(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、臨床現場等で使用されている医療用舌圧測定装置は、測定用プローブのバルーンを口腔に挿入した後、被測定者が最大の力でバルーンを舌で押しつぶした際に発生する舌圧、即ち最大舌圧を測定するものとして使用されている。
【0005】
最大舌圧は舌が発揮できる最大筋力としての位置付けであり、実際に飲食して嚥下するときの舌圧は最大舌圧よりも小さな舌圧となっている。この嚥下時の舌圧を測定する方法としては、例えば、上記特許文献1のような測定用プローブのバルーンを口腔へ挿入して舌の上に配置した状態で少量の水を口腔に注入し、それを嚥下(水飲み嚥下)する際に舌の押し上げ力を舌圧として測定する方法や、舌の上にバルーンを配置した状態で水等を注入することなく嚥下(空嚥下)する際に舌の押し上げ力を舌圧として測定する方法等が考えられる。
【0006】
しかしながら、水飲み嚥下による舌圧測定の場合、口腔に水を含ませてからバルーンを挿入しなければならず、測定までの準備作業が健常者であっても簡単なものではなく、特に高齢者ではそのような準備作業を行うこと自体が困難な者も多く、被測定者に負担がかかる。また、準備作業がうまくできないことによって嚥下動作が不自然になりがちであり、測定値の正確性や安定性に問題があると考えられる。さらに、舌圧測定を1回行うと、上記準備作業が必要であるため、嚥下時舌圧を複数回連続して測定することはできなかった。尚、口腔にバルーンを挿入してから水を含ませる場合も同様である。
【0007】
また、空嚥下による舌圧測定の場合、口腔に嚥下できる物が無い状態で嚥下動作をしなければならないので、被測定者は強い力を入れて不自然な嚥下動作を行わなければならず、被測定者に負担がかかるとともに、測定値の正確性や安定性に問題があると考えられる。さらに、口腔に嚥下できる物が無い状態で複数回連続して嚥下動作を行うことは簡単なことではないので、嚥下時舌圧を複数回連続して測定することは難しい。
【0008】
つまり、これまでの方法では被測定者に負担がかかるとともに、被測定者が自然に嚥下動作を行っているときの嚥下時舌圧を正確にかつ安定して得ることができなかった。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被測定者が自然に嚥下動作を行っているときの嚥下時舌圧を正確にかつ安定して得ることができるようにするとともに、被測定者の負担を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、嚥下時舌圧を測定するときに流動物を口腔に同時に供給できるようにした。
【0011】
第1の発明は、嚥下時舌圧を測定する被測定者の口腔内に挿入される弾性材からなるバルーンと、上記バルーンが接続される中空管部とを備え、上記中空管部が、上記バルーン内の気体の圧力変化を検知する圧力検知部に接続される嚥下時舌圧測定用プローブにおいて、被測定者の口腔内に流動物を供給する供給管
と、上記供給管を上記中空管部に固定する固定部材とを備え
、上記固定部材は、上記中空管部に固定される中空管部側部材と、上記供給管に固定される供給管側部材とを備え、上記供給管側部材が上記中空管部側部材の側部に取り付けられ、上記中空管部側部材と上記供給管側部材との少なくとも一方には、他方に係合する係合部が上記供給管の軸線方向に並ぶように複数設けられことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、供給管により被測定者の口腔内に流動物が供給されるので、被測定者が通常の嚥下動作を行うことによって供給管から流動物が口腔内に供給されていき、その流動物を飲み込むときの舌圧がバルーン内の気体の圧力変化として測定される。従って、水飲み嚥下による舌圧測定の場合のように口腔に水を予め含ませておく必要は無く、また、空嚥下による舌圧測定の場合のように口腔内に嚥下できる物が無い状態で嚥下動作を行わなくてもよいので、被測定者が自然に嚥下動作を行っているときの嚥下時舌圧が正確にかつ安定して得られるとともに、被測定者の負担も軽減される。
【0013】
さらに、供給管を使用することで口腔内に外部から連続的に流動物を供給することが可能になる。これにより、嚥下動作を連続して行って嚥下時舌圧を複数回連続して測定することが可能になる。
【0014】
また、中空管部に対して供給管が位置決めされるので、供給管が被測定者の嚥下動作を阻害しないように口腔内の所定位置に配置されるようになる。
【0015】
また、中空管部の側部に供給管が並ぶように配置される。そして、係合部を相手側部材に係合させることによって中空管部側部材と供給管側部材との相対的な位置決めが行われる。この係合部が供給管の軸線方向に並ぶように設けられているので、中空管部側部材と供給管側部材との相対的な位置を、供給管の軸線方向について変えることが可能になる。これにより、供給管とバルーンとの相対的な位置を必要に応じて変えることが可能になる。
【0016】
第
2の発明は、第
1の発明において、上記供給管の口腔内側の端部は、上記バルーンの側方に配置されることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、供給管の端部が口腔内でバルーンの側方に位置することになるので、供給管が嚥下時の舌の動きを阻害し難くなる。
【0018】
第
3の発明は、第
1または
2の発明において、上記供給管の口腔内側の端部は、上記バルーンにおける口腔への挿入方向先端部よりも基端側に配置されることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、供給管の端部が口腔内でバルーンの先端部よりも基端側に位置することになるので、供給管から流入する流動物が口腔内の奥の深い所にいきなり供給されてしまうのを防いで使用感を良好にすることが可能になる
。
【0020】
第
4の発明は、第1から
3のいずれか1つの発明において、上記供給管の中間部には該供給管を屈曲変形させる変形許容部が設けられていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、供給管が屈曲するので、供給管の口腔側の端部を口腔内に挿入することと、供給管の反対側の端部を流動物の容器に入れることとが簡単に行えるようになる。
【0022】
第
5の発明は、上記嚥下時舌圧測定用プローブが接続され、上記バルーン内の気体の圧力変化を検知する圧力検知部を有することを特徴とする嚥下時舌圧測定装置である。
【発明の効果】
【0023】
第1の発明によれば、嚥下時舌圧を測定するときに供給管によって口腔内に流動物を供給することができるので、被測定者が自然に嚥下動作を行っているときの嚥下時舌圧を正確にかつ安定して得ることができるとともに、被測定者の負担を軽減できる。さらに、嚥下時舌圧を複数回連続して測定することもできる。
【0024】
また、供給管を中空管部に固定することができるので、被測定者の嚥下動作を阻害しないように供給管を配置できる。
【0025】
また、中空管部の側部に供給管を配置することができるので、被測定者の使用し易い形態にすることができる。
【0026】
また、係合部を供給管の軸線方向に並ぶように複数設けたので、供給管とバルーンとの相対的な位置を必要に応じて変えることができる。これにより、被測定者の使用感をより一層良好にすることができる。
【0027】
第
2の発明によれば、供給管の口腔内側の端部をバルーンの側方に配置したので、供給管が嚥下時の舌の動きを阻害し難くなり、被測定者が自然に嚥下動作を行うことができる。これにより、より一層正確な測定値を得ることができる。
【0028】
第
3の発明によれば、供給管の口腔内側の端部をバルーンの先端部よりも基端側に配置することができる。これにより、供給管から流入する流動物が口腔内の奥の深い所にいきなり供給されてしまうのを防いで使用感を良好にすることができるので、被測定者が自然に嚥下動作を行うことができる
。
【0029】
第
4の発明によれば、供給管の中間部に変形許容部を設けたので、供給管の口腔側の端部を口腔内に挿入することと、供給管の反対側の端部を流動物の容器に入れることとを簡単に行うことができる。これにより、被測定者の使用感をより一層良好にすることができるとともに、準備作業を容易にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0032】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る嚥下時舌圧測定用プローブ1の使用状態を示す側面図である。この嚥下時舌圧測定用プローブ1は、プローブ本体10と、供給管20と、供給管20をプローブ本体10に固定するための固定部材30とを備えており、嚥下時舌圧を測定する際に
図2に示す嚥下時舌圧測定装置15に接続されて使用される。嚥下時舌圧とは、詳細は後述するが、
図1に示す被測定者100が口腔101内の食べ物や飲み物を嚥下する際に舌102を上に押し上げる動作を行ったときに発生する舌102の上方への押圧力のことである。
【0033】
嚥下時舌圧測定装置15は、例えば特許文献1に開示されている装置を用いることができ、具体的には、圧力検知部15aと、表示部15bと、電源部15cとを備えている。圧力検知部15aは、周知の圧力センサ等で構成されており、空気圧を得ることができるように構成されている。表示部15bは、例えば液晶表示パネルやLED等で構成することができ、圧力検知部15bで得られた空気圧を具体的に数値で表示したり、圧力検知部15bで得られた空気圧を高、中、低といった多段階で表示することができるように構成されている。電源部15cは、例えば電池等であり、上記圧力検知部15aと表示部15bに電力を供給する。
【0034】
この実施形態において嚥下時舌圧の被測定者100としては、例えば高齢者、障がい者、病人等を挙げることができるが、健常者であってもよい。
【0035】
(プローブ本体の構成)
図2にも示すように、プローブ本体10は中空管部11とバルーン12とを備えている。バルーン12は、被測定者100の口腔101内で押圧力を受ける受圧部12aと、中空管部11に接続される接続筒部12bとを備えており、受圧部12a及び接続筒部12bは一体成形されている。バルーン12を構成する弾性材としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、シリコーンゴム等のゴムやエラストマー等の気密性及び水密性を有する材料を使用することができる。
【0036】
受圧部12aは被測定者100の口腔101内に挿入される部分であり、口腔101内において測定したい部位に配置される。受圧部12aの形状は、楕円形に近い断面を有する中空状をなしており、全体として
図1の左右方向、即ち、被測定者100の口腔101への挿入方向に長い形状となっている。この受圧部12aを例えば上下方向に押圧して弾性変形させることによって舌圧を測定することができるようになっているので、受圧部12aは、押圧された後、外力を除くと元の形状に復元する形状復元性を有している。尚、接続筒部12bを開放した状態で受圧部12aを押圧した場合、受圧部12aを極めて小さい力で弾性変形させることができるように、上記弾性材の硬度が低硬度に設定されている。
【0037】
接続筒部12bは、受圧部12aの長手方向の一側(口腔への挿入方向基端側)の端部から該受圧部12aの外方へ突出するように形成されている。接続筒部12bの突出方向は、受圧部12aの長手方向に沿う方向である。接続筒部12bの内部は受圧部12aの内部と連通している。接続筒部12bの断面形状は扁平である。具体的には、接続筒部12bの長手方向に直交する方向の断面は、プローブ本体10の幅方向(測定状態で被測定者100の左右方向となる方向)に長い形状となっている。尚、接続筒部12bの断面形状は例えば円形であってもよいし、楕円形状等であってもよい。
【0038】
中空管部11の材料はバルーン12を構成する材料よりも硬い材料からなるものであり、その軸線は略直線状に延びている。中空管部11の材料として、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート等の硬質樹脂材料を挙げることができる。口腔への挿入方向を基準としたとき、中空管部11の先端側には、硬質筒部11aが設けられている。この硬質筒部11aは、バルーン12の接続筒部12bを外側から覆うように形成されている。舌圧の測定時には、硬質筒部11aを上の前歯103及び下の前歯104(
図1に示す)で噛んで保持する。従って、硬質筒部11aは歯103、104で噛んだときに潰れないように、所定以上の剛性を有している。
【0039】
口腔への挿入方向を基準としたとき、中空管部11の基端側にはコネクタ部13が設けられている。コネクタ部13にはチューブ14の一端部が接続されている。このチューブ14の他端部は嚥下時舌圧測定装置15の圧力検出部15aに接続されている。つまり、バルーン12の受圧部12aの内部は、中空管部11、コネクタ部13及びチューブ14を介して圧力検出部15aと連通しており、バルーン12の受圧部12aの内部の圧力変動は直ちに圧力検出部15aに伝わるようになっている。
【0040】
尚、上述したプローブ本体10の構成は一例であり、例えばバルーン12の受圧部12aの形状は球状及び球に近似した形状であってもよいし、中空管部11は例えば湾曲していてもよい。
【0041】
(供給管の構成)
供給管20は、被測定者100の口腔101内に流動物を供給するためのものであり、例えば、硬質樹脂製の管や軟質樹脂製のチューブ等を用いることができ、好適なのはストローである。この実施形態では、供給管20が上記した硬質樹脂製である場合について説明する。供給管20は、口腔への挿入方向を基準としたとき、先端側部分を構成する先端側部21と、基端側部分を構成する基端側部22と、供給管20の軸線方向中間部に設けられた変形許容部23とを備えている。
【0042】
先端側部21は、軸線が略直線状に延びており、プローブ本体10の中空管部11の軸線と略平行に延びるように配置される部分である。この先端側部21の端部21aには先端側開口(図示せず)が形成されている。この端部21aは供給管20の口腔101内側の端部であり、バルーン12aの側方に配置されてバルーン12aと共に口腔101内に挿入される。
図1では、供給管20の口腔101内側の端部21aが、被測定者100の左右方向を基準としたとき、バルーン12aの左側方に位置しているが、これに限らず、バルーン12aの右側方に位置していてもよい。
【0043】
また、供給管20の口腔101内側の端部21aは、バルーン12aにおける口腔101への挿入方向先端部よりも基端側に配置される。好ましいのは、供給管20の口腔101内側の端部21aの位置が、バルーン12aにおける口腔101への挿入方向中央部と、接続筒部12bにおける口腔101への挿入方向先端部との間である。
【0044】
基端側部22も軸線が略直線状に延びている。基端側部22の端部22aには基端側開口(図示せず)が形成されている。この端部22aは供給管20の基端部であり、口腔101の外方に配置される。供給管20端部22aは、流動物としての水Wが入った容器Aに差し込まれて水面よりも下に配置される部分である。
【0045】
変形許容部23は、供給管20の軸線方向中間部分を屈曲変形させるための部分であり、例えば蛇腹状に形成した部分等で構成することができる。変形許容部23は外力を加えて屈曲変形した状態で外力を除いてもその変形後の形状を維持する形状維持性を備えている。変形許容部23を設けていることで、先端側部21の延びる方向と基端側部22の延びる方向とを変えることができる。具体的には、
図1に示すように、先端側部21をプローブ本体10の中空管部11と同方向に延びるように向けておき、基端側部22を下方へ延びるように向けておくことができ、これにより、先端側部21の角度に関わらず、基端側部22の端部22aを水面よりも下に配置することが可能になる。
【0046】
(固定部材の構成)
図3及び
図4に示すように、固定部材30は、プローブ本体10の中空管部11に固定される中空管部側部材31と、供給管20の先端側部21に固定される供給管側部材32とを備えている。中空管部側部材31及び供給管側部材32は共に上記硬質樹脂材等で構成されていて、供給管側部材32が中空管部側部材31に取り付けられている。
【0047】
中空管部側部材31は、中空管部11の軸線方向に延びる基板部31aと、基板部31aの幅方向両側からそれぞれ中空管部11の外周面に沿うように円弧状に湾曲して延び、該外周面を径方向両側から把持する板状の中空管部側把持部31b、31bとを備えている。さらに、基板部31aの幅方向両側には、中空管部側把持部31b、31bとは反対側へ突出するレール部31c、31cが設けられている。レール部31c、31cは中空管部11の軸線方向に延びている。また、基板部31aにおけるレール部31c、31cの間の面は、供給管側部材32の基板部32aと接するように配置される面であり、この面には、複数の係合突部(係合部)31dが中空管部11の軸線方向に並ぶように設けられている。各係合突部31dは、基板部31aの幅方向に延びている。
【0048】
供給管側部材32は、供給管20の軸線方向に延びる基板部32aと、基板部32aの幅方向両側からそれぞれ供給管20の外周面に沿うように円弧状に湾曲して延び、該外周面を径方向両側から把持する板状の供給管側把持部32b、32bとを備えている。さらに、基板部32aの幅方向両側には、上記レール部31c、31cにそれぞれ係合する突条部32c、32cが該幅方向に突出するように形成されている。突条部32c、32cは、供給管20の軸線方向に延びており、上記レール部31c、31cに係合した状態で該レール部31c、31cによって該レール部31c、31cの延びる方向に案内されるようになっている。
【0049】
また、基板部32aにおける供給管側部材32の基板部32aと接する面には、複数の係合突部(係合部)32dが供給管20の軸線方向に並ぶように設けられている。各係合突部32dは、基板部32aの幅方向に延びている。供給管側部材32の係合突部32dは、中空管部側部材31の係合突部31d、31dの間に嵌合した状態で該係合突部31d、31dに係合するようになっており、これにより、中空管部側部材31及び供給管側部材32が供給管20の軸線方向に相対的に変位しないようになっている。
【0050】
尚、供給管側部材32の係合突部32dが中空管部側部材31の係合突部31d、31dに係合した状態で、中空管部側部材31及び供給管側部材32を供給管20の軸線方向に相対的に変位させる際には、中空管部側部材31及び供給管側部材32の一方に対して供給管20の軸線方向に力を加える。これにより、供給管側部材32の係合突部32dが中空管部側部材31の係合突部31dを乗り越えて、中空管部側部材31及び供給管側部材32を供給管20の軸線方向に相対的に変位させることができる。
【0051】
(嚥下時舌圧測定用プローブの使用方法)
次に、実施形態1に係る嚥下時舌圧測定用プローブ1の使用方法について説明する。まず、プローブ本体10の中空管部11を固定部材30の中空管部側把持部31b、31bの間に押し込んで中空管部側把持部31b、31bにより中空管部11を把持する。また、供給管20を固定部材30の供給管側把持部32b、32bの間に押し込んで供給管側把持部32b、32bにより供給管20を把持する。また、供給管側部材32の突条部32c、32cを中空管部側部材31のレール部31c、31cに入れるとともに、供給管側部材32の係合突部32dを中空管部側部材31の係合突部31d、31dに係合させておく。
【0052】
供給管20の口腔101内側の端部21aは、バルーン12aにおける口腔101への挿入方向中央部と、接続筒部12bにおける口腔101への挿入方向先端部との間に配置するとともに、バルーン12aの側方に配置する。供給管20の口腔101内側の端部21aの位置を調整する際には、供給管側部材32をレール部31c、31cに沿ってスライドさせ、係合突部32dの係合位置を変更すればよい。また、供給管20は供給管側部材32に把持されているだけなので、軸線方向に力を加えることによって供給管20を供給管側部材32に対して軸線方向に変位させることもできる。さらに、プローブ本体10の中空管部11は中空管部側部材31に把持されているだけなので、軸線方向に力を加えることによって中空管部11を中空管部側部材31に対して軸線方向に変位させることもできる。固定部材30を使用することで、中空管部11に対して供給管20を位置決めできるので、供給管20が被測定者100の嚥下動作を阻害しないように口腔101内の所定位置に配置できる。
【0053】
このようにして供給管20の口腔101内側の端部21aの位置調整を行った後、バルーン12aを口腔101に挿入して舌102の上に配置する。このとき、供給管20の口腔101内側の端部21aも口腔101に挿入されてバルーン12aの側方に配置される。被測定者100は、硬質筒部11aを上の前歯103及び下の前歯104で噛んで保持する。また、被測定者100は、中空管部11及び供給管20を上唇105と下唇106とで挟んでおき、上唇105と下唇106との間に隙間ができないようにしっかりと閉じておく。
【0054】
そして、変形許容部23を操作して供給管20の基端側部22の端部22aを水Wの入った容器Aに差し込む。この状態で被測定者100は嚥下動作を行う。被測定者100が嚥下動作を行うと、供給管20により被測定者100の口腔101内に水が供給される。その水を飲み込むときの舌圧がバルーン12a内の気体の圧力変化として測定される。従って、水飲み嚥下による舌圧測定の場合のように口腔に水を予め含ませておく必要は無く、また、空嚥下による舌圧測定の場合のように口腔内に嚥下できる物が無い状態で嚥下動作を行わなくてもよいので、被測定者100が自然に嚥下動作を行っているときの嚥下時舌圧を正確にかつ安定して得ることができるとともに、被測定者100の負担も軽減できる。
【0055】
さらに、供給管20を使用することで口腔101内に外部から連続的に水を供給することができる。これにより、嚥下動作を連続して行って嚥下時舌圧を複数回連続して測定することができる。
【0056】
嚥下動作を行う際、供給管20の端部21aが口腔101内でバルーン12aの側方に位置することになるので、供給管20が嚥下時の舌102の動きを阻害し難くなる。また、供給管20の端部21aが口腔101内でバルーン12aの先端部よりも基端側に位置することになるので、供給管20から流入する流動物が口腔101内の奥の深い所にいきなり供給されてしまうのを防いで使用感を良好にすることができる。
【0057】
尚、上記実施形態では、中空管部側部材31に係合突部31dを設け、供給管側部材32に係合突部32dを設けているが、これに限らず、中空管部側部材31の係合突部31dを省略するか、供給管側部材32の係合突部32dを省略してもよい。また、係合突部31d、32dの代わりには係合凹部等を設けてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、供給管20によって水を供給するようにしているが、これに限らず、お茶、ジュース等であってもよいし、水よりも粘度の高い各種液体であってもよいし、流動食であってもよい。
【実施例】
【0059】
図5は本発明の実施例に係る嚥下時舌圧測定用プローブ1を使用して実際に嚥下時舌圧を測定した結果を示すグラフである。
図5に示すグラフの横軸は時間(秒)を示し、縦軸は圧力検知部15aで検知された圧力(kPa)を示す。縦軸における0kPaは基準圧のことである。つまり、基準圧は大気圧の場合もあるし、例えば嚥下時舌圧測定用プローブ1内が図示しない加圧装置によって所定圧力となるまで加圧されている場合にはその所定圧力が基準圧となる。
【0060】
嚥下時舌圧測定装置15は、特許文献1に開示されているような装置であり、圧力を数値で得ることができるように構成されているものを使用した。この嚥下時舌圧測定装置15に上記加圧装置が内蔵又は接続されていてもよく、この場合、加圧装置によって嚥下時舌圧測定用プローブ1内の圧力を上記所定圧力となるまで加圧しておくことができる。また、供給管20によって供給する流動物は水である。被測定者は成人男性であり、健常者である。
【0061】
図5に示すように、約5秒の間に圧力のピークが3回〜4回存在しており、このピークの回数は嚥下の回数と一致する。また、嚥下動作を行う毎に水が口腔に供給されるので、被測定者が自然に嚥下動作を行うことができ、ピーク時の圧力は高くても11kPa程度となっている。
【0062】
一方、
図6に示す比較例1は、口腔に嚥下できる物が無い状態で嚥下動作を行う空嚥下の場合であり、プローブは実施形態1のプローブ本体10と同じものを使用しており、供給管20を省略した。被測定者は実施例の場合と同じである。また、横軸及び縦軸は
図5に示すグラフと同じである。
【0063】
この空嚥下の場合、口腔に嚥下できる物が無いので、被測定者は強い力を入れて不自然な嚥下動作を行わなければならず、従って、
図8にも示すように、ピーク時の圧力が実施例に比べて大幅に高くなり、16kPa程度になってしまう。また、圧力波形が実施例に比べていびつな形になっており、このことからも不自然な嚥下動作であることが分かる。
【0064】
図7に示す比較例2は、実施形態1のバルーン12aを口腔へ挿入して舌の上に配置した状態で少量の水を口腔に注入して嚥下動作を行う水飲み嚥下の場合であり、プローブは実施形態1のプローブ本体10と同じものを使用しており、供給管20を省略した。被測定者は実施例の場合と同じである。また、横軸及び縦軸は
図5に示すグラフと同じである。
【0065】
この水飲み嚥下の場合も被測定者は不自然な嚥下動作になる。従って、
図8にも示すように、ピーク時の圧力が10kPa程度になってしまう。また、圧力波形は連続していない。これは、舌圧測定を1回行うと、水を口腔に注入するという準備作業が必要であるため、嚥下時舌圧を複数回連続して測定することはできなかったからである。
【0066】
図8より、比較例1では嚥下時舌圧が最大舌圧に近い値になって被測定者に負担がかかっているのに対し、実施例では被測定者が自然に嚥下動作を行っているときの嚥下時舌圧を正確にかつ安定して得られることが分かる。
【0067】
(実施形態2)
図9〜
図11は、本発明の実施形態2に係り、この実施形態2は、実施形態1のものに対して固定部材の構造が異なるだけであり、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0068】
実施形態2の固定部材40は、プローブ本体10の中空管部11を把持する部分41と、供給管20を把持する部分42とが一体成形された1つの部品からなるものである。すなわち、固定部材40は、中空管部11の外周面に沿うように円弧状に湾曲して延び、該外周面を径方向両側から把持する板状の中空管部側把持部41a、41aと、供給管20の外周面に沿うように円弧状に湾曲して延び、該外周面を径方向両側から把持する板状の供給管側把持部42a、42aとを備えている。
【0069】
実施形態2では、供給管20は供給管側把持部42a、42aに把持されているだけなので、軸線方向に力を加えることによって供給管20を供給管側把持部42a、42aに対して軸線方向に変位させることができる。さらに、プローブ本体10の中空管部11は中空管部側把持部41a、41aに把持されているだけなので、軸線方向に力を加えることによって中空管部11を中空管部側把持部41a、41aに対して軸線方向に変位させることができる。
【0070】
この実施形態2の場合も実施形態1と同様に供給管20を備えているので、被測定者100が自然に嚥下動作を行っているときの嚥下時舌圧を正確にかつ安定して得ることができるとともに、被測定者100の負担を軽減できる。さらに、嚥下時舌圧を複数回連続して測定することもできる。
【0071】
また、上記実施形態1、2では供給管20を1本だけ設けているが、これに限らず2本以上設けてもよい。例えば供給管20を2本設ける場合には、バルーン12aの両側方にそれぞれ供給管20を配置するのが好ましい。
【0072】
また、上記実施形態1、2では固定部材30、40を樹脂成形品としているが、これに限らず、例えば粘着テープ、結束バンド、紐等によって供給管20を中空管部11に固定するようにしてもよい。
【0073】
また、図示しないが、プローブ本体10及び供給管20を径方向両側から挟持するように構成された固定部材を用いてもよい。この場合、例えば2つの部材に、それぞれプローブ本体10が嵌まる凹部と供給管20が嵌まる凹部を形成しておき、2つの部材を組み合わせることによってプローブ本体10及び供給管20を挟持することが可能になる。また、2つの部材は別部材としてもよいし、薄肉ヒンジ等を介して開閉動作可能に一体成形してもよい。
【0074】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。