(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持面は、前記透光性部材の面のうち、前記波長変換層の前記光入射端面が設けられた側の面に設けられている、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の波長変換素子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の光源装置においては、蛍光光を所望の方向、すなわち、基材とは反対側に取り出すために、励起光を透過し、蛍光光を反射するダイクロイック層が基材と蛍光体層との間に設けられている。ところが、ダイクロイック層に入射した蛍光光のうち、ブリュースター角に近い角度で入射したP偏光成分はダイクロイック層を透過する。そのため、特許文献1の光源装置では、蛍光光のうち一部の成分は所望の方向に取り出せないという問題がある。
【0006】
本発明の一つの態様は、上記の課題を解決するためになされたものであって、所望の方向に取り出す光を増やすことができる波長変換素子を提供することを目的の一つとする。本発明の一つの態様は、上記の波長変換素子を備えた光源装置を提供することを目的の一つとする。本発明の一つの態様は、上記の光源装置を備えたプロジェクターを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの態様の波長変換素子は、光入射端面を有する波長変換層と、前記波長変換層の前記光入射端面側に設けられ、前記光入射端面に対して傾斜した傾斜部を含む支持面を有する透光性部材と、前記支持面に沿うように設けられ、前記波長変換層から射出された蛍光光を反射させる第1の反射部と、を備え、前記第1の反射部のうち少なくとも一部は、前記波長変換層を励起するための励起光を透過させるダイクロイック膜で構成され、前記透光性部材は、前記励起光が前記ダイクロイック膜と前記光入射端面とをこの順に透過して前記波長変換層に入射するように配置されており、前記光入射端面を含む平面を基準面とし、前記基準面と垂直な方向における前記基準面と前記第1の反射部との間隔を前記基準面と前記第1の反射部との距離としたとき、前記傾斜部は、前記第1の反射部の周縁領域における前記基準面と前記第1の反射部との距離が、前記第1の反射部の中心領域における前記基準面と前記第1の反射部との距離よりも小さくなるように、前記光入射端面に対して傾斜している。
【0008】
本発明の一つの態様の波長変換素子において、少なくとも一部がダイクロイック膜で構成された第1の反射部は、透光性部材の傾斜部を含む支持面に沿うように設けられている。そのため、ダイクロイック膜に対してブリュースター角に近い角度で入射して、ダイクロイック膜を透過する成分は、従来の波長変換素子よりも少なくなる。その結果、波長変換層で生成された蛍光光のうち所望の方向、すなわち波長変換層の光入射端面とは反対側に取り出せる成分が多くなる。
【0009】
本発明の一つの態様の波長変換素子において、前記透光性部材と前記光入射端面との間に空気層が設けられていてもよい。
この構成によれば、透光性部材と光入射端面との間に空気層が設けられていない場合に比べて、波長変換層で生成された蛍光光のうち、光入射端面で全反射する成分が多くなる。これにより、波長変換層で生成された蛍光光のうち所望の方向に取り出せる成分をさらに増やすことができる。
【0010】
本発明の一つの態様の波長変換素子において、前記支持面は平坦面を含んでいてもよい。
この構成によれば、第1の反射部のうち、平坦面に形成された領域の光学特性の均一性は、第1の反射部が曲面に設けられた場合よりも高い。
【0011】
本発明の一つの態様の波長変換素子において、前記支持面は曲面を含んでいてもよい。
この構成によれば、波長変換層で生成された蛍光光のうち、所望の方向に取り出せる成分が従来の波長変換素子よりも多い。
【0012】
本発明の一つの態様の波長変換素子において、前記透光性部材は、平凸レンズであり、前記平凸レンズの平坦面は、前記光入射端面に対向しており、前記平坦面は、前記光入射端面と熱的に接触していてもよい。
この構成によれば、透光性部材を介して波長変換層で発生した熱を放出することができる。
【0013】
本発明の一つの態様の波長変換素子において、前記透光性部材の屈折率は、前記波長変換層を構成する蛍光体と略等しくてもよい。
この構成によれば、波長変換層と透光性部材との界面での反射が抑制され、界面反射に伴う光の損失を減らすことができる。
【0014】
本発明の一つの態様の波長変換素子において、前記第1の反射部は、金属材料からなる反射面をさらに備え、前記光入射端面と垂直な方向から見たとき、前記ダイクロイック膜は、前記波長変換層の前記中心領域を含む領域に設けられ、前記反射面は、少なくとも前記ダイクロイック膜よりも外側に設けられていてもよい。
一般に、ダイクロイック膜は反射率の入射角依存性を有するのに対し、金属材料からなる反射面は反射率の入射角依存性を有していない。そのため、第1の反射部がダイクロイック膜のみで構成されていると、入射角によっては蛍光光がダイクロイック膜を透過するため、所望の方向への蛍光光の取り出し効率が低下する。その点、上記の構成によれば、蛍光光の入射角が大きくなりやすい領域に金属材料からなる反射面が設けられているため、所望の方向への蛍光光の取り出し効率を高めることができる。
【0015】
本発明の一つの態様の波長変換素子は、前記光入射端面と垂直な方向から見たとき、前記反射面と重なっている構造体をさらに備えていてもよく、前記支持面は、前記透光性部材の前記光入射端面とは反対側に設けられ、前記反射面は、前記構造体に設けられていてもよい。
この構成によれば、ダイクロイック膜は透光性部材に設け、金属材料からなる反射面は構造体に設けることが可能であるため、ダイクロイック膜および反射面各々の光学特性を高めることができる。また、透光性部材の光入射端面とは反対側の面にダイクロイック膜を成膜する際の成膜プロセスを簡略化することができる。
【0016】
本発明の一つの態様の波長変換素子において、前記反射面は、前記構造体に設けられた反射膜で構成されていてもよい。
この構成によれば、反射膜を適宜選択することによって所望の反射率を有する反射面を得ることができる。
【0017】
本発明の一つの態様の波長変換素子において、前記支持面は、前記透光性部材の前記光入射端面側に設けられていてもよい。
この構成によれば、ダイクロイック膜に向かって波長変換層から射出された蛍光光は、透光性部材を透過することなくダイクロイック膜に入射する。これにより、透光性部材の内部吸収による蛍光光の損失を抑えることができる。
【0018】
本発明の一つの態様の光源装置は、本発明の一つの態様の波長変換素子と、前記励起光を射出する励起光源と、を備えている。
この構成によれば、本発明の一つの態様の波長変換素子を備えたことにより、光利用効率が高い光源装置を提供することができる。
【0019】
本発明の一つの態様の光源装置は、第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面と、を有する基材と、集光光学系と、第2の反射部と、をさらに備え、前記基材は、前記基材を前記第1の面と前記第2の面との間で貫通する孔を有し、前記波長変換層は、前記孔に設けられ、前記透光性部材は、前記基材の前記第1の面側に設けられ、前記集光光学系は、前記基材の前記第2の面側に設けられ、前記第2の反射部は、前記基材と前記波長変換層との間に設けられていてもよい。
この構成によれば、波長変換層の光入射端面とダイクロイック膜との間の距離と、波長変換層の光射出端面と集光光学系との間の距離とのバランスを取りやすい。また、第2の反射部が基材と波長変換層との間に設けられているため、波長変換層で生成された蛍光光のうち、基材に向かって進んだ成分が第2の反射部で反射される。そのため、第2の反射部が設けられていない場合と比べて、基材に吸収されて損失となる成分が少なくなる。また、基材の内部を進む成分が少なくなるため、透光性部材や集光光学系を大きくしなくて済む。また、所定の領域から射出される光、つまり所定のエテンデューで射出される光が増えるため、光学系で有効に使える光の量が増加する。
【0020】
本発明の一つの態様の光源装置は、前記平面と垂直な方向から見たとき、前記光入射端面の輪郭が前記ダイクロイック膜の輪郭の内部に位置しており、前記蛍光光のうち、前記ダイクロイック膜で反射されて前記光入射端面の外側の領域に向かって進む成分を前記ダイクロイック膜に向けて反射させる第3の反射部をさらに備えていてもよい。
この構成によれば、蛍光光のうち、ダイクロイック膜で反射されて光入射端面の外側の領域に向かって進んだ成分を、再びダイクロイック膜で反射させることができるため、損失となる成分の割合をより小さくすることができる。
【0021】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、本発明の一つの態様の光源装置と、前記光源装置から射出される光を画像情報に応じて変調して画像光を生成する光変調装置と、前記画像光を投射する投射光学系と、を備える。
本発明の一つの態様のプロジェクターは、本発明の一つの態様の光源装置を備えているため、光利用効率が高いプロジェクターを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態について、
図1〜
図4を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0024】
(プロジェクター)
本実施形態のプロジェクターは、3つの透過型液晶ライトバルブを用いたプロジェクターの一例である。
図1は、本実施形態のプロジェクターを示す概略構成図である。
図2は、本実施形態の光源装置を示す概略構成図である。
【0025】
図1に示すように、プロジェクター1は、光源装置2と、色分離光学系3と、光変調装置4R,光変調装置4G,光変調装置4Bと、光合成光学系5と、投射光学系6と、を備えている。光源装置2は、照明光WLを照射する。色分離光学系3は、光源装置2からの照明光WLを赤色光LR、緑色光LG、青色光LBに分離する。光変調装置4R,光変調装置4G,光変調装置4Bはそれぞれ、赤色光LR、緑色光LG、青色光LBを画像情報に応じて変調し、各色の画像光を形成する。光合成光学系5は、各光変調装置4R,4G,4Bからの各色の画像光を合成する。投射光学系6は、光合成光学系5からの合成された画像光をスクリーンSCRに向かって投射する。
【0026】
光源装置2は、半導体レーザーから射出された青色の励起光のうち、波長変換されずに射出される青色の励起光の一部と、蛍光体による励起光の波長変換によって生じる黄色の蛍光光と、が合成された白色の照明光(白色光)WLを射出する。光源装置2は、略均一な照度分布を有するように調整された照明光WLを色分離光学系3に向けて射出する。光源装置2の具体的な構成については後述する。
【0027】
色分離光学系3は、第1のダイクロイックミラー7aと、第2のダイクロイックミラー7bと、第1の反射ミラー8aと、第2の反射ミラー8bと、第3の反射ミラー8cと、第1のリレーレンズ9aと、第2のリレーレンズ9bと、を備えている。
【0028】
第1のダイクロイックミラー7aは、光源装置2から射出された照明光WLを、赤色光LRと、緑色光LGと青色光LBとが混合された光と、に分離する。そのため、第1のダイクロイックミラー7aは、赤色光LRを透過するとともに、緑色光LGおよび青色光LBを反射する特性を有する。第2のダイクロイックミラー7bは、緑色光LGと青色光LBとが混合された光を緑色光LGと青色光LBとに分離する。そのため、第2のダイクロイックミラー7bは、緑色光LGを反射するとともに、青色光LBを透過する特性を有する。
【0029】
第1の反射ミラー8aは、赤色光LRの光路中に配置され、第1のダイクロイックミラー7aを透過した赤色光LRを光変調装置4Rに向けて反射する。第2の反射ミラー8bおよび第3の反射ミラー8cは、青色光LBの光路中に配置され、第2のダイクロイックミラー7bを透過した青色光LBを光変調装置4Bに導く。第2のダイクロイックミラー7bは、緑色光LGを光変調装置4Gに向けて反射する。
【0030】
第1のリレーレンズ9aおよび第2のリレーレンズ9bは、青色光LBの光路中の第2のダイクロイックミラー7bの後段に配置されている。第1のリレーレンズ9aおよび第2のリレーレンズ9bは、青色光LBの光路長が赤色光LRや緑色光LGの光路長よりも長くなることによる青色光LBの光損失を補償する。
【0031】
光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bの各々は、液晶パネルから構成されている。光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bの各々は、赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBの各々を通過させる間に、赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBの各々を画像情報に応じて変調し、各色に対応した画像光を形成する。光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bの各々の光入射側および光射出側には、偏光板(図示略)がそれぞれ配置されている。
【0032】
光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bの各々の光入射側には、光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bの各々に入射する赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBの各々を平行化するフィールドレンズ10R,フィールドレンズ10G,およびフィールドレンズ10Bが設けられている。
【0033】
光合成光学系5は、クロスダイクロイックプリズムから構成されている。光合成光学系5は、光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bの各々からの各色の画像光を合成し、合成された画像光を投射光学系6に向かって射出する。
【0034】
投射光学系6は、投射レンズ群から構成されている。投射光学系6は、光合成光学系5により合成された画像光をスクリーンSCRに向かって拡大投射する。これにより、スクリーンSCR上には、拡大されたカラー映像(画像)が表示される。
【0035】
(光源装置)
次に、本実施形態の光源装置2について説明する。
図2は、光源装置2の概略構成を示す図である。
図2に示すように、光源装置2は、励起光源110と、アフォーカル光学系11と、ホモジナイザー光学系12と、第1の集光光学系20と、波長変換素子30と、第2の集光光学系60と、インテグレーター光学系125と、偏光変換素子140と、を備える。
【0036】
励起光源110は、レーザー光からなる青色の励起光Bを射出する複数の半導体レーザー110Aから構成されている。励起光Bの発光強度のピークは、例えば445nmである。複数の半導体レーザー110Aは、照明光軸100axと直交する一つの平面内においてアレイ状に配置されている。なお、励起光源110としては、445nm以外の波長、例えば455nmや460nmの青色光を射出する半導体レーザーを用いることもできる。
【0037】
アフォーカル光学系11は、例えば凸レンズ11aと、凹レンズ11bと、を備えている。アフォーカル光学系11は、励起光源110から射出された複数のレーザー光からなる光束の径を縮小する。なお、アフォーカル光学系11と励起光源110との間にコリメーター光学系を配置し、アフォーカル光学系11に入射する励起光を平行光束に変換するようにしてもよい。
【0038】
ホモジナイザー光学系12は、例えば第1マルチレンズアレイ12aと、第2マルチレンズアレイ12bと、を備えている。ホモジナイザー光学系12は、励起光の光強度分布を後述する波長変換層上で均一な状態、いわゆるトップハット分布にする。ホモジナイザー光学系12は、第1マルチレンズアレイ12aの複数のレンズから射出された複数の小光束を、第1の集光光学系20とともに、波長変換層上で互いに重畳させる。これにより、波長変換層上に照射される励起光Bの光強度分布を均一な状態とする。
【0039】
第1の集光光学系20は、例えば第1レンズ20aと、第2レンズ20bと、を備えている。第1の集光光学系20は、ホモジナイザー光学系12から波長変換素子30までの光路中に配置され、励起光Bを集光させて波長変換素子30の波長変換層に入射させる。本実施形態において、第1レンズ20aおよび第2レンズ20bは、それぞれ凸レンズから構成されている。
【0040】
第2の集光光学系60は、例えば第1コリメートレンズ62と、第2コリメートレンズ64と、を備えている。第2の集光光学系60は、波長変換素子30から射出された光を略平行化する。第1コリメートレンズ62および第2コリメートレンズ64は、それぞれ凸レンズから構成されている。
【0041】
インテグレーター光学系125は、例えば第1レンズアレイ120と、第2レンズアレイ130と、重畳レンズ150と、を備えている。第1レンズアレイ120は、第2の集光光学系60から射出された光を複数の部分光束に分割するための複数の第1レンズ122を有する。複数の第1レンズ122は、照明光軸100axと直交する面内においてマトリクス状に配列されている。
【0042】
第2レンズアレイ130は、第1レンズアレイ120の複数の第1レンズ122に対応する複数の第2レンズ132を有する。第2レンズアレイ130は、重畳レンズ150とともに、第1レンズアレイ120の各第1レンズ122の像を光変調装置400R、光変調装置400G、および光変調装置400Bの画像形成領域の近傍に結像させる。複数の第2レンズ132は、照明光軸100axに直交する面内においてマトリクス状に配列されている。
【0043】
偏光変換素子140は、第2レンズアレイ130から射出された光を直線偏光に変換する。偏光変換素子140は、例えば、偏光分離膜と位相差板と(ともに図示略)を備えている。
【0044】
重畳レンズ150は、偏光変換素子140から射出された各部分光束を集光して光変調装置400R,光変調装置400G,および光変調装置400Bの画像形成領域の近傍に重畳させる。第1レンズアレイ120、第2レンズアレイ130および重畳レンズ150は、波長変換素子30からの光の強度分布を均一にするインテグレーター光学系125を構成する。
【0045】
(波長変換素子)
次に、本実施形態の波長変換素子について説明する。
図3は、波長変換素子30を、
図2の照明光軸100axを含む平面で切断した断面図である。
図4は、励起光Bの入射側から見た波長変換素子30の平面図である。
図3および
図4に示すように、波長変換素子30は、基材31と、波長変換層32と、透光性部材33と、第1の反射部を構成するダイクロイック膜34と、第2の反射膜35と、第3の反射膜36と、を備えている。すなわち、本実施形態は、第1の反射部がダイクロイック膜34で構成された例である。なお、本実施形態の第2の反射膜35は、特許請求の範囲の第2の反射部に対応する。本実施形態の第3の反射膜36は、特許請求の範囲の第3の反射部に対応する。第2の集光光学系60は、特許請求の範囲の集光光学系に対応する。
【0046】
基材31は、矩形の板材で構成され、互いに対向する第1の面31aと第2の面31bとを有している。第2の集光光学系60は、基材31の第2の面31b側に設けられている。基材31には、第1の面31aと第2の面31bとの間で基材31を貫通する孔31hが設けられている。基材31の第1の面31aと垂直な方向から見たとき、孔31hの形状は矩形である。基材31は、ガラス、石英等の透光性を有する材料で構成されていてもよいし、金属等の透光性を有しない材料で構成されていてもよい。金属材料の場合、アルミニウム、銅等の放熱性に優れた金属が用いられることが望ましい。
【0047】
波長変換層32は、基材31の孔31hの内部に設けられている。波長変換層32は、青色の励起光Bを黄色の蛍光光Yに変換して射出する蛍光体粒子(図示略)を含む。波長変換層32は、基材31の第1の面31aと略面一な光入射端面32aと、基材31の第2の面31bと略面一な光射出端面32bと、を有する。以下、説明の都合上、波長変換層32の光入射端面32aを含む仮想的な平面を基準面Pとする。基準面Pと垂直な方向から見たとき、波長変換層32の形状は、基材31の孔31hの形状を反映した矩形である。
【0048】
蛍光体粒子として、例えばYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体が用いられる。なお、蛍光体粒子の形成材料は、1種であってもよいし、2種以上の材料を用いて形成された粒子が混合されたものが用いられてもよい。波長変換層32には、耐熱性および表面加工性に優れたものを用いることが好ましい。このような波長変換層32として、アルミナ等の無機バインダー中に蛍光体粒子を分散させた蛍光体層、バインダーを用いずに蛍光体粒子を焼結した蛍光体層などが好適に用いられる。
【0049】
透光性部材33は、波長変換層32の光入射端面32a側、すなわち基材31の第1の面31a側に設けられている。第1実施形態の透光性部材33は、ガラス、石英、サファイア等の透光性を有する材料からなる平凸レンズで構成されている。透光性部材33は、平坦面33fと、特許請求の範囲に記載の傾斜部に対応する凸面33dと、を有している。透光性部材33の平坦面33fは、波長変換層32の光入射端面32aと対向している。透光性部材33と波長変換層32との間には透光性のある熱伝導部材37が設けられ、透光性部材33と波長変換層32とは互いに熱的に接触している。また、透光性部材33と基材31との間には、第2の反射膜36と伝熱部材(図示略)が設けられ、透光性部材33と基材31とは熱的に接触している。伝熱部材として、グリス、接着剤、半田、熱伝導シート等が用いられる。
【0050】
図3に示すように、透光性部材33は半球状の形状を有し、透光性部材33の凸面33dは半球面状の形状を有している。すなわち、凸面33dは、曲面を有している。基準面Pと垂直な方向から見たとき、透光性部材33の形状は円形であり、透光性部材33の中央部は波長変換層32と重なっている。透光性部材33は、励起光Bが後述するダイクロイック膜34と光入射端面32aとをこの順に透過して波長変換層32に入射するように配置されている。本明細書において、基準面Pと垂直な方向における基準面Pとダイクロイック膜34との間隔を基準面Pとダイクロイック膜34との距離とする。凸面33dは、ダイクロイック膜34の周縁領域における基準面Pとダイクロイック膜34との距離G2が、ダイクロイック膜34もしくは波長変換層32の中心領域における基準面Pとダイクロイック膜34との距離G1よりも小さくなるように、光入射端面32aに対して傾斜している。
【0051】
透光性部材33の屈折率は、波長変換層32の屈折率と略等しいことが望ましい。透光性部材33の屈折率が波長変換層32の屈折率と略等しい場合、励起光もしくは蛍光光が透光性部材33と波長変換層32との界面を通過する際の反射による損失を最小限に抑えることができる。その結果、より多くの蛍光光を所望の方向に取り出すことができる。
【0052】
図3に示すように、ダイクロイック膜34は、透光性部材33の凸面33dに設けられている。凸面33dは、光入射端面32aに対して傾斜した傾斜部を含み、ダイクロイック膜34を支持する支持面である。すなわち、ダイクロイック膜34は、透光性部材33の支持面である凸面33dに沿うように設けられている。したがって、ダイクロイック膜34は、透光性部材33の凸面33dの形状を反映した半球面状の形状を有している。
【0053】
基準面Pと垂直な方向から見たとき、ダイクロイック膜34は、波長変換層32の周縁領域における基準面Pとダイクロイック膜34との距離が、波長変換層32の中心領域における基準面Pとダイクロイック膜34との距離G1よりも小さくなるような形状に形成されている。ダイクロイック膜34は、励起光源110から射出された青色の励起光Bを透過し、波長変換層32で生成された黄色の蛍光光Yを反射する特性を有する。
【0054】
図3に示すように、第2の反射膜35は、基材31と波長変換層32との間に設けられている。すなわち、第2の反射膜35は、基材31の孔31hの内周面に設けられている。第2の反射膜35は、波長変換層32で生成された蛍光光Yを反射させる。第2の反射膜35には、アルミニウム、銀等の光反射率の高い金属材料が用いられることが望ましい。
【0055】
第3の反射膜36は、基材31と透光性部材33との間に設けられている。また、
図4に示すように、基準面Pと垂直な方向から見たとき、光入射端面32aの輪郭32Rは、ダイクロイック膜34の輪郭34Rの内部に位置している。第3の反射膜36は、光入射端面32aの輪郭32Rとダイクロイック膜34の輪郭34Rとの間に設けられている。第3の反射膜36は、蛍光光Yのうち、ダイクロイック膜34で反射されて光入射端面32aの外側の領域に向かって進む成分を、ダイクロイック膜34に向けて反射させる。第3の反射膜36には、第2の反射膜35と同様、アルミニウム、銀等の反射率の高い金属材料が用いられることが望ましい。
【0056】
なお、基材31がアルミニウム等の材料で構成されている場合には、基材31の表面が光反射性を有するため、第2の反射膜35および第3の反射膜36は、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0057】
従来の波長変換素子においては、ダイクロイック膜が蛍光体層の表面に平面状に設けられていた。そのため、ダイクロイック層に入射した蛍光光のうち、ブリュースター角に近い角度で入射したP偏光成分はダイクロイック層を透過してしまうため、所定の光射出端面から取り出せないという問題があった。
【0058】
これに対して、第1実施形態の波長変換素子30においては、ダイクロイック膜34が凸面33dの形状を反映した半球面状の形状を有している。そのため、例えば
図3中の蛍光光Y1は、従来の波長変換素子においては基準面Pと平行なダイクロイック膜に対してブリュースター角に近い角度で入射して透過するが、波長変換素子30においては、ダイクロイック膜34に対してブリュースター角よりも小さい角度で入射して反射される。これにより、蛍光光Yのうちダイクロイック膜34で反射せずに損失となる成分の割合を従来よりも減らすことができる。その結果、蛍光光Yのうち波長変換層32の光射出端面32bから所望の方向に取り出せる成分の割合が従来よりも多い波長変換素子を提供することができる。
【0059】
さらに、波長変換素子30は第3の反射膜36を備えているため、例えば
図3に示したように、ダイクロイック膜34で反射されて光入射端面32aの外側の領域に向かって進む蛍光光Y2は、第3の反射膜36で反射し、再びダイクロイック膜34で光入射端面32aに向けて反射される。これにより、蛍光光Yのうち所望の方向に取り出せる成分の割合をより高めることができる。
【0060】
第2の反射膜35は、波長変換層32から直接入射した成分とダイクロイック膜34で反射した成分とを反射させる。また、第3の反射膜36は、ダイクロイック膜34で反射されて光入射端面32aの外側の領域に向かって進む成分を反射させる。これにより、蛍光光Yが波長変換素子30から第2の面31b側に射出される領域の面積が光射出端面32bの面積よりも大きくなることがない。つまり、波長変換素子30ではエテンデューの増大が抑止されている。これにより、光利用効率が高い光源装置を実現することができる。
【0061】
また、透光性部材33と波長変換層32とが伝熱部材を介して熱的に接触しているため、波長変換層32で発生した熱を基材31だけではなく、透光性部材33にも伝達させて放熱することができる。
【0062】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、
図5を用いて説明する。
第2実施形態のプロジェクターおよび光源装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、波長変換素子の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび光源装置全体の説明は省略し、波長変換素子についてのみ説明する。
図5は、第2実施形態の波長変換素子の断面図である。
図5は、第1実施形態における
図3に対応している。
図5において、
図3と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0063】
第1実施形態の波長変換素子では、透光性部材として、平凸レンズが用いられていた。これに対して、
図5に示すように、第2実施形態の波長変換素子40では、透光性部材41として、凸メニスカスレンズが用いられている。
以下、透光性部材41を構成する凸メニスカスレンズの凹面を第1の曲面41aと称する。第1の曲面41aは、特許請求の範囲に記載の傾斜部に相当する。
【0064】
透光性部材41は、第1の曲面41aが波長変換層32の光入射端面32aに対向するように設けられている。そのため、透光性部材41と波長変換層32の光入射端面32aとの間には、空気層42が設けられている。
【0065】
ダイクロイック膜34は、透光性部材41の第1の曲面41aに設けられている。第1の曲面41aはダイクロイック膜34の支持面として機能している。したがって、ダイクロイック膜34は、透光性部材41の第1の曲面41aの形状を反映した形状を有している。第1の曲面41aは、ダイクロイック膜34の周縁領域における基準面Pとダイクロイック膜34との距離G2が、ダイクロイック膜34の中心領域における基準面Pとダイクロイック膜34との距離G1よりも小さくなるように、光入射端面32aに対して傾斜している。さらには、ダイクロイック膜34は、波長変換層32の周縁領域における基準面Pとダイクロイック膜34との距離が、波長変換層32の中心領域における基準面Pとダイクロイック膜34との距離G1よりも小さい。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0066】
第2実施形態においても、蛍光光Yのうち波長変換層32の光射出端面32bから所望の方向に取り出せる成分の割合が従来よりも多い波長変換素子を提供できる、という第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0067】
特に第2実施形態の場合、波長変換層32の光入射端面32aと透光性部材41との間に空気層42が存在しているため、空気層が存在していない場合に比べて、例えば
図5中の蛍光光Y3のように、波長変換層32で生成された蛍光光Yのうち、光入射端面32aで全反射する成分が多くなる。また、ダイクロイック膜34に向かって波長変換層32から射出された蛍光光Yは、透光性部材41を透過することなくダイクロイック膜34に入射する。これにより、透光性部材41の内部吸収による蛍光光Yの損失を抑えることができる。これらにより、波長変換層で生成された蛍光光Yのうち波長変換層32の光射出端面32bから所望の方向に取り出せる成分を更に増やすことができる。
【0068】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、
図6を用いて説明する。
第3実施形態のプロジェクターおよび光源装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、波長変換素子の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび光源装置全体の説明は省略し、波長変換素子についてのみ説明する。
図6は、第3実施形態の波長変換素子の断面図である。
図6は、第1実施形態における
図3に対応している。
図6において、
図3と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0069】
図6に示すように、第3実施形態の波長変換素子50は、殻状の透光性部材51を備えている。透光性部材51は、凹面である第1の面51aと、凸面と、を有する。第1の面51aは、略半球状の形状を有する。具体的には、第1の面51aは、その中央部に平坦面51bを有し、その周縁部に球面の一部をなす曲面部51cを有する。曲面部51cは、特許請求の範囲に記載の傾斜部に相当する。第1の面51aの曲面部51cの曲率と凸面の曲面部の曲率とは等しくてもよいし、等しくなくてもよい。本実施形態のように、透光性部材51は、必ずしもレンズ形状を有していなくてもよい。
【0070】
透光性部材51は、第1の面51aが波長変換層32の光入射端面32aに対向するように設けられている。そのため、透光性部材51と波長変換層32の光入射端面32aとの間には、空気層42が設けられている。
【0071】
ダイクロイック膜34は、透光性部材51の第1の面51aに設けられている。第1の面51aはダイクロイック膜34の支持面として機能している。したがって、ダイクロイック膜34は、透光性部材51の第1の面51aの形状を反映し、中央領域に平坦部34bを有し、周縁領域に傾斜部34c(曲面部)を有している。曲面部51cは、ダイクロイック膜34の周縁領域における基準面Pとダイクロイック膜34との距離G2が、ダイクロイック膜34の中心領域における基準面Pとダイクロイック膜34との距離G1よりも小さくなるように、光入射端面32aに対して傾斜している。さらには、波長変換層32の周縁領域における基準面Pとダイクロイック膜34との距離は、波長変換層32の中心領域における基準面Pとダイクロイック膜34との距離G1よりも小さい。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0072】
第3実施形態においても、蛍光光Yのうち波長変換層32の光射出端面32bから所望の方向に取り出せる成分の割合が従来よりも多い波長変換素子を提供できる、という第1、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0073】
また、ダイクロイック膜34に向かって波長変換層32から射出された蛍光光Yは、透光性部材51を透過することなくダイクロイック膜34に入射するため、所望の方向に取り出せる成分を更に増やすことができる、という第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0074】
また、第3実施形態の場合、透光性部材51が中央領域に平坦部51bを有しているため、透光性部材51を安定して置くことができ、透光性部材51を基材31に固定する際の作業性が向上する。さらに、ダイクロイック膜を平坦な面に形成することは、曲面に形成するよりも容易である。そのため、透光性部材51が平坦部51bを備えていない場合に比べて、ダイクロイック膜34の全体としての光学特性が高い。
【0075】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態について、
図7を用いて説明する。
第4実施形態のプロジェクターおよび光源装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、波長変換素子の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび光源装置全体の説明は省略し、波長変換素子についてのみ説明する。
図7は、第4実施形態の波長変換素子の断面図である。
図7は、第1実施形態における
図3に対応している。
図7において、
図3と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0076】
第1〜第3実施形態の波長変換素子においては、第1の反射部がダイクロイック膜34のみで構成されていた。これに対し、第4〜第6実施形態の波長変換素子においては、第1の反射部がダイクロイック膜34と反射面71rとで構成されている。また、第4実施形態においては、反射面71rは、金属材料からなる反射膜71で構成されている。
【0077】
図7に示すように、第4実施形態の波長変換素子70は、基材31と、波長変換層32と、透光性部材33と、ダイクロイック膜34と第1の反射膜71とを含む第1の反射部72と、第2の反射膜35と、第3の反射膜36と、を備えている。すなわち、第1の反射部72は、金属材料からなる反射面をさらに備えている。
【0078】
基準面Pと垂直な方向から見たとき、ダイクロイック膜34は、波長変換層32の中心領域を含む領域に設けられ、第1の反射膜71は、ダイクロイック膜34よりも外側に設けられている。第1の反射膜71は、透光性部材33の凸面33dに設けられた金属材料によって構成されている。透光性部材33の凸面33d(支持面)は、半球状であり、曲面を含んでいる。第1の反射膜71には、アルミニウム、銀等の光反射率の高い金属材料が用いられることが望ましい。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0079】
なお、第1の反射膜71は、少なくともダイクロイック膜34よりも外側に設けられた部分を有していればよく、ダイクロイック膜34と一部重なっていてもよい。
【0080】
ダイクロイック膜34は、励起光源110から射出された青色の励起光Bを透過し、波長変換層32で生成された黄色の蛍光光Yを反射する。第1の反射膜71は、波長変換層32で生成された黄色の蛍光光Yを反射する。すなわち、第1の反射部72のうち、ダイクロイック膜34は波長選択性を有し、第1の反射膜71は波長選択性を有していない。
【0081】
基準面Pと垂直な方向から見たとき、ダイクロイック膜34の形成領域の形状は、特に限定されないが、励起光Bの照射領域の形状に合わせることが望ましい。また、ダイクロイック膜34の形成領域の寸法は、特に限定されないが、励起光Bの照射領域の大きさに合わせて適宜設定されることが望ましい。例えばダイクロイック膜34の形成領域は、励起光Bの照射領域よりも若干大きく設定されることが望ましい。これにより、励起光Bの照射位置がダイクロイック膜34上の本来の位置から多少ずれたとしても、励起光Bの損失を小さく抑えることができる。
【0082】
第4実施形態においても、蛍光光Yのうち波長変換層32の光射出端面32bから所望の方向に取り出せる成分の割合が従来よりも多い波長変換素子を提供できる、という第1〜第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0083】
ダイクロイック膜は反射率の入射角依存性を有するのに対し、金属材料からなる反射面は反射率の入射角依存性を有していない。そのため、第1の反射部72がダイクロイック膜のみで構成されていたとすると、入射角によっては蛍光光がダイクロイック膜を透過するため、光射出端面32bからの蛍光光の取り出し効率が低下する。その点、第4実施形態の波長変換素子70では、第1の反射膜71がダイクロイック膜34よりも外側に設けられているため、ダイクロイック膜34よりも外側の領域に向けて波長変換層32から射出された蛍光光Y2は、反射面71rによって効率良く反射される。これにより、光射出端面32bからの蛍光光Y2の取り出し効率を高めることができる。
【0084】
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態について、
図8を用いて説明する。
第5実施形態のプロジェクターおよび光源装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、波長変換素子の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび光源装置全体の説明は省略し、波長変換素子についてのみ説明する。
図8は、第5実施形態の波長変換素子の断面図である。
図8は、第1実施形態における
図3に対応している。
図8において、
図3と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0085】
図8に示すように、第5実施形態の波長変換素子80は、基材31と、波長変換層32と、透光性部材33と、構造体81と、ダイクロイック膜34と反射面71rとを含む第1の反射部72と、第2の反射膜35と、第3の反射膜36と、を備えている。
【0086】
第4実施形態と同様、基準面Pと垂直な方向から見たとき、ダイクロイック膜34は、波長変換層32の中心領域を含む領域に設けられ、反射面71rは、ダイクロイック膜34よりも外側に設けられている。さらに、波長変換素子80は、基準面Pと垂直な方向から見たとき、反射面71rと重なっている構造体81をさらに備えている。
【0087】
構造体81は、板状の部材であり、基準面Pと垂直な方向から見たとき、中心領域に、例えば円形の開口部81oを有している。構造体81の厚さK1は、ダイクロイック膜34の中心領域における基準面Pとダイクロイック膜34との距離G1よりも小さい。透光性部材33は、構造体81の開口部81oに嵌め込まれており、透光性部材33の中心領域は構造体81の開口部81oから露出している。構造体81の構成材料は、特に限定されないが、例えば無機材料、金属材料が用いられる。
【0088】
凸面33d(支持面)は、透光性部材33の光入射端面32aとは反対側に設けられている。第1の反射部72のうち、ダイクロイック膜34は、透光性部材33の凸面33dに設けられている。反射面71rは、構造体81に設けられた第1の反射膜71で構成されている。第1の反射膜71は、構造体81の開口部81o側の端面81tに設けられている。構造体81は、第1の反射膜71を介して透光性部材33と接している。
その他の構成は、第4実施形態と同様である。
【0089】
第5実施形態においても、蛍光光Yのうち波長変換層32の光射出端面32bから所望の方向に取り出せる成分の割合が従来よりも多い波長変換素子を提供できる、という第1〜第4実施形態と同様の効果が得られる。
【0090】
第5実施形態の場合、透光性部材33と構造体81とが第1の反射膜71を介して熱的に接続されている。そのため、励起光Bが照射された際に波長変換層32で発生した熱は、透光性部材33、第1の反射膜71、構造体81を経て外部に放出される。このようにして、波長変換層32の放熱が促進され、波長変換層32の変換効率を高めることができる。波長変換層32の放熱を促進するために、構造体81は、熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。
【0091】
第4実施形態の波長変換素子70の場合、透光性部材33の凸面33dの一部にダイクロイック膜34が設けられ、凸面33dの他の一部に第1の反射膜71が設けられている。そのため、波長変換素子70を製造する際にダイクロイック膜34、第1の反射膜71のそれぞれを選択的に成膜しなければならず、成膜工程においてはマスキングが必要である。
【0092】
これに対して、第5実施形態の場合、透光性部材33にダイクロイック膜34が設けられ、構造体81に第1の反射膜71が設けられている。そのため、例えば構造体81に第1の反射膜71を成膜した後、開口部81oに透光性部材33を嵌め込み、透光性部材33上にダイクロイック膜34を成膜するという成膜プロセスを採用することができる。この成膜プロセスによれば、構造体81がマスクとして機能し、透光性部材33のうち、構造体81から露出した中心領域にダイクロイック膜34が選択的に成膜される。そのため、マスキングが不要となり、成膜プロセスの簡略化が図れる。
【0093】
[第6実施形態]
以下、本発明の第6実施形態について、
図9を用いて説明する。
第6実施形態のプロジェクターおよび光源装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、波長変換素子の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび光源装置全体の説明は省略し、波長変換素子についてのみ説明する。
図9は、第6実施形態の波長変換素子の断面図である。
図9は、第1実施形態における
図3に対応している。
図9において、
図3と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0094】
第5実施形態の波長変換素子80では、基準面Pと垂直な断面において、構造体81の開口部81o側の端面81tの断面形状が曲線状であった。これに対して、
図9に示すように、第6実施形態の波長変換素子90では、基準面Pと垂直な断面において、構造体91の開口部91o側の端面91tの断面形状が直線状である。そのため、基準面Pと垂直な断面において、凸面92dのうち、構造体91の端面91tに接した領域92d1の断面形状が直線状であり、構造体91の開口部91oから露出した領域92d2の断面形状が曲線状である。
その他の構成は、第5実施形態と同様である。
【0095】
第6実施形態においても、蛍光光Yのうち波長変換層32の光射出端面32bから所望の方向に取り出せる成分の割合が従来よりも多い波長変換素子を提供できる、という第1〜第5実施形態と同様の効果が得られる。また、第6実施形態においても、成膜プロセスの簡略化が図れるという第5実施形態と同様の効果が得られる。
【0096】
[第7実施形態]
以下、本発明の第7実施形態について、
図10を用いて説明する。
第7実施形態のプロジェクターおよび光源装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、波長変換素子の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび光源装置全体の説明は省略し、波長変換素子についてのみ説明する。
図10は、第7実施形態の波長変換素子の断面図である。
図10は、第6実施形態における
図9に対応している。
図10において、
図9と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0097】
第6実施形態の波長変換素子90では、構造体91の開口部91oから露出した透光性部材92の凸面92d2が曲面状であった。これに対して、
図10に示すように、第7実施形態の波長変換素子95では、透光性部材96の凸面96d(支持面)は、平坦面96d1と、特許請求の範囲に記載の傾斜部に相当する傾斜面96d2とを含んでいる。すなわち、第7実施形態の透光性部材96は、第6実施形態の透光性部材92における構造体91の開口部から露出した部分を平坦面で切断した形状を呈している。このように、ダイクロイック膜34は、必ずしも傾斜部に設けられなくてもよく、平坦面96d1に設けられてもよい。
その他の構成は、第6実施形態と同様である。
【0098】
第7実施形態においても、蛍光光Yのうち波長変換層32の光射出端面32bから所望の方向に取り出せる成分の割合が従来よりも多い波長変換素子を提供できる、という第1〜第6実施形態と同様の効果が得られる。また、第7実施形態においても、成膜プロセスの簡略化が図れるという第5実施形態と同様の効果が得られる。
【0099】
なお、第5〜第7実施形態においては、成膜プロセスの簡略化を図るため、ダイクロイック膜34が透光性部材に設けられ、第1の反射膜71が構造体に設けられた例を挙げた。ただし、成膜プロセスの簡略化を求めないのであれば、第4実施形態のように、ダイクロイック膜34および第1の反射膜71がともに透光性部材に設けられていてもよい。その場合であっても、透光性部材と構造体とが第1の反射膜71を介して熱的に接続されていれば、放熱効果を高める効果が得られる。また、透光性部材と構造体とは必ずしも接触していなくてもよく、透光性部材と構造体との間に空気層が設けられていてもよい。
【0100】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば透光性部材として、第1実施形態では平凸レンズを用い、第2実施形態では凸メニスカスレンズを用いたが、これら平凸レンズ、凸メニスカスレンズの他、例えば平凹レンズ、凹メニスカスレンズを用いてもよい。また、第3実施形態および第7実施形態のように、レンズ以外の形状を有する透光性部材を用いてもよい。
【0101】
上記実施形態では、透光性部材が基材と接触している例を示したが、透光性部材は基材から離れて配置されていてもよい。その場合、透光性部材は、任意の支持部に支持されていればよい。また、第1〜第6実施形態では、透光性部材が少なくとも一部に曲面を有し、その曲面にダイクロイック膜が設けられている例を示したが、透光性部材は必ずしも曲面を有していなくてもよい。例えば、透光性部材が波長変換層の光入射端面を含む基準面Pに対して傾斜した平面(傾斜部)を有し、その平面にダイクロイック膜が設けられていてもよい。また、本発明の波長変換素子において、基材は必須ではなく、基材が存在しなくてもよい。例えば透光性部材が平凸レンズで構成されている場合、波長変換層が平凸レンズの平坦面に支持されていてもよい。また、波長変換層32の光射出端面32bに、励起光Bを反射し、蛍光光Yを透過させるダイクロイック膜が設けられていてもよい。
【0102】
その他、波長変換素子および光源装置を構成する各構成要素の数、形状、材料、配置等については、適宜変更が可能である。また、上記実施形態では、3つの光変調装置を備えるプロジェクターを例示したが、1つの光変調装置でカラー映像を表示するプロジェクターに本発明を適用することも可能である。さらに、光変調装置としては、上述した液晶パネルに限らず、例えばデジタルミラーデバイスなどを用いることもできる。
【0103】
その他、プロジェクターの各種構成要素の形状、数、配置、材料等については、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。
また、上記実施形態では本発明による光源装置をプロジェクターに搭載した例を示したが、これに限られない。本発明による光源装置は、照明器具や自動車のヘッドライト等にも適用することができる。