(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1接地部及び前記第2接地部は、前記ソール部を前記地面に設置したときに、側方断面視において当該地面に線で接するように構成されている、請求項4に記載のゴルフクラブヘッド。
前記ソール部は、前記第2溝よりもバック側に位置し、前記ソール部を前記地面に設置したときに当該地面に接する第3接地部をさらに有する、請求項4または5に記載のゴルフクラブヘッド。
前記ソール部は、前記第1主内壁及び第2主内壁の少なくとも1つにおいて、前記トゥ−ヒール方向に延びる厚肉部をさらに有する、請求項1から6のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
前記第1溝及び前記第2溝の少なくとも一方は、平面視において、バック側に向かって凸状となるように延びている、請求項1から9のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの場合、ソール部に形成された溝は、ゴルフクラブヘッドの反発性能の向上に寄与する。しかしながら、反発性能のさらなる向上を目指すならば、単に溝を形成しさえすればよいというものではなく、溝の構成にさらなる工夫が求められる。そして、本発明者らは、特に複数の溝を形成する場合には、それらの溝の相対的な構成に工夫を加えることが重要であると考えた。
【0006】
本発明は、反発性能の高いゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るゴルフクラブヘッドは、フェース部と、クラウン部と、ソール部と、を備え、前記フェース部、クラウン部、及びソール部により囲まれた内部空間を有し、前記ソール部には、トゥ−ヒール方向に延び、前記内部空間側に向かって窪んだ第1溝及び第2溝が形成され、前記第1溝は、前記第2溝よりもフェース側に配置され、前記第1溝は、フェース側に配置された第1主内壁と、バック側に配置された第1副内壁と、を有し、前記第1主内壁は、前記第1副内壁よりもフェース−バック方向の長さが長く形成されるとともに、バック側にいくにしたがって上方に向かうように傾斜し、前記第2溝は、フェース側に配置された第2副内壁と、バック側に配置された第2主内壁と、を有し、前記第2主内壁は、前記第2副内壁よりもフェース−バック方向の長さが長く形成されるとともに、フェース側にいくにしたがって上方に向かうように傾斜している。
【0008】
上記ゴルフクラブヘッドにおいて、前記第2溝は、前記第1溝よりも深くすることができる。
【0009】
上記各ゴルフクラブヘッドにおいて、前記第1溝は、フェース側に配置された第1主内壁と、バック側に配置された第1副内壁と、を連結することで形成され、前記第2溝は、フェース側に配置された第2副内壁と、バック側に配置された第2主内壁と、を連結することで形成されているものとすることができる。
【0010】
上記各ゴルフクラブヘッドにおいて、前記ソール部は、前記第1溝よりもフェース側に位置し、前記ソール部を地面に設置したときに当該地面に接する第1接地部と、前記第1溝と前記第2溝との間に位置し、前記ソール部を前記地面に設置したときに当該地面に接する第2接地部と、をさらに備えることができる。
【0011】
上記各ゴルフクラブヘッドにおいて、前記第1接地部及び前記第2接地部は、前記ソール部を前記地面に設置したときに、側方断面視において当該地面に線で接するように構成されているものとすることができる。
【0012】
上記各ゴルフクラブヘッドにおいて、前記ソール部は、前記第2溝よりもバック側に位置し、前記ソール部を前記地面に設置したときに当該地面に接する第3接地部をさらに有することができる。
【0013】
上記各ゴルフクラブヘッドにおいて、前記ソール部は、前記第1主内壁及び第2主内壁の少なくとも1つにおいて、前記トゥ−ヒール方向に延びる厚肉部をさらに有することができる。
【0014】
上記各ゴルフクラブヘッドにおいて、前記ソール部は、少なくとも前記第1溝の位置においてフェース−バック方向に延びる厚肉部をさらに有することができる。
【0015】
上記ゴルフクラブヘッドにおいて、トゥ−ヒール方向において、前記第1溝は、前記第2溝よりも短くすることができる。
【0016】
上記各ゴルフクラブヘッドにおいて、前記第1溝及び前記第2溝の少なくとも一方は、平面視において、バック側に向かって凸状となるように延びているものとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るゴルフクラブヘッドによれば、反発性能を高くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明のいくつかの実施形態に係るゴルフクラブヘッドについて説明する。
【0020】
<1.ゴルフクラブヘッドの概要>
図1は、このゴルフクラブヘッドの斜視図、
図2は、ヘッドの基準状態での平面図、
図3は、
図2のA−A線断面図である。
図1に示すように、このゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある)100は、内部空間を有する中空構造であり、フェース部1、クラウン部2、ソール部3、及びホーゼル部5によって壁面が形成されたウッド型のゴルフクラブヘッドである。
【0021】
フェース部1は、ボールを打球する面であるフェース面を有しており、クラウン部2はフェース部1と隣接し、ヘッドの上面を構成する。ソール部3は、主としてヘッドの底面を構成し、フェース部1とクラウン部2以外のヘッド100の外周面を構成する。すなわち、ヘッド100の底面のほか、フェース部1のトウ側からヘッドのバック側を通りフェース部1のヒール側へと延びる部位もソール部3の一部である。さらに、ホーゼル部5は、クラウン部2のヒール側に隣接して設けられる部位であり、ゴルフクラブのシャフト(図示省略)が挿入される挿入孔51を有している。そして、この挿入孔51の中心軸線Zは、シャフトの軸線に一致している。
【0022】
ここで、ゴルフクラブヘッド100を地面に設置するときの基準状態について説明する。まず、
図2及び
図3に示すように、上記中心軸線Zが地面Hに対して垂直な平面P1に含まれ、且つ所定のライ角及びリアルロフト角で地面上にヘッドが載置された状態を基準状態と規定する。そして、上記平面P1を基準垂直面と称する。また、
図2に示すように、上記基準垂直面P1と地面との交線の方向をトゥ−ヒール方向と称し、このトゥ−ヒール方向に対して垂直であり且つ地面に対して平行な方向をフェース−バック方向と称することとする。
【0023】
本実施形態において、フェース部1とクラウン部2、及びフェース部1とソール部3との境界は、次のように定義することができる。すなわち、両者の間に稜線が形成されている場合には、これが境界となる。一方、明確な稜線が形成されていない場合には、
図4Aに示されるように、ヘッド重心GとスイートスポットSSとを結ぶ直線Nを含む各断面E1、E2、E3…において、
図4Bに示されるように、フェース外面輪郭線Lfの曲率半径rがスイートスポット側からフェース外側に向かって初めて200mmとなる位置Peがフェース部1の周縁となり、これがクラウン部2またはソール部3との境界として定義される。なお、スイートスポットSSとは、ヘッド重心Gを通るフェース面の法線(直線N)とこのフェース面との交点である。
【0024】
また、本実施形態において、クラウン部2とソール部3との境界は次のように定義することができる。すなわち、クラウン部2とソール部3との間に稜線が形成されている場合には、これが境界となる。一方、これらの間に明確な稜線が形成されていない場合には、ヘッドを基準状態に設置し、これをヘッド100の重心の真上から見たときの輪郭が境界となる。
【0025】
また、ヘッド100は、例えば、比重がほぼ4.4〜4.5程度のチタン合金(Ti−6Al−4V)で形成することができる。また、チタン合金以外にも、例えばステンレス鋼、マレージング鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、またはアモルファス合金などの中から1種または2種以上を用いて形成することもできる。
【0026】
<2.ゴルフクラブヘッドの組立構造>
本実施形態に係るゴルフクラブヘッド100は、
図1〜
図3に示すように、クラウン部2及びソール部3を有するヘッド本体101と、フェース部1及びその周縁から延びる周縁部15を有するカップ状に形成されたフェース用部材102と、を組み立てることで構成される。このヘッド本体101は、クラウン部2及びソール部3で囲まれた開口18を有し、この開口18を塞ぐようにフェース用部材102が取り付けられる。すなわち、フェース用部材102の周縁部15の端面が、ヘッド本体101の開口18の端面と突き合わされ、これらが、溶接によって接合される(いわゆるカップフェース構造)。そして、フェース用部材102は、ヘッド本体101の開口18に取付けられることで、ヘッド本体101と一体化され、これによって、フェース用部材102の周縁部15は、ヘッド100のクラウン部2及びソール部3の一部として機能する。したがって、フェース用部材102の周縁部15がヘッド本体101に取付けられることで一体的に形成される面が、ヘッド100のクラウン部2及びソール部3を構成する。そのため、厳密には、ヘッド本体101のクラウン部2及びソール部3は、ヘッド100のクラウン部2及びソール部3の一部ではあるが、本願では、これらを区別することなく、ヘッド本体101の各部も、単にクラウン部2、ソール部3と称することがある。
【0027】
ヘッド本体101とフェース用部材102とは、例えば、溶接(TIG(タングステン−不活性ガス)溶接、プラズマ溶接、レーザー溶接、ロウ付けなど)により接合される。このようなヘッド本体101及びフェース用部材102は、種々の方法で作製することができる。例えば、ヘッド本体101は、公知のロストワックス精密鋳造法などの鋳造によって製造することができる。また、フェース用部材102は、例えば、鍛造製法や、平板のプレス加工、鋳造等により製造することができる。なお、ここで説明したヘッド100の部品構成は例示であり、ここでの例と異なる複数の部品から組み立てることもできる。
【0028】
<3.ソール部の構造>
図5は、ヘッド100をトゥ側から見た基準状態での側面図、
図6は、ヘッド100の基準状態での底面図、
図7は、
図3において点線で囲まれたソール部3付近の領域の部分拡大図である。
図5〜
図7に示すとおり、ソール部3には、内部空間に向かって窪み、トゥ−ヒール方向にほぼ平行に延びる2つの溝が形成されている。ここでは、フェース側の溝を第1溝10と称し、バック側の溝を第2溝20と称することとする。また、これらの溝10,20は、底面視において、バック側に凸となるようにやや湾曲している。
【0029】
図5〜
図7に示すように、ソール部3には、フェース部1と連結され、トゥ−ヒール方向に延びる帯状の第1接地部31を有しており、この第1接地部31のバック側に第1溝10が連結されている。そして、第1溝10は、底面視が矩形状に形成されている。また、第1溝10は、フェース側から延びる第1主内壁11と、この第1主内壁11のバック側に配置される第1副内壁12とが連結されることで、側方断面視においては、概ね三角形状に形成されている。すなわち、第1主内壁11は、第1接地部31のバック側の端部からバック側にいくにしたがって上方(クラウン部2側)に向かうように傾斜している。一方、第1副内壁12は、第1主内壁11のバック側の端部からバック側にいくにしたがって下方に傾斜している。また、第1主内壁11のフェース−バック方向の長さは、第1副内壁12よりも長く、第1溝10の大半が第1主内壁11により形成されている。なお、以下では、第1主内壁11と第1副内壁12の連結部分、つまり断面三角形状の頂部を、第1頂部13と称することとする。この第1頂部13が、第1溝10の最深部となる。
【0030】
ソール部3において、第1溝10のバック側には、トゥ−ヒール方向に延びる帯状の第2接地部32が設けられている。そして、この第2接地部32のバック側に第2溝20が連結されている。第2溝20は、底面視が概ね帯状に形成されており、第1溝10よりもトゥ−ヒール方向の長さが長くなっている。すなわち、第1溝10よりもトゥ側及びヒール側に延びるように形成されている。また、第2溝20は、第2接地部32から延びる第2副内壁21と、この第2副内壁21のバック側に配置される第2主内壁22とが連結されることで、側方断面視においては、概ね三角形状に形成されている。すなわち、第2副内壁21は、第2接地部32のバック側の端部からバック側にいくにしたがって上方(クラウン部2側)に向かうように傾斜している。一方、第2主内壁22は、第2副内壁21のバック側の端部からバック側にいくにしたがって下方に傾斜している。また、第2主内壁22のフェース−バック方向の長さは、第2副内壁21よりも長く、第2溝20の大半が第2主内壁22により形成されている。なお、以下では、第2主内壁22と第2副内壁21の連結部分、つまり断面三角形状の頂部を、第2頂部23と称することとする。この第2頂部23が、第2溝20の最深部となる。
【0031】
また、第2溝20のバック側には、トゥ−ヒール方向に延びる帯状の第3接地部33が設けられている。そして、第3接地部33は、上述した第1接地部31及び第2接地部32とともに、ヘッド100の基準状態において地面Hに接する。このとき、第1及び第2接地部31,32は、側面視において地面Hとほぼ平行な平坦面を有しているが、第3接地部33は、第2溝20と接するフェース側の端縁のみが地面と接するようになっている。この構成により、ヘッド100は、第1〜第3接地部31〜33の3点で、基準状態において地面Hに接する。これにより、ゴルファーがヘッド100を基準状態に構えたときにおいて、地面H上においてヘッド100が複数の点で支持され、ヘッド100が安定する。
【0032】
ところで、上述した第1溝10と第2溝20とを対比すると、以下の通りである。まず、第1溝10の第1頂部13は、第2溝20の第2頂部23よりも低い位置にある。すなわち、
図7に示すとおり、基準面Hからの第1溝10の深さd1は、第2溝20の深さd2よりも小さい。また、第1溝10のフェース−バック方向の長さw1は、第2溝20のフェース−バック方向の長さw2よりも長い。
【0033】
また、ソール部3において、第2溝20よりもバック側には、トゥ−ヒール方向のほぼ中央付近に平面視台形状の凹部が形成されており、この凹部にはネジにより重量物60が取り外し可能に取り付けられている。これにより、ヘッド100の重心がバック側中央に近付くように調整され、さらなる低重心化が図られている。
【0034】
<4.特徴>
本実施形態に係るゴルフクラブヘッドによれば、次の効果を得ることができる。
【0035】
<4−1>
上記のように、第1溝10においては第1主内壁11が多くの部分を占め、この第1主内壁11はバック側にいくにしたがって上方に傾斜している。一方、第1溝10よりもバック側にある第2溝20においては第2主内壁22が多くの部分を占め、この第2主内壁22はフェース側にいくにしたがって上方に傾斜している。ここで、
図8に示すように、第1主内壁11に沿い、フェース−バック方向に延びる仮想線V1と、第2主内壁22に沿い、フェース−バック方向に延びる仮想線V2とを設定する。そうすると、仮想線V1及びV2は、ヘッド100の内部空間側へ凸となるように交差するため、第1溝10及び第2溝20は、全体として山型に形成される。したがって、フェース部1にボールの打撃力が作用すると、ソール部3は、第1溝10及び第2溝20の山型形状により、内部空間側へ凹むように変形しやすくなるため、ヘッド100の反発性能を向上することができる。
【0036】
<4−2>
ここで、第1溝10及び第2溝20は、全体として山型形状となっているが、例えば、第1副内壁12及び第2副内壁21をなくし、第1主内壁11と第2主内壁22とを直接接続した溝を形成することも考えられるが、そうすると、溝全体が深くなり、ヘッド100の低重心化が阻害されるという問題がある。これに対して、本実施形態では、第1溝10と第2溝20に分け、一方の溝を浅くすることで、溝が全体として深くなるのを抑制し、ヘッド100の低重心化を図っている。
【0037】
ところで、第1溝10と第2溝20との間隔、つまり第2接地部32のフェース−バック方向の長さL3(最も狭い部分の長さ:
図6参照)が大き過ぎると上述した山型形状に起因するソール部3の変形が生じにくくなるおそれがある。また、ソール部3の面積は限られているため、第1溝10と第2溝20との間隔が広くなると各溝10,20の幅を小さくする必要があり、これによってもソール部3の変形が生じにくくなるおそれがある。一方、この長さL3が小さ過ぎると、第2接地部32に変形時の応力が集中してしまい、ソール部3の強度が低下するおそれがある。以上の観点から、長さL3は、例えば、4mm以上15mm以下であることが好ましい。
【0038】
<4−3>
また、一般的に、フェース部1は、打撃時の衝撃に対する耐久性が求められることから、ソール部3よりも剛性が高くなるように設計される。そのため、フェース部1の近傍ではソール部3の剛性が高くなり、ソール部3が変形し難い傾向にある。そこで、上記のように、ソール部3に2つの溝10,20を形成すると、フェース部1の近傍に位置する第1溝10は、ソール部3の剛性の低下に寄与するものの、その寄与度は、よりバック側に位置する第2溝20のそれよりも小さい。したがって、本実施形態においては、第1溝10の深さd1と第2溝20の深さd2の関係を、d2>d1としている。すなわち、剛性の低下に効果的に寄与するよりバック側の第2溝20が相対的に深く、かつ、剛性の低下に相対的に寄与しにくいよりフェース側の第1溝10が相対的に浅く形成されている。その結果、主としてバック側の第2溝20により反発性能を効果的に高めつつ、フェース側の第1溝10を浅くすることで重心位置が高くなることが防止される。すなわち、低重心化が図られている。
【0039】
<4−4>
また、各溝10,20のフェース−バック方向の長さと、深さとの関係を次のようにすることができる。まず、第1溝10については、w1/d1>1であることが好ましく、w1/d1>3であることがより好ましく、w1/d1>6であることがさらに好ましい。かかる条件下では、第1溝10が相対的にフェース−バック方向に広く、上下方向に浅くなる。よって、ソール部3の反発性能の向上及びヘッド100の低重心化という、本来的に相反する2つの要求をバランスよく満たすことができる。
【0040】
同様に、第2溝20については、w2/d2>1であることが好ましく、w2/d2>3であることがより好ましく、w2/d2>5であることがさらに好ましい。かかる条件下でも、第2溝20が相対的に前後方向に広く、上下方向に浅くなる。よって、第1溝10と同様に、ソール部3の反発性能の向上及びヘッド100の低重心化という、本来的に相反する2つの要求をバランスよく満たすことができる。また、このような関係により、上記<4−1>で説明したように、第1溝10及び第2溝20を全体として山型に形成することができる。
【0041】
以上のような観点からすると、15mm≦w1≦50mmであることが好ましく、5mm≦w2≦40mmであることが好ましい。また、0.3mm≦d1≦4mmであることが好ましく、0.5mm≦d2≦5mmであることが好ましい。さらに、d2/w2>d1/w1であることが好ましい。
【0042】
以上のd1,d2,w1,w2に関する定量的な条件は、本実施形態では、第1溝10,第2溝20が形成されているトゥ−ヒール方向の全域に亘って成立する。しかしながら、これらの条件は、トゥ−ヒール方向に部分的に成立するものであってもよい。その場合、少なくとも、フェースセンターFcを通り、トゥ−ヒール方向に直交する断面、すなわち、
図3及び
図6に示される断面上において、これらの条件が成立することが好ましい。
【0043】
<4−5>
上記のように、ソール部3においては、バック側に配置された第2溝20がより変形に寄与する。この観点から、第2溝20の位置は、次のように設定することができる。まず、
図6に示すように、基準状態において、フェース−バック方向のヘッド100の長さをL1とし、ヘッド100の最も前側の点(リーディングエッジの最も前側の点)から第2溝20のフェース側のエッジまでのフェース−バック方向の長さをL2とする(
図6参照)。なお、L1は、ヘッド100の最も前側の点から、ヘッド100の最も後側の点までのフェース−バック方向の長さである。
【0044】
このとき、本実施形態では、L2/L1≧0.4であることが好ましく、L2/L1≧0.45であることがより好ましく、L2/L1≧0.5であることがさらに好ましい。これにより、第2溝20が、よりバック側に配置され、フェース部1の高い剛性に起因するソール部3の変形し難い性質の影響を受け難くなる。その結果、ソール部3の反発性能を効果的に向上させることができる。
【0045】
さらに、L2/L1≦0.8であることが好ましく、L2/L1≦0.7であることがより好ましく、L2/L1≦0.6であることがさらに好ましい。かかる条件下では、第2溝20が後方に下がり過ぎることがないからである。つまり、第2溝20が後方に下がり過ぎる、すなわち、フェース面から離れ過ぎると、第2溝20の近傍に打撃時の変形が及び難くなり、第2溝20の近傍での撓み量が減少し得る。また、第2溝20が、ヘッド100の剛性の高いバック側の外殻に近づき過ぎても、第2溝20の近傍での撓み量が減少し得る。従って、反発性能を向上させる観点からは、第2溝20が後方に下がり過ぎないように構成されることが好ましい。
【0046】
L2は、湾曲した第2溝20のフェース側のエッジを基準として定義されるため、トゥ−ヒール方向の位置に応じて変動するが、以上のL2/L1に関する数値条件は、本実施形態では、溝20が形成されているトゥ−ヒール方向の全域に亘って成立する。しかしながら、以上の数値条件は、トゥ−ヒール方向に部分的に成立するものであってもよい。その場合、少なくとも、フェースセンターFcを通り、トゥ−ヒール方向に直交する断面、すなわち、
図3及び
図8に示される断面上において、上記数値条件が成立することが好ましい。
【0047】
<4−6>
また、上記実施形態では、フェース側に近い第1溝10を浅くしている。これにより、ゴルフクラブのスイング時にソール部3が地面H(芝生)につっかかり難く、地面H上を滑り易くなるという利点がある。
【0048】
<4−7>
第2溝20は、ソール部3上において、トゥ−ヒール方向の概ね全域に亘って形成される一方、第1溝10は、ソール部3上において、トゥ−ヒール方向のトゥ寄りの位置にのみ形成されている。すなわち、フェース側の第1溝10の方が、バック側の第2溝20よりもトゥ−ヒール方向に短い。その結果、第1溝10が形成されているトゥ側の位置においては、反発性能が特に向上する。但し、第1溝10が形成されるトゥ−ヒール方向の位置は、ここでの例に限定されない。すなわち、反発性能を特に向上させたいトゥ−ヒール方向の任意の位置において、選択的に第1溝10を形成することができる。ただし、後述する
図10、
図11及び
図14に示すように、第1溝10は、ソール部3上において、トゥ−ヒール方向の概ね全域に亘って形成されていてもよい。その他、第1溝10及び第2溝20のトゥ−ヒール方向の長さは、いずれを長くしてもよく、適宜変更することができる。
【0049】
<4−8>
本実施形態では、第1溝10及び第2溝20は、底面視において、バック側に向かってトゥ−ヒール方向の中央付近が突出するような円弧(湾曲線)を描いている。その結果、打点の集中するフェースセンターFcから第1溝10までの距離を、第1溝10のトゥ−ヒール方向の全域にわたって概ね等しくすることができる。同様に、第2溝20についても、フェースセンターFcから第2溝20までの距離を、第2溝20のトゥ−ヒール方向の全域にわたって概ね等しくすることができる。これにより、打球時に第1溝10及び20近傍を効果的に変形させることができる。
【0050】
<5.変形例>
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0051】
<5−1>
上記実施形態では、第2溝20を第1溝10よりも深く形成しているが、
図9に示すように、第1溝10を深く形成することもできる。このようにしても、第1溝10及び第2溝20は、全体として山型に形成されるため、ソール部3は、内部空間側へ凹むように変形しやすくなる。その結果、ヘッド100の反発性能を向上することができる。
【0052】
<5−2>
上記実施形態では、第2溝20よりもバック側に重量物を配置しているが、重量物60の形状、数、取り付け位置は、これに限定されるものではない。すなわち、ここでの例に限定されず、設計目標となる重心位置に応じて、任意の数の重量物60を任意の位置に取り付けることができる。例えば、
図10の例では、ソール部3の後方だけでなく、第1溝10内のヒール側の位置にも重量物60が取り付けられており、重心をヒール側に近付けることができる。また、
図11の例では、ソール部3の後方の重量物60がなく、第1溝10内のトゥ側及びヒール側の2箇所に重量物60が取り付けられており、重心をフェース側に近付けることができる。後述する
図14の例では、ソール部3の後方に位置する重量物60をトゥ側に少し移動させるとともに、第1溝10内のヒール側の位置にも重量物60が取り付けられている。また、重量物の形状についても、平面視台形状以外の円形、多角形状など、種々の形状にすることができる。
【0053】
<5−3>
本発明に係るゴルフクラブヘッドでは、ソール部3の内部空間側の厚肉部を形成することができる。厚肉部は、種々の形態にすることができる。例えば、
図12A〜
図12Cに示すように、第1主内壁11のフェース−バック方向の中央付近において、トゥ−ヒール方向に延びるリブ状の厚肉部40を形成することができる。この厚肉部40は、ソール部において、トゥ−ヒール方向の概ね全域に亘って延びている。また、この例では、厚肉部40が直線状に延びているが、例えば、厚肉部40は、第1溝10の形状に沿うように、バック側に向かって凸となるように湾曲していてもよい。
【0054】
このような厚肉部40を設けると、フェース−バック方向の剛性の増加は小さいため、フェース−バック方向の反発性能を概ね維持することができる。一方で、厚肉部40は、ソール部3のトゥ−ヒール方向の剛性を上げることができるため、打球音を高音化することができる。
【0055】
このような厚肉部40は、第1主内壁11に限らず、第2主内壁22にも形成することもできる。また、このような厚肉部40は、複数箇所に設けてもよい。
【0056】
また、フェース−バック方向に延びる厚肉部を形成することもできる。例えば、
図13A〜
図13Cに示す例では、第1溝10及び第2溝20の両方に跨って、フェース−バック方向に延びる厚肉部50を形成している。この厚肉部50は、第1溝10と第2溝20とを完全に横断している。ただし、厚肉部50は、第1溝10の位置においてのみ延びており、第2溝20の位置とは重ならないように構成することもできる。
【0057】
この厚肉部50は、ソール部3上においてトゥ寄りの位置に配置されているため、トゥ側において、ソール部3の剛性を高め、反発性能を抑制することができる。その一方、トゥ−ヒール方向において厚肉部が設けられていない位置では、第1溝10及び第2溝20による反発性能の向上が維持される。なお、厚肉部50が形成されるトゥ−ヒール方向の位置は、ここでの例に限定されず、反発性能を抑制したいトゥ−ヒール方向の任意の位置において、選択的に厚肉部50を形成することができる。また、このような厚肉部50は、複数箇所に設けることができる。
【0058】
以上のような厚肉部40,50は、
図12及び
図13の例に示すような細い突条のリブであってもよいし、これよりも幅の大きい帯状に形成されていてもよい。
【0059】
<5−4>
上記実施形態では、ソール部に、地面に接地する3つの接地部31〜33を設けているが、いずれか1つを省略してもよい。例えば、第3接地部33が省略されたとしても、2点でヘッド100が支持されるため、ヘッド100を安定させることができる。特に、第1接地部31及び第2接地部32が側方断面視において平坦であり、側方断面視において地面Hに線で接する。したがって、基準状態のヘッド100が前方へも後方へも倒れ難く、基準状態のヘッド100が安定する。
【0060】
<5−5>
上記実施形態では、各溝10、20をバック側に凸となるようにやや湾曲させているが、いずれか一方、または両方をトゥ−ヒール方向と平行に延ばすこともできる。あるいは、
図14に示すように、フェース側に向かってトゥ−ヒール方向の中央付近が突出するような円弧(湾曲線)を描くように形成することもできる。第2溝20についても、同様である。
【0061】
<5−6>
本発明において、各溝10、20の「主内壁11,22」とは、各溝10、20を形成する複数の内壁のうち、フェース−バック方向の長さが、各溝10,20のフェース−バック方向の幅(長さ)の50%よりも大きい内壁であり、「副内壁12,21」より長く形成されていれば、特には限定されない。例えば、第1溝10及び第2溝20を形成する各内壁の傾斜角度についても、特には限定されず、第1主内壁11に沿う仮想線V1と第2主内壁22に沿う仮想線V2とが、ヘッド100の内部空間側に凸となるように交差していればよい。
【0062】
また、各主内壁11,22及び副内壁12,21は、同じ方向に傾斜している限り、複数の面を連結することで形成することもできる。また、主内壁11,22と副内壁12,21の間に他の内壁を介在させることもできる。このような介在する内壁の傾斜角度は特には限定されないが、例えば、地面と平行であってもよい。
【0063】
<5−7>
上記実施形態では、ソール部3に形成された溝の数は2つであるが、その数はこれに限定されるものではなく、3以上であってもよい。この場合、隣接する2つの溝が本発明における第1溝及び第2溝に相当する。
【0064】
<5−8>
上記実施形態では、ゴルフクラブヘッドをドライバー型としたが、そのタイプは限定されず、例えば、フェアウェイウッドのような別のウッド型であってもよいし、いわゆるユーティリティ型、ハイブリッド型等であってもよい。
【0065】
<5−9>
フェース用部材102は、カップフェース型でなくてもよく、例えば、周縁部15を省略したようなプレート型として、フェース部に形成した開口部に溶接することも可能である。