特許第6790720号(P6790720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790720
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20201116BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20201116BHJP
   B60C 13/02 20060101ALI20201116BHJP
   B60C 3/04 20060101ALI20201116BHJP
   B60C 15/00 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   B60C15/06 B
   B60C13/00 D
   B60C13/02
   B60C13/00 H
   B60C3/04 B
   B60C13/00 G
   B60C15/00 L
   B60C15/00 M
【請求項の数】3
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-209518(P2016-209518)
(22)【出願日】2016年10月26日
(65)【公開番号】特開2018-69841(P2018-69841A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(74)【代理人】
【識別番号】100122806
【弁理士】
【氏名又は名称】室橋 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100168192
【弁理士】
【氏名又は名称】笠川 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100174311
【弁理士】
【氏名又は名称】染矢 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100182523
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 由賀里
(74)【代理人】
【識別番号】100195590
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 博臣
(72)【発明者】
【氏名】富田 慎太郎
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−034621(JP,A)
【文献】 特開2002−160510(JP,A)
【文献】 特表2015−527242(JP,A)
【文献】 特開2015−098198(JP,A)
【文献】 特開2015−182625(JP,A)
【文献】 特開2007−168543(JP,A)
【文献】 特開2016−130053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 15/06
B60C 3/04
B60C 13/00
B60C 13/02
B60C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド、一対のサイドピース、一対のビード及びカーカスを備えており、それぞれのサイドピースが上記トレッドの端から半径方向略内向きに延びており、それぞれのビードが上記サイドピースの半径方向内側部分においてこのサイドピースよりも軸方向内側に位置しており、上記カーカスが上記トレッド及び上記サイドピースの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されている空気入りタイヤであって、
上記サイドピースが、本体と、この本体から外向きに突出し周方向に延在するリムプロテクターとを備えており、
上記本体の輪郭を表す基準プロファイルが半径方向に並列された複数の円弧で表されており、これらの円弧が、このタイヤが軸方向において最大の幅を示す位置に対応する基準位置から半径方向略外向きに延びる外側円弧と、この基準位置から半径方向略内向きに延びる内側円弧とを含んでおり、この外側円弧とこの内側円弧とがこの基準位置で接しており、
上記リムプロテクターの輪郭を表すボブプロファイルが半径方向に並列された2つの円弧からなり、これらの円弧の交点がこのリムプロテクターの頂であり、これらの円弧のうち、この頂から半径方向略外向きに延びる一方の円弧が第一円弧であり、この頂から半径方向略内向きに延びる他方の円弧が第二円弧であり、
上記第一円弧が、その半径方向外側端において、上記外側円弧と接しており、この第一円弧の中心が上記ボブプロファイルの内側に位置しており、
上記第二円弧が、その半径方向内側端において、上記内側円弧と接しており、この第二円弧の中心が上記ボブプロファイルの外側に位置しており、
このタイヤのビードベースラインから上記カーカスの半径方向外側端までの半径方向距離に対するこのビードベースラインから上記頂までの半径方向距離の比が0.29以上0.41以下であり、
上記サイドピースがサイドエイペックスを含んでおり、このサイドエイペックスが上記ビードの半径方向外側において上記カーカスに沿って半径方向外向きに延在しており、
上記サイドエイペックスが、上記頂を通る上記カーカスの法線と交差しており、
上記法線に沿って計測される上記サイドピースの厚さに対するこの法線に沿って計測される上記サイドエイペックスの厚さの比が0.10以上0.29以下であり、
半径方向において、上記サイドエイペックスの外側端の位置が上記カーカスの軸方向外側端の位置と一致している、又は、このサイドエイペックスの外側端がこのカーカスの軸方向外側端よりも内側に位置している、空気入りタイヤ。
【請求項2】
半径方向において、上記サイドエイペックスの外側端が上記カーカスの軸方向外側端よりも内側に位置している、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
上記第一円弧の半径に対する上記第二円弧の半径の比が0.056以上0.117以下である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。詳細には、本発明は、リムプロテクターを側面に有する空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
歩道を有する道路では、車道と歩道との間に縁石が敷設されている。車両が路肩に寄せられたとき、タイヤのサイドウォールが縁石に接触することがある。この接触により、サイドウォールが損傷する恐れがある。
【0003】
タイヤは、リムに装着される。リムは、フランジを備えている。車両が路肩に寄せられたとき、フランジが縁石に接触することがある。この接触により、フランジが損傷する恐れがある。
【0004】
タイヤの側面にリムプロテクターを設けることがある。リムプロテクターは、周方向に延在している。リムプロテクターは、軸方向外向きに突出している。リムプロテクターを有するタイヤでは、車両が路肩に寄せられたとき、サイドウォール又はフランジではななく、このリムプロテクターが縁石に接触する。この接触は、サイドウォール又はフランジの損傷防止に寄与する。このようなリムプロテクターの例が、特開2013−220786公報及び特開2014−083994公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−220786公報
【特許文献2】特開2014−083994公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タイヤによる車輌の燃費への影響を抑え、環境に配慮しようとする動きがある。ラベリング制度が導入されたこともあり、タイヤの選定に際し、転がり抵抗を重視するユーザーは多い。タイヤが小さな転がり抵抗を有することが当たり前のように考えられる時代が、到来している。小さな転がり抵抗の観点から、小さな質量を有するタイヤが求められている。
【0007】
例えば、サイドウォール等の部品のボリュームを低減すれば、タイヤの軽量化を図ることができる。しかしこのボリュームの低減は、タイヤの剛性に影響する。
【0008】
リムプロテクターが機能を果たすには、ある程度の大きさ(又は形状)が必要である。リムプロテクターは、タイヤの剛性に寄与する。このリムプロテクターは、タイヤの質量に影響する。
【0009】
タイヤに適用できるリムは、タイヤが依拠する規格において定められている。この規格においては、一のタイヤに対して、サイズの異なる複数のリムの適用が許容されている。このため、適用可能な複数のリムのうち、最も大きなサイズを有するリムを選定した場合、リムプロテクターの大きさ(又は形状)によっては、このリムプロテクターがフランジの損傷防止に寄与できない恐れがある。逆に適用可能な複数のリムから最も小さなサイズを有するリムを選定した場合、リムプロテクターがフランジと干渉し、タイヤをリムに適切に装着できない恐れがある。適用可能な全てのリムにおいて、リムプロテクターがその機能を果たすには、このリムプロテクターの大きさ(又は形状)を適切に整える必要がある。
【0010】
本発明の目的は、その機能を十分に発揮できるリムプロテクターを有し、しかも質量の増加を抑えつつ、剛性の向上が達成された空気入りタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド、一対のサイドピース、一対のビード及びカーカスを備えている。それぞれのサイドピースは、上記トレッドの端から半径方向略内向きに延びている。それぞれのビードは、上記サイドピースの半径方向内側部分においてこのサイドピースよりも軸方向内側に位置している。上記カーカスは、上記トレッド及び上記サイドピースの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されている。
【0012】
このタイヤでは、上記サイドピースは、本体と、この本体から外向きに突出し周方向に延在するリムプロテクターとを備えている。上記本体の輪郭を表す基準プロファイルは、半径方向に並列された複数の円弧で表されている。これらの円弧は、このタイヤが軸方向において最大の幅を示す位置に対応する基準位置から半径方向略外向きに延びる外側円弧と、この基準位置から半径方向略内向きに延びる内側円弧とを含んでいる。この外側円弧とこの内側円弧とは、この基準位置で接している。
【0013】
このタイヤでは、上記リムプロテクターの輪郭を表すボブプロファイルは、半径方向に並列された2つの円弧からなる。これらの円弧の交点がこのリムプロテクターの頂であり、これらの円弧のうち、この頂から半径方向略外向きに延びる一方の円弧が第一円弧であり、この頂から半径方向略内向きに延びる他方の円弧が第二円弧である。
【0014】
このタイヤでは、上記第一円弧は、その半径方向外側端において、上記外側円弧と接している。この第一円弧の中心は、上記ボブプロファイルの内側に位置している。上記第二円弧は、その半径方向内側端において、上記内側円弧と接している。この第二円弧の中心は、上記ボブプロファイルの外側に位置している。このタイヤのビードベースラインから上記カーカスの半径方向外側端までの半径方向距離に対するこのビードベースラインから上記頂までの半径方向距離の比は、0.29以上0.41以下である。
【0015】
このタイヤでは、上記サイドピースはサイドエイペックスを含んでいる。このサイドエイペックスは、上記ビードの半径方向外側において上記カーカスに沿って半径方向外向きに延在している。上記サイドエイペックスは、上記頂を通る上記カーカスの法線と交差している。上記法線に沿って計測される上記サイドピースの厚さに対する、この法線に沿って計測される上記サイドエイペックスの厚さの比は、0.10以上0.29以下である。半径方向において、上記サイドエイペックスの外側端の位置は上記カーカスの軸方向外側端の位置と一致している、又は、このサイドエイペックスの外側端はこのカーカスの軸方向外側端よりも内側に位置している。
【0016】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、半径方向において、上記サイドエイペックスの外側端は上記カーカスの軸方向外側端よりも内側に位置している。
【0017】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記第一円弧の半径に対する上記第二円弧の半径の比は0.056以上0.117以下である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る空気入りタイヤでは、サイドピースの本体から外向きに突出するリムプロテクターの輪郭は第一円弧及び第二円弧からなるボブプロファイルで表されている。このリムプロテクターによれば、質量への影響を抑えつつ、タイヤが最大の幅を示す位置からビードの部分までのゲージが効果的に確保される。このリムプロテクターは、タイヤの横剛性の向上に寄与する。
【0019】
さらにこのタイヤでは、リムプロテクターの頂は適正な位置に配置される。このため、適用可能ないずれのリムにこのタイヤを組み込んでも、このリムプロテクターはサイドウォール又はフランジの損傷防止に十分に機能する。
【0020】
そしてこのタイヤには、ビードの半径方向外側において、カーカスに沿って半径方向外向きに延びるサイドエイペックスが設けられている。このサイドエイペックスは、リプロテクターの頂を通るカーカスの法線と交差し、この法線の位置において適切な厚さを有している。このサイドエイペックスは、質量への影響を抑えつつ、面内捻り剛性の向上に寄与する。
【0021】
本発明によれば、その機能を十分に発揮できるリムプロテクターを有し、しかも質量の増加を抑えつつ、剛性の向上が達成された空気入りタイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
図2図2は、図1のタイヤの一部が示された拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0024】
図1には、空気入りタイヤ2の断面が示されている。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。この図1に示された断面は、周方向に対して垂直な面に沿ってこのタイヤ2を切断することにより得られる。この断面は、このタイヤ2の回転軸を含む平面に沿っている。
【0025】
この図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。実線BBLは、ビードベースラインである。ビードベースラインは、リムのリム径(JATMA参照)を規定する線である。このビードベースラインは、軸方向に延びる。
【0026】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、バンド16、インナーライナー18、一対のチェーファー20及び一対のサイドエイペックス22を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
【0027】
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面24を形成する。トレッド4は、架橋ゴムからなる。特に、このトレッド4のうち、トレッド面24を含む部分には、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性が考慮された架橋ゴムが用いられる。図示されていないが、このトレッド4には溝を刻むことができる。これにより、トレッドパターンが形成される。
【0028】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6の半径方向外側部分は、トレッド4と接合されている。このサイドウォール6の半径方向内側部分は、クリンチ8と接合されている。このサイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール6は、カーカス12の損傷を防止する。
【0029】
それぞれのクリンチ8は、サイドウォール6よりも半径方向内側に位置している。クリンチ8は、軸方向において、ビード10及びカーカス12よりも外側に位置している。クリンチ8は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。クリンチ8は、リムのフランジと当接する。
【0030】
それぞれのビード10は、クリンチ8の軸方向内側に位置している。ビード10は、コア26と、このコア26から半径方向外向きに延びるメインエイペックス28とを備えている。コア26はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。メインエイペックス28は、半径方向外向きに先細りである。
【0031】
このタイヤ2では、メインエイペックス28には、その複素弾性率E*(以下、単に、弾性率EMAとして表すことがある。)が50MPa以上80MPa以下の範囲で設定された架橋ゴムが用いられる。このメインエイペックス28は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。
【0032】
本発明において、タイヤ2を構成する各部材の複素弾性率E*は、「JIS K 6394」の規定に準拠して測定される。この測定では、板状の試験片(長さ=45mm、幅=4mm、厚み=2mm)が用いられる。この試験片は、タイヤ2から切り出されてもよいし、複素弾性率E*の測定対象である部材のためのゴム組成物からシートを作製し、このシートから切り出されてもよい。測定条件は、以下の通りである。
粘弾性スペクトロメーター:岩本製作所の「VESF−3」
初期歪み:10%
動歪み:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
【0033】
カーカス12は、カーカスプライ30を備えている。カーカスプライ30は、トレッド4、サイドウォール6及びクリンチ8に沿って延在している。カーカスプライ30は、両側のビード10の間に架け渡されている。カーカスプライ30は、コア26の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ30には、主部32と折り返し部34とが形成されている。このカーカスプライ30は、主部32と、一対の折り返し部34とを備えている。主部32は、一方のコア26と他方のコア26との間を架け渡している。それぞれの折り返し部34は、コア26からビード10に沿って半径方向外向きに延在している。
【0034】
このタイヤ2では、カーカス12は1枚のカーカスプライ30から形成されている。このカーカス12が、2枚以上のカーカスプライ30から形成されてもよい。
【0035】
図示されていないが、カーカスプライ30は並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス12はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0036】
図1において、符号PRはカーカス12の半径方向外側端である。この外側端PRにおいて、カーカス12は半径方向において最大の高さを有する。符号PAは、このカーカス12の軸方向外側端である。この外側端PAにおいて、カーカス12は軸方向において最大の幅を有する。
【0037】
図1において、両矢印Hはビードベースラインから外側端PRまでの半径方向距離である。この距離Hは、カーカス12の半径方向高さである。両矢印h1は、ビードベースラインから外側端PAまでの半径方向距離である。この距離h1は、カーカス12が最大幅を示す位置の高さである。
【0038】
このタイヤ2では、距離Hに対する距離h1の比は0.49以上0.56以下である。言い換えれば、距離Hに対する距離h1の比が0.49以上0.56以下の範囲になるように、このカーカス12の輪郭は構成されている。従来のタイヤでは、この比は0.6前後に設定されるので、カーカス12が最大幅を示す位置PAは、従来のタイヤよりもビード10に近い。
【0039】
通常タイヤにおいては、最大幅を示す位置から半径方向内側の部分は、半径方向に対して傾斜している。前述したように、このタイヤ2では、カーカス12が最大幅を示す位置PAは従来のタイヤのそれよりもビード10に近い位置に配置されている。このため、このタイヤ2では、この位置PAから内側の部分の傾斜は従来のタイヤのそれよりも大きい。タイヤ2が車重を支持できる範囲においては、大きな傾斜は横剛性の向上に寄与するので、このタイヤ2のカーカス12は、従来のタイヤのそれよりも、横剛性の向上に寄与する。言い換えれば、このタイヤ2には、横剛性への寄与が考慮されたカーカス12が採用されている。なお、距離Hに対する距離h1の比が0.49よりも小さくなると、この外側端PAとビード10との間におけるカーカス12の輪郭に不自然な折れ曲がりが生じる恐れがあり、適正な輪郭を有するカーカス12は得られない。そしてこの比が0.56よりも大きくなると、前述の傾斜が小さくなるとともに、トレッド4とサイドウォール6との境界付近、すなわち、バットレスの付近に折れ曲がりが生じる恐れがあり、適正な輪郭を有するカーカス12は得られない。
【0040】
ベルト14は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト14は、カーカス12と積層されている。ベルト14は、カーカス12を補強する。ベルト14は、内側層36及び外側層38からなる。図1から明らかなように、軸方向において、内側層36の幅は外側層38の幅よりも若干大きい。
【0041】
図示されていないが、内側層36及び外側層38のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、10°以上35°以下である。内側層36のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層38のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。この場合、好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。ベルト14の軸方向幅は、タイヤ2の最大幅の0.7倍以上が好ましい。ベルト14が、3以上の層を備えてもよい。
【0042】
バンド16は、ベルト14の半径方向外側に位置している。軸方向において、バンド16の幅はベルト14の幅よりも大きい。バンド16は、ベルト14の全体を覆っている。
【0043】
図示されていないが、このバンド16は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド16は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト14が拘束されるので、ベルト14のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0044】
インナーライナー18は、カーカス12の内側に位置している。インナーライナー18は、カーカス12の内面に接合されている。インナーライナー18は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー18の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー18は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0045】
それぞれのチェーファー20は、ビード10の近傍に位置している。タイヤ2がリムに組み込まれると、このチェーファー20がリムと当接する。この当接により、ビード10の近傍が保護される。この実施形態では、チェーファー20は布とこの布に含浸したゴムとからなる。このチェーファー20がクリンチ8と一体とされてもよい。この場合、チェーファー20の材質はクリンチ8の材質と同じとされる。
【0046】
それぞれのサイドエイペックス22は、ビード10の半径方向外側に位置している。サイドエイペックス22は、軸方向においてカーカス12の外側に位置している。このサイドエイペックス22は、軸方向においてクリンチ8の内側に位置している。図1に示されているように、サイドエイペックス22は、ビード10の外側において、カーカス12に沿って半径方向外向きに延在している。このタイヤ2では、サイドエイペックス22とメインエイペックス28との間に、カーカスプライ30の折り返し部34が位置している。
【0047】
このタイヤ2では、サイドエイペックス22には、メインエイペックス28の剛性と同程度の剛性を有する架橋ゴムが用いられる。具体的には、サイドエイペックス22には、メインエイペックス28の弾性率EMAの0.9以上1.1以下となるように、その複素弾性率E*が調整された架橋ゴムが用いられる。言い換えれば、メインエイペックス28の弾性率EMAに対するサイドエイペックス22の複素弾性率E*(以下、単に、弾性率ESAとして表すことがある。)の比は、0.9以上1.1以下である。このサイドエイペックス22は、メインエイペックス28と同様、高い剛性を有する架橋ゴムからなる。
【0048】
本発明においては、タイヤ2の、カーカス12の軸方向外側で、かつ、サイドウォール6からクリンチ8までの部分、言い換えれば、サイドウォール6、クリンチ8及びサイドエイペックス22を含む部分はサイドピース40と称される。つまり、このタイヤ2は、一対のサイドピース40を備えている。それぞれのサイドピース40は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。ビード10は、このサイドピース40の半径方向内側部分において、このサイドピース40よりも軸方向内側に位置している。カーカス12は、トレッド4及びサイドピース40の内側に沿って一方のビード10と他方のビード10との間に架け渡されている。このタイヤ2では、サイドピース40はサイドウォール6、クリンチ8及びサイドエイペックス22で構成されている。
【0049】
このタイヤ2の偏平率(JATMA参照)は50%以下である。詳細には、このタイヤ2の偏平率は45%である。このタイヤ2は、低偏平タイプである。
【0050】
このタイヤ2のように、偏平率が50%以下のタイヤには、通常、そのサイドピース40にリムプロテクター42が設けられる。サイドピース40は、リムプロテクター42を備えている。詳細には、サイドピース40は、本体44と、リムプロテクター42とを備えている。リムプロテクター42は、軸方向において、本体44よりも外側に位置している。このリムプロテクター42は、本体44から軸方向外向きに突出している。このリムプロテクター42は、周方向に延在している。リムプロテクター42は、リング状を呈している。
【0051】
本発明においては、本体44の外形を形づくっている線は基準プロファイルと称される。言い換えれば、この基準プロファイルは本体44の輪郭を表している。本発明においては、リムプロテクター42の外形を形づくっている線はボブプロファイルと称される。言い換えれば、このボブプロファイルはリムプロテクター42の輪郭を表している。
【0052】
図1において、符号PTはリムプロテクター42の頂である。この頂PTは、基準プロファイルからの高さが最大となる位置により表される。この基準プロファイルからの高さは、図1に示された断面において、基準プロファイルからボブプロファイルまでの長さを、この基準プロファイルの法線に沿って計測することにより得られる。
【0053】
前述したように、このタイヤ2のサイドピース40はサイドウォール6及びクリンチ8を含んでいる。このタイヤ2では、サイドウォール6とクリンチ8との境界は、頂PTにおいて、このリムプロテクター42のボブプロファイルと交わっている。この境界が、この頂PTよりも半径方向外側の部分において、このボブプロファイルと交わってもよい。この境界が、この頂PTよりも半径方向内側の部分において、このボブプロファイルと交わってもよい。
【0054】
本発明においては、タイヤ2及びこのタイヤ2を構成する部品の輪郭は、特に言及のない限り、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定された寸法に基づいて特定される。この輪郭特定のための寸法の測定時には、タイヤ2に荷重はかけられない。トレッド4に溝が刻まれている場合には、この溝がないと仮定して得られる仮想外面によりトレッド面24の輪郭は特定される。サイドピース40に凹凸模様が付されている場合には、この凹凸模様がないと仮定して得られる仮想外面により、このサイドピース40の輪郭は特定される。前述の本体44の輪郭は、サイドピース40にリムプロテクター42がないと仮定して得られる仮想外面により特定される。
【0055】
本発明においては、タイヤ2の各部材の寸法及び角度も、前述の輪郭を特定するための寸法の計測と同様、特に言及のない限り、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。乗用車用タイヤ2の場合は、特に言及のない限り、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。
【0056】
本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0057】
本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0058】
本明細書において正規荷重とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最高負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0059】
図1において、符号PWは、本体44の輪郭を表す基準プロファイル上の特定の位置を表している。このタイヤ2では、位置PWにおいて、この基準プロファイルが軸方向において最大の幅を有する。図1において、両矢印WMは一方の位置PWから他方の位置PW(図示されず)までの軸方向距離を示している。本発明においては、この位置PWにおける軸方向距離WMが、タイヤ2の最大幅(断面幅とも称される。)である。換言すれば、位置PWは、軸方向において、このタイヤ2が最大幅WMを示す位置に対応する。本発明においては、この位置PWは基準位置と称される。図1中、実線LWは、この基準位置PWを通り、軸方向に延びる直線である。
【0060】
このタイヤ2では、半径方向において、基準位置PWの位置と、前述の、カーカス12の外側端PAの位置とは一致している。この外側端PAに対する基準位置PWの位置に、特に、制限はない。しかし、適正な撓みの観点から、この基準位置PWはこの外側端PAに近接しているのが好ましい。具体的には、ビードベースラインから基準位置PWまでの半径方向距離(図示されず)の、前述の、外側端PAまでの半径方向距離h1に対する比は、0.95以上が好ましく、1.05以下が好ましい。
【0061】
このタイヤ2では、本体44の輪郭を表す基準プロファイルは半径方向に並列された複数の円弧で表されている。換言すれば、この基準プロファイルは半径方向に並列された複数の円弧を含んでいる。これらの円弧には、基準位置PWから半径方向略外向きに延びる円弧(以下、外側円弧)と、この基準位置PWから半径方向略内向きに延びる円弧(以下、内側円弧)とが含まれている。
【0062】
図1において、矢印Rsは外側円弧の半径(曲率半径)を表している。矢印Ruは、内側円弧の半径(曲率半径)を表している。符号Csは外側円弧の中心であり、符号Cuは内側円弧の中心である。この図1に示されているように、外側円弧の中心Cs及び内側円弧の中心Cuは直線LW上にある。このタイヤ2では、外側円弧と内側円弧とは基準位置PWにおいて接している。基準位置PWは、外側円弧及び内側円弧の接点である。
【0063】
このタイヤ2では、基準プロファイルは外側円弧及び内側円弧を含み、この外側円弧と内側円弧とは基準位置PWにおいて接している。外側円弧及び内側円弧のそれぞれは、外向きに凸な形状を呈している。この基準プロファイルは、軸方向外向きに凸な形状を呈している。そして基準位置PWは、前述したように、このタイヤ2が最大幅WMを示す位置に対応している。この基準プロファイルを有するサイドピース40の本体44は、撓みに寄与する。
【0064】
このタイヤ2では、適切な撓みと車重の支持との観点から、外側円弧の半径Rsは30mm以上60mm以下が好ましい。内側円弧の半径Ruは、40mm以上70mm以下が好ましい。このタイヤ2では、好ましくは、内側円弧の半径Ruは外側円弧の半径Rsより大きい。詳細には、外側円弧の半径Rsに対する内側円弧の半径Ruの比は1.2以上1.7以下が好ましい。
【0065】
このタイヤ2では、リムプロテクター42の輪郭を表すボブプロファイルは半径方向に並列された2つの円弧で表されている。これらの円弧のうち一方の円弧は、リムプロテクター42の頂PTから半径方向略外向きに延びている。他方の円弧は、リムプロテクター42の頂PTから半径方向略内向きに延びている。本発明においては、このボブプロファイルは、半径方向に並列された2つの円弧からなる。このタイヤ2では、これらの円弧の交点がこのリムプロテクター42の頂PTであり、この頂PTから半径方向略外向きに延びる一方の円弧が第一円弧であり、この頂PTから半径方向略内向きに延びる他方の円弧が第二円弧である。なお、リムプロテクター42において、頂PTに対応する部分が丸め等が施されることで、この頂PTを特定できない場合は、ボブプロファイルにおいて第一円弧と第二円弧とを特定した上で、第一円弧と第二円弧との交点を求め、この交点が頂PTとして特定される。
【0066】
図1において、矢印R1は第一円弧の半径(曲率半径)を表している。第一円弧の半径が大きいため、図示されていないが、この第一円弧の中心はボブプロファイルの内側に位置している。位置PS1は、第一円弧の半径方向外側端である。この位置PS1は、ボブプロファイル、言い換えれば、リムプロテクター42の半径方向外側端である。このタイヤ2では、この位置PS1、すなわち、外側端PS1において、第一円弧は外側円弧と接している。この位置PS1は、第一円弧と外側円弧との接点である。位置PS1、外側円弧の中心Cs及び第一円弧の中心(図示されず)は、同一直線上にある。
【0067】
図1において、矢印R2は第二円弧の半径(曲率半径)を表している。符号C2は、第二円弧の中心である。この第二円弧の中心C2は、ボブプロファイルの外側に位置している。位置PU2は、第二円弧の半径方向内側端である。この位置PU2は、ボブプロファイル、言い換えれば、リムプロテクター42の半径方向内側端である。このタイヤ2では、この位置PU2、すなわち、内側端PU2において、第二円弧は内側円弧と接している。この位置PU2は、第二円弧と内側円弧との接点である。位置PU2、内側円弧の中心Cu及び第二円弧の中心C2は、同一直線上にある。
【0068】
このタイヤ2では、リムプロテクター42の輪郭を表す2つの円弧のうち、第一円弧が外向きに凸な円弧であり、第二円弧が内向きに凸な円弧である。このタイヤ2では、頂PTから半径方向外側の部分においては、リムプロテクター42の厚さは、外側端PS1から頂PTに向かって漸増していく。特に、この部分においては、頂PTに近づくほど厚さの変化率が小さくなるように、このリムプロテクター42は構成されている。頂PTから半径方向内側の部分においては、リムプロテクター42の厚さは、内側端PU2から頂PTに向かって漸増していく。特に、この部分においては、頂PTに近づくほど厚さの変化率が大きくなるように、このリムプロテクター42は構成されている。
【0069】
このタイヤ2では、リムプロテクター42は、その頂点PTから本体44に向かって裾拡がりな形状を呈している。前述したように、頂PTから半径方向外側の部分においては、頂PTに近づくほど厚さの変化率が小さくなり、頂PTから半径方向内側の部分においては、頂PTに近づくほど厚さの変化率が大きくなるように、このリムプロテクター42は構成されている。このリムプロテクター42には、必要以上に大きな厚さを有する部分は形成されにくい。このタイヤ2では、リムプロテクター42がタイヤ2の質量に与える影響は小さく抑えられている。このリムプロテクター42がタイヤ2の剛性に与える影響も特異ではない。このリムプロテクター42は、タイヤ2の質量の増加を抑えつつ、タイヤ2の横剛性を効果的に向上させる。
【0070】
図2には、図1に示されたタイヤ2のリムプロテクター42の部分がリム46とともに示されている。このリム46は正規リムである。この図2において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
【0071】
図2において、両矢印h3は、ビードベースラインからリムプロテクター42の頂PTまでの半径方向距離である。この距離h3は、リムプロテクター42の半径方向高さである。
【0072】
このタイヤ2では、図1に表された距離Hに対する、距離h3の比は、0.29以上である。この比が0.29以上に設定されることにより、リムプロテクター42がリム46のフランジ48と干渉することが、効果的に防止される。このタイヤ2は、リム46に適切に装着される。リムプロテクター42のボリュームが適切に維持されるので、このタイヤ2では、このリムプロテクター42による質量への影響が抑えられる。
【0073】
このタイヤ2では、距離Hに対する距離h3の比は、0.41以下である。この比が0.41以下に設定されることにより、リムプロテクター42がフランジ48又はサイドウォール6の損傷防止に効果的に機能する。リムプロテクター42の頂PTの部分がビード10の部分の剛性に効果的に寄与するので、このタイヤ2では、横剛性の向上も図ることができる。さらにこのビード10の部分の動きが効果的に抑えられるので、このタイヤ2では、転がり抵抗の上昇も抑えられる。
【0074】
このタイヤ2では、タイヤ2が依拠する規格に定められている、適用可能な複数のリム46のうち、最も大きなサイズを有するリム46にこのタイヤ2を組み込んでも、このリムプロテクター42はサイドウォール6又はフランジ48の損傷を効果的に防止する。またこの適用可能な複数のリム46のうち、最も小さなサイズを有するリム46にこのタイヤ2を組み込んでも、このリムプロテクター42によるフランジ48との干渉が効果的に防止され、このタイヤ2をリム46に適切に装着することができる。このリムプロテクター42は、このタイヤ2を、適用可能ないずれのリム46に組み込んでも、サイドウォール6又はフランジ48の損傷防止に十分に機能する。
【0075】
図2において、実線LTは、リムプロテクター42の頂PTを通るカーカス12の法線である。この図2に示されているように、このタイヤ2では、サイドエイペックス22はこの法線LTと交差している。このサイドエイペックス22は、軸方向において、リムプロテクター42の部分と十分に重複する。この重複は、リムプロテクター42の輪郭が、前述の第一円弧及び第二円弧からなるボブプロファイルで構成されていることと相まって、面内捻り剛性の向上に相乗的に寄与する。このタイヤ2では、大きな面内捻り剛性が得られる。
【0076】
図2において、両矢印tsはサイドピース40の厚さである。この厚さtsは、法線LTに沿って計測される。両矢印taは、サイドエイペックス22の厚さである。この厚さtaも、前述の厚さtsと同様、法線LTに沿って計測される。
【0077】
このタイヤ2では、厚さtsに対する厚さtaの比は0.10以上0.29以下である。この比が0.10以上に設定されることにより、サイドエイペックス22がタイヤ2の面内捻り剛性の向上に寄与する。この観点から、この比は0.14以上が好ましい。この比が0.29以下に設定されることにより、サイドエイペックス22による質量及び転がり抵抗への影響が抑えられる。この観点から、この比は0.24以下が好ましい。
【0078】
厚さtsは、タイヤ2の仕様等によって適宜調整されるが、概ね、8mm以上13mmの範囲で設定される。
【0079】
図2において、両矢印h2は、ビードベースラインからサイドエイペックス22の半径方向外側端50までの半径方向距離である。この距離h2は、サイドエイペックス22の半径方向高さである。
【0080】
このタイヤ2では、半径方向において、サイドエイペックス22の外側端50の位置はカーカス12の外側端PAの位置と一致している、又は、このサイドエイペックス22の外側端50がこのカーカス12の外側端PAよりも内側に位置している。言い換えれば、図1に表された距離h1に対する、距離h2の比は1以下、詳細には、1.00以下である。このタイヤ2では、サイドエイペックス22の外側端50が、カーカス12の軸方向外側端PA、言い換えれば、カーカス12が最大の幅を示す位置PAを越えないように、このサイドエイペックス22の半径方向高さh2がコントロールされている。このタイヤ2では、サイドエイペックス22による質量及び転がり抵抗への影響が効果的に抑えられている。この観点から、このタイヤ2では、サイドエイペックス22の外側端50はカーカス12の外側端PAよりも半径方向内側に位置しているのが好ましい。具体的には、距離h1に対する距離h2の比は0.98以下が好ましく、0.95以下がより好ましく、0.93以下がさらに好ましい。なお、このタイヤ2では、前述したように、サイドエイペックス22は法線LTと交差するように設けられる。このため、この比の下限は設定されない。
【0081】
以上説明したように、このタイヤ2では、サイドピース40の本体44から外向きに突出するリムプロテクター42の輪郭は第一円弧及び第二円弧からなるボブプロファイルで表されている。このリムプロテクター42によれば、質量への影響を抑えつつ、タイヤ2が最大の幅を示す位置PWからビード10の部分までの厚さが効果的に確保される。このリムプロテクター42は、タイヤ2の横剛性の向上に寄与する。
【0082】
さらにこのタイヤ2では、リムプロテクター42の頂PTは適正な位置に配置される。このため、適用可能ないずれのリム46にこのタイヤ2を組み込んでも、このリムプロテクター42はサイドウォール6又はフランジ48の損傷防止に十分に機能する。
【0083】
そしてこのタイヤ2には、ビード10の半径方向外側において、カーカス12に沿って半径方向外向きに延びるサイドエイペックス22が設けられている。このサイドエイペックス22は、リプロテクター42の頂PTを通るカーカス12の法線LTと交差し、この法線LTの位置において適切な厚さtaを有している。このサイドエイペックス22は、質量への影響を抑えつつ、面内捻り剛性の向上に寄与する。
【0084】
本発明によれば、その機能を十分に発揮できるリムプロテクター42を有し、しかも質量の増加を抑えつつ、剛性の向上が達成された空気入りタイヤ2が得られる。
【0085】
前述したように、リムプロテクター42の輪郭を表すボブプロファイルは第一円弧及び第二円弧からなる。第一円弧及び第二円弧の大きさは、リムプロテクター42の機能及びタイヤ2の横剛性、並びに、サイドエイペックス22との相乗作用に影響する。
【0086】
このタイヤ2では、第一円弧の半径R1に対する第二円弧の半径R2の比は0.056以上が好ましい。この比が0.056以上に設定されることにより、リムプロテクター42の厚さが十分に確保される。このリムプロテクター42は、サイドウォール6又はフランジ48の損傷防止に機能するとともに、剛性の向上に寄与する。第二円弧が適度な大きさを有するので、この第二円弧で表される輪郭に起因するエアの巻き込みが抑えられ、成形不良が防止される。この観点から、この比は0.066以上がより好ましい。
【0087】
このタイヤ2では、第一円弧の半径R1に対する第二円弧の半径R2の比は0.117以下が好ましい。この比が0.117以下に設定されることにより、リムプロテクター42の厚さが適切に維持される。このタイヤ2では、リムプロテクター42による質量への影響が効果的に抑えられる。この観点から、この比は0.100以下がより好ましい。
【0088】
このタイヤ2では、第一円弧の半径R1は150mm以上が好ましく、450mm以下が好ましい。この半径R1が150mm以上に設定されることにより、リムプロテクター42の厚さが適切に維持される。このタイヤ2では、リムプロテクター42による質量への影響が効果的に抑えられる。この半径R1が450mm以下に設定されることにより、リムプロテクター42の厚さが十分に確保される。このリムプロテクター42は、サイドウォール6又はフランジ48の損傷防止に機能するとともに、剛性の向上に寄与する。第一円弧で表される輪郭がほぼフラットな形状に近づくので、複数本のタイヤ2を積み上げて保管しても、荷崩れは起こりにくい。
【0089】
このタイヤ2では、第二円弧の半径R2は15mm以上が好ましく、40mm以下が好ましい。この半径R2が15mm以上に設定されることにより、リムプロテクター42の厚さが十分に確保される。このリムプロテクター42は、サイドウォール6又はフランジ48の損傷防止に機能するとともに、剛性の向上に寄与する。特に、第二円弧が適度な大きさを有するので、この第二円弧で表される輪郭に起因するエアの巻き込みが抑えられ、成形不良が防止される。この半径R2が40mm以下に設定されることにより、リムプロテクター42の厚さが適切に維持される。このタイヤ2では、リムプロテクター42による質量への影響が効果的に抑えられる。
【0090】
このタイヤ2では、第一円弧の半径R1は外側円弧の半径Rsよりも大きい。これにより、リムプロテクター42の厚さが十分に確保される。このリムプロテクター42は、サイドウォール6又はフランジ48の損傷防止に機能するとともに、剛性の向上に寄与する。この観点から、半径R1の半径Rsに対する比は、2以上が好ましく、3以上がより好ましい。厚さが適切に維持されたリムプロテクター42が得られ、このリムプロテクター42による質量への影響が抑えられるとの観点から、半径R1の半径Rsに対する比は、10以下が好ましく、9以下がより好ましい。
【0091】
このタイヤ2では、ボブプロファイルを有するリムプロテクター42と、サイドエイペックス22とによって、横剛性及び面内捻り剛性の飛躍的な向上が達成されている。このため、このタイヤ2では、図1に示されているように、小さなメインエイペックス28を採用できる。小さなメインエイペックス28は、質量及び転がり抵抗のさらなる低減に寄与する。
【0092】
図2において、符号PFはリム46の半径方向外側端である。両矢印hfは、ビードベースラインからリム46の外側端PFまでの半径方向距離である。両矢印h4は、ビードベースラインからメインエイペックス28の半径方向外側端52までの半径方向距離である。この距離h4は、メインエイペックス28の半径方向高さである。両矢印haは、コア26の半径方向外側端54からメインエイペックス28の半径方向外側端52までの半径方向距離である。この距離haは、メインエイペックス28の半径方向長さである。
【0093】
このタイヤ2では、半径方向において、メインエイペックス28の外側端52はリム46の外側端PFよりも内側に位置しているのが好ましい。これにより、タイヤ2の質量及び転がり抵抗をさらに低減することができる。この観点から、距離hfに対する距離h4の比は0.9以下が好ましい。ビード10の剛性の観点から、この比は0.6以上が好ましい。
【0094】
このタイヤ2では、メインエイペックス28の長さhaは5mm以上が好ましく、20mm以下が好ましい。この長さhaが5mm以上に設定されることにより、メインエイペックス28がビード10の剛性に効果的に寄与する。この観点から、この長さhaは7mm以上がより好ましい。この長さhaが20mm以下に設定されることにより、メインエイペックス28による、質量及び転がり抵抗への影響が効果的に抑えられる。この観点から、この長さhaは15mm以下がより好ましい。
【0095】
前述したように、このタイヤ2では、ボブプロファイルを有するリムプロテクター42と、サイドエイペックス22とによって、横剛性及び面内捻り剛性の飛躍的な向上が達成されている。このため、このタイヤ2では、図1に示されているように、短い折り返し部34を有するカーカス12を採用できる。短い折り返し部34は、質量及び転がり抵抗のさらなる低減に寄与する。この図1に示されたように、短い折り返し部34を有するカーカス12の構造は、ローターンアップ(LTU)構造と称される。
【0096】
このタイヤ2では、折り返し部34による、質量及び転がり抵抗への影響が効果的に抑えられるとの観点から、折り返し部34の端56は、半径方向において、カーカス12の軸方向外側端PAよりも内側に位置しているのが好ましい。この折り返し部34の端56は、半径方向において、リムプロテクター42の頂PTよりも内側に位置しているのがより好ましい。さらには、この折り返し部34の端56は、半径方向において、リム46の外側端PFよりも内側に位置しているのがより好ましい。
【0097】
図2において、両矢印h5は、ビードベースラインから折り返し部34の端56までの半径方向距離である。この距離h5は、折り返し部34の半径方向高さである。
【0098】
このタイヤ2では、折り返し部34による、質量及び転がり抵抗への影響が効果的に抑えられるとの観点から、ビードベースラインからリム46の外側端PFまでの半径方向距離hfに対する、距離h5の比は、0.9以下が好ましい。折り返し部34が引き抜かれることが確実に防止されるとの観点から、この比は0.5以上が好ましい。
【0099】
図1において、実線RBLはリムベースラインである。リムベースラインは、リム46のリム幅(JATMA参照)を規定する線である。このリムベースラインは、半径方向に延びる。両矢印Wは、このリムベースラインからリムプロテクター42の頂PTまでの軸方向距離を表している。この長さWは、リムプロテクター42の突出長さである。
【0100】
このタイヤ2では、好ましくは、突出長さWは12mm以上である。この突出長さWが12mm以上に設定されることにより、リムプロテクター42がフランジ48又はサイドウォール6の損傷防止に効果的に機能する。リムプロテクター42の頂PTの部分がビード10の部分の剛性に効果的に寄与するので、このタイヤ2では、剛性の向上を図ることができる。さらにビード10の部分の動きが効果的に抑えられるので、このタイヤ2では、転がり抵抗の上昇が抑えられる。
【0101】
このタイヤ2では、好ましくは、突出長さWは18mm以下である。この突出長さWが18mm以下に設定されることにより、リムプロテクター42のボリュームが適切に維持される。このタイヤ2では、リムプロテクター42による質量への影響が抑えられる。さらにこのリムプロテクター42による剛性への影響が抑えられるので、このタイヤ2では、良好な乗り心地が維持される。
【実施例】
【0102】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0103】
[実施例1]
図1−2に示されたタイヤを製作した。このタイヤのサイズは、225/45R17である。この実施例1の諸元は、下記の表1に示される通りである。この実施例1では、サイドピースの厚さtsは、10.5mmに設定された。ビードベースラインからカーカスが最大の幅を示す位置までの高さh1は、45mmに設定された。カーカスの半径方向高さHは、86mmであった。
【0104】
この実施例1では、第一円弧の中心はボブプロファイルの内側に位置している。このことが、表1の「C1」の欄に「in」で表されている。第二円弧の中心は、ボブプロファイルの外側に位置している。このことが、表1の「C2」の欄に「out」で表されている。
【0105】
この実施例1では、サイドエイペックスの複素弾性率E*は60MPaであった。メインエイペックスの複素弾性率E*は60MPaであり、このメインエイペックスの半径方向長さhaは10mmであった。
【0106】
[比較例1]
比較例1は、従来のタイヤである。比較例1の諸元は、下記の表1に示される通りである。この比較例1では、ボブプロファイルには従来の構成が採用さており、ビードベースラインからカーカスが最大の幅を示す位置までの高さh1が50mmに設定された。メインエイペックスの複素弾性率E*は60MPaであり、このメインエイペックスの半径方向長さhaは30mmであった。
【0107】
[比較例2]
比較例2は、従来のタイヤである。比較例2の諸元は、下記の表1に示される通りである。この比較例2は、実施例1のサイドエイペックスを比較例1に追加することで構成されている。この比較例2では、サイドエイペックスの追加に伴い、メインエイペックスの高さhaが30mmから10mmに変更されている。
【0108】
[比較例3]
比較例3は、従来のタイヤである。比較例3の諸元は、下記の表1に示される通りである。この比較例3は、実施例1からサイドエイペックスを除くとともに、メインエイペックスの高さhaを15mmから30mmに変更することで構成されている。
【0109】
[実施例2−3及び比較例4−5]
ビードベースラインからリムプロテクターの頂PTまでの半径方向距離h3を変えて、カーカスの半径方向高さHに対する距離h3の比(h3/H)を下記の表2に示された通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−3及び比較例4−5のタイヤを得た。
【0110】
[実施例4−7及び比較例6−7]
サイドエイペックスの厚さtaを変えて、サイドピースの厚さtsに対するこの厚さtaの比(ta/ts)を下記の表3に示された通りとした他は実施例1と同様にして、実施例4−7及び比較例6−7のタイヤを得た。
【0111】
[実施例8−11及び比較例8−9]
サイドエイペックスの半径方向高さh2を変えて、高さh1に対するこの高さh2の比(h2/h1)を下記の表4に示された通りとした他は実施例1と同様にして、実施例8−11及び比較例8−9のタイヤを得た。
【0112】
[実施例12−15]
第一円弧の半径R1及び第二円弧の半径R2を変えて半径R1に対する半径R2の比(R2/R1)を下記の表5に示された通りとした他は実施例1と同様にして、実施例12−15のタイヤを得た。
【0113】
[質量]
タイヤの質量を計測した。この結果が、比較例1を100とした指数で、下記の表1−5に示されている。数値が小さいほど好ましい、すなわち、軽量である。なお、101.0以下であることが、目標に設定された。
【0114】
[機能性]
タイヤをリムに組み込み、リムのフランジの先端からリムプロテクターの頂点までの距離(以下、突出距離)を計測した。適用可能なリムの中から、最も大きなリム(以下、最大リム、サイズ=8.5J)と、最も小さなリム(以下、最小リム、サイズ=7.0J)とを選定し、それぞれのリムについて、上記突出距離を計測した。最大リムを使用した場合には、荷重をかけずに、突出距離(以下、最大突出距離)を計測した。最小リムを使用した場合には、ETRTO規格における「LOAD CAPACITY」の2倍に相当する荷重をかけて、突出距離(以下、最小突出距離)を計測した。最大突出距離及び最小突出距離の平均値を算出した。この結果が、指数として下記の表1−5に示されている。数値が大きいほど好ましい、すなわち、数値が大きいほど、最小リムにおいても、そして最大リムにおいても、リムプロテクターの突出距離が適切に確保され、リムプロテクターがその機能を十分に発揮することを表している。なお、3.5以上であることが、目標に設定された。
【0115】
[横剛性]
タイヤを7.5Jのリムに組み込み、このタイヤに内圧が230kPaとなるように空気を充填した。縦荷重(1.5kN)を付加して、タイヤを接地させた後、横荷重(0.5kN)を付加した時の反発力と、トレッドの中心位置の移動量を計測し、横剛性を算出した。この結果が、指数として下記の表1−5に示されている。数値が大きいほど好ましい、すなわち、横剛性が高い。なお、4.0以上であることが、目標に設定された。
【0116】
[面内捻り剛性]
サイドウォール剛性試験機を用い、下記の測定条件で面内捻り剛性を測定した。
使用リム:7.5J
内圧:230kPa
この結果が、指数で下記の表1−5に示されている。数値が大きいほど、面内捻り剛性は大きい。なお、3.5以上であることが、目標に設定された。
【0117】
[転がり抵抗係数]
転がり抵抗試験機を用い、下記の測定条件で転がり抵抗係数(RRC)を測定した。
使用リム:7.5J(アルミニウム合金製)
内圧:250kPa
荷重:5.26kN
速度:80km/h
この結果が、指数として下記の表1−5に示されている。数値が小さいほど好ましい、すなわち、転がり抵抗係数が小さい。なお、3.5以下であることが、目標に設定された。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
【表4】
【0122】
【表5】
【0123】
表1−5に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0124】
以上説明されたリムプロテクター及びサイドエイペックスに関する技術は、種々のタイプのタイヤにも適用されうる。
【符号の説明】
【0125】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・クリンチ
10・・・ビード
12・・・カーカス
22・・・サイドエイペックス
24・・・トレッド面
26・・・コア
28・・・メインエイペックス
30・・・カーカスプライ
32・・・主部
34・・・折り返し部
40・・・サイドピース
42・・・リムプロテクター
44・・・本体
46・・・リム
48・・・フランジ
50・・・サイドエイペックス22の外側端
52・・・メインエイペックス28の外側端
54・・・コア26の外側端
56・・・折り返し部34の端
図1
図2