特許第6790623号(P6790623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790623
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】エンジンオイル昇温装置
(51)【国際特許分類】
   F01M 5/00 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   F01M5/00 D
   F01M5/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-175641(P2016-175641)
(22)【出願日】2016年9月8日
(65)【公開番号】特開2018-40315(P2018-40315A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 明
【審査官】 小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−033724(JP,A)
【文献】 特開2005−076608(JP,A)
【文献】 特開2005−256704(JP,A)
【文献】 特開2009−191634(JP,A)
【文献】 特開2010−084731(JP,A)
【文献】 特開2010−174698(JP,A)
【文献】 実開昭54−179341(JP,U)
【文献】 実開平01−136610(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのエンジンオイルパン内に設けられ、前記エンジンのエンジンオイルを昇温するヒーターと、
前記エンジンのエンジン回転数およびエンジン燃料噴射量に応じて前記ヒーターの昇温目標値を決定し、前記ヒーターの稼働を制御するヒーター制御部と、
を備え、
前記ヒーター制御部は、
前記エンジンのエンジン冷却水温度を示す情報の入力を受け付け、前記エンジン冷却水温度が前記昇温目標値よりも低く、且つその温度差が所定の温度差よりも大きい場合、前記ヒーターを稼働しない、
または、
前記エンジンの燃料噴射量の加速度の大きさが所定の閾値よりも大きい場合、前記ヒーターを稼働しない、エンジンオイル昇温装置。
【請求項2】
前記ヒーターは、前記エンジンオイルパンのオイルストレーナの下部に設けられる、請求項1に記載のエンジンオイル昇温装置。
【請求項3】
前記ヒーター制御部は、前記エンジンの前記エンジン回転数および前記エンジン燃料噴射量に応じた前記ヒーターの昇温目標値を記憶するマップ記憶部を備え、
前記ヒーター制御部は、前記エンジンの前記エンジン回転数および前記エンジン燃料噴射量に対して、前記マップ記憶部を参照して前記ヒーターの昇温目標値を決定する、請求項1または2に記載のエンジンオイル昇温装置。
【請求項4】
前記エンジンの前記エンジン回転数および前記エンジン燃料噴射量が、それぞれ所定のエンジン回転数および所定のエンジン燃料噴射量よりも小さい場合、前記ヒーター制御部が前記ヒーターの昇温目標値を決定する、請求項1から3のいずれかに記載のエンジンオイル昇温装置。
【請求項5】
前記ヒーター制御部が前記エンジンオイルパンのエンジンオイル温度を示す情報の入力を受け付け、前記エンジンオイル温度が前記昇温目標値よりも高い場合、前記ヒーター制御部が前記ヒーターを稼働しない、請求項1から4のいずれかに記載のエンジンオイル昇温装置。
【請求項6】
前記ヒーター制御部が前記エンジンのバッテリ電圧を示す情報の入力を受け付け、
前記バッテリ電圧が所定のバッテリ電圧基準値よりも小さい場合、前記ヒーター制御部が前記ヒーターを稼働しない、請求項1からのいずれかに記載のエンジンオイル昇温装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジンオイル昇温装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるエンジンにおいて、エンジンの各部材を潤滑するとともにエンジンピストンを冷却するために、エンジンオイルを循環させる。エンジンを効率良く稼働させ、エンジンの各部材の損傷を防ぐためには、エンジンオイルの温度を適切に調節する必要がある。エンジンオイルの温度の上昇に応じてオイルサーモバルブが開き、オイルサーモバルブに連通するオイルクーラがエンジンオイルを冷却することにより、エンジンオイルの温度を調節する構成が知られている。
【0003】
エンジンオイルを昇温させると、エンジンオイルの粘性が低下してオイルポンプの仕事量が低減することにより、エンジンの燃費を改善できることが知られている。エンジンオイルを昇温させるために、オイルサーモバルブに代えて電気制御式オイルクーラ切り替えバルブを採用する提案がある。また、バッテリの電圧に余裕がある場合、エンジンオイルを昇温させるために、ヒーターを用いてエンジンオイルを目標とする温度まで昇温する提案がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−33724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、エンジンのピストンに噴射されたエンジンオイルの噴射後の温度が噴射前の温度より低下するエンジン低速回転低負荷領域においては、電気制御式オイルクーラ切り替えバルブを採用することによりエンジンオイルの温度を上昇させることはできない。この場合、エンジンオイルの温度の上昇によるエンジンの燃費の改善はもたらされない問題がある。
【0006】
また、ヒーターを用いてエンジンオイルを目標とする温度まで昇温する場合、それに伴いヒーターが消費する電力を手当てする必要がある。バッテリに接続されたACジェネレータ(ACG)の発電によりヒーターの消費電力を手当しようとすると、ACGの発電に起因する負荷が増加することで、ACGに連結されたエンジンの燃費が結果的に悪化する問題がある。
【0007】
本開示の目的は、エンジンオイルの昇温によりもたらされるエンジンの燃費改善がエンジンオイルを昇温するヒーターの消費電力を上回るようにエネルギー収支の整合性をとることにより、エンジンの燃費を改善するエンジンオイル昇温装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係るエンジンオイル昇温装置は、エンジンのエンジンオイルパン内に設けられ、前記エンジンのエンジンオイルを昇温するヒーターと、前記エンジンのエンジン回転数およびエンジン燃料噴射量に応じて前記ヒーターの昇温目標値を決定し、前記ヒーターの稼働を制御するヒーター制御部と、を備え、前記ヒーター制御部は、前記エンジンのエンジン冷却水温度を示す情報の入力を受け付け、前記エンジン冷却水温度が前記昇温目標値よりも低く、且つその温度差が所定の温度差よりも大きい場合、前記ヒーターを稼働しない、または、前記エンジンの燃料噴射量の加速度の大きさが所定の閾値よりも大きい場合、前記ヒーターを稼働しない、構成を採る。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、エンジンオイルの昇温によりもたらされるエンジンの燃費改善がエンジンオイルを昇温するヒーターの消費電力を上回るようにエネルギー収支の整合性をとることにより、エンジンの燃費を改善するエンジンオイル昇温装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示のエンジンオイル昇温装置およびエンジン内のエンジンオイルフローを示す図である。
図2】本開示のエンジンオイル昇温装置のエンジン燃料噴射量およびエンジン回転数とヒーターの昇温目標値との関係を示すマップである。
図3】本開示のエンジンオイル昇温装置の処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態)
図1は、本開示のエンジンオイル昇温装置1000およびエンジン内のエンジンオイルフローを示す図である。図1において、エンジンオイルは、エンジンオイルパン3130から、オイルストレーナ3010を通って、オイルポンプアセンブリ3020のオイルポンプ3022によって吸引される。吸引されたエンジンオイルの一部は、余剰エンジンオイルとして、リリーフバルブ3024を介してエンジンオイルパン3130に戻される。
【0013】
オイルポンプアセンブリ3020を出たエンジンオイルは、オイルクーラーアセンブリ3030に圧送され、オイルサーモバルブ3032を通過した一部のエンジンオイルが、オイルクーラーコア3034によって冷却されることにより、エンジンオイルの過度な温度上昇を抑制する。
【0014】
オイルクーラーアセンブリ3030を出たエンジンオイルは、メインオイルフィルター3040およびパーシャルオイルフィルター3050によって濾過される。パーシャルオイルフィルター3050を通過したエンジンオイルはエンジンオイルパン3130に戻される。
【0015】
メインオイルフィルター3040を通過したエンジンオイルは、その一部がターボチャージャー3060およびエアーコンプレッサー3070に供給され、残りはメインオイルギャラリー3080に供給される。メインオイルギャラリー3080に供給されたエンジンオイルは、エンジンの部材であるピストン3090、カムヘッド3100、メインベアリング3110、およびコンロッドベアリング3120に供給され、各部材の潤滑に供される。エンジンオイルの一部は、オイルジェットとしてエンジンの部材であるピストン3090に供給され、ピストン3090の冷却にも供される。その後、エンジンオイルはエンジンオイルパン3130に戻る。
【0016】
エンジンオイル昇温装置1000は、ヒーター1010と、ヒーター制御部1020と、を備える。ヒーター1010は、エンジンオイルパン3130から循環されるエンジンオイルを昇温させる。循環するエンジンオイルの温度を効率的に上昇させることができる限り、ヒーター1010を設ける位置に制限はなく、例えばオイルストレーナ3010の下部または近傍である。
【0017】
通常、ピストン3090を冷却して戻ったエンジンオイルがエンジンオイルパン3130の油面に落ちる。したがって、エンジンオイルパン3130内のエンジンオイルの温度は、上部において高く、一方、エンジンオイルパン3130の下面は走行風により冷却されることにより、下部において低い。オイルストレーナ3010は、通常、エンジンオイルパン3130の下部から、エンジンオイルパン3130内でも比較的低い温度のエンジンオイルを吸引する。したがって、ヒーター1010をエンジンオイルパン3130内のオイルストレーナ3010の下部または近傍に設けることにより、エンジンのオイルポンプ3022が吸引するエンジンオイルを確実に且つ効率的に昇温することができる。これにより、エンジンオイル昇温装置1000は、より効率的にエンジンの燃費を改善することができる。
【0018】
ヒーター制御部1020は、ヒーター1010の稼働を制御する。ヒーター1010を稼働する場合、ヒーター制御部1020は、エンジン(図示せず)のエンジン回転数およびエンジン燃料噴射量に応じてヒーター1010の昇温目標値を決定する。一例において、ヒーター制御部1020はECU2010に接続され、ECU2010からエンジンのエンジン回転数およびエンジン燃料噴射量を示す情報を取得する。ヒーター制御部1020は、これらの動作を実行できる限り特に制限はなく、例えば車載コンピュータである。
【0019】
一例において、ヒーター制御部1020は、エンジンのエンジン回転数およびエンジン燃料噴射量に応じたヒーター1010の昇温目標値をマップとして記憶するマップ記憶部1022を備える。マップ記憶部1022は、ヒーター1010の昇温目標値をマップとして記憶することができる限り特に制限はなく、例えばROM、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体である。ヒーター制御部1020は、エンジンのエンジン回転数およびエンジン燃料噴射量に対して、マップ記憶部1022を参照してヒーター1010の昇温目標値を決定する。マップ記憶部1022が記憶するマップについては、図2を参照して後述する。
【0020】
一例において、エンジンのエンジン回転数およびエンジン燃料噴射量が、それぞれ所定のエンジン回転数および所定のエンジン燃料噴射量よりも小さい場合、ヒーター制御部1020は、ヒーター1010の昇温目標値を決定する。ヒーター1010を稼働しないエンジン稼働域を設けることにより、バッテリ電力の浪費を抑制することができる。
【0021】
一例において、ヒーター制御部1020は、ECU2010を介して、オイルパン油温計測部2020が計測したオイルパン油温を示す情報の入力を受け付ける。ここで、オイルパン油温とは、エンジンオイルパン3130上のエンジンオイルの温度である。エンジンオイルの温度がヒーター1010の昇温目標値よりも高い場合、ヒーター制御部1020はヒーター1010を稼働しない。既にエンジンオイルの温度が十分高い場合にヒーター1010を稼働しないことにより、バッテリ電力の浪費を抑制することができる。
【0022】
一例において、ヒーター制御部1020は、ECU2010を介して、エンジン冷却水温度計測部2030が計測したエンジン冷却水温度を示す情報の入力を受け付ける。計測されたエンジン冷却水温度がヒーター1010の昇温目標値よりも低く、且つその温度差Δtが所定の温度差Δtよりも大きい場合、ヒーター制御部1020はヒーター1010を稼働しない。例えば、エンジンを搭載する車両が走行と停止を繰り返す場合、温度差Δtが所定の温度差Δtよりも大きくなる。このような車両の運転者に定常走行を継続する意思がないと認められる場合には、ヒーター1010を稼働しないことにより、バッテリ電力の浪費を抑制することができる。
【0023】
一例において、エンジン燃料噴射量の加速度の大きさが所定の閾値よりも大きい場合、ヒーター制御部1020は、ヒーター1010を稼働しない。ここで、エンジン燃料噴射量の加速度とは、単位時間当たりのエンジン燃料噴射量の変化量である。例えば、ヒーター制御部1020は、ECU2010を介して、時刻t1およびt2におけるエンジン燃料噴射量Q1およびQ2を取得する。次いで、ヒーター制御部1020は、エンジン燃料噴射量の加速度r=(Q1−Q2)/(t2−t1)を計算し、加速度rの絶対値が所定の閾値rより大きい場合、ヒーター制御部1020はヒーター1010を稼働しない。エンジン燃料噴射量の加速度が大きい場合、車両の走行状態が不安定であり、次の走行状態を予測することは困難である。このような場合にヒーター1010を稼働しないことにより、バッテリ電力の浪費を抑制することができる。
【0024】
一例において、ヒーター制御部1020は、ECU2010を介して、バッテリ電圧計測部2040が計測したバッテリ電圧を示す情報の入力を受け付ける。計測されたバッテリ電圧が所定のバッテリ電圧基準値よりも小さい場合、ヒーター制御部1020はヒーター1010を稼働しない。ここで、所定のバッテリ電圧基準値は、ヒーター1010を稼働してもバッテリの使用に支障がない電圧基準値である限り、任意に設定できる電圧基準値である。こうすると、バッテリ充電率が低く、バッテリ電圧が下がっている場合、ヒーター1010を稼働しないことによって、バッテリに負担をかけることを回避することができる。
【0025】
図2は、本開示のエンジンオイル昇温装置のエンジン燃料噴射量およびエンジン回転数とヒーター1010の昇温目標値との関係を示すマップである。マップにおいて、エンジン燃料噴射量およびエンジン回転数によって規定されるエンジン稼働域に対して、ヒーター1010の昇温目標値が規定されている。「○」で示されている部分には、ヒーター1010の昇温目標値が規定されている。「×」で示されている部分には、ヒーター1010の昇温目標値が規定されていない。「○」で示されるエンジン稼働域においては、ヒーター1010を稼働する。「×」で示されるエンジン稼働域においては、ヒーター1010を稼働しない。
【0026】
一例において、「○」で示されている部分は、ピストン3090に噴射されたエンジンオイルの噴射後の温度が噴射前の温度より低下するエンジン稼働域である。低下したエンジンオイルの温度をヒーター1010で再度昇温することにより、オイルポンプ3022の仕事量が低減した状態を維持することができる。
【0027】
一例において、「○」で示されている部分は、エンジンのフリクションが比較的高いエンジン稼働域である。エンジンのフリクションが比較的高い部分において、エンジンオイルを昇温させ粘性を低下させることによって、エンジンのフリクションを低下させ、結果的にエンジンの燃費を改善することができる。
【0028】
一例において、昇温目標値は、オイルクーラーコア3034の冷却温度目標値およびオイルサーモバルブ3032の開弁温度のいずれよりも低い温度である。こうすると、エンジンオイルの無駄な昇温および冷却が抑制され、無駄な電力消費を抑制し、結果的にエンジンの燃費をより改善することができる。
【0029】
車種毎に、エンジンの各稼働域に対して、ヒーター1010の消費電力を加味した上で結果的にエンジンの燃費が最も良くなるヒーター1010の昇温値を予め計測しておき、計測された昇温値をヒーター1010の昇温目標値として規定してもよい。こうすると、車種に応じて、燃費評価のモード試験における燃費や実走行における燃費を最適化することができ、近年の排ガス試験においても、より良い結果を得ることができる。
【0030】
図2に示すように、エンジン回転数およびエンジン燃料噴射量に対するヒーター1010の昇温目標値を予めマップを用いて規定することにより、ヒーター制御部1020は、ECU2010から取得可能な値にのみ基づいて、ヒーター1010の昇温目標値を決定することができる。したがって、ヒーター制御部1020は、ヒーター1010の昇温目標値を決定するに当たって、エンジン負荷等の計測困難な値を用いる必要はない。
【0031】
図3は、本開示のエンジンオイル昇温装置1000の処理を説明するフローチャートである。ステップS1010において、ヒーター制御部1020は、ECU2010から、エンジン回転数およびエンジン燃料噴射量を取得する。
【0032】
ステップS1020において、ヒーター制御部1020は、取得されたエンジン回転数およびエンジン燃料噴射量に対応するヒーター1010の昇温目標値を図2に示したマップから取得する。
【0033】
ステップS1030において、オイルパン油温計測部2020はオイルパン油温を計測し、ヒーター制御部1020は、ECU2010を介して、計測されたオイルパン油温を取得する。ステップS1040において、ヒーター制御部1020は、取得されたオイルパン油温と取得されたヒーター1010の昇温目標値とを比較する。
【0034】
ステップS1040において、オイルパン油温がヒーター1010の昇温目標値以上の場合は、ステップS1010に戻る。ステップS1040において、オイルパン油温が昇温目標値よりも小さい場合、ステップS1050に進む。
【0035】
ステップS1050において、エンジン冷却水温度計測部2030がエンジン冷却水温度を計測し、ヒーター制御部1020は、ECU2010を介して、計測されたエンジン冷却水温度を取得する。
【0036】
ステップS1060において、ヒーター制御部1020は、ヒーター1010の昇温目標値とエンジン冷却水温度との差ΔTとΔTとを比較する。ステップS1060において、ΔTがΔT以上である場合、ステップS1010に戻る。ステップS1060において、ΔTがΔTより小さい場合、ステップS1070に進む。
【0037】
ステップS1070において、ヒーター制御部1020は、エンジン燃料噴射量の加速度の大きさを計算し、計算されたエンジン燃料噴射量の加速度の大きさが所定の閾値より小さいか否かを判定する。ステップS1070において、エンジン燃料噴射量の加速度が所定の閾値より小さくないと判定した場合、ステップS1010に戻る。ステップS1070において、エンジン燃料噴射量の加速度が所定の閾値より小さいと判定した場合、ステップS1080に進む。
【0038】
ステップS1080において、バッテリ電圧計測部2040はバッテリ電圧を計測し、ヒーター制御部1020は、ECU2010を介して、計測されたバッテリ電圧を取得する。
【0039】
ステップS1090において、ヒーター制御部1020は、計測されたバッテリ電圧と所定のバッテリ電圧基準値とを比較する。バッテリ電圧が所定のバッテリ電圧基準値以下である場合、ステップS1010に戻る。バッテリ電圧が所定のバッテリ電圧基準値より大きい場合、ステップS1110に進み、ヒーター制御部1020がヒーター1010の昇温目標値を設定し、次いで終了する。
【0040】
(他の実施形態)
上記の実施形態においては、ヒーター制御部1020は、ECU2010を介して、オイルパン油温計測部2020、エンジン冷却水温度計測部2030、およびバッテリ電圧計測部2040からの情報の入力を受け付けている。これに代えて、ヒーター制御部1020は、オイルパン油温計測部2020、エンジン冷却水温度計測部2030、およびバッテリ電圧計測部2040の少なくとも1つから、ECU2010を介さずに情報の入力を受け付けてもよい。
【0041】
上記の実施形態においては、ヒーター制御部1020は、ECU2010を介してエンジン燃料噴射量Q1およびQ2を取得し、ヒーター制御部1020がエンジン燃料噴射量の加速度rを計算している。ECU2010が加速度rを計算しているときは、ヒーター制御部1020は加速度rの計算に代えて、ECU2010が計算した加速度rを入力してもよい。
【0042】
上記の実施形態においては、電気制御式オイルクーラ切り替えバルブを使用していないが、電気制御式オイルクーラ切り替えバルブを併用してもよい。電気制御式オイルクーラ切り替えバルブを併用し、ヒーター1010の昇温目標値を下げることがよって、バッテリ電力の浪費をさらに抑制することができる。
【0043】
図3に示したフローチャートにおいては、本開示に記載の特徴を包括的に説明している。フローチャート内のステップを実行する順序を入れ替えてもよく、フローチャート内のいくつかのステップを省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係るエンジンオイル昇温装置は、エンジンを搭載した車両において使用するのに好適である。
【符号の説明】
【0045】
1000 エンジンオイル昇温装置
1010 ヒーター
1020 ヒーター制御部
1022 マップ記憶部
2010 ECU
2020 オイルパン油温計測部
2030 エンジン冷却水温度計測部
2040 バッテリ電圧計測部
3010 オイルストレーナ
3020 オイルポンプアセンブリ
3022 オイルポンプ
3024 リリーフバルブ
3030 オイルクーラーアセンブリ
3032 オイルサーモバルブ
3034 オイルクーラーコア
3040 メインオイルフィルター
3050 パーシャルオイルフィルター
3060 ターボチャージャー
3070 エアーコンプレッサー
3080 メインオイルギャラリー
3090 ピストン
3100 カムヘッド
3110 メインベアリング
3120 コンロッドベアリング
3130 エンジンオイルパン
図1
図2
図3