(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790748
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】計器装置
(51)【国際特許分類】
G01D 11/24 20060101AFI20201116BHJP
B60K 37/00 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
G01D11/24 B
G01D11/24 W
B60K37/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-222833(P2016-222833)
(22)【出願日】2016年11月16日
(65)【公開番号】特開2018-80983(P2018-80983A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】横山 才二
【審査官】
菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−127800(JP,A)
【文献】
特開2010−151852(JP,A)
【文献】
特開2010−003438(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0263374(US,A1)
【文献】
中国実用新案第201115277(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 11/00−13/28
B60K 35/00−37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示板と、前記表示板の背後に配置される回路基板と、
前記表示板に接触する第一接触部と、前記回路基板に接触する第二接触部と、前記第一接触部と前記第二接触部を繋ぐ接続部とからなり、前記表示板に帯電した静電気を前記回路基板のグランドへ流す第一導通部材と、
前記回路基板の上に配置され上面に前記表示板を配置し、前記接続部を両面から挟持する挟持部を有するケース体と、を備えた計器装置において、
前記接続部は係止部を有し、
前記挟持部は前記係止部と対応する位置に前記係止部と係合する固定部を有し、
前記固定部は前記表示板側に前記第一導通部材を誘い込む傾斜面を有することを特徴とする計器装置。
【請求項2】
前記挟持部は、少なくとも前記接続部の片面側が弾性を有することを特徴とする請求項1に記載の計器装置。
【請求項3】
前記ケース体は、前記第一接触部の前記表示板と当接する反対側の面を支持する載置部を有することを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の計器装置。
【請求項4】
前記載置部は、前記第一導通部材を位置決めする突起状の位置決め部を有することを特徴とする請求項3に記載の計器装置。
【請求項5】
前記回路基板と前記第二接触部との間に第二導通部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の計器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、オートバイや自動車等の車両、船舶、建設機械等に搭載される計器装置において、特に、静電気防止構造を備えた計器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の計器装置は、例えば、特許文献1に開示されるものがある。この計器装置は、透視部を有する表示板と、透視部を通して視認可能に配置された表示素子と、表示素子の背面側に配置され表示素子と電気的に接続された回路基板と、回路基板と表示板との間に配置されるケース体と、表示板の前面側に配置され表示板の視認不要な箇所を隠す見返し板と、表示板に帯電した静電気を回路基板のグランドへ流す第一の導通部材とを備え、第一の導通部材は、表示板に接触する第一の接触部と、回路基板に接触する第二の接触部と、これら第一、第二の接触部を繋ぐ接続部からなり、ケース体に接続部を保持する保持部を設けている。
【0003】
このような構成により、第一の導通部材の固定保持を行いつつ、表示素子の静電気による誤表示を防止するものである。また、第一の接触部は、表示板に接触する箇所に所定のテンションが付与される押圧部を有している。そのため、第一の導通部材を確実に表示板へ接触させることができる反面、車両の振動などによって第一の導通部材が浮き上がり、表示板を突き上げて浮き上がらせる虞や、異音が発生する虞があるが、表示板の浮き上がり箇所を見返し板で下向きに押さえつけることによって防止しているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−127800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、帯電した静電気は、相手物体との距離が近い方へ流れ易いため、第一の導通部材はできるだけ表示素子の近傍に配置し、表示板に帯電した静電気を第一の導通部材の方へ逃がしたい。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の計器装置では、例えば、表示素子が見返し板から離れた位置に配置されていると、第一の導通部材も見返し板から離れることになるので、表示板の浮き上がり箇所を見返し板で下向きに押さえつけることが不可能となり、振動による影響を受けて第一の導通部材が浮き上がり、表示板を突き上げ浮き上がらせて、外観不良及び異音が発生するといった問題点があった。
【0007】
そこで本発明は、前述の問題点に着目し、導通部材が振動による影響を受けても、表示板を浮き上がらせて外観不良や異音が発生する虞の無い計器装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表示板1と、前記表示板1の背後に配置される回路基板3と、前記表示板1に接触する第一接触部41と、前記回路基板3に接触する第二接触部43と、前記第一接触部41と前記第二接触部43を繋ぐ接続部42とからなり、前記表示板1に帯電した静電気を前記回路基板3のグランドへ流す第一導通部材4と、前記回路基板3の上に配置され上面に前記表示板1を配置し、前記接続部42を両面から挟持する挟持部21を有するケース体2と、を備えた計器装置において、前記接続部42は係止部42aを有し、前記挟持部21は前記係止部42aと対応する位置に前記係止部42aと係合する固定部22a
を有し、前記固定部22aは前記表示板1側に前記第一導通部材4を誘い込む傾斜面22cを有するものである。
【0009】
(削除)
【0010】
また、前記挟持部21は、少なくとも前記接続部42の片面側が弾性を有するものである。
【0011】
また、前記ケース体2は、前記第一接触部41の前記表示板1と当接する反対側の面を支持する載置部24を有するものである。
【0012】
また、前記載置部24は、前記第一導通部材4を位置決めする突起状の位置決め部24aを有するものである。
【0013】
また、前記回路基板3と前記第二接触部43との間に第二導通部材31を設けたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、所期の目的を達成することができ、表示素子の静電気による誤表示を防止する導通部材が車両の振動による影響を受けても、表示板を浮き上がらせて外観不良や異音が発生する虞の無い計器装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】
図1の要部Aの分解斜視図(第一導通部材4とケース体2のみ)。
【
図6】
図2中のC−C線に沿った断面図(本発明の変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1乃至5に基づいて、本発明を適用した計器装置の実施形態を説明するが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱することなく種々の変更が可能である。
【0017】
本実施形態による計器装置は、中央に液晶表示部5にてデジタル式の燃料計100を表示し、その左右にアナログ指針式の速度計200とエンジン回転数計300を表示し、中央上部にインジケータ群400を表示するものである。
【0018】
本実施形態による計器装置の構成は、透視部11を有する表示板1と、表示板1の裏面に配置され透視部11から視認可能な液晶表示部5と、表示板1の背後に配置される回路基板3と、表示板1と回路基板3の間に配置され両者と接触するグランド金具4と、回路基板3の上に配置され上面に表示板1を配置し、グランド金具4を挿通して、グランド金具4の一部を挟持する挟持部21を有するケース体2と、表示板1の前方に配置される見返し板6と、表示板1の前方に配置される指針7と、によって主に構成されている。
【0019】
表示板1は、透光性樹脂からなる薄板状の基材の表裏に、透光性の略透明色インキが印刷されて、矩形で液晶表示部5の開口を形成する透視部11と、透光性の白色インキが印刷されて、速度計200やエンジン回転数計300の目盛、数字、文字を形成する指標部12と、遮光性の黒色のインキが印刷されて、透視部11や、指標部12の周囲を囲み背景を形成する地色部13とを有する。また、表示板1は、回路基板3に実装されたLED(Light Emitting Diode)からなる光源(図示せず)が発した光により指標部12及びインジケータ群400が発光する。また、表示板1の上には突形状の断面をした不透過材料からなる一対のリング部材14が配置され、速度計200やエンジン回転数計300を加飾する。
【0020】
液晶表示部5は、2枚のガラス基板間に液晶分子を封入し、各々のガラス基板に例えばスモーク調の偏光膜を貼り合わせた矩形を成し、表示板1の裏面側に僅かな隙間を設けて配置される液晶表示パネル51と、この液晶表示パネル51の裏面側に僅かな隙間を設けて配置される光透過性を有する拡散板52と、回路基板3上に実装され液晶表示パネル51の背後から照明するLEDからなる光源53と、ケース体2に一体に成形されるホルダー部54と、から主に構成されている。
【0021】
ホルダー部54は、表示板1に近い位置にて液晶表示パネル51と拡散板52を保持固定する。液晶表示パネル51は、一辺に接続されたFPC(Flexible Printed Circuits)(図示せず)を介して回路基板3と導通接続され、回路基板3からの信号に従い燃料計100の他、車両の各種情報を表示し、光源53が発した光により発光表示し、透視部11から視認される。
【0022】
見返し板6は、例えば黒色系の不透過性の合成樹脂からなり、筒状に形成された立壁の内側にて燃料計100、速度計200、エンジン回転数計300、インジケータ群400で構成される各種表示部を露出し、それ以外の所要領域を隠蔽するように配置される。
【0023】
指針7は、例えば透過性合成樹脂からなる指示部71と、指示部71の回転中心部を覆う不透過性合成樹脂からなるキャップ部72とからなり、指示部71は、キャップ部72で隠れる部位にてボス部(図示せず)を有する。回路基板3には、表示板1の前面側へ突き出る軸部を有するステッピングモータ(図示せず)が実装されており、指針7がこの軸部へ前記ボス部が挿入されて回転駆動し、指示部71にて指標部12を回動指示することで、車両の速度計200やエンジン回転数計300を構成する。また、指針7は、回路基板3に実装されたLEDからなる光源(図示せず)が発した光により指示部71が発光する。
【0024】
回路基板3は、液晶表示パネル51のFPCが接続されるコネクタ(図示せず)と、光源53と、表示板1や指針7を照明する前記光源と、液晶表示パネル51と、ステッピングモータと、それらを車両バッテリーから給電されて駆動制御するための制御回路を構成する制御部品(図示せず)と等の各種電子部品を実装し、各部品を接続する銅箔配線が印刷された硬質プリント基板を適用できる。また、回路基板3は、計器装置の筐体内に収納されるとともに、外部コネクタ(図示せず)を介して車載される外部ユニット(図示せず)と通信可能に接続されている。
【0025】
また、回路基板3は、回路基板3に実装された金属製からなるZ形状で弾性を有するグランド端子31を有し、このグランド端子31がグランド金具4と接触することで、表示板1に帯電した静電気がグランド金具4へ流れた後、その静電気を回路基板3のグランドへ流すことができる。
【0026】
グランド金具4は、薄板状の金属材料からなり、表面が表示板1に接触する略矩形をした第一接触部41と、第一接触部41の一辺の端部から屈曲して回路基板3の方(図のZ方向マイナス側)に延びて第一接触部41と後述する第二接触部43とを繋ぐ接続部42と、接続部42の回路基板3側の端部から回路基板3の面に沿い第一接触部41とは反対側(図のY方向マイナス側)に屈曲して裏面で回路基板3に設けられたグランド端子31と接触する略矩形をした第二接触部43とから構成されている。
【0027】
ケース体2は、白色の合成樹脂材料からなり、接続部42を前後で挟持する挟持部21と、ホルダー部54とを有している。また、ケース体2は、第一接触部41の表示板1とは反対側の面を支持し、ケース体2のグランド金具4を取り巻く壁の三面に連なるように形成された載置部24を有する。第一接触部41は、載置部24により、確実に表示板1に接触することができる。
【0028】
また、第一接触部41は、接続部42とは反対側の端面に、端面からY方向マイナス側に伸びるスリット状の嵌合部41aを有する。そして、載置部24には嵌合部41aに対応する位置に、突起状の位置決め部24aを有する。位置決め部24aの幅は、嵌合部41aに対し軽圧入となるように調整されている。このように設定することで、嵌合部41aと位置決め部24aの嵌合により、グランド金具4のX方向をガタつき無く位置決め固定することができる。
【0029】
接続部42は、両端面から内側に伸びるスリット状の一対の係止部42aを有する。また、接続部42は、係止部42aから回路基板3側の下の両端が切り欠かれている一対の切り欠き部42bと、切り欠き部42bにより幅が狭くなっている幅員減少部42cを有する。第二接触部43は、幅員減少部42cと同じ幅で形成されている。
【0030】
挟持部21は、載置部24と対向するケース体2の壁から、接続部42の両端面から少し内側の位置へ当接するように突出した非弾性の一対のリブ状の保持部22と、載置部24の端部から屈曲して回路基板3の方向に延びて、接続部42の両端面の中間位置へ当接する弾性を有する押圧片23とを有し、接続部42を両面で挟持する。
【0031】
また、保持部22は、表示板1側に接続部42の切り欠き部42bを誘い込む保持部傾斜面22bを有する。また、保持部22は、係止部42aに対応する位置に、係止部42aと係合する突起状の固定部22aを有する。固定部22aは、表示板1側に切り欠き部42bを誘い込む固定部傾斜面22cを有する。押圧片23は、表示板1側に第二接触部43を誘い込む押圧片傾斜面23aを有する。
【0032】
このように構成することで、グランド金具4を挟持部21に挿し込むと、第二接触部43が押圧片傾斜面23a上を摺動し、次に、切り欠き部42bが保持部傾斜面22b上と、固定部傾斜面22c上とを摺動し係止部42aが固定部22aに嵌合する。このようにグランド金具4が各傾斜面上を摺動することで容易に組み付けることができる。さらに、グランド金具4のエッジによりケース体2が削られることにより発生する削りゴミの発生を防止することもできる。
【0033】
また、接続部42が保持部22と押圧片23に挟み込まれてグランド金具4のY方向をガタつき無く固定するとともに、固定部22aが係止部42aに係合しグランド金具4のZ方向を抜け止め固定するので、Y、Z両方向を同時に固定することができる。なお、Z方向もまた、グランド端子31の弾性により、ガタつき無く保持されている。
【0034】
このようにして、グランド金具4の全方向をガタつき無く固定することで、車両の振動によるガタつきを防止し、異音の発生を防止することができる。また、Z方向の固定によりグランド金具4が浮き上がり、表示板1を突き上げるといった虞が無いため、表示板1の浮き上がりによる外観不良を防止することができる。
【0035】
なお、本発明は前述した本実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨の範囲において、種々の変形が可能である。例えば、前述した本実施形態において、グランド金具4はZ形状をしたグランド端子31と当接していたが、
図6に示すように、金属製のクリップ形状をしたグランドクリップ32に、第二接触部43の先端43aが挟み込まれることで回路基板3と通電されてもよい。また、図示しないが、第二接触部43が直接、回路基板3の銅箔面と接触してもよい。
【0036】
また、固定部22aが係止部42aに係合しグランド金具4のZ方向を抜け止めとしていたが、
図6に示すように、係止部42aをプレス加工により、切り欠きを形成し、さらに保持部22側へ折り曲げて形成された切り起こし部42dとし、切り起こし部42dを保持部22の底辺22dに係合させて抜け止めとしてもよい。
【0037】
また、載置部24と対向するケース体2の壁から一対の保持部22を設け、載置部24から押圧片23を設けたが、載置部24と対向するケース体2の壁から一対の弾性を有する押圧片を設け、載置部24側のケース体2の壁からリブ状の保持部を設けてもよい。この時、固定部22aは、前記押圧片に設けられる。また、本実施形態において、固定部22aは保持部22に設けたが、押圧片23に設けてもよい。この時、係止部42aは、接続部42の両端面の中間位置に孔形状で設けられる。
【0038】
また、表示装置として液晶表示部5を適用したが、電気信号に応じて情報を表示するものでれば液晶表示部5に限らず任意の表示素子を適用でき、例えばEL(Electro Luminescence)パネルであってもよい。また、液晶表示パネル51と回路基板3との電気的接続は、FPCのみならずリード線や導電ゴムなどからなる通電部材などでもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 表示板
2 ケース体
21 挟持部
22a 固定部
22c 固定部傾斜面(傾斜面)
23 押圧片
24 載置部
24a 位置決め部
3 回路基板
31 グランド端子(第二導通部材)
4 グランド金具(第一導通部材)
41 第一接触部
41a 押圧部
42 接続部
43 第二接触部