(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
<<1.第1の実施形態>>
<1.1.構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る試験装置1の一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係る試験装置1は、試験槽である本体3および蓋部材4からなる試験容器2、支持部材5(5A、5B)、駆動ローラ6、モータ7、駆動ベルト8、中間プーリ9、駆動プーリ10、ファン13、アーム15、支持軸(水平軸)16、およびカウンターウェイト17を備える。支持部材5、駆動ローラ6およびファン13は、試験容器2の内側に設けられる。以下、各構成要素について説明する。
【0023】
試験容器2は、本体3および蓋部材4により密閉される空間を有する。具体的には、本体3の上部に形成された開口部を蓋部材4が開閉するように、試験容器2が設けられる。また、本実施形態に係る本体3の上部にはシール材4Aが設けられる。本体3は蓋部材4に対してシール材4Aを介して当接する。シール材4Aとしては、例えばパッキンなど、公知のシール材が使用される。また、シール材4Aは、本体3ではなく、蓋部材4に設けられてもよい。または、シール材は、本体3および蓋部材4の双方に設けられてもよい。
【0024】
本体3の内側には、一対の支持部材5が設けられている。この一対の支持部材5は、本体3の底部14から起立して、
図1に示すY方向に沿って対向して設けられる。一対の支持部材5は、試験ローラ11の両端を支持する。具体的には、一対の支持部材5は、試験ローラ11の支持軸を保持部12で保持することにより、試験ローラ11の両端を支持する。このとき、試験ローラ11が駆動ローラ6に当接する高さ(Z軸方向における位置)となるように支持部材5が調整される。これにより、試験ローラ11が駆動ローラ6から荷重および回転力を受けることができる。なお、保持部12の構造は、試験ローラ11の支持軸を保持することが可能である構造であれば特に限定されない。
【0025】
本実施形態において、一対の支持部材5は、1組、または2組設けられる。つまり、本実施形態に係る試験装置1は、一回の試験において、1本または2本のローラについて試験を行うことができる。例えば、
図1に示した例においては、2組の一対の支持部材5A、5Aが、試験ローラ11A、11Aをそれぞれ支持している。なお、一対の支持部材5の配置例については後述する。
【0026】
駆動ローラ6は、試験ローラ11に対して荷重を与えながら試験ローラ11を回転させるローラである。例えば、
図1に示した例においては、駆動ローラ6は、モータ7により生成された駆動力を、同一の回転軸を有する駆動プーリ10を介して受け取り、当該駆動力を用いて試験ローラ11を回転させる。駆動力は、駆動プーリ10に対して、駆動ベルト8を介して伝達される。中間プーリ9は駆動ベルト8にかかる駆動方向の張力を増加させるために設けられる。これにより駆動力の伝達効率が向上する。
【0027】
なお、駆動ローラ6により試験ローラ11に対して与えられる荷重は、合計で、0〜4kN程度である。例えば、2本の試験ローラ11に対して試験を行う場合、当該2本の試験ローラ11が受ける最大荷重は、それぞれ約1.8kN(合計3.6kN)である。これらの最大荷重は、実際のベルトコンベヤの操業時においてローラに与えられる荷重の約1.5倍〜3倍程度の荷重である。また、駆動ローラ6による試験ローラ11の回転に係る回転数も、実際のベルトコンベヤの操業時よりも大きく設定することが可能である。そのため、本実施形態に係る試験装置1を用いることにより、試験ローラ11の寿命についての加速試験を行うことが可能である。したがって、試験ローラ11の操業環境における寿命を短時間で評価することができる。
【0028】
また、本実施形態に係る駆動ローラ6は、蓋部材4の内側に設けられる。蓋部材4が本体3に当接することにより試験容器2が密閉状態となっているときに、駆動ローラ6は試験ローラ11に対して所定の荷重を与える。一方、試験容器2が開放状態となっているときは、駆動ローラ6は蓋部材4に追従するので、駆動ローラ6は試験ローラ11から離反する。これにより、試験ローラ11の設置または取り外しを行うことができる。
【0029】
また、本実施形態に係る駆動ローラ6および駆動プーリ10は、アーム15に支持されている。
図2は、本実施形態に係るアーム15の回動による蓋部材4の開閉動作の一例を示す概略図である。
図2に示すように、アーム15を支持軸16まわりに回転することにより、蓋部材4が回動して本体3の上方を開閉する。
【0030】
また、アーム15における蓋部材4の反対側にはカウンターウェイト17が設けられている。カウンターウェイト17の重量を調整すると、
図2に示すように梃子の原理により、蓋部材4に設けられている駆動ローラ6の試験ローラ11に対して与える荷重が変化する。例えば、カウンターウェイト17の重量を増加させると、試験ローラ11に対して与える駆動ローラ6の荷重が減少する。このように、カウンターウェイト17の重量を調節することにより、試験ローラ11に対して与える駆動ローラ6の荷重を調整することが可能である。
【0031】
図3は、カウンターウェイト17の重量に対する試験ローラ11に与える荷重の関係を示すグラフである。
図3のグラフに示すように、カウンターウェイト17の重量を増加させるにしたがって、試験ローラ11に与える駆動ローラ6の荷重が線形に減少することが分かる。そのため、カウンターウェイト17の重量を変更するだけで、試験ローラ11に与える駆動ローラ6の荷重を容易に調整することができる。
【0032】
なお、本実施形態に係る試験装置1においては、カウンターウェイト17の重量の変更により試験ローラ11に与える駆動ローラ6の荷重を調整するが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、駆動ローラ6に直接ウェイトを吊り下げたり、駆動ローラ6が設けられた蓋部材4を鉛直上方に引っ張り上げたりすることにより、駆動ローラ6の荷重を調整してもよい。
【0033】
また、アーム15の形状については特に限定されない。本実施形態に係るアーム15は平行に伸びる2本のビームにより構成され、2本のビームの間に蓋部材4の駆動ローラ6の収容部分が位置するように、蓋部材4が当該2本のビームに支持される。これにより、蓋部材4を安定的に回動させることが可能である。また、この場合、カウンターウェイト17は、2本のビームの間を架け渡すように設けられる。これにより、試験ローラ11に対して与える駆動ローラ6の荷重のY軸方向における分布の偏りを抑えることができる。
【0034】
送風機構を構成する送風機の一例であるファン13は、試験容器2の内側に設けられる。ファン13は、
図2に示すように、試験容器2の内側に散布される粉塵を試験容器2の内側において撹拌させる機能を有する。なお、本実施形態に係る送風機としてファン13を例に説明するが、かかる送風機はファンに限定されない。例えば、送風機構は、ブロワ等の送風機またはポンプ等の圧縮機など、気体および粉塵を撹拌させる流体機械であれば特に限定されない。本実施形態においては粉塵を試験容器2の内側において舞い散らす程度の能力があれば十分であるため、ファン13が送風機として採用される。
【0035】
なお、底部14に溜まった粉塵を効率よく試験容器2の内側において撹拌させるため、ファン13は試験容器2の底部近傍に設けられることが好ましい。また、ファン13は単数または複数設けられてもよい。例えば、詳しくは後述するが、ファン13が2台設けられる、水平方向において、試験容器2の対角位置に設けられることが好ましい。これにより、より効率よく粉塵を試験容器2の内側において撹拌させることができる。
【0036】
また、試験容器2の内側に散布される粉塵は、実際のベルトコンベヤの操業環境に存在する原料の粉塵であることが好ましい。試験環境をより実際の操業環境に模擬させることができるからである。そのため、粉塵の種類は、ベルトコンベヤが実際に運搬し得る原料であることが好ましい。当該原料とは、例えば、鉄鉱石、焼結鉱、コークス、石炭、または石灰等である。また、砂礫または破砕ガラス(カレット)など、ベルトコンベヤの運搬物そのものが粉体である場合であっても、当該原料は本実施形態に係る粉塵となり得る。また、本実施形態に係る試験装置1に用いられる粉塵の粒径は特に限定されないが、実際の操業環境に存在する粉塵の粒径範囲である10μm〜1000μm程度であることが好ましい。
【0037】
なお、上述した粉塵は、試験装置1による試験の開始前に試験容器2の内側に散布される。例えば試験容器2の蓋部材4が外れている際に、当該粉塵が本体3の上方から投入されてもよい。また、本体3または蓋部材4の一部に、粉塵を投入するための投入口が設けられてもよい。当該投入口の大きさは、粉塵を試験容器2の内側に投入するのに十分な大きさであればよい。これにより、粉塵を試験容器2の内側に散布した際に舞いあがる粉塵が、試験容器2の外部に漏出することを抑えることができる。また、試験中においても試験容器2の内側に粉塵を散布することが可能である。
【0038】
以上、本実施形態に係る試験装置1の構成について説明した。次に、本実施形態に係る試験装置1を用いた試験ローラ11の試験方法について説明する。まず、密閉された試験容器2の内側に設けられる少なくとも一対の支持部材5を用いて、少なくとも一の試験ローラ11を支持する。その後、駆動ローラ6を試験ローラ11に当接させる。そして、試験容器2の内側の空間においてファン13を用いて粉塵を撹拌させながら、駆動ローラ6により試験ローラ11に荷重を与えつつ試験ローラ11を回転させる。
【0039】
以上より、本実施形態に係る試験装置1を用いて、実際の操業環境に近い環境における試験ローラの寿命評価を行うことができる。当該試験装置1を用いた試験方法によって、より実際の操業状態を反映したローラの点検基準を整備することが可能となる。
【0040】
<1.2.支持部材およびファンの配置例>
次に、本実施形態に係る支持部材5およびファン13の配置例について説明する。支持部材5は、試験対象となる試験ローラ11の数および種類に応じて、適宜最適な位置に設けられる。また、ファン13は、試験容器2の内部に散布された粉塵を、試験容器2の内部の空間に最大限分散させることができるように設けられる。
【0041】
図4は、本実施形態に係る試験容器2の内側における支持部材5およびファン13の配置例を示す概略図である。なお、
図4は、
図1に示すIV−IV切断線における試験容器2の断面図である。
【0042】
図4に示した例は、一回の試験において、2本のローラについて試験を行う場合の支持部材5Aおよび試験ローラ11Aの配置例である。
図4に示すように、XY平面(水平面)においては、試験ローラ11A、11Aが駆動ローラ6(二点鎖線)の回転軸(一点鎖線)を通過する鉛直面に対して対称となる位置に、2つの一対の支持部材5Aが並設される。このとき、支持部材5Aは、軸受101の軸孔を貫通して外方に延びる試験ローラ11Aの支持軸102を保持部12で保持する。このように支持部材5Aを設けることにより、試験ローラ11A、11Aは、駆動ローラ6から均等に荷重を受けることができる。したがって、一回の試験において2本のローラについて同条件で試験を行うことができる。これにより、例えば、異なる2本のローラの寿命に関する性能の比較試験を行うことが可能である。
【0043】
また
図4に示すように、本実施形態に係るファン13は2台設けられ、それぞれ本体3の対角位置に設けられている。また、ファン13の各々の送風方向は、X軸方向に沿って相対し、かつ、本体3の内壁に沿う方向となっている。これにより、
図4に示すように、粉塵の撹拌方向は、本体3の内壁に沿って時計回り(または反時計回り)となる。したがって、本体3の内側の空間において粉塵を最大限分散させることができる。よって、実際の操業環境をより忠実に再現することができる。
【0044】
なお、本実施形態に係る本体3のXY平面における形状は矩形としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、本体3のXY平面における形状が円または楕円等である場合、2台のファン13は、本体3の内壁において最も遠くなる位置において、送風方向が相対し、かつ本体3の内壁に沿う方向であるように設けられることが好ましい。これにより、本体3の内側の空間において粉塵を最大限分散させることができる。
【0045】
また、本実施形態に係る支持部材5の配置は、
図4に示す例に限定されない。
図5は、本実施形態に係る試験容器2の内側における支持部材5の配置に関する第1の変形例を示す概略図である。
図5に示した例は、一回の試験において、1本のローラについて試験を行う場合の支持部材5Bおよび試験ローラ11Bの配置例である。
図5に示すように、試験ローラ11Bが駆動ローラ6の鉛直下方となる位置に、支持部材5Bが設けられる。これにより、1本の試験ローラ11Bについても同様に試験を行うことができる。なお、本変形例における支持部材5Bは支持部材5Aとは別の部材であるとしたが、支持部材5AをX軸方向に沿って移動させることにより、1本の試験ローラ11Bを支持してもよい。この場合、試験ローラ11Bを支持するための高さは、
図1に示すように、試験ローラ11Aを支持するための高さとは異なる。そのため、支持部材5Aの保持部12は、試験ローラ11Aの保持部12に対する支持高さが調整可能であることが好ましい。
【0046】
また、
図4および
図5に示した試験ローラ11はリターンローラであるが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、本実施形態に係る試験装置1は、キャリアローラにも適用可能である。
図6は、本実施形態に係る試験容器2の内側における支持部材5の配置に関する第2の変形例を示す概略図である。
図6に示した例は、一回の試験において、2本のキャリアローラについて試験を行う場合の支持部材5Aおよびキャリアローラ11Cの配置例である。一対の支持部材5Aは、
図6の矢印に示すように、駆動ローラ6の回転軸に平行な方向に移動可能に設けられる。例えば、
図6に示すように、長手方向(Y軸方向)の径がリターンローラより短いキャリアローラ11Cの場合、一対の支持部材5Aは互いに近接する位置に設けられる。これにより、リターンローラおよびキャリアローラのいずれかを支持する際においても、支持部材5Aを設ける位置を変えることにより、同一の支持部材5Aを用いることができる。なお、リターンローラを支持する支持部材とキャリアローラを支持する支持部材は、それぞれ別の部材が用いられてもよい。
【0047】
<1.3.試験に関するデータ>
次に、本実施形態に係る試験装置1において測定されるデータ、および測定データを取得するために用いられるセンサについて説明する。本実施形態に係る試験装置1により試験される試験ローラ11は、試験中においてその状態は逐次的に変化すると考えられる。そのため、試験中の試験ローラ11に関するデータを測定する測定機構が試験装置1に設けられることが好ましい。
【0048】
測定機構は、例えば、試験ローラ11の振動を測定するための振動センサであってもよい。この場合、当該振動センサは、例えば、試験ローラ11を支持する支持部材5に設けられてもよい。
図1に示す例では、支持部材5A、5Bにそれぞれ振動センサ50が設けられている。試験ローラ11の振動は支持部材5に伝達するためである。この振動センサは試験ローラ11の振動を測定し、振動値を出力する。この振動値は、試験中において異常が発生していないときは定周期の値を示すが、軸受の破損等が生じた場合においては、イレギュラーな振動が生じるため、異常値を示す。すなわち、振動値を観測することにより、試験ローラ11の破損が生じたタイミングを把握することができる。
【0049】
また、測定機構は、例えば、試験ローラ11の支持軸102の温度(軸温度)を測定する温度計であってもよい。この場合、当該温度計は、例えば、支持軸102に設けられてもよい。この軸温度は、試験中において異常が発生していない時は定周期の値を示す。しかし、軸受の破損等が生じた場合においては、軸受による潤滑効果が低減するため、摩擦により軸受の温度が上昇する。この上昇した温度が支持軸102に伝達するため、軸温度は異常値を示す。すなわち、軸温度を観測することにより、試験ローラ11の破損が生じたタイミングを把握することができる。
【0050】
さらに、測定機構は、例えば、試験容器2の内側の温度(容器温度)を測定する温度計、または駆動ローラ6を駆動させるモータ7の電流値を測定する電流計であってもよい。これらの容器温度および電流値も、試験ローラ11の破損のタイミングを境に変化し得る。
【0051】
なお、上述した測定機構から得られる各種データは、不図示の情報処理装置に出力される。当該情報処理装置は、例えば、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの実行において使用するプログラムまたは、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶するRAM(Random Access Memory)、データ等を記憶するHDD(Hard Disk Drive)装置などのデータ格納用記憶装置等で構成される。当該情報処理装置は、例えばコンピュータであってもよい。
【0052】
上述した情報処理装置は、各測定機構から出力されたデータを取得し、記憶装置等に蓄積する。蓄積されたデータは、ディスプレイまたはプリンタ等の出力装置により外部に出力されてもよい。これにより、試験中の試験ローラ11に関するデータを得ることができる。すなわち、実際の操業環境に近い環境における試験ローラ11の寿命について定量的な評価を行うことができる。また、情報処理装置は、蓄積されたデータの示す値に応じた制御(例えば、データが異常値を示した際に警告を出力する制御等)を行ってもよい。これにより、試験中に異常が生じた際に、試験装置1の試験の中止処理などの対応を取ることができる。
【0053】
以上、本発明の第1の実施形態に係る試験装置1について説明した。
【0054】
<<2.第2の実施形態>>
次に、本発明の第2の実施形態に係る試験装置100について説明する。本実施形態に係る試験装置100には、上述した第1の実施形態に係る試験装置1に対して、さらに散水用設備が追加される。
【0055】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る試験装置100の一例を示す概略構成図である。
図7に示すように、本実施形態に係る試験装置100は、試験槽である本体3および蓋部材4からなる試験容器200、支持部材5(5A、5B)、駆動ローラ6、モータ7、駆動ベルト8、中間プーリ9、駆動プーリ10、ファン13、アーム15、支持軸(水平軸)16、およびカウンターウェイト17を備える。また、本実施形態に係る試験装置100は、ノズル18、回収スロープ19、ポンプ20および配管21をさらに備える。また、本体3の底部14の一部または全部には、開口部14aがさらに設けられる。また、
図8は、本実施形態に係る試験容器200の平面視における概略構成の一例を示す図である。以下、
図7および
図8を参照しながら、各構成要素について説明する。なお、本実施形態に係る試験装置100の構成要素のうち、第1の実施形態に係る試験装置1と共通の構成要素については説明を省略する。
【0056】
ノズル18は、試験容器200の本体3の内壁に設けられる。ノズル18は、ポンプ20から供給される水を試験容器200の内側に対して散布する。そのため、ノズル18の吐出口18aが本体3の内側に向くように、ノズル18が設けられる。また、ノズル18の設置数については特に限定されない。例えば、
図8に示すように、複数のノズル18が、試験ローラ11Aの長手方向(Y軸方向)に沿って、本体3の内壁に並んで設けられてもよい。これにより、試験ローラ11Aの全体にわたって水が散布されやすくなる。ノズル18の吐出口18aの大きさについては特に限定されないが、ノズル18から散布される水は粉塵を大量に含むため、ノズル18の吐出口18aの大きさは、粉塵による吐出口18aの詰まりが生じない程度の大きさであることが好ましい。また、ノズル18の吐出口18aの形状についても特に限定されないが、試験ローラ11Aの全体にわたって水が散布されるような形状であることが好ましい。例えば、ノズル18の吐出口18aの形状は、水平方向に延びるスリット形状であってもよい。
【0057】
ポンプ20は、本体3の底部に溜まる水を回収し、ノズル18に当該水を供給する。具体的には、ポンプ20は、底部14の開口部14aから回収スロープ19を通過して貯められた水を回収し、配管21を介してノズル18に当該水を供給する。底部14に溜まった水を開口部14aを通過して回収スロープ19へと流すために、底部14には、開口部14aが最も低くなるような傾斜が設けられていてもよい。ポンプ20の性能については特に限定されないが、粉塵が含まれる水を滞りなく回収し、かつノズル18から散布される水が試験容器200の内側に向かって飛翔可能である程度の吐出圧力を十分維持できる性能をポンプ20が有することが好ましい。また、
図7および
図8に示した例では、ポンプ20は本体3の外壁部に設けられているが、ポンプ20の設置位置は、ノズル18に水を供給できれば特に限定されない。
【0058】
以上、本発明の第2の実施形態に係る試験装置100の構成について説明した。かかる構成により、ノズル18から試験容器200の内側に向かって水を散布することができる。また、散布された水は底部14の開口部14aおよび回収スロープ19を通過してポンプ20に回収される。回収された水は、ノズル18に供給され、再度試験容器200の内側に向かって散布される。すなわち、試験容器200の内部に溜められた水は試験装置100を循環する。
【0059】
ノズル18から水を散布する際には、ファン13により試験容器200の内側に散布された粉塵も循環する。そして、試験容器200の内側に散布された粉塵は水に取り込まれてポンプ20に回収される。その後、粉塵に取り込まれた水はスラリーとしてノズル18から吐出される。これにより、試験容器200の内側において、雨天時の操業環境を再現することができる。すなわち、雨滴に粉塵が混入して空間を浮遊する環境を再現することができる。
【0060】
なお、配管21の一部には、少なくとも三方のT字配管、および水の循環方向を調整するバルブが一または複数設けられてもよい。これにより、試験容器200の内側に散布される水の入れ替えを行うことができる。また、配管21のその他の配設方法は特に限定されない。
【実施例】
【0061】
次に、本発明の実施例について説明する。本発明の効果を確認するために、本実施例では、ローラの試験装置による試験結果の有効性について検証した。なお、以下の実施例は本発明の効果を検証するために行ったものに過ぎず、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
試験ローラとして、2つの異なるメーカ(メーカAおよびメーカB)により製造された試験ローラ(以下、それぞれローラAおよびローラBと称する)を用意した。本実施例に係る各ローラは、ともにリターンローラである。ローラの寸法については、外径がφ139.8(mm)、ロール幅が1300(mm)である。その後、ローラAおよびローラBのそれぞれの両端を一対の支持部材のそれぞれに取り付けた。そして、ローラAおよびローラBに対して同一の荷重が駆動ローラから負荷されるように、支持部材の設置位置を調整した。
【0063】
ローラAおよびローラBの設置後、蓋部材により試験容器を密閉し、試験容器の内側に粉塵を散布した。当該粉塵の原料は返鉱系ダストであり、当該返鉱系ダストの粒径はおおむね1mm以下である。そして、ファンを回転させて粉塵を試験容器の内側において撹拌させたあとに、駆動ローラの回転を開始した。駆動ローラの回転に伴うローラAおよびローラBの回転の開始時刻を試験開始時刻とした。試験中、各ローラの支持軸に設置された温度計および支持部材に設置された振動センサにより、軸温度および振動値が計測された。
【0064】
試験装置は昼夜連続して稼働した。試験の開始後、試験装置から異音を検知するまでの間、約2500時間試験が連続的に行われた。
【0065】
図9は、各ローラに係る軸温度および振動値の変化を示すグラフである。
図9に示すグラフにおいて、曲線1001はローラAの振動値を、曲線1002はローラBの振動値を、曲線1011はローラAの軸温度を、曲線1012はローラBの軸温度を示している。
図9のグラフに示すように、ローラBの振動値1002は試験終了まで一定の値を示しているが、ローラAの振動値1001は、試験開始後2200時間を境に急激に変化を見せている。また、ローラAの軸温度1011とローラBの軸温度1012との乖離が、試験開始後2200時間を境に大きくなっている。したがって、試験開始後2200時間の時点において、ローラAの破損が生じていることが考えられる。
【0066】
試験終了後、本発明者らはローラAおよびローラBの破損状況、特に各ローラの軸受の状態について調査した。その結果、ローラAが有する2つの軸受のうち1つについては、ベアリングが軸受の保持器から脱落しており、また、ベアリングおよび軸受の軌道輪の内部は粉塵により汚染されていた。もう1つの軸受については、ベアリングの脱落は見られなかったが、軌道輪の内部が汚染されていたことが確認された。一方で、ローラBの軸受は破損しておらず、粉塵による汚染の程度もローラAの軸受と比較して軽微だった。以上の結果から、粉塵の軸受の内部への侵入が、軸受の破損を招いたことが示された。これは、粉塵が軸受の内部に侵入することによりベアリングの潤滑不良が生じるためであると考えられる。
【0067】
以上、本実施例の結果から、上記実施形態に係る試験装置を用いることにより、ローラの破損原因である軸受の内部への粉塵の侵入を再現することが可能であることが示された。また、振動値および軸温度を測定することにより、ローラの損傷状態を把握することが可能であることが示された。
【0068】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0069】
例えば、上記実施形態に示したローラの試験方法は、上記実施形態に係るローラの試験装置を用いて行われたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、密閉された試験容器の内側に少なくとも一対の支持部材を設け、当該支持部材を用いて試験ローラを支持し、当該支持部材に支持された試験ローラに駆動ローラを当接させ、試験容器の内側に散布される粉塵をファン等の送風機構を用いて試験容器の内側において撹拌させながら、駆動ローラを用いて試験ローラに荷重を与えながら試験ローラを回転させることが可能であれば、上記実施形態に係るローラの試験装置の構成は限定されない。
【0070】
また、上記実施形態に示したローラの試験装置は、リターンローラおよびキャリアローラの寿命の評価に用いられるとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、粉塵環境に配置されるベルトコンベヤを構成する他のローラの寿命の評価試験についても、上記実施形態に示したローラの試験装置は適用可能である。