特許第6790537号(P6790537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6790537-動態解析装置 図000002
  • 特許6790537-動態解析装置 図000003
  • 特許6790537-動態解析装置 図000004
  • 特許6790537-動態解析装置 図000005
  • 特許6790537-動態解析装置 図000006
  • 特許6790537-動態解析装置 図000007
  • 特許6790537-動態解析装置 図000008
  • 特許6790537-動態解析装置 図000009
  • 特許6790537-動態解析装置 図000010
  • 特許6790537-動態解析装置 図000011
  • 特許6790537-動態解析装置 図000012
  • 特許6790537-動態解析装置 図000013
  • 特許6790537-動態解析装置 図000014
  • 特許6790537-動態解析装置 図000015
  • 特許6790537-動態解析装置 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790537
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】動態解析装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   A61B6/00 350C
【請求項の数】13
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-140439(P2016-140439)
(22)【出願日】2016年7月15日
(65)【公開番号】特開2018-7949(P2018-7949A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二村 仁
(72)【発明者】
【氏名】藤原 浩一
(72)【発明者】
【氏名】野地 翔
(72)【発明者】
【氏名】角森 昭教
【審査官】 右田 純生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−000297(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/026145(WO,A1)
【文献】 特開2015−043894(JP,A)
【文献】 特開2016−073466(JP,A)
【文献】 特開2015−043880(JP,A)
【文献】 特開2010−187723(JP,A)
【文献】 特開2004−141612(JP,A)
【文献】 特開平04−341245(JP,A)
【文献】 特開2009−050529(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/026146(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/137294(WO,A1)
【文献】 米国特許第08299413(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0163095(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/185197(WO,A1)
【文献】 特開2016−209267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00
G06T 7/00
G06T 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象部位に放射線を照射して動態撮影することにより得られた動態画像に注目領域を設定し、前記注目領域の移動に関する移動情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記注目領域の移動情報に基づいて、前記注目領域内の画素である注目画素の画素信号値の強調度を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された強調度に基づいて、前記動態画像又は前記動態画像を解析することにより生成された解析結果画像の前記注目画素の画素信号値を補正する補正手段と、
を備え
前記移動情報は、移動量を含み、
前記決定手段は、前記注目領域の移動量が大きいほど前記強調度を低い強調度に決定する動態解析装置。
【請求項2】
前記動態画像に参照領域を設定し、前記参照領域に含まれる構造物の移動に関する移動情報を取得する第2の取得手段を備え、
前記決定手段は、前記注目領域の移動情報及び前記参照領域に含まれる構造物の移動情報に基づいて、前記強調度を決定する請求項に記載の動態解析装置。
【請求項3】
検査対象部位に放射線を照射して動態撮影することにより得られた動態画像に注目領域を設定し、前記注目領域の移動に関する移動情報を取得する取得手段と、
前記動態画像に参照領域を設定し、前記参照領域に含まれる構造物の移動に関する移動情報を取得する第2の取得手段と、
前記注目領域の移動情報及び前記参照領域に含まれる構造物の移動情報の比較に基づいて、前記注目領域内の画素である注目画素の画素信号値の強調度を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された強調度に基づいて、前記動態画像又は前記動態画像を解析することにより生成された解析結果画像の前記注目画素の画素信号値を補正する補正手段と、
を備える動態解析装置。
【請求項4】
前記注目領域の前記移動情報と、前記参照領域に含まれる構造物の移動に関する移動情報は、移動方向を含み、
前記決定手段は、前記注目領域の移動方向と前記参照領域に含まれる構造物の移動方向の角度差に基づいて、前記強調度を決定する請求項2又は3に記載の動態解析装置。
【請求項5】
前記動態画像は、胸部の動態画像であり、
前記第2の取得手段は、前記動態画像の横隔膜を含む領域に参照領域を設定して横隔膜の移動方向を取得し、
前記決定手段は、前記注目領域の移動方向と前記横隔膜の移動方向の角度差が大きいほど前記強調度を低い強調度に決定する請求項4に記載の動態解析装置。
【請求項6】
前記動態画像は、胸部の動態画像であり、
前記第2の取得手段は、前記動態画像の肩を含む領域に参照領域を設定して肩の移動方向を取得し、
前記決定手段は、前記注目領域の移動方向と前記肩の移動方向の角度差が小さいほど前記強調度を低い強調度に決定する請求項4に記載の動態解析装置。
【請求項7】
前記移動情報は、移動方向を含み、
前記動態画像に参照領域を設定し、前記参照領域の画素信号値の変化に基づいて所定の構造物の移動方向を特定する特定手段を備え、
前記決定手段は、前記注目領域の移動方向と前記所定の構造物の移動方向の角度差に基づいて前記強調度を決定する請求項に記載の動態解析装置。
【請求項8】
検査対象部位に放射線を照射して動態撮影することにより得られた動態画像に注目領域を設定し、前記注目領域の移動方向を取得する取得手段と、
前記動態画像に参照領域を設定し、前記参照領域の画素信号値の変化に基づいて所定の構造物の移動方向を特定する特定手段と、
前記取得手段により取得された前記注目領域の移動方向と前記所定の構造物の移動方向の角度差に基づいて前記注目領域内の画素である注目画素の画素信号値の強調度を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された強調度に基づいて、前記動態画像又は前記動態画像を解析することにより生成された解析結果画像の前記注目画素の画素信号値を補正する補正手段と、
を備える動態解析装置。
【請求項9】
前記動態画像は、胸部の動態画像であり、
前記特定手段は、前記動態画像の肋間領域に参照領域を設定し、前記参照領域の画素信号値の変化に基づいて肋骨の移動方向を特定し、
前記決定手段は、前記注目領域の移動方向と前記肋骨の移動方向の角度差が小さいほど前記強調度を低い強調度に決定する請求項7又は8に記載の動態解析装置。
【請求項10】
前記決定手段は、前記注目領域の移動情報に対する強調度の対応テーブル又はグラフによって前記強調度を決定する請求項に記載の動態解析装置。
【請求項11】
前記決定手段は、前記注目領域の移動情報及び前記角度差に対する強調度の対応テーブル又はグラフによって前記強調度を決定する請求項4〜9の何れか一項に記載の動態解析装置。
【請求項12】
前記決定手段は、前記注目領域の移動情報及びπから前記角度差を引いた角度に対する強調度の対応テーブル又はグラフによって前記強調度を決定する請求項4〜9の何れか一項に記載の動態解析装置。
【請求項13】
前記解析結果画像は、前記動態画像のフレーム画像間で対応する画素同士の差分値を算出することにより生成されるフレーム間差分画像である請求項1〜12の何れか一項に記載の動態解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動態解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、胸部の動態を撮影し、得られた動態画像を解析して診断に提供する技術が知られている。しかし、胸部の動態画像には呼吸や心拍に伴う骨格等の動きが含まれており、これらの動きによるアーチファクトは、例えば、フレーム間差分等の差分処理を基本とした動態解析処理全般において強調され、注目すべき信号の観察の邪魔になり、解析精度及び診断精度を低下させていた。
【0003】
そこで、上記の解決策として、例えば、非特許文献1には、胸部動態画像(オリジナル画像)に肋骨陰影低減処理を実行して軟組織動画像を生成し、生成した軟組織動画像から肺換気マッピング画像(フレーム間差分画像)を生成することで、オリジナル画像から作成された肺換気マッピング画像上で見られた肋骨アーチファクトが低減されたことが記載されている。また、特許文献1においても、X線動画像から骨陰影を除去して軟組織に関するX線動画像を生成し、生成したX線動画像に基づいて解析を行うことで、軟組織を高精度に解析できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−43894号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】田中 利恵、真田茂著「低コスト・低被ばくポータブルX線肺機能イメージング (診る聴診器) の開発 」医用画像情報学会雑誌、 31 ( 2 ) ,2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、肋骨陰影低減処理は肋骨陰影を確実に低減させる処理ではなく、ある領域では肋骨が残ることがあり、その影響を受けアーチファクトが除去しきれない。その結果、場所によってアーチファクトの出方が変わるためユーザは処理の挙動を理解しづらい。特に限られた時間の中で大量の読影を行わなければならない医師にとって、いちいちアーチファクトの出方の強弱を勘案しながら読影することは煩雑であり、かえって診断効率を下げる結果となる。
【0007】
また、非特許文献1には、肋骨陰影低減処理の処理時間が1枚あたり15秒かかることが報告されており、動態画像の全てのフレーム画像へ適用した場合、撮影完了後速やかに解析結果を参照しながら診断することはできない。
【0008】
本発明の課題は、動態画像またはその解析結果画像において、呼吸や心拍に伴う構造物等の移動によって生じるアーチファクトをより短時間の処理で精度良く減弱することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の動態解析装置は、
検査対象部位に放射線を照射して動態撮影することにより得られた動態画像に注目領域を設定し、前記注目領域の移動に関する移動情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記注目領域の移動情報に基づいて、前記注目領域内の画素である注目画素の画素信号値の強調度を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された強調度に基づいて、前記動態画像又は前記動態画像を解析することにより生成された解析結果画像の前記注目画素の画素信号値を補正する補正手段と、
を備え
前記移動情報は、移動量を含み、
前記決定手段は、前記注目領域の移動量が大きいほど前記強調度を低い強調度に決定する
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記動態画像に参照領域を設定し、前記参照領域に含まれる構造物の移動に関する移動情報を取得する第2の取得手段を備え、
前記決定手段は、前記注目領域の移動情報及び前記参照領域に含まれる構造物の移動情報に基づいて、前記強調度を決定する。
【0011】
請求項3に記載の発明の動態解析装置
検査対象部位に放射線を照射して動態撮影することにより得られた動態画像に注目領域を設定し、前記注目領域の移動に関する移動情報を取得する取得手段と、
前記動態画像に参照領域を設定し、前記参照領域に含まれる構造物の移動に関する移動情報を取得する第2の取得手段と、
前記注目領域の移動情報及び前記参照領域に含まれる構造物の移動情報の比較に基づいて、前記注目領域内の画素である注目画素の画素信号値の強調度を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された強調度に基づいて、前記動態画像又は前記動態画像を解析することにより生成された解析結果画像の前記注目画素の画素信号値を補正する補正手段と、
を備える
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の発明において、
前記注目領域の前記移動情報と、前記参照領域に含まれる構造物の移動に関する移動情報は、移動方向を含み、
前記決定手段は、前記注目領域の移動方向と前記参照領域に含まれる構造物の移動方向の角度差に基づいて、前記強調度を決定する。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、
前記動態画像は、胸部の動態画像であり、
前記第2の取得手段は、前記動態画像の横隔膜を含む領域に参照領域を設定して横隔膜の移動方向を取得し、
前記決定手段は、前記注目領域の移動方向と前記横隔膜の移動方向の角度差が大きいほど前記強調度を低い強調度に決定する。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、
前記動態画像は、胸部の動態画像であり、
前記第2の取得手段は、前記動態画像の肩を含む領域に参照領域を設定して肩の移動方向を取得し、
前記決定手段は、前記注目領域の移動方向と前記肩の移動方向の角度差が小さいほど前記強調度を低い強調度に決定する。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項に記載の発明において、
前記移動情報は、移動方向を含み、
前記動態画像に参照領域を設定し、前記参照領域の画素信号値の変化に基づいて所定の構造物の移動方向を特定する特定手段を備え、
前記決定手段は、前記注目領域の移動方向と前記所定の構造物の移動方向の角度差に基づいて前記強調度を決定する。
【0016】
請求項8に記載の発明の動態解析装置
検査対象部位に放射線を照射して動態撮影することにより得られた動態画像に注目領域を設定し、前記注目領域の移動方向を取得する取得手段と、
前記動態画像に参照領域を設定し、前記参照領域の画素信号値の変化に基づいて所定の構造物の移動方向を特定する特定手段と、
前記取得手段により取得された前記注目領域の移動方向と前記所定の構造物の移動方向の角度差に基づいて前記注目領域内の画素である注目画素の画素信号値の強調度を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された強調度に基づいて、前記動態画像又は前記動態画像を解析することにより生成された解析結果画像の前記注目画素の画素信号値を補正する補正手段と、
を備える
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の発明において、
前記動態画像は、胸部の動態画像であり、
前記特定手段は、前記動態画像の肋間領域に参照領域を設定し、前記参照領域の画素信号値の変化に基づいて肋骨の移動方向を特定し、
前記決定手段は、前記注目領域の移動方向と前記肋骨の移動方向の角度差が小さいほど前記強調度を低い強調度に決定する。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項に記載の発明において、
前記決定手段は、前記注目領域の移動情報に対する強調度の対応テーブル又はグラフによって前記強調度を決定する
【0019】
請求項11に記載の発明は、請求項4〜9の何れか一項に記載の発明において、
前記決定手段は、前記注目領域の移動情報及び前記角度差に対する強調度の対応テーブル又はグラフによって前記強調度を決定する。
【0020】
請求項12に記載の発明は、請求項4〜9の何れか一項に記載の発明において、
前記決定手段は、前記注目領域の移動情報及びπから前記角度差を引いた角度に対する強調度の対応テーブル又はグラフによって前記強調度を決定する。
請求項13に記載の発明は、請求項1〜12の何れか一項に記載の発明において、
前記解析結果画像は、前記動態画像のフレーム画像間で対応する画素同士の差分値を算出することにより生成されるフレーム間差分画像である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、動態画像またはその解析結果画像において、呼吸や心拍に伴う構造物等の移動によって生じるアーチファクトをより短時間の処理で精度良く減弱することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態における動態解析システムの全体構成を示す図である。
図2図1の撮影用コンソールの制御部により実行される撮影制御処理を示すフローチャートである。
図3図1の診断用コンソールの制御部により実行される画像解析処理を示すフローチャートである。
図4】第1の実施形態において図3のステップS12において実行される画素信号値補正処理Aを示すフローチャートである。
図5】強調度テーブルの一例を示す図である。
図6】強調度テーブルの一例を示す図である。
図7】強調度テーブルの一例を示す図である。
図8】第2の実施形態において図3のステップS12において実行される画素信号値補正処理Bを示すフローチャートである。
図9】横隔膜への参照領域の設定例を示す図である。
図10】肩への参照領域の設定例を示す図である。
図11】移動方向の他の軸方向への投影例を示す図である。
図12】異方度を説明するための図である。
図13】同方向度を説明するための図である。
図14】第3の実施形態において図3のステップS12で実行される画素信号値補正処理Cを示すフローチャートである。
図15】肋間への参照領域の設定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0024】
<第1の実施形態>
〔動態解析システム100の構成〕
まず、構成を説明する。
図1に、本発明の第1の実施形態における動態解析システム100の全体構成を示す。
図1に示すように、動態解析システム100は、撮影装置1と、撮影用コンソール2とが通信ケーブル等により接続され、撮影用コンソール2と、診断用コンソール3とがLAN(Local Area Network)等の通信ネットワークNTを介して接続されて構成されている。なお、本実施形態においては、撮影用コンソール2及び診断用コンソール3が通信ネットワークNTに有線により接続されている場合を例にとり説明するが、無線により接続されていることとしてもよい。
【0025】
〔撮影装置1の構成〕
撮影装置1は、例えば、呼吸運動に伴う肺の膨張及び収縮の形態変化、心臓の拍動等の、周期性(サイクル)を持つ人体の動態を撮影する撮影手段である。動態撮影とは、被写体Mに対し、X線等の放射線をパルス状にして所定時間間隔で繰り返し照射するか(パルス照射)、もしくは、低線量率にして途切れなく継続して照射する(連続照射)ことで、動態を示す複数の画像を取得することをいう。動態撮影により得られた一連の画像を動態画像と呼ぶ。また、動態画像を構成する複数の画像のそれぞれをフレーム画像と呼ぶ。なお、以下の実施形態では、パルス照射により動態撮影を行う場合を例にとり説明する。
【0026】
放射線源11は、被写体Mを挟んで放射線検出部13と対向する位置に配置され、放射線照射制御装置12の制御に従って、被写体Mに対し放射線(X線)を照射する。
放射線照射制御装置12は、撮影用コンソール2に接続されており、撮影用コンソール2から入力された放射線照射条件に基づいて放射線源11を制御して放射線撮影を行う。撮影用コンソール2から入力される放射線照射条件は、例えば、パルスレート、パルス幅、パルス間隔、1撮影あたりの撮影フレーム数、X線管電流の値、X線管電圧の値、グリッドの種類、付加フィルタ種等である。パルスレートは、1秒あたりの放射線照射回数であり、後述するフレームレートと一致している。パルス幅は、放射線照射1回当たりの放射線照射時間である。パルス間隔は、1回の放射線照射開始から次の放射線照射開始までの時間であり、後述するフレーム間隔と一致している。
【0027】
放射線検出部13は、FPD等の半導体イメージセンサーにより構成される。FPDは、例えば、ガラス基板等を有しており、基板上の所定位置に、放射線源11から照射されて少なくとも被写体Mを透過した放射線をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の検出素子(画素)がマトリックス状に配列されている。各画素は、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部を備えて構成されている。FPDにはX線をシンチレーターを介して光電変換素子により電気信号に変換する間接変換型、X線を直接的に電気信号に変換する直接変換型があるが、何れを用いてもよい。放射線検出部13は、被写体Mを挟んで放射線源11と対向するように設けられている。
【0028】
ここで、放射線検出部13において取得される画像の各画素の信号値(画素信号値)は、放射線検出部13に到達した放射線強度を電気信号に変換した値、即ち、放射線検出部13に到達した放射線強度に相関する値であり、到達した放射線強度が高いほど画素信号値は大きくなる。一方、本実施形態において、撮影用コンソール2及び診断用コンソール3では、各画素信号値を吸収線量を表すものとして取り扱う。即ち、撮影用コンソール2は、通信部25により受信した一連のフレーム画像の各画素信号値を吸収線量を表す値に変換し、診断用コンソール3に送信する。即ち、撮影用コンソール2及び診断用コンソールでは、動態画像の画素信号値は、吸収線量が多いほど高くなり、画像上では白く(低濃度で)描画される。
【0029】
読取制御装置14は、撮影用コンソール2に接続されている。読取制御装置14は、撮影用コンソール2から入力された画像読取条件に基づいて放射線検出部13の各画素のスイッチング部を制御して、当該各画素に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、放射線検出部13に蓄積された電気信号を読み取ることにより、画像データを取得する。この画像データがフレーム画像である。そして、読取制御装置14は、取得したフレーム画像を撮影用コンソール2に出力する。画像読取条件は、例えば、フレームレート、フレーム間隔、画素サイズ、画像サイズ(マトリックスサイズ)等である。フレームレートは、1秒あたりに取得するフレーム画像数であり、パルスレートと一致している。フレーム間隔は、1回のフレーム画像の取得動作開始から次のフレーム画像の取得動作開始までの時間であり、パルス間隔と一致している。
【0030】
ここで、放射線照射制御装置12と読取制御装置14は互いに接続され、互いに同期信号をやりとりして放射線照射動作と画像の読み取りの動作を同調させるようになっている。
【0031】
〔撮影用コンソール2の構成〕
撮影用コンソール2は、放射線照射条件や画像読取条件を撮影装置1に出力して撮影装置1による放射線撮影及び放射線画像の読み取り動作を制御するとともに、撮影装置1により取得された動態画像を撮影技師等の撮影実施者によるポジショニングの確認や診断に適した画像であるか否かの確認用に表示する。
撮影用コンソール2は、図1に示すように、制御部21、記憶部22、操作部23、表示部24、通信部25を備えて構成され、各部はバス26により接続されている。
【0032】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory
)等により構成される。制御部21のCPUは、操作部23の操作に応じて、記憶部22に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って後述する撮影制御処理を始めとする各種処理を実行し、撮影用コンソール2各部の動作や、撮影装置1の放射線照射動作及び読み取り動作を集中制御する。
【0033】
記憶部22は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部22は、制御部21で実行される各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。例えば、記憶部22は、図2に示す撮影制御処理を実行するためのプログラムを記憶している。また、記憶部22は、検査対象部位(ここでは胸部)及び診断対象の種類(例えば、換気、血流)に対応付けて放射線照射条件及び画像読取条件を記憶している。各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部21は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0034】
操作部23は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部21に出力する。また、操作部23は、表示部24の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部21に出力する。
【0035】
表示部24は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニターにより構成され、制御部21から入力される表示信号の指示に従って、操作部23からの入力指示やデータ等を表示する。
【0036】
通信部25は、LANアダプターやモデムやTA(Terminal Adapter)等を備え、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0037】
〔診断用コンソール3の構成〕
診断用コンソール3は、撮影用コンソール2から動態画像を取得し、取得した動態画像を解析し、その解析結果画像を表示して医師の診断を支援するための動態解析装置である。
診断用コンソール3は、図1に示すように、制御部31、記憶部32、操作部33、表示部34、通信部35を備えて構成され、各部はバス36により接続されている。
【0038】
制御部31は、CPU、RAM等により構成される。制御部31のCPUは、操作部33の操作に応じて、記憶部32に記憶されているシステムプログラムや、各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って、後述する画像解析処理を始めとする各種処理を実行し、診断用コンソール3各部の動作を集中制御する。制御部31は、取得手段、決定手段、補正手段として機能する。
【0039】
記憶部32は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部32は、制御部31で画像解析処理を実行するためのプログラムを始めとする各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。これらの各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部31は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0040】
また、記憶部32は、注目領域の移動量Mと画素信号値の強調度合い(強調度)の関係を示す強調度テーブル321(図5参照)を記憶している。
【0041】
操作部33は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部31に出力する。また、操作部33は、表示部34の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部31に出力する。
【0042】
表示部34は、LCDやCRT等のモニターにより構成され、制御部31から入力される表示信号の指示に従って、各種表示を行う。
【0043】
通信部35は、LANアダプターやモデムやTA等を備え、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0044】
〔動態解析システム100の動作〕
次に、上記動態解析システム100における動作について説明する。
【0045】
(撮影装置1、撮影用コンソール2の動作)
まず、撮影装置1、撮影用コンソール2による撮影動作について説明する。
図2に、撮影用コンソール2の制御部21において実行される撮影制御処理を示す。撮影制御処理は、制御部21と記憶部22に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0046】
まず、撮影実施者により撮影用コンソール2の操作部23が操作され、被写体Mとなる被検者の患者情報(例えば、患者ID、氏名、身長、体重、性別等)、検査情報(検査対象部位(ここでは、胸部)、診断対象の種類(例えば、換気、血流)等)の入力が行われる(ステップS1)。なお、患者情報や検査情報は、通信部25を介してRIS(Radiology Information System)から受信する構成としてもよい。
【0047】
次いで、入力された検査情報に基づいて、放射線照射条件が記憶部22から読み出されて放射線照射制御装置12に設定されるとともに、画像読取条件が記憶部22から読み出されて読取制御装置14に設定される(ステップS2)。なお、放射線照射条件及び画像読取条件は、操作部23により撮影実施者が調整し、設定し直すことができる。
【0048】
次いで、操作部23の操作による放射線照射の指示が待機される(ステップS3)。ここで、撮影実施者は、被写体Mを放射線源11と放射線検出部13の間に配置してポジショニングを行う。また、本実施形態においては、呼吸状態下で撮影を行うため、被検者(被写体M)に楽にするように指示し、安静呼吸を促す。或いは、「吸って、吐いて」等の深呼吸の誘導を行うこととしてもよい。撮影準備が整った時点で、操作部23を操作して放射線照射指示を入力する。
【0049】
操作部23により放射線照射指示が入力されると(ステップS3;YES)、放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影開始指示が出力され、動態撮影が開始される(ステップS4)。即ち、放射線照射制御装置12に設定されたパルス間隔で放射線源11により放射線が照射され、放射線検出部13によりフレーム画像が取得される。
【0050】
予め定められたフレーム数の撮影が終了すると、制御部21により放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影終了の指示が出力され、撮影動作が停止される。撮影されるフレーム数は、少なくとも1呼吸サイクルが撮影できる枚数である。
【0051】
撮影により取得されたフレーム画像は順次撮影用コンソール2に入力され、撮影順を示す番号(フレーム番号)と対応付けて記憶部22に記憶されるとともに(ステップS5)、表示部24に表示される(ステップS6)。撮影実施者は、表示された動態画像によりポジショニング等を確認し、撮影により診断に適した画像が取得された(撮影OK)か、再撮影が必要(撮影NG)か、を判断する。そして、操作部23を操作して、判断結果を入力する。
【0052】
操作部23の所定の操作により撮影OKを示す判断結果が入力されると(ステップS7;YES)、動態撮影で取得された一連のフレーム画像のそれぞれに、動態画像を識別するための識別IDや、患者情報、検査情報、放射線照射条件、画像読取条件、撮影順を示す番号(フレーム番号)等の情報が付帯され(例えば、画像データのヘッダ領域に書き込まれ)、通信部25を介して診断用コンソール3に送信される(ステップS8)。そして、本処理は終了する。一方、操作部23の所定の操作により撮影NGを示す判断結果が入力されると(ステップS7;NO)、記憶部22に記憶された一連のフレーム画像が削除され(ステップS9)、本処理は終了する。この場合、再撮影が必要となる。
【0053】
(診断用コンソール3の動作)
次に、診断用コンソール3における動作について説明する。
診断用コンソール3においては、通信部35を介して撮影用コンソール2から動態画像の一連のフレーム画像が受信されると、制御部31と記憶部32に記憶されているプログラムとの協働により図3に示す画像解析処理が実行される。
【0054】
以下、図3を参照して画像解析処理の流れについて説明する。
まず、受信した動態画像に前処理が施される(ステップS10)。
前処理では、診断対象の種類(換気、血流)に応じた信号成分(換気信号成分、血流信号成分)を抽出する処理が施される。
まず、動態画像の各フレーム画像が診断対象の種類に応じた所定サイズの小領域に分割され、分割された小領域内において、画素信号値の代表値(例えば、平均値、中央値等)が算出され、小領域内の画素信号値が算出した代表値に置き換えられる。これにより、診断対象に応じた空間周波数の信号成分を抽出することができる。次いで、一連のフレーム画像間で各小領域の対応付けが行われ、小領域毎に、領域内の画素信号値の時間変化が診断対象の種類に応じたカットオフ周波数の時間方向のハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、またはバンドパスフィルタでフィルタリングされる。これにより、診断対象の種類に応じた時間周波数の信号成分を抽出することができる。
【0055】
次いで、前処理後の動態画像に解析が行われ、解析結果画像が生成される(ステップS11)。
例えば、動態画像の隣接するフレーム画像間で対応する画素毎に画素信号値の差分をとる(例えば、n番目のフレーム画像の各画素の画素信号値からn−1番目(或いは、所定フレーム前)のフレーム画像の対応する各画素の画素信号値を引く)ことにより解析結果画像(フレーム間差分画像)が生成される。或いは、動態画像の各フレーム画像と基準のフレーム画像との間で対応する画素毎に画素信号値の差分をとることにより解析結果画像を生成することとしてもよい。なお、解析結果画像の種類は、特に限定されない。また、ステップS10やS11を除いてステップS12に進んでも良い。
【0056】
次いで、画素信号値補正処理が実行される(ステップS12)。
【0057】
図4に、第1の実施形態において図3のステップS12で実行される画素信号値補正処理Aのフローチャートを示す。
画素信号値補正処理Aにおいては、まず、前処理後の動態画像において、各画素に対応する注目領域が設定され、設定された注目領域の移動情報(移動量M)が取得される(ステップS1201)。
【0058】
ステップS1201においては、例えば、一のフレーム画像(例えば、1番目のフレーム画像)の左上の画素から順に、その画素(注目画素)を中心とする注目領域(例えば、m×m画素(mは正の整数))が設定され、設定された注目領域が他の各フレーム画像のどこに対応するかがテンプレートマッチングにより特定される。そして、例えば、n−1番目の注目領域の中心からn番目のフレーム画像の注目領域の中心までの移動量がn番目のフレーム画像のその注目領域の移動情報(移動量M)として取得される。なお、ここでは隣り合うフレーム画像間で移動量Mを求める例について説明したが、所定間隔離れたフレーム画像との移動量Mを求めることとしてもよい。
【0059】
なお、本実施形態においては、動態画像の各画素に対応する注目領域を設定することとしているが、注目領域は、少なくとも診断対象となる検査対象部位の領域内の各画素に対応して設定すればよい。例えば、本実施形態では、検査対象部位が肺野であるため、肺野領域を抽出し、肺野領域内にのみ注目領域を設定しても構わない。
【0060】
次いで、取得された各注目領域の移動情報に基づいて、各画素の画素信号値の強調度αが決定される(ステップS1202)。
例えば、記憶部32に記憶されている強調度テーブル321が参照され、注目領域の移動量Mに応じた強調度αがその注目領域に対応する注目画素の画素信号値の強調度αとして決定される。図5に、強調度テーブル321の一例を示す。例えば、移動量Mが図5に矢印で示す値である場合には、0.5が注目画素の画素信号値の強調度αとして決定される。なお、図5の強調度テーブル321は、移動量Mに対する強調度αをグラフとして示しているが、移動量Mの値に対する強調度αの値を対応付けた一覧表(テーブル)としてもよい。
【0061】
次いで、取得された各画素の強調度αに基づいて、ステップS11で生成された解析結果画像の画素信号値が補正され(ステップS1203)、画像解析処理は終了する。
ステップS1203においては、画素(x1、y1)の画素信号値in(x1、y1)は、以下の(式1)により画素信号値out(x1、y1)に補正される。
out(x1、y1)=α×in(x1、y1)・・・(式1)
【0062】
ここで、胸部の動態画像には呼吸や心拍に伴う骨格等の動きが含まれており、これらの動きによるアーチファクトは、例えば、フレーム間差分等の解析によって強調され、注目すべき信号の観察の邪魔になり、解析精度及び診断精度を低下させている。そこで、図5に示すように、移動量Mが大きいほど低い強調度αを画素信号値に乗算することで、従来のように処理時間のかかる肋骨陰影低減処理等を施すことなく、短時間で、精度良く、解析結果画像から、病変の観察の邪魔になる肋骨等の動きの大きい構造物を減弱することが可能となる。
【0063】
画像解析処理において生成された補正済みの解析結果画像は、表示部34に表示される。ここで表示される解析結果画像は、病変の観察の邪魔になる肋骨等の動きの大きい構造物が減弱された画像であるので、医師は容易に解析結果画像を観察することが可能となり、診断性能を向上させることができる。
【0064】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
呼吸運動の呼気位相では、横隔膜や肺組織は上昇し、肋骨、鎖骨、肩等の骨格は下降する。吸気位相では、横隔膜や肺組織は下降し、肋骨、鎖骨、肩等の骨格は上昇する。そこで、第2の実施形態では、横隔膜と逆の方向に移動をする領域ほど画素信号値の強調度αを低くし、或いは、肩と同じ方向に移動する領域ほど画素信号値の強調度αを低くすることで、肋骨等の診断に邪魔な構造物を減弱する。
【0065】
第2の実施形態において、診断用コンソール3の記憶部32には、注目領域の移動量M及び異方度φと画素信号値の強調度αとの関係を示す強調度テーブル322(図6参照)、又は、注目領域の移動量M及び同方向度θと画素信号値の強調度αとの関係を示す強調度テーブル323(図7参照)が記憶されている。動態解析システム100のその他の構成及び撮影動作は、第1の実施形態で説明したものと同様であるので説明を援用し、第2の実施形態の診断用コンソール3の動作について説明する。
【0066】
第2の実施形態において、診断用コンソール3の制御部31は、第1の実施形態で説明した図3に示す画像解析処理を実行するが、ステップS12において実行される処理が第1の実施形態と異なるので、以下ステップS12において実行される画素信号値補正処理Bについて説明する。
【0067】
図8に、第2の実施形態において図3のステップS12で実行される画素信号値補正処理Bのフローチャートを示す。画素信号値補正処理Bは、制御部31と記憶部32に記憶されているプログラムとの協働により実行される。制御部31は、画素信号値補正処理Bを実行することにより、取得手段、決定手段、補正手段、第2の取得手段として機能する。
【0068】
まず、前処理後の動態画像に参照領域が設定される(ステップS1211)。
参照領域は、例えば、横隔膜、肩(体表)等に設定される。例えば、表示部34に動態画像の一のフレーム画像(例えば、1フレーム目の画像)が表示され、操作部33によるユーザ操作により指定された直線又は矩形が参照領域として設定される。他のフレーム画像については、1フレーム目のフレーム画像で指定された領域と同じ画素位置の領域が参照領域として設定される。
【0069】
横隔膜領域に参照領域を設定する場合、ユーザは、図9にRで示すように、横隔膜付近で体軸と略平行になる直線又は矩形を参照領域として指定する。肩領域に参照領域を設定する場合、ユーザは、図10にRで示すように、肩の体表ラインに略垂直になるように直線又は矩形を指定する。
なお、参照領域は、ユーザ操作ではなく、制御部31により自動的に設定することとしてもよい。
【0070】
次いで、前処理後の動態画像において、参照領域に含まれる構造物の移動情報が取得される(ステップS1212)。
例えば、動態画像の各フレーム画像の参照領域のそれぞれにおいてエッジ検出により最も強いエッジを検出し、最も強いエッジのフレーム画像間での移動方向を参照領域に含まれる構造物の移動情報として取得することができる。ここで、肩の移動方向は斜め上下方向であるが、図11に示すように、別の軸(例えば、y軸)に投影したデータを用いてもよい。これにより、斜め方向の移動を上下方向の移動に変換することができるため、後段の処理で同方向度θを算出する際の基準を上下方向とすることができ、呼吸により上下方向に移動する肋骨等の骨部の画素信号値を減弱しやすくなるためである。
【0071】
或いは、動態画像の各フレーム画像において、参照領域内の画素信号値の代表値(例えば、平均値、中央値等)を算出し、n番目のフレーム画像から算出された代表値からn−1番目のフレーム画像から算出された代表値を引いた差分値に基づいて参照領域に含まれる構造物の移動方向を特定し、特定した移動方向を参照領域に含まれる構造物の移動情報として取得することができる。
【0072】
横隔膜が上昇した場合、これに連動して肺野領域が上昇するため、横隔膜に設定した参照領域においては、画素信号値の低い肺野領域が占める割合が減少し、画素信号値の高い横隔膜下の白い領域の割合が増加して、画素信号値の代表値は上昇する。即ち、参照領域を横隔膜に設定し、参照領域の代表値の差分値が+である場合、横隔膜の移動方向は上であると特定することができる。一方、横隔膜が下降した場合、これに連動して肺野領域が下降するため、横隔膜に設定した参照領域においては、画素信号値の低い肺野領域の占める割合が増加し、画素信号値の高い横隔膜下の白い領域の割合が減少して、画素信号値の代表値は減少する。即ち、参照領域を横隔膜に設定し、参照領域の代表値の差分値が−である場合、横隔膜の移動方向は下であると特定することができる。
【0073】
肩が上昇した場合、肩に設定した参照領域においては、素抜け領域(放射線が直接到達した領域)の占める割合が減少し、画素信号値の高い人体領域(白い領域)の占める割合が増加するため、画素信号値の代表値は上昇する。即ち、参照領域を肩に設定し、参照領域の代表値の差分値が+である場合、肩の移動方向は上方向であると特定することができる。一方、肩が下降した場合、肩に設定した参照領域においては、素抜け領域の割合が増加し、画素信号値の高い人体領域の占める割合が減少するため、画素信号値の代表値は減少する。即ち、参照領域を肩に設定し、参照領域の代表値の差分値が−である場合、肩の移動方向は下方向であると特定することができる。
【0074】
次いで、前処理後の動態画像において、各画素に対応する注目領域が設定され、設定された注目領域の移動情報(移動量M及び移動方向)が取得される(ステップS1213)。
【0075】
ステップS1213においては、例えば、基準画像(例えば、1番目のフレーム画像)の対象領域の左上の画素から順に、その画素(注目画素)を中心とする注目領域(例えば、m×m画素(mは正の整数))が設定され、設定された注目領域が他の各フレーム画像のどこに対応するかがテンプレートマッチングにより特定される。そして、例えば、n−1番目の注目領域の中心位置からn番目のフレーム画像の注目領域の中心位置までの移動量M及び移動方向をn番目のフレーム画像のその注目領域の移動情報として求める。なお、ここでは隣合うフレーム画像間で移動量M及び移動方向を求める例について説明したが、所定間隔離れたフレーム画像との移動量を求めることとしてもよい。
【0076】
次いで、取得された注目領域の移動情報及び参照領域に含まれる構造物の移動情報に基づいて、各画素の画素信号値の強調度αが決定される(ステップS1214)。
【0077】
例えば、参照領域が横隔膜に設定された場合、まず、図12に示すように、参照領域に含まれる構造物の移動方向と注目画素(x1、y1)を中心とする注目領域の移動方向の角度差である異方度φ(x1、y1)が算出される。次いで、記憶部32に記憶されている強調度テーブル322(図6参照)が参照され、注目領域の移動量M(x1、y1)及び異方度φ(x1、y1)に応じた強調度α(x1、y1)がその注目領域に対応する注目画素の画素信号値の強調度αとして決定される。
【0078】
例えば、参照領域が肩に設定された場合、まず、図13に示すように、参照領域に含まれる構造物の移動方向と注目画素(x1、y1)を中心とする注目領域の移動方向の角度差φをπから引いて同方向度θ(x1、y1)が算出される。次いで、記憶部32に記憶されている強調度テーブル323(図7参照)が参照され、注目領域の移動量M(x1、y1)及び同方向度θ(x1、y1)に応じた強調度α(x1、y1)がその注目領域に対応する注目画素の強調度αとして決定される。
なお、参照領域が肩に設定された場合も、横隔膜と同様に、異方度φを算出し、強調度テーブル322を用いて強調度αを決定してもよい。ただし、強調度テーブル322のグラフ形状は図6に示したものとは異なる。
また、図6の強調度テーブル322及び図7の強調度テーブル323は、移動量M及び異方度φ(同方向度θ)に対する強調度αをグラフとして示しているが、移動量M及び異方度φ(同方向度θ)の値に対する強調度αの値を対応付けた一覧表(テーブル)としてもよい。
【0079】
次いで、取得された各画素の強調度αに基づいて、ステップS11で生成された解析結果画像の画素信号値が補正され(ステップS1215)、画像解析処理は終了する。
ステップS1215においては、注目画素(x1、y1)の画素信号値in(x1、y1)は、上述の(式1)により画素信号値out(x1、y1)に補正される。
【0080】
ここで、胸部の動態画像には呼吸や心拍に伴う骨格等の動きが含まれており、これらの動きによるアーチファクトは、例えば、フレーム間差分等の解析によって強調され、注目すべき信号の観察の邪魔になり、解析精度及び診断精度を低下させている。肋骨等の骨格は、上述のように、呼吸により、横隔膜と異なる方向に動き、肩と同方向に動く。そこで、図6に示すように、移動量Mが大きく、かつ横隔膜との異方度φが大きい(即ち、横隔膜との角度差が大きい)注目領域の注目画素ほど、解析結果画像の画素信号値に低い強調度αを乗算する。或いは、図7に示すように、移動量Mが大きく、かつ肩との同方向度θが大きい(即ち、肩との角度差が小さい)注目領域の注目画素ほど、解析結果画像の画素信号値に低い強調度αを乗算する。このように、注目領域の移動量Mだけでなく、注目領域の移動方向も加味して強調度αを決定することで、従来のように処理時間のかかる肋骨陰影低減処理等を施すことなく、短時間で、より精度良く病変の観察の邪魔になる肋骨等の構造物を減弱することが可能となる。
【0081】
画像解析処理において生成された補正済みの解析結果画像は、表示部34に表示される。ここで表示される解析結果画像は、病変の観察の邪魔になる肋骨等の構造物が減弱された画像であるので、医師は容易に解析結果画像を観察することが可能となり、診断性能を向上させることができる。
【0082】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
呼吸運動の呼気位相では、肋骨、鎖骨等の骨部は下降する。また、肺胞の空気量が減少するため肺胞の密度は増加し、肋間の画素信号値は上昇する。一方、呼吸運動の吸気位相では、肋骨、鎖骨等の骨格は上昇する。また、肺胞の空気量が増加するため肺胞の密度は減少し、肋間の画素信号値は減少する。第3の実施形態では、この原理を用いて、肋間の画素信号値に基づいて肋骨の移動方向を特定し、肋骨の移動方向と同方向に移動する領域の画素信号値の強調度αを低くすることで、肋骨等の診断に邪魔な構造物を精度良く減弱する。
【0083】
第3の実施形態において、診断用コンソール3の記憶部32には、注目領域の移動量M及び同方向度θと、画素信号値の強調度αとの関係を示す強調度テーブル323が記憶されている。動態解析システム100のその他の構成及び撮影動作は、第1の実施形態で説明したものと同様であるので説明を援用し、第3の実施形態の診断用コンソール3の動作について説明する。
【0084】
第3の実施形態において、診断用コンソール3の制御部31は、第1の実施形態で説明した図3に示す画像解析処理を実行するが、図3のステップS12において実行される処理が第1の実施形態と異なるので、以下ステップS12において実行される画素信号値補正処理Cについて説明する。
【0085】
図14に、第3の実施形態において図3のステップS12で実行される画素信号値補正処理Cのフローチャートを示す。画素信号値補正処理Cは、制御部31と記憶部32に記憶されているプログラムとの協働により実行される。制御部31は、画素信号値補正処理Cを実行することにより、取得手段、決定手段、補正手段、特定手段として機能する。
【0086】
まず、前処理後の動態画像に参照領域が設定される(ステップS1221)。
ここでは、肋間に参照領域が設定される。例えば、表示部34に動態画像の一のフレーム画像(例えば、1フレーム目の画像)が表示され、図15にRで示すように、操作部33によるユーザ操作により指定された肋骨と肋骨の間の領域(例えば、矩形、円等)が参照領域として設定される。ここで、ユーザは、全フレーム画像において肋骨が進入しない領域を参照領域として指定する必要がある。他のフレーム画像については、1フレーム目のフレーム画像で指定された領域と同じ画素位置の領域が参照領域として設定される。
なお、参照領域は、ユーザ操作ではなく、制御部31により自動的に設定することとしてもよい。
【0087】
次いで、前処理後の動態画像の参照領域の画素信号値の変化に基づいて、肋骨の移動方向が特定される(ステップS1222)。
ステップS1222においては、まず、前処理後の動態画像の各フレーム画像において、参照領域内の画素信号値の代表値(例えば、平均値、中央値等)が算出され、n番目のフレーム画像から算出された代表値からn−1番目のフレーム画像から算出された代表値を引いた差分値が算出される。差分値が+の場合、上述のように呼気位相に相当し、この場合、肋骨の移動方向は下であると特定される。差分値が−の場合、上述のように吸気位相に相当し、この場合、肋骨の移動方向は上であると特定される。
【0088】
次いで、前処理後の動態画像において、各画素に対応する注目領域が設定され、設定された注目領域の移動情報(移動量M及び移動方向)が取得される(ステップS1223)。
ステップS1223の処理は、ステップS1213の処理と同様であるので説明を援用する。
【0089】
次いで、取得された注目領域の移動情報及び肋骨の移動情報に基づいて、各画素の画素信号値の強調度αが決定される(ステップS1224)。
まず、肋骨の移動方向と注目画素(x1、y1)を中心とする注目領域の移動方向の角度差φをπから引いて同方向度θ(x1、y1)が算出される。次いで、記憶部32に記憶されている強調度テーブル323が参照され、注目領域の移動量M(x1、y1)及び同方向度θ(x1、y1)に応じた強調度α(x1、y1)がその注目領域における画素信号値の強調度αとして決定される。
なお、角度差φを異方度φとして、強調度テーブル322を用いて強調度αを決定してもよい。ただし、強調度テーブル322のグラフ形状は図6に示したものとは異なる。
【0090】
次いで、取得された各画素の強調度αに基づいて、ステップS11で生成された解析結果画像の各画素の画素信号値が補正され(ステップS1225)、画像解析処理は終了する。
ステップS1225においては、注目領域(x1、y1)の画素信号値in(x1、y1)は、上述の(式1)により画素信号値out(x1、y1)に補正される。
【0091】
ここで、第3の実施形態では、肋骨の影響を受けずに肺の密度変化を示す画素信号値を得ることのできる肋間領域の画素信号値の変化に基づいて肋骨の移動方向を特定し、移動量Mが大きく、かつ肋骨との同方向度θが大きい(即ち、肋骨との角度差が小さい)注目領域の注目画素ほど、解析結果画像の画素信号値に低い強調度αを乗算する。このように、注目領域の移動量Mだけでなく、移動方向も加味して強調度αを導出することで、従来のように処理時間のかかる肋骨陰影低減処理等を施すことなく、短時間で、より精度良く病変の観察の邪魔になる肋骨等の構造物を減弱することが可能となる。
【0092】
画像解析処理において生成された補正済みの解析結果画像は、表示部34に表示される。ここで表示される解析結果画像は、病変の観察の邪魔になる肋骨等の構造物が減弱された画像であるので、医師は容易に解析結果画像を観察することが可能となり、診断性能を向上させることができる。
【0093】
以上説明したように、診断用コンソール3の制御部31によれば、胸部の動態画像に注目領域を設定し、注目領域の移動に関する移動情報を取得し、取得した注目領域の移動情報に基づいて、注目領域に対応する注目画素の画素信号値の強調度を決定する。そして、決定した強調度に基づいて、動態画像を解析することにより生成されたフレーム間差分画像等の解析結果画像の注目画素の画素信号値を補正する。
従って、従来のように処理時間のかかる肋骨陰影低減処理等を施すことなく、短時間で、より精度良く病変の観察の邪魔になる肋骨等の構造物を減弱することが可能となる。
【0094】
例えば、制御部31は、注目領域の移動量が大きいほど注目画素の画素信号値の強調度を低い強調度に決定する。従って、病変の観察の邪魔になる肋骨等の動きの大きい構造物を減弱することが可能となる。
【0095】
また、例えば、制御部31は、動態画像に参照領域を設定し、参照領域に含まれる構造物の移動に関する移動情報を取得し、注目領域の移動情報及び参照領域に含まれる構造物の移動情報に基づいて、注目領域に対応する注目画素の画素信号値の強調度を決定する。従って、病変の観察の邪魔になる肋骨等の構造物をより精度良く減弱することが可能となる。
【0096】
例えば、制御部31は、動態画像の横隔膜を含む領域に参照領域を設定して横隔膜の移動方向を取得し、注目領域の移動方向と横隔膜の移動方向の角度差が大きいほど注目画素の画素信号値の強調度を低い強調度に決定する。従って、横隔膜との移動方向の角度差の大きい肋骨等の構造物をより精度良く減弱することができる。
また、例えば、制御部31は、動態画像の肩を含む領域に参照領域を設定して肩の移動方向を取得し、注目領域の移動方向と肩の移動方向の角度差が小さいほど注目画素の画素信号値の強調度を低い強調度に決定する。従って、肩との移動方向の角度差が小さい肋骨等の構造物をより精度良く減弱することができる。
【0097】
また、例えば、制御部31は、動態画像に参照領域を設定し、参照領域の画素信号値の変化に基づいて所定の構造物の移動方向を特定し、注目領域の移動方向と所定の構造物の移動方向の角度差に基づいて注目領域に対応する注目画素の強調度を決定する。例えば、動態画像の肋間領域に参照領域を設定し、参照領域の画素信号値の変化に基づいて肋骨の移動方向を特定し、注目領域の移動方向と肋骨の移動方向の角度差が小さいほど注目画素の画素信号値の強調度を低い強調度に決定する。従って、肋骨や、肋骨との移動方向の角度差が小さい骨格等の構造物をより精度良く減弱することができる。
【0098】
なお、本実施形態における記述は、本発明に係る好適な動態解析システムの一例であり、これに限定されるものではない。
【0099】
例えば、上記実施形態においては、動態画像が胸部の動態画像である場合を例にとり説明したが、これに限定されず、他の部位を撮影した動態画像としてもよい。
【0100】
また、上記実施形態においては、注目領域の移動情報、又は注目領域及び参照領域の移動情報に基づいて、解析結果画像の各画素の画素信号値を補正する場合を例にとり説明したが、これに限定されず、検査対象部位に放射線を照射して動態撮影することにより得られた動態画像の各画素の画素信号値を補正することとしてもよい。これにより、動態画像における病変の観察の邪魔になる肋骨等の動きの大きい構造物を減弱することが可能となる。
また、動態画像の各画素の画素信号値を本発明により補正してから解析を行って解析結果画像を取得することとしてもよい。
なお、本願の請求項における「検査対象部位に放射線を照射して動態撮影することにより得られた動態画像」には、動態撮影により放射線検出部13から取得された動態画像(所謂RAWデータ)だけでなく、これに加工(例えば、画素信号値を吸収線量に変換する処理や上述の前処理をはじめとする画像処理)を施した動態画像も含まれる。
【0101】
また、上記実施形態においては、前処理を行う場合を例にとり説明したが、これは、精度良く換気や血流の解析結果を得るために行うものであり、本発明の実施においては省略してもかまわない。
【0102】
また、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
また、例えば、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD-ROM
等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0104】
その他、動態解析システム100を構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0105】
100 画像表示システム
1 撮影装置
11 放射線源
12 放射線照射制御装置
13 放射線検出部
14 読取制御装置
2 撮影用コンソール
21 制御部
22 記憶部
23 操作部
24 表示部
25 通信部
26 バス
3 診断用コンソール
31 制御部
32 記憶部
33 操作部
34 表示部
35 通信部
36 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15