特許第6790670号(P6790670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790670
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】オイルシール保護具
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/00 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   F16J15/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-188313(P2016-188313)
(22)【出願日】2016年9月27日
(65)【公開番号】特開2018-53961(P2018-53961A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】岩下 奨
(72)【発明者】
【氏名】柏木 聡
(72)【発明者】
【氏名】石原 信吾
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−179029(JP,U)
【文献】 特開平04−348826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルシールにシャフトを挿通させる際に前記オイルシールを保護するオイルシール保護具であって、
前記オイルシールに予め挿通される保護具本体と、
前記保護具本体に出没自在に設けられるガイドピンと、
前記保護具本体に設けられ前記ガイドピンの一端を前記保護具本体内から軸方向に突出させるスプリングと、
前記ガイドピンの一端に設けられ前記シャフトが同軸上で突き合わされたとき前記シャフトの先端穴に嵌入される嵌入凸部と、を備え
前記保護具本体と前記ガイドピンには、前記保護具本体に対する前記ガイドピンの突出長さを規制するためのストッパ機構が設けられ、
前記スプリングはコイルバネで構成され、
前記保護具本体内には前記コイルバネの一端を受けるための座部が設けられ、
前記ガイドピンの外周には、前記スプリングの他端を受けるためのコマが軸方向に位置調節可能に設けられた
ことを特徴とするオイルシール保護具。
【請求項2】
前記ストッパ機構は、前記ガイドピンの外周に設けられた第1係合部材と、前記保護具本体内に設けられ前記第1係合部材に当接する第2係合部材とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のオイルシール保護具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオイルシールにシャフトを挿通させる際にオイルシールを保護するオイルシール保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用変速機の組立時、インプットシャフト等のシャフトを、変速機ハウジングに予め取り付けられたオイルシールに挿通させる場合がある。このとき、オイルシールの傷付きを防止するため、オイルシールの内側に予め鞘状のオイルシール保護具を仮止め状態で装着しておき、そのオイルシール保護具内にシャフトを挿入しつつそのシャフトでオイルシール保護具を押し、オイルシール内のオイルシール保護具をシャフトに置換してオイルシール内にシャフトを挿通させることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−076761号公報
【特許文献2】特開2011−157990号公報
【特許文献3】特開平07−280098号公報
【特許文献4】特開平06−201023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、オイルシール保護具の内径とシャフトの外径との差は極めて小さい。また、オイルシール保護具にシャフトを挿入する作業は、シャフトを有するシャフトユニットをホイストクレーン等のクレーンで吊り上げ、オイルシール保護具上にシャフトユニットを水平移動させ、オイルシール保護具に向けてシャフトユニットを降ろすことでシャフトをオイルシール保護具内に挿入する。このため、保護具内に正確にシャフトを降ろすのは至難であり、慎重にゆっくりと作業を行っている。シャフトがオイルシール保護具からずれた位置に降りた場合、シャフトがオイルシールに当たってオイルシールを傷つける虞がある。
【0005】
そこで本発明は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、シャフトを短時間で正確に挿入させることができるオイルシール保護具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様によれば、オイルシールにシャフトを挿通させる際に前記オイルシールを保護するオイルシール保護具であって、前記オイルシールに予め挿通される保護具本体と、前記保護具本体に出没自在に設けられるガイドピンと、前記保護具本体に設けられ前記ガイドピンの一端を前記保護具本体内から軸方向に突出させるスプリングと、前記ガイドピンの一端に設けられ前記シャフトが同軸上で突き合わされたとき前記シャフトの先端穴に嵌入される嵌入凸部と、を備えたことを特徴とするオイルシール保護具が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シャフトを短時間で正確に挿入させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態に係るオイルシール保護具が用いられる変速機組立工程の説明図である。
図2】オイルシール保護具の正面断面図である。
図3】オイルシール保護具の使用状態の要部拡大図である。
図4】オイルシール保護具の使用状態の要部拡大図である。
図5】オイルシール保護具の使用状態の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0010】
図1はオイルシール保護具が用いられる変速機組立工程の説明図である。図2はオイルシール保護具の正面断面図である。
【0011】
まず図1を参照して変速機組立工程で用いる部品等の概要を説明する。本実施形態においては、車両用変速機(以下、変速機)1の組立時に変速機1のシャフト、例えばインプットシャフト2を、シールリングであるオイルシール3に挿通させる際に、オイルシール3の傷付きを防止する目的でオイルシール保護具4が用いられる。インプットシャフト2およびオイルシール3はともに変速機1の構成部品である。
【0012】
本実施形態の変速機1は手動変速機であるが、変速機は自動変速機であってもよい。変速機1には様々なシャフト、特に回転可能な回転軸があり、そのいずれにも本発明は適用可能である。例えばシャフトは、カウンタシャフトまたはアウトプットシャフトであってもよい。シャフトの軸受部におけるオイル漏れを防止するため、軸受部にオイルシール3が設けられる。
【0013】
インプットシャフト2はオイルシール3およびオイルシール保護具4内に、図の上方から下方に向かって挿通される。そこで本実施形態では、この挿通方向の前方を「前」とし、後方を「後」とする。但しこの前後方向は説明のため便宜上定めたものに過ぎず、必ずしも実際の使用状況(例えば車両の向き)と一致しない。インプットシャフト2はオイルシール3およびオイルシール保護具4に同軸に挿通されるので、例えばオイルシール3の中心軸C1の方向は挿通方向と一致する。よって挿通方向前方は軸方向前方と言い換えることができ、挿通方向後方は軸方向後方と言い換えることができる。類似の表現が同一の意味を表すために使用できる。
【0014】
変速機1は、複数のギアおよびシャフト等を内部に収容するメインハウジング5と、メインハウジング5内からその前方に突出されたインプットシャフト2と、メインハウジング5の前面部に組み付けられる前端ハウジング6とを有する。図は前端ハウジング6の組付前の状態を示す。
【0015】
前端ハウジング6は、略U字状の断面形状を有する。前端ハウジング6は図示しないエンジンの後端面に締結されることを予定されており、その前端には締結用フランジ7が設けられる。また前端ハウジング6の後端中心部には、軸受としてのボールベアリング8を受けるためのベアリング受部8aと、ベアリング受部8aの前方に近接配置されたオイルシール3とが設けられている。本実施形態では二つのオイルシール3が設けられ、2連オイルシールが形成されている。オイルシール3はそれぞれゴム等の樹脂からなり、複数のリップ(図示せず)を備える。
【0016】
インプットシャフト2は、その前端部に形成された突起部2aと、突起部2aの後方に設けられたスプライン9と、後端部に設けられたベアリング嵌合部10と、ベアリング嵌合部10の前方に隣接配置されたシール嵌合部11とを有する。
【0017】
突起部2aの外径はスプライン9の外径より小さく設定されている。また、突起部2aの前端には、インプットシャフト2を加工するときに芯決めをするための先端穴2bが形成されている。先端穴2bは円錐状に形成されており、前端から後端に向かうにつれて縮径する。
【0018】
ベアリング嵌合部10は、シール嵌合部11より大径に形成されている。またベアリング嵌合部10には、予めボールベアリング8が嵌合されている。
【0019】
シール嵌合部11は、スプライン9の後部に筒状のカラー11aを被せて形成されている。
【0020】
図示しないが、変速機1の組立後の状態において、ベアリング受部8aはボールベアリング8の外側に嵌合され、シール嵌合部11はオイルシール3の内側に嵌合される。このとき、オイルシール3はシール嵌合部11に摺接され、変速機1内のオイルが外部に漏れるのを防止する。インプットシャフト2は、前側のオイルシール3より前方に所定長さ突出した状態となる。
【0021】
また、前端ハウジング6にメインハウジング5を組み付ける際には、支持台26上にパレット25をスライド可能に載置し、パレット25上に前端ハウジング6を、締結用フランジ7が鉛直方向下側に向けられた姿勢で載置する。パレット25及び支持台26には使用済みのオイルシール保護具4を回収すべく落下させるための貫通穴25a、26aが予め形成されている。
【0022】
またさらに、支持台26の下方には、落下したオイルシール保護具4を滑らすための傾斜面27が形成され、傾斜面27の下方にはオイルシール保護具4を回収するための回収箱29が設置される。また、傾斜面27には、使用中のオイルシール保護具4を下方から支持するための支持スプリング28が設けられている。
【0023】
図2に示すように、オイルシール保護具4は、オイルシール3に予め挿通される保護具本体12と、保護具本体12に出没自在に設けられるガイドピン13と、保護具本体12に設けられガイドピン13の一端を保護具本体12内から軸方向に突出させるスプリング14と、ガイドピン13の一端に形成されインプットシャフト2が同軸上で突き合わされたときその先端穴2bに嵌入される嵌入凸部15とを備える。
【0024】
保護具本体12は機械構造用合金鋼等などの金属にて有底筒体状に形成されている。保護具本体12は、後端部に形成された大径部12aと、大径部12aより前方に形成され前方に向かうにつれて縮径するテーパ部12bと、テーパ部12bより前方に形成された小径部12cとを備える。大径部12aは、インプットシャフト2のシール嵌合部11と同じ外径に形成されており、インプットシャフト2の外側に嵌合されることを予定されている。小径部12cはオイルシール3の内径より小径に形成されている。小径部12cはオイルシール3内にオイルシール保護具4を挿入するときテーパ部12bをオイルシール3内に案内する。また、小径部12cの前端は球面状に形成されており、万一小径部12cの前端がオイルシール3に当たってもオイルシール3を傷つけ難いようになっている。
【0025】
また、保護具本体12の後端部には、シール嵌合部11より前端側のインプットシャフト2、すなわち突起部2a及びスプライン9を収容するための前端収容部16が形成されている。
【0026】
前端収容部16は、スプライン9を収容するスプライン収容部16aと、突起部2aを収容する突起部収容部16bとを備える。スプライン収容部16aは後端が開放されている。また、スプライン収容部16aの後端を区画する保護具本体12には、スプライン収容部16aに挿入されるスプライン9を案内するための案内面16cが形成されている。案内面16cは、保護具本体12の後端部内周面を面取りして傾斜させて形成されている。また、スプライン収容部16aはスプライン9よりも軸方向に長く形成されており、突起部収容部16bは突起部2aよりも軸方向に長く形成されている。これにより、スプライン収容部16a内にスプライン9を後端(基端)まで挿入できる。また、スプライン収容部16aの内径は、スプライン9の外径と略同じに形成されており、突起部収容部16bの内径は、突起部2aの外径と略同じに形成されている。スプライン収容部16a及び突起部収容部16bは、スプライン9及び突起部2aと嵌合されることで保護具本体12とインプットシャフト2とをより正確に同軸上に位置させる。
【0027】
また、前端収容部16より前方の保護具本体12には、ガイドピン13を軸方向に移動可能に収容するピン収容部17が形成される。ピン収容部17の内径は突起部収容部16bより小さく形成されると共に、ガイドピン13の外径より十分大きく形成される。これにより、ガイドピン13の外周側に空隙17aが形成される。空隙17aは、後述するストッパ機構18の第1係合部材19を軸方向にスライド自在に収容する。
【0028】
ストッパ機構18は、保護具本体12に対するガイドピン13の突出長さを規制する。ストッパ機構18は、ガイドピン13の外周に設けられた第1係合部材19と、保護具本体12内に設けられ第1係合部材19に当接する第2係合部材20とを備える。第1係合部材19は断面円形に形成されたナットで構成される。ガイドピン13の外周には雄ネジ13aが形成されており、第1係合部材19は雄ネジ13aと螺合される。また、第1係合部材19は、保護具本体12と遊嵌される。これによりガイドピン13は保護具本体12と同軸上に位置される。第2係合部材20は、突起部収容部16bの前端に同軸となるように挿入されたストッパリング20aと、ストッパリング20aの後方への移動を規制するスナップリング20bとを備える。ストッパリング20aの外径は、ピン収容部17の内径より大きく形成されている。これにより、ストッパリング20aはピン収容部17と突起部収容部16bとの径差で形成される段部21によって前方への移動を規制される。スナップリング20bは、段部21に当接するストッパリング20aより後方の突起部収容部16b内に設けられている。具体的には、突起部収容部16bを区画する保護具本体12の内周面には、環状の溝22が形成されており、スナップリング20bは溝22に嵌合することで保護具本体12に固定されている。
【0029】
ガイドピン13は、前後に長い棒状に形成されている。ガイドピン13は、第2係合部材20に引っ掛からないように後端側の表面が滑らかに形成されている。また、ガイドピン13の前端側には、スプリング14の後端を受けるためのコマ23aが設けられると共に、コマ23aの位置を固定するための固定用ナット24が設けられている。コマ23aは断面円形に形成されたナットからなり、ガイドピン13の雄ネジ13aと螺合される。また、保護具本体12の最奥部には、スプリング14の前端を受けるための座部23bが設けられている。コマ23aは、回転されることで軸方向に移動可能である。コマ23aの軸方向の位置を調節することでコマ23aと座部23bとの間隔が調節され、スプリング14のバネ荷重が調整される。固定用ナット24とコマ23aはダブルナットを構成し、互いに押し合うことで軸方向の位置を固定しあう。
【0030】
嵌入凸部15はインプットシャフト2の先端穴2bに嵌入される円錐状に形成されている。また、嵌入凸部15は後端を球面状に形成されている。これにより嵌入凸部15の後端が先端穴2bの最奥部に当接するのを防ぎ、先端穴2b内に嵌入凸部15を面同士で当接させて嵌入させる。
【0031】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0032】
図1に示すように、前端ハウジング6にメインハウジング5を組み付ける場合、まずオイルシール3の内側にオイルシール保護具4の大径部12aを嵌合装着する。これにより、大径部12aがオイルシール3のリップにより仮止め状態で弾性支持される。そしてこの状態で、締結用フランジ7が鉛直方向下側となるように支持台26上のパレット25に前端ハウジング6を載置する。これによりオイルシール保護具4はオイルシール3に吊り下げ支持される。また、パレット25及び支持台26にはオイルシール保護具4を回収すべく落下させるための貫通穴25a、26aが予め形成されており、オイルシール保護具4は貫通穴25a、26a上に位置される。
【0033】
次いで、ホイストクレーン、バランサー等のクレーン(図示せず)を用いて前端ハウジング6の上方にメインハウジング5を、インプットシャフト2を下向きにした状態で吊り下げ、前端ハウジング6に向けて下降させる。
【0034】
インプットシャフト2が保護具本体12に接近したらメインハウジング5をさらに下降させつつ、嵌入凸部15がインプットシャフト2の先端穴2bに入るようにインプットシャフト2の水平位置を調節する。このとき、嵌入凸部15が目印となるためオイルシール保護具4の中心に対してインプットシャフト2の中心を容易に合わせることができる。この後、インプットシャフト2を水平方向に軽く振り、嵌入凸部15が先端穴2bに嵌入されていることを確認する。嵌入凸部15が先端穴2bに嵌入されている場合、インプットシャフト2は水平方向にロックされており、水平方向に動くことはない。このため嵌入凸部15が先端穴2bに嵌入されたことを手感覚で知ることができる。また、嵌入凸部15が先端穴2bに嵌入されずその周りの端面に当たっている場合、インプットシャフト2は水平方向に動く。このとき、ガイドピン13はスプリング14を押し縮めて保護具本体12内に若干の長さ没入された状態にある。このため、インプットシャフト2は水平方向に振られるうちにガイドピン13と同軸上に位置されると、嵌入凸部15がスプリング14の付勢力で勢いよく先端穴2bに嵌入されてスナップ音が鳴る。これにより、インプットシャフト2は水平方向にロックされる。
【0035】
この後さらにインプットシャフト2を下降させる。ガイドピン13はインプットシャフト2に嵌入された状態のままスプリング14(図2参照)の付勢力に抗して下降する。これにより、インプットシャフト2はガイドピン13と同軸上に位置したまま下降され、図4に示すように、インプットシャフト2の突起部2a及びスプライン9が、オイルシール保護具4の突起部収容部16b及びスプライン収容部16a内に挿入される。これにより、インプットシャフト2が保護具本体12に対してさらに高精度に調心される。
【0036】
従来のようにオイルシール保護具が有底筒体状の保護管(図示せず)のみで構成されている場合、インプットシャフト2の降下位置は作業者の目で視た感覚で決まる。このため、インプットシャフト2が保護管に対して位置ずれした状態で降下するのを防ぐ手段がなく、インプットシャフト2の先端や段部がオイルシール3に当たって傷つけることもあった。しかし、本実施の形態に係るオイルシール保護具4によれば、インプットシャフト2の先端穴2bにオイルシール保護具4の嵌入凸部15が嵌入されたことを目、手感覚及び音等で確認したのちインプットシャフト2を降下させることができる。よって、インプットシャフト2がオイルシール保護具4に対して位置ずれした状態で降下するのを防ぐ或いは抑制することができ、インプットシャフト2でオイルシール3を傷つけるのを防ぐ或いは抑制することができる。
【0037】
この後、シール嵌合部11の下端面11bが保護具本体12上に着座されると、保護具本体12はインプットシャフト2に押されて前方に移動する。そして、図5に示すように、オイルシール3と嵌合されていた保護具本体12の大径部12aはシール嵌合部11に押されて下方に移動し、シール嵌合部11が大径部12aと置換されてオイルシール3に嵌合される。シール嵌合部11は、大径部12aと同軸上にあるため、オイルシール3の上面等に当たる可能性は低く、オイルシール3が傷つくのを抑制乃至防ぐことができる。
【0038】
この後、図1に示すように支持台26上でパレット25が例えば図の紙面左側に移動すると、支持スプリング28で支持されていたオイルシール保護具4は支持スプリング28から外れ、自重で傾斜面27上に落下する。傾斜面27上に落下したオイルシール保護具4は、傾斜面27に沿って滑り落ち、回収箱29に回収され、ストックされる。
【0039】
このように、オイルシール保護具4は、オイルシール3に予め挿通される保護具本体12と、保護具本体12に出没自在に設けられるガイドピン13と、保護具本体12に設けられガイドピン13の一端を保護具本体12内から軸方向に突出させるスプリング14と、ガイドピン13の一端に形成されインプットシャフト2が同軸上で突き合わされたとき先端穴2bに嵌入される嵌入凸部15とを備えるものとした。このため、インプットシャフト2の先端穴2bにオイルシール保護具4の嵌入凸部15が嵌入されたことを目、手感覚及び音等で確認することでインプットシャフト2とオイルシール保護具4とが同軸上に位置されたことを知ることができる。しかる後、インプットシャフト2を降下させることで、インプットシャフト2を安定してオイルシール3の中心に降下させることができる。このことから、インプットシャフト2の先端や段部がオイルシール3の上面等に当たってオイルシール3を傷つけるのを防ぐ或いは抑制することができる。そして、オイルシール保護具4内にインプットシャフト2を短時間で正確に挿入させることができる。
【0040】
また、保護具本体12とガイドピン13には、保護具本体12に対するガイドピン13の突出長さを規制するためのストッパ機構18が設けられるため、オイルシール保護具4の状態を常に一定に保つことができ、効率よく作業できる。
【0041】
ストッパ機構18は、ガイドピン13の外周に設けられた第1係合部材19と、保護具本体12内に設けられ第1係合部材19に当接する第2係合部材20とを備えるため、簡易な構造で保護具本体12に対するガイドピン13の突出長さを規制することができる。
【0042】
スプリング14はコイルバネで構成され、保護具本体12内にはスプリング14の前端を受けるための座部23bが設けられ、ガイドピン13の外周には、スプリング14の後端を受けるためのコマ23aが軸方向に位置調節可能に設けられるため、コマ23aの位置を調節することでスプリング14のバネ荷重を容易に調整でき、インプットシャフト2の先端穴2bにオイルシール保護具4の嵌入凸部15が嵌入されたときの感覚を最適に調節することができる。
【0043】
なお、嵌入凸部15はガイドピン13に一体に形成されるものとしたが、これに限るものではない。嵌入凸部15は、ガイドピン13とは別体とされガイドピン13に着脱自在に設けられるものであってもよい。この場合、例えば嵌入凸部15は先端形状等が異なる複数種類が予め用意され、先端穴2bの形状等に応じて嵌入凸部15を適宜交換できるものとしてもよい。
【0044】
また、本実施の形態では変速機1を構成するインプットシャフト2をオイルシール3に挿通させる工程でオイルシール保護具4を用いる場合について説明したが、オイルシール保護具4の用途はこれに限るものではない。オイルシール保護具4は、他の装置のシャフトを他の装置のオイルシールに挿通させるときに用いてもよい。
【0045】
本発明の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
2 インプットシャフト(シャフト)
2b 先端穴
3 オイルシール
4 オイルシール保護具
12 保護具本体
13 ガイドピン
14 スプリング
15 嵌入凸部
図1
図2
図3
図4
図5