(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ユーザが一の画像形成装置を出力先に指定した複数の印刷ジョブを該一の画像形成装置が受け付けた後、前記複数の印刷ジョブを前記一の画像形成が複数の他の画像形成装置に転送して実行させた場合は、前記自走式蓄積装置が、転送先の前記複数の他の画像形成装置を回って前記複数の印刷ジョブに係る印刷物を回収して前記一の画像形成装置まで移動する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の画像形成システム。
前記印刷ジョブを前記一の画像形成装置から他の画像形成装置に転送した場合に、前記印刷ジョブの実行を開始する前に前記他の画像形成装置が前記印刷ジョブの実行に支障のある状態になったとき、前記印刷ジョブを別の画像形成装置に再転送し、前記自走式蓄積装置は、前記再転送した先の画像形成装置の排出する前記印刷ジョブに係る印刷物を回収して前記一の画像形成装置まで移動する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の画像形成システム。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成システム2の構成例を示している。画像形成システム2は、LAN(Local Area Network)などのネットワーク3に接続された複数台の画像形成装置10と、少なくとも1台以上の自走式フィニッシャ40を備えて構成される。このほか、ネットワーク3には各ユーザや管理者の情報処理端末(パーソナルコンピュータ等)5が接続される。
【0027】
画像形成装置10は、原稿を光学的に読み取ってその複製画像を記録紙に印刷するコピー機能、読み取った原稿の画像データをファイルにして保存したり外部端末へネットワーク3を通じて送信したりするスキャン機能、ユーザの情報処理端末5や図示省略のサーバから受信した印刷ジョブに基づいて記録紙に画像を形成して印刷する印刷機能などを備えた、所謂、複合機である。以後、画像形成装置10をMFPとも記す。
図1の例では、ネットワーク3にMFP1、MFP2、MFP3の3台の画像形成装置10が接続されている。
【0028】
自走式フィニッシャ40は、画像形成装置10に接続され、その画像形成装置10から排出される印刷物(記録紙)を受け入れて、該印刷物に、綴じ、折り、穿孔(パンチ穴をあける)などの後処理を施す機能、後処理を施した印刷物(あるいは後処理を施さない場合は画像形成装置10から受け入れた印刷物)を内部に蓄える機能、および、画像形成装置10から分離して任意の目的地に向けて自走して移動する機能を備えている。
【0029】
画像形成システム2では、ユーザが情報処理端末5から一の画像形成装置10に向けて送信した印刷ジョブ(一の画像形成装置を出力先とする印刷ジョブ)を該一の画像形成装置10が受け付けた後、該印刷ジョブを一の画像形成装置10から他の画像形成装置10に転送して印刷を実行させた場合、自走式フィニッシャ40が転送先の他の画像形成装置10の排出する該印刷ジョブに係る印刷物を回収した後、転送元の画像形成装置まで自走して移動する。これにより、ユーザが出力先に指定した一の画像形成装置10から他の画像形成装置10に印刷ジョブが転送された場合でも、ユーザは元々出力先としていた画像形成装置10のある場所で印刷物を受け取ることができる。
【0030】
たとえば、ユーザの情報処理端末5から印刷ジョブを受信した画像形成装置10がその印刷ジョブを他の画像形成装置10に転送して実行させる場合、印刷ジョブを受信した転送元の画像形成装置10が、自走式フィニッシャ40に対して、印刷物の回収指示、回収先の画像形成装置10の場所、回収先の画像形成装置10から受け入れた印刷物に対する後処理の有無やその内容、回収した印刷物の配達先となる画像形成装置(転送元の画像形成装置)10の場所、移動経路などの回収情報を、無線通信を介して送信する。
【0031】
自走式フィニッシャ40は画像形成装置10から受信した指示や情報に従って、印刷物を回収し、移動する。
【0032】
図2は、画像形成装置10の概略構成を示すブロック図である。画像形成装置10は、当該画像形成装置10の動作を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)11を有している。CPU11にはバスを通じてROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、画像読取部14、プリンタ部15、画像処理部16、不揮発メモリ17、ハードディスク装置18、ファクシミリ通信部19、無線通信部20、ネットワーク通信部21、操作パネル22、認証部25などが接続されている。
【0033】
CPU11は、OS(Operating System)プログラムをベースとし、その上で、ミドルウェアやアプリケーションプログラムなどを実行する。また、ROM12には、各種のプログラムが格納されており、これらのプログラムに従ってCPU11が各種処理を実行することで画像形成装置10としての各機能が実現される。
【0034】
RAM13は、CPU11がプログラムに基づいて処理を実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリや画像データを格納する画像メモリなどとして使用される。
【0035】
画像読取部14は、原稿を光学的に読み取って画像データを取得する機能を果たす。画像読取部14は、例えば、原稿に光を照射する光源と、その反射光を受けて原稿を幅方向に1ライン分読み取るラインイメージセンサと、ライン単位の読取位置を原稿の長さ方向に順次移動させる移動ユニットと、原稿からの反射光をラインイメージセンサに導いて結像させるレンズやミラーなどからなる光学経路と、ラインイメージセンサの出力するアナログ画像信号をデジタルの画像データに変換する変換部などを備えて構成される。
【0036】
プリンタ部15は、画像データに応じた画像を記録紙上に画像形成する機能を果たす。ここでは、記録紙の搬送装置と、感光体ドラムと、帯電装置と、レーザーユニットと、現像装置と、転写分離装置と、クリーニング装置と、定着装置とを有し、電子写真プロセスによって画像形成を行う、所謂、レーザープリンタとして構成されている。画像形成は他の方式でもかまわない。
【0037】
画像処理部16は、画像の拡大縮小、回転などの処理のほか、印刷ジョブに含まれる印刷データをイメージデータに変換するラスタライズ処理、画像データの圧縮、伸張処理などを行う。
【0038】
不揮発メモリ17は、電源をオフにしても記憶内容が破壊されないメモリ(フラッシュメモリ)であり、各種設定情報の保存などに使用される。
【0039】
ハードディスク装置18は、不揮発で大容量の記憶装置であり、各種のプログラム、受信した印刷ジョブなどが記憶される。ハードディスク装置18には、当該画像形成システム2に属する各画像形成装置10が設置された場所の地理的位置情報(配置データ)が記憶されている。
【0040】
ファクシミリ通信部19は、ファクシミリ機能を備えた外部装置と公衆回線を通じて画像データを送受信する機能を果たす。
【0041】
無線通信部20は、自走式フィニッシャ40との間で無線通信を行う。
【0042】
ネットワーク通信部21は、ネットワーク3を通じて情報処理端末5や他の画像形成装置10、その他のサーバや外部装置との間で通信する機能を果たす。
【0043】
操作パネル22は、表示部23と、操作部24を備えている。表示部23は、液晶ディスプレイ(LCD…Liquid Crystal Display)などで構成され、各種の操作画面、設定画面などを表示する機能を果たす。操作部24は、テンキーやスタートボタンなどのハードキーと、表示部23の物理的画面上に設けられたタッチパネルとを備えている。タッチパネルは、表示部23の物理的画面がタッチペンや指などで接触操作された座標位置を検出する。
【0044】
認証部25は、ユーザが当該画像形成装置10の使用を開始する時に、該ユーザを認証する。認証方法は任意でよい。
【0045】
画像形成装置10のCPU11は、プログラムを実行することで、転送先判断部31、移動指示部32などの機能を果たす。
【0046】
転送先判断部31は、ユーザの情報処理端末5等から受信した自装置を出力先に指定した印刷ジョブを他の画像形成装置10に転送するか否かの判断、および、転送する場合に、その転送先を決定する処理などを行う。移動指示部32は、印刷ジョブの転送先から印刷物を回収する際の移動経路等を決定し、回収の指示や移動経路などを含む前述した回収情報を作成し、これを無線通信部20から自走式フィニッシャ40に送信する等の制御を行う。
【0047】
図3は、自走式フィニッシャ40の概略構成を示している。自走式フィニッシャ40は、当該自走式フィニッシャ40の動作を制御する制御部41、接続された画像形成装置10から受け入れた印刷物に各種の後処理を施す後処理部42、画像形成装置10から受け入れた印刷物あるいは受け入れて後処理を施した後の印刷物を多数収納して蓄積する蓄積部43、各画像形成装置10と無線通信するための無線通信部45、自装置を移動させる走行部46、自装置の現在位置を検出する位置検出部44などを備えている。
【0048】
走行部46は、操舵輪と駆動輪を備え、任意の方向に自走して移動可能に構成される。このほか、室内に敷設されたレール上を移動する構成等でもかなわない。
【0049】
次に、印刷ジョブの転送と、自走式フィニッシャ40の移動に関する各種の例を説明する。以後、印刷ジョブを単にジョブとも称す。
【0050】
図4は、MFP1がユーザの情報処理端末5からジョブ1とジョブ2を受信して保持している状態からジョブを転送する場合の動作を示している。ジョブ1は、後処理を要するジョブなので、自走式フィニッシャ40を使用する必要があり、ジョブ2は、後処理がないジョブであり、自走式フィニッシャ40を使用することなく実行できるジョブである。MFP1には、自走式フィニッシャ40が接続されておらず、MFP2に自走式フィニッシャ40が接続されている。
【0051】
この場合、MFP1は、ジョブ1をMFP2に転送し、自走式フィニッシャ40に対して、MFP2から排出される印刷物に後処理を施して回収し、MFP1まで移動するように指示する。すなわち、MFP1は、自走式フィニッシャ40を使用しないジョブ2は自装置で実行し、自走式フィニッシャ40を使用するジョブ1を自走式フィニッシャ40が接続されているMFP2に転送する(
図4:P1)。
【0052】
MFP1からジョブ1の転送を受けたMFP2は該ジョブ1を実行し(
図4:P2)、自走式フィニッシャ40はMFP2から排出される印刷物を受入れ、これに後処理を施して自装置の内部に蓄積する(
図4:P3)。
【0053】
MFP2でのジョブ1の実行が完了して印刷物がすべて自走式フィニッシャ40に回収されたら、自走式フィニッシャ40は自走してMFP1まで移動する(
図4:P4)。この際、自走式フィニッシャ40はMFP1に接続する必要はなく、MFP1の近くまで移動するだけでもよい。
【0054】
図5は、MFP1がユーザの情報処理端末5から受信したジョブ1とジョブ2とジョブ3を保持している状態からジョブを転送する場合の動作を示している。ジョブ1、ジョブ2は、後処理を要するジョブなので、自走式フィニッシャ40を使用する必要があり、ジョブ3は、後処理のないジョブである。このとき、MFP1には、自走式フィニッシャ40が接続されておらず、MFP2に第1の自走式フィニッシャ40(以後、自走式フィニッシャ(1)とする)が接続され、MFP3には第2の自走式フィニッシャ40(自走式フィニッシャ(2)とする)が接続されている。
【0055】
この場合、MFP1は、ジョブ1をMFP3に転送し、自走式フィニッシャ(2)に対して、MFP3から排出される印刷物に後処理を施して回収し、MFP1まで移動するように指示する。また、ジョブ2をMFP2に転送し、自走式フィニッシャ(1)に対して、MFP2から排出される印刷物に後処理を施して回収し、MFP1まで移動するように指示する。
【0056】
すなわち、MFP1は、自走式フィニッシャ40を使用しないジョブ3は自装置で実行し、自走式フィニッシャ40を使用するジョブ1を自走式フィニッシャ(1)が接続されているMFP2に転送し、自走式フィニッシャ40を使用するジョブ2を自走式フィニッシャ(2)が接続されているMFP3に転送する(
図5:P1)。MFP1からジョブ1の転送を受けたMFP2は該ジョブ1を実行し(
図5:P2a)、自走式フィニッシャ(1)はMFP2から排出される印刷物を受入れ、これに後処理を施して自装置の内部に蓄積する(
図5:P3a)。これと並行してMFP1からジョブ2の転送を受けたMFP3は該ジョブ2を実行し(
図5:P2b)、自走式フィニッシャ(2)はMFP3から排出される印刷物を受入れ、これに後処理を施して自装置の内部に蓄積する(
図4:P3b)。
【0057】
MFP2でのジョブ1の実行が完了して印刷物がすべて自走式フィニッシャ(1)に回収されたら、自走式フィニッシャ(1)は自走してMFP1まで移動する(
図5:P4a)。同様にMFP3でのジョブ2の実行が完了して印刷物がすべて自走式フィニッシャ(2)に回収されたら、自走式フィニッシャ(2)は自走してMFP1まで移動する(
図5:P4b)。この際、自走式フィニッシャ(1)、(2)はMFP1に接続する必要はなく、MFP1の近くまで移動するだけでよい。
【0058】
図6は、MFP1がユーザの情報処理端末5から受信したジョブ1とジョブ2とジョブ3を保持している状態からジョブを転送する場合の他の動作例を示している。ジョブ1は後処理を要するジョブであり、ジョブ2、ジョブ3は、後処理のないジョブである。このとき、MFP1、MFP2には、自走式フィニッシャ40が接続されておらず、MFP3に自走式フィニッシャ40が接続されている。
【0059】
この場合、MFP1は、ジョブ2をMFP2に転送すると共に、ジョブ1をMFP3に転送し、自走式フィニッシャ40に対して、MFP3から排出される印刷物に後処理を施して回収した後、MFP2まで移動し、MFP2から排出される印刷物を回収した後、MFP1まで移動するように指示する。
【0060】
すなわち、MFP1は、自走式フィニッシャ40を使用しないジョブ3は自装置で実行し、自走式フィニッシャ40を使用しなしジョブ2はMFP2に転送し、自走式フィニッシャ40を使用するジョブ1は自走式フィニッシャ40が接続されているMFP3に転送する(
図6:P1)。MFP1からジョブ2の転送を受けたMFP2は該ジョブ2を実行し(
図6:P2a)、印刷物を自装置の内部に蓄積保持する。これと並行してMFP1からジョブ1の転送を受けたMFP3は該ジョブ1を実行し(
図6:P2b)、自走式フィニッシャ40はMFP3から排出される印刷物を受入れ、これに後処理を施して自装置の内部に蓄積する(
図6:P3)。
【0061】
MFP3でのジョブ1の実行が完了して印刷物がすべて自走式フィニッシャ40に回収されたら、自走式フィニッシャ40は、MFP3から受け入れた印刷物を保持して自走し、MFP2まで移動する(
図6:P4)。そして、MFP2に到着したらMFP2に接続し、MFP2の内部に保持されているジョブ2に係る印刷物をMFP2から受け取って回収する(
図5:P5)。その後、自走式フィニッシャ40は自走してMFP1まで移動する(
図6:P6)。この際、自走式フィニッシャ40はMFP1に接続する必要はなく、MFP1の近くまで移動するだけでよい。
【0062】
なお、MFP2が印刷物を内部に蓄積保持する機能を持たない場合には、MFP2は自走式フィニッシャ40がMFP2に接続されてからジョブ2の実行を開始する。
【0063】
図7は、MFP1がユーザの情報処理端末5から受信したジョブ1を保持している状態からジョブを転送する場合の動作例を示している。ジョブ1は後処理のあるジョブである。自走式フィニッシャ40は、MFP1〜3のいずれにも接続されておらず、独立してMFP2の近くにある。MFP2は別のユーザによって使用中であり、MFP3は空き状態で直ぐにジョブを実行できる状態にある。
【0064】
このような状態の場合、MFP1は、ジョブ1をMFP3に転送し(
図7:P1)、自走式フィニッシャ40に対して、MFP3に移動して印刷物を回収し、MFP1まで移動するように指示する。MFP1から移動の指示を受けた自走式フィニッシャ40は、MFP3に移動してMFP3に接続する(
図7:P2)。
【0065】
自走式フィニッシャ40が接続された後、MFP3はMFP1から転送を受けたジョブ1を実行し(
図7:P3)、自走式フィニッシャ40はMFP3から排出される印刷物を受入れ、これに後処理を施して自装置の内部に蓄積する(
図7:P4)。
【0066】
MFP3でのジョブ1の実行が完了して印刷物がすべて自走式フィニッシャ40に回収されたら、自走式フィニッシャ40は、MFP3から受け入れた印刷物を保持して自走し、MFP1まで移動する(
図7:P5)。この際、自走式フィニッシャ40はMFP1に接続する必要はなく、MFP1の近くまで移動するだけでよい。
【0067】
図8は、MFP1がユーザの情報処理端末5から受信したジョブ1を保持している状態からジョブを転送する場合の他の動作例を示している。ジョブ1は後処理のあるジョブである。自走式フィニッシャ40はMFP2に接続されている。MFP2は別のユーザによって使用中であるが、自走式フィニッシャ40は使用されていない。MFP3は空き状態で直ぐにジョブを実行できる状態にある。
【0068】
このような状態の場合、MFP1は、ジョブ1をMFP3に転送し(
図8:P1)、自走式フィニッシャ40に対して、MFP3に移動して印刷物を回収し、MFP1まで移動するように指示する。MFP1から移動の指示を受けた自走式フィニッシャ40はMFP2から離脱し、MFP3に移動してMFP3に接続する(
図8:P2)。
【0069】
自走式フィニッシャ40が接続された後、MFP3はMFP1から転送を受けたジョブ1を実行し(
図8:P3)、自走式フィニッシャ40はMFP3から排出される印刷物を受入れ、これに後処理を施して自装置の内部に蓄積する(
図8:P4)。
【0070】
MFP3でのジョブ1の実行が完了して印刷物がすべて自走式フィニッシャ40に回収されたら、自走式フィニッシャ40は、MFP3から受け入れた印刷物を保持して自走し、MFP1まで移動する(
図8:P5)。この際、自走式フィニッシャ40はMFP1に接続する必要はなく、MFP1の近くまで移動するだけでよい。
【0071】
図9は、MFP1がユーザの情報処理端末5から受信したジョブ1を保持している状態からジョブを転送した後、転送先でジョブを実行できなくなり、別のMFPに再転送する場合の動作例を示している。ジョブ1は後処理のあるジョブである。自走式フィニッシャ40はMFP1〜3のいずれにも接続されていないが、MFP2の近くにある。MFP2、MFP3は、当初、いずれも空き状態で直ぐにジョブを実行できる状態にある。
【0072】
このような状態の場合、MFP1は、ジョブ1をMFP2に転送し(
図9:P1)、自走式フィニッシャ40に対して、MFP2に移動して印刷物を回収し、MFP1まで移動するように指示する。該指示を受けた自走式フィニッシャ40はMFP2に向かって移動を開始する(
図9:P2)。しかし、自走式フィニッシャ40がMFP2に到着してMFP2がジョブ1を開始する前に、別のユーザがMFP2に来てMFP2を使用し始めた等のため、MFP2はジョブ1の実行に支障のある状態になる(
図9:P3)。なお、ジョブの実行に支障のある状態には、紙切れ、トナー切れ、故障、電源オフなどに起因する場合も含まれる。
【0073】
MFP2がジョブ1の実行に支障のある状態になったことを検知したMFP1は、MFP2にジョブ1の廃棄を指示し、ジョブ1をMFP3に再転送する(
図10:P4)。また、自走式フィニッシャ40に対して、MFP3まで移動し、MFP3から排出される印刷物に後処理を施して回収した後、MFP1まで移動するように指示する。
【0074】
この指示に基づき、自走式フィニッシャ40はMFP3に移動してMFP3に接続する(
図10:P5)。自走式フィニッシャ40が接続された後、MFP3はMFP1から転送を受けたジョブ1を実行し(
図10:P6)、自走式フィニッシャ40はMFP3から排出される印刷物を受入れ、これに後処理を施して自装置の内部に蓄積する(
図10:P7)。
【0075】
MFP3でのジョブ1の実行が完了して印刷物がすべて自走式フィニッシャ40に回収されたら、自走式フィニッシャ40は、MFP3から受け入れた印刷物を保持して自走し、MFP1まで移動する(
図10:P8)。この際、自走式フィニッシャ40はMFP1に接続する必要はなく、MFP1の近くまで移動するだけでよい。
【0076】
次に、ジョブを実行可能なMFPが複数ある場合に、各MFPでジョブを実行した場合に印刷物をユーザが受け取るまでの所要時間を計算し、その計算結果に基づいてそのジョブの転送先を決める場合について説明する。
【0077】
たとえば、MFP1からジョブの転送する場合に、転送先に成り得る他のMFPが複数あり、それら複数の他のMFPと自装置の中から転送先を選択するときに、該複数の他のMFPのそれぞれについて、ジョブを転送してから印刷が実行され、その印刷物を自走式フィニッシャ40が回収してMFP1まで移動するのに要する時間、および自装置で該ジョブを実行した場合の所要時間を計算し、その計算結果に基づいて、ジョブを転送するか否かおよび転送する場合の転送先を決定する。上記計算は、各MFPの印刷速度、MFP1および他のMFPの地理的位置データ(配置データ)、自走式フィニッシャ40の現在位置、自走式フィニッシャ40の移動速度等に基づいて行う。
【0078】
図11は、印刷物を取得するまでの所要時間を計算して転送先を決定する例を示している。MFP1はユーザの情報処理端末5から受信したジョブ1を保持している。ジョブ1は後処理のあるジョブであり、印刷する総枚数は1000である。MFP1の印刷速度は50枚/分、MFP2の印刷速度は10枚/分、MFP3の印刷速度は100枚/分である。自走式フィニッシャ40はMFP2に接続されている。MFP1〜3は、いずれも空き状態で直ぐにジョブを実行できる状態にある。
【0079】
MFP1でジョブ1を実行した場合の所要時間は、自走式フィニッシャ40がMFP2からMFP1へ移動する時間と、印刷時間の合計である。移動時間は、MFP2からMFP1までの移動距離と自走式フィニッシャ40の移動速度とから求める。印刷時間は印刷枚数をMFP1の印刷速度で除して求める。
【0080】
MFP2でジョブ1を実行した場合の所要時間は、MFP2での印刷時間と、自走式フィニッシャ40がMFP2からMFP1へ移動する時間の合計である。MFP3でジョブ1を実行した場合の所要時間は、自走式フィニッシャ40がMFP3まで移動する時間と、MFP3での印刷時間と、自走式フィニッシャ40がMFP3からMFP1へ移動する時間の合計である。
【0081】
図11の例では、MFP3でジョブ1を実行する場合の所要時間が最も短いので、MFP1はMFP3にジョブ1を転送して実行させる。
【0082】
次に、複数のジョブを保持している場合に、これら複数のジョブを最も効率良く実行できるようにジョブを1または複数のMFPに分担させる場合について説明する。
【0083】
図12の例では、MFP1はユーザの情報処理端末5から受信したジョブ1〜ジョブ4を保持している。ジョブ1は後処理のあるジョブであり、印刷部数は1部である。ジョブ2〜4は後処理のないジョブであり、ジョブ2の印刷部数は100部、ジョブ3の印刷部数は100部、ジョブ4の印刷部数は500部である。MFP1の印刷速度は50枚/分、MFP2の印刷速度は10枚/分、MFP3の印刷速度は100枚/分である。自走式フィニッシャ40はMFP1〜3のいずれにも接続されていないが、MFP1の近くにある。MFP1〜3はいずれも空き状態で直ぐにジョブを実行できる状態にある。
【0084】
このとき、ジョブ1〜ジョブ4をMFP1〜MFP3の中の1または複数台に分担させて実行させる場合の分担パターンは様々に存在する。そこで、MFP1は、ジョブ1〜ジョブ4のすべての印刷物がMFP1の設置場所で受け取り可能になるまでの所要時間を、すべての分担パターン、あるいは設定(選択)した複数の分担パターンについて算出し、その算出結果に基づいて所要時間が最も短い最適な分担パターンを選択してジョブを実行させる。
【0085】
図13は、各分担パターンについて所要時間を算出した結果の一覧表の一例をしている。分担パターン1は、ジョブ1からジョブ4をすべてMFP1で実行した場合であり、ジョブ1〜ジョブ4の実行にかかる印刷時間は合計で10.02分である。自走式フィニッシャ40の移動はジョブ1を実行する際にMFP2からMFP1への移動が1回生じる。該移動の所要時間は0.5分である。すべてのジョブをMFP1で実行するので、並列処理による時間短縮はなく、この場合の合計時間は、10.02+0.5=10.52分となる。
【0086】
分担パターン2は、ジョブ1をMFP2に転送して実行し、ジョブ2、ジョブ3、ジョブ4をMFP1で実行する。この場合、ジョブ1〜ジョブ4の実行にかかる印刷時間は合計で10.01分である。自走式フィニッシャ40の移動はジョブ1を実行するためにMFP1の近くからMFP2への移動、および、ジョブ2、ジョブ3、ジョブ4を実行するためにMFP2からMFP1への移動が生じ、合計の移動時間は3分である。並列処理による時間短縮は、ジョブ1とジョブ2〜ジョブ4を並列処理可能なので、MFP1の合計印刷時間10分と、MFP2での印刷時間0.1分の重複時間(両者のうちの短い方の時間)である0.1分となる。従って、合計時間は、10.01+3−0.1=13.00分となる。
【0087】
分担パターン3は、ジョブ1、ジョブ2をMFP2に転送して実行し、ジョブ3、ジョブ4をMFP1で実行する。この場合、ジョブ1〜ジョブ4の実行にかかる印刷時間は合計で18.1分である。自走式フィニッシャ40の移動としては、ジョブ1、ジョブ2を実行するためにMFP1の近くからMFP2への移動と、ジョブ3、4を実行するためにMFP2からMFP1への移動が生じ、合計の移動時間は3分である。並列処理による時間短縮は、ジョブ1、2とジョブ3、4を並列処理可能なので、MFP1の合計印刷時間8分と、MFP2での印刷時間10.01分の重複時間(両者のうちの短い方の時間)である8分となる。従って、合計時間は、18.1+3−8=13.1分となる。
【0088】
以上のようにして、すべての分担パターンについて所要時間を計算し、最も所要時間が短い分担パターンを採用して複数のジョブを実行する。
【0089】
図12の例では、MFP2でジョブ1を、MFP3でジョブ2からジョブ4を実行させている。この場合、自走式フィニッシャ40は、MFP2に移動して印刷物を回収し、さらにMFP3に移動して印刷物を回収した後、MFP1に移動する。
【0090】
図14は、ユーザから受信したジョブの実行に関して画像形成システム2が行う処理の流れを示している。ユーザからジョブの出力先に指定された画像形成装置(MFP1)10は、該ジョブを受信し、該ジョブを他の画像形成装置10に転送するか否かを判断する(ステップS101)。転送しない場合は(ステップS101;No)、自装置(MFP1)でそのジョブを実行し、通常の印刷を行う(ステップS102)。
【0091】
ジョブを転送する場合は(ステップS101;Yes)、使用可能な他の画像形成装置10の中から転送先を決定し、転送先の画像形成装置10へ該ジョブを転送する(ステップS103)。この際、自走式フィニッシャ40に対して、転送先の画像形成装置10から該ジョブに係る印刷物を回収して画像形成装置(MFP1)10まで移動して届けるように指示する。なお、ジョブの転送先は2以上の場合もある。2以上の場合、画像形成装置10は自走式フィニッシャ40に回収順序を指示する。
【0092】
該指示を受けた自走式フィニッシャ40は、自装置の位置・接続状態を確認し、指示された転送先の画像形成装置10に接続済みでなければ(ステップS104;No)、転送先の画像形成装置10まで移動する(ステップS105)。
【0093】
自走式フィニッシャ40は、転送先の画像形成装置10に到着して接続したらその旨を、移動・回収に関する指示の送出元である画像形成装置(MFP1)10に通知するが、画像形成装置(MFP1)10は、この通知を自走式フィニッシャ40から受ける前に転送先の画像形成装置10が使用不可になったことを検知した場合は(ステップS106;Yes、
図9、
図10のようなケース)、該使用不可になった画像形成装置10の代わりにジョブを実行させる別の画像形成装置10を決定し、該別の画像形成装置10にジョブを再転送し、元の転送先の画像形成装置10にはジョブを破棄するように指示する(ステップS103)。
【0094】
転送先の画像形成装置10に自走式フィニッシャ40が接続済み、もしくは自走式フィニッシャ40が転送先に移動して接続状態になったら(ステップS104;Yes)、転送先の画像形成装置10はジョブの実行を開始する。この際、自走式フィニッシャ40は、後処理が必要であれば、画像形成装置10から排出される印刷物を受入れ、これに後処理を施して自装置内に蓄積し、後処理が不要ならば画像形成装置10から排出される印刷物を受け入れてそのまま自装置内に蓄積する。
【0095】
印刷が完了し(ステップS107;Yes)、自走式フィニッシャ40がその印刷物を回収したら(ステップS108)、自走式フィニッシャ40は、さらに他の画像形成装置10にジョブが転送されているか否かを判断し(ステップS109)、他の画像形成装置10にジョブが転送されている場合は(ステップS109;Yes)、自走式フィニッシャ40は該他の転送先の画像形成装置10へ移動する(ステップS110、
図6のようなケース)。他の転送先についてもステップS104以降の処理を行う。
【0096】
他の画像形成装置10にジョブが転送されていなければ、すなわち、画像形成装置(MFP1)10から指示された回収先をすべて回って印刷物の回収が完了したならば(ステップS109;No)、自走式フィニッシャ40は、転送元の画像形成装置(MFP1)10へ移動する(ステップS111)。自走式フィニッシャ40に蓄積されている印刷物をユーザが取り出して受け取ったら(ステップS112)、本処理は終了する。
【0097】
このように、本実施の形態に係る画像形成システム2では、ユーザがジョブの出力先に指定した画像形成装置10が、そのジョブを他の画像形成装置10に転送して実行させた場合でも、該ジョブに係る印刷物がユーザの指定した画像形成装置10の所に自走式フィニッシャ40によって届けられるので、ユーザは印刷物を容易に回収することができる。また、画像形成システム2の中から最適な1または2以上の画像形成装置10を選択してジョブを実行させるので、ユーザが印刷物を最も早く得ることができるように画像形成システム2全体を効率的に利用することができる。
【0098】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0099】
実施の形態では、ユーザの情報処理端末5から画像形成装置10がジョブを受信する例を示し、ユーザの情報処理端末5からジョブを受信した画像形成装置10をユーザが出力先に指定した画像形成装置10であるとして説明したが、サーバを介してジョブを受信してもかまわない。
【0100】
たとえば、セキュリティ印刷のように、ユーザは情報処理端末5からサーバにジョブを送信し、該ユーザが任意の画像形成装置10に認証してログインしたとき等にサーバからその画像形成装置10にジョブを転送して実行する構成の場合、ユーザのログインした画像形成装置10が該ユーザがジョブの出力先に指定した画像形成装置10になる。このような場合、ログインしたユーザのジョブがサーバに複数溜まっていれば、一度にその複数のジョブがサーバからユーザのログインした画像形成装置10に送信されるので、
図12、
図13のような状況、すなわち、画像形成装置10が複数のジョブについて転送の要否を判断するといった状況が生じる。
【0101】
自走式フィニッシャ40は、後処理を施す機能を備えなくてもよい。すなわち、画像形成装置10から排出された印刷物を受け入れて内部に蓄える機能、および、任意の目的地に向けて自走して移動する機能を備えていれば、後処理に関する機能は無くてもよい。