものを0点として、20人が評価を行った。20人の平均点が1.6点以上のものを「A」、1.0以上1.6点未満のものを「B」、1.0点未満のものを「C」とした。結果を表1に示す。
【0106】
1−9.指紋の付着性、指紋の拭き取り性
タッチパネルペン用筆記シートの凹凸層側の面に指の腹を押し当て、指紋の付着性を目視で評価した。指紋が付着しにくいものを「A」、指紋が付着しやすいものを「C」とした。結果を表1に示す。
また、不織布(旭化成社製、商品名:ベンコットン)を用いて、付着した指紋を拭取り、指紋の跡が見えなくなるまでの回数を評価した。3回までの拭取りで指紋が見えなくなるものを「A」、4〜7回の拭取りで指紋が見えなくなるものを「B」、7回拭取っても指紋が見えるものを「C」とした。結果を表1に示す。
【0107】
1−10.ギラツキ
タッチパネルペン用筆記シートを、市販の超高精細液晶表示装置(画素密度350ppi)上に載置して、ギラツキの状態を目視で評価した。ギラツキが目視で視認できないレベルであるものを2点、ギラツキが僅かに観察されるが気にならないものを1点、ギラツキがひどく観察されるものを0点として、20人が評価を行った。20人の平均点が1.6点以上のものを「A」、1.0以上1.6点未満のものを「B」、1.0点未満のものを「C」とした。結果を表1に示す。
【0108】
1−11.白化
照度1000Lxの明室環境下にて、上記サンプルの凹凸面側に対して30Wの三波長蛍光灯で45度の角度から照射し、白化の状態を目視で評価した。15人の被験者が評価を行い、10人以上が良好(白くない)と回答したものを「A」、5〜9人が良好と回答したものを「B」、4人以下が良好と回答したものを「C」とした。結果を表1に示す。
【0109】
2.タッチパネルペン用筆記シートの作製
[実施例1]
基材として厚み100μmのPETフィルム(屈折率1.65のPETフィルムの両面に屈折率1.55の易接着層が形成された基材)を用い、該基材上に、下記処方の凹凸層形成塗布液1を乾燥後の厚みが4μmとなるように塗布、乾燥、紫外線照射して、凹凸層を形成した。
次いで、凹凸層上に、下記処方のオーバーコート層形成塗布液2を乾燥後の厚みが200nmとなるように塗布、乾燥、紫外線照射して、オーバーコート層(屈折率1.37)を形成し、タッチパネルペン用筆記シートを得た。なお、凹凸層を形成する段階では凹凸層の電離放射線硬化性樹脂組成物は半硬化の状態とし、その後、オーバーコート層を形成する段階で、凹凸層及びオーバーコート層の電離放射線硬化性樹脂組成物を完全硬化させた。
【0110】
<凹凸層形成塗布液1>
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 60部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 40部
・有機粒子 2部
(球状ポリスチレン粒子、平均粒子径5.0μm)
・無機粒子 15部
(疎水化処理された不定形シリカ、平均粒子径4.0μm)
・光重合開始剤 3.5部
(BASF社製、イルガキュア184)
・フッソ系レベリング剤 0.1部
(DIC社製、メガファック RS-75)
・溶剤1(トルエン) 120部
・溶剤2(シクロヘキサノン) 50部
【0111】
<オーバーコート層形成塗布液2>
・多官能アクリレート
(日本化薬社製、KAYARAD PET−30) 100部
・中空シリカ粒子 90部
(平均一次粒子径60nm)
・下記の防汚剤A 5部
・光重合開始剤 7部
(BASF社製、イルガキュア127)
・溶剤1(メチルイソブチルケトン) 7500部
・溶剤2 830部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0112】
<防汚剤A>
特開2010−53114号公報の実施例1に準拠して製造した化合物(シロキサン結合を有する構造を基本骨格として、該シロキサン結合の側鎖に二以上の有機基を有し、少なくとも一つの有機基の中にパーフルオロポリエーテル基を有し、かつ、少なくとも一つの有機基の中に電離放射線硬化性官能基を有する化合物)
【0113】
[実施例2]
凹凸層の厚みを3μmに変更し、オーバーコート層塗布液の防汚剤Aの添加量を10部に変更した以外は、実施例1と同様にしてタッチパネルペン用筆記シートを得た。
【0114】
[比較例1]
実施例1と同様の基材上に、下記処方の凹凸層形成塗布液3を乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布、乾燥、紫外線照射して、凹凸層を形成し、タッチパネルペン用筆記シートを得た。
【0115】
<凹凸層形成塗布液3>
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 81部
(日本化薬社製、KAYARAD−PET−30)
・有機粒子 13部
(球状ポリアクリル−スチレン共重合体、平均粒子径3.5μm)
・フュームドシリカ 6部
(平均一次粒子径10nm)
・光重合開始剤 3部
(BASF社製、イルガキュア184)
・シリコーン系レベリング剤 0.001部
(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、TSF4460)
・溶剤1(トルエン) 180部
・溶剤2(アノン) 70部
・溶剤3(メチルイソブチルケトン) 2部
・溶剤4 28部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0116】
[比較例2]
実施例1と同様の基材上に、下記処方の凹凸層形成塗布液4を乾燥後の厚みが7μmとなるように塗布、乾燥、紫外線照射して、凹凸層を形成し、タッチパネルペン用筆記シートを得た。
【0117】
<凹凸層形成塗布液4>
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 83部
(日本化薬社製、KAYARAD−PET−30)
・有機粒子 11部
(球状ポリスチレン、平均粒子径3.5μm)
・フュームドシリカ 7部
(平均一次粒子径10nm)
・光重合開始剤 3部
(BASF社製、イルガキュア184)
・シリコーン系レベリング剤 0.125部
(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、TSF4460)
・溶剤1(トルエン) 225部
・溶剤2(アノン) 3部
・溶剤3(メチルイソブチルケトン) 50部
・溶剤4(イソプロピルアルコール) 28部
【0118】
[比較例3]
実施例1と同様の基材上に、下記処方の凹凸層形成塗布液5を乾燥後の厚みが3μmとなるように塗布、乾燥、紫外線照射して、凹凸層を形成し、タッチパネルペン用筆記シートを得た。
【0119】
<凹凸層形成塗布液5>
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 60部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 40部
・有機粒子 2部
(球状ポリスチレン粒子、平均粒子径5.0μm)
・無機粒子 15部
(疎水化処理された不定形シリカ、平均粒子径3.0μm)
・光重合開始剤 3.5部
(BASF社製、イルガキュア184)
・フッソ系レベリング剤 0.1部
(DIC社製、メガファック RS-75)
・溶剤1(トルエン) 120部
・溶剤2(シクロヘキサノン) 50部
【0120】
【表1】
【0121】
表1に示すように、条件1−1及び条件1−2を満たす実施例1〜2の筆記シートは、書き味及び耐摩耗性を両立できるとともに、タッチパネルペンの磨耗抑制等のほかの性能にも優れるものであった。耐摩耗性及びタッチパネルペンの磨耗抑制についてより具体的に言及すると、実施例1の筆記シートは、主として条件1−2が最適範囲(α
15/α
75が1.3以下)であることにより、耐摩耗性及びタッチパネルペンの磨耗抑制が良好となっている。一方、実施例2の筆記シートは、条件1−2は最適範囲ではないが、実施例1に比べて、接触角が大きいことで、耐摩耗性及びタッチパネルペンの磨耗抑制が良好となっている。
一方、条件1−1を満たさない比較例1〜2の筆記シートは書き味に劣るものであった。また、比較例3の筆記シートは条件1−1を満たして書き味には優れるものの、条件1−2を満たさず、耐摩耗性に劣るものであった。なお、比較例1及び2の筆記シートは、条件1−2が最適範囲(α
15/α
75が1.3以下)ではないが、耐摩耗性及びタッチパネルペンの磨耗抑制が良好となっている。この理由は、比較例1及び2の筆記シートは、条件1−1の値が小さく、凹凸の程度が小さいためである。
【0122】
また、表1の結果から、条件1−1及び条件1−2を満たす筆記シートを選別することは、書き味及び耐磨耗性に優れる筆記シートを効率よく選別できることにつながることが確認できる。
【0123】
3.タッチパネルの作製
実施例1〜2及び比較例1〜3のタッチパネルペン用筆記シートの凹凸面とは反対側の面(基材側の面)に、厚み20nmのITOの導電性膜をスパッタリング法で形成し、上部電極板とした。次いで、厚み1mmの強化ガラス板の一方の面に、厚み約20nmのITOの導電性膜をスパッタリング法で形成し、下部電極板とした。次いで、下部電極板の導電性膜を有する面に、スペーサー用塗布液として電離放射線硬化型樹脂(Dot Cure TR5903:太陽インキ社)をスクリーン印刷法によりドット状に印刷した後、高圧水銀灯で紫外線を照射して、直径50μm、高さ8μmのスペーサーを1mmの間隔で配列させた。
次いで、上部電極板と下部電極板とを、導電性膜どうしを対向するように配置させ、厚み30μm、幅3mmの両面接着テープで縁を接着し、実施例1〜2及び比較例1〜3の抵抗膜式タッチパネルを作製した。
該タッチパネル上での書き味、耐摩耗性等の評価は、表1と同様であった。
【0124】
4.表示装置の作製
実施例1〜2及び比較例1〜3のタッチパネルペン用筆記シートと、市販の超高精細液晶表示装置(画素密度350ppi)とを、透明粘着剤層を介して貼り合わせ、実施例1〜2及び比較例1〜3の表示装置を作製した。なお、貼り合わせの際は、タッチパネルペン用筆記シートの凹凸面側が、表示装置の表面側(表示素子とは反対側)を向くようにした。
該表示装置での書き味、耐摩耗性等の評価は、表1と同様であった。