(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係るシート搬送装置及び画像形成装置について図面に基づいて説明する。なお、以下では、方向関係についてはXYZ直交座標軸を用いて説明する。X方向が前後方向(+Xが後、−Xが前)、Y方向が左右方向(+Yが左、−Yが右)、Z方向が上下方向(+Zが上、−Zが下)に各々相当する。また、以下の説明において、「シート」との用語は、コピー用紙、コート紙、OHPシート、厚紙、葉書、トレーシングペーパーや画像形成処理を受ける他のシート材料或いは画像形成処理以外の任意の処理を受けるシート材料を意味する。
【0022】
[画像形成装置の全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るシート搬送装置40を備えた画像形成装置1を概略的に示す図である。
図1に示す画像形成装置1は、インク滴を吐出してシートSに画像を形成(記録)するインクジェット記録装置である。画像形成装置1は、装置本体10と、給紙部20と、ガイド部30と、シート搬送装置40と、画像形成部50と、排紙部としての排紙トレイ60とを備える。
【0023】
装置本体10は、シートSに画像を形成するための各種の装置を収容する箱形の筐体である。この装置本体10には、シートSの搬送通路となる第1搬送路11、第2搬送路12及び第3搬送路13が形成されている。
【0024】
給紙部20は、シートSを第1搬送路11へ給紙する。給紙部20は、給紙カセット21とピックアップローラー22とを備える。給紙カセット21は、装置本体10に対して着脱自在であり、内部にシートSを収容する。ピックアップローラー22は、給紙カセット21の−Y側(右側)であり且つ+Z側(上側)の端部に配置される。ピックアップローラー22は、シートSを給紙カセット21から1枚ずつ取り出し、第1搬送路11へ送り出す。
【0025】
第1搬送路11に給紙されたシートSは、その第1搬送路11に設けられた第1搬送ローラー対111によってレジストローラー対112に向けて搬送される。レジストローラー対112は、シートSの斜め搬送を矯正する機能を有する。これにより、シートS上に形成される画像の位置が調整される。レジストローラー対112は、画像形成部50による画像形成処理のタイミングに合わせてシートSを、ガイド部30を介してシート搬送装置40に向けて送出する。
【0026】
ガイド部30は、レジストローラー対112により送出されたシートSを、シート搬送装置40における搬送ベルト41の第1面411に向けてガイドする。
【0027】
ガイド部30によりガイドされたシートSは、その先端部が搬送ベルト41の第1面411に接すると、搬送ベルト41の駆動により第1面411上に保持された状態でシート搬送方向Aに搬送される。なお、シート搬送方向Aは、Y方向(左右方向)において−Y側(右側)から+Y側(左側)に向かう方向である。シート搬送装置40の詳細な構成については後述する。
【0028】
シート搬送装置40の+Z側(上側)には、画像形成部50が配置されている。具体的には、画像形成部50は、シート搬送装置40の+Z側(上側)において、搬送ベルト41の第1面411と対向するように配置されている。画像形成部50は、シートSに所定の処理を施す処理部として機能するものであり、搬送ベルト41の第1面411上に保持された状態でシート搬送方向Aに搬送されるシートSに、画像形成処理を施して画像を形成する。本実施形態では、画像形成部50は、画像形成方式がインクジェット式であり、インク滴を吐出してシートSに画像を形成する。
【0029】
図1に加えて、
図2乃至
図4を参照して画像形成部50について説明する。
図2は、シート搬送装置40及び画像形成部50の近傍を拡大して示す斜視図である。
図3は、
図2のシート搬送装置40及び画像形成部50をIII−III線で切断した状態の斜視図である。
図4は、シート搬送装置40及び画像形成部50の近傍の断面図である。
【0030】
画像形成部50は、ラインヘッド51Bk、51C、51M、51Yを備える。ラインヘッド51Bkはブラック色のインク滴を吐出し、ラインヘッド51Cはシアン色のインク滴を吐出し、ラインヘッド51Mはマゼンタ色のインク滴を吐出し、ラインヘッド51Yはイエロー色のインク滴を吐出する。ラインヘッド51Bk、51C、51M、51Yは、シート搬送方向Aの上流側から下流側に向かって並設される。ラインヘッド51Bk、51C、51M、51Yは、吐出するインク滴の色が異なる以外は同一の構成を有するため、ラインヘッド51と総称することもある。
【0031】
ラインヘッド51は、搬送ベルト41の第1面411上に保持された状態でシート搬送方向Aに搬送されるシートSにインク滴を吐出して、シートSに画像を形成する。詳しくは、ラインヘッド51は、搬送ベルト41により搬送されてラインヘッド51に対向する位置を通過するシートSへ向けて、インク滴を吐出する。これにより、シートSに画像が形成される。
【0032】
ラインヘッド51は、
図2に示すように、第1記録ヘッド511a、第2記録ヘッド511b及び第3記録ヘッド511cによって構成される。第1記録ヘッド511a、第2記録ヘッド511b及び第3記録ヘッド511cは、シート搬送方向Aに直交するX方向(前後方向)に沿って千鳥状に配列される。なお、第1記録ヘッド511a、第2記録ヘッド511b及び第3記録ヘッド511cが配列される方向となるX方向(前後方向)は、搬送ベルト41の幅方向と一致している。また、第1記録ヘッド511a、第2記録ヘッド511b及び第3記録ヘッド511cは、同一の構成を有するため、記録ヘッド511と総称する。記録ヘッド511は、搬送ベルト41により搬送されるシートSに対し、印字位置に対応したノズル孔からインク滴を吐出する。
【0033】
ラインヘッド51を構成する記録ヘッド511のノズル孔からインク滴が吐出され、画像が形成されたシートSは、搬送ベルト41により搬送されて、当該搬送ベルト41のシート搬送方向Aの下流側に延設される第2搬送路12に送出される。
【0034】
第2搬送路12に送出されたシートSは、その第2搬送路12に設けられた第2搬送ローラー対121によって、装置本体10の+Y側(左側)に形成された排紙口12Aに向けて搬送され、排紙口12Aから排紙トレイ60上に排出される。
【0035】
一方、第2搬送路12に送出されたシートSが、片面の画像形成処理が完了した両面印刷用のものである場合には、当該シートSは、第2搬送ローラー対121に挟持された状態とされる。この状態で第2搬送ローラー対121が逆回転されることにより、シートSがスイッチバックされる。これによってシートSは、第3搬送路13に送出される。第3搬送路13に送出されたシートSは、その第3搬送路13に設けられた第3搬送ローラー対131によって逆送され、レジストローラー対112及びガイド部30を介して、表裏が反転した状態で再び搬送ベルト41の第1面411上に供給される。このように表裏が反転した状態で搬送ベルト41の第1面411上に供給されたシートSは、搬送ベルト41により搬送されながら、画像形成部50によって裏面側に画像形成処理が施される。両面印刷が完了したシートSは、第2搬送路12を通過して排紙口12Aから排紙トレイ60上に排出される。
【0036】
[シート搬送装置の詳細構成]
次に、シート搬送装置40の構成について、
図1乃至
図4に加えて、
図5乃至
図10を参照して、詳細に説明する。
図5は、シート搬送装置40に備えられる搬送ベルト41及び吸引部43のベルト案内部材431の構成を説明するための斜視図である。
図6は、
図5の搬送ベルト41及びベルト案内部材431をVI−VI線で切断した状態の斜視図である。
図7は、
図6の一部を拡大して示す斜視図である。
図8は、シート搬送装置40に備えられる吸引部43を上方から見た図である。
図9は、シート搬送装置40に備えられる送風部44における送風ダクト44Aの構成を説明するための図であり、
図2のIX−IX線で切断した状態の斜視図である。
図10は、送風ダクト44Aの構成を説明するための図であり、
図2のX−X線で切断した状態の斜視図である。
【0037】
シート搬送装置40は、画像形成部50の−Z側(下側)において、ラインヘッド51と対向するように配置されている。シート搬送装置40は、レジストローラー対112により送出され、ガイド部30によりガイドされて供給されたシートSを、画像形成部50に向けてシート搬送方向Aに搬送する。シート搬送装置40は、搬送ベルト41と、吸引部43と、送風部44とを備える。
【0038】
搬送ベルト41は、X方向(前後方向)に幅を有してY方向(左右方向)に延びる無端状のベルトである。搬送ベルト41は、第1面411と当該第1面411とは反対側の第2面412とを有し、画像形成部50と対向して配置され、第1面411上にてシートSをシート搬送方向Aに搬送する。より具体的には、搬送ベルト41は、画像形成部50のラインヘッド51と対向した所定の搬送領域内において第1面411上にシートSを保持して、シート搬送方向Aに搬送する。ここで、無端状のベルトである搬送ベルト41において、第1面411は外周面となり、第2面412は内周面となる。
【0039】
搬送ベルト41は、
図1に示すように、第1ローラー421、第2ローラー422、第3ローラー423、及び一対の第4ローラー424に張架される。この張架された搬送ベルト41の内側において、第2面412に対向して吸引部43が配置されている。
【0040】
第1ローラー421は、搬送ベルト41の幅方向となるX方向(前後方向)に沿って延びる駆動ローラーであり、シート搬送方向Aにおいて吸引部43よりも下流側に配置される。第1ローラー421は、不図示のモーターによって回転駆動され、所定の回転方向に搬送ベルト41を回転させる。搬送ベルト41が回転することにより、その第1面411上に保持されたシートSがシート搬送方向Aに搬送される。
【0041】
第2ローラー422は、X方向(前後方向)に沿って延びるベルト速度検知ローラーであり、シート搬送方向Aにおいて吸引部43よりも上流側に配置される。第2ローラー422は、第1ローラー421と協働し、搬送ベルト41の第1面411におけるラインヘッド51と対向する領域と、搬送ベルト41の第2面412における吸引部43と対向する領域との平面性が維持されるように、配置される。ここで、搬送ベルト41の第1面411において、ラインヘッド51と対向する領域であって、第1ローラー421と第2ローラー422との間の領域が、シートSを保持して搬送するための前記所定の搬送領域となる。第2ローラー422は、搬送ベルト41の回転に連動して従動回転する。第2ローラー422には不図示のパルス板が取り付けられ、このパルス板は、第2ローラー422と一体になって回転する。パルス板の回転速度を測定することにより、搬送ベルト41の回転速度が検知される。
【0042】
第3ローラー423は、X方向(前後方向)に沿って延びるテンションローラーであり、搬送ベルト41が撓まないように、搬送ベルト41に張力を与える。第3ローラー423は、搬送ベルト41の回転に連動して従動回転する。一対の第4ローラー424はそれぞれ、X方向(前後方向)に沿って延びるガイドローラーであり、搬送ベルト41が吸引部43の−Z側(下側)を通過するように、搬送ベルト41を案内する。一対の第4ローラー424は、搬送ベルト41の回転に連動して従動回転する。
【0043】
また、搬送ベルト41は、
図5乃至
図7に示すように、第1面411から第2面412にわたって厚み方向に貫通した複数の吸引孔413(貫通孔)を有している。なお、
図5乃至
図7では、後述の吸引部43におけるベルト案内部材431の表面状態が認識できるように、搬送ベルト41の−Y側(右側)の領域部分が切り欠かれている。搬送ベルト41において、複数の吸引孔413の各々は、Y方向(左右方向)に沿って延びる長穴状の形状を有しており、Y方向(左右方向)及びX方向(前後方向)に配列されている。
【0044】
吸引部43は、画像形成部50と搬送ベルト41を介して対向して配置されている。より詳しくは、吸引部43は、第1ローラー421、第2ローラー422、第3ローラー423、及び一対の第4ローラー424によって張架された搬送ベルト41の内側において、第2面412に対向して配置されている。吸引部43は、後述の送風部44により搬送ベルト41の第1面411に密着されたシートSと搬送ベルト41との間に負圧を発生させることにより、シートSを搬送ベルト41の第1面411に密着させる。これにより、シートSは、搬送ベルト41の第1面411上に保持される。吸引部43は、ベルト案内部材431と、吸引筐体432と、吸引装置433と、排気ダクト434とを備える。
【0045】
吸引部43において、ベルト案内部材431は、搬送ベルト41の第2面412における、第1ローラー421と第2ローラー422との間の領域に対向して配置され、搬送ベルト41の幅方向(X方向)の長さと略同一の幅寸法を有する板状の部材である。ベルト案内部材431は、吸引筐体432の上面部を構成し、+Z側(上側)から見たときに、吸引筐体432と略同一の形状を有している。ベルト案内部材431は、第1ローラー421と第2ローラー422との間において、第1ローラー421の回転に連動した搬送ベルト41の周回移動を案内する。
【0046】
また、
図5乃至
図7に示すように、ベルト案内部材431は、搬送ベルト41の第2面412に対向したベルト案内面4311に形成された、複数の第1溝4311A及び第2溝4311Bを有している。各第1溝4311Aは、搬送ベルト41の幅方向(X方向)中央部に形成された吸引孔413に対応して、ベルト案内部材431におけるベルト案内面4311の幅方向(X方向)中央部に形成された溝部である。各第1溝4311Aは、ベルト案内部材431におけるベルト案内面4311のY方向(左右方向)両端部間にわたって延びる長溝である。本実施形態では、
図5に示すように、Y方向(左右方向)に互いに平行に延びる3つの第1溝4311Aが、幅方向(X方向)に配列されている。
【0047】
各第2溝4311Bは、搬送ベルト41の幅方向(X方向)中央部に対して両端部側に形成された吸引孔413に対応して、ベルト案内部材431におけるベルト案内面4311の幅方向(X方向)中央部に形成された第1溝4311Aに対して両端部側に形成された溝部である。各第2溝4311Bは、ベルト案内部材431のベルト案内面4311において、第1溝4311Aよりも短い長さでY方向(左右方向)に沿って延びる長溝である。本実施形態では、
図5に示すように、ベルト案内部材431のベルト案内面4311において、幅方向(X方向)中央部に形成された第1溝4311Aに対して両端部側の領域に、各第2溝4311Bが、Y方向(左右方向)及びX方向(前後方向)に沿って配列されている。
【0048】
更にベルト案内部材431は、各第1溝4311Aに対応して設けられた第1貫通孔4311Aaと、各第2溝4311Bに対応して設けられた第2貫通孔4311Baとを有している。第1貫通孔4311Aaは、第1溝4311A内においてベルト案内部材431の厚み方向に貫通した孔部であり、第1溝4311Aを介して、搬送ベルト41の幅方向(X方向)中央部に形成された吸引孔413と連通する。また、第2貫通孔4311Baは、第2溝4311B内においてベルト案内部材431の厚み方向に貫通した孔部であり、第2溝4311Bを介して、搬送ベルト41の幅方向(X方向)中央部に対して両端部側に形成された吸引孔413と連通する。ここで、ベルト案内部材431のベルト案内面4311において、単位面積当たりの第2貫通孔4311Baの数は、単位面積当たりの第1貫通孔4311Aaの数よりも多く設定されている。すなわち、ベルト案内部材431のベルト案内面4311における貫通孔の数は、幅方向(X方向)中央部よりも両端部側の領域が多くなるように設定されている。
【0049】
以上のように構成されたベルト案内部材431を備えた吸引部43は、ベルト案内部材431の第1溝4311A及び第2溝4311B並びに第1貫通孔4311Aa及び第2貫通孔4311Baと、搬送ベルト41の吸引孔413とを介して、搬送ベルト41の+Z側(上側)の空間から空気を吸引することにより吸引力を発生させる。この吸引力により、搬送ベルト41の上方の空間に吸引部43へ向かう気流(吸引風)が発生する。シートSがガイド部30により搬送ベルト41上にガイドされて搬送ベルト41の第1面411の一部を覆うと、シートSに吸引力(負圧)が作用して、シートSが搬送ベルト41の第1面411に密着される。
【0050】
ここで、上述の如く、ベルト案内部材431のベルト案内面4311において、搬送ベルト41の吸引孔413と連通する貫通孔の数は、幅方向(X方向)中央部に形成された第1貫通孔4311Aaよりも、両端部側の領域に形成された第2貫通孔4311Baが多くなるように設定されている。このため、搬送ベルト41の第1面411上においてシートSに作用する吸引力(負圧)は、幅方向(X方向)中央部よりも両端部側の領域で大きくなる。この結果、シートSを搬送ベルト41の幅方向(X方向)において均一に密着させることができる。
【0051】
吸引部43において、吸引筐体432は、+Z側(上側)が開口した箱形の筐体であり、当該+Z側(上側)の開口が、吸引筐体432の上面部を構成するベルト案内部材431によって覆われるように、搬送ベルト41の−Z側(下側)に配置される。吸引筐体432は、その上面部を構成するベルト案内部材431と協働して吸引空間432Aを画定する。すなわち、吸引筐体432とベルト案内部材431とで囲まれた空間が、吸引空間432Aとなる。この吸引空間432Aは、ベルト案内部材431の第1溝4311A及び第2溝4311B並びに第1貫通孔4311Aa及び第2貫通孔4311Baを介して、搬送ベルト41の吸引孔413に連通する。
【0052】
図8を参照して吸引筐体432について詳述すると、吸引筐体432は、矩形板状の底壁部4321と、その底壁部4321の外周縁端部に立設される側壁部4322と、底壁部4321に立設され吸引空間432Aを複数の領域に区画する仕切り壁部4323とを含んで構成される。吸引筐体432における側壁部4322の上端部に、底壁部4321と対向するようにベルト案内部材431が配置されている。本実施形態では、仕切り壁部4323によって吸引空間432Aは、第1空間432Aa、第2空間432Ab、第3空間432Ac及び第4空間432Adに区画されている。
【0053】
第1空間432Aaは、吸引空間432Aにおけるシート搬送方向Aの上流側の領域であり、吸引筐体432の幅方向(X方向)両端部間にわたって延び、幅方向(X方向)中央部において+Y側(左側)に延出した空間である。第2空間432Abは、吸引空間432Aにおいて第1空間432Aaよりもシート搬送方向Aの下流側に位置する領域であり、吸引筐体432の幅方向(X方向)中央部において第1空間432Aaに対してシート搬送方向Aの下流側に隣接した空間である。
【0054】
第3空間432Acは、吸引空間432Aにおいて第1空間432Aaよりもシート搬送方向Aの下流側で、且つ第2空間432Abよりも+X側(後側)に位置する領域である。具体的には、第3空間432Acは、吸引筐体432の幅方向(X方向)の+X側(後側)において第1空間432Aaに対してシート搬送方向Aの下流側に隣接し、且つ第2空間432Abに対して+X側(後側)に隣接した空間である。また、第4空間432Adは、吸引空間432Aにおいて第1空間432Aaよりもシート搬送方向Aの下流側で、且つ第2空間432Abよりも−X側(前側)に位置する領域である。具体的には、第4空間432Adは、吸引筐体432の幅方向(X方向)の−X側(前側)において第1空間432Aaに対してシート搬送方向Aの下流側に隣接し、且つ第2空間432Abに対して−X側(前側)に隣接した空間である。
【0055】
更に、吸引筐体432の底壁部4321には、仕切り壁部4323によって区画された第1空間432Aa内に第1開口部432Baが形成され、第2空間432Ab内に第2開口部432Bbが形成され、第3空間432Ac内に第3開口部432Bcが形成され、第4空間432Ad内に第4開口部432Bdが形成されている。そして、吸引筐体432の底壁部4321の−Z側(下側)に、第1開口部432Baに対応して第1吸引装置433Aが配置され、第2開口部432Bbに対応して第2吸引装置433Bが配置され、第3開口部432Bcに対応して第3吸引装置433Cが配置され、第4開口部432Bdに対応して第4吸引装置433Dが配置されている。なお、第1吸引装置433A、第2吸引装置433B、第3吸引装置433C及び第4吸引装置433Dの各々は、第1開口部432Ba、第2開口部432Bb、第3開口部432Bc及び第4開口部432Bdの各々を介して吸引空間432Aに接続される。また、第1吸引装置433A、第2吸引装置433B、第3吸引装置433C及び第4吸引装置433Dの各々には、
図1に示すように、排気ダクト434が接続されている。この排気ダクト434は、装置本体10に設けられた不図示の排気口と連結されている。
【0056】
第1吸引装置433A、第2吸引装置433B、第3吸引装置433C及び第4吸引装置433Dの各々は、吸引ファンであるが、その吸引ファンに限定されるものではなく、例えば真空ポンプであってもよい。第1吸引装置433A、第2吸引装置433B、第3吸引装置433C及び第4吸引装置433Dの各々が駆動することによって、吸引筐体432において第1空間432Aa、第2空間432Ab、第3空間432Ac及び第4空間432Adの各々に負圧が発生する。この負圧により、ベルト案内部材431の第1貫通孔4311Aa及び第2貫通孔4311Baを介して第1溝4311A及び第2溝4311Bに吸引力が発生し、これら第1溝4311A及び第2溝4311Bを介して搬送ベルト41の吸引孔413に吸引力が発生する。この結果、搬送ベルト41の+Z側(上側)の空間からの空気が、吸引筐体432における第1空間432Aa、第2空間432Ab、第3空間432Ac及び第4空間432Adの各々に吸引される。
【0057】
吸引筐体432における第1空間432Aa、第2空間432Ab、第3空間432Ac及び第4空間432Adの各々に吸引された空気は、第1吸引装置433A、第2吸引装置433B、第3吸引装置433C及び第4吸引装置433Dの各々に接続された排気ダクト434を介して、排気される。そして、シートSがガイド部30により搬送ベルト41上にガイドされて搬送ベルト41の第1面411の一部を覆い、複数の吸引孔413のうちの一部を塞ぐと、シートSによって塞がれた吸引孔413からシートSに吸引力(負圧)が作用して、シートSが搬送ベルト41の第1面411に密着される。ここで、吸引筐体432における吸引空間432Aが仕切り壁部4323によって第1空間432Aa、第2空間432Ab、第3空間432Ac及び第4空間432Adに区画され、その区画された各空間に対応して配置された第1吸引装置433A、第2吸引装置433B、第3吸引装置433C及び第4吸引装置433Dによって空気を吸引するので、搬送ベルト41の第1面411上においてシートSの全面を均一に密着させることができる。
【0058】
次に、主として
図1、
図9及び
図10を参照して、シート搬送装置40に備えられる送風部44について説明する。送風部44は、画像形成部50のシート搬送方向Aの上流側で、シートSに向かって風を吹き出し、シートSを搬送ベルト41の第1面411に密着させる。上述の吸引部43は、送風部44により第1面411に密着されたシートSと搬送ベルト41との間に負圧を発生させることにより、シートSを搬送ベルト41の第1面411に密着させる。送風部44は、送風ダクト44Aと送風機44Bとを備える。
【0059】
送風ダクト44Aは、搬送ベルト41の第1面411における、第1ローラー421と第2ローラー422との間の前記所定の搬送領域内であって、画像形成部50よりもシート搬送方向Aの上流側の領域に対向して配置されるダクトである。送風ダクト44Aは、ダクト本体441と風向調整部442とを備える。
【0060】
ダクト本体441は、送風ダクト44Aの本体部を構成し、搬送ベルト41の幅方向(X方向)に沿って延び、空気の送風流路となる送風空間441Aを形成する箱形の筒体である。ダクト本体441は、延在方向となるX方向(前後方向)の−X側(前側)端部に形成された空気導入口4411と、搬送ベルト41の第1面411に臨んで開口し、当該第1面411に向かって風を吹き出す吹出口4412と、を有している。吹出口4412は、搬送ベルト41の幅方向(X方向)の両端部間にわたって開口した開口部である。
【0061】
送風ダクト44Aは、空気導入口4411からダクト本体441の送風空間411Aに導入された空気を、吹出口4412から搬送ベルト41の第1面411に向かって吹き出す。本実施形態では、ダクト本体441の空気導入口4411から送風空間411Aに導入される空気は、送風機44Bにより発生される空気である。すなわち、送風ダクト44Aは、送風機44Bにより発生されて空気導入口4411からダクト本体441の送風空間411Aに導入された空気を、吹出口4412から搬送ベルト41の第1面411に向かって吹き出す。
【0062】
なお、空気導入口4411に吸引部43の排気ダクト434を接続し、排気ダクト434を介して排気される空気を、空気導入口4411からダクト本体441の送風空間411Aに導入するようにしてもよい。この場合、送風ダクト44Aは、排気ダクト434から排気されて空気導入口4411からダクト本体441の送風空間411Aに導入された空気を、吹出口4412から搬送ベルト41の第1面411に向かって吹き出す。これにより、送風機44Bを別途設置しなくても、排気ダクト434から排気される空気を有効利用することができる。但し、この場合には、送風ダクト44Aの吹出口4412から吹き出される空気のシートSに対する吹き付け力は、排気ダクト434からの空気の排気量によって変化する。排気ダクト434からの空気の排気量は、搬送ベルト41の第1面411がシートSにより覆われる割合が大きくなるほど、低下する。すなわち、送風ダクト44Aの吹出口4412から吹き出される空気のシートSに対する吹き付け力は、搬送ベルト41により搬送されるシートSの先端部が画像形成部50に到達する直前までは強く、その後は低下することになる。
【0063】
送風ダクト44Aを有する送風部44を備えたシート搬送装置40では、ダクト本体441の吹出口4412から搬送ベルト41の第1面411に向かって吹き出される風によりシートSを搬送ベルト41に密着させつつ、吸引部43による負圧によってシートSを搬送ベルト41に密着させる。すなわち、送風ダクト44Aの吹出口4412から吹き出される風により、吸引部43によるシートSの搬送ベルト41に対する密着をアシストすることができる。このため、ガイド部30によりガイドされて搬送ベルト41に供給されたシートSの先端部に波打ち等の変形が発生している場合であっても、当該シートSの先端部と搬送ベルト41との間に隙間が生じることを防止し、シートSの搬送ベルト41に対する密着不良の発生を抑止することができる。従って、搬送ベルト41によるシートSの搬送特性に優れたシート搬送装置40とすることができる。
【0064】
また、シートSの先端部には紙粉が付着していることがある。このように先端部に紙粉が付着した状態でシートSが搬送ベルト41により搬送されると、その紙粉が、搬送ベルト41の第1面411に対向して配置された画像形成部50の記録ヘッド511に付着し、当該記録ヘッド511のノズル孔に詰まりが発生するおそれがある。これに対し、本実施形態のシート搬送装置40では、送風ダクト44Aの吹出口4412から搬送ベルト41の第1面411に向かって風が吹き出されるので、この風によってシートSの先端部に付着した紙粉を除去することができる。このため、画像形成部50の記録ヘッド511への紙粉の付着を可及的に抑止することができる。
【0065】
なお、シートSの先端部から除去された紙粉は、シートSの上面で中央から端部へ向けて散乱する。このため、搬送ベルト41への紙粉の付着も可及的に抑止されている。仮に、搬送ベルト41に紙粉が付着したとしても、その紙粉は、送風ダクト44Aの吹出口4412から吹き出される風の流れによって、搬送ベルト41の吸引孔413と、ベルト支持部材431の第1貫通孔4311Aa及び第2貫通孔4311Baとを介して吸引筐体432の第1空間432Aa内に進入し、第1吸引装置433Aに接続された排気ダクト434に付設されるフィルタ等により回収される。
【0066】
また、本実施形態のシート搬送装置40において、吸引部43は、搬送ベルト41の吸引孔413を介して空気を吸引することによりシートSを搬送ベルト41に密着させる構成である。一方、上述の如く、送風ダクト44Aの吹出口4412から搬送ベルト41に向かって吹き出される風により、吸引部43によるシートSの搬送ベルト41に対する密着をアシストすることができる。このため、吸引部43における空気の吸引能の選択幅を広げることができ、例えば、空気の吸引能が比較的低い(最大静圧が低い)汎用性のある吸引ファンを吸引部43の第1乃至第4吸引装置433A、433B、433C、433Dとして用いることができる。
【0067】
また、送風ダクト44Aは、風向調整部442を備える。この風向調整部442は、ダクト本体441の送風空間441A内に配置され、吹出口4412から吹き出される風が、搬送ベルト41の幅方向(X方向)中央部から両端部に向かって広がるように、風向を調整する。具体的には、風向調整部442は、ダクト本体441の吹出口4412を搬送ベルト41の幅方向(X方向)に並んだ複数の領域に区画する第1風向調整板4421及び第2風向調整板4422を含んで構成される。
【0068】
本実施形態では、
図9及び
図10に示すように、搬送ベルト41の幅方向(X方向)中央部に対して−X側(前側)に複数の第1風向調整板4421が幅方向(X方向)に沿って並設され、搬送ベルト41の幅方向(X方向)中央部に対して+X側(後側)に複数の第2風向調整板4422が幅方向(X方向)に沿って並設されている。
【0069】
そして、複数の第1風向調整板4421の各々は、搬送ベルト41の幅方向(X方向)中央部から−X側(前側)端部に向かって傾斜し、第1面411に近づく下方側(−Z側)に向けて延設される。また、複数の第2風向調整板4422の各々は、搬送ベルト41の幅方向(X方向)中央部から+X側(後側)端部に向かって傾斜し、第1面411に近づく下方側(−Z側)に向けて延設される。なお、ダクト本体441におけるX方向(前後方向)の+X側(後側)端部を画定する端壁部441Bは、第2風向調整板4422と同様に傾斜している。
【0070】
第1風向調整板4421及び第2風向調整板4422を含んで構成される風向調整部442を備えた送風ダクト44Aでは、空気導入口4411からダクト本体441の送風空間411Aに導入され、−X側(前側)から+X側(後側)へと矢印B1方向に沿って流れる空気は、その風向が、搬送ベルト41の幅方向(X方向)中央部に対して−X側(前側)では第1風向調整板4421に沿った矢印B2方向に調整され、搬送ベルト41の幅方向(X方向)中央部に対して+X側(後側)では第2風向調整板4422に沿った矢印B3方向に調整される。そして、吹出口4412の第1風向調整板4421によって区画された領域からは、搬送ベルト41の幅方向(X方向)中央部から−X側(前側)端部に向かって広がる風が吹き出され、吹出口4412の第2風向調整板4422によって区画された領域からは、搬送ベルト41の幅方向(X方向)中央部から+X側(後側)端部に向かって広がる風が吹き出される。
【0071】
上記のように、ダクト本体441の吹出口4412から搬送ベルト41に向かって吹き出される風が、搬送ベルト41の幅方向(X方向)中央部から両端部に向かって広がるように、風向調整部442によって風向調整される。これにより、シートSを搬送ベルト41の幅方向(X方向)において均一に密着させることができる。従って、搬送ベルト41によるシートSの搬送特性をより優れたものとすることができる。
【0072】
更に、風向調整部442は、遮蔽板4423を含んで構成される。遮蔽板4423は、
図9及び
図10に示すように、複数の第1風向調整板4421のうちの最も幅方向(X方向)中央部寄りの第1風向調整板4421と、複数の第2風向調整板4422のうちの最も幅方向(X方向)中央部寄りの第2風向調整板4422との、+Z側(上側)端部同士を連結するように、配置されている。この遮蔽板4423は、送風ダクト44Aの吹出口4412からの、搬送ベルト41の幅方向(X方向)中央部への風の吹き出しを遮蔽する遮蔽部として機能する。これにより、送風ダクト44Aの吹出口4412から吹き出される風が、より確実に、搬送ベルト41の幅方向(X方向)中央部から両端部に向かって広がる。このため、シートSを搬送ベルト41の幅方向(X方向)において均一に密着させることができる。
【0073】
また、本実施形態の画像形成装置1は、搬送ベルト41によるシートSの搬送特性に優れたシート搬送装置40を備えているので、画像形成部50により形成される画像に、シートSの搬送不良に起因した画像欠陥が生じることが抑止される。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形実施形態を採ることができる。
【0075】
(1)上記の実施形態では、シートSを搬送ベルト41の第1面411に密着させるための吸引部43として、搬送ベルト41の吸引孔413を介して空気を吸引することにより吸引力を発生させる構成について説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。例えば、吸引部43は、搬送ベルト41に設けられる導電性を有する電極対を含む構成としてもよい。この場合、吸引部43は、シートSと搬送ベルト41との間に静電気的な吸引力を発生させることにより、シートSを搬送ベルト41の第1面411に静電気的に密着させることになる。このようなシートSを静電気的に密着させる構成では、搬送ベルト41に吸引孔413を設ける必要はない。
【0076】
(2)また、上記の実施形態では、画像形成装置1としてインクジェット記録装置について説明したが、本発明の画像形成装置1はインクジェット記録装置に限定されるものではない。本発明の画像形成装置1は、搬送ベルト41を含んで構成されるシート搬送装置40を備えた装置であればよく、インクジェット式以外でも、レーザービーム式、サーマル式、ワイヤドット式等の種々の画像形成方式(記録方式)の装置とすることができる。