特許第6790723号(P6790723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790723
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/32 20160101AFI20201116BHJP
   F01P 3/18 20060101ALI20201116BHJP
   F02B 29/04 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   F02M26/32
   F01P3/18 G
   F02B29/04 K
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-209892(P2016-209892)
(22)【出願日】2016年10月26日
(65)【公開番号】特開2018-71392(P2018-71392A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】大橋 伸匡
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−113182(JP,A)
【文献】 特開2016−133077(JP,A)
【文献】 特開2016−050545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 1/00−11/20
F02B 29/00−29/08、47/08−47/10
F02M 26/00−26/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の冷却を行う高温側冷却水が流通する高温側冷却水用流路に高水温用ラジエータと高水温用送水装置を備えるとともに、前記内燃機関の吸気通路を通過する吸気ガスの冷却を行う低温側冷却水が流通する低温側冷却水用流路に低水温用ラジエータと低水温用送水装置を備えて構成される内燃機関において、
前記低温側冷却水用流路の前記低水温用ラジエータよりも下流側に配置されて前記吸気通路を通過する吸気ガスの冷却を前記低温側冷却水にて行うインタークーラと、このインタークーラよりも下流側に配置されて前記内燃機関の排気通路から前記吸気通路に還流されるEGRガスの冷却を行うEGRクーラを備えるとともに、前記インタークーラと前記EGRクーラの間の前記低温側冷却水用流路に、前記高温側冷却水用流路より分岐した分岐流路を接続して、前記インタークーラを通過した低温側冷却水と前記分岐流路を通過した高温側冷却水が混合された混合冷却水を前記EGRクーラに流通させるように構成される内燃機関。
【請求項2】
前記低温側冷却水用流路と前記分岐流路の接続点より上流側の前記分岐流路及び前記低温側冷却水用流路のそれぞれに、第1逆止弁、第2逆止弁を備えて構成される請求項に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン冷却水が流通する高温側冷却水路にメインラジエータと高温側冷却水用のポンプを備えるとともに、水冷インタークーラを冷却した後の冷却水が流通する低温側冷却水路にサブラジエータと低温側冷却水用のポンプとを備えて構成される内燃機関の冷却装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−189063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の燃費性能及び排ガス性能の良化の観点から、排気通路から吸気通路に還流される排気ガス(EGRガス)の低温化が検討されている。しかしながら、従来のように、EGRガスを冷却するEGRクーラの冷却媒体として、内燃機関の冷却により比較的高温となるエンジン冷却水を使用していたのでは、EGRガスの更なる低温化を達成するのは困難であった。
【0005】
本発明の目的は、EGRガスの更なる低温化を達成して、車両の燃費性能及び排ガス性能を良化させることができる内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の内燃機関は、内燃機関の冷却を行う高温側冷却水が流通する高温側冷却水用流路に高水温用ラジエータと高水温用送水装置を備えるとともに、前記内燃機関の吸気通路を通過する吸気ガスの冷却を行う低温側冷却水が流通する低温側冷却水用流路に低水温用ラジエータと低水温用送水装置を備えて構成される内燃機関において、前記低温側冷却水用流路の前記低水温用ラジエータよりも下流側に配置されて前記吸気通路を通過する吸気ガスの冷却を前記低温側冷却水にて行うインタークーラと、このインタークーラよりも下流側に配置されて前記内燃機関の排気通路から前記吸気通路に還流されるEGRガスの冷却を行うEGRクーラを備えるとともに、前記インタークーラと前記EGRクーラの間の前記低温側冷却水用流路に、前記高温側冷却水用流路より分岐した分岐流路を接続して、前記インタークーラを通過した低温側冷却水と前記分岐流路を通過した高温側冷却水が混合された混合冷却水を前記EGRクーラに流通させるように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の内燃機関によれば、エンジン冷却水(高温側冷却水)と吸気ガス冷却用の低温側冷却水を混合して、エンジン冷却水より低温の混合冷却水を冷却媒体としてEGRクーラに流通させるので、エンジン冷却水を冷却媒体とする従来技術と比較して、EGRガスを更に低温化することができる。その結果、気筒内に流入される吸気とEGRガスの混合気を低体積化して車両の燃費性能を良化させることができるとともに、混合気を低温化して排ガス性能を良化させることができる。
【0008】
また、EGRクーラの冷却媒体として低温側冷却水を用いることなく、低温側冷却水より高温の混合冷却水を用いるので、EGRガスに含まれる水蒸気の凝縮化による凝縮水(腐食水)の生成を抑制することができる。その結果、凝縮水による各種配管及びバルブ等の腐食や劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の内燃機関の構成を模式的に示す図である。
図2】第1逆止弁及び第2逆止弁を備えた場合における、図1のA点及びB点の水温及び水量の推移等を示す図である。
図3】高温側冷却水が低温側冷却水用流路に流入した場合における、図1のA点及びB点の水温及び水量の推移等を示す図である。
図4】低温側冷却水が高温側冷却水用流路に流入した場合における、図1のA点及びB点の水温及び水量の推移等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施の形態の内燃機関について、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本発明の内燃機関には高温側冷却水用流路(太線)と低温側冷却水用流路(細線)が備わる。
【0011】
高温側冷却水用流路は、エンジン(内燃機関)10の冷却を行う高温側冷却水(エンジン冷却水)HWが流通する流路で、上流側より順に、エンジン10、サーモスタット13、高水温用ラジエータ11、高水温用ウォーターポンプ(高水温用送水装置)12が備わる。高水温用ラジエータ11は、エンジン10を通過後の高温側冷却水HWを車両の内部に流入する空気により冷却する装置である。高水温用ウォーターポンプ12は、高温側冷却水用流路を循環させるためのエネルギーを高温側冷却水HWに供給する装置である。この高水温用ウォーターポンプ12の駆動源は、エンジン10の動力でもよいし、車両の内部にバッテリ(図示しない)を備えて、このバッテリの電力でもよい。サーモスタット13は、エンジン10を通過後の高温側冷却水HWの温度に応じて、高温側冷却水HWを高水温用ラジエータ11で冷却するか否かを設定することで、高温側冷却水HWの温度を調整する開閉弁装置である。より詳細には、サーモスタット13を通過する高温側冷却水HWの温度が予め設定された設定温度未満のときには、サーモスタット13は閉弁状態となって、エンジン10を通過後の高温側冷却水HWが高水温用ラジエータ11を経由することなくバイパス通路(図示しない)を経由して再びエンジン10に流入するようにして、エンジン10の暖機を促進する。一方、高温側冷却水HWの温度が設定温度以上のときには、サーモスタット13は開弁状態となって、エンジン10を通過後の高温側冷却水HWが高水温用ラジエータ11を経由して再びエンジン10に流入するようにして、高温側冷却水HWの温度を一定の範囲内に維持しながら、エンジン10を冷却する。なお、サーモスタット13の開弁度は、通常、サーモスタット13の温度と設定温度の差(=サーモスタット13の温度−設定温度)が大きくなるにつれて、大きくなるように設定する。
【0012】
低温側冷却水用流路は、エンジン10の吸気通路を通過する吸気ガスの冷却を行う低温側冷却水LWが流通する流路で、上流側より順に、低水温用ラジエータ21、低水温用ウォーターポンプ(低水温用送水装置)22、インタークーラ(チャージエアクーラ)23が備わる。低水温用ラジエータ21は、インタークーラ23を通過後の低温側冷却水LWを車両の内部に流入する空気により冷却する装置である。低水温用ウォーターポンプ22は、低温側冷却水用流路を循環させるためのエネルギーを低温側冷却水LWに供給する装置である。この低水温用ウォーターポンプ22の駆動源は、エンジン10の動力でもよいし、車両の内部にバッテリ(図示しない)を備えて、このバッテリの電力でもよい。インタークーラ23は、吸気通路に備わり、吸気通路を通過する吸気ガスの冷却を低温側冷却水用流路を通過する低温側冷却水LWを冷却媒体として行う装置である。なお、上記した各装置11、12、13、21、22、23、24に対する冷却水の流入出口にはホースが接続され、このホースに例えば鋼製の配管を接続して、冷却水回路を構成している。図1では、一例として、低水温用ラジエータ21の流出口に接続されるホース21aのみを図示し、その他のホースは省略している。
【0013】
また、本発明の内燃機関には、制御装置40が備わる。制御装置40は、サーモスタット13による温度の検出値に応じて、高水温用ウォーターポンプ12を制御したり、エンジン回転数や気筒内への燃料噴射量等のエンジン運転状態を表すパラメータの検出値または推定値に応じて、低水温用ウォーターポンプ22を制御したりする装置である。
【0014】
本発明の内燃機関では、排気通路から吸気通路に還流される排気ガス(EGRガス)を冷却するEGRクーラ24をEGR通路(図示しない)に備えて、このEGRクーラ24を低温側冷却水用流路が通過するように構成するとともに、EGRクーラ24より上流側の低温側冷却水用流路に、高温側冷却水用流路より分岐した分岐流路30を接続する。そして、低温側冷却水用流路と分岐流路30の接続点CPとEGRクーラ24との間の流路を通過する冷却水を、低温側冷却水用流路を通過する低温側冷却水LWと分岐流路30を通過する高温側冷却水HWが混合された混合冷却水MWとして、この混合冷却水MWがEGRクーラ24に流通するように構成する。図1では、混合冷却水MWが流通する混合冷却水用流路を極太線で示している。なお、EGRクーラ24を通過後の混合冷却水MWは、高温側冷却水用流路と低温側冷却水用流路の各々を通過する冷却水量を維持するために、低水温用ラジエータ21と、高水温用ラジエータ11と高水温用ウォーターポンプ12の間の高温側冷却水用流路の両方に還流する。また、高温側冷却水HWの温度は約80℃〜100℃、混合冷却水MWの温度は約50℃〜70℃、低温側冷却水LWの温度は約30℃〜40℃である。
【0015】
本発明の内燃機関によれば、エンジン冷却水(高温側冷却水)HWと吸気ガス冷却用の低温側冷却水LWを混合して、エンジン冷却水HWより低温の混合冷却水MWを冷却媒体としてEGRクーラ24に流通させるので、エンジン冷却水HWを冷却媒体とする従来技術と比較して、EGRガスを更に低温化することができる。その結果、気筒内に流入される吸気とEGRガスの混合気を低体積化して車両の燃費性能を良化させることができるとともに、混合気を低温化して排ガス性能を良化させることができる。
【0016】
また、EGRクーラ24の冷却媒体として低温側冷却水LWを用いることなく、低温側冷却水LWより高温の混合冷却水MWを用いるので、EGRガスに含まれる水蒸気の凝縮化による凝縮水(腐食水)の生成を抑制することができる。その結果、凝縮水による各種配管及びバルブ等の腐食や劣化を抑制することができる。
【0017】
また、図1に示すように、インタークーラ23とEGRクーラ24の間の低温側冷却水用流路に接続点CPを配置して、インタークーラ23の下流側で混合冷却水MWを生成するように構成すると、インタークーラ23の上流側の低温側冷却水より下流側の低温側冷却水の方が水温が高いので、インタークーラ23の上流側で混合冷却水MWを生成する場合よりも、EGRクーラ24に流入する混合冷却水MWの温度範囲をより高温とすることができる。その結果、凝縮水の生成をより確実に抑制することができる。
【0018】
また、図1に示すように、接続点CPより上流側の分岐流路30及び低温側冷却水用流路のそれぞれに、第1逆止弁31A、第2逆止弁31Bを備えて構成すると、高温側冷却水HWが接続点CPを経由してインタークーラ23に流入したり、あるいは、混合冷却水MW及び低温側冷却水LWが接続点CP及び分岐流路30を経由して高温側冷却水用流路に流入したりするのを防止することができる。その結果、各冷却水用流路に適正な温度の冷却水が確実に流れるので、エンジン10の過剰冷却やインタークーラ23の冷却性能低下等の不具合を防止することができる。
【0019】
また、各冷却水用流路を構成する配管またはホースを通過する冷却水に、この冷却水と温度差のある別の冷却水が瞬間的に大量に流入するのを防止することができるので、各冷却水用流路を構成する配管またはホースの急膨張または急収縮の発生を防止することができる。なお、接続点(混合部)CPの極力近くに逆止弁31A、31Bを配置すると、接続点(混合部)CPより上流側かつ逆止弁31A、31Bの下流での配管またはホースの急膨張または急収縮の発生を防止することができるので、好ましい。
【0020】
より詳細には、第1逆止弁31A及び第2逆止弁31Bを備える場合では、図2に示すように、イグニッションキーのオフ時(エンジン10の停止時)等で、各ウォーターポンプ12、22が停止して回転速度がゼロとなるが、慣性により各冷却水が瞬時に停止しないときでも、各冷却水用流路における冷却水の温度を維持することができる。例えば、分岐流路30のA点を通過する冷却水量(A点水量)やインタークーラ23より下流側の低温側冷却水用流路のB点を通過する冷却水量(B点水量)が瞬時に低下しないときでも、A点における高温側冷却水HWの温度(A点水温)を高温に、B点における低温側冷却水LWの温度(B点水温)を低温に維持することができる。
【0021】
これに対して、第1逆止弁31A及び第2逆止弁31Bを備えない場合では、図3に示すように、A点を通過する高温側冷却水HWがB点まで逆流して、B点を通過する低温側冷却水LWの温度が高温側冷却水HWの温度に近い値まで上昇したり、あるいは、図4に示すように、B点を通過する低温側冷却水LWがA点まで逆流して、A点を通過する高温側冷却水HWの温度が低温側冷却水LWの温度に近い値まで下降したりする虞がある。なお、図2図4では、高水温用ウォーターポンプ12の回転速度の推移は図示せず、低水温用ウォーターポンプ22の回転速度の推移のみを図示している。
【符号の説明】
【0022】
10 エンジン(内燃機関)
11 高水温用ラジエータ
12 高水温用ウォーターポンプ(高水温用送水装置)
21 低水温用ラジエータ
22 低水温用ウォーターポンプ(低水温用送水装置)
23 インタークーラ
24 EGRクーラ
30 分岐流路
31A 第1逆止弁
31B 第2逆止弁
CP 接続点
HW 高温側冷却水(エンジン冷却水)
MW 混合冷却水
LW 低温側冷却水
図1
図2
図3
図4