特許第6790645号(P6790645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6790645-軸受および軸受の異物噛み込み防止方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790645
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】軸受および軸受の異物噛み込み防止方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/58 20060101AFI20201116BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20201116BHJP
   F16C 33/64 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   F16C33/58
   F16C19/06
   F16C33/64
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-183381(P2016-183381)
(22)【出願日】2016年9月20日
(65)【公開番号】特開2018-48678(P2018-48678A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 淳也
【審査官】 古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−024024(JP,A)
【文献】 特開2016−148417(JP,A)
【文献】 特開2013−194856(JP,A)
【文献】 特開2017−008964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00−19/56
F16C 33/30−33/66
F16C 33/72−33/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軌道溝を有する外輪と、
第2の軌道溝を有する内輪と、
前記第1の軌道溝と前記第2の軌道溝とに挟持されて転動する複数の転動体と、
複数の前記転動体を所定の間隔で保持する保持器と
を有し、
前記外輪の前記第1の軌道溝より外側の内周面または前記内輪の前記第2の軌道溝より外側の外周面の少なくとも一方に、異物が入るよりも出にくい形状の戻り防止溝を有し、
前記戻り防止溝の断面がオーバーハング形状である
ことを特徴とする軸受。
【請求項2】
前記戻り防止溝の内面に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項に記載の軸受。
【請求項3】
前記戻り防止溝が溝内の異物が外部に離脱することを阻害する弁体を有することを特徴とする請求項1または2に記載の軸受。
【請求項4】
第1の軌道溝を有する外輪と、
第2の軌道溝を有する内輪と、
前記第1の軌道溝と前記第2の軌道溝とに挟持されて転動する複数の転動体と、
複数の前記転動体を所定の間隔で保持する保持器と
を有し、
前記外輪の前記第1の軌道溝より外側の内周面または前記内輪の前記第2の軌道溝より外側の外周面の少なくとも一方に、異物が入るよりも出にくい形状の戻り防止溝を有し、
前記戻り防止溝の内面に凹凸が形成されている
ことを特徴とする軸受。
【請求項5】
前記戻り防止溝が溝内の異物が外部に離脱することを阻害する弁体を有することを特徴とする請求項3に記載の軸受。
【請求項6】
第1の軌道溝を有する外輪と、
第2の軌道溝を有する内輪と、
前記第1の軌道溝と前記第2の軌道溝とに挟持されて転動する複数の転動体と、
複数の前記転動体を所定の間隔で保持する保持器と
を有し、
前記外輪の前記第1の軌道溝より外側の内周面または前記内輪の前記第2の軌道溝より外側の外周面の少なくとも一方に、異物が入るよりも出にくい形状の戻り防止溝を有し、
前記戻り防止溝が溝内の異物が外部に離脱することを阻害する弁体を有する
ことを特徴とする軸受。
【請求項7】
第1の軌道溝を有する外輪と、
第2の軌道溝を有する内輪と、
前記第1の軌道溝と前記第2の軌道溝とに挟持されて転動する複数の転動体と、
複数の前記転動体を所定の間隔で保持する保持器と
を有する軸受の、
前記外輪の前記第1の軌道溝より外側の内周面または前記内輪の前記第2の軌道溝より外側の外周面の少なくとも一方に、異物が入るよりも出にくい形状の戻り防止溝を設け、
前記戻り防止溝の断面をオーバーハング形状とする
ことを特徴とする軸受の異物噛み込み防止方法。
【請求項8】
前記戻り防止溝の内面に凹凸を形成することを特徴とする請求項に記載の軸受の異物噛み込み防止方法。
【請求項9】
前記戻り防止溝が溝内の異物が外部に離脱することを阻害する弁体を設けることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の軸受の異物噛み込み防止方法。
【請求項10】
第1の軌道溝を有する外輪と、
第2の軌道溝を有する内輪と、
前記第1の軌道溝と前記第2の軌道溝とに挟持されて転動する複数の転動体と、
複数の前記転動体を所定の間隔で保持する保持器と
を有する軸受に、
前記外輪の前記第1の軌道溝より外側の内周面または前記内輪の前記第2の軌道溝より外側の外周面の少なくとも一方に、異物が入るよりも出にくい形状の戻り防止溝を形成し、
前記戻り防止溝の断面をオーバーハング形状とする
ことを特徴とする軸受の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受および軸受の異物噛み込み防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受が劣化する原因の一つに,軸受の外部や内部で発生した微粒粉等の異物が,転動体と外輪や内輪に設けられた軌道溝の間に入り込み、転動体や軌道溝に傷がつき、表面剥離の末摺動悪化になることが知られている。これを改善する手法が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、軸受用の軌道輪に中心軸と平行または所定角度傾いた溝を設け、当該溝に軟質部材を埋め込む方法が開示されている。この方法によれば、転動体の周面に付着した異物が、軟質部材に転移して埋没するため、転動体と軌道輪との間への異物の噛み込みを防止することができる。
【0004】
また特許文献2には、転動体であるボールを保持する保持器に、保持器外部につながる溝を設けた玉軸受の技術が開示されている。この技術によれば、溝を流動する潤滑オイルが、ボールに付着した異物を外部に排出するため、ボールと軌道輪との間への異物の噛み込みを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−071006号公報
【特許文献2】特開2013−119896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1の技術では、軸方向に溝が切られているため、転動体が溝を通過するたびに振動が発生し、この振動によって転動体や軸が摩耗していくという問題がある。
【0007】
また特許文献2の技術では、溝の角部に荷重が集中し玉が摩耗しやすいという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、転動体を摩耗させずに転動体と軌道溝との間への異物の噛み込みを防止する軸受を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の軸受は、第1の軌道溝を有する外輪と、第2の軌道溝を有する内輪と、第1の軌道溝と第2の軌道溝とに挟持されて転動する複数の転動体と、複数の転動体を所定の間隔で保持する保持器とを有する。そして、外輪の第1の軌道溝より外側の内周面または内輪の第2の軌道溝より外側の外周面の少なくとも一方に、異物が侵入するよりも放出されにくい形状の戻り防止溝を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果は、転動体を摩耗させずに転動体と軌道溝との間への異物の噛み込みを防止する軸受を提供できることである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態を示す部分断面図である。
図2】第1の実施形態を示す断面図である。
図3】第2の実施形態示す断面図である。
図4】第3の実施形態を断面図である。
図5】第4の実施形態を示す断面図である。
図6】第5の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお各図面の同様の構成要素には同じ番号を付し、説明を省略する場合がある。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の軸受の一例を示す部分断面図である。また、図2は、図1のA−A´における断面図である。軸受は、第1の軌道溝11を有する外輪10と、第2の軌道溝21を有する内輪20と、第1の軌道溝11と第2の軌道溝とに挟持されて転動する複数の転動体30と、複数の転動体30を所定の間隔で保持する保持器40とを有する。そして、外輪10の第1の軌道溝11より外側の内周面または内輪20の第2の軌道溝21より外側の外周面の少なくとも一方に、異物が侵入するよりも放出されにくい形状の戻り防止溝50を有する。戻り防止溝50は、例えば、外輪の内周面または内輪の外周面にそって周回する円周状に形成することができるが、円周が途中で途切れるような断続的な形状で形成されていてもよい。
【0014】
図1図2の例では、戻り防止溝50が開口部より底部の幅が広くなる断面形状、すなわちオーバーハング形状の断面を有している。このような断面では一度戻り防止溝50に侵入した異物は、オーバーハング形状の内壁に阻まれて戻り防止溝50から離脱して外部に放出されることが困難になる。このため、異物が軌道面に到達することが妨げられる。また、転動体側から外輪10の内周面や、内輪20の外周面に放出された異物も、戻り防止溝に捕捉されて、転動体30側に戻り難くなる。なおこのようなオーバーハング形状の戻り防止溝50は、例えば、切削や鋳造によって作製することが可能である。
【0015】
以上説明したように、本実施形態によれば、軸受に異物が噛み込むことを効率よく防止できる。また、軌道面や保持器に突起部がないため、異物噛み込み防止のために転動体の摩耗を増大させることがない。
【0016】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態を示す断面図である。本実施形態の軸受は、外輪10の内周面にだけ戻り防止溝を設けている。他の構成は第1の実施形態と同様である。このように、外輪10の内周面、内輪の外周面のどちらか一方にだけ、戻り防止溝50を設けても良い。また、図3のように戻り防止溝50を転動体の両側に設けずに、片側だけに設けても良い。戻り防止溝50の数を減らすことで、効果が低下する代わりに、製造時間、製造コストが削減できる。
【0017】
以上説明したように、本実施形態によれば、安価に異物噛み込み防止機能を有する軸受を作製できる。
【0018】
(第3の実施形態)
図4は第3の実施形態を示す断面図である。本実施形態の軸受の戻り防止溝50aは、内面に凹凸を有している。この戻り防止溝50aに異物が侵入すると、異物が凹凸に捉えられて移動が阻害され、戻り防止溝50aから外部に放出され難い。このため、第1の実施形態と同様に、軸受の異物の噛み込みを防止することができる。
【0019】
このような凹凸形状は、例えば戻り防止溝50a以外の部分をマスキングして、サンドブラストを行ったり、化学エッチングを行ったり、微粒子を付着させたりして形成することができる。
【0020】
(第4の実施形態)
図5は、第4の実施形態を示す断面図である。本実施形態の軸受は、開口部近傍に弁体51を有する戻り防止溝50bを有している。弁体51は、いわゆる逆止弁と同様な働きをするものであり、異物の侵入は許容し、放出は制限する。
【0021】
このような弁体51は、例えば戻り防止溝50b内にゴム等で形成された膜状の部材を接着することで形成することができる。
【0022】
なお図5では戻り防止溝50bの断面を第2の実施形態と同様のオーバーハング形状の例を描いているが、第3の実施形態と同様の凹凸形状を組み合わせても良い。また戻り防止溝50bを設ける場所や数も、適宜選択することが可能である。
【0023】
(第5の実施形態)
図6は、第5の実施形態を示す断面図である。本実施形態の軸受は、転動体がコロ30dである。第1から第4の実施形態では軸受が玉軸受である例を用いて説明したが、転動体がコロであっても、まったく同様にこれらの実施形態を適用し、同様の効果を得ることが可能である。同様に円錐コロ軸受等、形状の異なる軸受に対してもこれらの実施形態を適用することが可能である。
【0024】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
10 外輪
11 第1の軌道溝
20 内輪
21 第2の軌道溝
30 転動体
40 保持器
50 戻り防止溝
51 弁体
図1
図2
図3
図4
図5
図6