(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、実施形態としての電動車両について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
【0015】
[1.装置構成]
図1に示すように、本実施形態に係る電動車両10は、充放電可能なバッテリ1を搭載し、このバッテリ1に蓄えられた電力で図示しない走行用モータを駆動することにより走行する電気自動車又はプラグインハイブリッド車である。バッテリ1は、車両駆動用の蓄電装置であって、電動車両10の外部にある家庭用コンセントや充電ステーションといった外部電源20を用いて充電可能である。このバッテリ1に蓄えられた電力は、走行のためだけでなく、電動車両10とは別体の電気製品である外部機器30の作動にも使用可能である。
【0016】
電動車両10は、外部電源20からバッテリ1に送電する外部充電時に、外部電源20と繋がった充電ガン21が差し込まれる充電口2と、バッテリ1から外部機器30に送電する外部給電時に、外部機器30と繋がったプラグ31が差し込まれる給電口3とを備える。充電口2は、電動車両10における電力の入口(インレット)であり、車体外面11に設けられる。また、給電口3は、電動車両10における電力の出口(アウトレット)であり、車体外面11において充電口2に隣接した位置に設けられる。本実施形態では、三つの給電口3が並んで設けられている場合を例示する。ただし、給電口3の個数は、一つ以上であればよく、三つに限られない。
【0017】
充電口2とバッテリ1とを接続する電気回路上には、外部電源20から供給される交流電力を直流電力に変換する車載充電器(OBC〔On Board Charger〕)17が介装される。また、各給電口3とバッテリ1とを接続する電気回路上には、バッテリ1から供給される直流電力を交流電力に変換するインバータ18が介装される。なお、充電口2及び給電口3の種類は特に限定されない。充電口2は、普通充電用のものであってもよいし、急速充電用のものであってもよい。或いは、充電口2として、急速充電用のものと普通充電用のものとの二つを設けてもよい。また、給電口3としては、例えば、家庭用コンセントと同様に100Vの交流電源として機能するものが適用されうる。
【0018】
図2に示すように、本実施形態の充電口2及び給電口3は、車体外面11に取り付けられた筐体12に固定されている。筐体12は、一側面が開口した箱型形状をなし、車両外側に向かって開口する姿勢で取り付けられる。また、車体外面11には、筐体12の開口を閉鎖可能なリッド(蓋体)13が開閉自在に取り付けられる。リッド13は、電動車両10のユーザが充電口2又は給電口3にアクセスする場合(すなわち、外部充電時又は外部給電時)に開状態とされ、それ以外の場合に閉状態とされる。
【0019】
筐体12と閉状態のリッド13とで区画される空間(リッド13で閉鎖される空間)には、この空間を照らすための照明14と、外部充電又は外部給電に関する情報を表示するための表示装置4と、所定の状況下でユーザへの警告及び報知を行うための通知ライト(警告手段,報知手段)5とが設けられている。照明14は、リッド13が開状態になるのと同時に点灯し、リッド13が閉状態になるのと同時に消灯する。また、照明14は、リッド13の開状態が長時間続く場合には、リッド13が開状態になってから所定期間だけ点灯した後に消灯する。
【0020】
表示装置4は、現在のバッテリ1の充電状態や、現在の外部機器30への給電量P[W]を表示するものである。「バッテリ1の充電状態」としては、バッテリ1の残量(バッテリ残量)に相当するもの(例えば、バッテリ1の充電率SOC[%]や残容量[Ah]、バッテリ1に蓄電されている電力量[Wh]等)が挙げられる。本実施形態では、バッテリ1の充電状態として、バッテリ1の充電率SOCが表示される場合について説明する。また、「外部機器30への給電量P」とは、給電口3を通じて外部機器30に供給される電力値であって、外部機器30での電力使用量に相当する。以下、バッテリ1の充電率SOCを単に「充電率SOC」いい、外部機器30への給電量Pを単に「給電量P」という。これらの充電率SOC及び給電量Pは、後述するBMU6によって取得される。
【0021】
表示装置4は、充電口2及び給電口3の近傍に設けられる。すなわち、表示装置4は、ユーザが充電口2に充電ガン21を差し込むときや、給電口3にプラグ31を差し込むときに、その場を移動することなく表示内容を目視できる位置に設けられる。本実施形態の表示装置4は、給電口3の隣に設けられ、筐体12に固定されている。なお、表示装置4が設けられる位置はこれに限られない。表示装置4は、例えば、充電口2の隣に設けられてもよいし、リッド13の内面(閉状態のリッド13において筐体12に対向する面)上に設けられてもよい。
【0022】
本実施形態の表示装置4は、充電率SOCを表示するための第一指針4aと、給電量Pを表示するための第二指針4bと、各指針4a,4bを揺動可能に支持する盤面4cと、盤面4cに設けられた複数の目盛4dとを有する。表示装置4は、第一指針4aが揺動することにより充電率SOCを表示し、第二指針4bが揺動することにより給電量Pを表示する。
【0023】
目盛4dは、外部機器30へ供給可能な最大電力
値Pmax[W]
(以下、最大電力量Pmaxという)を表示するためのものである。本実施形態の各目盛4dは、光源(例えばLED〔Light Emitting Diode〕)で形成されている。表示装置4は、これらの目盛4dのうち、現在設定されている最大電力量Pmaxに対応する何れか一つが点灯することにより最大電力量Pmaxを表示する。本実施形態では、最大電力量Pmaxが1500[W],1200[W],900[W]の何れかに設定される。すなわち、本実施形態の目盛4dは、1500[W],1200[W],900[W]のそれぞれに対応する位置に配置されている。各指針4a,4bの位置と、各目盛4dの点灯状態とは、後述するECU7によって制御される。
【0024】
通知ライト5は、その点灯状態が変化することで、給電量Pが最大電力量Pmaxを超える可能性があることをユーザに警告するとともに、バッテリ1の温度Tb(以下、バッテリ温度Tbという)が高くなる可能性があることをユーザに報知するものである。本実施形態の通知ライト5は、表示装置4の盤面4cを囲む枠状に形成されている。通知ライト5の点灯状態は、ECU7によって制御される。
【0025】
図1及び
図3に示すように、電動車両10には、外部給電の許容と禁止とを切り替える給電スイッチ15と、リッド13の開閉状態を検出する開閉センサ16とが設けられる。給電スイッチ15は、例えば、オン状態とオフ状態とに切り替え操作可能なトグルスイッチであって、運転席付近に装備される。外部給電は、給電スイッチ15がオン状態に操作されると許容され、給電スイッチ15がオフ状態に操作されると禁止される。また、開閉センサ16は、リッド13の開閉状態を検出する検出手段であって、例えばリッド13の近傍に設けられる。
【0026】
BMU(Battery Management Unit)6及びECU(Electronic Control Unit)7は、電動車両10に搭載された電子制御装置であって、周知のマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込みデバイスとして構成される。これらのBMU6及びECU7は、車載ネットワークの通信ラインに接続され、相互に通信可能とされる。BMU6は、バッテリ1が過充電又は過放電とならないように、バッテリ1の充電状態や温度状態を監視する。また、ECU7は、BMU6よりも上位に位置し、BMU6や車載の他の電子制御装置を統括管理する。
【0027】
[2.制御構成]
[2−1.概要]
本実施形態では、表示装置4に対して実施される表示制御と、通知ライト5に対して実施される報知制御及び警告制御とについて詳述する。これらの制御は何れも、外部充電時及び外部給電時に実施される。表示制御とは、状況に応じた情報を表示装置4に表示させる制御である。また、報知制御及び警告制御は、必要に応じてユーザに注意を喚起するために、通知ライト5を点灯させる制御である。より具体的には、報知制御はバッテリ温度Tbが上昇して閾値を超えたことをユーザに報知するためのものであり、警告制御は給電量Pが大きいことをユーザに警告するためのものである。これらの制御は何れも、BMU6によって取得される各種情報に基づいて、ECU7により実施される。
【0028】
まず、外部充電及び外部給電について説明する。本実施形態の電動車両10は、少なくとも以下に示す条件A1,A2が共に成立した場合に、外部充電が実施可能となる。
条件A1: 電動車両10の電源がオフ状態である
条件A2: バッテリ温度Tbが上限温度Tmax未満である(Tb<Tmax)
上限温度Tmaxは、バッテリ1が安全に充放電できる場合のバッテリ温度Tbの最高値(又はそれよりも低い値)に予め設定されている。
【0029】
また、本実施形態の電動車両10は、少なくとも以下に示す条件B1〜B4が全て成立した場合に、外部給電が実施可能となる。
条件B1: 電動車両10の電源がオン(走行可能な〔READY〕)状態である
条件B2: バッテリ温度Tbが上限温度Tmax未満である(Tb<Tmax)
条件B3: 給電量Pが最大電力量Pmax以下である(P≦Pmax)
条件B4: 給電スイッチ15がオン状態である
【0030】
上記の条件B3で示されるように、外部給電は、給電量Pが最大電力量Pmaxを超えた場合には停止(又は制限)される。つまり、この場合はバッテリ1にかかる負荷が過大になる虞があるため、バッテリ1を保護するための保護回路が働いてバッテリ1の放電が自動的に停止(又は制限)される。したがって、外部給電時は、給電量Pが最大電力量Pmaxを超えないように注意することが求められる。
【0031】
そこで、本実施形態では、表示制御により外部給電時に給電量P及び最大電力量Pmaxを表示装置4に表示させることで、給電口3にプラグ31を差し込むユーザがその場で給電量P及び最大電力量Pmaxを確認できるようにする。これにより、ユーザは、外部給電時に給電量Pが最大電力量Pmaxを超えないように容易に注意することができ、安心して外部給電を実施しやすくなる。
【0032】
また、上記の条件A1,B1で示されるように、外部給電は外部充電と同時には実施されない。そこで、本実施形態では、表示制御により外部充電時に充電率SOCを表示装置4に表示させ、充電口2に充電ガン21を差し込むユーザがその場で充電率SOCを確認できるようにする。これにより、ユーザは、充電率SOCを容易に把握することができ、計画的に外部充電を実施しやすくなる。なお、本実施形態では、外部給電時にも表示装置4に充電率SOCを表示させる。これにより、ユーザは、あとどれくらいの時間、外部機器30を使用し続けることができるのかを予測することができる。
【0033】
また、上記の条件A2,B2で示されるように、外部充電及び外部給電は何れも、バッテリ温度Tbが上限温度Tmax以上となった場合に停止(又は制限)される。つまり、この場合はバッテリ1が安全に充放電できない虞があるため、バッテリ1を保護するための保護回路が働いて充放電が自動的に停止(又は制限)される。したがって、外部充電時及び外部給電時は、バッテリ温度Tbが高くなり過ぎないように注意することが求められる。
【0034】
そこで本実施形態では、報知制御により、外部充電時及び外部給電時にバッテリ温度Tbが閾値を超えたことをユーザに報知する。これによって、ユーザは、バッテリ温度Tbが高くなり過ぎないように注意しながら、外部充電及び外部給電を計画的に実施しやすくなる。このため、外部充電及び外部給電が自動的に停止(又は制限)される事態を回避しやすくなる。
【0035】
また、本実施形態では、警告制御により、外部給電時に給電量Pが最大電力量Pmaxを超える可能性がある場合にユーザに警告する。これによって、ユーザは、適切なタイミングで外部機器30の使用を控えるといった処置をとりやすくなる。このため、外部給電が自動的に停止(又は制限)される事態を回避しやすくなる。
【0036】
[2−2.BMU]
まず、BMU6で実施される各種情報の取得について説明する。BMU6は、公知の手法により、バッテリ温度Tbを測定するとともに充電率SOCを検出又は演算する。また、BMU6は、車載充電器17の動作に基づいて外部充電時であるか(外部充電が実施されているか)否かを検出し、インバータ18の動作に基づいて外部給電時であるか(外部給電が実施されているか)否かを検出する。さらに、BMU6は、外部給電時にはインバータ18の動作に基づいて給電量Pを演算又は検出する。
【0037】
なお、ここでいう「外部充電時」には、実際に外部電源20からバッテリ1の充電が実施されているときだけでなく、この充電を即座に実施可能なときが含まれてもよい。例えば、BMU6は、実際にはバッテリ1の充電が実施されていなくても、充電口2に充電ガン21が差し込まれていれば外部充電時であると判断してもよい。つまり、BMU6は、上述した車載充電器17の動作に代えて、例えば、充電口2への充電ガン21の差込の有無に基づいて、外部充電時であるか否かを判断してもよい。
【0038】
同様に、ここでいう「外部給電時」には、実際にバッテリ1から外部機器30への送電が実施されているときだけでなく、この送電を即座に実施可能なときが含まれてもよい。例えば、BMU6は、実際には外部機器30への送電が実施されていなくても、給電口3にプラグ31が差し込まれている、或いは給電スイッチ15がオン状態に操作されていれば、外部給電時であると判断してもよい。つまり、BMU6は、上述したインバータ18の動作に代えて、例えば、給電口3へのプラグ31の差込の有無や、給電スイッチ15のオン,オフ状態に基づいて、外部給電時であるか否かを判断してもよい。
【0039】
本実施形態のBMU6は、測定したバッテリ温度Tbに基づいて、外部機器30に供給可能な最大電力量Pmaxを設定する。最大電力量Pmaxは、バッテリ温度Tbが高いほど少なくなるように設定される。すなわち、最大電力量Pmaxは、バッテリ温度Tbの変化に応じて変わる可変値である。これは、給電量Pが増えるほどバッテリ温度Tbが上昇するためである。つまり、本実施形態のBMU6は、バッテリ温度Tbが高いほど最大電力量Pmaxを少なくすることで、給電量Pの増大を防ぎ、これによりバッテリ温度Tbの上昇を抑制する。
【0040】
BMU6は、例えば
図4に示すマップ8を参照し、測定したバッテリ温度Tbに対応する最大電力量Pmaxを随時設定する。このマップ8には、最大電力量Pmaxがバッテリ温度Tbの上昇に伴ってステップ状に減少するように設定されている。なお、バッテリ温度Tbと最大電力量Pmaxとの関係はマップ8に規定されるものに限られない。最大電力量Pmaxは、例えば、バッテリ温度Tbの上昇に伴って次第に(リニアに)減少するものであってもよい。
【0041】
[2−3.ECU]
次に、ECU7で実施される各制御について説明する。上述のように、本実施形態のECU7は、リッド13が開状態である場合に表示制御,報知制御及び警告制御を実施する。リッド13が開状態であるか否かは、例えば開閉センサ16から伝達される情報に基づいて判断可能である。
【0042】
まず、表示制御について説明する。ECU7は、BMU6において外部充電時であることが検出された場合、表示装置4に充電率SOCを表示させる。具体的には、ECU7は、第一指針4aの位置をBMU6で取得された現在の充電率SOCに応じた位置に制御する。したがって、
図5(a)に例示するように、外部充電時には、表示装置4は充電率SOCを表示する。なお、この場合、ECU7は第二指針4bの位置と目盛4dの点灯状態とについては制御しない。すなわち、外部充電時には、表示装置4における第二指針4bの位置は初期位置(例えば0)となり、目盛4dは何れも消灯した状態となる。
【0043】
一方、ECU7は、BMU6において外部給電時であることが検出された場合、表示装置4に給電量P,最大電力量Pmax及び充電率SOCを表示させる。具体的には、ECU7は、第一指針4a及び第二指針4bの位置を、BMU6で取得された現在の充電率SOC及び給電量Pに応じた位置にそれぞれ制御し、複数の目盛4dのうち、BMU6で取得された現在の最大電力量Pmaxに対応する一つを点灯させる。したがって、
図5(b)に例示するように、外部給電時には、表示装置4は給電量P,最大電力量Pmax及び充電率SOCを表示する。
【0044】
なお、ECU7は、BMU6において外部充電時及び外部給電時の何れでもないことが検出された場合は、各指針4a,4bの位置と目盛4dの点灯状態とを何れも制御しない。すなわちこの場合、各指針4a,4bの位置は何れも初期位置(例えば0)となり、目盛4dは何れも消灯した状態となる。
【0045】
次に、報知制御について説明する。ECU7は、以下に示す条件C1が成立した場合に報知制御を実施する。また、ECU7は、以下に示す条件C2の成否に応じて報知制御の実施内容(報知方法)を決定する。
条件C1: バッテリ温度Tbが第一温度T1よりも高い(T1<Tb)
条件C2: バッテリ温度Tbが第二温度T2よりも高い(T2<Tb)
【0046】
第一温度T1は、バッテリ1の通常の使用状態でのバッテリ温度Tbよりもやや高い温度(例えば40[℃])に予め設定される。第二温度T2は、第一温度T1よりも高く、かつ上限温度Tmaxよりもやや低い温度(例えば50[℃])に予め設定される。このように本実施形態では、報知制御で用いられるバッテリ温度Tbの閾値として、第一温度T1と第二温度T2との二つが段階的に設定されている。
【0047】
条件C1が成立して条件C2が成立しないことは、現時点ではバッテリ温度Tbがバッテリ1の充放電を控えるほど高くはないものの、これから上昇する可能性が高いため、多少の注意が必要な状況であることを意味する。一方、条件C1,C2が共に成立することは、現在のバッテリ温度Tbがバッテリ1の充放電を控える必要があるほど高いため、特に注意が必要な状況であることを意味する。
【0048】
ECU7は、BMU6で測定されたバッテリ温度Tbに基づいて、条件C1,C2の各成否を判断する。そして、本実施形態のECU7は、条件C1が成立して条件C2が成立しない場合に、通知ライト5の点灯状態を以下に示すパターンAとなるように制御し、条件C1,C2が共に成立する場合に、通知ライト5の点灯状態を以下に示すパターンBとなるように制御する。すなわち、
図5(c),(d)に例示するように、本実施形態の通知ライト5は、その点灯状態がパターンAに制御されることで、バッテリ温度Tbが第一温度T1を超えたことをユーザに報知し、その点灯状態がパターンBに制御されることで、バッテリ温度Tbが第二温度T2を超えたことをユーザに報知する。このように、本実施形態の通知ライト5は、その点灯状態がパターンA,Bの二種類の何れか一方に制御されることにより、バッテリ温度Tbの上昇をユーザに二段階で報知する。つまり、通知ライト5は、バッテリ温度Tbが第一温度T1と第二温度T2とのそれぞれを超えるごとに異なる方法で報知する。
【0049】
パターンA: 長い(例えば1秒)周期での点滅
パターンB: 短い(例えば0.5秒)周期での点滅
パターンBは、パターンAよりも点滅の周期が短く(速い点滅であり)、より切迫した状況であることをユーザに伝えるためのものである。つまり、パターンAはユーザに弱い注意喚起をするためのものであり、パターンBはユーザに強い注意喚起をするためのものであるといえる。
【0050】
次に、警告制御について説明する。ECU7は、以下に示す条件D1が成立した場合に警告制御を実施する。
条件D1: 給電量Pと最大電力量Pmaxとの差が所定量
(所定値)X未満である
(Pmax−P<X)
所定量Xは、現在設定されている最大電力量Pmaxよりも少ない量(例えば、最大電力量Pmaxの10[%]程度の量)に設定される。条件D1が成立することは、現在の給電量Pがバッテリ1の放電を控える必要があるほど多いため、特に注意が必要な状況であることを意味する。
【0051】
ECU7は、BMU6から伝達された給電量Pに基づいて、条件D1の成否を判断する。そして、本実施形態のECU7は、条件D1が成立した場合に通知ライト5の点灯状態をパターンBとなるように制御する。すなわち、この場合、
図5(d)に例示するように、通知ライト5はユーザに強い注意喚起(警告)をする。
【0052】
なお、ECU7は、報知制御よりも警告制御を優先させる。具体的には、ECU7は、条件C1が成立し、かつ、条件C2が成立しない状況で条件D1が成立した場合には、警告制御を優先させて通知ライト5の点灯状態をパターンBとなるように制御する。これは、上述したように、条件D1が成立した場合は特に注意が必要なためである。
【0053】
また、ECU7は、条件C1,D1が何れも成立しない〔バッテリ温度Tbが第一温度T1以下(Tb≦T1)であって、かつ、給電量Pと最大電力量Pmaxとの差が所定量X以上(X≦Pmax−P)である〕場合には、通知ライト5の点灯状態を制御しない。すなわち、この場合、通知ライト5は消灯した状態となる。
以上に説明した、表示制御,報知制御及び警告制御の各実施条件と各実施内容とを以下の表1に示す。
【0055】
[3.フローチャート]
図6は、電動車両10で実施される制御内容を例示したフローチャートである。このフローチャートは、リッド13が開状態である場合に、ECU7において所定の演算周期で繰り返し実施される。
【0056】
ステップS1では、BMU6から各種情報が入力される。ここで入力された各種情報は、以下の処理で用いられる。ステップS2では、外部充電時であるか否かが判定され、外部充電時であれば、ステップS3において表示装置4が充電率SOCを表示するように制御され、ステップS8に進む。
【0057】
一方、ステップS2において外部充電時ではないと判定されれば、ステップS4において外部給電時であるか否かが判定される。外部給電時であれば、ステップS5において表示装置4が充電率SOC,給電量P,最大電力量Pmaxを表示するように制御され、続くステップS6において給電量Pと最大電力量Pmaxとの差が所定量X未満であるか否かが判定される。
【0058】
給電量Pと最大電力量Pmaxとの差が所定量X未満であれば(ステップS6のYESルート)、警告制御が実施される。すなわち、ステップS10に進んで通知ライト5が強い注意喚起をする(通知ライト5の点灯状態がパターンBとなる)ように制御される。そして、このフローをリターンする。一方、給電量Pと最大電力量Pmaxとの差が所定量X以上であれば(ステップS6のNOルート)、後述するステップS8以降の処理(報知制御に係る処理)が実施される。また、ステップS4において外部給電時ではないと判定された場合は、ステップS7において表示装置4が充電率SOC,給電量P,最大電力量Pmaxを何れも表示しない状態とされ、このフローをリターンする。なお、ステップS7に進んだときに通知ライト5が点灯している状態である場合には、通知ライト5が消灯した状態とされる。
【0059】
ステップS8では、バッテリ温度Tbが第一温度T1よりも高いか否かが判定され、バッテリ温度Tbが第一温度T1よりも高い場合には報知制御が実施される。この場合、続くステップS9においてバッテリ温度Tbが第二温度T2よりも高いか否かが判定される。バッテリ温度Tbが第二温度T2よりも高ければ、ステップS10において通知ライト5が強い注意喚起をする(通知ライト5の点灯状態がパターンBとなる)ように制御され、このフローをリターンする。
【0060】
一方、ステップS9においてバッテリ温度Tbが第二温度T2以下であると判定されれば、ステップS11において通知ライト5が弱い注意喚起をする(通知ライト5の点灯状態がパターンAとなる)ように制御され、このフローをリターンする。また、ステップS8においてバッテリ温度Tbが第一温度T1以下であると判定された場合には、ステップS12において通知ライト5が消灯した状態とされ、このフローをリターンする。
【0061】
[4.効果]
(1)上述の電動車両10では、充電口2と給電口3とが隣接して設けられるとともに、これらの近傍に表示装置4が設けられる。また、表示装置4には、外部充電時に充電率SOCが表示されるとともに、外部給電時には給電量Pが表示される。このため、電動車両10のユーザは、外部充電時及び外部給電時にその場(充電口2及び給電口3を目視できる位置)にいながら状況に応じた情報(充電率SOC及び給電量P)を把握することができる。したがって、外部充電時及び外部給電時の利便性を向上させることができる。
【0062】
(2)表示装置4が、外部給電時に、外部機器30へ供給可能な最大電力量Pmaxを表示するため、ユーザはあとどれくらいの電力量を外部機器30に追加で供給できるのかを把握することができる。このため、外部給電時にバッテリ1の電力を最大限に利用しやすくすることができる。また、ユーザは、給電量Pが最大電力量Pmaxを超えていないことを確認することができ、安心感を得ることができる。
【0063】
(3)電動車両10には、給電量Pと最大電力量Pmaxとの差が所定量X未満である場合にユーザに警告する通知ライト5が設けられるため、給電量Pが最大電力量Pmaxを超える可能性がある場合に、外部機器30の使用を控えるようにユーザに促すことができる。これにより、ユーザは、給電量Pが最大電力量Pmaxを超えるよりも前に、外部機器30の使用を控えて給電量Pの増加を防ぐといった処置をとることができる。このため、外部給電が自動的に停止又は制限される事態を回避することができる。また、バッテリ1に過大な負荷がかかることを回避できるため、バッテリ1の保護に寄与することができる。
【0064】
(4)最大電力量Pmaxが、バッテリ温度Tbが高いほど少なくなるように設定されるため、給電量Pが同じでも、バッテリ1が高温であるほど給電量Pと最大電力量Pmaxとの差が所定量X未満になりやすくなり、警告されやすくなる。すなわち、バッテリ1が高温であるほどユーザに対する警告タイミングが早くなる。このため、バッテリ1にかかる負荷を抑制でき、バッテリ1の高温化をより適切に抑制することができる。したがって、バッテリ1の保護に寄与することができる。
【0065】
(5)電動車両10には、バッテリ温度Tbが第一温度T1又は第二温度T2を超えたことをユーザに報知する通知ライト5が設けられるため、外部充電時又は外部給電時にバッテリ1が高温になりそうな場合に、前もってユーザに知らせることができる。これにより、ユーザは、バッテリ温度Tbが高くなる可能性があることを通知ライト5の点灯状態から把握することができ、バッテリ温度Tbが高くなり過ぎないように注意することができる。また、ユーザがバッテリ温度Tbの状態を考慮しながら外部充電又は外部給電をすることで、バッテリ1の高温化が抑制されやすくなり、バッテリ1の保護に寄与することができる。
【0066】
(6)バッテリ温度Tbが段階的に設定された第一温度T1と第二温度T2とのそれぞれを超えるごとに、通知ライト5が異なる方法でユーザに報知するため、バッテリ温度Tbの状態をより詳細にユーザに知らせることができる。これによって、ユーザは、バッテリ温度Tbが高くなり過ぎないように更に適切に注意することができ、外部充電又は外部給電をより計画的に実施しやすくなる。また、ユーザがバッテリ温度Tbの上昇状態を考慮しながら外部充電又は外部給電をすることで、バッテリ1の高温化が更に抑制されやすくなり、バッテリ1の保護により寄与することができる。
【0067】
(7)表示装置4が、外部給電時に給電量Pだけでなく充電率SOCも表示するため、ユーザはあとどれくらいの時間、外部機器30を使い続けられるのかを予測することができ、外部給電を計画的に実施することができる。このため、外部給電時の利便性をより向上させることができる。
【0068】
(8)通知ライト5が、給電量Pに関する警告とバッテリ温度Tbに関する報知との両方を行うため、これらの警告と報知とを別々の装置で行う場合と比べて、装置コストを削減することができるとともに、制御構成を簡素化することができる。また、この通知ライト5では報知制御よりも警告制御が優先されるため、給電量Pが最大電力量Pmaxを超えるよりも前に、ユーザに確実に警告することができ、給電量Pが最大電力量Pmaxを超える事態をより回避しやすくすることができる。
【0069】
[5.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、或いは適宜組み合わせてもよい。
【0070】
表示装置4の構成は上記の実施形態で示したものに限られない。例えば、
図7(a)〜(d)に示すように、表示装置4は液晶パネル4eで構成されてもよい。この場合、表示装置4は、液晶パネル4eに表示する内容を外部充電時と外部給電時とで切り替えてもよい。すなわち、液晶パネル4eは、外部充電時には、バッテリ残量として充電率SOCを表示する画面〔
図7(a)参照〕とされ、外部給電時には、電力使用量として最大電力量Pmax(例えば1500[W])に対する給電量Pを表示する画面〔
図7(b)参照〕とされてもよい。また、外部給電時に充電率SOCも併せて表示する場合は、例えば、充電率SOCを表示する画面と、最大電力量Pmaxに対する給電量Pを表示する画面とを交互に表示してもよい。このように表示装置4の表示内容を切り替える場合、情報を表示するための表示スペースを節約することができる。
【0071】
また、表示装置4に表示される内容は上記の実施形態で示したものに限られない。電動車両10は、表示装置4が少なくとも外部充電時に充電率SOCを表示するとともに外部給電時に給電量Pを表示するものであれば、上述のように外部充電時及び外部給電時の利便性を向上させることができる。
【0072】
また、上述の実施形態では、車体外面11に設けられた給電口3のみを示したが、電動車両10は、車体外面11以外(例えば車室内)にも給電口3と同様の給電口を備えていてもよい。この場合、車体外面11に設けられた給電口3から外部機器30へ供給可能な最大電力量Pmaxは、他の給電口の使用状態に応じて変化するため、表示装置4は他の給電口の使用状態を考慮して最大電力量Pmaxを表示することが好ましい。
【0073】
また、上述のように通知ライト5の点灯状態をパターンA,Bの何れか一方に制御することに代えて、通知ライト5の点灯色を変更してもよい。例えば、上記のパターンAに代えて(弱い注意喚起として)通知ライト5を黄色に点灯させ、上記のパターンBに代えて(強い注意喚起として)通知ライト5を赤色に点灯させてもよい。また、この場合、通知ライト5の点灯状態を制御しない(通知ライト5が消灯した状態となる)ことに代えて通知ライト5を青色に点灯させ、報知制御及び警告制御が何れも実施されていないことをユーザに示してもよい。
【0074】
上述の実施形態では、バッテリ温度Tbの閾値として第一温度T1と第二温度T2との二つが設定される場合を例示したが、報知制御で用いられる閾値の個数は二つに限定されない。少なくとも一つの閾値が設けられていれば、バッテリ温度Tbがこの閾値を超えたことを通知ライト5がユーザに報知することで、上述のようにバッテリ1が高温になりそうな場合に前もってユーザに知らせることができる。また、三つ以上の閾値を段階的に設定し、バッテリ温度Tbが各閾値を超えるごとに通知ライト5が異なる方法で報知すれば、バッテリ温度Tbの状態を上述の実施形態の場合よりも詳細にユーザに知らせることができる。
【0075】
上述の実施形態では、給電量Pに関する警告とバッテリ温度Tbに関する報知との双方を通知ライト5で行う場合について説明したが、例えば
図7(c),(d)に示すように、これらの警告及び報知を液晶パネル4eで行うようにしてもよい。つまり、弱い注意喚起として「バッテリ温度が上がる可能性があります」といった文を液晶パネル4eに表示させ、強い注意喚起として「バッテリ高温」といった文を液晶パネル4eに表示させてもよい。
【0076】
或いは、通知ライト5に代えて、照明14やハザードランプやインジケータといった他の光源の点灯状態を制御してもよいし、電動車両10に装備されたスピーカから所定の音を発するようにしてもよい。また、ユーザが携帯する端末に所定の信号を送信することで、上記の警告及び報知を行うようにしてもよい。さらに、上述した警告及び報知の各具体例を適宜組み合わせて実施してもよい。つまり、報知手段及び警告手段としては、上記の実施形態で示した通知ライト5に限らず、様々なものを適用することができる。