特許第6790705号(P6790705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790705
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】回路装置、発振器、電子機器及び移動体
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   H03B5/32 H
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-201489(P2016-201489)
(22)【出願日】2016年10月13日
(65)【公開番号】特開2018-64193(P2018-64193A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(72)【発明者】
【氏名】山本 壮洋
(72)【発明者】
【氏名】石川 匡亨
【審査官】 橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−180085(JP,A)
【文献】 特開2001−284537(JP,A)
【文献】 特開2007−150150(JP,A)
【文献】 特開2014−064044(JP,A)
【文献】 特開2010−010168(JP,A)
【文献】 特開2009−177139(JP,A)
【文献】 特開2015−090973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路装置の第1の辺に沿った第1のパッド配置領域に配置される第1のパッド及び第2のパッドと、
前記第1の辺に対向する前記回路装置の第2の辺に沿った第2のパッド配置領域に配置される第3のパッド及び第4のパッドと、
前記第1のパッド配置領域と前記第2のパッド配置領域との間の回路配置領域に配置され、前記第1のパッドに接続される第1の静電保護回路と、
前記回路配置領域に配置され、前記第2のパッドに接続される第2の静電保護回路と、
前記回路配置領域に配置され、前記第3のパッドに接続される第3の静電保護回路と、
前記回路配置領域に配置され、前記第4のパッドに接続される第4の静電保護回路と、
を含み、
前記回路装置の第3の辺は、前記第1の辺及び前記第2の辺に交差する辺であり、前記回路装置の第4の辺は、前記第3の辺に対向する辺である場合に、
前記第1のパッドは、前記第1の辺と前記第3の辺とが交差する第1のコーナーの領域に配置され、
前記第2のパッドは、前記第1の辺と前記第4の辺とが交差する第2のコーナーの領域に配置され、
前記第3のパッドは、前記第2の辺と前記第3の辺とが交差する第3のコーナーの領域に配置され、
前記第4のパッドは、前記第2の辺と前記第4の辺とが交差する第4のコーナーの領域に配置されることを特徴とする回路装置。
【請求項2】
請求項1記載の回路装置において、
前記第1のパッドと前記第1の静電保護回路は、前記第1のパッド配置領域と前記回路配置領域との間の第1の境界を挟んで配置され、
前記第2のパッドと前記第2の静電保護回路は、前記第1の境界を挟んで配置され、
前記第3のパッドと前記第3の静電保護回路は、前記第2のパッド配置領域と前記回路配置領域との間の第2の境界を挟んで配置され、
前記第4のパッドと前記第4の静電保護回路は、前記第2の境界を挟んで配置されることを特徴とする回路装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回路装置において、
発振子を発振させる発振回路と、
前記発振回路の発振信号に基づくクロック信号を出力するクロック信号出力回路と、
前記発振回路の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路と、
を含み、
前記回路配置領域には、前記発振回路、前記クロック信号出力回路及び前記温度補償回路が配置されることを特徴とする回路装置。
【請求項4】
請求項に記載の回路装置において、
前記第1のパッドは、低電位側電源が供給されるパッドであり、
前記第2のパッドは、前記発振周波数の制御電圧が入力されるパッドであり、
前記第3のパッドは、前記クロック信号が出力されるパッドであり、
前記第4のパッドは、高電位側電源が供給されるパッドあることを特徴とする回路装置。
【請求項5】
請求項に記載の回路装置において、
前記第1のパッド配置領域において、前記第1のパッドと前記第2のパッドとの間に配置される第5のパッドと、
前記第2のパッド配置領域において、前記第3のパッドと前記第4のパッドとの間に配置される第6のパッドと、
を含み、
前記第5のパッドは、前記発振子の一端に接続されるパッドであり、
前記第6のパッドは、前記発振子の他端に接続されるパッドであることを特徴とする回路装置。
【請求項6】
請求項に記載の回路装置において、
前記第5のパッドに接続される第5の静電保護回路を含み、
前記第5の静電保護回路は、前記第1のパッド配置領域に配置されることを特徴とする回路装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の回路装置において、
前記発振周波数の温度補償用のパラメーター情報を記憶する不揮発性メモリーを含み、
前記第1の辺から前記第2の辺へと向かう方向を第1の方向とした場合に、
前記不揮発性メモリーは、前記第5のパッドの前記第1の方向に配置されることを特徴とする回路装置。
【請求項8】
請求項3乃至7のいずれか一項に記載の回路装置において、
前記発振回路は、前記第1の静電保護回路と前記第3の静電保護回路の間の領域に配置されることを特徴とする回路装置。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の回路装置において、
前記第1のパッド配置領域及び前記第2のパッド配置領域の少なくとも一方には、高電位電源と低電位電源との間に設けられる電源間キャパシターが配置されることを特徴とする回路装置。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の回路装置において、
前記第1〜第4の静電保護回路の各々は、パッドが配置可能なサイズの配置領域に配置されることを特徴とする回路装置。
【請求項11】
請求項10に記載の回路装置において、
前記第1のパッドの面積は、前記第1の静電保護回路の前記配置領域の面積よりも大きく、
前記第2のパッドの面積は、前記第2の静電保護回路の前記配置領域の面積よりも大きく、
前記第3のパッドの面積は、前記第3の静電保護回路の前記配置領域の面積よりも大きく、
前記第4のパッドの面積は、前記第4の静電保護回路の前記配置領域の面積よりも大きいことを特徴とする回路装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の回路装置において、
前記第1〜第4のパッドは、前記回路装置のコーナーの領域に配置され、
前記第1〜第4の静電保護回路は、前記回路配置領域のコーナーの領域に配置されることを特徴とする回路装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の回路装置と、
発振子と、
を含むことを特徴とする発振器。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の回路装置を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項15】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の回路装置を含むことを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置、発振器、電子機器及び移動体等に関する。
【背景技術】
【0002】
回路装置の半導体チップには、例えばパッケージの端子やバンプ(基板に直接実装するためのバンプ)等に接続するためのパッドが設けられている。例えば、半導体チップの辺に沿ったパッド配置領域に複数のパッドが配置される。そしてパッドには種々の回路ブロックが接続され、半導体チップの基板上に配置される。
【0003】
このような回路ブロックのレイアウト手法として、例えば特許文献1の手法がある。特許文献1では、ACブロック(AC的に動作するアナログ回路ブロック)と、DCブロック(DC的に動作するアナログ回路ブロック)とを離間して配置し、ACブロックとDCブロックとの間での干渉に起因した圧電発振器の作動不良を防止している。
【0004】
また、回路装置の用途として、高い信頼性が要求される用途と、そこまでは高い信頼性が要求されるわけではない用途(以下、民生用と呼ぶ)とがある。例えば、車載用では、安全性等の観点から高い信頼性が要求される。一方、例えばいわゆる家庭用電子機器(例えば携帯情報端末等)では、車載用に比べれば信頼性が要求されないのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−54269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような信頼性の1つとして、パッドのボンディングの信頼性がある。例えば、ボンディングにおける端子間接続の確実性や、或いはボンディングの非攻撃性(ボンディングにより回路装置の品質低下や破壊を生じさせないこと)等である。この信頼性において、例えば車載用等のようにパッドのボンディングに高い信頼性が要求される場合と、それに比較すれば信頼性が要求されない場合(例えば、民生用等)とがある。そして、これらの信頼性の程度に応じて異なるパッドサイズが要求される場合がある。しかしながら、異なるパッドサイズに対応するために、要求される信頼性の程度が互いに異なる複数の用途に対して個別にレイアウトを用意しようとすると、コストの増大や設計の複雑化を招くおそれがある。
【0007】
本発明の幾つかの態様によれば、パッドのボンディングに高い信頼性が要求される場合と、それに比較すれば信頼性が要求されない場合とで、レイアウト変更を簡素化できる回路装置、発振器、電子機器及び移動体等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は態様として実現することが可能である。
【0009】
本発明の一態様は、回路装置の第1の辺に沿った第1のパッド配置領域に配置される第1のパッド及び第2のパッドと、前記第1の辺に対向する前記回路装置の第2の辺に沿った第2のパッド配置領域に配置される第3のパッド及び第4のパッドと、前記第1のパッド配置領域と前記第2のパッド配置領域との間の回路配置領域に配置され、前記第1のパッドに接続される第1の静電保護回路と、前記回路配置領域に配置され、前記第2のパッドに接続される第2の静電保護回路と、前記回路配置領域に配置され、前記第3のパッドに接続される第3の静電保護回路と、前記回路配置領域に配置され、前記第4のパッドに接続される第4の静電保護回路と、を含む回路装置に関係する。
【0010】
本発明の一態様によれば、車載用等のようにパッドのボンディングに高い信頼性が要求される場合には、第1のパッド配置領域と第2のパッド配置領域を残したままのレイアウト(非シュリンク版のレイアウト)を採用できる。一方、パッドのボンディングに比較的信頼性が要求されない場合には、第1のパッド配置領域と第2のパッド配置領域を削除し、回路配置領域(例えば静電保護回路の上)にパッドを配置したレイアウト(シュリンク版のレイアウト)を採用できる。これにより、パッドのボンディングに高い信頼性が要求される場合と、それに比較すれば信頼性が要求されない場合とで、レイアウト変更を簡素化できる。
【0011】
また本発明の一態様では、前記回路装置の第3の辺は、前記第1の辺及び前記第2の辺に交差する辺であり、前記回路装置の第4の辺は、前記第3の辺に対向する辺である場合に、前記第1のパッドは、前記第1の辺と前記第3の辺とが交差する第1のコーナーの領域に配置され、前記第2のパッドは、前記第1の辺と前記第4の辺とが交差する第2のコーナーの領域に配置され、前記第3のパッドは、前記第2の辺と前記第3の辺とが交差する第3のコーナーの領域に配置され、前記第4のパッドは、前記第2の辺と前記第4の辺とが交差する第4のコーナーの領域に配置されてもよい。
【0012】
このように、第1〜第4のパッドが第1〜第4のコーナーの領域に配置されることで、第1のパッド配置領域が第1の辺に沿った領域となり、第2のパッド配置領域が第2の辺に沿った領域となる。これにより、第1のパッド配置領域と第2のパッド配置領域(即ち半導体チップの上下の所定幅部分)を削除できるようなレイアウト構成を実現でき、シュリンク版と非シュリンク版との切り替えが簡素化される。
【0013】
また本発明の一態様では、前記第1のパッドと前記第1の静電保護回路は、前記第1のパッド配置領域と前記回路配置領域との間の第1の境界を挟んで配置され、前記第2のパッドと前記第2の静電保護回路は、前記第1の境界を挟んで配置され、前記第3のパッドと前記第3の静電保護回路は、前記第2のパッド配置領域と前記回路配置領域との間の第2の境界を挟んで配置され、前記第4のパッドと前記第4の静電保護回路は、前記第2の境界を挟んで配置されてもよい。
【0014】
このように、パッドと静電保護回路とが、パッド配置領域と回路配置領域の間の境界を挟んで配置されることで、その境界(又は境界の付近)でパッド配置領域と回路配置領域を分離できる。これにより、その境界(又は境界の付近)で第1のパッド配置領域と第2のパッド配置領域のレイアウトを削除することが可能となり、シュリンク版のレイアウト作成が簡素化される。
【0015】
また本発明の一態様では、回路装置は、発振子を発振させる発振回路と、前記発振回路の発振信号に基づくクロック信号を出力するクロック信号出力回路と、前記発振回路の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路と、を含み、前記回路配置領域には、前記発振回路、前記クロック信号出力回路及び前記温度補償回路が配置されてもよい。
【0016】
本発明の一態様によれば、発振器の回路装置のコアとなる回路が回路配置領域に配置されている。また上述のように、パッド配置領域に配置されるパッドに接続される静電保護回路が回路配置領域に設けられている。これにより、回路配置領域を残すようにパッド配置領域を削除し、静電保護回路が配置される配置領域にパッドを設けることで、シュリンク版のレイアウトを簡素な手順で作成できる。
【0017】
また本発明の一態様では、前記第1のパッドは、低電位側電源が供給されるパッドであり、前記第2のパッドは、前記発振周波数の制御電圧が入力されるパッドであり、前記第3のパッドは、前記クロック信号が出力されるパッドであり、前記第4のパッドは、高電位側電源が供給されるパッドあってもよい。
【0018】
これらのパッドが第1のパッド配置領域や第2のパッド配置領域に配置されることによって、発振器の回路装置に対する電源の供給や信号の入出力が実現される。そして、シュリンク版のレイアウトでは、これらのパッドを静電保護回路の配置領域に設けることで、シュリンク版のレイアウトを簡素な手順で作成できる。
【0019】
また本発明の一態様では、回路装置は、前記第1のパッド配置領域において、前記第1のパッドと前記第2のパッドとの間に配置される第5のパッドと、前記第2のパッド配置領域において、前記第3のパッドと前記第4のパッドとの間に配置される第6のパッドと、を含み、前記第5のパッドは、前記発振子の一端に接続されるパッドであり、前記第6のパッドは、前記発振子の他端に接続されるパッドであってもよい。
【0020】
これらのパッドが第1のパッド配置領域や第2のパッド配置領域に配置されることによって、回路装置の発振回路に発振子を接続することが可能となり、発振回路が発振子を発振させることが可能となる。そして、回路装置と発振子をパッケージに収めることで発振器を構成できる。
【0021】
また本発明の一態様では、前記第5のパッドに接続される第5の静電保護回路を含み、前記第5の静電保護回路は、前記第1のパッド配置領域に配置されてもよい。
【0022】
本発明の一態様によれば、第5のパッドと、それに接続される第5の静電保護回路とが第1のパッド配置領域に配置される。これにより、第5のパッドと第5の静電保護回路とを近くに配置することが可能となり、第5の静電保護回路が適正に機能するようになる。
【0023】
また本発明の一態様では、回路装置は、前記発振周波数の温度補償用のパラメーター情報を記憶する不揮発性メモリーを含み、前記第1の辺から前記第2の辺へと向かう方向を第1の方向とした場合に、前記不揮発性メモリーは、前記第5のパッドの前記第1の方向に配置されてもよい。
【0024】
このような配置の場合、第5のパッドと不揮発性メモリーの間に第5の静電保護回路を設けることができない(設けるスペースがない)。そのため、シュリンク版のレイアウトにおいては、例えば不揮発性メモリーの第1の方向に第5の静電保護回路を配置する。しかしながら、非シュリンク版のレイアウトにした場合には、第5のパッドと第5の静電保護回路が不揮発性メモリーを挟んで離れてしまうので、静電保護の機能が低下する可能性がある。そこで、本発明の一態様では、非シュリンク版のレイアウトにおいて第5の静電保護回路を第1のパッド配置領域に配置する。これにより、第5の静電保護回路が適正に機能するようになる。
【0025】
また本発明の一態様では、前記発振回路は、前記第1の静電保護回路と前記第3の静電保護回路の間の領域に配置されてもよい。
【0026】
AC信号(交流信号)を発生させる発振回路は、DC(直流)的動作する温度補償回路に影響を及ぼす可能性がある。そのため、発振回路と温度補償回路は回路配置領域において離れた位置に配置されることが望ましい。本発明の一態様によれば、回路配置領域のコーナーの領域に配置される第1、第3の静電保護回路の間に発振回路を配置することで、温度補償回路との距離を確保することが可能となる。
【0027】
また本発明の一態様では、前記第1のパッド配置領域及び前記第2のパッド配置領域の少なくとも一方には、高電位電源と低電位電源との間に設けられる電源間キャパシターが配置されてもよい。
【0028】
このように、パッド配置領域に電源間キャパシターを配置することで、パッド配置領域の空き領域(パッドとパッドの間の領域)を有効活用できる。また、半導体チップ内に電源間キャパシターを設けることで、パッド(端子)の接続抵抗や配線のインダクタンスの影響をできるだけ低減することが可能となる。これにより、発振器の特性(例えば温度補償の性能)を向上することが可能になる。
【0029】
また本発明の一態様では、前記第1〜第4の静電保護回路の各々は、パッドが配置可能なサイズの配置領域に配置されてもよい。
【0030】
このようにすれば、第1〜第4の静電保護回路が配置される配置領域にパッドを配置し、そのパッドとパッドの下に設けられた静電保護回路とを接続することが可能となる。これにより、シュリンク版のレイアウトデータを作成する際に、パッド領域を新たに確保する必要がなく、回路配置領域のレイアウトの変更を最小限にして、シュリンク版のレイアウトを作成できる。
【0031】
また本発明の一態様では、前記第1のパッドの面積は、前記第1の静電保護回路の前記配置領域の面積よりも大きく、前記第2のパッドの面積は、前記第2の静電保護回路の前記配置領域の面積よりも大きく、前記第3のパッドの面積は、前記第3の静電保護回路の前記配置領域の面積よりも大きく、前記第4のパッドの面積は、前記第4の静電保護回路の前記配置領域の面積よりも大きくてもよい。
【0032】
このようにすれば、非シュリンク版のレイアウトにおいて、シュリンク版のレイアウトにおけるパッドよりも面積が大きいパッドを用いることができる。これにより、非シュリンク版のレイアウトを採用した回路装置において、ボンディングの信頼性を向上できる。
【0033】
また本発明の一態様では、前記第1〜第4のパッドは、前記回路装置のコーナーの領域に配置され、前記第1〜第4の静電保護回路は、前記回路配置領域のコーナーの領域に配置されてもよい。
【0034】
このようにすれば、パッドと、そのパッドに接続される静電保護回路とが近接(隣接)して配置される。パッドと静電保護回路とを接続する配線が長い場合、その抵抗等により静電保護機能が低下する可能性があるが、本発明の一態様によれば、静電保護機能の低下を避けることができる。
【0035】
また本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の回路装置と、発振子と、を含む発振器に関係する。
【0036】
また本発明の更に他の態様は、上記のいずれかに記載の回路装置を含む電子機器に関係する。
【0037】
また本発明の更に他の態様は、上記のいずれかに記載の回路装置を含む移動体に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本実施形態の回路装置のレイアウト構成例。
図2】シュリンク版の回路装置のレイアウト構成例。
図3】パッド領域、静電保護回路の配置領域が正方形である場合のサイズの一例。
図4】回路装置をパッケージに実装する際の端子接続の一例である。
図5】本実施形態の回路装置の詳細なレイアウト構成例。
図6】本実施形態の回路装置の詳細な構成例のブロック図。
図7】発振回路の詳細な構成例。
図8】クロック信号出力回路の詳細な構成例。
図9】温度補償回路の詳細な構成例。
図10】発振器の構成例。
図11】電子機器の構成例。
図12】移動体の例。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0040】
1.回路装置
図1は、本実施形態の回路装置100のレイアウト構成例である。回路装置100は、第1〜第4のパッド、第1〜第4の静電保護回路を含む。回路装置100は集積回路装置であり、図1には集積回路装置の半導体チップ(回路が形成されたシリコン基板)の平面視図を示す。なお、本実施形態は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。
【0041】
第1のパッド(PAD1)及び第2のパッド(PAD2)は、回路装置100(半導体チップ)の第1の辺HN1に沿った第1のパッド配置領域10に配置される。第3のパッド(PAD3)及び第4のパッド(PAD4)は、回路装置100の第2の辺HN2に沿った第2のパッド配置領域20に配置される。第2の辺HN2は、第1の辺HN1に対向する辺である。例えば回路装置100が長方形又は正方形である場合、第2の辺HN2は第1の辺HN1に平行(略平行を含む)な辺である。
【0042】
具体的には、パッドは、半導体チップ内の回路と半導体チップ外の回路(又は端子)とを電気的に接続するための端子である。第1のパッド、第2のパッド、第3のパッド、第4のパッドは、それぞれ第1のパッド領域PAD1、第2のパッド領域PAD2、第3のパッド領域PAD3、第4のパッド領域PAD4に配置される。パッド領域は、メタル層(例えば最上層のメタル層)のうちパッシベーション膜(絶縁層)から露出した部分の領域である。この露出したメタル層によってパッドが構成されている。
【0043】
パッド配置領域は、パッドが配置される領域である。パッド配置領域においてパッド間が隣接している必要はなく、パッドとパッドの間にはすき間があってもよい。それらの複数のパッドを含む(囲む)領域がパッド配置領域である。第1のパッド配置領域10は、第1の辺HN1に沿った方向を長辺とし、第3の辺HN3(又は第4の辺HN4)に沿った方向を短辺とする長方形の領域である。例えば、パッド領域PAD1、PAD2を含む長方形のうち最小の長方形の領域である。第1のパッド配置領域10と第1の辺HN1との間にはパッドと回路素子が配置されない。第2のパッド配置領域20は、第2の辺HN2に沿った方向を長辺とし、第3の辺HN3(又は第4の辺HN4)に沿った方向を短辺とする長方形の領域である。例えば、パッド領域PAD3、PAD4を含む長方形のうち最小の長方形の領域である。第2のパッド配置領域20と第2の辺HN2との間にはパッドと回路素子が配置されない。
【0044】
ここで、回路装置100の第1〜第4の辺HN1〜HN4は、半導体チップ(シリコン基板)の辺である。第3の辺HN3及び第4の辺HN4は、第1の辺HN1及び第2の辺HN2に交差(例えば直交)する辺である。第4の辺HN4は、第3の辺HN3に対向する辺であり、例えば回路装置100が長方形又は正方形である場合、第4の辺HN4は第3の辺HN3に平行(略平行を含む)な辺である。
【0045】
また本実施形態では、第1〜第4の静電保護回路(ESD1〜4)は、回路配置領域30に配置される。そして、第1の静電保護回路、第2の静電保護回路、第3の静電保護回路、第4の静電保護回路は、それぞれ第1のパッド、第2のパッド、第3のパッド、第4のパッドに接続(例えば配線等により電気的に接続)される。回路配置領域30は、第1のパッド配置領域10と第2のパッド配置領域20との間に配置される領域である。
【0046】
具体的には、第1の静電保護回路、第2の静電保護回路、第3の静電保護回路、第4の静電保護回路は、それぞれ第1の配置領域ESD1、第2の配置領域ESD2、第3の配置領域ESD3、第4の配置領域ESD4に配置される。後述するように、配置領域は、静電保護回路が配置される領域であると共に、パッドを配置可能なサイズが確保された領域である。例えば、デザインルールで決められたサイズのパッドを配置可能な最小の正方形(又は長方形)領域である。静電保護回路は、パッド(ICの端子)に印加される過電圧又は過電流から、回路装置100の内部の素子や回路を保護するための回路である。例えば静電保護回路は、パッドと電源の間に接続されたダイオードやトランジスター(例えばダイオード接続されたトランジスター)等で構成できる。
【0047】
回路配置領域30は、回路装置100のコアとなる回路が配置される領域である。コアとなる回路とは、回路装置100の機能を実現するための回路である。例えば、回路装置100が入出力する信号の処理を行う回路、回路装置が出力する信号を生成する回路等である。例えば、回路装置100がTCXO(temperature compensated crystal oscillator)等の発振器を制御する回路装置である場合、発振回路やクロック信号出力回路、温度補償回路、バイアス回路、メモリー等がコアとなる回路に相当する。例えば、半導体チップにおいて、第1のパッド配置領域10と第2のパッド配置領域20以外の領域全てが回路配置領域30である。或いは、回路装置100のコアとなる回路を含む長方形又は正方形のうち最小の長方形又は正方形が回路配置領域30である。
【0048】
ここで、回路(コアとなる回路、静電保護回路)が配置される領域とは、その回路の構成要素が配置される領域である。即ち、回路を構成する回路素子やその素子間を接続する配線、ガードバー(回路の周囲に設けられた拡散領域を電源等に接続することでノイズ等から回路を保護する構造)等が配置される領域である。回路素子は、例えばトランジスターや抵抗、キャパシター等であり、それらを構成するポリシリコンや拡散層、メタル層が領域内に配置される。
【0049】
以上の本実施形態によれば、第1のパッド配置領域10と第2のパッド配置領域20との間の回路配置領域30に、第1〜第4の静電保護回路(ESD1〜ESD4)が配置される。
【0050】
このようにすれば、車載用等のようにパッドのボンディングに高い信頼性が要求される場合には、図1のような非シュリンク版のレイアウトを採用できる。一方、比較的信頼性が要求されない場合には、回路配置領域30を切り出した(第1のパッド配置領域10と第2のパッド配置領域20を削除した)シュリンク版のレイアウトを採用できる。これにより、上記2つの場合におけるレイアウト変更を簡素化できる。以下、図2を用いて、より具体的に説明する。
【0051】
図2は、シュリンク版の回路装置120のレイアウト構成例である。図2では、パッド領域PAD1’、PAD2’、PAD3’、PAD4’に、それぞれパッドが配置される。このパッド領域PAD1’、PAD2’、PAD3’、PAD4’は、それぞれ図1の配置領域ESD1、ESD2、ESD3、ESD4に対応している。即ち、静電保護回路はパッドの下に設けられており、パッドと、そのパッドの下に設けられた静電保護回路とが接続されている。
【0052】
また図2では、回路装置120の第1の辺HN1’と回路配置領域30の辺KH1との間に第1のパッド配置領域10が設けられていない。辺KH1は、図1において第1のパッド配置領域10に隣り合う辺である。例えば、第1の辺HN1’は、図1において回路配置領域30の辺KH1と第1のパッド配置領域10との間の直線、或いは回路配置領域30の辺KH1そのものに相当している。同様に、図2では、回路装置120の第2の辺HN2’と回路配置領域30の辺KH2との間に第2のパッド配置領域20が設けられていない。辺KH2は、図1において第2のパッド配置領域20に隣り合う辺である。例えば、第2の辺HN2’は、図1において回路配置領域30の辺KH2と第2のパッド配置領域20との間の直線、或いは回路配置領域30の辺KH2そのものに相当している。なお、回路配置領域30の辺KH3、KH4は、それぞれ回路装置100の第3の辺HN3、第4の辺HN4に隣り合う辺(又は第3の辺HN3、第4の辺HN4と一致する辺)である。
【0053】
このように、シュリンク版の回路装置120では、半導体チップのサイズが回路配置領域30に相当するサイズに縮小され、静電保護回路の配置領域にパッドが設けられる。パッドのボンディングに比較的信頼性が要求されない場合には、このようなシュリンク版を採用することによってコストを低減することが可能である。一方、パッドのボンディングに高い信頼性が要求される場合には、図1のような非シュリンク版を採用することによって、パッドとは別の領域に静電保護回路を設け、静電保護の信頼性を向上できる。即ち、ボンディングによる応力等の静電保護回路への影響を低減できる。また、シュリンク版におけるパッドとは異なるパッドサイズや異なるパッド構造を採用することが可能となる。これにより、ボンディングの接触の確実性を向上させること、或いはボンディングによる回路装置100への影響(例えばクラック等)を低減することが可能となる。
【0054】
また本実施形態では、図1に示すように、第1のパッド(PAD1)、第2のパッド(PAD2)、第3のパッド(PAD3)、第4のパッド(PAD4)が、それぞれ第1のコーナーCN1の領域、第2のコーナーCN2の領域、第3のコーナーCN3の領域、第4のコーナーCN4の領域に配置される。第1のコーナーCN1は、第1の辺HN1と第3の辺HN3とが交差するコーナーである。第2のコーナーCN2は、第1の辺HN1と第4の辺HN4とが交差するコーナーである。第3のコーナーCN3は、第2の辺HN2と第3の辺HN3とが交差するコーナーである。第4のコーナーCN4は、第2の辺HN2と第4の辺HN4とが交差するコーナーである。
【0055】
具体的には、コーナーの領域は、コーナー付近(近傍)の領域である。即ち、2辺が交差するコーナーを含む所定サイズの領域(例えばコーナーを基準とする所定幅の辺を有する長方形又は正方形の領域)である。例えば第1のパッドを例にとると、パッド領域PAD1が第1のコーナーCN1の領域の内部に配置されている。そして、回路装置100の中心CP(例えば対角線の交点)からパッド領域PAD1までの距離よりも、第1のコーナーCN1からパッド領域PAD1までの距離の方が短い。例えば、パッド領域PAD1及び第1のコーナーCN1を含む最小の長方形又は正方形の領域がコーナーの領域である。より具体的には、コーナーの領域において、そのコーナーを構成する辺とパッドとの間に回路素子が配置されていない。例えば第1のパッドでは、パッド領域PAD1と第1の辺HN1との間、及びパッド領域PADと第3の辺HN3との間に、回路素子が配置されていない。なお、ここでの回路素子は例えば抵抗やキャパシター、トランジスター等の受動素子、能動素子である。
【0056】
このように、第1〜第4のパッドが第1〜第4のコーナーCN1〜CN4の領域に配置されることで、第1のパッド配置領域10が第1の辺HN1に沿った領域となり、第2のパッド配置領域20が第2の辺HN2に沿った領域となる。これにより、第1のパッド配置領域10と第2のパッド配置領域20(即ち半導体チップの上下の所定幅部分)を削除できるようなレイアウト構成を実現でき、シュリンク版と非シュリンク版との切り替えが簡素化される。
【0057】
また本実施形態では、第1のパッド(PAD1)と第1の静電保護回路(ESD1)は、第1のパッド配置領域10と回路配置領域30との間の第1の境界を挟んで配置される。第2のパッド(PAD2)と第2の静電保護回路(ESD2)は、第1の境界を挟んで配置される。第3のパッド(PAD3)と第3の静電保護回路(ESD3)は、第2のパッド配置領域20と回路配置領域30との間の第2の境界を挟んで配置される。第4のパッド(PAD4)と第4の静電保護回路(ESD4)は、第2の境界を挟んで配置される。
【0058】
具体的には、パッドが配置されるパッド領域(例えばPAD1)の一辺と、静電保護回路が配置される配置領域(例えばESD1)の一辺とが、境界を挟んで対向するように配置される。ここで、第1の境界は、回路配置領域30の辺KH1と第1のパッド配置領域10との間の(仮想的な)直線、或いは回路配置領域30の辺KH1そのものである。辺KH1は、回路装置100の第1の辺HN1に沿った(平行な)辺である。第2の境界は、回路配置領域30の辺KH2と第2のパッド配置領域20との間の(仮想的な)直線、或いは回路配置領域30の辺KH2そのものである。辺KH2は、回路装置100の第2の辺HN2に沿った(平行な)辺である。
【0059】
このように、パッドと静電保護回路とが、パッド配置領域10、20と回路配置領域30の間の境界を挟んで配置されることで、その境界(又は境界の付近)でパッド配置領域10、20と回路配置領域30を分離できる。これにより、その境界(又は境界の付近)で第1のパッド配置領域10と第2のパッド配置領域20のレイアウトを削除することで、シュリンク版の回路装置120のレイアウトを作成できる。
【0060】
また本実施形態では、第1〜第4のパッド(PAD1〜PAD4)は、回路装置100のコーナーCN1〜CN4の領域に配置されると共に、第1〜第4の静電保護回路(ESD1〜ESD4)は、回路配置領域30のコーナーの領域に配置される。
【0061】
具体的には、第1の静電保護回路は、回路配置領域30の辺KH1と辺KH3が交差するコーナーKC1の領域に配置される。第2の静電保護回路は、回路配置領域30の辺KH1と辺KH4が交差するコーナーKC2の領域に配置される。第3の静電保護回路は、回路配置領域30の辺KH2と辺KH3が交差するコーナーKC3の領域に配置される。第4の静電保護回路は、回路配置領域30の辺KH2と辺KH4が交差するコーナーKC4の領域に配置される。
【0062】
このようにすれば、パッドと、そのパッドに接続される静電保護回路とが近接(隣接)して配置される。例えば第1の静電保護回路(ESD1)が配置される回路配置領域30のコーナーKC1は、回路配置領域30のコーナーのうち、第1のパッド(PAD1)が配置される回路装置100の第1のコーナーKC1に最も近い。パッドと静電保護回路とを接続する配線が長い場合、その抵抗等により静電保護機能が低下する可能性があるが、本実施形態によれば、静電保護機能の低下を避けることができる。
【0063】
また本実施形態では、第1〜第4の静電保護回路の各々は、パッドが配置可能なサイズの配置領域に配置される。即ち、第1〜第4の静電保護回路が配置される配置領域ESD1〜4の各々は、パッドが配置可能なサイズである。
【0064】
具体的には、パッドが配置可能なサイズの配置領域とは、パッドを配置するために確保されるべきサイズの領域であり、例えばデザインルールにおいて規定されるパッドのサイズの領域である。その配置領域は、静電保護回路を配置するために確保された領域であって、静電保護回路以外の回路素子が配置されていない領域である。即ち、図3に示すように、静電保護回路は、配置領域ESD(ESD1〜4の各々)内の一部の領域にのみ配置されていてもよく、その一部の領域以外で配置領域ESD内には回路素子が配置されていない。
【0065】
このようにすれば、第1〜第4の静電保護回路が配置される配置領域(ESD1〜4)にパッドを配置し、そのパッドとパッドの下に設けられた静電保護回路とを接続することが可能となる。これにより、シュリンク版のレイアウトデータを作成する際に、パッド領域を新たに確保する必要がなく、回路配置領域30のレイアウトの変更を最小限にして、シュリンク版の回路装置120を製造できる。
【0066】
また本実施形態では、第1〜第4のパッドの各々の面積は、第1〜第4の静電保護回路の各々の配置領域(ESD1〜4)の面積よりも大きい。即ち、パッド領域PAD1〜PAD4の各々の面積は、配置領域ESD1〜4の各々の面積よりも大きい。即ち、第1のパッド(パッド領域PAD1)の面積は、第1の静電保護回路の配置領域ESD1の面積よりも大きく、第2のパッド(パッド領域PAD2)の面積は、第2の静電保護回路の配置領域ESD2の面積よりも大きく、第3のパッド(パッド領域PAD3)の面積は、第3の静電保護回路の配置領域ESD3の面積よりも大きく、第4のパッド(パッド領域PAD4)の面積は、第4の静電保護回路の配置領域ESD4の面積よりも大きい。
【0067】
図3は、パッド領域、静電保護回路の配置領域が正方形である場合のサイズの一例である。PADは、パッド領域PAD1〜PAD4の各々を表し、ESDは、静電保護回路の配置領域ESD1〜4の各々を表す。図3に示すように、非シュリンク版の回路装置100においてパッドが配置されるパッド領域PADの一辺の長さLPDは、シュリンク版の回路装置120においてパッドが配置される静電保護回路の配置領域ESDの一辺の長さLESに比べて長い。
【0068】
このようにすれば、非シュリンク版の回路装置100において、シュリンク版の回路装置120におけるパッドよりも面積が大きいパッドを用いることができる。これにより、非シュリンク版の回路装置100においてボンディングの信頼性を向上できる。この点について、図4を用いて説明する。
【0069】
図4は、回路装置(100、120)をパッケージに実装する際の端子接続の一例である。図4には、半導体チップをベアチップのまま(パッケージに収めない状態でリード端子等を介さずに)実装する、いわゆるフリップチップ実装の例を示す。
【0070】
図4に示すように、回路装置のパッド(パッシベーション膜から露出したパッドメタル)とパッケージ側端子(パッケージの内側に設けられた端子)との間に金バンプを挟む。そして、パッドとパッケージ側端子を押しつけるようにして金バンプをつぶし、その金バンプによってパッドとパッケージ側端子を接続させる。なお、金バンプは金(Au)製のバンプ(粒)である。
【0071】
このような実装を行った場合、つぶれた金バンプが半導体チップを傷付ける可能性がある。例えば、パッシベーション膜にクラックを生じさせる可能性がある。また、パッドの面積が小さい場合には、実装の際に接続不良(即ち接触抵抗が大きい接続)になる可能性や、実装後に半導体チップやパッケージにかかる応力によって事後的に接続不良が発生する可能性がありうる。この点、本実施形態によれば、ボンディングの信頼性が必要な場合に、パッド面積が大きい非シュリンク版のレイアウトを採用できる。これにより、上記のような半導体チップを傷付ける可能性や、接続不良が生じる可能性を低減できる。一方、車載用等ほどにはボンディングの信頼性が要求されない場合には、シュリンク版のレイアウトを採用することによってコストを低減できる。
【0072】
2.回路装置の詳細なレイアウト構成例
図5は、本実施形態の回路装置100の詳細なレイアウト構成例である。なお以下では回路装置100がTCXOの回路装置である場合を例に説明するが、これに限定されず、図1のレイアウト構成例は種々の回路装置に適用可能である。また、本実施形態は図5の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。
【0073】
本実施形態では、回路装置100は、発振子を発振させる発振回路と、発振回路の発振信号に基づくクロック信号を出力するクロック信号出力回路と、発振回路の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路と、を含む。そして、回路配置領域30には、発振回路、クロック信号出力回路及び温度補償回路が配置される。
【0074】
具体的には、発振回路は領域OSCに配置され、クロック信号出力回路は領域CKOUTに配置され、温度補償回路は領域TCMPに配置される。領域OSCは、回路配置領域30の辺KH1、KH3に接する領域であり、略長方形(又は略正方形)の領域である。領域CKOUTは、領域OSCの第1の方向D1側に配置される領域であり、領域OSCに隣り合う領域である。第1の方向D1は、回路装置100の第1の辺HN1から第2の辺HN2に向かう方向である。領域TCMPは、回路配置領域30の辺KH2、KH4に接する領域であり、略長方形(又は略正方形)の領域であり、領域OSC、CKOUTの第2の方向D2側に配置される領域である。第2の方向D2は、第1の方向D1に交差(直交)する方向であり、回路装置100の第3の辺HN3から第4の辺HN4に向かう方向である。
【0075】
また回路装置100は、発振周波数の温度補償用のパラメーター情報を記憶する不揮発性メモリーを含むことができる。また回路装置100は、回路装置100の各部に電源や基準電圧を供給する電圧生成回路(バイアス回路)を含むことができる。
【0076】
具体的には、不揮発性メモリーは領域MEMに配置され、電圧生成回路は領域BISに配置される。領域MEMは、回路配置領域30の辺KH1に接する領域であり、辺KH1に沿った辺を長辺とする長方形(略長方形)の領域であり、領域OSCと領域TCMPに隣り合う領域である。領域BISは、領域OSCと領域TCMPの間に配置される領域であり、領域OSC、領域CKOUT、領域TCMP、領域MEMに囲まれる領域であり、略長方形(又は略正方形)の領域である。
【0077】
なお、上記の各回路(各回路が配置される領域)は、その一部が第1のパッド配置領域10又は第2のパッド配置領域20に配置されてもよい。図5の例では、クロック信号出力回路(CKOUT)の一部が第2のパッド配置領域20に配置されている。このような回路配置領域30の外側に配置された部分は、シュリンク版の回路装置を作成する際、回路配置領域30内に収めるか、或いは削除すればよい。
【0078】
このように、本実施形態ではTCXOのコアとなる回路が回路配置領域30に配置されている。そして、図1で説明したように、パッド配置領域(10、20)に配置されるパッドに接続される静電保護回路が回路配置領域30に設けられている。これにより、回路配置領域30を残すようにパッド配置領域を削除し、静電保護回路が配置される配置領域にパッドを設けることで、シュリンク版のTCXOの回路装置を簡素な手順で作成できる。
【0079】
また本実施形態では、第1のパッド(PAD1)は、低電位側電源が供給されるパッドである。第2のパッド(PAD2)は、発振周波数の制御電圧が入力されるパッドである。第3のパッド(PAD3)は、クロック信号が出力されるパッドである。第4のパッド(PAD4)は、高電位側電源が供給されるパッドである。
【0080】
これらのパッドが第1のパッド配置領域10や第2のパッド配置領域20に配置されることによって、TCXOの回路装置に対する電源の供給や信号の入出力が実現される。そして、これらのパッドを静電保護回路の配置領域に設けることで、シュリンク版のTCXOの回路装置を作成できる。即ち、シュリンク版のレイアウトでは、配置領域ESD1に、低電位側電源が供給されるパッドを配置し、配置領域ESD2に、発振周波数の制御電圧が入力されるパッドを配置し、配置領域ESD3に、クロック信号が出力されるパッドを配置し、配置領域ESD4に、高電位側電源が供給されるパッドを配置する。
【0081】
また本実施形態では、回路装置100は第5のパッドと第6のパッドとを含む。第5のパッドは、第1のパッド配置領域10において、第1のパッド(PAD1)と第2のパッド(PAD2)との間に配置される。第6のパッドは、第2のパッド配置領域20において、第3のパッド(PAD3)と第4のパッド(PAD4)との間に配置される。第5のパッドは、発振子の一端に接続されるパッドであり、第5のパッド領域PAD5に配置される。第6のパッドは、発振子の他端に接続されるパッドであり、第6のパッド領域PAD6に配置される。
【0082】
これらのパッドが第1のパッド配置領域10や第2のパッド配置領域20に配置されることによって、回路装置100の発振回路(OSC)に発振子を接続することが可能となり、発振回路が発振子を発振させることが可能となる。そして、回路装置100と発振子をパッケージに収めることで発振器を構成できる。
【0083】
また本実施形態では、第5のパッド(PAD5)に接続される第5の静電保護回路(ESD5)を含む。第5の静電保護回路は、第1のパッド配置領域10に配置される。
【0084】
具体的には、第5の静電保護回路は、第1のパッド配置領域10内の配置領域ESD5に配置される。例えば配置領域ESD5は、パッド領域PAD5に隣り合うように配置される。配置領域ESD5は、配置領域ESD1〜ESD4とは異なり、パッドが配置可能である必要はない。即ち、シュリンク版のレイアウトにおいてパッドは配置されない。回路配置領域30には配置領域SPが設けられている。この配置領域SPは、パッドが配置可能なサイズ(パッド領域PAD5よりも小さいサイズ)の領域である。即ち、シュリンク版のレイアウトにおいて、発振子の一端に接続されるパッド(第5のパッド)と、そのパッドに接続される第5の静電保護回路が配置領域SPに配置される。配置領域SPは、不揮発性メモリーが配置される領域MEMの第1の方向D1側に配置される。より具体的には、不揮発性メモリーが配置される領域MEM、電圧生成回路が配置される領域BIS、温度補償回路が配置される領域TCMPに囲まれる領域である。
【0085】
なお、回路装置100は、第6のパッドに接続される第6の静電保護回路を更に含む。第6の静電保護回路は、回路配置領域30内の配置領域ESD6に配置される。配置領域ESD6は、パッドが配置可能なサイズ(パッド領域PAD6よりも小さいサイズ)の領域である。即ち、シュリンク版のレイアウトにおいて、発振子の他端に接続されるパッド(第6のパッド)が配置される領域である。配置領域ESD6は、配置領域ESD3と配置領域ESD4の間に配置される。配置領域ESD6と回路配置領域30の辺KH2の間には回路素子が配置されない。即ち、配置領域ESD6は辺KH2に隣接するように配置される。
【0086】
また本実施形態では、不揮発性メモリー(MEM)は、第5のパッド(PAD5)の第1の方向D1側に配置される。具体的には、不揮発性メモリーは、第5のパッドの第1の方向D1側に隣り合うようにして配置されている。
【0087】
このような配置の場合、第5のパッドと不揮発性メモリーの間に第5の静電保護回路を設けることができない(設けるスペースがない)。そのため、シュリンク版のレイアウトにおいては配置領域SPに第5の静電保護回路を配置するようになっている。しかしながら、非シュリンク版のレイアウトにした場合には、第5のパッドと配置領域SPが不揮発性メモリーを挟んで離れてしまうので、静電保護の機能が低下する可能性がある。そこで、本実施形態では、非シュリンク版のレイアウトにおいて第5の静電保護回路を第1のパッド配置領域10に配置する。これにより、静電保護回路が適正に機能するようになる。また、シュリンク版のレイアウトにおいては、配置領域SPと配置領域ESD6に配置されたパッドに発振子が接続されるので、その接続配線がデジタル回路である不揮発性メモリーをまたがない。これにより、デジタル信号による発振信号への影響(例えばジッター特性の低下)を低減できる。
【0088】
また本実施形態では、発振回路(OSC)は、第1の静電保護回路(ESD1)と第3の静電保護回路(ESD3)の間の領域に配置される。
【0089】
AC信号(交流信号)を発生させる発振回路は、DC(直流)的動作する温度補償回路に影響を及ぼす可能性がある。例えば、温度補償の精度を低下させ、発振周波数の温度特性を低下させる(公称周波数と発振周波数の誤差を大きくする)可能性がある。そのため、発振回路と温度補償回路は回路配置領域30において離れた位置に配置されることが望ましい。本実施形態では、回路配置領域30のコーナーの領域に配置される第1、第3の静電保護回路の間に発振回路を配置することで、温度補償回路との距離を確保することが可能となる。
【0090】
また本実施形態では、第1のパッド配置領域10及び第2のパッド配置領域20の少なくとも一方には、高電位電源と低電位電源との間に設けられる電源間キャパシター(パスコン)が配置される。
【0091】
具体的には、電源間キャパシターは領域PCAPに配置され、領域PCAPは、第1のパッド配置領域10及び第2のパッド配置領域20の少なくとも一方に配置される。電源間キャパシターは、パッドとパッドとの間の領域に配置される。図5では、電源間キャパシターが第2のパッド配置領域20に配置されているが、電源間キャパシターは、第1のパッド配置領域10に配置されてもよいし、第1のパッド配置領域10及び第2のパッド配置領域20の両方に配置されてもよい。電源間キャパシターは、例えば2層の金属層の間に絶縁層が設けられたMIM(Metal-Insulator-Metal)キャパシターである。なお、これに限定されず、電源間キャパシターとしてMOSキャパシターや、2層のポリシリコン層の間に絶縁層が設けられたキャパシター等を用いてもよい。
【0092】
このように、パッド配置領域に電源間キャパシターを配置することで、パッド配置領域の空き領域(パッドとパッドの間の領域)を有効活用できる。また、半導体チップ内に電源間キャパシターを設けることで、パッド(端子)の接続抵抗や配線のインダクタンスの影響をできるだけ低減することが可能となる。これにより、回路装置100の各部に供給される電源のノイズが低減され、特性を向上できる。例えば、温度補償回路の電源のノイズが低減されることで、温度補償の性能(発振周波数を温度に依らず一定に補償する性能)を向上できる。
【0093】
3.回路装置の詳細な構成例
図6は、本実施形態の回路装置100の詳細な構成例のブロック図である。回路装置100は、温度センサー160、温度補償回路150、制御回路130、記憶部140(不揮発性メモリー)、発振回路110、クロック信号出力回路180、電圧生成回路170(バイアス生成回路)を含む。なお回路装置の構成は図6の構成には限定されず、その一部の構成要素を省略したり(例えば温度センサー160等)、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0094】
発振回路110は、発振子XTALを用いて発振信号を生成する回路である。具体的には、発振回路110は、端子XIと端子XOを介して発振子XTALに接続される。この端子XIは、図5のパッド領域PAD5に配置される第5のパッドに対応し、端子XOは、図5のパッド領域PAD6に配置される第6のパッドに対応する。発振回路110は、発振子XTALを発振させることで、発振信号を生成する。例えばTCXOやOCXOでは、検出温度に応じた制御電圧VCOMP(温度補償用電圧。発振周波数の温度特性を補償する電圧)が発振回路110に入力され、発振回路110は、その制御電圧VCOMPに対応する発振周波数で発振子XTALを発振させる。
【0095】
発振子XTALは、例えば水晶振動子等の圧電振動子である。発振子XTALは恒温槽内に設けられるオーブン型振動子であってもよい。或いは発振子XTALは共振器(電気機械的な共振子又は電気的な共振回路)であってもよい。発振子XTALとしては、圧電振動子、SAW(Surface Acoustic Wave)共振子、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動子等を採用できる。発振子XTALの基板材料としては、水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電単結晶や、ジルコン酸チタン酸鉛等の圧電セラミックス等の圧電材料、又はシリコン半導体材料等を用いることができる。発振子XTALの励振手段としては、圧電効果によるものを用いてもよいし、クーロン力による静電駆動を用いてもよい。
【0096】
クロック信号出力回路180は、発振回路110の出力信号OSQに基づいてクロック信号を端子CLKOに出力する。端子CLKOは、図5のパッド領域PAD3に配置される第3のパッドに対応する。クロック信号出力回路180は、出力信号OSQ或いは出力信号OSQを分周した信号をバッファリング(外部負荷を駆動するための増幅)し、そのバッファリングした信号をクロック信号として出力する。
【0097】
制御回路130は、回路装置100の各部の制御を行う。また制御回路130は、回路装置100の外部(例えばCPU等)とのインターフェース処理なども行う。制御回路130は、例えばゲートアレイ等のロジック回路により実現される。制御回路130は例えば図5の領域MEM又は領域TCMPに配置される。
【0098】
記憶部140は、回路装置100の動作に必要な各種の情報を記憶する。例えば温度補償回路150が温度補償処理を行うために必要な情報(温度補償用の多項式の係数)等を記憶する。この情報は、例えば回路装置100の製造時や、回路装置100と発振子XTALをパッケージした発振器の製造時等において、外部(例えばテスト装置)から書き込まれる。記憶部140は例えば不揮発性メモリー(例えばFAMOS(Floating gate Avalanche injection MOS)型、MONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Silicon)型等)である。
【0099】
温度補償回路150は、温度センサー160からの温度検出信号VT(温度検出電圧)に基づいて、発振回路110の発振周波数の温度補償を実現するための制御電圧VCOMP(温度補償用電圧)を生成して、その制御電圧VCOMPを発振回路110に出力する。例えば発振子XTALが有する発振周波数の温度特性をテスト装置で測定し、その温度特性をキャンセルする(温度特性による発振周波数の変動を抑制する)3次又は5次の多項式(近似式)を求める。そして、その多項式の係数を記憶部140に書き込んでおく。温度補償回路150が温度補償を行う際には、制御回路130が多項式の係数を記憶部140から読み出して温度補償回路150に出力し、その係数に基づいて温度補償回路150が、発振周波数の温度特性をキャンセルする(温度特性による発振周波数の変動を抑制する)制御電圧VCOMPを発生させる。また温度補償回路150は、端子VCNTを介して外部から入力される発振周波数の制御電圧に基づいて制御電圧VCOMPを出力する。例えば、温度検出信号VTに基づいて生成した温度補償用の制御電圧と、端子VCNTを介して外部から入力される制御電圧とを加算処理して、その加算処理された電圧を制御電圧VCOMPとして出力する。端子VCNTは、図5のパッド領域PAD2に配置される第2のパッドに対応する。
【0100】
温度センサー160は、回路装置100(半導体チップ)の温度を検出するセンサーである。例えば、温度センサー160は、ダイオード(PN接合)等で構成できる。この場合、ダイオードの順方向電圧の温度依存性を用いて温度検出を行う。即ち、ダイオードの順方向電圧に基づいて温度検出信号VTを出力する。なお、温度センサー160はこれに限定されず、サーミスター等の種々の温度センサーを採用できる。温度センサー160は、例えば図5の領域BISに配置される。
【0101】
電圧生成回路170は、回路装置100の各部に供給するための電源や基準電圧、バイアス電圧、バイアス電流等を生成する回路である。具体的には、電圧生成回路170には、端子VDDを介して高電位側電源が入力され、端子VSSを介して低電位側電源(グランド)が入力される。端子VDDは、図5のパッド領域PAD4に配置される第4のパッドに対応し、端子VSSは、図5のパッド領域PAD1に配置される第1のパッドに対応する。例えば、電圧生成回路170は、温度依存性が非常に小さい電圧(生成される各電圧の基準となる電圧)を生成するバンドギャップリファレンス回路、電源や基準電圧、バイアス電圧を生成するレギュレーター、バイアス電流を生成する電流生成回路等を含むことができる。
【0102】
4.発振回路
図7は、発振回路110の詳細な構成例である。発振回路110は、発振部12(発振回路本体)、バッファー14(プリバッファー、増幅部)を含む。なお、本実施形態は図7の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。
【0103】
発振部12は、トランジスターTPA1、TPA2(P型トランジスター、第1導電型トランジスター)と抵抗素子RA2で構成されるカレントミラー回路(電流源)を含む。このカレントミラー回路は、抵抗素子RA2に流れる電流IRAをミラーして、バイアス電流IBAを出力する。
【0104】
また発振部12は、バイポーラートランジスターTRA、抵抗素子RA1、キャパシターCA1〜CA3、バラクターCVA1、CVA2(可変容量ダイオード、可変容量キャパシター)を含む。バイポーラートランジスターTRAのコレクター端子は端子XO(パッド)を介して発振子XTALの一端に接続され、ベース端子は端子XI(パッド)を介して発振子XTALの他端に接続される。バイポーラートランジスターTRAには、発振子XTALの発振により生じたベース−エミッター間電流が流れる。ベース−エミッター間電流が増加すると、コレクター−エミッター間電流が増加し、バイアス電流IBAのうち抵抗素子RA1に分岐するバイアス電流が減少するので、コレクター電圧VCAが低下する。一方、ベース−エミッター間電流が減少すると、コレクター−エミッター間電流が減少し、バイアス電流IBAのうち抵抗素子RA1に分岐するバイアス電流が増加するので、コレクター電圧VCAが上昇する。コレクター電圧VCAは発振子XTALにフィードバックされるので、発振子XTALが発振する。
【0105】
発振子XTALの発振周波数は温度特性をもっており、その温度特性は、温度補償回路150が発生した制御電圧VCOMPにより補償される。即ち、制御電圧VCOMPはバラクターCVA1、CVA2の一端に入力され、その制御電圧VCOMPによりバラクターCVA1、CVA2の容量値が制御される。バラクターCVA1、CVA2の他端はバイポーラートランジスターTRAのベース端子、コレクター端子に接続されている。バラクターCVA1、CVA2の容量値が変化すると発振ループの共振周波数が変化するので、発振子XTALの温度特性による発振周波数の変動が補償される。
【0106】
なお、本実施形態の発振回路は図7の構成に限定されず、種々の発振回路を採用することが可能である。また、図7ではCVA1、CVA2を可変容量キャパシターとする場合を例に説明したが、本実施形態はこれに限定されず、CVA1、CVA2の一方のみを、制御電圧VCOMPで制御される可変容量キャパシターとしてもよい。
【0107】
バッファー14は、キャパシターCA4、抵抗素子RA3、インバーターIVA1、IVA2を含む。インバーターIVA1にはキャパシターCA4を介してコレクター電圧VCA(発振信号)が入力される。抵抗素子RA3を介してインバーターIVA1の出力が入力に帰還されており、これによってインバーターIVA1の入力のバイアス点が制御されている。インバーターIVA2は、インバーターIVA1の出力をバッファリングし、そのバッファリングした信号を出力信号OSQとして出力する。
【0108】
5.クロック信号出力回路
図8は、クロック信号出力回路180の詳細な構成例である。なお、本実施形態は図8の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。例えば、以下ではクロック信号出力回路180がクリップドサイン波のクロック信号を出力する場合を例に説明するが、これに限定されない。例えば、クロック信号出力回路180は矩形波(例えばCMOSレベル)のクロック信号を出力する回路であってもよい。
【0109】
図8のクロック信号出力回路180は、トランジスターTB1、TB2、バイアス電圧設定回路BAS1、BAS2、キャパシターCB1、CB2を含む。
【0110】
トランジスターTB1は、電源VRAのノード(高電位側電源ノード)と出力ノードNAQとの間に設けられる。トランジスターTB2は、出力ノードNAQと電源VSのノード(低電位側電源ノード)との間に設けられる。例えばトランジスターTB1はN型トランジスター(第1導電型トランジスター)であり、トランジスターTB2はP型トランジスターである。
【0111】
バイアス電圧設定回路BAS1は、トランジスターTB1のゲートノードNG1に対してバイアス電圧を設定する回路である。このバイアス電圧設定回路BAS1は、例えば電源VRAのノードと電源VSのノードの間に直列に設けられる抵抗素子RB1、RB2を含む。これによりVRA−VS間を抵抗素子RB1、RB2で抵抗分割した電圧が、バイアス電圧としてゲートノードNG1に印加されるようになる。
【0112】
バイアス電圧設定回路BAS2は、トランジスターTB2のゲートノードNG2に対してバイアス電圧を設定する回路である。このバイアス電圧設定回路BAS2は、例えばゲートノードNG2と電源VSのノードの間に設けられる抵抗素子RB4を含む。
【0113】
キャパシターCB1は、発振回路110のバッファー14からの出力信号OSQが入力される入力ノードNAIとゲートノードNG1との間に設けられる。キャパシターCB2は、入力ノードNAIとゲートノードNG2との間に設けられる。これらのキャパシターCB1、CB2はDCカット用(ACカップリング用)のキャパシターである。
【0114】
なお端子CLKOと外部ノードNCの間にはキャパシターCC1が設けられる。ノードNCに接続される抵抗素子RC、キャパシターCC2は外部負荷を表すものである。
【0115】
ノードNAIの電圧が変化すると、ノードNG1の電圧は、バイアス電圧設定回路BAS1によるバイアス電圧を基準として変化する。またノードNG2の電圧は、バイアス電圧設定回路BAS2によるバイアス電圧を基準として変化する。即ち、トランジスターTB1、TB2のゲート電圧がバイアス電圧を基準として変化することによって、トランジスターTB1、TB2の駆動能力(オン抵抗)が制御されている。これにより出力ノードNAQには、クリップドサイン波の信号が出力されるようになる。クリップドサイン波の信号は、サイン波の上下が所定電圧レベル(例えば電源電圧レベル)にクリップされた信号である。
【0116】
6.温度補償回路
図9は、温度補償回路150の詳細な構成例である。温度補償回路150は、基準温度調整回路15、0次成分発生回路220、1次成分発生回路230、3次成分発生回路240、高次成分発生回路250、1次成分ゲイン調整回路260、3次成分ゲイン調整回路270、高次成分ゲイン調整回路280、加算回路200を含む。なお、本実施形態は図9の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。
【0117】
基準温度調整回路15は、制御電圧VCOMP(温度補償用電圧)の基準温度T0を調整する回路であり、例えば温度検出信号VT(温度検出電圧)の基準電圧を調整することで基準温度T0を調整する。制御電圧VCOMPの1次成分、3次成分、高次成分は、それぞれ基準温度T0を中心に対称であり、基準温度調整回路15は、その対称の中心を調整する。
【0118】
0次成分発生回路220は、発振子XTAL(水晶振動子)の発振周波数がもつ温度特性の0次成分を近似する0次成分電圧VS0(0次成分信号)を出力する。例えば抵抗分割回路など、DC電圧を出力する回路で構成される。
【0119】
1次成分発生回路230は、水晶振動子の発振周波数がもつ温度特性の1次成分を近似する1次成分電流IS1(広義には1次成分信号)を出力する。即ち、Tを温度とすると、IS1は、(T−T0)に比例又は反比例する関数を近似する電流である。1次成分発生回路230は、例えば正転増幅アンプ等により構成できる。1次成分ゲイン調整回路260は、記憶部140に記憶されたゲイン値A1に基づいて、1次成分電流IS1のゲイン調整を行い、1次成分電圧VS1=A1×IS1(広義には1次出力信号)を出力する。なお、1次成分発生回路230及び1次成分ゲイン調整回路260は、ゲイン調整可能な一体のアンプ回路(例えば正転増幅アンプ)として構成されてもよい。
【0120】
3次成分発生回路240は、水晶振動子の発振周波数がもつ温度特性の3次成分を近似する3次成分電流IS3(広義には3次成分信号)を出力する。即ち、IS3は、(T−T0)に比例又は反比例する関数を近似する電流である。3次成分ゲイン調整回路270は、記憶部140に記憶されたゲイン値A3に基づいて、3次成分電流IS3のゲイン調整を行い、3次成分電圧VS3=A3×IS3(広義には3次出力信号)を出力する。
【0121】
高次成分発生回路250は、水晶振動子の発振周波数がもつ温度特性の、4次以上の成分である高次成分を近似する高次成分電流ISh(広義には高次成分信号)を出力する。即ち、IShは高次関数g(T−T0)を近似する電流である。例えば、g(T−T0)は、(T−T0)に比例又は反比例する関数、及び(T−T0)に比例又は反比例する関数を合成した合成関数である。高次成分ゲイン調整回路280は、記憶部140に記憶されたゲイン値Ahに基づいて、高次成分電流IShのゲイン調整を行い、高次成分電圧VSh=Ah×ISh(広義には高次出力信号)を出力する。
【0122】
加算回路200は、0次成分電圧VS0、1次成分電圧VS1、3次成分電圧VS3、高次成分電圧VSh、端子VCNTを介して外部から入力される制御電圧を加算し、制御電圧VCOMPを出力する。VS0=A0とすると、制御電圧VCOMPはVCOMP=Ah×g(T−T0)+A3(T−T0)+A1(T−T0)+A0を近似する電圧である。
【0123】
なお、図9の構成例では、1次成分信号として電流IS1が出力され、3次成分信号として電流IS3が出力され、高次成分信号として電流IShが出力される場合を例に説明したが、本実施形態はこれに限定されない。即ち、1次成分信号、3次成分信号、高次成分信号として電圧が出力されるように構成してもよい。
【0124】
7.発振器、電子機器、移動体
図10は、本実施形態の回路装置500を含む発振器400の構成例である。発振器400は、回路装置500と、発振子XTAL(振動子、振動片)と、を含む。回路装置500は、上述した回路装置100又は回路装置120に対応する。また発振器400は、回路装置100、発振子XTALが収容されるパッケージ410を含むことができる。なお発振器は図10の構成に限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0125】
パッケージ410は、例えばベース部412とリッド部414により構成される。ベース部412は、セラミック等の絶縁材料からなる例えば箱型等の部材であり、リッド部414は、ベース部412に接合される例えば平板状等の部材である。ベース部412の例えば底面には外部機器と接続するための外部接続端子(外部電極)が設けられている。ベース部412とリッド部414により形成される内部空間(キャビティー)に、回路装置500、発振子XTALが収容される。そしてリッド部414により密閉することで、回路装置500、発振子XTALがパッケージ410内に気密に封止される。
【0126】
回路装置500と発振子XTALは、パッケージ410内に実装される。そして発振子XTALの端子と、回路装置500(IC)の端子(パッド)は、パッケージ410の内部配線により電気的に接続される。
【0127】
図11は、本実施形態の回路装置500を含む電子機器の構成例である。この電子機器は、回路装置500、水晶振動子等の発振子XTAL、アンテナANT、通信部510(通信装置)、処理部520(処理装置)を含む。また操作部530(操作装置)、表示部540(表示装置)、記憶部550(メモリー)を含むことができる。発振子XTALと回路装置500により発振器400が構成される。なお電子機器は図11の構成に限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0128】
図11の電子機器としては、例えばGPS内蔵時計、生体情報測定機器(脈波計、歩数計等)又は頭部装着型表示装置等のウェアラブル機器や、スマートフォン、携帯電話機、携帯型ゲーム装置、ノートPC又はタブレットPC等の携帯情報端末(移動端末)や、コンテンツを配信するコンテンツ提供端末や、デジタルカメラ又はビデオカメラ等の映像機器や、或いは基地局又はルーター等のネットワーク関連機器などの種々の機器を想定できる。
【0129】
通信部510(無線回路)は、アンテナANTを介して外部からデータを受信したり、外部にデータを送信する処理を行う。処理部520は、電子機器の制御処理や、通信部510を介して送受信されるデータの種々のデジタル処理などを行う。この処理部520の機能は、例えばマイクロコンピューターなどのプロセッサーにより実現できる。操作部530は、ユーザーが入力操作を行うためのものであり、操作ボタンやタッチパネルディスプレイをなどにより実現できる。表示部540は、各種の情報を表示するものであり、液晶や有機ELなどのディスプレイにより実現できる。なお操作部530としてタッチパネルディスプレイを用いる場合には、このタッチパネルディスプレイが操作部530及び表示部540の機能を兼ねることになる。記憶部550は、データを記憶するものであり、その機能はRAMやROMなどの半導体メモリーやHDD(ハードディスクドライブ)などにより実現できる。
【0130】
図12は、本実施形態の回路装置を含む移動体の例を示す。本実施形態の回路装置(発振器)は、例えば、車、飛行機、バイク、自転車、或いは船舶等の種々の移動体に組み込むことができる。移動体は、例えばエンジンやモーター等の駆動機構、ハンドルや舵等の操舵機構、各種の電子機器(車載機器)を備えて、地上や空や海上を移動する機器・装置である。図12は移動体の具体例としての自動車206を概略的に示している。自動車206には、本実施形態の回路装置と振動子を有する発振器(不図示)が組み込まれる。制御装置208は、この発振器により生成されたクロック信号により動作する。制御装置208は、例えば車体207の姿勢に応じてサスペンションの硬軟を制御したり、個々の車輪209のブレーキを制御する。例えば制御装置208により、自動車206の自動運転を実現してもよい。なお本実施形態の回路装置や発振器が組み込まれる機器は、このような制御装置208には限定されず、自動車206等の移動体に設けられる種々の機器(車載機器)に組み込むことが可能である。
【0131】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。また回路装置、発振器、電子機器、移動体等の構成・動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0132】
10…第1のパッド配置領域、12…発振部、14…バッファー、
15…基準温度調整回路、20…第2のパッド配置領域、30…回路配置領域、
100…回路装置、110…発振回路、120…回路装置、130…制御回路、
140…記憶部、150…温度補償回路、160…温度センサー、
170…電圧生成回路、180…クロック信号出力回路、200…加算回路、
206…自動車、207…車体、208…制御装置、209…車輪、
220…0次成分発生回路、230…1次成分発生回路、240…3次成分発生回路、
250…高次成分発生回路、260…1次成分ゲイン調整回路、
270…3次成分ゲイン調整回路、280…高次成分ゲイン調整回路、
400…発振器、410…パッケージ、412…ベース部、414…リッド部、
500…回路装置、510…通信部、520…処理部、530…操作部、
540…表示部、550…記憶部、
BIS…領域、CKOUT…領域、CLKO…端子(パッド)、
CN1…第1のコーナー、CN2…第2のコーナー、CN3…第3のコーナー、
CN3…第4のコーナー、D1…第1の方向、D2…第2の方向、
ESD、ESD1〜ESD6…配置領域、HN1…第1の辺、HN2…第2の辺、
HN3…第3の辺、HN4…第4の辺、KC1〜KC4…回路配置領域のコーナー、
MEM…領域、OSC…領域、PAD,PAD1〜PAD6…パッド領域、
PCAP…領域、SP…配置領域、TCMP…領域、VCNT…端子(パッド)、
VDD…端子(パッド)、VSS…端子(パッド)、XI…端子(パッド)、
XO…端子(パッド)、XTAL…発振子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12