(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。本実施の形態に係る発光デバイスは、発光部における光出力の一部を受光するモニタフォトダイオード(Photo Diode。以下、「モニタPD」)を集積化したモニタPD一体型発光デバイスである。
【0017】
[第1の実施の形態]
図1を参照して、本実施の形態に係る発光デバイス10の構成の一例について説明する。本実施の形態では、本発明に係る発光デバイスを面発光型半導体レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)に適用した形態を例示して説明する。
図1(a)は本実施の形態に係る発光デバイス10の断面図であり、
図1(b)は発光デバイス10の平面図である。
図1(a)に示す断面図は、
図1(b)に示す平面図においてA−A’で切断した断面図である。
【0018】
図1(a)に示すように、発光デバイス10は、半絶縁性GaAs(ガリウムヒ素)の基板12上に形成されたn型GaAsのコンタクト層14、下部DBR(Distributed Bragg Reflector)16、活性領域24、酸化狭窄層32、及び上部DBR26を含んで構成されている。
【0019】
図1(b)に示すように、発光デバイス10は2つのメサ(柱状構造)、すなわち各々略矩形形状のメサM1及びメサM2を備え、メサM1とメサM2とが接続される部分に結合部40を有している。本実施の形態に係る結合部40は、メサM1とメサM2とが接続されることによって形成された半導体層のくびれ部分に設けられている。メサM1及びメサM2の各々は、コンタクト層14上に共通に形成された下部DBR16、活性領域24、酸化狭窄層32、上部DBR26を含んでいる。
【0020】
また、メサM1とメサM2との間、すなわち結合部40には、上部DBR26内に形成された電流阻止領域60が配置されている。本実施の形態に係る電流阻止領域60は、メサM1、M2の上面から酸化狭窄層32の上部にかけて(すなわち、活性領域24に至らない深さまで)、一例としてH+(プロトン)イオンを注入して形成された高抵抗領域であり、メサM1とメサM2とを電気的に分離する領域である。後述するように、本実施の形態に係る発光デバイス10では、メサM1が発光部(VCSEL)を構成し、メサM2が発光部における光出力を受光する受光部(モニタフォトダイオード)を構成している。
以下では、メサM1とメサM2とから構成される全体の構造を「メサM」という。
【0021】
なお、電流阻止領域60は、発光部と受光部との間の少なくとも一部を電気的に分離することにより光出力の検出精度を向上させる(S/N(Signal to Noise Ratio)比を改善する)ためのものであり、必須のものではない。つまり、検出精度の許容度によっては電流阻止領域60を用いなくともよい。
【0022】
図1(a)に示すように、メサMを含む半導体層の周囲は無機絶縁膜としての層間絶縁膜34が着膜されている。該層間絶縁膜34はメサMの側面から基板12の表面まで延伸され、p側電極パッド42−1、n側電極パッド44−1の下部に配置されている。本実施の形態に係る層間絶縁膜34は、一例として、シリコン窒化膜(SiN膜)で形成されている。なお、層間絶縁膜34の材料はシリコン窒化膜に限らず、例えば、シリコン酸化膜(SiO
2膜)、あるいはシリコン酸窒化膜(SiON膜)等であてもよい。
【0023】
図1(a)に示すように、層間絶縁膜34の開口部を介してp側電極配線36が設けられている。上部DBR26の最上層には、p側電極配線36との接続のためのコンタクト層(図示省略)が設けられており、該コンタクト層を介してp側電極配線36の一端側が上部DBR26に接続され、上部DBR26との間でオーミック性接触を形成している。
p側電極配線36の他端側はメサMの側面から基板12の表面まで延伸され、p側電極パッド42−1を構成している。p側電極配線36は、例えば、Ti(チタン)/Au(金)の積層膜を着膜して形成される。なお、以下ではp側電極パッド42−1及びp側電極パッド42−2(
図1(b)参照)を総称する場合は、「p側電極パッド42」という。
発光デバイス10ではp側電極がアノード電極を構成している。
【0024】
同様に、層間絶縁膜34の開口部を介してn側電極配線30が設けられている。n側電極配線30の一端側はコンタクト層14に接続され、コンタクト層14との間でオーミック性接触を形成している。一方、n側電極配線30の他端側は基板12の表面まで延伸され、
図1(a)に示すように、n側電極パッド44−1を形成している。n側電極配線30は、例えば、AuGe/Ni/Auの積層膜を着膜して形成される。なお、以下では、n側電極パッド44−1及びn側電極パッド44−2(
図1(b)参照)を総称する場合は、「n側電極パッド44」という。発光デバイス10ではn側電極がカソード電極を構成している。
【0025】
上記のように、本実施の形態に係る基板12には、一例として半絶縁性のGaAs基板を用いている。半絶縁性のGaAs基板とは、不純物がドーピングされていないGaAs基板である。半絶縁性のGaAs基板は抵抗率が非常に高く、そのシート抵抗値は数MΩ程度の値を示す。
【0026】
基板12上に形成されたコンタクト層14は、一例としてSiがドープされたGaAs層によって形成されている。コンタクト層14の一端はn型の下部DBR16に接続され、他端はn側電極配線30に接続されている。すなわち、コンタクト層14は、下部DBR16とn側電極配線30との間に介在し、メサMで構成される半導体層に一定の電位を付与する機能を有する。なお、コンタクト層14は、サーマルクリーニング後、基板表面の結晶性を良好にするために設けられるバッファ層を兼ねてもよい。
【0027】
コンタクト層14上に形成されたn型の下部DBR16は、発光デバイス10の発振波長をλ、媒質(半導体層)の屈折率をnとした場合に、膜厚がそれぞれ0.25λ/nとされかつ屈折率の互いに異なる2つの半導体層を交互に繰り返し積層して構成される多層膜反射鏡である。具体的には、下部DBR16は、Al
0.90Ga
0.1Asによるn型の低屈折率層と、Al
0.15Ga
0.85Asによるn型の高屈折率層と、を交互に繰り返し積層することにより構成されている。なお、本実施の形態に係る発光デバイス10では、発振波長λを、一例として850nmとしている。
【0028】
本実施の形態に係る活性領域24は、例えば、下部スペーサ層、量子井戸活性層、及び上部スペーサ層を含んで構成されてもよい(図示省略)。本実施の形態に係る量子井戸活性層は、例えば、4層のAl
0.3Ga
0.7Asからなる障壁層と、その間に設けられた3層のGaAsからなる量子井戸層と、で構成されてもよい。なお、下部スペーサ層、上部スペーサ層は、各々量子井戸活性層と下部DBR16との間、量子井戸活性層と上部DBR26との間に配置されることにより、共振器の長さを調整する機能とともに、キャリアを閉じ込めるためのクラッド層としての機能も有している。光デバイス10では、メサM1がVCSELを構成しているので、メサM1における活性領域24が発光層を構成する一方、メサM2はモニタPDを構成しているので、メサM2における活性領域24は実質的に光吸収層として機能する。
【0029】
活性領域24上に設けられたp型の酸化狭窄層32は電流狭窄層であり、非酸化領域32a及び酸化領域32bを含んで構成されている。p側電極パッド42−1からn側電極パッド44−2に向かって流れる電流は、非酸化領域32aによって絞られる。
図1(b)に示す境界18は、非酸化領域32aと酸化領域32bとの境界を表わしている。
図1(b)に示すように、境界18で区画された本実施の形態に係る非酸化領域32aは、結合部40でくびれた形状をなしている。
【0030】
酸化狭窄層32上に形成された上部DBR26は、膜厚がそれぞれ0.25λ/nとされかつ屈折率の互いに異なる2つの半導体層を交互に繰り返し積層して構成される多層膜反射鏡である。具体的には、上部DBR26は、Al
0.90Ga
0.1Asによるp型の低屈折率層と、Al
0.15Ga
0.85Asによるp型の高屈折率層と、を交互に繰り返し積層することにより構成されている。
【0031】
上部DBR26上には、光の出射面を保護する出射面保護層38が設けられている。出射面保護層38は、一例としてシリコン窒化膜を着膜して形成される。
【0032】
ところで、上記のような発光デバイス(VCSEL)は、基板に垂直な方向にレーザ出力を取り出せ、さらに2次元集積によるアレイ化が容易であることなどから、電子写真システムの書き込み用光源や光通信用光源として利用されている。
【0033】
発光デバイスは、半導体基板(基板12)上に設けられた一対の分布ブラッグ反射器(下部DBR16及び上部DBR26)、一対の分布ブラッグ反射器の間に設けられた活性領域(活性層、下部スペーサ層、及び上部スペーサ層を含む活性領域24)を備えて構成されている。そして、分布ブラッグ反射器の両側に設けられた電極(p側電極配線36及びn側電極配線30)により活性層へ電流を注入し、基板面に対して垂直にレーザ発振を生じさせ、素子の上部(出射面保護層38の面側)から発振した光を出射させる構成となっている。
【0034】
また、低閾値電流化、横モードの制御性等の観点から組成にAlを含む半導体層を酸化して形成される酸化狭窄層(酸化狭窄層32)を備えており、このAlを含む半導体層を酸化するために、素子はメサ形状にエッチング加工され、酸化処理が施される。その後、エッチング加工により露出したメサ形状の側面やエッチングされた半導体表面は、シリコン窒化膜やシリコン酸化膜などの絶縁材料によって覆われるのが一般的である。
【0035】
一方、VCSELに限らず半導体レーザにおいては、温度変動や、電源変動等に伴って光出力が変動しないように安定化させることが求められる場合があり、その安定化の一方式としてAPC(Automatic Power Control)方式がある。APC方式とは、半導体レーザの光出力をモニタPD等によってモニタ電流として検出し、検出されたモニタ電流を基準値と比較して差分値を求め、この差分値を用いて駆動電流を変え半導体レーザの光出力を負帰還制御する方式である。
【0036】
半導体レーザとモニタPDとは、構成する半導体材料が異なる等の理由から、モノリシックに集積化することが困難である場合が多い。この場合は、半導体レーザの外部にモニタPDを設けることになる。従って、半導体レーザとモニタPDとをモノリシックに一体化できれば部品点数の削減につながり、またノイズ等の影響も受けにくくなり安定動作の上からも好ましい。
【0037】
一方、モニタPDをモノリシックに集積化したVCSELの例として、メサ状の発光部を高抵抗領域で囲み、その高抵抗領域の周囲に、発光部と同じ層構造のモニタ用フォトダイオードを配置し、発光部の光強度分布の裾がモニタ用フォトダイオードの光吸収部に達するようにしたVCSELが知られている。しかしながら、このVCSELの例では、発光部がモニタPDによって包囲されているため、製造工程における酸化処理によって発光部内に酸化狭窄層を形成することができない。上述したように、酸化狭窄層を欠くと低閾値電流化等の制御が困難になる。
【0038】
そこで本実施の形態に係る発光デバイスでは、発光部とモニタPDとを共通の半導体層を有する一体のメサとして形成し、発光部で発光した光の一部を基板面に対して平行に伝播させ、伝播された光がモニタPDで受光されるようにした構造を採用している。本実施の形態に係る発光デバイスでは、発光部とモニタPDとが一体のメサで形成されているため、酸化狭窄層を形成するための酸化処理を施すことができる。
【0039】
発光デバイス10では、メサMに対する酸化処理により、非酸化領域32aと酸化領域32bが形成される。
図1(b)に示す境界18は、非酸化領域32aと酸化領域32bとの境界を示している。つまり、境界18で区画された非酸化領域32aがメサM1からメサM2にかけて形成されている。
【0040】
酸化領域32bは酸化されて電気抵抗が高くなるので非導電領域として機能し、p側電極パッド42から注入された電流は非酸化領域32aに閉じ込められる。また、半導体は酸化されると一般に屈折率が低下するので、非酸化領域32aの屈折率は酸化領域32bの屈折率よりも大きくなる。そのため、発光部で発光した光は、低屈折率の酸化領域32bによって囲まれた非酸化領域32aに閉じ込められる。つまり、酸化狭窄層によって非酸化領域32a内に光と電流が閉じ込められる。
【0041】
発光デバイス10では、非酸化領域32aが、メサM1で構成された発光部からメサM2で構成された受光部にかけて形成されているため、発光部で発生したレーザ発振光の一部が、基板12に対して平行方向(すなわち、発光部での発振方向と交差する方向、以下「横方向」という場合がある)に伝播し、受光部(モニタPD)に到達して電流に変換される。
【0042】
このように、本実施の形態に係る発光デバイス10では、メサM1による発光部とメサM2による受光部とが光学的に結合されることにより結合共振器が構成され、発光部から染み出した光が結合部40を伝播し、受光部に接続された検出部でモニタ電流として検出される。つまり、本実施の形態に係る発光デバイス10によれば、小型で簡易なデバイス構造で、高効率なモニタPD一体型発光デバイスが実現される。なお、検出部ではモニタ電流を電圧に変換して検出する場合が多いので、以下では検出部の一例として「電流−電圧変換部」を例示して説明する。
【0043】
図2を参照して、本実施の形態に係る結合共振器についてより詳細に説明する。上述したように、発光デバイス10ではメサM1によって発光部50(VCSEL)が形成され、メサM2によって受光部(モニタPD)52が形成されている。発光部50では、p側電極パッド42−1にVCSEL用電源(図示省略)の正極を接続し、n側電極パッド44−2に負極を接続する(順バイアス)。そして、p側電極パッド42−1とn側電極パッド44−2との間に駆動電流を流すことによって、
図2に示すように、下部DBR16と上部DBR26とで形成された共振器で発振光Lvが発生する。発振光Lvの一部は、出射面保護層38から出射光Loとして出射される。
【0044】
図2に示すように、発振光Lvの一部は伝播光Lm(モニタ光)として横方向に伝播する。この伝播光Lmは、下部DBR16と上部DBR26とで形成された共振器を全反射しつつ発光部50から受光部52へと伝播する。そのため、伝播光Lmは群速度が低下し、いわゆるスローライトとなっている。一方、受光部52では、n側電極パッド44−1にモニタPD用電源(図示省略)の正極を接続し、p側電極パッド42−2に負極を接続する(逆バイアス)。そして、n側電極パッド44−1とp側電極パッド42−2との間に伝播光Lmによる受光電流を流すことによって、発光部50における光出力をモニタする。この際、受光部52の光吸収層は、発光部を構成する活性領域24と兼用となっている。そのため、受光部52を構成する光吸収層としては必ずしも十分な膜厚とはなっていない。しかしながら、本実施の形態に係るモニタ光は上記のようにスローライトなので、薄い光吸収層でもキャリアが発生しやすく十分な光電流(フォトカレント)が得られる。
【0045】
次に、本実施の形態に係る結合部40の作用について説明する。
図1(b)に示すように、結合部40では非酸化領域32a及び酸化領域32bがくびれた形状となっている。そのため、非酸化領域32aの幅が、
図2に示す発光部50から受光部52にかけて、「広い」→「狭い」→「広い」となっている。
【0046】
一方、酸化領域32bの面積の非酸化領域32aの面積に対する割合でみると、「小さい」→「大きい」→「小さい」となっている。ここで、上記のように、非酸化領域32aの屈折率は酸化領域32bの屈折率より大きい。周知のように、光導波路において周囲に屈折率の小さい物質の割合が多くなると光導波路を伝播する光が感ずる屈折率(等価屈折率、又は実効屈折率)が低下する。そのため、結合部40における非酸化領域32aの等価屈折率は、両側の発光部50及び受光部52の非酸化領域32aの等価屈折率よりも低くなっている。すなわち、非酸化領域32aの等価屈折率が、発光部50から受光部52にかけて、「高い」→「低い」→「高い」となっている。なお、本実施の形態で用いられる等価屈折率とは、基板に対して垂直方向に積層している、屈折率の異なる半導体層の実効的な屈折率(多層半導体層の屈折率を単層の屈折率とみなす)を、等価屈折率法によって求められたものを指す。
【0047】
発光デバイス10では、上述した構成の等価屈折率分布を有することによって、発光部50(VCSEL)で発光した光が効率よく非酸化領域32aに閉じ込められるとともに、発光部50から光(スローライト)が染み出し受光部52で受光される。なお、発光部50から受光部52にかけての、非酸化領域32aの等価屈折率が「高い」→「高い」→「高い」、すなわちほぼ一様となっている場合には発光部50における光の閉じ込めが困難である。一方、発光部50から受光部52にかけての、非酸化領域32aの等価屈折率が、「高い」→「低い」→「低い」となっている場合には発光部50における光の閉じ込めは可能であるが、染み出す光が少なくなり、例えばモニタ電流の検出が困難となり、またS/N比も悪くなる。
【0048】
なお、本実施の形態では、結合部40における非酸化領域32aの幅を狭くすることにより、等価屈折率を「高い」→「低い」→「高い」とする形態を例示して説明たが、これに限られない。例えば、結合部40の位置(発光部50と受光部52との間)に溝を設けて、等価屈折率を「高い」→「低い」→「高い」とする形態としてもよい。また、幅を狭くする構成と溝を設ける構成とを組み合わせてもよい。なお、この場合、該溝には周囲の半導体層よりも屈折率の低い物質(一例として空気)を充填すればよい。
【0049】
次に、
図3を参照して、発光部50(VCSEL)における出射光Loとモニタ電流Imとの関係について説明する。
図3(a)では電流の流れが直感的に理解できるように、電極を模式化して描いている。すなわち、
図3(a)に示すように発光部50にはp側電極パッド42−1とn側電極パッド44−2とが接続され、受光部52には、n側電極パッド44−1とp側電極パッド42−2とが接続されている。
【0050】
図3(a)に示すように、発光部50では、p側電極パッド42−1にVCSEL用電源(図示省略)の正極を接続し、n側電極パッド44−2に負極を接続してp側電極パッド42−1とn側電極パッド44−2との間に駆動電流Ivを流すことにより、下部DBR16と上部DBR26とで形成された共振器で発振光Lvが発生する。発振光Lvの一部は、発光面(出射面保護層38が存在する面)から出射光Loとして出射される。一方、発振光Lvの一部は伝播光Lmとして横方向に伝播し、受光部52に入射される。受光部52では、n側電極パッド44−1にモニタPD用電源(図示省略)の正極を接続し、p側電極パッド42−2に負極を接続してn側電極パッド44−1とp側電極パッド42−2との間に伝播光Lmによるモニタ電流Im(光電流)を流すことによって、発光部50における光出力をモニタする。すなわち、発光部50(VCSEL)の光出力Poに応じて伝播光Lmの横方向への染み出し量が変化し、その変化量に応じてモニタ電流Im(光電流)の値が変化する。
【0051】
図3(b)は、駆動電流Iv、出射光Loの光パワーである光出力Po、及びモニタ電流Imの間の関係を示すグラフである。
【0052】
図3(b)に示すように、発光部50(VCSEL)は、基本的に駆動電流Ivに略比例する光出力Poが発生するが、発光部50は固有の閾値電流(スレッショルド電流)Ithを有し、駆動電流Ivがこの閾値電流Ithを越えると光出力Poが発生する。一方、モニタ電流Imは光出力Poにほぼ比例して発生する。従って、モニタ電流Imを用いて発光部50の光出力Poの監視が可能となる。
【0053】
次に、
図4を参照してAPC制御部54について説明する。
図4は、発光デバイス10と発光デバイスに接続されたAPC制御部54を示している。
【0054】
図4に示すように、APC制御部54は、電流−電圧変換部、基準電圧発生部、比較部、及び駆動部を含んで構成されている。電流−電圧変換部は、発光デバイス10の受光部52で発生したモニタ電流Imを入力し、該モニタ電流Imをモニタ電圧Vmに変換する。モニタ電圧Vmもモニタ電流Im同様光出力Poに比例している。基準電圧発生部は、モニタ電圧Vmに対する基準電圧Vrを発生する部位であり、基準電圧Vrは光出力Poの目標値を決定している。なお、電流−電圧変換部は、例えばモニタ電流Imを流してモニタ電流Imに比例するモニタ電圧Vmを発生する抵抗で構成する。その際、モニタ電流Imを入力とし、モニタ電流Imに比例する電流を発生させるカレントミラー回路を用い、該抵抗を負荷としてもよい。また、電流−電圧変換部はこれらの回路に限らず、必要に応じ増幅回路等を設けてもよい。
【0055】
比較部は、モニタ電圧Vmと基準電圧Vrと比較し、誤差電圧Veを発生する部位であり、APC制御ではこの誤差電圧Veがゼロに近づくように制御される。駆動部は、誤差電圧Veに応じた駆動電流Ivを発生させ、発光デバイス10の発光部50に負帰還させる部位である。なお、駆動電流は駆動電圧であってもよい。
【0056】
発光デバイス10では、以上のように構成されたAPC制御部54によって発光部50の光出力Poを制御することにより、光出力Poの安定化を図っている。
【0057】
次に、
図5及び
図6を参照して、実施の形態に係る発光デバイス10の製造方法について説明する。本実施の形態では、1枚のウエハ上に複数の発光デバイス10が形成されるが、以下ではそのうちの1つの発光デバイス10について図示し説明する。
【0058】
図5(a)に示すように、まず、半絶縁性GaAsの基板12上に、n型のコンタクト層14、n型の下部DBR16、活性領域24、p型の上部DBR26、及びp型のコンタクト層28をこの順にエピタキシャル成長させる。
【0059】
その際、n型のコンタクト層14は、一例として、キャリア濃度を約2×10
18cm
−3とし、膜厚を2μm程度として形成する。また、n型の下部DBR16は、一例として、各々の膜厚が媒質内波長λ/nの1/4とされた、Al
0.15Ga
0.85As層とAl
0.9Ga
0.1As層とを交互に37.5周期積層して形成される。Al
0.3Ga
0.7As層のキャリア濃度及びAl
0.9Ga
0.1As層のキャリア濃度は、各々約2×10
18cm
−3とされ、下部DBR16の総膜厚は約4μmとされる。また、n型キャリアとしては、一例として、Si(シリコン)を用いる。
【0060】
活性領域24は、一例として、ノンドープのAl
0.6Ga
0.4As層による下部スぺーサ層と、ノンドープの量子井戸活性層と、ノンドープのAl
0.6Ga
0.4As層による上部スぺーサ層とで形成される。量子井戸活性層は、例えば、Al
0.3Ga
0.7Asによる4層の障壁層、及び各障壁層の間に設けられたGaAsによる3層の量子井戸層で構成される。Al
0.3Ga
0.7Asによる障壁層の膜厚は各々約8nmとされ、GaAsによる量子井戸層の膜厚は各々約8nmとされ、活性領域24全体の膜厚は媒質内波長λ/nとされる。
【0061】
p型の上部DBR26は、一例として、各々の膜厚が媒質内波長λ/nの1/4とされた、Al
0.15Ga
0.85As層とAl
0.9Ga
0.1As層とを交互に25周期積層して形成される。この際、Al
0.15Ga
0.85As層のキャリア濃度及びAl
0.9Ga
0.1As層のキャリア濃度は、各々約4×10
18cm
−3とされ、上部DBR26の総膜厚は約3μmとされる。また、p型キャリアとしては、一例として、C(カーボン)を用いる。さらに、上部DBR26中には、後述の工程において酸化狭窄層32を形成するためのAlAs層が含まれている。
【0062】
p型のコンタクト層28は、一例として、キャリア濃度を約1×10
19cm
−3以上とし、膜厚を10nm程度として形成する。
【0063】
次に、エピ成長の完了したウエハのコンタクト層28上に電極材料を成膜した後、該材料を例えばフォトリソグラフィによるマスクを用いてドライエッチングし、
図5(b)に示すように、P側電極配線36を取り出すためのコンタクトメタルCMpを形成する。コンタクトメタルCMpは、一例として、Ti/Auの積層膜を用いて形成される。
【0064】
次に、ウエハ面上に出射面保護層となる材料を成膜した後、該材料を例えばフォトリソグラフィによるマスクを用いてドライエッチングし、
図5(b)に示すように、出射面保護層38を形成する。出射面保護層38の材料としては、一例として、シリコン窒化膜を用いる。
【0065】
次に、フォトリソグラフィによりマスクを形成した後、出射面保護層38を介してプロトンH+等をイオン注入し、
図5(c)に示すように電流阻止領域60を形成する。
【0066】
次に、フォトリソグラフィ及びエッチングによりウエハ面上にマスクを形成し、該マスクを用いてドライエッチングし、
図5(d)に示すようにメサMS1を形成する。メサMS1の形成に際しては、平面視で
図1(b)に示すメサM1、M2に相当する層を有するメサMが形成されるようにするエッチングする。
【0067】
次に、ウエハに酸化処理を施して上記のAlAs層を側面から酸化し、
図5(e)に示すように、メサMS1内に酸化狭窄層32を形成する。酸化狭窄層32は、非酸化領域32aおよび酸化領域32bを含んで構成されている。酸化領域32bが上記酸化処理により酸化された領域であり、酸化されないで残された領域が非酸化領域32aである。非酸化領域32aは、
図1(b)に示すようにメサM1からM2にかけて連続して形成される。
【0068】
次に、フォトリソグラフィ及びエッチングによりウエハ面上にマスクを形成し、該マスクを用いてドライエッチングし、
図5(f)に示すようにメサMS2を形成する。
【0069】
次に、フォトリソグラフィ及びエッチングによりウエハ面上にマスクを形成し、該マスクを用いてドライエッチングし、
図6(a)に示すようにメサMS3を形成する。
【0070】
コンタクト層14上に電極材料を成膜した後、該材料を例えばフォトリソグラフィによるマスクを用いてドライエッチングし、
図6(b)に示すように、n側電極配線30を取り出すためのコンタクトメタルCMnを形成する。コンタクトメタルCMnは、一例として、AuGe/Ni/Auの積層膜を用いて形成される。
【0071】
次に、
図6(c)に示すように、ウエハの出射面保護層38、コンタクトメタルCMp、CMnを除く領域にシリコン窒化膜による層間絶縁膜34を成膜する。
【0072】
次に、ウエハ面上に電極材料を成膜した後、該電極材料を例えばフォトリソグラフィによるマスクを用いてドライエッチングし、
図6(d)に示すように、p側電極配線36及びp側電極パッド42、n側電極配線30及びn側電極パッド44を形成する。p側電極配線36及びp側電極パッド42、n側電極配線30及びn側電極パッド44は、一例として、Ti/Auの積層膜を用いて形成する。本工程により、p側電極配線36がコンタクトメタルCMpと接続され、n側電極配線30がコンタクトメタルCMnと接続される。
【0073】
次に、図示しないダイシング領域においてダイシングし、発光デバイス10を分離して個片化する。以上の工程により、本実施の形態に係るp側電極パッド42、n側電極パッド44を含む発光デバイス10が製造される。
【0074】
[第2の実施の形態]
図7を参照して、本実施の形態に係る発光デバイス10aについて説明する。発光デバイス10aは、電流阻止領域60を電流阻止領域60aに変更し、結合部40を結合部40aに変更し、半導体層のくびれをなくした形態である。従って、電流阻止領域、結合部以外の構成は上記実施の形態の発光デバイス10と同様なので、同様の構成には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0075】
図7(a)、(b)に示すように、発光デバイス10aでは、メサM1とM2との間に配置された結合部40aの位置に電流阻止領域60aと凹部62とが配置されている。電流阻止領域60aは電流阻止領域60と異なり、上部DBR26の一部に設けられている。すなわち、電流阻止領域60aは、酸化狭窄層32の上部から上部DBR26の予め定められた高さまで形成されており、電流阻止領域60aの上部には凹部62が配置されている。
【0076】
本実施の形態に係る発光デバイス10aでは、凹部62が等価屈折率を下げる作用を有するので、
図7(b)に示すように、半導体層にくびれを設けなくてもメサM1からメサM2にかけての等価屈折率が「高い」→「低い」→「高い」とされる。従って、メサMの加工形状をより簡略化しつつ、発光部で発光した光が効率よく非酸化領域32aに閉じ込められるとともに、発光部から光(スローライト)が染み出し受光部52で受光される。
【0077】
なお、発光デバイス10aの製造は上記実施の形態に係る発光デバイス10に準じて行われる。すなわち、発光デバイス10aの場合は、
図5(a)の状態において予め上部DBR26の途中まで凹部62を形成し、
図5(b)に示すように出射面保護層38を形成後、
図5(c)に示すようにプロトンH+等をイオン注入して電流阻止領域60aを形成すればよい。
【0078】
また、上記実施の形態では凹部62と電流阻止領域60aを併用する形態を例示して説明したが、これに限られず、例えば凹部62のみを設ける形態としてもよい。上述したように凹部62においては非酸化領域32aにおける屈折率が低下するので、必ずしも凹部62の位置にくびれ部を設ける必要はない。
【0079】
[第3の実施の形態]
図8及び
図9を参照して、本実施の形態に係る発光デバイス10bないし発光デバイス10eについて説明する。本実施の形態は、上記各実施の形態において、メサMの形状、及び結合部の形状を変えた形態である。
【0080】
上記各実施の形態では、平面視でメサM1とM2とが対称である形態を例示して説明したが、これに限られない。例えば、
図8(a)に示す発光デバイス10bのようにメサM1とM2とが非対称な形状であってもよく、この場合は結合部40bの形状も平面視で非対称となる。その際、
図8(a)に示すように、発光部を構成するメサM1より受光部を構成するメサM2の方を大きくすると、モニタ電流Imの検出効率が向上する。
【0081】
また、上記各実施の形態では、メサM1及びメサM2が矩形の形態を例示して説明したが、これに限られず、
図8(b)に示す発光デバイス10cのように円形としてもよい。
なお、発光デバイス10b、10cでは各々くびれ部を有する結合部40b、40cを備えているので、各々電流阻止領域60b、60cのみを有する形態であってもよいし、むろん上記凹部を併用する形態であってもよい。
【0082】
図9は結合部の位置に、
図7(a)に示すような凹部を設けた形態である。先述したように、凹部を設けるとその位置の非酸化領域32aの等価屈折率が低下するので、必ずしも半導体層にくびれ部を設ける必要がない。
【0083】
図9(a)は略正方形のメサM1と長方形のメサM2とを接続した発光デバイス10dの形態であり、結合部40dにはくびれを設けていない。発光デバイス10dでは、メサM2の等価屈折率がメサM1の等価屈折率より低い一定値となっている。しかしながら、電流阻止領域60dの位置に配置された凹部(図示省略)により、電流阻止領域60dの位置における等価屈折率がメサM2の等価屈折率より低い値となっている。そのため、メサM1からメサM2にかけての間にメサM2よりも等価屈折率が低い領域が存在することになる。従って、発光デバイス10dによっても、発光部で発光した光が効率よく非酸化領域32aに閉じ込められるとともに、発光部から光(スローライト)が染み出し受光部52で受光される。
【0084】
図9(b)はメサMの全体の形状を1つの長方形として、メサM1とメサM2とを形成した発光デバイス10eの形態であり、結合部40eにはくびれを設けていない。従って、非酸化領域32aの等価屈折率はメサM1からM2にかけて一定である。しかしながら、電流阻止領域60eの位置に配置された凹部により、電流阻止領域60eの位置における等価屈折率がメサM1、M2の等価屈折率より低い値となっている。そのため、メサM1からメサM2にかけての間にメサM1、M2よりも等価屈折率が低い領域が存在することになる。従って、発光デバイス10eによっても、発光部で発光した光が効率よく非酸化領域32aに閉じ込められるとともに、発光部から光(スローライト)が染み出し受光部52で受光される。
【0085】
なお、上記各実施の形態ではAPC制御部54を発光デバイス10とを別体とする形態を例示して説明したがこれに限られない。例えば、発光デバイス10とAPC制御部54とを同じ半導体プロセスを用いて集積化し、1チップとする構成としてもよい。また、APC制御部54のうちの電流−電圧変換部のみを発光デバイスと集積化する形態としてもよく、この場合は、例えばモニタ電流検出用の抵抗、あるいは抵抗とカレントミラーとを組み合わせた回路を発光デバイスと集積化すればよい。
【0086】
また、上記実施の形態では、半絶縁性のGaAs基板を用いたGaAs系の発光デバイスを例示して説明したが、これに限られず、GaN(窒化ガリウム)による基板、あるいはInP(リン化インジウム)による基板を用いた形態としてもよい。
【0087】
また、上記実施の形態では、基板にn型のコンタクト層を形成する形態を例示して説明したが、これに限られず、基板にp型のコンタクト層を形成する形態としてもよい。その場合には、上記の説明において、n型とp型を逆に読み替えればよい。