特許第6790618号(P6790618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790618
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】免震装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20201116BHJP
   B65G 57/00 20060101ALI20201116BHJP
   A47B 97/00 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   F16F15/04 E
   B65G57/00 A
   A47B97/00 Z
   A47B97/00 A
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-174477(P2016-174477)
(22)【出願日】2016年9月7日
(65)【公開番号】特開2018-40411(P2018-40411A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】福田 修
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−073522(JP,U)
【文献】 特開2015−078745(JP,A)
【文献】 特開2009−073597(JP,A)
【文献】 特開2015−098334(JP,A)
【文献】 実開平02−074640(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00−15/36
A47B 97/00
B65G 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷が載置された積層可能な保管容器とともに積み重ね可能な免震装置であって、
第1の保管容器を載置する上側部材と、
床面又は第2の保管容器の上側に載置される下側部材と、
前記上側部材を前記下側部材に対して、原点位置から、前記上側部材及び前記下側部材の面に平行な水平方向に相対移動可能とする移動機構と、
前記上側部材が前記下側部材に対して相対移動したときの前記原点位置からの移動量に応じた弾性力により、前記上側部材を前記原点位置へと復帰させる弾性部材と、
を備え
前記移動機構は、
前記上側部材又は下側部材の一方に固定され、長手方向に延びる第1レール部材と、
前記上側部材又は下側部材の他方に固定され、前記長手方向と直交する短手方向に延びる第2レール部材と、
前記第1レール部材と前記第2レール部材とをスライド可能に支持することで、前記上側部材と前記下側部材とを連結しつつ、前記上側部材を前記下側部材に対して前記長手方向及び前記短手方向に相対移動可能とするスライド部材と、を有し、
前記弾性部材の一端は、前記第1レール部材が固定された前記上側部材又は前記下側部材の一方の中心位置に固定され、
前記弾性部材の他端は、前記第2レール部材が固定された前記上側部材又は前記下側部材の他方において、前記第1レール部材とは高さ方向で異なる位置に配置されるよう固定される、
免震装置。
【請求項2】
前記下側部材と前記上側部材との高さの合計は前記保管容器の高さよりも低い、請求項1に記載の免震装置。
【請求項3】
前記上側部材と前記下側部材は、前記移動機構及び前記弾性部材を取り付けるための板部材を有する、請求項1又は2に記載の免震装置。
【請求項4】
前記弾性部材の他端は、前記第2レール部材が固定された前記上側部材又は前記下側部材の他方において、前記第1レール部材の配置位置に対応する位置よりも中心位置から遠い位置に固定される、請求項1〜3のいずれかに記載の免震装置。
【請求項5】
前記移動機構は、
前記上側部材又は前記下側部材の一方の四隅に固定された4個の前記第1レール部材と、
前記上側部材又は前記下側部材の他方の四隅に固定された4個の前記第2レール部材と、
対応する1つの前記第1レール部材と当該対応する1つの第1レール部材と交差する1つの前記第2レール部材とをスライド可能に支持することで、前記上側部材と前記下側部材とを連結しつつ、前記上側部材を前記下側部材に対して前記長手方向及び前記短手方向に相対移動可能とする4個の前記スライド部材と、
を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の免震装置。
【請求項6】
前記弾性部材は、当該弾性部材の一端となる中心から、当該弾性部材の他端となる外周に向け半径が大きくなる渦巻き形状を有する渦巻バネである、請求項1〜5のいずれかに記載の免震装置。
【請求項7】
前記上側部材及び前記下側部材への取り付け前の前記渦巻バネは、所定の厚みを有し前記渦巻き形状の径方向と平行な平面形状を有する、請求項に記載の免震装置。
【請求項8】
前記渦巻バネの外周側にある前記他端は円形の部材を有する、請求項6又は7に記載の免震装置。
【請求項9】
前記弾性部材は、長さ方向に弾性力を発生する部材である、請求項1〜5のいずれかに記載の免震装置。
【請求項10】
前記弾性部材は4個存在し、
前記4個の弾性部材のそれぞれは、前記長さ方向の一端が前記上側部材又は前記下側部材の中心位置にて1点で固定される、請求項に記載の免震装置。
【請求項11】
前記弾性部材は、前記長さ方向が前記上側部材又は前記下側部材の面方向において放射状に配置される、請求項10に記載の免震装置。
【請求項12】
前記弾性部材の長さ方向が前記上側部材又は前記下側部材に対して平行となるよう、前記弾性部材を取り付ける取付部材をさらに備える、請求項9〜11のいずれかに記載の免震装置。
【請求項13】
前記弾性部材は、前記上側部材及び前記下側部材の中心位置に対して点対称となるよう配置される、請求項1〜12のいずれかに記載の免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷を内部に収容して保管し積層可能な保管容器のための免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷物、又は、内部に複数の荷物を収容して保管する複数の保管容器(例えば、オリコン、バケット)を積層して倉庫に保管することが知られている。例えば、特許文献1においては、ピッキングシステムを用いて荷物を積層して保管する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第0767113号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば地震の発生などにより床面が揺れたときに、積層された荷物又は保管容器が当該床面の揺れに従って移動することにより、積層された荷物又は保管容器が落下して荷崩れが発生することがある。保管容器が落下して荷崩れが発生すると、当該荷物又は保管容器中に収容された荷物が損傷することもある。
また、積層された荷物又は保管容器が以前に配置された位置から移動してしまうことがある。積層された荷物又は保管容器の配置位置にずれが生じると、ピッキングシステムは、自身が保有した荷物又は保管容器を、積層された荷物又は保管容器の上に正しく積層することができなくなる。
【0005】
従って、積層された荷物又は保管容器を床面に載置して保管する場合には、荷物又は保管容器の荷崩れが発生することを回避するとともに、積層された荷物又は保管容器が床面の揺れに従って過度に移動してしまうことを回避する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、荷物を収容して保管する保管容器を積層したときに、保管容器が荷崩れを起こしたりその配置位置から移動したりすることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る免震装置は、荷が載置された積層可能な保管容器とともに積み重ね可能な免震装置である。免震装置は、上側部材と、下側部材と、移動機構と、弾性部材と、を備える。上側部材は、第1の保管容器を載置する。下側部材は、床面又は第2の保管容器の上側に載置される。移動機構は、上側部材を、下側部材に対して、原点位置から、上側部材及び下側部材の面に平行な水平方向に相対移動可能とする。弾性部材は、上側部材が下側部材に対して相対移動したときの原点位置からの移動量に応じた弾性力により、上側部材を原点位置へと復帰させる。
【0008】
移動機構が備わることにより、上記の免震装置では、地震の発生などにより保管容器を積層した床面が揺れた場合に、当該床面の揺れに応じて上側部材が下側部材に対して相対移動できる。
また、弾性部材が、上側部材の下側部材に対する相対移動の移動量に応じた弾性力により、上側部材を原点位置(上側部材が下側部材に対して相対移動していないときの上側部材の位置)へと復帰させている。これにより、上側部材を原点位置の近傍に保持して、上側部材に載置された保管容器の移動を抑制できる。その結果、保管容器が荷崩れしたり、保管容器の配置位置が変化したりすることを抑制できる。
【0009】
下側部材と上側部材との高さの合計は保管容器の高さよりも低くてもよい。これにより、保管容器を免震装置に載置して積層した場合に、積層された保管容器の高さが過剰に大きくなることを防止できる。
【0010】
上側部材と下側部材は、移動機構及び弾性部材を取り付けるための板部材を有していてもよい。これにより、移動機構及び弾性部材を上側部材及び下側部材に容易に取り付けることができる。
【0011】
移動機構は、第1レール部材と、第2レール部材と、スライド部材と、を有していてもよい。第1レール部材は、上側部材又は下側部材の一方に固定され、長手方向に延びるレール部材である。第2レール部材は、上側部材又は下側部材の他方に固定され、長手方向と直交する短手方向に延びるレール部材である。スライド部材は、第1レール部材と第2レール部材とをスライド可能に支持する。これにより、スライド部材は、上側部材と下側部材とを連結しつつ、上側部材を下側部材に対して長手方向及び短手方向に相対移動可能とする。
このとき、弾性部材の一端は、第1レール部材が固定された上側部材又は下側部材の一方の中心位置に固定され、弾性部材の他端は、第2レール部材が固定された上側部材又は下側部材の他方において、第1レール部材とは高さ方向で異なる位置に配置されるよう固定される。
【0012】
これにより、上側部材が下側部材から外れてしまうことを防止するとともに、上側部材を下側部材に対して2自由度にて相対移動できる。
また、弾性部材の一端と他端を上記のように固定することにより、弾性部材を、レール部材と干渉させることなく、そのストロークを確保しつつ、限られたスペースを有効に活用して配置できる。その結果、免震装置をコンパクトにできる。
【0013】
弾性部材の他端は、第2レール部材が固定された上側部材又は下側部材の他方において、第1レール部材の配置位置に対応する位置よりも中心位置から遠い位置に固定されてもよい。これにより、弾性部材は、より大きなストロークを確保できる。
【0014】
移動機構は、上側部材又は下側部材の一方の四隅に固定された4個の第1レール部材と、上側部材又は下側部材の他方の四隅に固定された4個の第2レール部材と、対応する1つの第1レール部材と当該対応する1つの第1レール部材と交差する1つの第2レール部材とをスライド可能に支持することで、上側部材と下側部材とを連結しつつ、上側部材を下側部材に対して長手方向及び短手方向に相対移動可能とする4個の前記スライド部材と、を有していてもよい。
4個の第1レール部材と、4個の第2レール部材と、4個のスライド部材をそれぞれ四隅に設けることにより、上側部材の下側部材に対する相対移動のバランスを確保できる。
【0015】
弾性部材は、当該弾性部材の一端となる中心から、当該弾性部材の他端となる外周に向け半径が大きくなる渦巻き形状を有する渦巻バネであってもよい。これにより、1つの弾性部材により、上側部材の下側部材に対する任意の方向の相対移動に対して、上側部材を原点位置に復帰させる弾性力を生じさせることができる。
【0016】
上側部材及び下側部材への取り付け前の渦巻バネは、所定の厚みを有し、渦巻き形状の径方向と平行な平面形状を有していてもよい。これにより、渦巻バネの上側部材及び下側部材への固定を容易にできる。
【0017】
渦巻バネの外周側の他端は円形の部材を有していてもよい。これにより、渦巻バネを上側部材及び下側部材に安定して固定できる。
【0018】
弾性部材は、長さ方向に弾性力を発生する部材であってもよい。これにより、より一般的な弾性部材にて上側部材の相対移動に対して弾性力を発生できる。
【0019】
弾性部材は4個存在してもよい。このとき、4個の弾性部材のそれぞれは、長さ方向の一端が上側部材又は下側部材の中心位置にて1点で固定されてもよい。これにより、上側部材の任意の方向への相対移動に対してバランスよく弾性力を発生できる。また、各弾性部材のストローク長を確保できる。
【0020】
弾性部材は、長さ方向が上側部材又は下側部材の面方向において放射状に配置されてもよい。これにより、弾性部材のストローク長を確保できる。
【0021】
弾性部材の長さ方向が上側部材又は下側部材に対して平行となるよう、弾性部材を取り付ける取付部材をさらに備えていてもよい。これにより、上側部材が相対移動した際の移動機構と弾性部材との干渉を回避しつつ、免震装置をコンパクトにできる。
【0022】
弾性部材は、上側部材及び下側部材の中心位置に対して点対称となるよう配置されてもよい。これにより、弾性部材の釣り合い回転により、上側部材が下側部材に対して相対的に回転することを回避できる。
【発明の効果】
【0023】
積層した保管容器が荷崩れを起こしたりその配置位置から移動したりすることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】複数の保管容器が積層された状態の一例を示す図。
図2】第1実施形態に係る免震装置の詳細構成を示す図。
図3】第1実施形態に係る移動機構の詳細構成を示す図。
図4】第1実施形態に係る免震装置の免震動作を模式的に示す図。
図5】第2実施形態に係る免震装置の構成を示す図。
図6】第3実施形態に係る免震装置の構成の一例を示す図。
図7】第3実施形態の変形例1に係る免震装置の構成を示す図。
図8】第3実施形態の変形例1に係るスライド機構の構成を示す図。
図9】第3実施形態の変形例2に係る免震装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.第1実施形態
(1)免震装置の概略
以下、第1実施形態に係る免震装置100について説明する。免震装置100は、図1に示すように、内部に(複数の)荷物Aが載置された複数の保管容器Bが積層されているときに、床面Fに載置されるか又は保管容器Bとともに積み重ねられることで、床面Fなどの揺れが積層された保管容器Bに伝達することを抑制する。これにより、床面Fなどの揺れにより、積層された複数の保管容器Bが過度に大きな振幅で揺れることを抑制して、保管容器Bが荷崩れを起こしたり、保管容器Bの配置位置がずれたりすることを抑制できる。
【0026】
図1に示すように、積層された保管容器Bにおいて、1つの免震装置100が、一番下の保管容器Bと床面Fとの間に配置される。また、積層された保管容器Bにおいて、所定の個数の保管容器B毎(図1では3つの保管容器毎)に1つの免震装置100が配置される。その他、積層された保管容器Bにおいて、保管容器B毎に免震装置100を配置してもよい。
1つの免震装置100をいくつの保管容器B毎に配置するかは、例えば、保管容器Bの形状(高さ)や保管容器Bに載置される荷物Aの量などに基づいて、適宜決定できる。
【0027】
(2)免震装置の構成
(2−1)上側部材、下側部材
次に、第1実施形態に係る免震装置100の具体的な構成について、図1及び図2を用いて説明する。 図1は、複数の保管容器が積層された状態の一例を示す図である。図2は、第1実施形態に係る免震装置の詳細構成を示す図である。図2の(a)は、免震装置100を上側部材1(後述)からみた平面図を示し、図2の(b)は、免震装置100の断面図を示す。
免震装置100は、上側部材1を備える。上側部材1は、第1の保管容器B1(保管容器B)の底部の形状に対応する凸部が形成された部材である。すなわち、上側部材1は、第1の保管容器B1(保管容器B)の底部と同一の形状を有している。上側部材1の当該凸部に第1の保管容器B1(保管容器B)の底部に設けられた溝が当接することで、第1の保管容器B1(保管容器B)を底部から支持した状態で載置する。
【0028】
免震装置100は、下側部材3を備える。図2に示すように、下側部材3の下端部には、第2の保管容器B2(図1)の上側の形状に対応する凹みが形成されている。すなわち、下側部材3は、第2の保管容器B2(保管容器B)の上側と同一の形状を有している。下側部材3の当該凹みに保管容器B2の壁の上側が当接することで、下側部材3は、保管容器B2の壁の上側にて支持された状態で、保管容器B2に載置される。免震装置100が積層された保管容器Bの一番下に配置される場合、下側部材3は、図1に示すように、床面Fに載置される。
【0029】
積層された保管容器B1、B2の間において、上記のように上側部材1に1つの保管容器B1が載置され、他の1つの保管容器B2の上側に下側部材3が載置されることにより、免震装置100は、図1のように、2つの保管容器B(B1、B2)の間に挟まれた状態で、保管容器Bとともに積み重ねられる。
これにより、免震装置100は、下側部材3の下部に存在する保管容器B(B2)に対する、上側部材1に載置された保管容器B(B1)の相対移動を許容して、床面Fなどからの揺れが、上部に積層された保管容器Bへ伝達することを抑制できる。
【0030】
図1に示すように、上側部材1と下側部材3の高さの合計(免震装置100の高さ)が保管容器Bの高さよりも低くなっている。これにより、免震装置100の高さにより、複数の保管容器Bを積層したときの積層高さが過大となることを回避できる。
【0031】
また、保管容器の移載装置(図示せず)は、図1のように複数の保管容器Bと(複数の)免震装置100とが積層された状態で、複数の保管容器Bと(複数の)免震装置100とを共に同時に移送できる。
【0032】
図2に示すように、上側部材1及び下側部材3は、それぞれ、弾性部材5及び移動機構7を取り付けるための上側板部材11及び下側板部材31を有する。これにより、弾性部材5及び移動機構7を上側部材1及び下側部材3に容易に取り付けることができる。
上側板部材11及び下側板部材31は、少なくとも弾性部材5及び移動機構7が取り付けられる部分が板状となっていればよい。従って、上側板部材11及び下側板部材31は、上側部材1及び下側部材3の全面を覆う板部材であってもよいし、弾性部材5及び移動機構7が設けられる部分のみを覆う板部材であってもよい。
【0033】
(2−2)弾性部材
免震装置100は、弾性部材5を備える。弾性部材5は、上側部材1が下側部材3に対して相対移動したときの原点位置からの移動量に応じた弾性力を生じる部材である。弾性部材5は、上側部材1が下側部材3に対して原点位置にあるときに弾性力が0(すなわち、弾性部材5が釣り合い状態)となるよう、一端が上側部材1に固定され、他端が下側部材3に固定される。
【0034】
原点位置は、免震装置100において揺れがないときの上側部材1と下側部材3とのあるべき位置関係に基づいて決められ、本実施形態では、図2に示すように、上側部材1と下側部材3とが水平方向にて一致したときの上側部材1の下側部材3に対する位置として定義される。
【0035】
図2に示すように、本実施形態において、弾性部材5は、弾性部材5の一端となる中心から弾性部材5の他端となる外周に向け半径が大きくなる渦巻き形状を有し当該渦巻き形状の変形により弾性力を生じる渦巻き部材51と、渦巻き部材51の渦巻き形状の中心側(弾性部材5の一端)に形成された第1取付板部材53と、渦巻き形状の外周側(弾性部材5の他端)に形成された第2取付板部材55と、を有する渦巻バネである。
弾性部材5として渦巻バネを用いることにより、1つの弾性部材5により、上側部材1の下側部材3に対する任意の方向の相対移動に対して、上側部材1を原点位置に復帰させる弾性力を生じさせることができる。
【0036】
渦巻バネである弾性部材5は、上側部材1及び下側部材3への取り付け前においては、所定の厚みを有し、渦巻き形状の径方向と平行な平面形状を有している。渦巻バネである弾性部材5の所定の厚みは、弾性部材5のばね定数を決定するパラメータの1つであるので、荷物Aや保管容器Bの重量などを考慮して決定できる。本実施形態では、所定の厚みを、例えば、8〜12mmとできる。
【0037】
このような弾性部材5を上側部材1及び下側部材3に取り付ける際、平面形状を有する第1取付板部材53及び第2取付板部材55は、それぞれ、上側板部材11及び下側板部材31と平行になるよう固定される。これにより、弾性部材5の上側板部材11及び下側板部材31への固定を容易としつつ、特に、上側部材1及び下側部材3の面方向に平行な水平方向の上側部材1の相対移動に対応した弾性力を発生できる。この結果、上側部材1の水平方向への相対移動を抑制できる。
【0038】
図2に示すように、本実施形態では、渦巻きバネの外周側に形成された第2取付板部材55は、環状円形を有している。これにより、図2に示すように、例えば、渦巻バネの中心から等距離にある4点にて第2取付板部材55を固定できるので、渦巻バネである弾性部材5を上側部材1及び下側部材3において安定して固定できる。
【0039】
図2に示す例においては、上側板部材11に取り付けられた長手方向に延びる4個の第1レール部材71(後述)の長手方向と直交する短手方向における配置間隔が、第2取付板部材55の直径よりも小さくなっている。
このような場合には、図2に示すように、渦巻き形状の中心側に存在する第1取付板部材53(弾性部材5の一端側)は、第1レール部材71が固定された上側板部材11の中心位置に固定される。
一方、渦巻き形状の外周側に存在する第2取付板部材55(弾性部材5の他端側)は、短手方向に延びる第2レール部材73(後述)が固定された下側板部材31において、第1レール部材71とは高さ方向で異なる位置に配置されるよう固定される。
【0040】
これにより、弾性部材5を、第1レール部材71及び第2レール部材73と干渉させることなく、そのストロークを確保しつつ、免震装置100の限られたスペースを有効に活用して配置できる。その結果、免震装置100をコンパクトにできる。
【0041】
なお、図示しないが、上記とは逆に、長手方向に延びる4個の第1レール部材71が下側板部材31に固定され、短手方向に延びる4個の第2レール部材73が上側板部材11に固定される場合には、第1取付板部材53が下側板部材31の中心位置に固定され、第2取付板部材55が、上側板部材11において、第1レール部材71とは高さ方向で異なる位置に配置されるよう固定される。
【0042】
(2−3)移動機構
免震装置100は、長方形の上側部材1及び下側部材3の四隅に配置された、4個の移動機構7を有する。移動機構7を四隅に配置することにより、上側部材1の下側部材3に対する相対移動のバランスを確保できる。本実施形態の移動機構7は、2方向に移動可能なリニアガイドある。具体的には、図3に示すように、移動機構7は、4個の第1レール部材71と、4個の第2レール部材73と、4個のスライド部材75と、を有する。図3は、第1実施形態に係る移動機構の詳細構成を示す図である。
【0043】
4個の第1レール部材71は、それぞれ、長手方向に延び、上側板部材11の中心位置よりも短手方向側である四隅の下側板部材31に面した側に固定されるレール部材である。第1レール部材71の下側板部材31に近い側の側面には、長手方向に沿って延びる第1スライド溝711が形成されている。
【0044】
4個の第2レール部材73は、それぞれ、下側板部材31の中心位置よりも長手方向側である四隅の上側板部材11に面した側に固定され、対応する第1レール部材71の少なくとも一部と交差するよう短手方向に延びるレール部材である。また、第2レール部材73の上側板部材11に近い側の側面には、短手方向に沿って延びる第2スライド溝731が形成されている。
【0045】
4個のスライド部材75は、それぞれ、対応する第1レール部材71及び第2レール部材73上をスライドする部材である。具体的には、各スライド部材75は、スペーサー部751と、一対の第1爪部753と、一対の第2爪部755と、を有する。
スペーサー部751は、一対の第1爪部753と一対の第2爪部755を固定しつつ、高さ方向に所定の厚みを有することで、上側部材1と下側部材3との間の高さ方向での距離を決定する部材である。
【0046】
一対の第1爪部753は、スペーサー部751の上側において、第1レール部材71の幅とほぼ同一の間隔で配置されている。第1爪部753の先端は、第1スライド溝711の断面形状(本実施形態では、三角形)に対応する形状を有し、第1スライド溝711に対してスライド可能に嵌合している。
これにより、第1レール部材71は、一対の第1爪部753によってスペーサー部751の上側において支持されつつ、スペーサー部751を長手方向にスライドできる。
【0047】
一対の第2爪部755は、スペーサー部751の下側において、第2レール部材73の幅とほぼ同一の間隔で配置されている。第2爪部755の先端は、第2スライド溝731の断面形状(本実施形態では、三角形)に対応する形状を有し、第2スライド溝731に対してスライド可能に嵌合している。
これにより、第2レール部材73は、一対の第2爪部755によってスペーサー部751の下側において支持されつつ、スペーサー部751を短手方向にスライドできる。
【0048】
上記の構成を有することにより、4個のスライド部材75は、それぞれ、対応する1つの第1レール部材71をスライド可能に上部に支持し、当該対応する1つの第1レール部材71と交差する1つの第2レール部材73をスライド可能に下部に支持することで、上側部材1と下側部材3とを連結しつつ、上側部材1を下側部材3に対して、上側部材1及び下側部材3の面に平行な水平方向である長手方向及び短手方向の2方向に相対移動可能とできる。
この結果、上記の構成を有する移動機構7は、上側部材1が下側部材3から外れてしまうことを防止するとともに、上側部材1を下側部材3に対して2自由度にて相対移動できる。すなわち、上側部材1を下側部材3に対して水平面内の任意の方向に相対移動できる。
【0049】
また、4個の第1レール部材71と、4個の第2レール部材73と、4個のスライド部材75をそれぞれ四隅に設ける(すなわち、4組の移動機構を配置する)ことにより、上側部材1の下側部材3に対する相対移動のバランスを確保できる。
【0050】
上記の移動機構7において、一対の第1爪部753及び一対の第2爪部755と、第1スライド溝711及び第2スライド溝731とにより、スライド部材75が第1レール部材71及び第2レール部材73を支持することにより、第1レール部材71及び第2レール部材73がスライド部材75に対して回転することを抑制できる。この結果、上側部材1が下側部材3に対して回転することを抑制できる。
【0051】
なお、リニアガイドの変形例として、スペーサー部751を、第1レール部材71の頂部、又は、第2レール部材73の底部としてもよい。これにより、リニアガイドを上下一体とできる。
【0052】
(3)免震動作
次に、上記の構成を有する第1実施形態に係る免震装置100の免震動作について、図4を用いて説明する。図4は、第1実施形態に係る免震装置の免震動作を模式的に示す図である。
上記に説明したように、弾性部材5は、上側部材1が原点位置にあるときに弾性力が0となる(釣り合いの状態にある)ように、上側部材1及び下側部材3に取り付けられている。従って、床面Fなどからの揺れがないときには、図4の(a)に示すように、上側部材1は原点位置(上側部材1と下側部材3とが水平方向において一致した位置)にて静止している。
【0053】
上側部材1が原点位置にて静止している状態で、床面Fなどの揺れが生じると、上側部材1及び当該上側部材1に載置された保管容器B(とその中に収納された荷物A)に、当該揺れによる運動エネルギーが与えられる。当該運動エネルギーにより、移動機構7は、図4の(b)に示すように、上側部材1を下側部材3に対して相対移動させる。
【0054】
上側部材1の相対移動により、弾性部材5の一端の固定位置が移動して弾性部材5が変形することで、弾性部材5は、弾性部材5を元の形状(釣り合いの状態)に戻そうとする(すなわち、上側部材1を原点位置に復帰させようとする)弾性力を発生する。そして、上側部材1及び保管容器Bに与えられた運動エネルギーに相当する弾性エネルギーが弾性部材5に蓄えられたときに、弾性部材5の変形は停止する。
【0055】
ここで、上側部材1の相対移動による弾性部材5の変形度合いは、弾性部材5が有するばね定数に依存する。よって、弾性部材5のばね定数は、例えば、上側部材1の重量と、上側部材1に載置される保管容器Bの重量(保管容器B自身の重量と内部に収納される荷物Aの重量との合計)と、などに基づいて適切な値を設定する。
例えば、保管容器Bの重量が大きい場合には、ばね定数を大きくすることで、上側部材1の過度な相対移動を抑制して、保管容器Bが大きな振幅で揺れることを回避できる。
一方、保管容器Bの重量が小さい場合には、当該重量が小さい保管容器Bによっても弾性部材5が変形する程度の小さなばね定数を選択することが好ましい。なぜなら、ばね定数が大きすぎると、保管容器Bに運動エネルギーが与えられても弾性部材5が変形しない結果、揺れによる運動エネルギーがそのまま保管容器Bに与えられてしまうからである。その結果、保管容器Bが移動したり荷崩れしたりするからである。
【0056】
床面Fなどの揺れが収まると、弾性部材5に蓄えられていた弾性エネルギーにより、図4の(c)に示すように、上側部材1が原点位置の方向へと移動する。その後、上側部材1は、場合によっては原点位置の近傍にてしばらく振動した後、原点位置に復帰できる。
弾性部材5が、上側部材1の下側部材3に対する相対移動の移動量に応じた弾性力により、上側部材1を原点位置へと復帰させることにより、上側部材1を原点位置の近傍に保持して、上側部材1に載置された保管容器Bの移動を抑制できる。すなわち、保管容器Bに対して免震効果を与える。
【0057】
2.第2実施形態
第2実施形態に係る免震装置200は、上記の第1実施形態に係る免震装置100の渦巻バネを、図5に示すように、4個の長さ方向に弾性力を発生する部材(コイルバネ5’(例えば、引張バネ、圧縮バネ、引張圧縮バネ))に置き換えた装置である。長さ方向に弾性力を発生する部材としては、コイルバネ5’以外にも、輪ゴムなどのゴム製品を用いることもできる。図5は、第2実施形態に係る免震装置の構成を示す図である。
なお、第2実施形態に係る免震装置200は、渦巻バネをコイルバネ5’に変更した以外は、第1実施形態に係る免震装置100と同様の構成を有する。従って、以下では、弾性部材5(コイルバネ5’)以外の説明は省略する。
【0058】
本実施形態においては、図5に示すように、上側板部材11は、上側部材1の中心位置から上側板部材11の面とは垂直な方向に延びる第1取付部材51’を有する。一方、下側板部材31は、下側板部材31の第1レール部材71の配置位置に対応する位置よりも中心位置から遠い位置から下側板部材31の面とは垂直な方向に延び、下側部材3の中心位置に対して点対称に配置された一対の第2取付部材53’−1と、一対の第3取付部材53’−2と、を有する。
【0059】
本実施形態において、弾性部材5は4個のコイルバネ5’にて構成される。当該4個のコイルバネ5’の一端は第1取付部材51’により上側板部材11の中心位置の1点で固定される。一方、コイルバネ5’の他端は、4個のコイルバネ5’の長さ方向が上側部材1及び下側部材3の面方向に平行となった状態にて、面方向において放射状に配置されるよう、一対の第2取付部材53’−1又は一対の第3取付部材53’−2に固定される。
【0060】
上記のように固定されることにより、4個のコイルバネ5’の一端が第1レール部材71が固定された上側板部材11の中心位置の1箇所で固定され、他端が第2レール部材73が固定された下側板部材31の第1レール部材71の配置位置に対応する位置よりも中心位置から遠い位置に固定される。これにより、4個のコイルバネ5’は、上側部材1の任意の方向への相対移動に対してバランスよく弾性力を発生しつつ、各コイルバネ5’のストローク長を最大限確保できる。
【0061】
また、4個のコイルバネ5’は、上側部材1の中心位置に対して点対称でかつ面方向において放射状に配置される。これにより、コイルバネ5’のストローク長を確保しつつ、4個のコイルバネ5’の釣り合い回転により、上側部材1が下側部材3に対して相対的に回転することを回避できる。
さらに、コイルバネ5’の長さ方向は、長手方向に延びる第1レール部材71とは高さ方向において異なる位置において、上側部材1又は下側部材3の面方向に対して平行となるよう配置される。これにより、上側部材1が相対移動した際の第1レール部材71とコイルバネ5’との干渉を回避しつつ、免震装置100をコンパクトにできる。
【0062】
なお、図示しないが、上記とは逆に、長手方向に延びる第1レール部材71が下側板部材31に固定され、短手方向に延びる第2レール部材73が上側板部材11に固定される場合には、第1取付部材51’は、下側板部材31の中心位置から延びる。一方、一対の第2取付部材53’−1及び一対の第3取付部材53’−2は、上側板部材11の第1レール部材71の配置位置に対応する位置よりも中心位置から遠い位置から延びる。
その結果、4個のコイルバネ5’の一端が下側板部材31の中心位置の1箇所で固定され、他端が上側板部材11の第1レール部材71の配置位置に対応する位置よりも中心位置から遠い位置に固定される。
【0063】
3.第3実施形態
第3実施形態に係る免震装置300は、上側部材1(保管容器B)の一方向の相対移動に対する免震機能のみを有していてもよい。具体的には、図6に示すように、リニアガイドである移動機構7’が、短手方向に延びる第2レール部材73’と、当該第2レール部材73’に設けられた第2スライド溝731’にスライド可能に嵌合する一対の爪を有するスライド部材75’とのみにて構成されていてもよい。図6は、第3実施形態に係る免震装置の構成の一例を示す図である。
【0064】
上側部材1の一方向の相対移動に対する免震機能を有する第3実施形態に係る免震装置には、種々の変形例が存在する。具体的には、例えば、以下に説明する変形例1と変形例2が存在する。
【0065】
(1)変形例1
図7に示すように、第3実施形態の変形例1に係る免震装置300’は、長さ方向が短手方向に沿って配置されるよう両端が取付部材51’’に固定された4個のコイルバネ5’と、移動補助機構71’’と、移動規制車輪73’’と、スライド機構75’’と、を備える。図7は、第3実施形態の変形例1に係る免震装置の構成を示す図である。
上記の構成においては、移動補助機構71’’と、移動規制車輪73’’と、スライド機構75’’が、移動機構7’’を形成する。
【0066】
移動補助機構71’’は、下側板部材31上にて軸回りに回転可能な車輪であり、上側部材1の短手方向への相対移動を補助する。なお、移動補助機構71’’は、ボールキャスターであってもよい。
移動規制車輪73’’は、上側部材1の内壁(上側板部材11に垂直な壁の内側)に当接する車輪と、当該車輪を軸回りに回転可能に軸支し下側部材3に固定される固定部材とを有することで、上側部材1の短手方向とは異なる長手方向への移動を規制する。
【0067】
スライド機構75’’は、上側部材1を下側部材3に連結しつつ、上側部材1を下側部材3に対して短手方向に相対移動可能とする機構である。具体的には、図8の(a)に示すように、スライド機構75’’は、短手方向に沿って延びるU字溝を有し上側板部材11に固定される第1部材751’’と、第1部材751’’のU字溝に挿入される挿入壁を先端に有し終端が下側部材3に固定される第2部材753’’と、を有する。図8は、スライド機構の構成を示す図である。
【0068】
第1部材751’’のU字溝に第2部材753’’の挿入壁が挿入された状態にて上側部材1が下側部材3に対して相対移動した場合、上側部材1はU字溝が延びる短手方向には相対移動できる一方、挿入壁がU字溝の側壁に当接することにより長手方向への相対移動は規制される。これにより、スライド機構75’’は、上側部材1を下側部材3に対して短手方向のみに相対移動可能とできる。
【0069】
また、上側部材1が下側部材3に対して上方向に移動した場合には、図8の(b)に示すように、第1部材751’’のU字溝の底部に第2部材753’’の挿入壁が当接する。これにより、スライド機構75’’は、上側部材1の下側部材3に対する上方向の移動を規制して、上側部材1が下側部材3から外れることを回避できる。すなわち、スライド機構75’’は、上側部材1を下側部材3に連結できる。
【0070】
(2)変形例2
一方、第3実施形態の変形例2に係る免震装置300’’は、図9に示すように、環状の内側にて取付部材51’’’を囲むようにして取り付けられた4個の環状ゴム部材5’’と、一対の第1規制部材71’’’と、4個の第2規制部材73’’’と、図8において説明したのと同様の構成を有するスライド機構75’’’と、一対のスライド補助板77’’’と、を備える。図9は、第3実施形態の変形例2に係る免震装置の構成を示す図である。
上記の構成においては、第1規制部材71’’’と、第2規制部材73’’’と、スライド機構75’’’と、スライド補助板77’’’と、が、移動機構7’’’を形成する。以下、上記にてすでに説明されたスライド機構75’’’以外の構成要素について説明する。
【0071】
一対の第1規制部材71’’’は、短手方向に沿って延び、長手方向において互いに所定の間隔を空けて(4個の環状ゴム部材5’’よりも外側に配置されるよう)下側板部材31に固定されたL字形の部材(例えば、金属板)である。
4個の第2規制部材73’’’は、一対の第1規制部材71’’’の内側(ただし、4個の環状ゴム部材5’’よりも外側)において、2つが一方の第1規制部材71’’’に当接し、他の2つが他方の第1規制部材71’’’に当接するよう、上側板部材11に固定された部材である。
【0072】
4個の第2規制部材73’’’の側面が、一対の第1規制部材71’’’の内側に当接することで、上側部材1が下側部材3に対して長手方向に相対移動することを規制できる。
【0073】
スライド補助板77’’’は、短手方向に延び、下側板部材31の4個の第2規制部材73’’’に対応する位置に固定された板状の部材(例えば、金属板)である。これにより、4個の第2規制部材73’’’は、スライド補助板77’’’上を短手方向にスライドできる。
【0074】
上記のように、第2規制部材73’’’は、第1規制部材71’’’及びスライド補助板77’’’の表面をスライドする。従って、第2規制部材73’’’の第1規制部材71’’’及びスライド補助板77’’’への当接面には、低摩擦材(例えば、フッ素樹脂など)を貼り合わせるかコーティング又は表面加工をしてもよい。その他、第1規制部材71’’’及びスライド補助板77’’’の第2規制部材73’’’への当接面も低摩擦材を貼り合わせるかコーティング又は表面加工をしてもよい。
【0075】
4.実施形態の共通事項
上記第1〜第3実施形態は、下記の構成及び機能を共通に有している。
免震装置100、200、300、300’、300’’(免震装置の一例)は、荷物A(荷の一例)が載置された積層可能な保管容器B、B1、B2(保管容器の一例)とともに積み重ね可能な免震装置である。免震装置100、200、300、300’、300’’は、上側部材1(上側部材の一例)と、下側部材3(下側部材の一例)と、移動機構7、7’、7’’、7’’’(移動機構の一例)と、渦巻バネである弾性部材5、コイルバネ5’、又は環状ゴム部材5’’(弾性部材の一例)と、を備える。上側部材1は、第1の保管容器B1(第1の保管容器の一例)を載置する。下側部材3は、床面F(床面の一例)又は第2の保管容器B2(第2の保管容器の一例)の上側に載置される。移動機構7、7’、7’’、7’’’は、上側部材1を、下側部材3に対して、原点位置から、上側部材1及び下側部材3の面に平行な水平方向に相対移動可能とする。弾性部材は、上側部材1が下側部材3に対して相対移動したときの原点位置からの移動量に応じた弾性力により、上側部材1を原点位置へと復帰させる。
【0076】
移動機構7、7’、7’’、7’’’が備わることにより、免震装置100、200、300、300’、300’’では、地震の発生などにより保管容器Bを積層した床面が揺れた場合に、当該床面の揺れに応じて上側部材1が下側部材3に対して相対移動できる。
また、弾性部材が、上側部材1の下側部材3に対する相対移動の移動量に応じた弾性力により、上側部材1を原点位置(上側部材1が下側部材3に対して相対移動していないときの上側部材の位置)へと復帰させている。これにより、上側部材1を原点位置の近傍に保持して、上側部材1に載置された保管容器Bの移動を抑制できる。その結果、保管容器B、B1、B2が荷崩れしたり、保管容器B、B1、B2の配置位置が変化したりすることを抑制できる。
【0077】
5.他の実施形態
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
例えば、弾性部材及び移動機構7、7’、7’’、7’’’は適宜組み合わせることができる。例えば、渦巻バネである弾性部材5と、移動機構7’’、7’’’のいずれかを組み合わせることができる。または、コイルバネ5’と移動機構7’’’とを組み合わせることもできる。さらに、環状ゴム部材5’’と移動機構7、7’、7’’のいずれかを組み合わせることもできる。
【0078】
また、上側部材1及び下側部材3の形状は、保管容器Bの形状や免震(保管容器Bの移動の抑制)方向などに応じて適宜変更可能である。
さらに、移動機構7による、上側部材1の下側部材3に対する相対移動の方向も、保管容器Bの移動を抑制したい方向などに応じて適宜変更可能である。
【0079】
第1実施形態の弾性部材5である渦巻バネは、例えば、針金などの線形部材を渦巻き形状に形成したものであってもよい。
【0080】
上側部材1及び下側部材3は、保管容器Bの形状に合わせて任意の形状とできる。例えば、上側部材1及び下側部材3は、正方形(つまり、長手方向の辺の長さと、短手方向の辺の長さが等しい)であってもよい。
また、上側部材1及び下側部材3の形状に対応して、弾性部材及び/又は移動機構の構造や配置は適宜変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
荷を内部に収容して保管し積層可能な保管容器に広く適用できる。
【符号の説明】
【0082】
100、200、300、300'、300'' 免震装置
1 上側部材
11 上側板部材
3 下側部材
31 下側板部材
5 弾性部材
51 渦巻き部材
53 第1取付板部材
55 第2取付板部材
5' コイルバネ
5'' 環状ゴム部材
51' 第1取付部材
53'−1 第2取付部材
53'−2 第3取付部材
51''、51''' 取付部材
7、7'、7''、7''' 移動機構
71 第1レール部材
711 第1スライド溝
73、73' 第2レール部材
731、731' 第2スライド溝
71'' 移動補助機構
71'''第1規制部材
73'' 移動規制車輪
73'''第2規制部材
75、75' スライド部材
751 スペーサー部
753 第1爪部
755 第2爪部
75''、75''' スライド機構
751'' 第1部材
753'' 第2部材
77'''スライド補助板
A 荷物
B 保管容器
B1 第1の保管容器
B2 第2の保管容器
F 床面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9