(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池車用高圧水素ガス等の圧力調整に用いられる減圧弁(レギュレータ)では、ハウジングにおける一次ポートと二次ポートとの間に弁機構(開閉弁)が設けられている。そして、弁機構の弁体が弁座に対して接離し、その開き量(開度)が変化することで、一次ポートから流入した高圧の水素ガスを減圧し、二次ポートから送出する水素ガスの圧力が所定圧を超えないようにしている。
【0003】
例えば特許文献1に記載の減圧弁では、
図5に示すように、弁体(ポペット)91には、軸線L2に対する傾斜角θ6が略一定のテーパ状に形成された外周面を有する頭部92が設けられている。弁座93の弁孔94には、軸線L2に対する傾斜角θ7が頭部92の傾斜角θ6よりも大きいテーパ状の内周面を有する第1領域96と、軸線L2に対する傾斜角θ8が傾斜角θ6と等しいテーパ状の内周面を有する第2領域97と、軸線L2と略平行な円筒状の内周面を有する第3領域98とが設けられている。これにより、弁孔94を通過する水素ガスの流路断面積(軸線L2に対して直交する平面における流路の面積)は、第1領域96の内周側では下流側(
図5中、上側)に向かうにつれて漸減し、第2領域97の内周側では略一定となり、第3領域98の内周側は、頭部92を包囲する範囲では下流側に向かうにつれて漸増する。このように流路断面積が略一定となる第2領域97を設けることで、水素ガスの流れが整流され、乱流の発生を抑制できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らは鋭意研究の結果、
図6に示すように、第3領域98の内周側において、弁体91の外周面に近いほど水素ガスの流速が速くなり、弁孔94(第3領域98)の内周面に近いほど水素ガスの流速が遅くなり、速度差が発生することを見いだした。なお、
図5では、説明の便宜上、水素ガスの流れを示す矢印が太いほど、水素ガスの流速が速いことを示す。その結果、水素ガスの流れに起因する気流音が発生するおそれがあり、特に一次ポート側の圧力(水素タンクの圧力)が高いときほど、減圧弁での圧力変化が大きく、水素ガスの流速が速くなることで、同課題が生じ易くなる。
【0006】
本発明の目的は、異音の発生を抑制できる減圧弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する減圧弁は、一次ポート及び二次ポートが設けられたハウジングと、前記一次ポートと前記二次ポートとを繋ぐガス流路の途中に設けられ、弁孔を有する環状の弁座と、前記弁座の前記一次ポート側に設けられ、前記弁座に対して接離する弁体とを備え、前記弁体には、前記弁座に対して接離することにより前記弁孔を開閉可能なテーパ状の外周面を有する頭部が形成され、前記弁孔には、前記頭部により該弁孔が閉塞される閉弁時に該頭部に当接する絞り部と、前記絞り部から下流側に連続するとともに軸線に対する傾斜角が前記頭部の該軸線に対する傾斜角よりも小さいテーパ状の内周面を有する小テーパ部とが形成される。
【0008】
上記構成によれば、弁孔に小テーパ部が設けられるため、絞り部を通過したガスの流路断面積が下流側に向かって漸増する。そして、小テーパ部の内周面が弁体の頭部よりも傾斜角の小さいテーパ状とされるため、例えば絞り部よりも下流側の部位を軸線と平行な円筒状に形成する場合に比べ、小テーパ部の内周面が弁体の頭部の外周面に近接した形状になる。そのため、小テーパ部の内周側において、頭部の外周面から離間して小テーパ部の内周面に近接するほどガスの流速が遅くなる傾向が現れても、小テーパ部の内周側を流動するガスの速度差を従来よりも小さくでき、気流音の発生を抑制できる。
【0009】
上記減圧弁において、前記頭部の下流側端部には、前記軸線に沿って突出する凸部が連設され、前記弁孔の前記絞り部よりも下流側は、前記凸部の外周側の流路断面積が下流側に向かって漸減する区間を含むように形成されることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、ガスの流路断面積が絞り部を通過してから下流側に向かって漸増した後に、さらに下流側で漸減するため、流速の速いガスと遅いガスとが弁孔(弁座)を通過する前に集束して互いに近づく。これにより、ガスの速度差をより一層低減でき、好適に気流音の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、異音の発生を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、減圧弁の第1実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す減圧弁(レギュレータ)1は、燃料電池自動車に搭載される水素タンクと燃料電池とをつなぐ流体回路の途中に設けられ、高圧(例えば最大70MPa程度)の水素ガスを減圧(例えば1MPa程度)して燃料電池側に送出する。減圧弁1は、一次ポート2及び二次ポート3が形成されたハウジング4と、ハウジング4内における一次ポート2と二次ポート3との間に設けられた弁機構5と、弁機構5の開き量(開度)を調整する押圧機構6とを備えている。
【0014】
ハウジング4には、一次ポート2及び二次ポート3に連通するとともに、外部に開口した丸穴状の収容穴11が形成されている。一次ポート2から延びるガス流路を構成する供給流路12は収容穴11の底面11aにおける中央に開口し、二次ポート3へ延びるガス流路を構成する送出流路13は収容穴11の底面における偏心した位置に開口している。供給流路12における収容穴11側の開口部分は、弁機構5を収容するように他の部分よりも大きな内径に設定されている。具体的には、供給流路12の開口部分は、供給流路12の上流側(
図1中、下側)から順に円筒状の第1収容部14、及び第1収容部14に連続するとともに底面11aに開口する円筒状の第2収容部15を有している。第1及び第2収容部14,15は、内径がこの順で大きくなるとともに、それぞれ収容穴11と同一の軸線L1上に配置されるように形成されている。なお、送出流路13には、リリーフ弁や継手(ともに図示略)が設けられる。
【0015】
弁機構5は、供給流路12に収容される弁体(ポペット)21と、第1収容部14に収容される弁座22と、第2収容部15に取着されるプラグ23と、プラグ23内に配置されるバルブステム24とを備えている。
【0016】
図1及び
図2に示すように、弁体21は、有底筒状の本体部31と、本体部31の底部から下流側(
図1中、上側)に向かって外径が小さくなるテーパ状の頭部32と、頭部32の下流側端部から突出した円柱状の凸部33とを有している。本体部31、頭部32及び凸部33は、同軸上に一体形成されている。本体部31(弁体21)の外径は供給流路12の内径よりもやや小さく設定されており、弁体21は供給流路12内(弁座22の下流側)において軸線L1と同軸上で軸方向移動可能に配置されている。本体部31内には、コイルバネ等の付勢部材34が収容されている。そして、弁体21は、付勢部材34が供給流路12の上流側に配置された棒状の支持部材35と弁体21との間で圧縮されることにより弁座22方向に付勢されている。頭部32の外周面は、軸線L1に対して略一定の傾斜角θ1を有するテーパ状に形成されており、凸部33の外周面は、軸線L1に対して略平行な円筒状に形成されている。
【0017】
弁座22は、弁孔41を有する円環状に形成されており、第1収容部14内に軸線L1と同軸上に配置されるように圧入されている。なお、弁座22は、ポリイミド樹脂等の弾性変形可能な硬質樹脂により構成されている。弁孔41は、軸線L1に対する傾斜角θ2が頭部32の傾斜角θ1よりも大きいテーパ状の内周面を有する大テーパ部42と、軸線L1に対する傾斜角θ3が傾斜角θ1と略等しいテーパ状の内周面を有する絞り部43と、軸線L1に対する傾斜角θ4が傾斜角θ1よりも小さいテーパ状の内周面を有する小テーパ部44とを有している。大テーパ部42は弁孔41における上流側端部に位置し、絞り部43は大テーパ部42から下流側に連続して形成され、小テーパ部44は絞り部43から下流側に連続して形成されている。つまり、本実施形態の小テーパ部44は、弁孔41における絞り部43よりも下流側の略全域に亘って形成されている。なお、小テーパ部44の下流端には、面取り加工が施されている。
【0018】
そのため、頭部32により弁孔41が閉塞される閉弁時において、絞り部43の内周面全体が頭部32に当接し、大テーパ部42及び小テーパ部44の内周面は頭部32に当接しない。また、弁孔41が閉塞されない開弁時において、弁孔41(弁座22)を通過する水素ガスの流路断面積(軸線L1に対して直交する平面における流路の面積)は、大テーパ部42の内周側では下流側に向かうにつれて漸減し、絞り部43の内周側では下流側に向かっても変化せず略一定となる。そして、流路断面積は、小テーパ部44の内周側では径方向において頭部32と対向する区間で下流側に向かうにつれて漸増し、さらに下流側の径方向において凸部33と対向する区間では下流側に向かって漸減する。つまり、凸部33の外周側の流路断面積は下流側に向かって漸減する。
【0019】
図1に示すように、プラグ23は、円柱状に形成されており、弁座22を圧縮しつつ第2収容部15の内周に螺着されており、その一部が収容穴11内に突出している。プラグ23の中央には、軸方向に貫通する貫通孔51が弁孔41と同軸(軸線L1)上に形成されている。貫通孔51は、その大部分が略一定の内径を有する円筒状に形成されるとともに、上流側に近い部分で上流側に向かって小径となるテーパ状に形成され、貫通孔51における弁孔41に連続する上流側部分51aは他の部分よりも小径とされている。なお、本実施形態では、上流側部分51aの内径は、弁孔41の下流側開口端の内径よりも大きく設定されている。また、プラグ23における収容穴11内に突出した突出部52には、径方向に延びて貫通孔51と収容穴11とを連通する流路孔53が形成されている。
【0020】
バルブステム24は、細長の円柱状に形成された円柱部61と、円柱部61から下流側に突出する下流端部62と、円柱部61から上流側に突出する上流端部63とを有している。円柱部61の外径は、貫通孔51の内径よりもやや小さく設定されており、貫通孔51内で軸方向移動可能である。円柱部61には、軸方向に延びる複数の流路孔64がその中心軸周りに等角度間隔で形成されている。下流端部62の外径は、円柱部61よりも小径の円柱状に形成されている。上流端部63の外径は弁体21における凸部33の外径と略等しく設定されており、上流端部63及び凸部33は弁孔41及び貫通孔51内に挿通されて互いに当接している。
【0021】
押圧機構6は、収容穴11に固定されるシリンダ71と、シリンダ71内に摺動可能に収容されるピストン72と、シリンダ71とピストン72との間に圧縮状態で配置されるコイルバネ73とを備えている。
【0022】
シリンダ71は有底円筒状に形成されている。シリンダ71は、その円筒部81の外周部分が収容穴11の内周に螺着されるとともに、その底部82の外周部分にロックナット83が螺着されることによりハウジング4に固定されている。なお、円筒部81の開口部外周には、Oリング等のシール部材84が装着されており、収容穴11と外部との間の気密を確保している。
【0023】
ピストン72は有底円筒状に形成されるとともに、その外径は円筒部81の内径と略等しく設定されている。ピストン72は、その底部が円筒部81の開口端側に位置する姿勢で円筒部81内に軸方向に摺動可能収容され、円筒部81内を減圧室85と圧力調整室86とに区画している。なお、ピストン72の外周にはウェアリングやリップシール等のリング部材87が装着されており、減圧室85と圧力調整室86との間の気密を確保している。そして、ピストン72は、バルブステム24の下流端部62に当接している。これにより、バルブステム24及び弁体21は、ピストン72の摺動に応じて一体で移動する。
【0024】
コイルバネ73は、シリンダ71とピストン72との間で圧縮された状態で収容されている。そして、コイルバネ73は、弁体21が弁座22から離座する、すなわち弁機構5の開き量(開度)が大きくなるようにピストン72を付勢している。
【0025】
このように構成された減圧弁1では、減圧室85と圧力調整室86の差圧、付勢部材34及びコイルバネ73の付勢力に応じてピストン72が円筒部81内を摺動する。そして、ピストン72の軸方向位置に応じて弁機構5の開き量を調整することで、二次ポート3側の圧力(減圧室85内の圧力)が所定圧を超えないようにしている。なお、弁機構5の開き量は、一次ポート2側の圧力(水素タンクの圧力)が高いほど小さく、水素タンク内の水素の充填量が減少して一次ポート2側の圧力が低下するにつれて大きくなる。
【0026】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)弁体21の頭部32の傾斜角θ1よりも傾斜角の小さいテーパ状の内周面を有する小テーパ部44を弁孔41に設けたため、例えば絞り部43よりも下流側の部位を軸線L1と略平行な円筒状に形成する場合に比べ、小テーパ部44の内周面が頭部32の外周面に近接した形状になる。そのため、
図3に示すように、小テーパ部44の内周側において、頭部32の外周面付近を流動する水素ガスの流速が非常に速くなり、頭部32の外周面から離間して小テーパ部44の内周面に近接するほど水素ガスの流速が遅くなる傾向が現れても、小テーパ部44の内周側を流動する水素ガスの速度差を従来よりも小さくでき、気流音の発生を抑制できる。
【0027】
(2)頭部32の下流側端部に軸線L1に対して略平行な円筒状の外周面を有する凸部33を形成し、小テーパ部44を弁孔41における絞り部43よりも下流側の略全域に亘って形成したため、水素ガスの流路断面積が絞り部43を通過してから下流側に向かって漸増した後に、さらに下流側で漸減する。そのため、
図3に示すように、流速の速い水素ガスと遅い水素ガスとが弁孔41(弁座22)を通過する前に集束して互いに近づき、水素ガスの速度差をより一層低減できる。これにより、好適に気流音の発生を抑制できる。
【0028】
(3)絞り部43を、軸線L1に対する傾斜角θ3が頭部32の傾斜角θ1と等しいテーパ状の内周面を有する構成としたため、絞り部43の内周側で流路断面積が略一定となる。これにより、水素ガスの流れが整流され、乱流の発生を抑制できる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、減圧弁の第2実施形態を図面に従って説明する。なお、説明の便宜上、同一の構成については上記第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0030】
図4に示すように、本実施形態のプラグ23では、貫通孔51の上流側部分51aの内径が弁孔41における下流側開口端の内径と略同一に設定されている。
以上記述したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)〜(3)の作用効果に加え、以下の作用効果を奏することができる。
【0031】
(4)プラグ23の貫通孔51における弁孔41に連続する上流側部分51aの内径を、弁孔41の下流側開口端の内径と略等しく設定したため、弁孔41を通過した水素ガスの流路断面積が急激に変化することを抑制でき、気流音の発生を抑制できる。
【0032】
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記各実施形態では、絞り部43が頭部32の傾斜角θ1と等しい傾斜角のテーパ状の内周面を有する構成としたが、これに限らず、例えば傾斜角θ1と異なる傾斜角を有するテーパ状の内周面を有する構成としてもよく、また例えばエッジ状に形成して頭部32に線接触するようにしてもよい。
【0033】
・上記各実施形態では、水素ガスの流路断面積が絞り部43を通過してから下流側に向かって漸増した後に、さらに下流側で漸減するようにした。しかし、これに限らず、例えば軸線L1と略平行な内周面を有する部位を弁孔41における小テーパ部44の途中から下流側に設け、水素ガスの流路断面積が絞り部43を通過してから下流側に向かって漸増した後に、漸減しないようにしてもよい。
【0034】
・上記各実施形態において、弁孔41に大テーパ部42を設けず、弁孔41の上流側端部に絞り部43を設けてもよい。
・上記各実施形態において、小テーパ部44の下流端に面取り加工を施さなくともよい。
【0035】
・上記各実施形態において、減圧弁1を高圧の水素ガスを減圧する用途に用いたが、これに限らず、水素以外の気体を減圧する用途に用いてもよい。
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0036】
(イ)前記絞り部は、前記軸線に対する傾斜角が前記頭部の傾斜角と等しいテーパ状の内周面を有する減圧弁。上記構成によれば、絞り部の内周側で流路断面積が略一定となるため、ガスの流れが整流され、乱流の発生を抑制できる。
【0037】
(ロ)前記弁座の下流側に隣接して配置され、前記弁孔に連通する貫通孔が形成されたプラグを備え、前記貫通孔における前記弁孔に連続する上流側部分の内径を弁孔の下流側開口端の内径と等しく設定した弁装置。上記構成によれば、弁孔を通過した水素ガスの流路断面積が急激に変化することを抑制でき、気流音の発生を抑制できる。