【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するために、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品は、ガラス繊維強化樹脂成形品の全量に対し10〜90質量%の範囲のガラス繊維と、90〜10質量%の範囲の樹脂とを含有するガラス繊維強化樹脂成形品であって、該ガラス繊維は、ガラス繊維全量に対し52.0〜57.0質量%の範囲のSiO
2と、13.0〜17.0質量%の範囲のAl
2O
3と、15.0〜21.5質量%の範囲のB
2O
3と、2.0〜6.0質量%の範囲のMgOと、2.0〜6.0質量%の範囲のCaOと、1.0〜4.0質量%の範囲のTiO
2と、1.5質量%未満のF
2とを含み、かつ、Li
2O、Na
2O及びK
2Oの合計量が0.6質量%未満であ
り、Fe2O3、Cr2O3、ZrO2、MoO3、SO3及びCl2の合計量が0.4質量%未満であり、0.05〜0.15質量%の範囲のFe2O3を含む組成を備え、該ガラス繊維は、30〜5000μmの数平均繊維長を有することを特徴とする。
【0014】
本発明のガラス繊維強化樹脂成形品は、前記組成を備えるガラス繊維を含有することで、高い引張強度及び衝撃強さと、低い誘電率及び誘電正接とを兼ね備えることができる。
【0015】
本発明のガラス繊維強化樹脂成形品は、該ガラス繊維強化樹脂成形品の全量に対しガラス繊維の含有量が10質量%未満又は樹脂の含有量が90質量%を超えるときには、該ガラス繊維強化樹脂成形品において十分な引張強度及び衝撃強さを得ることができない。一方、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品は、該ガラス繊維強化樹脂成形品の全量に対しガラス繊維の含有量が90質量%を超えるか又は樹脂の含有量が10質量%未満であるときには、該ガラス繊維強化樹脂成形品の製造が困難となる。
【0016】
本発明のガラス繊維強化樹脂成形品は、成形品の強度と、成形品の製造容易性とを両立するという観点から、該ガラス繊維強化樹脂成形品の全量に対し20〜70質量%の範囲のガラス繊維と、80〜30質量%の範囲の樹脂とを含有することが好ましく、25〜60質量%の範囲のガラス繊維と、75〜40質量%の範囲の樹脂とを含有することがより好ましく、30〜50質量%の範囲のガラス繊維と、70〜50質量%の範囲の樹脂とを含有することがさらに好ましい。
【0017】
本発明のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維の全量に対するSiO
2の含有量が52.0質量%未満であると、誘電率が大きくなり過ぎるとともに、耐水性及び耐酸性が低下して、ガラス繊維及びガラス繊維強化樹脂成形品の劣化を引き起こす。一方、前記ガラス繊維において、ガラス繊維の全量に対するSiO
2の含有量が57.0質量%を超えると、紡糸時に粘度が高くなり過ぎて、繊維化が困難となる場合がある。
【0018】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するSiO
2の含有量は、52.5〜56.8質量%の範囲とすることが好ましく、53.0〜56.6質量%の範囲とすることがより好ましく、53.5〜56.5質量%の範囲とすることがさらに好ましく、53.8〜56.3質量%の範囲とすることが特に好ましく、54.0〜56.2質量%の範囲とすることが最も好ましい。
【0019】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するAl
2O
3の含有量が13.0質量%未満であると、分相を生じ易く、そのため耐水性が悪くなる。一方、ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するAl
2O
3の含有量が17.0質量%を超えると、液相温度が高くなるため作業温度範囲が狭くなってガラス繊維の製造が困難になる。
【0020】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するAl
2O
3の含有量は、13.3〜16.5質量%の範囲とすることが好ましく、13.7〜16.0質量%の範囲とすることがより好ましく、14.0〜15.5質量%の範囲とすることがさらに好ましく、14.3〜15.3質量%の範囲とすることが特に好ましく、14.5〜15.1質量%の範囲とすることが最も好ましい。
【0021】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するB
2O
3の含有量が15.0質量%未満であると、誘電率、誘電正接が大きくなり過ぎる。一方、前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するB
2O
3の含有量が21.5質量%を超えると、紡糸時にB
2O
3の揮発量が高く、ブッシングノズル付近へ付着するB
2O
3の汚れによるガラス繊維の切断がみられ、作業性、生産性において問題となる場合がある。さらに、均質なガラスを得ることができず、耐水性が悪くなり過ぎる場合がある。
【0022】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するB
2O
3の含有量は、15.5〜21.0質量%の範囲とすることが好ましく、16.0〜20.5質量%の範囲とすることがより好ましく、16.5〜20.0質量%の範囲とすることがさらに好ましく、17.0〜19.5質量%の範囲とすることが特に好ましく、17.5〜19.4質量%の範囲とすることが最も好ましい。
【0023】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するMgOの含有量が2.0質量%未満であると、脈理が増加し、B
2O
3の揮発量が多くなる。一方、前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するMgOの含有量が6.0質量%を超えると、分相性が強くなって耐水性が低下し、また誘電率、誘電正接が大きくなり過ぎる。
【0024】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するMgOの含有量は、2.5〜5.9質量%の範囲とすることが好ましく、2.9〜5.8質量%の範囲とすることがより好ましく、3.3〜5.7質量%の範囲とすることがさらに好ましく、3.6〜5.3質量%の範囲とすることが特に好ましく、4.0〜4.8質量%の範囲とすることが最も好ましい。
【0025】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するCaOの含有量が2.0質量%未満であると、溶融性が悪くなるとともに、耐水性が悪くなり過ぎる。一方、前記ガラス繊維おいて、ガラス繊維全量に対するCaOの含有量が6.0質量%を超えると、誘電率、誘電正接が大きくなり過ぎる。
【0026】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するCaOの含有量は、2.6〜5.5質量%の範囲とすることが好ましく、3.2〜5.0質量%の範囲とすることがより好ましく、3.7〜4.7質量%の範囲とすることがさらに好ましく、3.9〜4.5質量%の範囲とすることが特に好ましく、4.0〜4.4質量%の範囲とすることが最も好ましい。
【0027】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するTiO
2の含有量が1.0質量%未満であると、誘電正接を下げ、粘性を低下させ、初期溶融時における溶融分離を抑制し、炉表面で発生するスカムを減少させる効果が小さくなる。一方、前記ガラス繊維おいて、ガラス繊維全量に対するTiO
2の含有量が4.0質量%を超えると、分相を生じ易く、化学的耐久性が悪くなる。
【0028】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するTiO
2の含有量は、1.3〜3.0質量%の範囲とすることが好ましく、1.5〜2.5質量%の範囲とすることがより好ましく、1.6〜2.3質量%の範囲とすることがさらに好ましく、1.7〜2.1質量%の範囲とすることが特に好ましく、1.8〜2.0質量%の範囲とすることが最も好ましい。
【0029】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するF
2の含有量が1.5質量%以上であると、ガラスが分相しやすくなるとともに、ガラスの耐熱性が悪くなることがある。一方、前記ガラス繊維おいて、F
2を含むことでガラスの粘性が低下して溶融しやすくなるだけでなく、ガラスの誘電率及び特に誘電正接を低下させることができる。
【0030】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するF
2の含有量は、0.1〜1.4質量%の範囲とすることが好ましく、0.3〜1.3質量%の範囲とすることがより好ましく、0.4〜1.2質量%の範囲とすることがさらに好ましく、0.5〜1.1質量%の範囲とすることが特に好ましく、0.6〜1.0質量%の範囲とすることが最も好ましい。
【0031】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するLi
2O、Na
2O及びK
2Oの合計量が0.6質量%以上であると、誘電正接が高くなり過ぎ、また耐水性も悪くなる。一方、Li
2O、Na
2O及びK
2Oを含むことでガラスの粘性が低下し、ガラスを溶融しやすくなる。
【0032】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するLi
2O、Na
2O及びK
2Oの合計量の含有量は、0.02〜0.50質量%の範囲とすることが好ましく、0.03〜0.40質量%の範囲とすることがより好ましく、0.04〜0.30質量%の範囲とすることがさらに好ましく、0.05〜0.25質量%の範囲とすることが特に好ましい。
【0033】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維は、ガラス繊維の全量に対して0.4質量%未満の範囲で、前記した成分以外の不純物を含みうる。前記ガラス繊維が含みうる不純物としては、Fe
2O
3、Cr
2O
3、ZrO
2、MoO
3、SO
3、Cl
2等が挙げられる。これらの中でも、溶融ガラス中の輻射熱の吸収やガラス繊維の着色に影響するため、ガラス繊維全量に対するFe
2O
3の含有量は0.05〜0.15質量%の範囲とすることが好ましい。
【0034】
なお、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、前述した各成分の含有率の測定は、軽元素であるLiについてはICP発光分光分析装置を用いて、その他の元素は波長分散型蛍光X線分析装置を用いて行うことができる。
【0035】
測定方法としては、初めに、ガラス繊維強化樹脂成形品を、例えば、300〜650℃のマッフル炉で0.5〜24時間程度加熱する等して、有機物を分解する。次に、残ったガラス繊維を白金ルツボに入れ、電気炉中で1550℃の温度に6時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得る。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出してガラスカレットを作製した後、粉砕し粉末化する。軽元素であるLiについてはガラス粉末をアルカリおよび酸溶融にて分解した後、ICP発光分光分析装置を用いて定量分析する。その他の元素はガラス粉末をプレス機で円盤状に成形した後、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて定量分析する。これらの定量分析結果を酸化物換算して各成分の含有量及び全量を計算し、これらの数値から前述した各成分の含有率を求めることができる。
【0036】
本発明において、ガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維は、30〜5000μmの数平均繊維長を有する。該ガラス繊維の数平均繊維長が30μm未満であると、該ガラス繊維強化樹脂成形品において十分な引張強度及び衝撃強さを得ることができない。また、ガラス繊維強化樹脂成形品の製造過程で、ガラス繊維の折損が発生するので、該ガラス繊維の数平均繊維長を5000μm超とすることは困難である。
【0037】
前記ガラス繊維において、数平均繊維長は、100〜3000μmの範囲であることが好ましく、150〜2000μmの範囲であることがより好ましく、200〜1000μmの範囲であることがさらに好ましく、300〜500μmの範囲であることが特に好ましく、315〜450μmの範囲であることが最も好ましい。
【0038】
なお、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品中のガラス繊維の数平均繊維長の測定方法としては、初めに、該ガラス繊維強化樹脂成形品を、例えば、300〜650℃のマッフル炉で0.5〜24時間程度加熱する等して、有機物を分解する。次に、残ったガラス繊維をガラスシャーレに移し、アセトンを用いてシャーレの表面に分散させる。次に、表面に分散した、500本以上のガラス繊維について実体顕微鏡を用いて繊維長を測定し、数平均繊維長を算出する。
【0039】
本発明において、ガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維は、断面形状の短径に対する長径の比(長径/短径)が2.0〜10.0の範囲にあり、断面積を真円に換算したときの繊維径(以下、換算繊維径ということもある)が3.0〜35.0μmの範囲にある非円形断面を備えることが好ましい。ガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維がこのような断面を備える場合、ガラス繊維が円形断面を備える場合と比較して、組成以外は同一の条件でEガラス繊維を用いたガラス繊維強化樹脂成形品の引張強度及びノッチ付きシャルピー衝撃強さを基準とした、引張強度及びノッチ付きシャルピー衝撃強さの向上率が極めて高くなる。
【0040】
前記ガラス繊維において、断面形状の短径に対する長径の比(長径/短径)は、ガラス繊維強化樹脂成形品の高い引張強度及びノッチ付きシャルピー衝撃強さと、ガラス繊維の製造容易性との両立の観点から、2.2〜6.0の範囲であることが好ましく、3.2〜4.5の範囲であることがより好ましい。なお、ガラス繊維が複数本のガラスフィラメントが集束されて形成される場合、ガラス繊維の断面形状は、ガラス繊維を形成するガラスフィラメントの断面形状を意味する。
【0041】
また、前記ガラス繊維において、換算繊維径は、ガラス繊維強化樹脂成形品の高い引張強度及びノッチ付きシャルピー衝撃強さと、ガラス繊維又はガラス繊維強化樹脂成形品を製造する際の製造容易性との両立の観点から、6.0〜20.0μmの範囲であることが好ましく、6.5〜16.0μmであることがより好ましい。なお、ガラス繊維が複数本のガラスフィラメントが集束されて形成される場合、ガラス繊維の繊維径は、ガラス繊維を形成するガラスフィラメントの繊維径を意味する。
【0042】
また、前記ガラス繊維において、非円形の形状としては、ガラス繊維強化樹脂成形品を製造する際の流動性に優れることから、繭形、楕円形又は長円形(長方形の両端に半円状の形状を付けたもの、あるいはそれに類似した形状をいう)が好ましく、長円形がより好ましい。
【0043】
なお、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品は、前記非円形断面を備えるガラス繊維と円形断面を備えるガラス繊維との両方を含むことができる。前記非円形断面を備えるガラス繊維と円形断面を備えるガラス繊維との両方を含む場合、例えば、前記非円形断面ガラス繊維の含有率(質量%)に対する円形断面ガラス繊維の含有率(質量%)の比(円形断面を備えるガラス繊維(質量%)/非円形断面を備えるガラス繊維(質量%))は、0.1〜1.0の範囲とすることができる。
【0044】
本発明において、ガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維は、TiO
2の含有率(質量%)に対するB
2O
3の含有率(質量%)の比(B
2O
3(質量%)/TiO
2(質量%))が9.6〜11.4の範囲である組成を備えることが好ましい。
【0045】
前記ガラス繊維において、TiO
2の含有率(質量%)に対するB
2O
3の含有率(質量%)の比は、9.8〜10.8の範囲であることがより好ましく、10.0〜10.4の範囲であることがさらに好ましい。
【0046】
本発明のガラス繊維強化樹脂成形品は、TiO
2の含有率(質量%)に対するB
2O
3の含有率(質量%)の比が前記範囲を備えるガラス繊維を含有することで、ガラス溶融時や紡糸時の生産性を高く維持しつつ、低い誘電率及び誘電正接を兼ね備えることができる。