(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、耐力壁は、当該耐力壁が適用される各々の建物の仕様に応じた耐力を満足している必要がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、要求される耐力を満足させることができる耐力壁を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の耐力壁は、長手方向と直交する方向である水平方向に間隔をあけて長手方向である上下方向に延びる一対の縦材と、上下方向に間隔をあけて水平方向に延びると共に、前記一対の縦材を水平方向につなぐ複数の横材と、一方の前記縦材に接合された第1接合部と、他方の前記縦材に接合された第2接合部と、前記一対の縦材の間において上下方向に一定の間隔をあけて1列に配列された円形の開口部と、該開口部が形成されていない平坦な部分である一般部と、前記開口部の縁部に形成され前記一般部に対して該一般部の厚み方向に向けて突出する環状リブと、を有する壁面材と、を備えた耐力壁であって、前記耐力壁の終局耐力をQ
uとし、前記第1接合部と前記第2接合部との水平方向への間隔をWとし、前記壁面材を構成する板材の厚みをtとし、前記壁面材を構成する板材の降伏応力度をσ
yとし、上下方向に隣り合う前記環状リブの中心間の間隔の前記環状リブの内径に対する比率をβとし、上下方向に隣り合う一対の前記横材の間に配置された前記開口部の最大の数nが、以下の式(1)を満たすように設定されている。
【数1】
【0007】
第1の態様の耐力壁によれば、地震や風等による荷重が建物に作用すると、壁面材において上下方向に隣り合う一の開口部と他の開口部との上下方向の中間部の応力が高まる。そして、建物に作用する荷重が所定の荷重を超えると、壁面材において上記の応力が高まった部位が塑性変形される。これにより、建物に入力された地震や風等によるエネルギーを吸収することができる。ここで、
第1の態様の発明では、建物の上下方向に隣り合う一対の横材の間に配置された開口部の最大の数nが、上記式(1)を満たすように設定されている。これにより、終局耐力Q
uを満足する耐力壁を得ることができる。なお、横材とは、一対の縦材の上方側の端部を水平方向につなぐ部材、一対の縦材の下方側の端部を水平方向につなぐ部材、及び一対の縦材の上下方向の中間部を水平方向につなぐ部材のことである。また、一対の縦材の上下方向の中間部を水平方向につなぐ部材を含まない構成も
第1の態様の耐力壁に含まれる。
【0008】
第2の態様の耐力壁は、
第1の態様の耐力壁において、上下方向に隣り合う一の前記開口部と他の前記開口部との間の前記一般部のせん断座屈応力度をτ
aとし、一方の前記横材と該横材と上下方向に隣り合う前記開口部との間の前記一般部のせん断座屈応力度をτ
bとし、他方の前記横材と該横材と上下方向に隣り合う前記開口部との間の前記一般部のせん断座屈応力度をτ
cとし、上下方向に隣り合う一の前記環状リブと他の前記環状リブの内縁との間の上下方向への間隔をw
aとし、一方の前記横材と該横材と上下方向に隣り合う前記環状リブの内縁との間の上下方向への間隔をw
bとし、他方の前記横材と該横材と上下方向に隣り合う前記環状リブの内縁との間の上下方向への間隔をw
cとし、一方の前記横材と該一方の前記横材と上下方向に隣り合う他方の前記横材との上下方向への間隔をHとし、前記開口部の半径をrとし、上下方向に隣り合う一の前記開口部と他の前記開口部との間を通りかつこの一の前記開口部の内縁と他の前記開口部の内縁とを通る共通接線における一の前記開口部の内縁と他の前記開口部の内縁との間の長さをL
aとし、前記共通接線と上下方向とのなす角度をθとし、一方の前記横材と該横材と上下方向に隣り合う前記開口部との間の上下方向の間隔をh
b1とし、他方の前記横材と該横材と上下方向に隣り合う前記開口部との間の上下方向の間隔をh
c1とし、前記第2接合部と前記開口部との水平方向への間隔をa
b1とし、前記第1接合部と前記開口部との水平方向への間隔a
c1とし、前記壁面材を構成する板材のヤング率をE、ポアソン比をνとした場合において、前記終局耐力Q
uが、以下の式(2)〜式(11)を満たすように設定されている。
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
【0009】
第2の態様の耐力壁によれば、終局耐力Q
uが、上記の式(2)〜式(11)を満たすように設定されている。これにより、終局耐力Q
uを満足する耐力壁の形状(耐力壁を構成する部材の寸法)を得ることができる。
【0010】
第3の態様の耐力壁は、長手方向と直交する方向である水平方向に間隔をあけて長手方向である上下方向に延びる複数の縦材と、上下方向に間隔をあけて水平方向に延びると共に、前記複数の縦材のうち水平方向に隣り合う一対の縦材を水平方向につなぐ複数の横材と、水平方向に隣り合う一対の前記縦材のうち一方の前記縦材に接合された第1接合部及び他方の前記縦材に接合された第2接合部と、水平方向に隣り合う一対の前記縦材の間において上下方向に一定の間隔をあけて1列に配列された円形の開口部と、該開口部が形成されていない平坦な部分である一般部と、前記開口部の縁部に形成され前記一般部に対して該一般部の厚み方向に向けて突出する環状リブと、を有する複数の壁面材と、を備えた耐力壁であって、前記耐力壁の終局耐力をQ
uとし、前記第1接合部と前記第2接合部との水平方向への間隔をWとし、前記壁面材を構成する板材の厚みをtとし、前記壁面材を構成する板材の降伏応力度をσ
yとし、上下方向に隣り合う前記環状リブの中心間の間隔の前記環状リブの内径に対する比率をβとし、前記壁面材の数をkとし、上下方向に隣り合う一対の前記横材の間に配置された前記開口部の最大の数nが、以下の式(12)を満たすように設定された耐力壁。
【数12】
【0011】
第3の態様の耐力壁によれば、建物の上下方向に隣り合う一対の横材の間に配置された開口部の最大の数nが、上記式(12)を満たすように設定されている。これにより、終局耐力Q
uを満足する耐力壁を得ることができる。なお、横材とは、一対の縦材の上方側の端部を水平方向につなぐ部材、一対の縦材の下方側の端部を水平方向につなぐ部材、及び一対の縦材の上下方向の中間部を水平方向につなぐ部材のことである。また、一対の縦材の上下方向の中間部を水平方向につなぐ部材を含まない構成も
第3の態様の耐力壁に含まれる。
【0012】
第4の態様の耐力壁は、
第3の態様の耐力壁において、上下方向に隣り合う一の前記開口部と他の前記開口部との間の前記一般部のせん断座屈応力度をτ
aとし、一方の前記横材と該横材と上下方向に隣り合う前記開口部との間の前記一般部のせん断座屈応力度をτ
bとし、他方の前記横材と該横材と上下方向に隣り合う前記開口部との間の前記一般部のせん断座屈応力度をτ
cとし、上下方向に隣り合う一の前記環状リブと他の前記環状リブの内縁との間の上下方向への間隔をw
aとし、一方の前記横材と該横材と上下方向に隣り合う前記環状リブの内縁との間の上下方向への間隔をw
bとし、他方の前記横材と該横材と上下方向に隣り合う前記環状リブの内縁との間の上下方向への間隔をw
cとし、一方の前記横材と該一方の前記横材と上下方向に隣り合う他方の前記横材との上下方向への間隔をHとし、前記開口部の半径をrとし、上下方向に隣り合う一の前記開口部と他の前記開口部との間を通りかつこの一の前記開口部の内縁と他の前記開口部の内縁とを通る共通接線における一の前記開口部の内縁と他の前記開口部の内縁との間の長さをL
aとし、前記共通接線と上下方向とのなす角度をθとし、一方の前記横材と該横材と上下方向に隣り合う前記開口部との間の上下方向の間隔をh
b1とし、他方の前記横材と該横材と上下方向に隣り合う前記開口部との間の上下方向の間隔をh
c1とし、前記第2接合部と前記開口部との水平方向への間隔をa
b1とし、前記第1接合部と前記開口部との水平方向への間隔a
c1とし、前記壁面材を構成する板材のヤング率をE、ポアソン比をνとした場合において、前記終局耐力Q
uが、以下の式(13)〜式(22)を満たすように設定されている。
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
【数19】
【数20】
【数21】
【数22】
【0013】
第4の態様の耐力壁によれば、終局耐力Q
uが、上記の式(13)〜式(22)を満たすように設定されている。これにより、終局耐力Q
uを満足する耐力壁の形状(耐力壁を構成する部材の寸法)を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る耐力壁は、要求される耐力を満足させることができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜
図7を用いて、本発明の実施形態に係る耐力壁について説明する。なお、各図に示す矢印VE及び矢印HOは、本実施形態の耐力壁を備えた建物の上下方向及び水平方向を示すものとする。また、以下の説明で特記なく上下の方向を用いる場合は、建物の上下方向を示すものとし、左右の方向を用いる場合は、耐力壁を正面から見た建物の水平方向一方側(左側)及び他方側(右側)を示すものとする。
【0017】
図1に示されるように、本実施形態の耐力壁10は、矩形枠状に形成されたフレーム12に板状の壁面材14が接合されることにより構成されている。
【0018】
フレーム12は、水平方向に間隔をあけて上下方向を長手方向として延びる一対の縦材16と、上下方向に間隔をあけて水平方向に延びると共に一対の縦材16の上端部どうし及び下端部どうしをそれぞれ連結する一対の横材18と、を備えている。なお、本実施形態では、縦材16及び横材18は、所定の長さとされた鋼管や形鋼であり、縦材16と横材18とは溶接や締結部材を介して接合されている。ここで、一対の縦材16のうちの左側に配置された縦材を第1縦材16T1というものとし、右側に配置された縦材を第2縦材16T2というものとする。また、第1縦材16T1及び第2縦材16T2の上端部どうしをつなぐ横材18を第1横材18Y1というものとし、第1縦材16T1及び第2縦材16T2の下端部どうしをつなぐ横材18を第2横材18Y2というものとする。
【0019】
壁面材14は、略矩形状の鋼板を用いて形成されている。この壁面材14は、第1縦材16T1、第2縦材16T2、第1横材18Y1及び第2横材18Y2の間に形成された矩形状の開口を閉止するように、当該第1縦材16T1、第2縦材16T2、第1横材18Y1及び第2横材18Y2に接合されている。本実施形態では、複数のドリルねじが壁面材14の左側の端部、右側の端部、上方側の端部及び下方側の端部にそれぞれ螺入されることで、壁面材14の左側の端部、右側の端部、上方側の端部及び下方側の端部が、第1縦材16T1、第2縦材16T2及び第1横材18Y1及び第2横材18Y2にそれぞれ接合されている。
【0020】
詳述すると、壁面材14の左側の端部においてドリルねじが螺入された部分を第1接合部20というものとし、壁面材14の右側の端部においてドリルねじが螺入された部分を第2接合部22というものとする。そして、第1接合部20及び第2接合部22は、上下方向に略等間隔に配列されている。また、壁面材14の上方側の端部においてドリルねじが螺入された部分を第3接合部24というものとし、壁面材14の下方側の端部においてドリルねじが螺入された部分を第4接合部26というものとする。そして、第3接合部24及び第4接合部26は、水平方向に略等間隔に配列されている。なお、第1接合部20と第2接合部22との水平方向への間隔をWとし、第3接合部24と第4接合部26との水平方向への間隔をHとする。
【0021】
壁面材14には、上下方向に所定の間隔をあけて1列に配列された複数の開口部28がそれぞれ形成されている。本実施形態では、これらの複数の開口部28は、略同じ内径R(半径r)に形成されているとともに、上下方向に隣り合う開口部28間の上下方向への距離dが全て略同じ寸法となるように設定されている。また、本実施形態では、上下方向に隣り合う開口部28の中心軸28Aの間の距離Dは、開口部28の内径R、開口部28と第1接合部20との間の距離a
c1(
図5参照)、及び開口部28と第2接合部22との間の距離a
b1(
図4参照)の合計よりも短くなるように設定されている。これにより、地震や風による建物の水平方向への荷重が耐力壁10に作用した際に、壁面材14において第1接合部20と開口部28との水平方向の中間部のせん断応力値、並びに、壁面材14において第2接合部22と開口部28との水平方向の中間部のせん断応力値を、壁面材14において上下方向に隣り合う一の開口部28と他の開口部28との上下方向の中間部のせん断応力値よりも低くすることが可能となっている。
【0022】
ここで、壁面材14において開口部28が形成されていない平坦な部分を一般部としての平板部30とすると、上下方向に隣り合う開口部28間の平板部30の最少長さd(隣り合う開口部28間の距離d)は、開口部28と第1接合部20との間の平板部30の最少長さa
c1(開口部28と第1接合部20との間の距離a
c1)と、開口部28と第2接合部22との間の平板部30の最少長さa
b1(開口部28と第2接合部22との間の距離a
b1)との合計よりも短くなっている。なお、壁面材14を構成する板材の厚みをtとする。すなわち、平板部30の厚みをtとする。また、壁面材14を構成する板材の降伏応力度をσ
yとする。なお、降伏応力度σ
yは、壁面材14を構成する板材の材質によって適宜決定すればよい。例えば、降伏応力度σ
yは、JIS Z 2241 金属材料引張試験方法に基づく下降伏応力(下降伏点)又は「耐力(オフセット法)」によるものとすればよい。また、壁面材14を構成する板材のヤング率をE、ポアソン比をνとする。
【0023】
図2に示されるように、開口部28の縁部28Bには、平板部30と一体に形成された環状リブ32(バーリング)が形成されている。この環状リブ32は、平板部30に対して当該平板部30の厚み方向一方側(縦材16及び横材18(
図1参照)が配置されている側)に突出している。また、環状リブ32の径方向内側の面は、断面視で略円弧状に湾曲されており、さらに環状リブ32の径方向内側の面は、平板部30と離れるにつれて次第に窄まっている。これにより、環状リブ32の内径が平板部30と離れるにつれて次第に小さくなっている。なお、以下の説明において「環状リブ32の内径φ」とは、当該環状リブ32において最も内径が小さい部分の内径φのことを言うものとする。また、環状リブ32の幅(環状リブ32の径方向への寸法)をb
rとする。さらに、上下方向に隣り合う環状リブ32の中心間の間隔D(上下方向に隣り合う開口部28の中心軸28Aの間の距離Dに相当する間隔)の環状リブ32の内径φに対する比率をβとする。そして、この環状リブ32が開口部28の縁部28Bに形成されていることにより、開口部28の縁部28Bの近傍に作用する曲げ応力の値を、壁面材14において上下方向に隣り合う一の開口部28と他の開口部28との上下方向の中間部のせん断応力値よりも低くすることが可能となっている。
【0024】
図1に示されるように、以上説明した耐力壁10の壁面材14に形成された開口部28の数は、要求される許容耐力Q
cr及び終局耐力Q
uを考慮して設定されている。なお、「許容耐力Q
cr」とは、建物の水平方向への荷重が耐力壁10に作用して、壁面材14に生じる応力が弾性限度となる際に、第1縦材16T1の下端部と第2横材18Y2との接合部と第2縦材16T2の上端部と第1横材18Y1との接合部を結ぶ線LFの方向に作用する引張力Fの水平方向への分力のことである。また、「終局耐力Q
u」とは、保有終局耐力であり、この「終局耐力Q
u」は、建物の水平方向への荷重が耐力壁10に作用して、第1縦材16T1の下端部と第2横材18Y2との接合部と第2縦材16T2の上端部と第1横材18Y1との接合部を結ぶ線LFの方向に作用する引張力Fが降伏した際の当該引張力の水平方向への分力である。なお、「許容耐力Q
cr」は、大地震や強大台風を想定(建物に0.2Gの水平方向への加速度が生じた際を想定)した耐力であり、「終局耐力Q
u」は、極大地震を想定(建物に0.3Gの水平方向への加速度が生じた際を想定)した耐力である。
【0025】
前述の構成の耐力壁10では、壁面材14において各々の開口部28の間がほぼ同時にせん断変形する。この現象のもとで、許容耐力Q
crについて検討する。
【0026】
許容耐力Q
crは、壁面材14における各々の開口部28の間34のせん断耐力の合計値と、壁面材14において最も上方側に配置された開口部28と第3接合部24との間36のせん断耐力の値と、壁面材14において最も下方側に配置された開口部28と第4接合部26との間38のせん断耐力の値と、を足し合わせた値から導かれる。具体的には、許容耐力Q
crは、上記足し合わせた値に第1接合部20と第2接合部22との水平方向への間隔Wと第3接合部24と第4接合部26との上下方向への間隔Hとの比率を乗じることで、水平方向の許容耐力として計算されたものである。
【0027】
ここで、
図3〜
図5に示されるように、壁面材14における一の開口部28と他の開口部28の間34において変形される部分(変形が大きな部分)の仮想領域(以下この領域を「第1変形領域40」という)、壁面材14において最も上方側に配置された開口部28と第3接合部24との間36において変形される部分(変形が大きな部分)の仮想領域(以下この領域を「第2変形領域42」という)、壁面材14において最も下方側に配置された開口部28と第4接合部26との間38において変形される部分(変形が大きな部分)の仮想領域(以下この領域を「第3変形領域44」という)を抜き出して検討する。
【0028】
図3に示されるように、上下方向に隣り合う一の開口部28と他の開口部28との間を通りかつこの一の開口部28の内縁(縁部28B)と他の開口部28の内縁とを通る共通接線をLCとする。なお、この共通接線LCと上下方向とのなす角度をθとする。また、共通接線LCと一の開口部28の内縁との接点S1を通り水平方向に伸びる線及び共通接線LCと他の開口部28の内縁との接点S1を通り水平方向に伸びる線を第1仮想線L1とする。さらに、一の開口部28の右側の端部と他の開口部28の右側の端部とをつなぐ線及び一の開口部28の左側の端部と他の開口部28の左側の端部とをつなぐ線を第2仮想線L2とする。そして、第1仮想線L1及び第2仮想線L2で囲まれた領域が第1変形領域40である。なお、上記共通接線LCにおける一の開口部28の内縁との接点S1と他の開口部28の内縁との接点S1の間の長さをL
aとし、上下方向に隣り合う一の環状リブ32の内縁と他の環状リブ32の内縁との間の上下方向への間隔をw
aとする。また、第1変形領域40の上下方向への寸法をh
aとし、第1変形領域40の左右方向への寸法をa
aとする。さらに、第1変形領域40内におけるせん断座屈応力度をτ
aとする。また、第1変形領域40の上下方向への寸法h
a、左右方向への寸法a
a、上下方向に隣り合う一の環状リブ32の内縁と他の環状リブ32の内縁との間の上下方向への間隔をw
a、上記共通接線LCにおける接点S1と接点S1との間の長さL
a、環状リブ32の幅b
r及び開口部28の半径rは、以下の式(23)〜式(25)に示された関係を有している。
【数23】
【数24】
【数25】
【0029】
図4に示されるように、壁面材14において最も上方側に配置された開口部28の内縁における左上の部分と前述の共通接線LC(
図3参照)と対応する線(上下方向とのなす角度がθとされた線)との接点S2を通り水平方向に伸びる線を第3仮想線L3とする。また、壁面材14において最も上方側に配置された開口部28の左側の端部を通り上下方向に伸びる線を第4仮想線L4とする。そして、第3仮想線L3、第4仮想線L4、第2接合部22及び第3接合部24で囲まれた領域が第2変形領域42である。なお、第3接合部24と最も上方側の環状リブ32の内縁との間の上下方向への間隔をw
bとする。また、第2変形領域42の上下方向への寸法をh
bとし、第2変形領域42の左右方向への寸法をa
bとする。さらに、第2変形領域42内におけるせん断座屈応力度をτ
bとする。また、第2変形領域42の上下方向への寸法h
b、左右方向への寸法a
b、第2接合部22と開口部28との水平方向への間隔a
b1、第3接合部24と最も上方側の開口部28との上下方向への間隔h
b1及び開口部28の半径rは、以下の式(26)及び式(27)に示された関係を有している。
【数26】
【数27】
【0030】
図5に示されるように、壁面材14において最も下方側に配置された開口部28の内縁における右下の部分と前述の共通接線LC(
図3参照)と対応する線(上下方向とのなす角度がθとされた線)との接点S3を通り水平方向に伸びる線を第5仮想線L5とする。また、壁面材14において最も下方側に配置された開口部28の右側の端部を通り上下方向に伸びる線を第6仮想線L6とする。そして、第5仮想線L5、第6仮想線L6、第1接合部20及び第4接合部26で囲まれた領域が第3変形領域44である。なお、第4接合部26と最も下方側の環状リブ32の内縁との間の上下方向への間隔をw
cとする。また、第3変形領域44の上下方向への寸法をh
cとし、第3変形領域44の左右方向への寸法をa
cとする。さらに、第3変形領域44内におけるせん断座屈応力度をτ
cとする。また、第3変形領域44の上下方向への寸法h
c、左右方向への寸法a
c、第1接合部20と開口部28との水平方向への間隔a
c1、第4接合部26と最も下方側の開口部28との上下方向への間隔h
c1及び開口部28の半径rは、以下の式(28)及び式(29)に示された関係を有している。
【数28】
【数29】
【0031】
そして、許容耐力Q
crは、以下の式(30)〜式(33)に基づいて算出される。なお、以下の式(30)〜式(33)は、American Iron and Steel Instituteの設計基準式より引用している(AISI Standard North American Specification for the Design of Cold-formed Steel Structural Members,2007 Edition,ANSI S100-2007,October,2007参照)。
【数30】
【数31】
【数32】
【数33】
【0032】
なお、本実施形態では、右方向への荷重が耐力壁10に入力された場合を考慮して、
図4に示されるように、壁面材14において最も上方側に配置された開口部28の左側の端部を通り上下方向に伸びる線を第4仮想線L4として第2変形領域42の範囲を決定すると共に、
図5に示されるように、壁面材14において最も下方側に配置された開口部28の右側の端部を通り上下方向に伸びる線を第6仮想線L6として第3変形領域44の範囲を決定した。しかしながら、左方向への荷重が耐力壁10に入力された場合を考慮して、第2変形領域42及び第3変形領域44の範囲を決定してもよい。右方向への荷重が耐力壁10へ入力された場合を考慮して第2変形領域42及び第3変形領域44の範囲を設定するか左方向への荷重が耐力壁10へ入力された場合を考慮して第2変形領域42及び第3変形領域44の範囲を設定するかについては、上記式(30)〜式(33)によって算出される許容耐力Q
crが小さくなる側で(安全側で)設定すればよい。
【0033】
また、要求される終局耐力Q
uは、当該終局耐力Q
uで想定される建物への加速度と許容耐力Q
crで想定される建物への加速度との比を許容耐力Q
crに掛け合わせて以下の式(34)で表される。
【数34】
【0034】
ところで、耐力壁10の終局耐力Q
uは、一対の横材18の間に配置された開口部28の数nと相関がある。ここで、
図7に示された仮想応力帯部分46が引張降伏した時点を耐力壁10の終局耐力Q
uとする。なお、
図6及び
図7に示されるように、各々の環状リブ32の内周面(内径φとされた部分)の右側の端部どうしをつなぐ線及び左側の端部どうしをつなぐ線を第7仮想線L7とし、第7仮想線L7の上端どうし及び下端どうしをつなぐ線を第8仮想線L8とする。そして、第7仮想線L7及び第8仮想線L8で囲まれた領域が仮想応力帯部分46である。また、仮想応力帯部分46の左右方向への寸法は環状リブ32の内径φと対応する幅φとなっており、仮想応力帯部分46の上下方向への寸法は、上下方向に隣り合う環状リブ32間の距離βφに環状リブ32の数n(開口部の数n)を掛け合わせたnβφとなっている。
【0035】
上記終局耐力Q
uについて詳述すると、上下に隣り合う開口部28の間の全てがせん断変形した後、さらに大きな水平方向への荷重が耐力壁10に作用すると、仮想応力帯部分46には、当該仮想応力帯部分46の2つの頂点(第7仮想線L7と第8仮想線L8との交点)を通る対角線LTの方向への引張力が生じる。なお、対角線LTの上下方向に対する傾斜角度はφ/(nβφ)である(
図6も参照)。そして、仮想応力帯部分46が上記引張力によって引張降伏した時点を終局耐力Q
uとすると、当該終局耐力Q
uと開口部28の数nとの関係が以下の式(35)で表される。
【数35】
【0036】
上記式(35)を1/nについて2次方程式とすると、以下の式(36)で表される。
【数36】
【0037】
また、上記式(36)をnについて解くと以下の式(37)となる。
【数37】
【0038】
上記式(37)より、耐力壁10において上下方向に隣り合う一対の横材18の間の開口部28の数nを以下の式(38)を満たす範囲に設定することで、要求される終局耐力Q
uを満足する耐力壁10を得ることができる。
【数38】
【0039】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0040】
図1に示されるように、以上説明した本実施形態の耐力壁10によれば、地震や風等による荷重が建物に作用すると、壁面材14における各々の開口部28の間34、最も上方側に配置された開口部28と第3接合部24との間36及び最も下方側に配置された開口部28と第4接合部26との間38の応力が高まる。そして、建物に作用する荷重が所定の荷重を超えると、壁面材において上記の応力が高まった部位が塑性変形される。これにより、建物に入力された地震や風等によるエネルギーを吸収することができる。
【0041】
ここで、本実施形態の耐力壁10では、建物の上下方向に隣り合う一対の横材18の間に配置された開口部28の最大の数nを、上記式(38)を満たすように設定することにより、終局耐力Q
uを満足する耐力壁を得ることができる。
【0042】
また、本実施形態では、終局耐力Q
uが、前述の式(30)〜式(34)により計算される。これにより、要求される終局耐力Q
uを満足する耐力壁10の形状(耐力壁10を構成する部材の寸法)を得ることができる。
【0043】
(圧縮抵抗横材が設けられた構成)
次に、
図8及び
図9を用いて、耐力壁のフレーム12が、第1縦材16T1、第2縦材16T2、第1横材18Y1及び第2横材18Y2に加えて横材としての単一又は複数の圧縮抵抗横材48を含んで構成された例について説明する。
【0044】
図8に示された耐力壁50では、第1横材18Y1と第2横材18Y2との間において左右方向に延在すると共に第1縦材16T1の上下方向の中間部と第2縦材16T2の上下方向の中間部とをつなぐ単一の圧縮抵抗横材48が設けられている。この圧縮抵抗横材48は、左右方向へ力を伝達可能であり、第1縦材16T1と第2縦材16T2とが互いに引き寄せられる方向の力に対して抵抗可能に構成されている。また、圧縮抵抗横材48は、壁面材14に接合されておらず、本実施形態では、壁面材14と離間している。さらに、本実施形態では、壁面材14に形成された7つの開口部28のうち3つの開口部28が、第1横材18Y1と圧縮抵抗横材48との間に配置されており、残りの4つの開口部28が、圧縮抵抗横材48と第2横材18Y2との間に配置されている。
【0045】
図9に示された耐力壁52では、第1横材18Y1と第2横材18Y2との間において左右方向に延在する2つの圧縮抵抗横材48が設けられている。なお、2つの圧縮抵抗横材48において上方側に配置された圧縮抵抗横材を第1圧縮抵抗横材48Y1というものとし、第1圧縮抵抗横材48Y1に対して下方側に配置された圧縮抵抗横材48を第2圧縮抵抗横材48Y2というものとする。また、本実施形態では、壁面材14に形成された7つの開口部28のうち2つの開口部28が、第1横材18Y1と第1圧縮抵抗横材48Y1との間に配置されており、3つの開口部28が、第1圧縮抵抗横材48Y1と第2圧縮抵抗横材48Y2との間に配置されており、残りの2つの開口部28が、第2圧縮抵抗横材48Y2と第2横材18Y2との間に配置されている。
【0046】
ところで、前述した耐力壁10と同様に、上下に隣り合う開口部28の間の全てがせん断変形した後、さらに大きな水平方向への荷重が耐力壁50、52に作用すると、横材18と圧縮抵抗横材48との間、圧縮抵抗横材48相互の間の各区画の仮想応力帯部分46には、当該仮想応力帯部分46の2つの頂点(第7仮想線L7と第8仮想線L8との交点)を通る対角線LTの方向への引張力が生じる。そして、耐力壁50、52の終局耐力は、各仮想応力帯部分46において最も開口部28の数が多い仮想応力帯部分46(又は上記対角線LTの長さが最も長い仮想応力帯部分46)の上記対角線LTの方向への引張強度で決まる。
【0047】
従って、
図8に示された耐力壁50では、圧縮抵抗横材48と第2横材18Y2との間に配置された開口部28の数nが前述の式(38)を満たす範囲に設定されていることにより、要求される終局耐力Q
uを満足させることができる。また、
図9に示された耐力壁52では、第1圧縮抵抗横材48Y1と第2圧縮抵抗横材48Y2との間に配置された開口部28の数nが前述の式(38)を満たす範囲に設定されていることにより、要求される終局耐力Q
uを満足させることができる。
【0048】
(複数の壁面材が設けられた構成)
次に、
図10〜
図12を用いて、複数の壁面材14が設けられた構成について説明する。
【0049】
図10に示された耐力壁54は、2つの壁面材14がフレーム12に接合されることにより構成されている。この耐力壁54のフレーム12は、水平方向に間隔をあけて上下方向に延びる3つの縦材16と、上下方向に間隔をあけて水平方向に延びると共に縦材16の上端部どうし及び下端部どうしをそれぞれ連結する一対の横材18と、を備えている。ここで、3つの縦材16のうちの最も左側に配置された縦材を第1縦材16T1というものとし、最も右側に配置された縦材を第3縦材16T3というものとし、第1縦材16T1と第3縦材16T3との間に配置された縦材16を第2縦材16T2というものとする。また、第1縦材16T1、第2縦材16T2及び第3縦材16T3の上端部どうしをつなぐ横材18を第1横材18Y1というものとし、第1縦材16T1、第2縦材16T2及び第3縦材16T3の下端部どうしをつなぐ横材18を第2横材18Y2というものとする。
【0050】
また、フレーム12には、左右方向に隣り合って配置された2つの壁面材14が接合されている。なお、左側に配置された壁面材14を第1壁面材14H1というものとし、右側に配置された壁面材14を第2壁面材14H2というものとする。
【0051】
第1壁面材14H1は、第1縦材16T1、第2縦材16T2、第1横材18Y1及び第2横材18Y2の間に形成された矩形状の開口を閉止するように、当該第1縦材16T1、第2縦材16T2、第1横材18Y1及び第2横材18Y2に接合されている。なお、第1壁面材14H1の左側の端部においてドリルねじが螺入された部分を第1接合部20というものとし、第1壁面材14H1の右側の端部においてドリルねじが螺入された部分を第2接合部22というものとする。また、第1壁面材14H1の上方側の端部においてドリルねじが螺入された部分を第3接合部24というものとし、第1壁面材14H1の下方側の端部においてドリルねじが螺入された部分を第4接合部26というものとする。
【0052】
第2壁面材14H2は、第2縦材16T2、第3縦材16T3、第1横材18Y1及び第2横材18Y2の間に形成された矩形状の開口を閉止するように、当該第2縦材16T2、第3縦材16T3、第1横材18Y1及び第2横材18Y2に接合されている。なお、第1壁面材14H1と同様に、第2壁面材14H2の左側の端部においてドリルねじが螺入された部分を第1接合部20というものとし、第2壁面材14H2の右側の端部においてドリルねじが螺入された部分を第2接合部22というものとする。また、第2壁面材14H2の上方側の端部においてドリルねじが螺入された部分を第3接合部24というものとし、第2壁面材14H2の下方側の端部においてドリルねじが螺入された部分を第4接合部26というものとする。
【0053】
第1壁面材14H1及び第2壁面材14H2は、前述の壁面材14(
図1参照)と同様に構成されている。なお、本実施形態では、第1壁面材14H1と第2壁面材14H2とは、両者の境界部を挟んで左右対称に構成されている。また、以上説明した耐力壁54は、前述の耐力壁10(
図1参照)を左右方向に並べて接合したものとほぼ同様の構成である。なお、耐力壁54において
図1に示された耐力壁10と対応する部分には、当該耐力壁10と対応する部分と同一の符号を付している。そして、耐力壁54においては、第1横材18Y1と第2横材18Y2との間の開口部28の数nが、前述の式(38)において壁面材14の数(2つ)を考慮した以下の式(39)を満たす範囲に設定されていることにより、要求される終局耐力Q
uを満足させることができる。
【数39】
【0054】
また、
図11に示された耐力壁56は、
図8に示された耐力壁50を左右方向に並べて接合したものとほぼ同様の構成であり、
図12に示された耐力壁58は、
図9に示された耐力壁52を左右方向に並べて接合したものとほぼ同様の構成である。なお、耐力壁56及び耐力壁58において
図1に示された耐力壁10、
図8に示された耐力壁50及び
図9に示された耐力壁52と対応する部分には、当該耐力壁10、50、52と対応する部分と同一の符号を付している。そして、
図11に示された耐力壁56では、圧縮抵抗横材48と第2横材18Y2との間に配置された開口部28の数nが前述の式(39)を満たす範囲に設定されていることにより、要求される終局耐力Q
uを満足させることができる。また、
図12に示された耐力壁58では、第1圧縮抵抗横材48Y1と第2圧縮抵抗横材48Y2との間に配置された開口部28の数nが前述の式(39)を満たす範囲に設定されていることにより、要求される終局耐力Q
uを満足させることができる。
【0055】
なお、本実施形態では、単一の壁面材14又は2つの壁面材14が設けられた耐力壁10、50、52、54、56、58について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、3つ以上の壁面材14を用いて耐力壁を構成してもよい。ここで、壁面材14の数をkとすると、上下方向に対向する一対の横材18間の間、上下方向に対向する横材18と圧縮抵抗横材48との間、上下方向に対向する一対の圧縮抵抗横材48との間の開口部28の最大の数nが以下の式(40)を満たす範囲に設定すればよい。また、終局耐力Q
uは、以下の式(41)で計算すればよい。
【数40】
【数41】
【0056】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。