特許第6790714号(P6790714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特許6790714-電池モジュール 図000002
  • 特許6790714-電池モジュール 図000003
  • 特許6790714-電池モジュール 図000004
  • 特許6790714-電池モジュール 図000005
  • 特許6790714-電池モジュール 図000006
  • 特許6790714-電池モジュール 図000007
  • 特許6790714-電池モジュール 図000008
  • 特許6790714-電池モジュール 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790714
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20201116BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   H01M2/10 E
   H01M10/48 301
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-205963(P2016-205963)
(22)【出願日】2016年10月20日
(65)【公開番号】特開2018-67477(P2018-67477A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】守作 直人
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩生
【審査官】 浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−018740(JP,A)
【文献】 特開2016−062880(JP,A)
【文献】 特開2016−038933(JP,A)
【文献】 特開2016−018739(JP,A)
【文献】 特開2016−181408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面と前記主面上に設けられた電極端子とを有し、第1方向に沿って互いに積層された複数の電池セルと、
前記電池セルを個別に保持する複数のホルダと、
前記第1方向に沿って前記複数の電池セルを拘束する拘束部と、
少なくとも1つの前記電池セルの前記主面上に設けられた温度センサと、
前記温度センサが設けられた前記電池セルである測温セルを含む少なくとも2つの互いに隣接する前記電池セルを覆うように前記主面に対向して配置された第1カバーと、を備え、
前記第1カバーは、前記温度センサを前記測温セルに対して押圧するための押圧部と、前記測温セルを保持する前記ホルダに対する前記第1方向についての位置決めを行う位置決め部と、を有し、
前記測温セルを保持する前記ホルダは、前記第1方向に交差する第1交差面を含み、
前記第1カバーは、前記第1方向に交差する第2交差面を含み、
前記位置決め部は、前記第1交差面と前記第2交差面との突き当てにより前記位置決めを行う、電池モジュール。
【請求項2】
前記測温セルを保持する前記ホルダは、前記第1カバー上に突出する突起を有し、
前記第1交差面は、前記突起の外面であり、
前記位置決め部は、前記第1方向における前記突起の両側から前記突起に係合する一対の係合爪を有し、
前記第2交差面は、前記外面に対向する前記一対の係合爪の内面である、
請求項記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記測温セルを保持する前記ホルダは、前記第1カバー上に突出する突起を有し、
前記第1カバーは、前記主面に対向する対向面と、前記対向面の反対側において前記主面に沿って延びる反対面と、を有し、
前記突起は、前記反対面に接触する接触面を含む、
請求項記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記第1方向に沿って前記第1カバーに隣接するように前記主面に対向して配置された第2カバーを更に備える、
請求項記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記第1方向に沿って前記第1カバーに隣接するように前記主面に対向して配置された第2カバーを更に備え、
前記第1カバーは、前記主面に交差する方向に沿って前記第2カバーと重複する重複部を有する、
請求項記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記第1方向に沿って前記電池セルと共に拘束された弾性部材を更に備える、
請求項記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一方向に配列された複数の蓄電装置を有する蓄電装置群と、蓄電装置群の両側に配置された1対の拘束部材と、蓄電装置群の上方に配置されると共に、1対の拘束部材に固定されるカバーと、蓄電装置の上面に載置され、蓄電装置の温度を検出する温度センサと、を備える蓄電装置モジュールが記載されている。この蓄電装置モジュールにおいては、1対の拘束部材の何れか一方側に、蓄電装置の膨張を吸収する膨張吸収部が配置されている。また、カバーには、温度センサを蓄電装置に対して押さえる押さえ部が組み付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−122575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の蓄電装置モジュールでは、温度センサにおける膨張吸収部の反対側の端から押さえ部までの距離が、温度センサが載置された蓄電装置が複数の蓄電装置の膨張によって膨張吸収部側に移動する量よりも長くされている。これにより、この蓄電装置モジュールにあっては、蓄電装置の膨張により温度センサが膨張吸収部側に移動しても、温度センサが押さえ部により蓄電装置に対して押さえられた状態に維持される。このように、上記技術分野においては、電池セルの膨張に関わらず、温度センサが設けられた電池セルである測温セルに対して温度センサが確実に押圧されることが望まれている。
【0005】
本発明は、測温セルに対して温度センサを確実に押圧可能な電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電池モジュールは、主面と主面上に設けられた電極端子とを有し、第1方向に沿って互いに積層された複数の電池セルと、電池セルを個別に保持する複数のホルダと、第1方向に沿って複数の電池セルを拘束する拘束部と、少なくとも1つの電池セルの主面上に設けられた温度センサと、温度センサが設けられた電池セルである測温セルを含む少なくとも2つの互いに隣接する電池セルを覆うように主面に対向して配置された第1カバーと、を備え、第1カバーは、温度センサを測温セルに対して押圧するための押圧部と、測温セルを保持するホルダに対する第1方向についての位置決めを行う位置決め部と、を有する。
【0007】
この電池モジュールにおいては、第1カバーは、温度センサを測温セルに対して押圧するための押圧部と、測温セルを保持するホルダに対する第1方向についての位置決めを行う位置決め部と、を有する。これにより、電池セルに膨張が生じた際に、測温セルを保持するホルダと第1カバーとが第1方向について一体的に移動する。このため、第1カバーの押圧部と測温セル側の温度センサとの相対移動が抑制される。その結果、第1カバーの押圧部により温度センサが測温セルに対して押さえられた状態が維持される。つまり、この電池モジュールによれば、測温セルに対して温度センサを確実に押圧可能である。
【0008】
本発明に係る電池モジュールにおいては、測温セルを保持するホルダは、第1方向に交差する第1交差面を含み、第1カバーは、第1方向に交差する第2交差面を含み、位置決め部は、第1交差面と第2交差面との突き当てにより位置決めを行ってもよい。この場合、ホルダの第1交差面と第1カバーの第2交差面とが第1方向において互いに突き当たることで、測温セルを保持するホルダに対する第1カバーの第1方向についての位置決めが可能となる。
【0009】
本発明に係る電池モジュールにおいては、測温セルを保持するホルダは、第1カバー上に突出する突起を有し、第1交差面は、突起の外面であり、位置決め部は、第1方向における突起の両側から突起に係合する一対の係合爪を有し、第2交差面は、外面に対向する一対の係合爪の内面であってもよい。この場合、測温セルを保持するホルダの突起の外面と第1カバーの一対の係合爪の内面とが互いに突き当たる簡単な構造で、第1方向の両側(第1方向及び第1方向の反対方向)における位置決めが可能となる。
【0010】
本発明に係る電池モジュールにおいては、第1カバーは、主面に対向する対向面と、対向面の反対側において主面に沿って延びる反対面と、を有し、突起は、反対面に接触する接触面を含んでもよい。この場合、ホルダの突起は、その接触面において第1カバーの反対面に接触するため、主面から離間するような第1カバーの移動を規制することができる。
【0011】
本発明に係る電池モジュールにおいては、第1方向に沿って第1カバーに隣接するように主面に対向して配置された第2カバーを更に備えてもよい。この場合、電池モジュールにおける電池セルの個数に応じて第2カバーを配置することで、第1カバー及び第2カバーが電池セルを確実に覆って保護することができる。
【0012】
本発明に係る電池モジュールにおいては、第1カバーは、主面に交差する方向に沿って第2カバーと重複する重複部を有してもよい。この場合、電池セルの膨張に起因してホルダ及び第1カバーが第1方向に沿って移動したとしても、第1カバーと第2カバーとの重複部が重複する範囲内で、第1カバー及び第2カバーにより電池セルが覆われた状態が維持される。
【0013】
本発明に係る電池モジュールにおいては、第1方向に沿って電池セルと共に拘束された弾性部材を更に備えてもよい。この場合、電池セルが膨張して電池セルが第1方向に沿って移動したとしても、例えば弾性部材が潰れることで、電池セルの膨張による荷重を吸収できる。またこのとき、電池セルの第1方向に沿った移動が比較的大きくなるため、位置決め部による第1カバーの位置決めの効果が顕著なものとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、測温セルに対して温度センサを確実に押圧可能な電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態に係る電池モジュールの全体構成を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示された電池モジュールのII−II線に沿っての断面図である。
図3図3は、図1に示された電池セルの第1方向に直交する面に沿っての断面図である。
図4図4は、図1に示された電池セル及びホルダの斜視図である。
図5図5は、図1に示された電池モジュールの第1方向に直交する面に沿っての断面図である。
図6図6は、図1に示された第1カバーの斜視図である。
図7図7は、比較例に係る電池モジュールにおける押圧部とサーミスタとの相対位置変化を示す断面図である。
図8図8は、図1に示された電池モジュールにおける押圧部とサーミスタとの相対位置変化を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。また、説明中、「上」、「下」等の方向を示す語は、図面に示された状態に基づいた便宜的な語である。各図には、説明の便宜のために、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸が設定されている。
【0017】
一実施形態に係る電池モジュール10について説明する。図1及び図2に示されるように、電池モジュール10は、例えば、リチウムイオン二次電池又はニッケル水素蓄電池などの複数の電池セル11を備える。本実施形態では、一例として、電池セル11の個数は13個である。複数の電池セル11のそれぞれは、複数のホルダ21に個別に保持された状態で第1方向(例えばX軸方向)に沿って互いに積層されている。すなわち、電池モジュール10は、電池セル11を個別に保持する複数のホルダ21を備える。
【0018】
第1方向における電池セル11の積層体の両端には、一対のエンドプレート(拘束部)12A,12Bが設けられている。積層体とエンドプレート12Aの間には、中間プレート15が配置されている。また、中間プレート15とエンドプレート12Aとの間には、例えばゴムやスポンジ等の弾性材料から成る弾性部材17が配置されている。
【0019】
一対のエンドプレート12A,12B、中間プレート15、及びホルダ21には、ボルトBが挿通されている。ボルトBは、一方のエンドプレート12Aから他方のエンドプレート12Bに架け渡されるように挿通され、他方のエンドプレート12B側でナットNに螺合されている。したがって、一対のエンドプレート12A,12Bは、第1方向に沿って複数の電池セル11を弾性部材17と共に拘束する。すなわち、電池モジュール10は、第1方向に沿って複数の電池セル11を拘束するエンドプレート12A,12Bと、第1方向に沿って電池セル11と共に拘束された弾性部材17と、を備える。
【0020】
図3及び図4に示されるように、電池セル11は、電極組立体52と、電極組立体52を収容するケース51と、電極組立体52の電極(正極及び負極のそれぞれ)に電気的に接続され、ケース51から突出する一対の電極端子55と、を有している。
【0021】
ケース51は、電極組立体52を収容する箱状の本体部53と、本体部53の開口部を閉塞する板状の蓋部54とから構成されている。蓋部54の上面(主面)54Aには、電極端子55(正極端子及び負極端子)が設けられている。電極端子55は、導電部材58を介して電極組立体52に電気的に接続されている。すなわち、電池セル11は、上面54Aと、上面54A上に設けられた電極端子55とを有する。
【0022】
電極組立体52は、複数の正極(不図示)及び負極(不図示)と、正極と負極との間に配置されたセパレータ(不図示)と、を含む。正極及び負極は、セパレータを介して交互に積層されている。正極及び負極の積層方向は、電池セル11の積層方向(第1方向:X軸方向)と実質的に一致している。
【0023】
蓋部54の上面54Aには、ケース51の内圧が閾値まで上昇したときに、破断してケース51の内圧が開放される開放弁57が設けられている。閾値は、ケース51の内圧が高まったときに、ケース51の内圧によってケース51が破損する前に開放弁57が破断するように設定される。
【0024】
図4に示されるように、ホルダ21は、矩形平板状の底壁部22、側壁部23、側壁部24、背面部25、一対の延在部26、一対の突設部29、一対の端子収容部31、及び一対の突設部33を有している。
【0025】
底壁部22は、電池セル11を保持する際、電池セル11の底面(上面54Aの反対側の面)を覆う部分である。側壁部23及び側壁部24は、第1方向に交差する第2方向(例えばY軸方向)における底壁部22の両端において互いに対向するように配置され、第1方向及び第2方向に交差する第3方向(例えばZ軸方向)に沿って延在している。側壁部23及び側壁部24は、電池セル11を保持する際、電池セル11の側面(上面54Aと底面とを互いに接続する面)を覆う部分である。背面部25は、その厚み方向が第1方向に沿う状態において、側壁部23及び側壁部24を接続するように設けられている。背面部25の上端25Aの位置は、側壁部23及び側壁部24の上端の位置23A,24Aに一致する。背面部25は、電池セル11を保持する際、電池セル11における蓋部54の上面54Aの一部を覆う。
【0026】
延在部26は、側壁部23及び側壁部24のそれぞれの上端の位置23A,24Aに設けられている。一対の延在部26は、互いに対向するように配置され、第3方向に沿って延在している。一対の延在部26における互いに対向する面には、突起27が設けられている。
【0027】
図4及び図5に示されるように、突起27は、延在部26の先端部において、側壁部23及び側壁部24のそれぞれの上端の位置23A,24Aから、後述する第1カバー61の立設部61Dの高さに相当する距離だけ離れた位置に形成されている。突起27は、一例として、延在部26の先端部において第1方向に沿って延在する三角柱状に形成されている。突起27の第1方向における長さは、延在部26の第1方向における長さよりも短い。突起27は、第1方向における両端部において一対の外面27Aを含む。本実施形態では、外面27Aは、第1方向に交差(直交)する第1交差面である。したがって、ホルダ21は、第1方向に交差する第1交差面(外面27A)を含む。
【0028】
図5に示されるように、突起27は、延在部26から第2方向に沿って第1カバー61上に突出する。よって、突起27は、立設部61Dに係合可能である。突起27と立設部61Dとが係合する場合においては、突起27における第1カバー61側(上面54A側)の面である接触面27Bが、立設部61Dの端面61Gに接触する。ここでは、端面61Gは、第1カバー61における上面54Aに対向する対向面61Sの反対側において上面54Aに沿って延びる反対面である。したがって、突起27は、反対面に接触する接触面27Bを含む。これにより、突起27は、上面54Aから離間するような第1カバー61の移動を規制する。突起27の第2方向に沿った突出量は、例えば、立設部61Dの厚み以上である。なお、突起27の第2方向に沿った突出量は、立設部61Dの厚み未満であってもよい。
【0029】
図4及び図5に示されるように、突設部29は、第3方向における側壁部23及び側壁部24のそれぞれの下端部の位置23C,24Cに設けられている。突設部29には、第1方向に沿って貫通する挿通孔29Aが設けられている。挿通孔29Aには、上述したボルトBが挿通される。
【0030】
端子収容部31は、第2方向における背面部25の上端25Aの両端にそれぞれ設けられている。端子収容部31は、側壁部23及び側壁部24にそれぞれ連なるように設けられている。端子収容部31は、第3方向からみてU字状であり、第1方向の反対方向に開口している。端子収容部31は、電池セル11を保持する際、電池セル11の電極端子55をそれぞれ囲う部分である。
【0031】
突設部33のそれぞれは、背面部25の上端25Aにおいて、端子収容部31に隣り合うように設けられている。突設部33は、第1方向にそって延在する四角柱状であり、その長さは、例えば第1方向における底壁部22の長さに一致する。突設部33には、第1方向に沿って貫通する挿通孔33Aが設けられている。挿通孔33Aには、上述したボルトBが挿通される。
【0032】
ホルダ21では、上述した底壁部22、側壁部23、側壁部24、背面部25及び突設部33によって囲まれる空間によって、電池セル11が収容される収容部CLが形成されている。収容部CLに電池セル11が収容された状態において、上面54Aには、サーミスタ(温度センサ)91が設けられる。
【0033】
ここでは、電池モジュール10は、複数のサーミスタ91を備えている。サーミスタ91は、例えば図2に示されるように、エンドプレート12Aから数えて3個目の電池セル11である電池セル11Aと、エンドプレート12Bから数えて3個目の電池セル11である電池セル11Bと、電池セル11の積層体の中央に位置する電池セル11Cと、に設けられている。複数の電池セル11のうちの電池セル11Cは、サーミスタ91が設けられた測温セルである。図1に示されるように、サーミスタ91には、接続端子を介して制御装置93と接続される信号線(不図示)が接続されている。サーミスタ91の検出信号は、信号線及び接続端子を介して制御装置93に送信される。
【0034】
図1及び図2に示されるように、電池モジュール10は、第1カバー61、第2カバー62、及び第2カバー63を備える。第1カバー61は、上面54Aに対向するように設けられている。第1カバー61は、サーミスタ91が設けられた電池セル11である電池セル11Cを含む少なくとも2つの互いに隣接する電池セル11を覆うように上面54Aに対向して配置されている。第1カバー61には、例えば、電池セル11の充放電に寄与する電子部品や、電池モジュール10の制御を行う電池ECUを含む制御装置93が載置される。第1カバー61は、例えば樹脂製部材である。
【0035】
図5及び図6に示されるように、第1カバー61は、本体部61Aと、一対の立設部61Dと、一対の延設部61Eと、を有している。本体部61Aは、矩形平板状に形成されている。本体部61Aは、上面54Aに対向する対向面61Sと、対向面61Sの反対側において上面54Aに沿って延びる反対面61Tと、を有する。
【0036】
立設部61Dは、第2方向における本体部61Aの両端に設けられている。立設部61Dは、第3方向に沿って延びるように反対面61Tに立設されている。一対の立設部61Dは、第2方向において互いに対向している。立設部61Dは、第1方向について、本体部61Aの略全体にわたって延在している。
【0037】
延設部61Eは、第3方向に沿って延びるように、対向面61Sに立設されている。一対の延設部61Eは、第2方向において開放弁57を挟んで互いに対向するように配置されている。延設部61Eは、第1方向について、本体部61Aの略全体にわたって延在している。延設部61Eは、上面54Aに接触している。延設部61Eの下端には、弾性部材等が設けられていてもよい。なお、延設部61Eは、上面54Aに接触していなくてもよい。
【0038】
第1カバー61は、サーミスタ91を電池セル11Cに対して押圧するための押圧部70を有する。押圧部70は、突起71と、バネ座部72と、バネSPと、を含む。突起71は、一例として、対向面61Sから突出するように円柱状に形成されている。突起71は、第1カバー61と一体的に形成されている。突起71は、バネSPの位置を規定すると共に、バネSPの外れを抑制する。バネ座部72は、バネSPの一端部に接触される部分である。バネ座部72は、一例として、対向面61Sの一部である。なお、バネ座部72は、対向面61Sから突出するように形成されていてもよいし、対向面61Sを窪ませて形成されていてもよい。
【0039】
バネSPの一端部は、突起71を取り囲むように突起71に嵌め合わされている。バネSPの他端部は、サーミスタ91の上面に接触する。バネSPは、バネ座部72とサーミスタ91との間で圧縮されることにより、サーミスタ91を電池セル11Cの上面54Aに対して押圧する。
【0040】
図6に示されるように、第1カバー61は、電池セル11Cを保持するホルダ21に対する第1方向についての位置決めを行う位置決め部80を有する。位置決め部80は、一対の係合爪81を有する。係合爪81は、一例として、立設部61Dの端面61Gにおいて形成されている突起である。係合爪81は、第2方向から見てそれぞれ直角三角形状であり、その斜辺部分が互いに対向しないように形成されている。
【0041】
係合爪81は、それぞれ、第1方向に交差(直交)する内面81Aを含む。ここでの内面81Aは、直角三角形の直角を挟む一方の面である。よって、内面81Aは、第1方向に交差(直交)する第2交差面である。一対の内面81Aは、第1方向における突起27の長さ以上の長さで互いに離間するように第1方向において対向する。一対の内面81Aの間に突起27が介在することで、係合爪81は、第1方向の両側から突起27に係合する。内面81Aは、係合爪81が突起27に係合したときに、突起27の外面27Aに対向する。位置決め部80は、内面81Aと外面27Aとの突き当て(すなわち、第1交差面と第2交差面との突き当て)により、第1方向の両側(第1方向及び第1方向の反対方向)において、ホルダ21に対する第1カバー61の位置決めを行う。
【0042】
第2カバー62は、第1方向に沿って第1カバー61に隣接するように上面54Aに対向して配置される。図2に示されるように、第2カバー62は、第1方向における一方の端部62Fにおいてエンドプレート12Bに固定されている。第2カバー63は、第1方向に沿って第2カバー62とは反対側で第1カバー61に隣接するように、上面54Aに対向して配置される。第2カバー63は、第1方向における一方の端部63Fにおいて中間プレート15に固定されている。第2カバー62,63は、例えば樹脂製部材である。
【0043】
図2及び図6に示されるように、第1カバー61及び第2カバー62は、上面54Aに交差する方向(第3方向:Z軸方向)に沿って互いに重なる重複部61B及び重複部62Bをそれぞれ有している。重複部62Bは、第2カバー62においてエンドプレート12Bに固定される端部62Fとは反対側の端部に形成される。第1カバー61及び第2カバー63は、上面54Aに交差する方向に沿って互いに重なる重複部61C及び重複部63Cをそれぞれ有している。重複部63Cは、第2カバー63において中間プレート15に固定される端部63Fとは反対側の端部に形成される。重複部61B,61Cは、第1方向における第1カバー61の両端部にそれぞれ形成されている。重複部61Bが重複部62Bに重複し、重複部61Cが重複部63Cに重複する。すなわち、第1カバー61は、第2カバー62,63に対し、互いに重複した状態において第1方向に相対的に移動可能とされている。
【0044】
第2カバー62,63は、上述した端部62F,63Fの構成及び重複部62B,63Cの構成を備えている点、並びに、位置決め部80(後述)を備えていない点を除いて、第1カバー61と同様の構成を有する。そのため、第2カバー62,63についての第1カバー61の構成と重複する説明は省略する。
【0045】
次に、本実施形態の電池モジュール10の作用について説明する。電池セル11は、充放電の繰り返し又は劣化に伴い膨張することがある。図1及び図2に示されるように、電池モジュール10では、エンドプレート12A,12Bによって複数の電池セル11を拘束している。電池モジュール10では、エンドプレート12A,12Bの間に弾性部材17が配置されている。そのため、図7及び図8に示されるように、電池セル11において膨張が生じた場合、電池セル11が弾性部材17に向けて第1方向に沿って移動する。なお、電池セル11の膨張による荷重は、弾性部材17が潰れることで吸収される。
【0046】
図7は、比較例に係る電池モジュールにおける押圧部とサーミスタとの相対位置変化を示す断面図である。図8は、図1に示された電池モジュール10における押圧部70とサーミスタ91との相対位置変化を示す断面図である。図7に示される電池モジュールにおいては、第1カバー61に係合爪81が形成されておらず、電池セル11Cを保持するホルダ21に対する第1方向についての第1カバー61の位置決めが行われていない。
【0047】
図7に示されるように、電池セル11が膨張すると、電池セル11Cを保持するホルダ21は、エンドプレート12Bから遠ざかる方向(図7に示す右方向)に距離D1だけ移動する。これに伴い、第1カバー61は、例えば第1方向に沿って距離D2だけ移動する場合がある。図7の例では、上記位置決めが行われていないため、距離D1と距離D2とは、一般的には一致しない。したがって、この場合、電池セル11の膨張により、サーミスタ91に対して押圧部70が第1方向について相対移動し、押圧部70がサーミスタ91を押圧する位置がずれてしまうことが生じ得る。
【0048】
これに対し、図8に示されるように、電池セル11Cを保持するホルダ21に対する第1方向についての位置決めが位置決め部80により行われている場合(すなわち第1カバー61に係合爪81が形成されている場合)、電池セル11が膨張すると、当該ホルダ21は、エンドプレート12Bから遠ざかる方向(図8に示す右方向)に距離D1だけ移動する。これに伴い、第1カバー61は、第1方向に沿って距離D3だけ移動する。この場合、上記位置決めが行われているため、第1カバー61が当該ホルダ21と第1方向について一体的に移動される。よって、距離D1と距離D3とが、略一致する。したがって、この場合、電池セル11の膨張により、サーミスタ91に対して押圧部70が第1方向について相対移動することが抑制される。
【0049】
以上、電池モジュール10においては、第1カバー61は、サーミスタ91を電池セル11Cに対して押圧するための押圧部70と、電池セル11Cを保持するホルダ21に対する第1方向についての位置決めを行う位置決め部80と、を有する。これにより、電池セル11に膨張が生じた際に、測温セルである電池セル11Cを保持するホルダ21と第1カバー61とが第1方向について一体的に移動する。このため、第1カバー61の押圧部70と電池セル11C側のサーミスタ91との相対移動が抑制される。その結果、第1カバー61の押圧部70によりサーミスタ91が電池セル11Cに対して押さえられた状態が維持される。つまり、この電池モジュール10によれば、サーミスタ91が設けられた電池セル11Cに対してサーミスタ91をより確実に押圧可能である。
【0050】
電池モジュール10においては、電池セル11Cを保持するホルダ21は、第1方向に交差(直交)する第1交差面を含む。第1カバー61は、第1方向に交差(直交)する第2交差面を含む。位置決め部80は、第1交差面と第2交差面との突き当てにより位置決めを行っている。これにより、ホルダ21の第1交差面と第1カバー61の第2交差面とが第1方向において互いに突き当たることで、電池セル11Cを保持するホルダ21に対する第1カバー61の第1方向についての位置決めが可能となる。
【0051】
電池モジュール10においては、電池セル11Cを保持するホルダ21は、第1カバー61上に突出する突起27を有する。第1交差面は、突起27の外面27Aである。位置決め部80は、第1方向における突起27の両側から突起27に係合する係合爪81を有する。第2交差面は、外面27Aに対向する係合爪81の内面81Aである。これにより、電池セル11Cを保持するホルダ21の外面27Aと、第1カバー61の内面81Aと、が互いに突き当たる簡単な構造で、第1方向の両側(第1方向及び第1方向の反対方向)における位置決めが可能となる。
【0052】
電池モジュール10においては、第1カバー61は、上面54Aに対向する対向面61Sと、対向面61Sの反対側において上面54Aに沿って延びる反対面である端面61Gと、を有する。突起27は、端面61Gに接触する接触面27Bを含む。これにより、突起27は、その接触面27Bにおいて端面61Gに接触するため、上面54Aから離間するような第1カバー61の移動を規制することができる。
【0053】
電池モジュール10は、第1方向に沿って第1カバー61に隣接するように上面54Aに対向して配置される第2カバー62,63を備える。これにより、電池モジュール10における電池セル11の個数に応じて第2カバー62,63を配置することで、第1カバー61及び第2カバー62,63が電池セル11を確実に覆って保護することができる。
【0054】
電池モジュール10においては、第1カバー61は、上面54Aに交差する方向に沿って第2カバー62,63と重複する重複部61B,61Cを有する。これにより、電池セル11の膨張に起因してホルダ21及び第1カバー61が第1方向に沿って移動したとしても、第1カバー61と第2カバー62,63との重複部61B,62B,61C,63Cが重複する範囲内で、第1カバー61及び第2カバー62,63により電池セル11が覆われた状態が維持される。
【0055】
電池モジュール10は、第1方向に沿って電池セル11と共に拘束された弾性部材17を備える。これにより、電池セル11が膨張して電池セル11が第1方向に沿って移動したとしても、例えば弾性部材17が潰れることで、電池セル11の膨張による荷重を吸収できる。またこのとき、電池セル11の第1方向に沿った移動が比較的大きくなるため、位置決め部80による第1カバー61の位置決めの効果が顕著なものとなる。
【0056】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0057】
上記実施形態の電池モジュール10は、電池セル11の積層方向(第1方向)において互いに隣接する3つのカバー(第1カバー61及び第2カバー62,63)を備えていたが、これに限定されない。電池モジュール10は、少なくとも1つの第1カバー61を備えていればよい。
【0058】
上記実施形態では、位置決め部80として、電池セル11Cを保持するホルダ21に対する第1方向についての第1カバー61の位置決めを行う係合爪81を例示した。しかしながら、位置決め部80は、例えば第2カバー62に係合爪を形成すると共に第2カバー62のエンドプレート12Bへの固定を解除することで、サーミスタ91が設けられたその他の電池セル11Bを保持するホルダ21に対する第1方向についての第2カバー62の位置決めを行ってもよい。また、位置決め部80は、例えば第2カバー63に係合爪を形成すると共に第2カバー63の中間プレート15への固定を解除することで、サーミスタ91が設けられたその他の電池セル11Aを保持するホルダ21に対する第1方向についての第2カバー63の位置決めを行ってもよい。
【0059】
上記実施形態では、位置決め部80として突起27に係合する係合爪81を例示したが、位置決め部は、これに限定されない。例えば、ホルダ21及び第1カバー61のいずれか一方に孔を形成し、ホルダ21及び第1カバー61の他方に形成した突起を当該孔に挿通することで位置決めを行う位置決め部であってもよい。また例えば、ホルダ21及び第1カバー61のそれぞれの対応する位置に孔を形成し、当該孔のそれぞれにピンを挿通することで位置決めを行う位置決め部であってもよい。すなわち、位置決め部80は、第1方向に交差する面同士の突き当てによる位置決めが可能な任意の形態とすることができる。さらに、第1方向に交差する面は、平面であってもよいし、例えば円柱状の突起の表面といった曲面であってもよい。
【0060】
上記実施形態では、サーミスタ91が設けられた1つの電池セル11Cを1つのホルダ21が保持し、位置決め部80が、当該ホルダ21に対する第1方向についての第1カバー61の位置決めを行ったが、1つのホルダは、例えばサーミスタ91が設けられた電池セル11を含む複数の電池セル11を保持していてもよい。この場合、位置決め部80は、当該1つのホルダに対する第1方向についての第1カバー61の位置決めを行えばよい。
【0061】
上記実施形態では、弾性部材17が一方のエンドプレート12Aと中間プレート15との間に配置されているが、弾性部材17は、第1方向に沿って電池セル11と共に拘束されていればよく、別の位置に配置されていてもよい。
【0062】
上記実施形態では、押圧部70は、バネSPで電池セル11Cに対してサーミスタ91を押圧したが、例えばゴム等といった他の弾性部材で電池セル11Cに対してサーミスタ91を押圧してもよい。また、上記実施形態では、3つの電池セル11A,11B,11Cにそれぞれ1つずつサーミスタ91が設けられ、電池モジュール10としては3個のサーミスタ91を含んでいたが、サーミスタ91の数としては、その他の個数であってもよい。このとき、例えば温度が高くなりやすい電池セル11にサーミスタ91を設けてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…電池モジュール、11…電池セル、11C…電池セル(測温セル)、12A,12B…エンドプレート(拘束部)、17…弾性部材(弾性部材)、21…ホルダ、27…突起、27A…外面(第1交差面)、27B…接触面、54A…上面(主面)、55…電極端子、61…第1カバー、61S…対向面、61T…反対面、62,63…第2カバー、61B,62B,61C,63C…重複部、70…押圧部、80…位置決め部、81…係合爪、81A…内面(第2交差面)、91…サーミスタ(温度センサ)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8