特許第6790558号(P6790558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790558
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】補助力制御装置及び補助力制御方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20201116BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20201116BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20201116BHJP
   B62D 137/00 20060101ALN20201116BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D101:00
   B62D119:00
   B62D137:00
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-152057(P2016-152057)
(22)【出願日】2016年8月2日
(65)【公開番号】特開2018-20633(P2018-20633A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 輝彦
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−020719(JP,A)
【文献】 特開2005−343184(JP,A)
【文献】 特開平11−078936(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/139030(WO,A1)
【文献】 特開2013−242727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 101/00
B62D 119/00
B62D 137/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵トルクを検出するトルク検出部と、
前記車両の位置を検出する位置検出部と、
前記トルク検出部が所定の大きさ以上の操舵トルクを検出してから、検出した前記車両の位置が車線区画線から所定の距離以内になった場合に、前記所定の距離以内になった前記車線区画線に前記車両を近づける向きの前記操舵トルクの積算を開始することにより積算トルク量を算出する算出部と、
前記算出部が算出した前記積算トルク量が、前記車両の走行条件に対応する積算閾値以上になった場合に、前記車両が車線を逸脱することを防ぐ向きの操舵補助力を所定の値よりも小さくする補助力制御部と、
を有する補助力制御装置。
【請求項2】
前記車両の重量を検出する重量検出部をさらに有し、
前記補助力制御部は、前記重量検出部が検出した前記車両の重量が大きければ大きいほど前記積算閾値を大きくする、
請求項1に記載の補助力制御装置。
【請求項3】
前記車両の重量を検出する重量検出部をさらに有し、
前記算出部は、前記車両の重量が大きければ大きいほど、前記トルク検出部が検出した前記操舵トルクに、より小さい係数を乗算することにより前記積算トルク量を算出する、
請求項1に記載の補助力制御装置。
【請求項4】
前記車両の走行速度を検出する車速検出部をさらに有し、
前記補助力制御部は、前記車速検出部が検出した前記走行速度が大きければ大きいほど前記積算閾値を大きくする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の補助力制御装置。
【請求項5】
前記車両の走行速度を検出する車速検出部をさらに有し、
前記算出部は、前記走行速度が大きければ大きいほど、前記トルク検出部が検出した前記操舵トルクに、より小さい係数を乗算することにより前記積算トルク量を算出する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の補助力制御装置。
【請求項6】
コンピュータが実行する、
車両の操舵トルクを検出するステップと、
前記車両の位置を検出するステップと、
所定の大きさ以上の操舵トルクを検出してから、検出した前記車両の位置が車線区画線から所定の距離以内になった場合に、前記所定の距離以内になった前記車線区画線に前記車両を近づける向きの前記操舵トルクの積算を開始することにより積算トルク量を算出するステップと、
前記積算トルク量が前記車両の走行条件に対応する第1閾値以上になった場合に、前記車両が車線を逸脱することを防ぐ向きの操舵補助力を所定の値よりも小さくするステップと、
を有する補助力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操舵補助力を制御する補助力制御装置及び補助力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路を走行中の車両が車線を逸脱してしまうことを防ぐために、車両の逸脱を防ぐように操舵反力を発生する技術が知られている。特許文献1には、所定の大きさ以上の操舵トルクが所定の時間以上にわたって継続したことにより、運転手が意図的に車線を変更していると認識して操舵反力の発生を停止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−205558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両を所定の量だけ左右方向に移動させるために必要な操舵トルクの大きさは、車両の走行条件によって異なる。例えば、車両の重量が大きい場合や車両の走行速度が大きい場合には、所定の量だけ車両を移動させるために必要な操舵トルクが大きくなる。従来の技術では、車両の走行条件によって操舵トルクが変化することが考慮されていなかったので、運転手が意図的に車線を変更しているかどうかの判定精度が低いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、運転手が意図的に車線を変更しているかどうかの判定精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の補助力制御装置は、車両の操舵トルクを検出するトルク検出部と、前記トルク検出部が所定の大きさ以上の操舵トルクを検出してから、前記操舵トルクを積算して積算トルク量を算出する算出部と、前記算出部が算出した前記積算トルク量が、前記車両の走行条件に対応する積算閾値以上になった場合に、前記車両が車線を逸脱することを防ぐ向きの操舵補助力を所定の値よりも小さくする補助力制御部と、を有する。
【0007】
補助力制御装置は、前記車両の重量を検出する重量検出部を有し、前記補助力制御部は、前記重量検出部が検出した前記車両の重量が大きければ大きいほど前記積算閾値を大きくしてもよい。
【0008】
補助力制御装置は、前記車両の重量を検出する重量検出部を有し、前記算出部は、前記車両の重量が大きければ大きいほど、前記トルク検出部が検出した前記操舵トルクに、より小さい係数を乗算することにより前記積算トルク量を算出してもよい。
【0009】
補助力制御装置は、前記車両の走行速度を検出する車速検出部を有し、前記補助力制御部は、前記車速検出部が検出した前記走行速度が大きければ大きいほど前記積算閾値を大きくしてもよい。
【0010】
補助力制御装置は、前記車両の走行速度を検出する車速検出部を有し、前記算出部は、前記走行速度が大きければ大きいほど、前記トルク検出部が検出した前記操舵トルクに、より小さい係数を乗算することにより前記積算トルク量を算出してもよい。
【0011】
補助力制御装置は、前記車両の位置を検出する位置検出部をさらに有し、前記算出部は、前記位置検出部が検出した前記車両の位置が車線区画線から所定の距離以内になった場合に、所定の距離以内になった車線区画線に前記車両を近づける向きの前記操舵トルクの積算を開始してもよい。
【0012】
本発明の第2の態様の補助力制御方法は、コンピュータが実行する、車両の操舵トルクを検出するステップと、所定の大きさ以上の操舵トルクを検出してから、前記操舵トルクを積算して積算トルク量を算出するステップと、前記積算トルク量が前記車両の走行条件に対応する第1閾値以上になった場合に、前記車両が車線を逸脱することを防ぐ向きの操舵補助力を所定の値よりも小さくするステップと、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、運転手が意図的に車線を変更しているかどうかの判定精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る補助力制御装置の概要について説明するための図である。
図2】補助力制御装置が操舵トルクの積算を開始してからの経過時間と操舵トルクの積算値及び操舵補助力との関係を示す図である。
図3】補助力制御装置の構成を示す図である。
図4】補助力制御装置が、運転手が車線変更の意思を持っているかどうかを判定して補助力を制御する典型的な動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[補助力制御装置の概要]
図1は、本実施形態に係る補助力制御装置の概要について説明するための図である。図1においては、高速道路の走行車線を走行中の車両Vを上から見た様子を模式的に示している。時刻T1において、車両Vは、車線のやや右寄りの位置において、右向きに走行している。時刻T1よりも後の時刻T2において、車両Vは、時刻T1における位置よりも車線区画線BRに近い位置を走行している。
【0016】
車両Vに搭載された補助力制御装置は、車両Vが車線を逸脱することを防止するために、車両Vが車線区画線に近づくと、車線区画線から離れる向きに車両Vを向けるための操舵補助力を発生させる。ただし、補助力制御装置は、運転手が意図的に車線変更をしようとしていることを検知すると、操舵補助力を所定の値以下(例えばゼロ)にする。
【0017】
本実施形態に係る補助力制御装置は、運転手が弱い操舵力で、隣接する車線(例えば、図1における追越車線)に向けて徐々に移動させている場合であっても、運転手が意図的に車線変更をしようとしていることを検知できる点を特徴としている。このようにするために、補助力制御装置は、所定の大きさ以上の操舵トルクを検出してから操舵トルクを積算した値が、車両の重量又は積載量に対応する所定の閾値以上になった場合に、運転手が意図的に車線変更をしていると判定する。そして、補助力制御装置は、車両Vが車線を逸脱することを防ぐ向きの操舵補助力を所定の値よりも小さくすることで、運転手が車線変更をしやすくするとともに、車線変更後に急に操舵補助力がなくなることで不安定な状態が発生することを防ぐ。
【0018】
図2は、補助力制御装置が操舵トルクの積算を開始してからの経過時間と操舵トルクの積算値及び操舵補助力との関係を示す図である。図2(a)は、運転手が右向きの操舵を継続した場合の積算値及び操舵補助力が時間の経過とともに変化する様子を示している。図2(a)においては、車両Vの位置が右側車線区画線BRから所定の位置になった時点を経過時間の起点としている。
【0019】
図2(a)においては、時間の経過とともに操舵トルクの積算値が増加し、積算値が所定の閾値(以下、積算閾値という)に達した時点(時刻T2)で、左向きの操舵補助力が減少し始めていることがわかる。このように、運転手が意図的に右向きに車両Vを移動させている場合に、補助力制御装置が運転手の意図を検知した時点で徐々に操舵補助力を小さくすることで、運転手の操作性が向上する。また、操舵補助力が急に小さくならないので、操舵補助力がなくなった時点で運転手がハンドルを大きく切り過ぎることを防止できる。
【0020】
図2(b)は、運転手が右向きの操舵をしばらくの間行った後に、右向きの操舵を停止した場合の経過時間と積算値及び操舵補助力との関係を示す図である。図2(b)においては、積算値が積算閾値に達する前の時点、すなわち時刻T2よりも早い時刻T3の時点で、運転手が右向きの操舵を停止している。補助力制御装置は、検出した操舵トルクが所定の閾値以下になった場合に、操舵トルクの積算を中止して積算値を初期化する。この場合、補助力制御装置は、運転手が意図的に右向きに車両Vを移動させているわけではないと判定し、左向きの補助力を発生し続ける。
【0021】
なお、図2においては、補助力制御装置が、運転手が意図的に右向きに車両Vを移動させていると検出するまでの間は、一定の大きさの補助力を発生させているが、補助力の大きさは一定である必要はない。補助力制御装置は、例えば、車両Vが車線区画線BRに近づくほど補助力を大きくするように制御してもよい。
以下、補助力制御装置の構成及び動作について詳細に説明する。
【0022】
[補助力制御装置1の構成]
図3は、補助力制御装置1の構成を示す図である。補助力制御装置1は、制御部11と、記憶部12とを有する。
制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部11は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、トルク検出部111、車速検出部112、位置検出部113、重量検出部114、算出部115及び補助力制御部116として機能する。
【0023】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等の記憶媒体を有する。記憶部12は、制御部11が実行するプログラムを記憶している。また、記憶部12は、制御部11が、運転手が意図的に車線を変更しようとしていると判定するための操舵トルクの積算値の閾値を記憶している。
【0024】
トルク検出部111は、例えばステアリングに設けられたトルクセンサから入力された信号に基づいて、操舵トルクの大きさを検出する。トルク検出部111は、検出した操舵トルクを算出部115に通知する。
【0025】
車速検出部112は、例えば車輪の回転速度を検出するセンサから入力された信号に基づいて、車両Vの走行速度(以下、車速という)を検出する。車速検出部112は、検出した車速を算出部115に通知する。
【0026】
位置検出部113は、車両Vに搭載されたカメラが車両Vの前方を撮影して生成された撮像画像に基づいて、車線における車両Vの位置を検出する。位置検出部113は、車線区画線に対する車両Vの位置を検出し、車線区画線と車両Vとの間の距離を算出部115に通知する。
【0027】
重量検出部114は、車両Vに搭載された重量センサから入力された信号に基づいて、車両Vの重量を検出する。重量検出部114は、予め記憶部12に記憶された重量の値を車両Vの重量であると検出してもよい。重量検出部114は、検出した重量を算出部115に通知する。
【0028】
算出部115は、トルク検出部111が所定の大きさ以上の操舵トルクを検出してから、操舵トルクを積算して積算トルク量を算出する。算出部115は、例えば、車速検出部112が検出した車速において運転手が車線を変更する意図がある場合に発生する操舵トルクの大きさに基づいて定められた第1閾値以上の操舵トルクを検出すると、操舵トルクの積算を開始する。算出部115は、例えば、所定の単位時間ごとに、トルク検出部111が検出した操舵トルクを加算することにより操舵トルクを積算する。
【0029】
算出部115は、重量検出部114が検出した車両Vの重量が大きければ大きいほど、トルク検出部111が検出した操舵トルクに、より小さい係数を乗算することにより積算トルク量を算出してもよい。車両Vの重量が大きいと、車両Vを左右方向に移動させるために必要な操舵トルクが大きくなるが、上記のように係数を変化させることで、算出部115は、車両Vの重量によらず、車両Vの左右方向の移動量と操舵トルクの積算値との関係を同等にすることができる。
【0030】
同様に、算出部115は、車速検出部112が検出した車速が大きければ大きいほど、トルク検出部111が検出した操舵トルクに、より小さい係数を乗算することにより積算トルク量を算出してもよい。車両Vの車速が大きいと、車両Vを左右方向に移動させるために必要な操舵トルクが大きくなるが、上記のように係数を変化させることで、算出部115は、車速によらず、車両Vの左右方向の移動量と操舵トルクの積算値との関係を同等にすることができる。
【0031】
算出部115は、運転手が車線変更をする意思があるか否かの判定精度を向上させるために、操舵トルクを積算している間に、トルク検出部111が検出した、車線区画線に近づく向きの操舵トルクが第2閾値以下になった場合に、積算トルク量を初期化する。例えば、算出部115は、運転手が右側に移動中に、右側への移動を停止したり左側にハンドルを切ったりした場合、運転手が車線変更をする意思がないと判定して、操舵トルク量をゼロに戻す。なお、算出部115は、操舵トルクの積算を開始する際に用いられる第1閾値よりも小さい第2閾値を用いることで、積算の開始と停止を頻繁に繰り返すことを防止できる。
【0032】
算出部115は、例えば、車速検出部112が検出した車速又は重量検出部114が検出した重量等の車両の走行条件に基づいて第2閾値を決定する。車速又は重量が大きければ大きいほど、左右方向に移動するために大きな操舵トルクが必要になるので、算出部115は、例えば、車速又は重量が大きければ大きいほど第2閾値を大きくすることで、車速又は重量によらず、適切なタイミングで運転手が車線変更をする意思がないと判定することができる。
【0033】
また、算出部115は、位置検出部113が検出した車両Vの位置が車線区画線から所定の距離以内になった場合に、所定の距離以内になった車線区画線に車両Vを近づける向きの操舵トルクの積算を開始してもよい。このようにすることで、例えば車両Vが車線の中央付近を走行しており、運転手が車線変更をする意思を持っていない状態で発生していた操舵トルクが積算されないので、補助力制御部116が、運転手が車線変更をする意思があるか否かを判定する精度を向上させることができる。
【0034】
補助力制御部116は、車両Vが車線を逸脱することを防ぐ向きの操舵補助力を、補助力発生部(不図示)に発生させる。操舵補助力は、車線維持支援力であり、例えば補助力発生部が有するモータにより発生する。補助力制御部116は、運転手がウィンカーを操作して車線変更の意思を示した場合に、補助力発生部に操舵補助力の発生を停止させる。
【0035】
また、補助力制御部116は、算出部115が算出した積算トルク量が所定の積算閾値以上になった場合に、車両Vが車線を逸脱することを防ぐ向きの操舵補助力を所定の値よりも小さくする。このようにすることで、補助力制御部116は、運転手がウィンカーを操作しないで車線変更をしようとした場合であっても、運転手が車線変更をする意思があることを検出し、操舵補助力を弱めることができる。
【0036】
ここで、補助力制御部116は、重量検出部114が検出した車両Vの重量に基づいて積算閾値を決定してもよい。補助力制御部116は、例えば車両Vの重量が大きければ大きいほど積算閾値を大きくする。このようにすることで、補助力制御部116は、車両Vの積載量が多く、左右方向に車両Vを移動させるために必要な操舵トルクが比較的大きい場合と、積載量が小さく操舵トルクが比較的小さい場合との間での、運転手が車線変更をしていると判定するまでの時間のばらつきを小さくすることができる。
【0037】
また、補助力制御部116は、車速検出部112が検出した車速に基づいて積算閾値を決定してもよい。補助力制御部116は、例えば車速が大きければ大きいほど積算閾値を大きくする。このようにすることで、補助力制御部116は、高速で走行しており、左右方向に車両Vを移動させるために必要な操舵トルクが比較的大きい場合と、低速で走行しており操舵トルクが比較的小さい場合との間での、運転手が車線変更をしていると判定するまでの時間のばらつきを小さくすることができる。
【0038】
[補助力制御装置1による補助力制御動作のフローチャート]
図4は、補助力制御装置1が、運転手が車線変更の意思を持っているかどうかを判定して補助力を制御する典型的な動作のフローチャートである。
【0039】
まず、トルク検出部111は操舵トルクを所定の間隔で検出する(S11)。算出部115は、制御部11が検出した操舵トルクが第1閾値より大きい場合(S12においてYES)、操舵トルクの積算を開始する(S13)。
【0040】
続いて、補助力制御部116は、操舵トルクの積算値を監視する(S14)。補助力制御部116は、積算値が積算閾値以上になったと判定した場合(例えば、図2における時刻T2)、補助力を小さくするように、車線維持支援をするための補助力を発生するモータを制御する。補助力制御部116は、積算値が積算閾値以上になった場合に、補助力の発生を停止してもよい。
【0041】
補助力制御部116が、ステップS14において積算値が積算閾値よりも小さいと判定した場合、算出部115は、操舵トルクが第2閾値以下であるかどうかを確認する(S16)。算出部115は、操舵トルクが第2閾値以下であると判定した場合(S16においてYES)、積算値を初期化して(S17)、ステップS11に戻る。
【0042】
補助力制御装置1は、エンジンが停止するまで(S18においてYES)、ステップS11からS17までの処理を繰り返す。このようにすることで、補助力制御装置1は、運転手が少しずつ車両Vの左右方向の位置を変化させる場合であっても、運転手が車線変更をする意思を有しているか否かを高い精度で判定して、適切なタイミングで車線維持支援のための補助力を小さくしたり停止したりすることができる。
【0043】
(変形例)
上記の説明においては、補助力制御部116が、運転手が意図的に車線を変更していると判定するための積算閾値を、車両Vの重量や車速によって変化させる例について説明したが、補助力制御部116は、算出部115が積算を開始した位置によって、積算閾値を変化させてもよい。例えば、補助力制御部116は、算出部115が積算を開始した位置と車線区画線との距離が大きければ大きいほど積算閾値を大きくするようにしてもよい。
【0044】
[補助力制御装置1による効果]
以上説明したように、本実施形態の補助力制御装置1は、トルク検出部111が所定の大きさ以上の操舵トルクを検出してから、算出部115が、操舵トルクを積算して積算トルク量を算出する。そして、補助力制御部116が、算出部115が算出した積算トルク量が、車両の走行条件(例えば、車両Vの重量や車速)に対応する積算閾値以上になった場合に、車両Vが車線を逸脱することを防ぐ向きの操舵補助力を所定の値よりも小さくする。このようにすることで、補助力制御装置1は、運転手が弱い操舵トルクで少しずつ車両Vを左右方向に移動させている場合であっても、運転手が意図的に車線を変更しているかどうかを判定できる。その結果、運転手が意図的に車線を変更しているかどうかの判定精度を向上させることができる。
【0045】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0046】
1 補助力制御装置
11 制御部
12 記憶部
111 トルク検出部
112 車速検出部
113 位置検出部
114 重量検出部
115 算出部
116 補助力制御部
図1
図2
図3
図4