(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記送風装置は、前記前席の足元空間と車室の最後方部に位置する前記後席(9)の足元空間(S9a、S9b)との間を循環する風流れを形成する請求項1に記載の車両用空調装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0011】
(第1実施形態)
まず、本実施形態の車両用空調装置が搭載される車両について説明する。
【0012】
図1、2、3に示すように、車両1は、エンジンルーム2と、車室3とを備えている。エンジンルーム2と車室3とは、ダッシュパネル4によって区画されている。ダッシュパネル4は、ファイヤーウォールとも呼ばれる。車両1は、車室3の床を構成する床部材5aを備える。床部材5aは、車両1の図示しない底部とは別の部材で構成されている。車室3の前方部には、インストルメントパネル6が配置されている。インストルメントパネル6は、計器類が配置されている部分だけでなく、オーディオやエアコンを収納する部分を含む、車室内の前席の前方側に位置するパネル全体をさしている。車室内には、車両前後方向に並ぶ3列の座席7、8、9が配置されている。車両前方側から1列目の座席7が前席である。車両前方側から2列目の座席8と3列目の座席9が後席である。3列目の座席9が車室3の最後方部に位置する後席である。1列目の座席7は、運転席7aと助手席7bとを含む。2列目の座席8は、運転席側の座席8aと助手席側の座席8aとを含む。3列目の座席9は、運転席側の座席9aと助手席側の座席9bとを含む。
【0013】
本実施形態の車両用空調装置10は、前席空調ユニット20を備えている。前席空調ユニット20は、インストルメントパネル6の内側に配置されており、車室3の前方部に配置されている。前席空調ユニット20は、車室3の前席7側の空間に向けて温度調整された空気を吹き出すことで、車室内空間の空調を行う。
【0014】
前席空調ユニット20は、内気吸込部21とフット吹出部22とを有する。内気吸込部21は、車室内の空気、すなわち、内気を吸い込む部分である。フット吹出部22は、前席7の足元空間に向けて空気を吹き出す部分である。フット吹出部22は、運転席側フット吹出部22aと、助手席側フット吹出部22bとを含む。
【0015】
前席空調ユニット20は、暖房時に、内気吸込部21から内気を吸い込み、吸い込んだ空気を加熱して温風を形成し、フット吹出部22から温風を吹き出すように構成されている。このため、暖房時では、
図1、2の矢印F10aのように、運転席側フット吹出部22aから運転席7aの足元空間S7a(
図2参照)へ温風が吹き出される。
図1、3の矢印F10bのように、助手席側フット吹出部22bから助手席7bの足元空間S7b(
図3参照)へ温風が吹き出される。
【0016】
図1に示すように、具体的には、前席空調ユニット20は、送風ユニット201と、エアコンユニット202とを有する。
【0017】
送風ユニット201は、車室内に向かう空気流れを形成する。送風ユニット201は、送風機203と、内外気切替部204とを有する。
【0018】
内外気切替部204は、内気吸込部21と外気吸込部23とを有する。外気吸込部23は、車室外の空気、すなわち、外気を吸い込む部分である。内気吸込部21と外気吸込部23は、選択的に開閉される。送風機203は、内気吸込部21と外気吸込部23の一方から空気を吸い込み、エアコンユニット202へ空気を送る。
【0019】
エアコンユニット202は、空気を冷却する図示しない冷却器と、空気を加熱する図示しない加熱器とを有する。冷却器としては、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成する蒸発器が用いられる。加熱器としては、エンジン冷却水、すなわち、温水を加熱源として空気を加熱するヒータコアが用いられる。エアコンユニット202は、車室内に向けて空気を吹き出すための吹出部を有している。吹出部は、図示しないフェイス吹出部と、図示しないデフロスタ吹出部と、フット吹出部22とを含む。
【0020】
車両用空調装置10は、前席空調ユニット20とは別体の送風装置30を備えている。送風装置30は、第1送風機31と、第2送風機32とによって構成されている。
【0021】
図1に示すように、第1送風機31は、車室3のうち運転席側の2列目の座席8aの位置に配置されている。第2送風機32は、車室3のうち助手席側の2列目の座席8bの位置に配置されている。したがって、第1送風機31および第2送風機32は、車室3のうち前席空調ユニット20よりも車両後方側の部位に配置されている。第1送風機31および第2送風機32は、互いに車両左右方向でずらして配置されている。
【0022】
図2に示すように、第1送風機31は、座席8aの下、すなわち、座席8aの乗員が着座する座部と床部材5aとの間に配置されている。
図3に示すように、第2送風機32は、座席8bの下、すなわち、座席8bの座部と床部材5aとの間に配置されている。
【0023】
第1送風機31は、
図1の矢印F11bのように、第1送風機31の車両前方側から風を吸い込み、
図1の矢印F11cのように、第1送風機32の車両後方側へ風を吹き出す。このため、第1送風機31は、
図1の矢印F11a、F11b、F11cのように、前席7aの足元空間から車両後方側に向かう風流れを形成する。したがって、第1送風機31は、運転席側フット吹出部22aから吹き出された風F10aを車両後方側へ送る。
【0024】
第2送風機32は、
図1の矢印F12bのように、第2送風機32の車両後方側から風を吸い込み、
図1の矢印F12cのように、第2送風機32の車両前方側へ風を吹き出す。このため、第2送風機32は、
図1の矢印F12b、F12c、F12dのように、車両後方側から車両前方側に向かう風流れを形成する。すなわち、第2送風機32は、第1送風機31によって形成された風流れを車両前方側へ戻す。
【0025】
第1送風機31と第2送風機32とは、車両左右方向にずらして配置されている。このため、第1送風機31の吹き出しと第2送風機32の吸い込みによって、3列目の座席9の下の空間または足元空間において、
図1中の矢印F11d、F12aのように、左右方向に流れる風が形成される。
【0026】
第1送風機31および第2送風機32としては、それぞれ、遠心送風機が用いられる。第1送風機31および第2送風機32は、それぞれ、遠心ファン311、321と、スクロールケース312、322とを有する。遠心ファン311、321は、スクロールケース312、322に収容される。遠心ファン311、321の作動によって、スクロールケース312、322の吸込部から空気が吸い込まれ、スクロールケース312、322の吹出部から空気が吹き出される。
【0027】
次に、本実施形態の車両用空調装置10の作動について説明する。
【0028】
暖房時に、前席空調ユニット20が、
図2、3の矢印F10a、10bのように、フット吹出部22から温風を吹き出す。第1送風機31は、
図2の矢印F11a、F11bのように、運転席側フット吹出部22aからの温風を吸い込み、
図2の矢印F11cのように、吸い込んだ温風を運転席側の3列目の座席9aの足元空間S9aに向けて吹き出す。第2送風機32は、
図3の矢印F12bのように、助手席側の3列目の座席9bの足元空間S9bから空気を吸い込む。第2送風機32は、
図3の矢印F12c、F12dのように、助手席7bの足元空間S7bに向けて風を吹き出す。前席空調ユニット20は、
図3の矢印F12eのように、助手席7bの足元空間S7bに送られた風を吸い込む。前席空調ユニット20は、吸い込んだ風を追加熱して、フット吹出部22から再び吹き出す。
【0029】
これにより、前席空調ユニット20からの温風が、
図1の矢印F10a、F11a、F11b、F11c、F11d、F12a、F12b、F12c、F12d、F12eのように流れる。すなわち、
図2、3の矢印F10a、F11a、F11b、F11c、F12b、F12c、F12d、F12eのように、前席空調ユニット20からの温風が、運転席7aの足元空間S7a、運転席側の2列目の座席8aの足元空間S8a、運転席側の3列目の座席9aの足元空間S9a、助手席側の3列目の座席9bの足元空間S9b、助手席側の2列目の座席8bの足元空間S8b、助手席7bの足元空間S7bの順に流れた後、前席空調ユニット20に吸い込まれる。なお、足元空間とは、座席に着座した乗員の足の膝下が位置する空間であり、座席の座部よりも前方側であって、座部の最上部よりも下側の空間である。また、助手席側フット吹出部22bからの温風は、
図1の矢印F10bのように、助手席7bの足元空間S7bに吹き出された後、前席空調ユニット20に吸い込まれる。
【0030】
次に、本実施形態の車両用空調装置10と、
図4に示す比較例1の車両用空調装置J10とを比較する。比較例1の車両用空調装置J10は、前席空調ユニット20の他に後席空調ユニット40を備え、本実施形態の送風装置30を備えていない点が、本実施形態の車両用空調装置10と異なる。
【0031】
後席空調ユニット40は、車室の後方部、具体的には、3列目の座席9よりも車両後方側に配置されている。後席空調ユニット40は、エンジン冷却水を熱源として空気を加熱する加熱器を有する。
【0032】
比較例1の車両用空調装置J10は、暖房時に、
図4中の矢印のように、前席空調ユニット20のフット吹出部22から温風を前席7の足元空間へ吹き出し、前席7の足元空間から空気を吸い込む。さらに、後席空調ユニット40の吹出部から温風を3列目の座席9の足元空間へ吹き出し、座席9の足元空間から空気を吸い込む。
【0033】
しかし、前席空調ユニット20からの温風は、フット吹出部22から離れている2列目の座席8の足元空間に届きにくい。同様に、後席空調ユニット40からの温風は、後席空調ユニット40の吹出部から離れている2列目の座席8の足元空間に届きにくい。このため、2列目の座席8の乗員の暖房感が不足する。
【0034】
また、後席空調ユニット40は、車両1の前方部に位置するエンジンルーム2から離れている。このため、後席空調ユニット40の加熱器にエンジン冷却水を導くための配管経路が長くなり、空気の加熱減となるエンジン冷却水の温度が低下する。この結果、比較例1の車両用空調装置J10では、暖房効率が悪くなってしまう。また、後席空調ユニット40では、十分な暖房性能が得られず、3列目の座席9の乗員の暖房感も不足する。
【0035】
これに対して、本実施形態の車両用空調装置10では、前席空調ユニット20からの温風が前席7の足元空間S7a、S7bに吹き出される場合に、送風装置30が、前席7の足元空間S7a、S7bと3列目の座席9の足元空間S9a、S9bとの間を循環する風流れを形成する。これにより、前席空調ユニット20からの温風が、前席7の足元空間S7aを通って、3列目の座席9a、9bの足元空間S9a、S9bに到達した後、前席7の足元空間S7bに到達する風流れが形成される。すなわち、前席空調ユニット20からの温風が、前席7の足元空間S7a、S7bだけでなく、2列目の座席8の足元空間S8a、S8bおよび3列目の座席9の足元空間S9a、S9bにも届く。このため、2列目および3列目の座席8、9の乗員の暖房感を向上させることができる。よって、本実施形態の車両用空調装置10によれば、前席空調ユニット20からの温風によって、前席7だけでなく、後席8、9を含めた全部の座席の乗員に十分な暖房感を与えることができる。
【0036】
さらに、本実施形態の車両用空調装置10によれば、後席空調ユニット40を必要としないため、温水を導く配管経路が長くなることを抑制でき、前席空調ユニット20の加熱器へ温水を集中させることができる。よって、本実施形態の車両用空調装置によれば、比較例1の車両用空調装置J10と比較して、暖房効率を向上させることができる。
【0037】
さらに、本実施形態の車両用空調装置10によれば、暖房時に、車室3の下層部(すなわち、足元空間)だけで内気を循環させることができるので、窓曇りを防止することができる。
【0038】
(第2実施形態)
図5に示すように、本実施形態は、前席空調ユニット20が、暖房時に、内外気2層モード運転を行う構成となっている点が、第1実施形態と異なる。送風装置30は、第1実施形態と同じである。
【0039】
具体的には、送風ユニット201とエアコンユニット202のそれぞれは、内部が上下2層構造となっている。送風ユニット201の内外気切替部204は、第1内気吸込部21と、第2内気吸込部24と、外気吸込部23とを有する。
【0040】
前席空調ユニット20は、暖房時に、送風ユニット201の上層部およびエアコンユニット202の上層部において、外気を、外気吸込部23から吸い込み、ヒータコアで加熱して、デフロスタ吹出部やフェイス吹出部から吹き出す。送風ユニット201の下層部およびエアコンユニット202の下層部において、内気を、第2内気吸込部24から吸い込み、ヒータコアで加熱して、フット吹出部22から吹き出す。
【0041】
これによれば、外気の乾いた空気をデフロスタ吹出部から吹き出すことで、窓曇りを防止することができる。さらに、内気の暖かい空気を加熱してフット吹出部22から吹き出すことで、外気を加熱してフット吹出部22から吹き出す場合と比較して、前席空調ユニット20の暖房効率を向上させることができる。
【0042】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0043】
(第3実施形態)
図6に示すように、本実施形態は、送風装置30が加熱機能を有する点が、第1実施形態と異なる。前席空調ユニット20は、第1実施形態と同じである。
【0044】
第1送風機31と第2送風機31の両方が加熱機能を有する。具体的には、第1送風機31および第2送風機32は、それぞれ、空気を送る送風部31a、32aと、空気を加熱する加熱部31b、32bとを有する。加熱部31b、32bは、送風部31a、32bの空気流れ下流側に配置されている。
【0045】
図7、8に示すように、送風部31a、32aは、遠心ファン311、321と、スクロールケース312、322とを有する。加熱部31b、32bは、電気ヒータ313、323と、ケース314、324とを有する。ケース314、324は、空気通路を内部に形成しているとともに、電気ヒータ313、323を収容する。
【0046】
本実施形態では、暖房時に、第1送風機31の加熱部31bが送風部31aからの風を加熱し、第2送風機32の加熱部32bが送風部32aからの風を加熱する。これによれば、暖房に必要な熱量を補うことができ、車両用空調装置10の後席に対する暖房性能を向上させることができる。
【0047】
(第4実施形態)
図9、10に示すように、本実施形態は、第3実施形態に対して、第1送風機31および第2送風機32が有する送風部31a、32aと加熱部31b、32bの配置が異なる。
【0048】
本実施形態では、加熱部31b、32bは、送風部31a、32aの空気流れ上流側に配置されている。
【0049】
ここで、加熱部31b、32bが送風部31a、32aの空気流れ下流側に配置されている場合、送風部31a、32bからの風が加熱部31b、32bに流入する。送風部31a、32bからの風は、風向性を有し、特定の方向に向かって流れる。このため、加熱部31b、32bの全域を風が均一に流れず、加熱部31b、32bの全域を使って風を加熱することができない場合がある。
【0050】
これに対して、本実施形態では、加熱部31b、32bの全域を風が均一またはそれに近い状態で流れるので、加熱部31b、32bの全域を使って風を加熱することができる。よって、本実施形態によれば、加熱部31b、32bが送風部31a、32aの空気流れ下流側に配置される場合と比較して、加熱部31b、32bで効率よく空気を加熱することができ、暖房効率を向上させることができる。
【0051】
(第5実施形態)
図11に示すように、本実施形態は、送風装置30が第3送風機33を有する点が、第1実施形態と異なる。車両用空調装置10のその他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0052】
送風装置30は、第1送風機31、第2送風機32および第3送風機33によって構成されている。第3送風機33は、車室3のうち3列目の座席9の位置に配置されている。したがって、第3送風機33は、第1送風機31および第2送風機32よりも車両後方側に配置されている。第3送風機33は、運転席側の座席9aと助手席側の座席9bの間の位置に配置されている。第3送風機33は、座席9の下に配置されている。第3送風機33としては、第1、第2送風機31、32と同じ構成のものが用いられる。
【0053】
第3送風機33は、
図11の矢印F11dのように、第3送風機33の車両左右方向の運転席側(すなわち、車両右側)から風を吸い込み、
図11の矢印F12aのように、第3送風機33の車両左右方向の助手席側(すなわち、車両左側)へ風を吹き出す。このため、第3送風機33は、車両左右方向に流れる風流れを形成する。
【0054】
本実施形態では、暖房時に、第3送風機33によって車室3の車両後方側で左右方向の空気流れが向上する。したがって、前席7の足元空間S7a、S7bと3列目の座席9の足元空間S9a、S9bとの間を循環する風流れを確実に形成するためには、本実施形態の構成を採用することが好ましい。
【0055】
(第6実施形態)
図12に示すように、本実施形態は、送風装置30が第4、第5送風機34、35を有する点が、第1実施形態と異なる。車両用空調装置10のその他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0056】
送風装置30は、第1送風機31、第2送風機32、第3送風機33、第4送風機34、第5送風機35によって構成されている。第3、第4、第5送風機33、34、35としては、第1、第2送風機31、32と同じ構成のものが用いられる。
【0057】
第4送風機34は、車室3のうち運転席7aの位置に配置されている。第4送風機34は、運転席7aの下に配置されている。第4送風機34は、
図12の矢印F11aのように、第4送風機34の車両前方側から風を吸い込み、
図12の矢印F11bのように、第4送風機34の車両後方側へ風を吹き出す。
【0058】
このため、本実施形態では、第1送風機31および第4送風機34が、
図12の矢印F11a、F11b、F11cのように、前席7aの足元空間から車両後方側に向かう風流れを形成する。
【0059】
第5送風機35は、車室3のうち助手席7bの位置に配置されている。第5送風機35は、助手席7bの下に配置されている。第5送風機35は、
図12の矢印F12cのように、第5送風機35の車両後方側から風を吸い込み、
図12の矢印F12eのように、第5送風機35の車両前方側へ風を吹き出す。
【0060】
このため、本実施形態では、第2送風機32および第5送風機35が、
図12の矢印F12b、F12c、F12eのように、車両後方側から車両前方側に向かう風流れを形成する。
【0061】
本実施形態では、暖房時に、第3、第4、第5送風機33、34、35によって、前席7の足元空間S7a、S7bと3列目の座席9の足元空間S9a、S9bとの間を循環する風流れを第1実施形態と比較して向上させることができる。
【0062】
(第7実施形態)
図13に示すように、本実施形態は、第1、第2送風機31、32が吸い込みダクト315、325と吹き出しダクト316、326とを有する点が、第1実施形態と異なる。前席空調ユニット20は第1実施形態と同じである。
【0063】
これによれば、吸い込みダクト315、325によって吸い込み位置を調整することができる。吹き出しダクト316、326によって吹き出し位置を調整することができる。吸い込み位置を調整することで、
図13の矢印F11a、F11b、F12bのように、第1、第2送風機31、32に吸い込まれる風の向きや風が流れる範囲を調整することができる。吹き出し位置を調整することで、
図13の矢印F11c、F12c、F12dのように、第1、第2送風機31、32から吹き出される風の向きや風が流れる範囲を調整することができる。
【0064】
(第8実施形態)
図14に示すように、本実施形態の車両用空調装置10は、車室3内に座席7、8が車両前後方向で2列のみ配置されている車両に搭載される点が、第1実施形態と異なる。車両前方側から1列目の座席7が前席である。車両前方側から2列目の座席8が後席である。
【0065】
送風装置30は、第1送風機31と、第2送風機32と、第3送風機33と、第4送風機34とによって構成されている。これらの送風機31−34は、第1実施形態の第1、第2送風機31、32と同じ構成のものである。
【0066】
第1送風機31は、車室3のうち運転席7aの位置に配置されている。第1送風機31は、運転席7aの下に配置されている。第1送風機31は、
図14の矢印F11aのように、第1送風機31の車両前方側から風を吸い込み、
図14の矢印F11bのように、第1送風機31の車両後方側へ風を吹き出す。
【0067】
第2送風機32は、車室3のうち助手席7bの位置に配置されている。第2送風機32は、助手席7bの下に配置されている。第2送風機32は、
図14の矢印F12bのように、第2送風機32の車両後方側から風を吸い込み、
図14の矢印F12eのように、第2送風機32の車両前方側へ風を吹き出す。
【0068】
第3送風機33は、車室3のうち運転席側の2列目の座席8aの位置に配置されている。第3送風機33は、座席8aの下に配置されている。第3送風機33は、
図14の矢印F11bのように、第3送風機33の車両前方側から風を吸い込み、
図14の矢印F11dのように、第3送風機33の車両左右方向の助手席側(すなわち、車両左側)へ風を吹き出す。
【0069】
第4送風機34は、車室3のうち助手席側の2列目の座席8bの位置に配置されている。第4送風機34は、座席8bの下に配置されている。第4送風機34は、
図14の矢印F12aのように、第4送風機34の車両左右方向の運転席側(すなわち、車両右側)から風を吸い込み、
図14の矢印F12bのように、第4送風機34の車両前方側へ風を吹き出す。
【0070】
本実施形態では、暖房時に、第1送風機31および第3送風機33が、
図14の矢印F11a、F11bのように、前席7aの足元空間から車両後方側に向かう風流れを形成する。第3送風機33および第4送風機34が、
図14の矢印F11d、F12aのように、車両左右方向に向かう風流れを形成する。第2送風機32および第4送風機34が、
図14の矢印F12b、F12eのように、車両後方側から車両前方側に向かう風流れを形成する。
【0071】
これにより、
図14の矢印F10a、F11a、F11b、F11d、F12a、F12b、F12eのように、前席空調ユニット20からの温風が、運転席7aの足元空間、運転席側の2列目の座席8aの足元空間、助手席側の2列目の座席8bの足元空間、助手席7bの足元空間の順に流れた後、前席空調ユニット20に吸い込まれる。よって、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0072】
(第9実施形態)
図15に示すように、本実施形態は、第8実施形態に対して、送風装置30を構成する送風機の数を減らしたものである。送風装置30は、第1送風機31と第2送風機32とによって構成されている。
【0073】
第1送風機31は、車室3のうち運転席側の2列目の座席8aの位置に配置されている。第1送風機31は、座席8aの下に配置されている。第1送風機31は、
図15の矢印F11bのように、第1送風機31の車両前方側から風を吸い込み、
図15の矢印F11dのように、第1送風機31の車両左右方向の助手席側(すなわち、車両左側)へ風を吹き出す。
【0074】
第2送風機32は、車室3のうち助手席側の2列目の座席8bの位置に配置されている。第2送風機32は、座席8bの下に配置されている。第2送風機32は、
図15の矢印F12aのように、第4送風機34の車両左右方向の運転席側(すなわち、車両右側)から風を吸い込み、
図15の矢印F12bのように、第2送風機32の車両前方側へ風を吹き出す。
【0075】
本実施形態では、暖房時に、第1送風機31が、
図15の矢印F11a、F11bのように、前席7aの足元空間から車両後方側に向かう風流れを形成する。第1送風機31および第2送風機32が、
図15の矢印F11d、F12aのように、車両左右方向に向かう風流れを形成する。第2送風機32が、
図15の矢印F12b、F12eのように、車両後方側から車両前方側に向かう風流れを形成する。
【0076】
これにより、本実施形態においても、前席空調ユニット20からの温風が、運転席7aの足元空間、運転席側の2列目の座席8aの足元空間、助手席側の2列目の座席8bの足元空間、助手席7bの足元空間の順に流れた後、前席空調ユニット20に吸い込まれる。よって、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0077】
(第10実施形態)
図16に示すように、本実施形態は、第9実施形態に対して、第1送風機31の車両前後方向での位置を変更したものである。
【0078】
第1送風機31は、車室3のうち運転席7aの位置に配置されている。第1送風機31は、
図16の矢印F11aのように、第1送風機31の車両前方側から風を吸い込み、
図16の矢印F11bのように、第1送風機31の車両後方側へ風を吹き出す。
【0079】
本実施形態においても、暖房時に、第1送風機31が、
図16の矢印F11a、F11bのように、前席7aの足元空間から車両後方側に向かう風流れを形成する。第2送風機32が、
図16の矢印F12aのように、車両左右方向に向かう風流れを形成する。さらに、第2送風機32が、
図16の矢印F12b、12eのように、車両後方側から車両前方側に向かう風流れを形成する。
【0080】
これにより、本実施形態においても、前席空調ユニット20からの温風が、運転席7aの足元空間、運転席側の2列目の座席8aの足元空間、助手席側の2列目の座席8bの足元空間、助手席7bの足元空間の順に流れた後、前席空調ユニット20に吸い込まれる。よって、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0081】
(第11実施形態)
図17に示すように、本実施形態の車両用空調装置10は、車室3内に座席7、8が車両前後方向で2列のみ配置されている車両に搭載されており、送風装置30は送風機36を1つのみ有している。座席が2列のみの場合、前席7の足元空間と後席8の足元空間との間を循環する風流れを形成するために、本実施形態の構成を採用することが好ましい。
【0082】
送風機36は、車室3のうち2列目の座席8の位置に配置されている。送風機36は、運転席側の座席8aと助手席側の座席8bの間の位置に配置されている。送風機36は、座席8の下に配置されている。
【0083】
暖房時に、送風機36は、
図17の矢印F11bのように、車両後方側へ風を引き寄せて吸い込むとともに、
図17の矢印F12aのように、車両前方側へ向かって風を送る。
【0084】
より具体的には、送風機36は、風を吸い込む吸込部よりも車両左右方向での助手席側に、風を吹き出す吹出部が位置する。吹出部からの風の吹出方向は、車両前方側かつ車両左右方向での助手席側である。このため、送風機36は、
図17の矢印F11a、F11bのように、車室3のうち車両左右方向での運転席側において、車両後方側へ向かう風流れを形成する。送風機36は、
図17の矢印F12a、F12eのように、車室3のうち車両左右方向での助手席側において、車両前方側へ向かう風流れを形成する。
【0085】
これにより、本実施形態においても、前席空調ユニット20からの温風が、運転席7aの足元空間、運転席側の2列目の座席8aの足元空間、助手席側の2列目の座席8bの足元空間、助手席7bの足元空間の順に流れた後、前席空調ユニット20に吸い込まれる。よって、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0086】
(第12実施形態)
図18、19に示すように、本実施形態は、第1送風機31および第2送風機32が床下空間5cに配置されている点が、第1実施形態と異なる。
【0087】
第1実施形態と同様に、車両の前後左右方向において、第1送風機31は、車室3のうち運転席側の2列目の座席8aの位置に配置されている。第2送風機32は、車室3のうち助手席側の2列目の座席8bの位置に配置されている。
【0088】
本実施形態では、車両1は、床部材5aと車両外板5bとの間に、床下空間5cを有している。第1送風機31および第2送風機32は、車室3の床下空間5cに配置されている。第1、第2送風機31、32は、吸い込みダクト315、325と吹き出しダクト316、326とを有する。吸い込みダクト315、325は、床部材5aに設けられた吸込口5d1、5d2に接続されている。吹き出しダクト316、326は、床部材5aに設けられた吹出口5e1、5e2に接続されている。
【0089】
暖房時に、第1送風機31は、
図18の矢印F11bのように、車室3のうち第1送風機31の車両前方側から空気を吸い込み、
図18の矢印F11cのように、車室3のうち第1送風機32の車両後方側へ風を吹き出す。このため、第1実施形態と同様に、第1送風機31は、
図18の矢印F11a、F11b、F11cのように、前席7aの足元空間から車両後方側に向かう風流れを形成する。
【0090】
暖房時に、第2送風機32は、
図19の矢印F12bのように、車室3のうち第2送風機32の車両後方側から風を吸い込み、
図19の矢印F12cのように、車室3のうち第2送風機32の車両前方側へ風を吹き出す。このため、第1実施形態と同様に、第2送風機32は、
図19の矢印F12b、F12c、F12dのように、車両後方側から車両前方側に向かう風流れを形成する。
【0091】
したがって、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、暖房時に、送風装置30が、前席7の足元空間S7a、S7bと3列目の座席9の足元空間S9a、S9bとの間を循環する風流れを形成する。よって、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0092】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、第1、第2送風機31、32などの送風機として、遠心送風機を用いたが、軸流送風機等の他の送風機を用いてもよい。
【0093】
(2)第1−第7実施形態では、前席空調ユニット20からの温風が前席7の足元空間S7a、S7bに吹き出される場合に、送風装置30が、前席7の足元空間S7a、S7bと3列目の座席9の足元空間S9a、S9bとの間を循環する風流れを形成していたが、これに限定されない。送風装置30は、前席7の足元空間S7a、S7bと2列目の座席8の足元空間S8a、S8bとの間を循環する風流れを形成してもよい。この場合、2列目の座席8、すなわち、後席の乗員の暖房感を向上させることができる。
【0094】
(3)本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能であり、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0095】
(まとめ)
上記各実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、車両用空調装置は、送風装置を備える。送風装置は、前席空調ユニットからの温風が前席の足元空間に吹き出される場合に、前席の足元空間と後席の足元空間との間を循環する風流れを形成する。
【0096】
また、第2の観点によれば、第1の観点において、送風装置は、前席の足元空間と車室の最後方部に位置する後席の足元空間との間を循環する風流れを形成する。これによれば、最後方部の後席の足元空間に、前席空調ユニットからの温風を届かせることができる。よって、最後方部の後席の乗員の暖房感を向上させることができる。
【0097】
また、第3の観点によれば、第1、第2の観点において、送風装置は、前席の足元空間から車両後方側に向かう風流れを形成する第1送風機と、車両後方側から車両前方側に向かう風流れを形成する第2送風機とを有する。第1送風機と第2送風機とは、互いに車両左右方向でずらして配置されている。
【0098】
第1、第2の観点のように、前席の足元空間と後席の足元空間との間を循環する風流れを形成するためには、このような構成を採用することが好ましい。
【0099】
また、第4の観点によれば、第3の観点において、送風装置は、さらに、車両左右方向に流れる風流れを形成する第3送風機を有する。第3送風機は、第1送風機および第2送風機よりも車両後方側に配置されている。
【0100】
第1、第2の観点のように、前席の足元空間と後席の足元空間との間を循環する風流れを形成するためには、このような具体的な構成を採用することがより好ましい。
【0101】
また、第5の観点によれば、第1の観点において、車両は、車室内に座席が車両前後方向で2列のみ配置されている。送風装置は、送風機を1つのみ有する。送風機は、2列目の座席である後席の位置に配置されており、車両後方側へ風を引き寄せて吸い込むとともに、車両前方側へ向かって風を送る。
【0102】
座席が2列の場合、第1の観点のように、前席の足元空間と後席の足元空間との間を循環する風流れを形成するために、このような具体的な構成を採用することが好ましい。
【0103】
また、第6の観点によれば、送風装置は、空気を送る送風部と、空気を加熱する加熱部とを有する。これによれば、暖房に必要な熱量を補うことができ、暖房性能を向上させることができる。
【0104】
また、第7の観点によれば、第6の観点において、加熱部は、送風部の空気流れ上流側に配置されている。これによれば、加熱部が送風部の空気流れ下流側に配置されている場合と比較して、加熱部で効率よく空気を加熱することができ、暖房効率を向上させることができる。