特許第6790789号(P6790789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6790789-液面検出装置 図000002
  • 特許6790789-液面検出装置 図000003
  • 特許6790789-液面検出装置 図000004
  • 特許6790789-液面検出装置 図000005
  • 特許6790789-液面検出装置 図000006
  • 特許6790789-液面検出装置 図000007
  • 特許6790789-液面検出装置 図000008
  • 特許6790789-液面検出装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790789
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】液面検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/38 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   G01F23/38
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-242071(P2016-242071)
(22)【出願日】2016年12月14日
(65)【公開番号】特開2018-96862(P2018-96862A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 龍二
【審査官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−171015(JP,A)
【文献】 特開2011−085451(JP,A)
【文献】 特開2007−322222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/38
G01B 7/30
G01D 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液面の変動に伴うフロートの変位に応じて回動するホルダと、
前記ホルダに固定され前記ホルダとともに回動する磁石と、
前記磁石の回動動作に伴う磁力変化を検出する磁気検出部と、
前記磁気検出部を保持する第1樹脂体と、
前記磁気検出部と前記第1樹脂体とを覆う第2樹脂体と、
を備えた液面検出装置において、
前記第2樹脂体を固定する固定部材と、
前記固定部材に内蔵された接続端子と、
前記接続端子の端部と電気的に接続され、前記端部と当接する接触面以外の面を前記第2樹脂体から突出する溝部によって覆われる端子と、
を備えたこと
を特徴とする液面検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を利用して液面を検出する液面検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液面検出装置として、例えば、特許文献1に開示されるものがある。
【0003】
特許文献1に示されるような液面検出装置は、液面の変動に伴うフロートの変位に応じて回動する回転部と、前記回転部に固定され前記回転部とともに回動する磁石と、前記磁石の回動動作に伴う磁力変化を検出するセンサと、センサと外部を電気的に接続する複数のターミナルと、ターミナルとワイヤの接続部を覆う蓋部と、を備えたものであり、蓋部に燃料が流入したとしても、端子間の金属イオン流動経路が長いことによって、金属イオンの溶出(電食)を抑えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−185616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような液面検出装置は、ターミナルに対し、ターミナルを囲う筒部が空洞で大きいため、筒部の内側が液体に浸かった場合に、ターミナルの表面全体から金属イオンが溶出する虞があった。
【0006】
そこで、本発明は、前述の問題点に着目し、電食の発生や進行を抑制できる液面検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液面検出装置Fは、
液面の変動に伴うフロート6の変位に応じて回動するホルダ2と、
ホルダ2に固定されホルダ2とともに回動する磁石2aと、
磁石2aの回動動作に伴う磁力変化を検出する磁気検出部3と、
磁気検出部3を保持する第1樹脂体11と、
磁気検出部3と第1樹脂体11とを覆う第2樹脂体12と、
を備え、
第2樹脂体12を固定する固定部材5と、
固定部材5に内蔵された接続端子5dと、
接続端子5dの端部5d2と電気的に接続され、端部5d2と当接する接触面1a2以外の面を第2樹脂体12から突出する溝部12cによって覆われる端子1aと、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上の構成によって、本発明は、所期の目的を達成することができ、電食の発生や進行を抑制できる液面検出装置を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態を示す図。
図2図1のA−A断面図。
図3】同実施形態の第1樹脂体を示す図。
図4】同実施形態の第2樹脂体を示す図。
図5】同実施形態の取付部材を示す図。
図6図5に本体部を取り付けた図。
図7図6のB−B断面図。
図8図7から取付部材を除いた図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
本発明の液面検出装置Fは、ガソリンなどの液体燃料を貯留する図示しない燃料タンクに設置されるものである。
【0013】
図1図2に示すように、液面検出装置Fは、本体部(樹脂体)1と、ホルダ2と、磁気検出部3と、カバー4と、固定部材5とから主に構成されている。
【0014】
本体部1は、ホルダ2が回動可能に支持される第1回動支持部1bを備えている。この第1回動支持部1bは、第2樹脂体12に一体に形成されている。第1回動支持部1bは、円柱形状をしており、ホルダ2側に突出している。円柱形状の第1回動支持部1bは、ホルダ2の回動軸方向に対して垂直方向の断面形状が円形の摺動面を備えている。第1回動支持部1bの回動軸上の本体部1内には、磁気検出素子を内蔵したパッケージ(磁気検出素子パッケージ)3aの磁気検出面が、ホルダ2の回転軸方向に対して垂直方向となるように配置されている。以下、第1回動支持部1bが円柱形状の場合について説明するが、第1回動支持部1bはホルダ2を軸支できればよく、任意の形状、例えば凹形状とすることも考えられる。
【0015】
また、本体部1は、第1樹脂体11と第2樹脂体12とで構成されている。本体部1の裏面(ホルダ2を設けた側とは反対)側に、固定部材5の本体固定部5aに取り付ける位置を定める位置決めボス1cとフック(係合部)1dを備えている。位置決めボス1c、フック1dともに第2樹脂体12に一体に形成されている。
【0016】
本体部1は、複数の端子1aを一次成形により第1樹脂体11にインサート形成し、インサート成形された端子1aに磁気検出部3を抵抗溶接、あるいは半田付けし、さらに第1樹脂体11を第2樹脂体12で二次成形する。
【0017】
図3に示すように、第1樹脂体11は、ポリアセタール(以下、POMという)等の樹脂材料からなり、複数の端子1aを成形により内蔵している。この端子1aの第1樹脂体11から露出した部分に磁気検出部3を構成する磁気検出素子パッケージ3aと電子部品(ノイズ吸収用のコンデンサや抵抗)3bが実装されている。本実施形態では、磁気検出素子パッケージ3aと電子部品3bは、リード3cによって接続されており、リード3dを端子1aにレーザ溶着などの方法によって電気的に接続している。
【0018】
以下、磁気検出部3などを実装した面を第1樹脂体11の表面11a、裏面側を裏面11bと記述する。なお、第2樹脂体12の表面12a、裏面12bは、それぞれ第1樹脂体11の表面11a、裏面11bを覆う面である。
【0019】
端子1aに磁気検出部3を実装した第1樹脂体11を、第1樹脂体11と同材料の樹脂材料からなる第2樹脂体12によってインサート成形し、本体部1が形成される。第1樹脂体11は、磁気検出部3とともに第2樹脂体12によって覆われている。なお、第1樹脂体11は、端子1aの端部1a1を露出させた状態で、磁気検出部3とともに、第2樹脂体12により気密的に封止される。
【0020】
第1樹脂体11は、第1樹脂体11から外側に突出し、断面が三角形状のリブ(突起)11eを全周に備えている。リブ11eの突出した先端部分が、第2樹脂体12成形時の熱によって溶けることで、第1樹脂体11と第2樹脂体12が一体となって水密構造を構成し、第1樹脂体11と第2樹脂体12との隙間への燃料の浸入を防止する。
【0021】
図4に示すように、第2樹脂体12は、溝部12cと、スリット部12dを備えている。第1樹脂体11から露出した複数の端子1aは、それぞれ表面(磁気検出部3などを実装した面と同じ向きの面)と両側面を溝部12cに覆われる。異なる溝部12cの間には、スリット部12dが設けられている。3端子の場合は、3つの溝部12cと2つのスリット部12dが設けられる。端子1aの端部1a1の裏面(第2樹脂体12の裏面12bと同じ向きの面)は、後述する接続端子5dと電気的に接続する接触面1a2である。
【0022】
ホルダ2は、図2に示すように、POM等の樹脂材料からなり、磁石2aがインサート成形によって固定され、ホルダ2とともに回動する。なお、磁石2aは、その一部がホルダ2から露出している。
【0023】
磁石2aは、例えば、ネオジム−フェライト材料などからなり、その形状は、ホルダ2の回動軸を中心とした円柱形状である。磁石2aの着磁は、本実施形態では、2極着磁である。
【0024】
ホルダ2は、液面の変動に伴うフロート6の変位に応じて回動するものであり、ホルダ2にフロート6の変位を伝達するフロートアーム7が固定されている。
【0025】
ホルダ2には、磁石2aを保持する保持部2b4が設けられている。
【0026】
保持部2b4は、円筒形状であり、その下側が磁石2aの外形より小さくなるように窄まっており、磁石2aが露出する第1孔2b5を備えている。
【0027】
また、ホルダ2には、第1回動部2b2が設けられている。
【0028】
第1回動部2b2は、保持部2b4の下側に設けられている。第1回動部2b2は、円筒形状をしており、第1回動部2b2に第1孔2b5が設けられている。第1回動部2b2は、円筒形状の第1孔2b5の内周面の一部が、本体部1の第1回動支持部1bの円柱形状の外周の摺動面と摺動する摺動受面となり、ホルダ2を回動可能に支持するものである。
【0029】
また、ホルダ2には、第2回動部2b3が設けられている。
【0030】
第2回動部2b3は、円柱形状をしている。第2回動部2b3は、磁石2aの回転軸方向において、磁石2aを間に挟んで、第1回動部2b2の上方に位置している。第1回動部2b2と第2回動部2b3の中心軸は、同一軸上であり、また、この同軸上に、磁石2aの回転軸も位置している。第2回動部2b3は、磁石2aの回動軸方向に対して垂直方向の断面形状が円形の外周が摺動面である。
【0031】
ホルダ2は、本体部1の第1回動支持部1bに第1回動部2b2を嵌合させると、ホルダ2の磁石2aが、前記磁気検出素子の磁気検出面に対向するように配置され、ホルダ2の回動動作に伴う磁石2aの磁極変化を前記磁気検出素子によって検出することができる。また、本体部1とホルダ2とを同じ樹脂材によって構成することで、ホルダ2の摺動性を向上させている。
【0032】
磁気検出部3は、図3に示すように、例えば、ホールICなどの磁気検出素子パッケージ3aと電子部品3bとリード3c,3dとで構成されており、磁石2aの回動動作に伴う磁力変化を検出するものである。磁気検出素子パッケージ3aは、電極3a1を備えている。電極3a1は、磁気検出素子パッケージ3aの側面から突出した板状体であり、上下方向の厚みは、磁気検出素子パッケージ3aの厚みより薄い。磁気検出部3は、端子1aによって、電源供給や検出信号の伝達が行われる。
【0033】
磁気検出部3は、図示しない治具によって端子1a上で位置決めされ、電極3a1とリード3dを端子1aにレーザ溶接や抵抗溶接によって電気的に固定されている。磁気検出部3は、本体部1に内蔵されている。
【0034】
カバー4は、図1図2に示すように、POM等の樹脂材料からなる。カバー4は、本体部1に固定され、ホルダ2の脱落を防止するものである。カバー4は、第2回動支持部4aと、基部4bと、天板部4cと、第1、第2壁部4d、4eとを備えている。
【0035】
カバー4は、基部4b、天板部4c、第1、第2壁部4d、4eとで、柄杓形状である。
【0036】
第2回動支持部4aは、天板部4cに設けられている。第2回動支持部4aは、円筒形状をしており、その内周面が、第2回動部2b3の外周の摺動面と摺動する摺動受面である。第2回動支持部4aは、第2回動部2b3を回動可能に支持する。
【0037】
基部4bは、カバー4は本体部1と接していないが、本体部1の図示しない箇所に固定されている。なお、基部4bと本体部1との固定は、レーザ溶着などの適宜手段によって、行われる。
【0038】
天板部4cは、平板の円盤形状であり、この天板部4cの中央に、第2回動支持部4aを備えている。
【0039】
第1、第2壁部4d、4eは、分断されており、液面検出装置Fを上側から視認すると、円弧形状をしている。第1、第2壁部4d、4eが分断されている部分からフロートアーム8が露出しており、第1、第2壁部4d、4eがフロートアーム8の回動範囲を規制するストッパの機能を果たしている。なお、第1壁部4dの下端が、図示していないが、レーザ溶着などで適宜手段によって、本体部1に固定されている。
【0040】
図5図6に示すように、固定部材5は、本体固定部5aと、つば部5bと、コネクタ部5cとから主に構成されている。
【0041】
本体固定部5aは、本体部1に設けられたフック1dによって、本体部1を固定する。
【0042】
つば部5bは、本体固定部5aとコネクタ部5cが一体に形成されている。液面検出装置Fは、つば部5bによって、図示しない燃料タンクに取り付けられ、固定される。
【0043】
コネクタ部5cは、燃料タンク外に配置され、図示しない外部機器と電気的に接続するためのものである。
【0044】
接続端子5dは、ほぼ直角に折り曲げられ、つば部5bとコネクタ部5cにインサート成形されている。コネクタ部5c側の端部は端部5d1、本体固定部5a側の端部は端部5d2である。
【0045】
本体部1は、本体部1に設けられたスリット部12dと、固定部材5に設けられた第2突出部5fをガイドとして、溝部12cから露出している端子1aの端部1a1の接触面1a2に端部5d2の接触面5d3を当接させた後、フック1dによって固定部材5に固定され、固定部材5に設けられた第1突出部5eによって支持されている。
【0046】
このとき、図7図8に示すように、端部1a1はインサート成形によって接触面1a2以外の3方向(面1a3,1a4,1a5)を溝部12cに覆われている。また、接触面1a2は接続端子5dの接触面5d3に覆われているので、端子1aが燃料と接する面積を最小とすることができる。したがって、燃料を介して金属イオンが溶出してしまう量を小さくでき、電食が生じにくい。
【0047】
また、溝部12cの間に第2突出部5fを備えたことによって、隣り合う端子1aの端部1a1間の電気的距離を長くすることができ、電食の進行を抑えることができる。
【0048】
さらに、信号出力に用いる端子1aを中央に配置することによって、隣り合う端子1a間の電位差を小さくすることができ、電食の進行を抑えることができる。例えば、2つの電源線に5Vと0Vが印加され、その間に信号線を配置することで、端子間の電位差を小さくでき、また、もっとも大きな電位差の電源線を離して配置することができる。
【0049】
また、端部1a1の材質をリン青銅に錫メッキを施したもの、接続端子5dの材質を真鍮とするなど、電食が生じにくく、安価な構造が好適である。
【0050】
以上の説明は、本発明を例示するものであって、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更、変形が可能であることは言うまでもない。
【0051】
例えば、上述実施形態では、端子1aが板状の場合を例示したが、接触面1a2が平らであれば良く、形状は任意である。
【0052】
上述実施形態では、端子1aが3本の場合を例示したが、端子の本数は任意である。
【0053】
上述実施形態では、溝部12cの開口部を第2樹脂体12の裏面側に設ける場合を例示したが、表面側に設けても同様の効果が期待できる。
【0054】
また、上述実施形態では、磁気検出素子パッケージ3aと電子部品3bとをリード3cで連結したものであったが、磁気検出素子パッケージ3aと電子部品3bとをそれぞれ独立した部品としたものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、磁気検出素子を内蔵し、樹脂成形によって覆う液面検出装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 本体部(樹脂体)
1a 端子
1a1 端部
1a2 接触面
1a3 面
1a4 面
1a5 面
1b 第1回動支持部
1c ボス部
1d フック
2 ホルダ
2a 磁石
2b2 第1回動部
2b3 第2回動部
2b4 保持部
2b5 第1孔
3 磁気検出部
3a 磁気検出素子パッケージ
3a1 電極
3b 電子部品
3c リード
3d リード
4 カバー
4a 第2回動支持部
4b 基部
4c 天板部
4d 第1壁部
4e 第2壁部
5 固定部材
5a 本体固定部
5b つば部
5c コネクタ部
5d 接続端子
5d1 端部
5d2 端部
5d3 接触面
5e 第1突出部
5f 第2突出部
6 フロート
7 フロートアーム
11 第1樹脂体
11a 表面
11b 裏面
11c 側面
11d 側面
11e 突起
12 第2樹脂体
12a 表面
12b 裏面
12c 溝部
12d スリット部
F 液面検出装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8