(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヒータ制御部は、前記貴金属を失活させるよう前記電熱ヒータを作動させるとき、前記内燃機関の停止時に、合計作動時間が所定の終了時間に達するまで前記電熱ヒータを作動させる
請求項3に記載の内燃機関の排気ガス浄化装置。
前記ヒータ制御部は、前記貴金属を失活させるよう前記電熱ヒータを作動させるとき、前記内燃機関の停止時毎に、所定の分割作動時間だけ前記電熱ヒータを作動させ、かつ、前記分割作動時間の合計値が前記終了時間に達するまで、前記内燃機関の停止時毎に繰り返し前記電熱ヒータを作動させる
請求項4に記載の内燃機関の排気ガス浄化装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者の鋭意研究の結果によれば、長期の使用により、SCRの前面部に極微量の貴金属が付着することが判明した。この付着貴金属は、SCR上流側の酸化触媒およびDPFの少なくとも一方から飛散したものと考えられる。
【0006】
この貴金属付着が起きると、尿素水添加弁から添加された尿素水の一部が付着貴金属により酸化されてNOxに変化する。この結果、SCRのNOx浄化性能が低下するという問題が生じる。
【0007】
そこで本発明は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、貴金属の付着による選択還元型NOx触媒の性能低下を抑制することが可能な内燃機関の排気ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様によれば、
内燃機関の排気ガスが流れる排気通路と、
前記排気通路に設けられた選択還元型NOx触媒と、
前記排気通路における前記NOx触媒の上流側の位置に設けられ、貴金属が担持された少なくとも一つの後処理部材と、
前記排気通路における前記少なくとも一つの後処理部材と前記NOx触媒の間の位置に設けられた尿素水添加弁と、
前記排気通路における前記尿素水添加弁と前記NOx触媒の間の位置に設けられ、前記少なくとも一つの後処理部材から飛散した貴金属を付着させるハニカム構造体と、
を備えたことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化装置が提供される。
【0009】
好ましくは、前記排気ガス浄化装置は、
前記排気通路における前記尿素水添加弁の上流側の位置における排気ガス中の第1NOx量を取得するための取得部と、
前記排気通路における前記ハニカム構造体と前記NOx触媒の間の位置における排気ガス中の第2NOx量を検出するための検出部と、
前記取得部により取得された第1NOx量と、前記検出部により検出された第2NOx量とに基づいて、前記ハニカム構造体に所定量以上の貴金属が付着したか否かを判定する判定部と、
をさらに備える。
【0010】
好ましくは、前記判定部は、前記内燃機関のアイドル運転時に判定を行う。
【0011】
好ましくは、前記判定部は、前記尿素水添加弁が尿素水を添加しているときに判定を行う。
【0012】
好ましくは、前記ハニカム構造体は、電熱ヒータを有し、
前記排気ガス浄化装置は、前記電熱ヒータを制御するヒータ制御部をさらに備える。
【0013】
好ましくは、前記ヒータ制御部は、前記判定部が判定を行うとき、前記ハニカム構造体に付着した貴金属が活性温度となるよう前記電熱ヒータを作動させる。
【0014】
好ましくは、前記ヒータ制御部は、前記判定部が前記ハニカム構造体に貴金属が付着したと判定したとき、その付着した貴金属を失活させるよう前記電熱ヒータを作動させる。
【0015】
好ましくは、前記ヒータ制御部は、前記貴金属を失活させるよう前記電熱ヒータを作動させるとき、前記内燃機関の停止時に、合計作動時間が所定の終了時間に達するまで前記電熱ヒータを作動させる。
【0016】
好ましくは、前記ヒータ制御部は、前記貴金属を失活させるよう前記電熱ヒータを作動させるとき、前記内燃機関の停止時毎に、所定の分割作動時間だけ前記電熱ヒータを作動させ、かつ、前記分割作動時間の合計値が前記終了時間に達するまで、前記内燃機関の停止時毎に繰り返し前記電熱ヒータを作動させる。
【0017】
好ましくは、前記少なくとも一つの後処理部材が、上流側の酸化触媒と下流側のパティキュレートフィルタとを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、貴金属の付着による選択還元型NOx触媒の性能低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る内燃機関の排気ガス浄化装置の概略図である。エンジン(内燃機関)1は、トラック等の大型車両(図示せず)に搭載された車両動力源としての多気筒圧縮着火式内燃機関、すなわちディーゼルエンジンである。図示例は直列4気筒エンジンを示すが、エンジンのシリンダ配置形式、気筒数等は任意である。なお車両および内燃機関の種類、用途等に特に限定はなく、例えば車両は乗用車等の小型車両であってもよいし、エンジンは火花点火式内燃機関すなわちガソリンエンジンであってもよい。
【0022】
エンジン1は、エンジン本体2と、エンジン本体2に接続された吸気通路3および排気通路4と、燃料噴射装置5とを備える。エンジン本体2は、シリンダヘッド、シリンダブロック、クランクケース等の構造部品と、その内部に収容されたピストン、クランクシャフト、バルブ等の可動部品とを含む。
【0023】
燃料噴射装置5は、コモンレール式燃料噴射装置からなり、各気筒に設けられた燃料噴射弁すなわちインジェクタ7と、インジェクタ7に接続されたコモンレール8とを備える。インジェクタ7は、シリンダ9内に燃料を直接噴射する。コモンレール8は、インジェクタ7から噴射される燃料を高圧状態で貯留する。
【0024】
吸気通路3は、エンジン本体2(特にシリンダヘッド)に接続された吸気マニホールド10と、吸気マニホールド10の上流端に接続された吸気管11とにより主に画成される。吸気マニホールド10は、吸気管11から送られてきた吸気を各気筒の吸気ポートに分配供給する。吸気通路3には、上流側から順に、エアクリーナ12、エアフローメータ13、ターボチャージャ14のコンプレッサ14C、インタークーラ15、および電子制御式の吸気スロットルバルブ16が設けられる。エアフローメータ13は、エンジン1の単位時間当たりの吸入空気量すなわち吸気流量を検出するための吸気量センサである。
【0025】
排気通路4は、エンジン本体2(特にシリンダヘッド)に接続された排気マニホールド20と、排気マニホールド20の下流側に配置された排気管21とにより主に画成される。排気マニホールド20は、各気筒の排気ポートから送られてきた排気ガスを集合させる。排気マニホールド20の下流側の排気通路4には、ターボチャージャ14のタービン14Tが設けられる。タービン14Tより下流側の排気通路4には、上流側から順に、酸化触媒22、パティキュレートフィルタ(DPFとも称する)23、選択還元型NOx触媒(SCRとも称する)24およびアンモニア酸化触媒26が設けられる。
【0026】
酸化触媒22およびDPF23には、触媒成分をなすPt、Pd等の貴金属が担持されている。酸化触媒22は、排気ガス中の未燃成分(炭化水素HCおよび一酸化炭素CO)を酸化して浄化すると共に、このときの反応熱で排気ガスを加熱昇温し、また排気中のNOをNO
2に酸化する。DPF23は、所謂連続再生式DPFであり、排気中に含まれる粒子状物質(PMとも称す)を捕集すると共に、その捕集したPMを貴金属と反応させて連続的に燃焼除去する。DPF23には、ハニカム構造の基材の両端開口を互い違いに市松状に閉塞した所謂ウォールフロータイプのものが用いられる。これに対し酸化触媒22の基材の両端開口は全て開放され、酸化触媒22は所謂フロースルータイプとされている。
【0027】
NOx触媒24は、尿素水添加弁(以下単に添加弁とも称する)25から添加された尿素水に由来するアンモニアを還元剤として排気中のNOxを還元する。アンモニア酸化触媒26は、NOx触媒24から排出された余剰アンモニアを酸化して浄化する。NOx触媒24およびアンモニア酸化触媒26にも触媒成分をなすPt、Pd等の貴金属が担持され、これらもフロースルータイプとされている。添加弁25は、排気通路4におけるDPF23とNOx触媒24の間の位置に設けられ、排気通路4内に尿素水を添加もしくは噴射する。
【0028】
また、排気通路4における尿素水添加弁25とNOx触媒24の間の位置にはハニカム構造体27が設けられている。
図2にも示すように、ハニカム構造体27は、酸化触媒22と同様のハニカム構造かつフロースルータイプの基材50を有するが、貴金属を有さず、言い換えれば基材50に貴金属は担持されていない。またハニカム構造体27は電熱ヒータ51を有し、外部電力により加熱可能となっている。
【0029】
本実施形態において、ハニカム構造体27は、金属製基材50を備えた所謂メタルハニカムである。そしてこの基材50には電熱ヒータ51が内蔵されている。本実施形態では、
図2に示すように、円筒状基材50の軸回りに渦巻き状に配設された金属板を加熱材52とする電熱ヒータ51が採用されている。なお53は基材50に形成された多数の矩形セル、54は基材50の外周部を囲繞するカバー管である。
【0030】
もっともハニカム構造体27の構成はこれに限らず、例えば、外部電力により発熱可能なセラミックを素材として基材を作製してもよい。これによると、外部電力を供給したときに基材自体が発熱する。この場合、基材と電熱ヒータは一体化される。この他、他の形状、例えば棒状もしくは平板状の加熱材を電熱ヒータとして基材に内蔵した構成とすることもできる。
【0031】
ハニカム構造体27は、NOx触媒24よりも短い所定の長さLを有する。この長さLは後述するように実験等を通じて最適に定められる。
【0032】
排気通路4における添加弁25の上流側の位置には、排気ガス中のNOx量すなわち第1NOx量を検出するための第1NOxセンサ42が設けられている。本実施形態において第1NOxセンサ42は酸化触媒22の上流側の位置に配置されているが、その位置は添加弁25の上流側であれば、適宜変更可能である。
【0033】
また、排気通路4におけるハニカム構造体27とNOx触媒24の間の位置には、排気ガス中のNOx量すなわち第2NOx量を検出するための第2NOxセンサ43が設けられている。本実施形態では、ハニカム構造体27とNOx触媒24の間に所定長さの短い隙間28が設けられ、この隙間28に臨むよう第2NOxセンサ43が配置されている。
【0034】
このように、本実施形態の排気ガス浄化装置は、排気通路4に設けられたNOx触媒24と、排気通路におけるNOx触媒24の上流側の位置に設けられ、貴金属が担持された上流側の酸化触媒22および下流側のDPF23と、排気通路4におけるDPF23とNOx触媒24の間の位置に設けられた添加弁25と、排気通路4における添加弁25とNOx触媒24の間の位置に設けられたハニカム構造体27と、排気通路4における添加弁25の上流側の位置における排気ガス中の第1NOx量を検出するための第1NOxセンサ42と、排気通路4におけるハニカム構造体27とNOx触媒24の間の位置における排気ガス中の第2NOx量を検出するための第2NOxセンサ43とを備える。酸化触媒22およびDPF23が特許請求の範囲にいう「少なくとも一つの後処理部材」に相当し、第2NOxセンサ43が特許請求の範囲にいう「検出部」に相当する。なお後処理部材とは、排気ガス中の特定成分を除去もしくは減少する後処理を実行する部材をいう。この特定成分は、酸化触媒22の場合、炭化水素HCおよび一酸化炭素COであり、DPF23の場合、粒子状物質である。
【0035】
本実施形態では第1NOx量を第1NOxセンサ42により直接検出するが、後述するECU100により、エンジン運転状態(例えばエンジン回転数と燃料噴射量)に応じた第1NOx量を所定のマップを用いて推定してもよい。これら検出と推定を総称して取得という。検出する場合、第1NOxセンサ42が特許請求の範囲にいう「取得部」に相当する。また推定する場合、ECU100が特許請求の範囲にいう「取得部」に相当する。
【0036】
エンジン1はEGR装置30をも備える。EGR装置30は、排気通路4内(特に排気マニホールド20内)の排気ガスの一部(EGRガスとも称す)を吸気通路3内(特に吸気マニホールド10内)に還流させるためのEGR通路31と、EGR通路31を流れるEGRガスを冷却するEGRクーラ32と、EGRガスの流量を調節するためのEGR弁33とを備える。
【0037】
本実施形態の排気ガス浄化装置は、制御ユニットもしくはコントローラとしての電子制御ユニット(ECUとも称す)100をも備える。ECU100はCPU、ROM、RAM、入出力ポートおよび記憶装置等を含む。ECU100は、インジェクタ7、吸気スロットルバルブ16、添加弁25、EGR弁33、およびハニカム構造体27の電熱ヒータ51を制御するように構成され、もしくはプログラムされている。ECU100は、特許請求の範囲にいう「ヒータ制御部」に相当する。
【0038】
センサ類に関して、上述のエアフローメータ13、第1NOxセンサ42および第2NOxセンサ43の他、エンジンの回転速度を検出するための回転速度センサ40、アクセル開度を検出するためのアクセル開度センサ41、車両の積算走行距離を検出するためのトリップメータ44が設けられる。これらセンサ類の出力信号はECU100に入力される。なおエンジンの回転速度としては、毎分当たりのエンジン回転数(rpm)の値が用いられる。
【0039】
さて、前述したように、ハニカム構造体27が無い従来装置においては、長期の使用によりNOx触媒の前面部、特に前面から特定長さ範囲内の領域に、極微量の貴金属が付着することが判明した。この特定長さは数cm(例えば3cm)程度であり、NOx触媒の貴金属付着領域における単位体積当たりの貴金属濃度は数ppm程度である。
【0040】
この付着貴金属は、NOx触媒の上流側に位置する酸化触媒およびDPFの少なくとも一方から飛散したものと考えられる。ここで、貴金属の飛散および付着に関する詳細なメカニズムは依然解明されていないが、長期の使用により、酸化触媒およびDPFの一方または両方から貴金属が離脱し、これがNOx触媒まで飛散してきてNOx触媒に付着するものと考えられる。付着貴金属が酸化触媒およびDPFの少なくとも一方から由来したものである可能性は高いと考えられる。
【0041】
こうした貴金属付着が起きると、尿素水添加弁から添加された尿素水の一部が付着貴金属により酸化されてNOxに変化する。つまりNOx触媒自身によってNOxを生成してしまう。その結果、NOx触媒のNOx浄化性能が低下するという問題が生じる。
【0042】
そこで本実施形態では、添加弁25とNOx触媒24の間にハニカム構造体27を設けている。こうすると、酸化触媒22およびDPF23の少なくとも一方(酸化触媒22等と称す)から飛散した貴金属を、NOx触媒24に到達する手前で、ハニカム構造体27により捕捉し、これに付着させることができる。よって、NOx触媒24への貴金属の付着を抑制ないし防止し、貴金属付着によるNOx触媒24のNOx浄化性能の低下を抑制ないし防止することができる。
【0043】
ここで、ハニカム構造体27の長さLは、好ましくは、実験等により判明した従来装置におけるNOx触媒の貴金属付着領域の長さと同等に設定され、数cm(例えば3cm)程度である。このようにハニカム構造体27の長さLが十分に短いので、ハニカム構造体27の熱容量が小さくなり、排気温度低下によるNOx触媒24の活性低下を最小限に止めることができる。
【0044】
ところで、エンジン運転中にはハニカム構造体27に徐々に貴金属が付着していくが、その付着量があまりに多くなると、その付着貴金属により尿素水の一部がNOxに変化し、NOx触媒24に供給されるNOx量が増大する問題が生じる。
【0045】
そこで本実施形態では、第1NOxセンサ42により検出された第1NOx量と、第2NOxセンサ43により検出された第2NOx量とに基づいて、ハニカム構造体27に所定量以上の貴金属が付着したか否かを判定する判定部が設けられる。判定部は本実施形態ではECU100により形成される。ここで所定量とは、ハニカム構造体27の付着貴金属により増大されたNOx量が許容上限値となるような量をいう。こうした判定部を設けることで、貴金属が所定量以上付着したと判定した場合、NOx量増大を防止するのに必要な措置を採ることができる。
【0046】
ところで、例えばハニカム構造体27を交換可能とし、貴金属が所定量以上付着したハニカム構造体27を新品に交換することも考えられる。しかしながらこうした交換は煩雑であるし、ランニングコストの増大も懸念される。そこで、本実施形態では、ハニカム構造体27に付着した貴金属を失活させ、ハニカム構造体27を再生するようにしている。これにより煩雑な交換作業やランニングコストの増大を免れることができる。
【0047】
本発明者の研究結果によれば、従来装置において貴金属が所定量以上付着したNOx触媒を比較的高温で熱処理することで、付着貴金属が失活し、NOx触媒の本来の性能を回復できることが判明している。そこで本実施形態においても、ハニカム構造体27に同様の熱処理を行う。このためにハニカム構造体27には電熱ヒータ51が設けられている。熱処理は、ハニカム構造体27を比較的高温の所定温度(例えば700℃)まで電熱ヒータ51により加熱し、その状態を所定時間(例えば1Hr)保持することで行う。この熱処理の条件は、従来装置におけるNOx触媒の熱処理の条件と同じである。これによりハニカム構造体27に付着した貴金属を確実に失活できる。
【0048】
以下、本実施形態における貴金属付着判定処理を説明する。かかる判定処理は、
図3に示すフローチャートの手順に従ってECU100により所定の演算周期τ(例えば10msec)毎に繰り返し実行される。
【0049】
まずステップS101では、現時点が所定の判定タイミングであるか否かが判断される。すなわち本実施形態では、所定の判定タイミング毎に判定を実施する。本実施形態では、トリップメータ44により検出された車両の積算走行距離に基づき、前回判定時から現時点までの走行距離が所定の走行距離(例えば10万km)以上に増加したか否かが判断される。かかる増加があるとき、現時点は判定タイミングであると判断され、そうでないときは判定タイミングでないと判断される。このように本実施形態では所定の走行距離毎に判定を行う。もっともこれは変形可能で、例えば所定期間(例えば1〜2年)毎、あるいは所定の積算燃料噴射量毎に判定を行ってもよい。
【0050】
判定タイミングでないときは、ステップS101に戻って待機状態となり、判定タイミングであるときはステップS102に進む。
【0051】
ステップS102では、エンジン1がアイドル運転中であるか否かが判断される。ECU100は例えば、アクセル開度センサ41により検出されたアクセル開度が0%つまりアクセルペダルが踏み込まれておらず、かつ、回転速度センサ40により検出されたエンジン回転数が所定時間の間、目標アイドル回転数付近にあるときに、アイドル運転中であると判断し、そうでないときはアイドル運転中でないと判断する。
【0052】
アイドル運転中でないときは、ステップS102に戻って待機状態となり、アイドル運転中であるときはステップS103に進む。
【0053】
ステップS103では、電熱ヒータ51が作動(ON)される。このとき、ハニカム構造体27が所定の第1目標温度T1(例えば200℃)以上で且つその付近になるよう、電熱ヒータ51が制御される。第1目標温度T1は、ハニカム構造体27に付着した貴金属の活性温度の最小値である活性開始温度に略等しく設定されている。この電熱ヒータ作動により、ハニカム構造体27に付着した貴金属が活性温度となるようハニカム構造体27を加熱し、その付着貴金属により尿素水をNOxに酸化できるようになる。
【0054】
この際、ハニカム構造体27に熱電対等の温度センサを設け、その温度センサの検出値と第1目標温度T1の差に基づき、電熱ヒータ51をフィードバック制御してもよい。但しこうすると、応答性悪化、部品点数増大、制御複雑化等のデメリットが存在するので、本実施形態では温度センサを設けず、電熱ヒータ51をフィードフォワード制御している。
【0055】
次に、ステップS104で、添加弁25から尿素水が添加される。なおこれはエンジンの通常運転時にも行われていることである。このときECU100は、第1NOxセンサ42により検出された第1NOx量C1に対し、当量比が1となるような尿素水量を添加弁25から添加させる。かかる尿素水量は所定のマップから算出可能である。
【0056】
次に、ステップS105で、第1NOxセンサ42により検出された第1NOx量C1と、第2NOxセンサ43により検出された第2NOx量C2との値が取得される。なお、第1NOxセンサ42および第2NOxセンサ43が排気ガスのNOx濃度を検出する場合、ECU100は、そのNOx濃度に排気流量を乗じて第1NOx量C1および第2NOx量C2を算出可能である。排気流量は、排気流量センサを設けて直接検出することもできるが、本実施形態では、エアフローメータ13の検出値を排気流量の代用値として使用可能である。
【0057】
次に、ステップS106で、第2NOx量C2が第1NOx量C1より所定量以上増加しているか否かが判断される。本実施形態においては、第1NOx量C1と第2NOx量C2の比R=C2/C1が算出され、この比Rが所定の判定閾値Rth(例えば1.2)以上であるか否かが判断される。なお比の代わりに差を用いることも可能である。
【0058】
比Rが判定閾値Rth未満の場合、ステップS107に進んで、ハニカム構造体27に貴金属が所定量以上付着していない、すなわち貴金属付着なしと判定される。他方、比Rが判定閾値Rth以上の場合、ステップS110に進んで、ハニカム構造体27に貴金属が所定量以上付着している、すなわち貴金属付着ありと判定される。
【0059】
このように、第2NOx量C2が第1NOx量C1より所定量以上増加した場合、その原因は、ハニカム構造体27に付着した比較的多くの貴金属が尿素水を積極的に酸化してNOxを生成しているからと考えられる。よってその場合には、貴金属付着ありと判定され、これによりハニカム構造体27への貴金属付着を高精度で確実に検出することができる。
【0060】
貴金属付着なしの場合、ステップS107の後にステップS108に進み、電熱ヒータ51が作動停止(OFF)される。そしてステップS109において初期化処理が行われ、現時点の走行距離がゼロにリセットされる。これにより判定処理が終了される。
【0061】
他方、貴金属付着ありの場合、ステップS110の後にステップS111に進み、ハニカム構造体27の熱処理が行われる。この熱処理終了後、ステップS109の初期化処理を経て判定処理が終了される。
【0062】
本判定処理に関し、貴金属の所定量以上の付着は比較的長期の使用により起こることから、ステップS101の所定の走行距離(例えば10万km)は、その付着が起こる使用期間の最小値に対応する値として設定されている。これにより判定タイミング間の周期を適切に定められると共に、電熱ヒータ51の作動頻度を最小限とし、その作動による電力消費ひいては燃費悪化を最小限に止めることができる。
【0063】
また、排気流量が最小となるエンジンのアイドル運転中に電熱ヒータ51を作動させるので、排気ガスにより電熱ヒータ51の熱が持ち去さられるのを最大限に抑制し、消費電力を抑制できる。また、エンジンのアイドル運転中に判定を実行するので、エンジン運転状態が安定している最中に判定を実行でき、判定精度を高められる。
【0064】
次に、ステップS111で実行されるハニカム構造体27の熱処理について説明する。この熱処理は、
図4に示すフローチャートの手順に従ってECU100により所定の演算周期τ(例えば10msec)毎に繰り返し実行される。
【0065】
まずステップS201では、エンジンを運転または停止状態とすべく運転手により操作されるイグニッションスイッチ(IG)がオフ(OFF)であるか否かが判断される。オフでないときは、ステップS201に戻って待機状態となり、オフであるときはステップS202に進む。イグニッションスイッチのオンはエンジン運転中を意味し、イグニッションスイッチのオフはエンジン停止中を意味する。
【0066】
ステップS202では、電熱ヒータ51が作動(ON)される。このとき、ハニカム構造体27が所定の第2目標温度T2(例えば700℃)以上で且つその付近になるよう、電熱ヒータ51が制御される。第2目標温度T2は、第1目標温度T1より高く、ハニカム構造体27に付着した貴金属が失活する温度の最小値に略等しく設定されている。この電熱ヒータ作動により、ハニカム構造体27が第2目標温度T2まで加熱され、ハニカム構造体27に付着した貴金属を最小限の電力消費で失活させることができる。なお電熱ヒータ51がフィードフォワード制御される点は前記同様である。
【0067】
次に、ステップS203では、電熱ヒータ51の作動開始時点から内蔵タイマによりカウントされる電熱ヒータ51の作動時間thが、所定の分割作動時間ts(例えば10分)に達したか否か、すなわち、電熱ヒータ51の作動開始時点から分割作動時間tsが経過したか否かが判断される。分割作動時間tsに達してなければ、ステップS202に戻ってヒータ作動状態が継続され、分割作動時間tsに達したならばステップS204に進む。
【0068】
ステップS204では電熱ヒータ51が作動停止(OFF)される。そしてステップS205において、分割熱処理回数nをカウントする内蔵カウンタの値が1だけカウントアップされる。
【0069】
次いでステップS206において、分割熱処理回数nが所定の終了回数N(例えば6)に達したか否かが判断される。達してなければステップS201に戻って前記の工程が繰り返し実行され、達していれば熱処理が終了される。
【0070】
なお、熱処理終了後には
図3のステップS109に進み、分割熱処理回数nがゼロにリセットされる。
【0071】
上述したように、ハニカム構造体27を再生させるためには、ハニカム構造体27を第2目標温度T2(例えば700℃)にした状態を、所定時間(例えば1Hr)の間、継続する必要がある。言い換えれば、電熱ヒータ51の合計作動時間tgが終了時間te(例えば1Hr)に達するまで電熱ヒータ51を作動させる必要がある。
【0072】
他方、本実施形態では、前記判定処理と同様、排気ガスによる電熱ヒータ51の熱の持ち去りを防止するため、イグニッションスイッチのオフ時すなわちエンジン停止時に熱処理を実行する。しかし、1回のエンジン停止時に比較的長い終了時間teを確保するのは、実際上困難である。
【0073】
そこで本実施形態では、その終了時間teを複数に分割し、エンジン停止時毎に熱処理を繰り返し実行する。これにより、利便性を格段に向上することが可能である。
【0074】
本実施形態では、終了時間teをN等分(例えば6等分)して分割作動時間tsを規定すると共に、エンジン停止時毎に、ヒータ作動時間thが分割作動時間tsに達するまで電熱ヒータ51を作動させる。そしてこれをN回繰り返し、エンジン停止時毎のヒータ作動時間の合計値すなわち合計作動時間tgが終了時間teに達したら、熱処理を終了する。分割作動時間tsは、1回のエンジン停止時に概ね確保できると予想される時間として予め設定されている。こうした分割作動時間tsのヒータ作動をN回繰り返すことで、終了時間teの間連続して電熱ヒータ51を作動させたときと同様の熱処理を、各回のエンジン停止タイミングを利用して有利に実施することができる。
【0075】
もっとも、電熱ヒータ51の制御方法は変更可能である。例えば終了時間teは等分しなくてもよく、エンジン停止時毎に、そのエンジン停止の全時間に亘って電熱ヒータ51を作動させてもよい。そして、エンジン停止時毎のヒータ作動時間thをカウントし、その合計作動時間tgが終了時間teに達したら、熱処理を終了してもよい。終了時間teは分割しなくてもよく、例えば、エンジン停止を終了時間teの間継続できるような条件(例えば夜間のエンジン停止)が満たされたとき、その終了時間teの全時間に亘って連続的に電熱ヒータ51を作動させてもよい。
【0076】
以上、本発明の実施形態を詳細に述べたが、本発明は以下のような他の実施形態も可能である。
【0077】
(1)上記実施形態ではNOx触媒の上流側に、酸化触媒22およびDPF23からなる2つの後処理部材を設けたが、後処理部材の数、種類等は変更可能である。例えば後処理部材の数は1つまたは3つ以上でもよい。後処理部材の数が3つ以上の場合、その中に酸化触媒とDPFが含まれていてもよい。後処理部材の種類は酸化触媒およびDPF以外のものであってもよい。
【0078】
(2)判定実行時のエンジン運転条件は、アイドル運転時に限らず、例えば小排気流量となる低回転低負荷運転時であってもよい。
【0079】
(3)判定実行時に、ハニカム構造体に付着した貴金属が活性温度となるような所定条件が満たされる場合には、必ずしも電熱ヒータを作動させなくてもよい。例えば、高回転または高負荷運転直後という条件をその所定条件とすることができる。
【0080】
本発明の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。