(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る音響システム10の構成図である。
図1に例示される通り、第1実施形態の音響システム10は、情報処理装置20と電波検出装置30と再生装置40と複数(N個)の収音装置50_1〜50_Nと複数(N個)の受信装置60_1〜60_Nとを具備するワイヤレスマイクロホンシステムであり、演奏会または講演会等のイベントが開催されるホール等の空間に設置される。第1実施形態の音響システム10は移動可能である。すなわち、任意の場所に設置された状態で使用されて使用後は他の場所に移動される。電波検出装置30とN個の受信装置60_1〜60_Nとは、例えばLAN(Local Area Network)等の通信網を介して情報処理装置20と通信可能である。また、N個の収音装置50_1〜50_NとN個の受信装置60_1〜60_Nとは1対1に対応する。
【0008】
任意の1個の収音装置50_n(n=1〜N)は、音声または楽音等の各種の音の波形を表す音響信号X_nを無線により送信する携帯型のワイヤレスマイクロホンである。具体的には、
図2に例示される通り、収音により音響信号X_nを生成する収音部52と、収音部52が生成した音響信号X_nを無線で送信する送信部54とを具備する収音装置50_nが利用される。収音装置50_nの具体的な形態は任意であるが、例えば、収音部52と送信部54とが別体で構成されて有線または無線で相互に接続されたボディパック型、または、収音部52と送信部54とを単体の筐体に収容したハンドヘルド型が好適である。また、
図3に例示される通り、電気弦楽器等の電気楽器56が生成した音響信号X_nを無線で送信する送信部54を具備する収音装置50_nを利用することもできる。各収音装置50_nが音響信号X_nの送信に使用する電波の周波数帯域(以下「使用帯域」という)B_nは、例えば利用者からの指示に応じて変更される。
【0009】
図1の各受信装置60_nは、当該受信装置60_nに対応する収音装置50_nが送信した音響信号X_nを受信する。
図4は、任意の1個の受信装置60_nの構成図である。
図4に例示される通り、第1実施形態の受信装置60_nは、受信部62と制御部64と復調部66とを具備する。受信部62は、例えば周囲の電波を受信するアンテナを含んで構成され、電波強度を表す受信信号を生成する。制御部64は、使用帯域B_nを復調部66に指示する。受信装置60_nの制御部64は、当該受信装置60_nに対応する収音装置50_nと共通の使用帯域B_nを復調部66に指示する。復調部66は、受信部62が生成した受信信号のうち制御部64から指示された使用帯域B_n内の信号成分を抽出および復調することで音響信号X_nを生成する。各受信装置60_nの復調部66が生成した音響信号X_nは再生装置40に供給される。
【0010】
再生装置40は、相異なる受信装置60_nから供給されるN系統の音響信号X_1〜X_Nに応じた音を再生する。第1実施形態の再生装置40は、音響処理装置42と放音装置44とを含んで構成される。音響処理装置42は、N系統の音響信号X_1〜X_Nを加算するミキサである。音響処理装置42が各音響信号X_nの音量または周波数特性を調整する構成、または、音響処理装置42が各音響信号X_nに各種の音響効果を付与する構成も採用され得る。放音装置44は、音響処理装置42による処理後の音響信号に応じた音波を放射する。
【0011】
情報処理装置20は、N個の使用帯域B_1〜B_Nの各々を設定する。具体的には、情報処理装置20は、相互に重複しない(さらに詳細には、各使用帯域B_nの電波が相互に干渉しない)ようにN個の使用帯域B_1〜B_Nを設定する。
図5は、情報処理装置20の構成図である。
図5に例示される通り、第1実施形態の情報処理装置20は、制御装置22と記憶装置24と表示装置26と操作装置28とを具備するコンピュータシステムで実現される。例えばパーソナルコンピュータ等の情報機器が情報処理装置20として利用され得る。
【0012】
制御装置22は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む処理回路であり、情報処理装置20の全体を統括的に制御する。記憶装置24は、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体等の公知の記録媒体で構成され、制御装置22が実行するプログラムと制御装置22が使用する各種のデータとを記憶する。なお、同種または異種の複数の記録媒体で記憶装置24を実現することも可能である。
【0013】
表示装置26(例えば液晶表示パネル)は、制御装置22による制御のもとで各種の画像を表示する。操作装置28は、利用者からの指示を受付ける入力機器であり、例えば利用者が操作する複数の操作子を含んで構成される。例えば、利用者が操作可能な複数の操作子、または、表示装置26の表示面に対する接触を検知するタッチパネルが、操作装置28として好適に利用される。
【0014】
ところで、音響システム10が設置される場所には、音響システム10以外の外部機器から放射される電波(以下「妨害電波」という)が存在し得る。例えば、音響システム10の周囲で使用される電子機器や他の音響システム等の外部機器が放射する妨害電波が各収音装置50_nまたは各受信装置60_nの近傍に到達し得る。第1実施形態の情報処理装置20は、音響システム10が使用される時間および場所において推定される妨害電波の周波数帯域を回避するようにN個の使用帯域B_1〜B_Nを設定する。使用帯域B_nの設定には、記憶装置24に記憶された関係情報Zが使用される。関係情報Zは、妨害電波の過去の発生の傾向を表す情報である。
【0015】
音響システム10に影響する妨害電波の状態(以下「電波状態」という)は、音響システム10が使用される時間および場所に応じて相違し得る。他方、特定の場所では外部機器が定期的に使用される可能性が高いという現実的な傾向を考慮すると、特定の時間および場所における電波状態は、過去の同様の時間における当該場所での電波状態に近似する、という傾向が想定される。すなわち、特定の場所での電波状態は、時間帯が共通するならば日付が相違する場合でも相互に近似し得る。例えば、音響システム10が設置される場所の周囲において土曜日の18時から19時という時間帯で定期的に演奏会等のイベントが開催される場合を想定すると、日付が相違する場合でも当該時間帯では同様の妨害電波が観測される可能性が高い。以上の事情を考慮して、第1実施形態の関係情報Zは、過去の電波状態の観測結果から特定の時間および場所について予想される電波状態を表す情報である。
【0016】
図6は、関係情報Zの模式図である。
図6に例示される通り、第1実施形態の関係情報Zは、複数の条件情報Ca(Ca1,Ca2,…)の各々と複数の電波情報W(W1,W2,…)の各々とを相互に対応させたデータテーブルである。電波情報Wは、電波状態を表す情報である。第1実施形態では、妨害電波の周波数特性を電波状態として表す電波情報Wを例示する。周波数特性は、例えば周波数スペクトル(例えば振幅スペクトルまたはパワースペクトル)として表現され得る。
【0017】
関係情報Zにおいて任意の1個の電波情報Wに対応する条件情報Caは、当該電波情報Wが示す電波状態が観測された条件を示す情報である。
図6に例示される通り、第1実施形態の条件情報Caは、時間情報Ta(Ta1,Ta2,…)と位置情報La(La1,La2,…)とを含んで構成される。時間情報Taは、電波情報Wが表す電波状態が観測された時間(具体的には時間帯)を示す情報である。例えば特定の曜日における1個の時間帯(例えば土曜日の18時から19時)が時間情報Taで指定される。また、特定の曜日、日付または月を時間情報Taにより指定することも可能である。位置情報Laは、電波情報Wが表す電波状態が観測された位置を示す情報である。例えば、経度および緯度,住所,施設名称等の情報が位置情報Laの好適例である。国名、都道府県名、地図上に区画された特定の範囲等を位置情報Laにより指定することも可能である。特定の場所および時間において妨害電波を過去に観測した結果を利用して電波情報Wが生成される。以上の説明から理解される通り、任意の1個の条件情報Caに対応する電波情報Wが示す電波状態は、当該条件情報Caが示す時間的および位置的な条件のもとで観測される可能性が高い妨害電波の電波状態に相当する。
【0018】
図5に例示される通り、第1実施形態における情報処理装置20の制御装置22は、記憶装置24に記憶されたプログラムを実行することで、N個の使用帯域B_1〜B_Nを設定するための複数の要素(条件取得部72,状態推定部74,周波数設定部76および解析処理部78)を実現する。なお、制御装置22の機能を複数の装置に分散した構成、または、制御装置22の機能の一部を専用の電子回路が実現する構成も採用され得る。
【0019】
条件取得部72は、音響システム10の使用条件を示す条件情報Cbを取得する。第1実施形態の条件情報Cbは、音響システム10が使用される時間を示す時間情報Tbと、音響システム10が使用される場所を示す位置情報Lbとを含んで構成される。第1実施形態では、音響システム10が実際に使用される時間および位置を、操作装置28の操作により利用者が情報処理装置20に指示する。条件取得部72は、利用者が指示した時間を示す時間情報Tbと、利用者が指示した位置を示す位置情報Lbとを含む条件情報Cbを生成する。なお、条件情報Cbの生成方法は以上の例示に限定されない。例えば、計時機器が計時する現在時刻を示す時間情報Tbを生成する構成、または、例えばGPS(Global Positioning System)を利用した位置検出機能により検出された位置を示す位置情報Laを生成する構成も採用され得る。
【0020】
状態推定部74は、記憶装置24に記憶された関係情報Zを利用して、条件取得部72が取得した条件情報Cbに応じた電波情報Wを特定する。具体的には、状態推定部74は、条件情報Cbの時間情報Tbに合致または近似する時間情報Taと、条件情報Cbの位置情報Lbに合致または近似する位置情報Laとを含む条件情報Caを関係情報Zから検索し、当該条件情報Caに対応する電波情報Wを特定する。すなわち、状態推定部74は、音響システム10が実際に使用される時間および場所において存在する可能性が高い妨害電波の電波状態を表す電波情報Wを特定する。以上の説明から理解される通り、状態推定部74は、音響システム10が実際に使用される状況での妨害電波の電波状態を推定する要素として機能する。
【0021】
周波数設定部76は、状態推定部74が特定した電波情報Wを利用してN個の使用帯域B_1〜B_Nを設定する。
図7は、周波数設定部76が各使用帯域B_nを設定する動作の説明図である。状態推定部74が特定した電波情報Wが示す周波数特性(周波数スペクトル)Fが
図7には図示されている。
【0022】
図7に例示される通り、音響システム10が使用可能な周波数帯域は、所定の帯域幅を単位として複数の帯域(以下「候補帯域」という)Bcに区画される。周波数設定部76は、状態推定部74が特定した電波情報Wが示す周波数特性Fにおいて電波強度が所定の閾値αを下回る複数の候補帯域BcからN個の使用帯域B_1〜B_Nを選択する。外部機器の妨害電波が存在する可能性が高い周波数を含む候補帯域Bcでは、周波数特性Fにおける電波強度が閾値αを上回る。そこで、音響システム10の実際の使用状況のもとで妨害電波が存在する可能性が高い候補帯域Bcを除外して、N個の使用帯域B_1〜B_Nが設定される。
【0023】
図5の周波数設定部76は、以上に例示した処理で設定した各使用帯域B_nを受信装置60_nに指示する。受信装置60_nの制御部64は、情報処理装置20から指示された使用帯域B_nを復調部66に指示する。また、周波数設定部76は、N個の使用帯域B_1〜B_Nを表示装置26に表示することで利用者に提示する。利用者は、表示装置26に表示された各使用帯域B_nを収音装置50_nに指示する。収音装置50_nの送信部54は、使用帯域B_nの電波を利用して音響信号X_nを受信装置60_nに送信する。以上の説明から理解される通り、音響システム10の実際の使用状況のもとで妨害電波が存在する可能性が高い候補帯域Bcを回避するように、各受信装置60_nおよび各収音装置50_nの使用帯域B_n(B_1〜B_N)が設定される。
【0024】
図8は、情報処理装置20がN個の使用帯域B_1〜B_Nを設定する処理(以下「設定処理」という)のフローチャートである。例えば操作装置28に対する操作により利用者が音響システム10の使用の開始を指示した場合に
図8の設定処理が開始される。
【0025】
音響システム10の使用の開始を指示すると、利用者は、操作装置28を適宜に操作することで、音響システム10を使用する時間および場所を指示する。条件取得部72は、利用者が指示した時間を示す時間情報Tbと利用者が指示した場所を示す位置情報Lbとを含む条件情報Cbを生成する(Sa1)。状態推定部74は、条件情報Cbに応じた電波情報Wを特定する(Sa2)。具体的には、状態推定部74は、条件情報Cbの時間情報Tbに合致または近似する時間情報Taと位置情報Lbに合致または近似する位置情報Laとを含む条件情報Caを関係情報Zから検索し、当該条件情報Caに対応する電波情報Wを特定する(Sa2)。周波数設定部76は、状態推定部74が特定した電波情報Wを利用してN個の使用帯域B_1〜B_Nを設定する(Sa3)。そして、周波数設定部76は、各使用帯域B_nを各受信装置60_nに指示するとともに(Sa4)、各使用帯域B_nを表示装置26に表示させる(Sa5)。なお、各使用帯域B_nの指示(Sa4)と表示(Sa5)との先後は任意である。
【0026】
以上の説明から理解される通り、第1実施形態では、電波状態を示す電波情報Wと条件情報Caとの関係を示す関係情報Zを利用して、音響システム10の実際の使用状況を示す条件情報Cbに対応する電波情報Wが特定される。すなわち、音響システム10の実際の使用状況のもとで想定される電波状態が推定される。したがって、電波情報Wが示す電波状態を参照することで、音響システム10が使用する電波が外部機器の妨害電波と干渉する可能性を低減できるという利点がある。また、実際に電波の干渉が検出された場合に各受信機の周波数を変更する特許文献2の構成と比較して、妨害電波に起因した干渉を未然に防止できるという利点もある。第1実施形態では特に、各収音装置50_nおよび各受信装置60_nの使用帯域B_nが電波情報Wに応じて設定されるから、音響システム10が使用する電波が外部機器の妨害電波と干渉する可能性を有効に低減できるという利点がある。
【0027】
前述の通り、関係情報Zには妨害電波の過去の観測結果が反映される。
図1の電波検出装置30は、関係情報Zの生成のために電波状態を検出する測定装置である。電波検出装置30による電波状態の検出は、各収音装置50_nと各受信装置60_nとが通信していない状態で実行される。すなわち、電波検出装置30は、音響システム10が設置される場所に存在する妨害電波の電波状態を観測する。
【0028】
図9は、電波検出装置30の構成図である。
図9に例示される通り、第1実施形態の電波検出装置30は、電波受信部32と周波数解析部34とを具備する。電波受信部32は、例えば周囲の電波を受信するアンテナを含んで構成され、電波強度を表す観測信号を生成する。
図9の周波数解析部34は、電波受信部32が受信した電波の周波数特性fを電波状態として生成する。具体的には、周波数解析部34は、高速フーリエ変換等の周波数解析を観測信号に対して実行することで周波数特性fを算定するスペクトルアナライザである。電波検出装置30(周波数解析部34)が生成した周波数特性fは、周波数特性fが観測された時間(以下「観測時間」という)とともに情報処理装置20に通知される。電波検出装置30による周波数特性fの生成は複数回にわたり反復的に実行される。
【0029】
図5に例示される通り、第1実施形態における情報処理装置20の制御装置22は、解析処理部78として機能する。解析処理部78は、電波検出装置30が順次に観測する電波状態(周波数特性f)を利用して関係情報Zを生成または更新する。
図5に例示される通り、第1実施形態の解析処理部78は、状態取得部782と情報生成部784とを含んで構成される。
【0030】
状態取得部782は、電波検出装置30が観測した電波状態(周波数特性f)を取得する。具体的には、
図10に例示される通り、状態取得部782は、周波数特性fと観測時間とを電波検出装置30から取得し(Sb1)、周波数特性fと観測時間とを記憶装置24に格納する(Sb2)。電波検出装置30による周波数特性fの観測毎に以上の処理が実行される。すなわち、電波状態を取得する
図10の処理(電波状態を取得するステップ)が時間軸上の複数の時点において実行され、相異なる観測時間に対応する複数の周波数特性fが記憶装置24に記憶される。なお、電波検出装置30による観測の直後に周波数特性fが情報処理装置20に通知される構成では、状態取得部782が電波検出装置30から周波数特性fを受信した時刻を観測時間として周波数特性fとともに記憶装置24に記憶することも可能である。
【0031】
図5の情報生成部784は、状態取得部782が以上の手順で取得した電波状態を利用して関係情報Zを生成する。具体的には、情報生成部784は、情報取得部が取得した電波状態に応じた電波情報Wと、当該電波状態が観測された条件を示す条件情報Caとの関係を表す関係情報Zを生成する。
【0032】
図11は、情報生成部784が関係情報Zを生成する処理(以下「解析処理」という)のフローチャートである。例えば操作装置28に対する利用者からの指示を契機として解析処理が開始される。
【0033】
解析処理を開始すると、情報生成部784は、時間情報Taと位置情報Laとを含む条件情報Caを生成する(Sc1)。具体的には、情報生成部784は、周波数特性fが観測された時間帯を示す時間情報Taを生成する。例えば、
図10のステップSb1で取得した観測時間から時間情報Taを生成することが可能である。また、情報生成部784は、音響システム10が設置された場所を示す位置情報Laを取得する。第1実施形態では、操作装置28に対する操作で利用者が指示した位置(すなわち電波状態の観測位置)を示す位置情報Laが生成される。なお、例えばGPS(Global Positioning System)を利用した位置検出機能が情報処理装置20に搭載された構成では、位置検出機能で検出された位置を示す位置情報Laを生成することも可能である。
【0034】
情報生成部784は、記憶装置24に記憶された複数の周波数特性fから電波情報Wを生成する(Sc2)。第1実施形態の情報生成部784は、時間情報Taが示す時間帯に観測時間が内包される複数の周波数特性fから電波情報Wを生成する。具体的には、情報生成部784は、複数の周波数特性fが反映された周波数特性Fを示す電波情報Wを生成する。周波数特性Fは、例えば複数の周波数特性fの平均である。
【0035】
情報生成部784は、ステップSc1で生成した条件情報CaとステップSc2で生成した電波情報Wとの対応を示す関係情報Zを生成する(Sc3)。すなわち、過去の代表的な電波状態を示す電波情報Wと、当該電波状態の観測条件(時間,位置)を示す条件情報Caとの関係が関係情報Zにより規定される。
【0036】
以上に説明した通り、第1実施形態では、音響システム10が設置される場所の電波状態を示す電波情報Wと、当該電波状態が観測された時間および場所を示す条件情報Caとの関係を示す関係情報Zが生成される。したがって、音響システム10の実際の使用状況で想定される電波状態を推定することが可能である。第1実施形態では特に、複数の時点における電波状態(具体的には周波数特性f)が電波情報Wに反映されるから、音響システム10の使用状況で想定される電波状態を高精度に推定できるという利点がある。
【0037】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下に例示する各構成において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0038】
図12は、第2実施形態における通信システムの構成図である。
図12に例示される通り、第2実施形態の通信システムは、複数の音響システム10(10a,10b)と管理装置12とを具備する。複数の音響システム10の各々の情報処理装置20は、インターネット等の通信網16を介して管理装置12と通信可能である。なお、実際には多数の音響システム10が通信システムに包含され得るが、
図12では任意の2個の音響システム10aおよび音響システム10bのみを便宜的に図示した。音響システム10aと音響システム10bとは、相互に近接した別個の場所で使用され得る。例えば、単体の施設内の相異なる階層に音響システム10aと音響システム10bとが設置された状況が想定される。音響システム10aおよび音響システム10bは、第1実施形態の音響システム10と同様の構成である。
【0039】
管理装置12は、複数の音響システム10の各々の動作を管理するサーバ(例えばウェブサーバ)であり、制御装置122と記憶装置124とを具備するコンピュータシステムで実現される。制御装置122は、例えばCPUを含む処理回路であり、管理装置12の全体を統括的に制御する。記憶装置124は、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体等の公知の記録媒体で構成され、制御装置122が実行するプログラムと制御装置122が使用する各種のデータとを記憶する。なお、同種または異種の複数の記録媒体で記憶装置124を実現することも可能である。
【0040】
音響システム10aの情報処理装置20は、解析処理部78が生成した関係情報Zを管理装置12に送信する(Sd1)。例えば操作装置28に対する利用者からの指示を契機として関係情報Zの送信が実行される。管理装置12の制御装置122は、音響システム10aから受信した関係情報Zを記憶装置124に格納する。複数の音響システム10から順次に送信された複数の関係情報Zが記憶装置124に記憶される。
【0041】
他方、音響システム10bの情報処理装置20は、関係情報Zの要求(以下「情報要求」という)Rを管理装置12に送信する(Sd2)。例えば操作装置28に対する利用者からの指示を契機として情報要求Rの送信が実行される。情報要求Rを受信すると、管理装置12の制御装置122は、記憶装置124から関係情報Zを取得して要求元の音響システム10bに送信する(Sd3)。音響システム10bの情報処理装置20は、管理装置12から受信した関係情報Zを記憶装置24に格納する。音響システム10bの情報処理装置20は、管理装置12から受信した関係情報Zを利用して
図8の設定処理を実行することで、音響システム10bの各収音装置50_nおよび各受信装置60_nが使用するN個の使用帯域B_1〜B_Nを設定する。設定処理の内容は第1実施形態と同様である。以上の説明から理解される通り、特定の音響システム10の情報処理装置20が生成した関係情報Zが他の音響システム10により共用される。
【0042】
前述の通り、音響システム10aと音響システム10bとは相異なる場所に設置される。したがって、音響システム10bの状態推定部74は、音響システム10bの場所とは相違する場所(具体的には音響システム10aが設置された場所)について生成された関係情報Zを利用して電波情報Wを特定することになる。しかし、音響システム10aと音響システム10bとが相互に近接した場所にある状態では、妨害電波の電波状態も相互に近似し得る。したがって、実際には音響システム10aの場所で妨害電波を観測した結果から生成された関係情報Zを、別個の場所の音響システム10bにて使用した場合でも、音響システム10bの場所に存在する妨害電波の周波数帯域を回避するようにN個の使用帯域B_1〜B_Nを設定することが可能である。以上の説明の通り、第2実施形態では、音響システム10aが生成した関係情報Zが管理装置12を介して音響システム10bに提供されるから、音響システム10bは妨害電波を観測する必要がない。すなわち、音響システム10bから電波検出装置30を省略できるという利点がある。
【0043】
他方、音響システム10aが設置された場所での観測結果を利用して生成された関係情報Zを当該音響システム10aが利用する第1実施形態の構成によれば、当該場所に存在する妨害電波の電波状態を高精度に推定できるという利点がある。
【0044】
<変形例>
以上に例示した各態様は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2個以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0045】
(1)前述の各形態では、周波数特性Fを表す電波情報Wを例示したが、電波情報Wの内容は以上の例示に限定されない。例えば、
図13に例示される通り、複数の候補帯域Bc(Bc1,Bc2,…)の各々について電波強度が閾値αを上回るか否か(すなわち使用帯域B_nとしての利用の可否)を示す電波情報Wを利用することも可能である。
図13の電波情報Wは、周波数特性Fを示す第1実施形態の電波情報Wと比較してデータ量が小さいという利点がある。
【0046】
(2)前述の各形態では、情報処理装置20および受信装置60_nとは別個に電波検出装置30を設置した構成を例示したが、電波検出装置30の機能を情報処理装置20または1個の受信装置60_nに搭載した構成も採用され得る。また、前述の各形態では、受信装置60_nとは別個に情報処理装置20を設置した構成を例示したが、情報処理装置20の機能を1個の受信装置60_nに搭載した構成も採用され得る。以上の説明から理解される通り、情報処理装置20および電波検出装置30が単体の装置として設置されるか、受信装置60_nと一体の装置として実現されるかは、本発明において不問である。
【0047】
(3)前述の各形態では、複数の条件情報Caの各々に電波情報Wを対応させたデータテーブルを関係情報Zとして例示したが、関係情報Zの形式は以上の例示に限定されない。例えば、条件情報Caと電波情報Wとの関係を表す統計モデルを関係情報Zとして生成することも可能である。関係情報Zが表す統計モデルは、例えば、条件情報Caと電波情報Wとの多数組を学習データとして利用した機械学習で生成され、条件情報Caと電波情報Wとの相関に観測される傾向のもとで、音響システム10の実際の使用状況を示す条件情報Cbに対して最尤の電波情報Wを生成する数理モデルである。具体的には、サポートベクターマシン(SVM:Support Vector Machine)またはニューラルネットワーク(NN:Neural Network)等の種々のパターン認識モデルを規定する情報が関係情報Zとして好適に利用される。
【0048】
(4)前述の各形態では、電波検出装置30が生成した全部の周波数特性fを電波情報Wに反映させたが、電波検出装置30が妨害電波を観測した複数の時点のうち一部の時点について生成された周波数特性fを利用して電波情報Wを生成することも可能である。例えば、状態取得部782は、K個(Kは2以上の自然数)の時点の各々について電波検出装置30から周波数特性fを取得する。他方、情報生成部784は、K個の時点のうち一部の時点(例えばK個の時点から周期的に抽出された時点)について状態取得部782が取得した周波数特性fから電波情報Wを生成する。
【0049】
(5)前述の各形態では、条件情報Caが時間情報Taと位置情報Laとを含む構成を例示したが、時間情報Taおよび位置情報Laの少なくとも一方は条件情報Caから省略され得る。条件情報Cbについても同様に、時間情報Taと位置情報Laとの少なくとも一方を省略することが可能である。
【0050】
(6)前述の各形態では、情報処理装置20から各受信装置60_nに使用帯域B_nを指示する構成を例示したが、表示装置26に表示された各使用帯域B_nを確認した利用者が、受信装置60_nに対して手動で使用帯域B_nを指示および設定することも可能である。また、前述の各形態では、収音装置50_nの使用帯域B_nを利用者が手動で設定する構成を例示したが、情報処理装置20から各収音装置50_nに対して使用帯域B_nを指示することも可能である。例えば、使用帯域B_nの指示が情報処理装置20から受信装置60_nを介して無線で収音装置50_nに指示される。
【0051】
(7)前述の各形態で例示した通り、情報処理装置20は、制御装置22とプログラムとの協働で実現される。本発明の第1態様に係るプログラムは、音響信号を無線により受信する1以上の受信装置を含む音響システムが設置される場所の電波状態を取得する処理と、前記電波状態が観測された時間を示す時間情報と前記音響システムの位置を示す位置情報との少なくとも一方を含む条件情報と、前記電波状態を示す電波情報との関係を示す関係情報を生成する処理とをコンピュータに実行させる。また、本発明の第2態様に係るプログラムは、音響信号を無線により受信する1以上の受信装置を含む音響システムが使用される時間を示す時間情報と当該音響システムの位置を示す位置情報との少なくとも一方を含む条件情報を生成する処理と、電波状態を示す電波情報と条件情報との関係を示す関係情報を利用して前記条件情報に応じた電波情報を特定する処理とをコンピュータに実行させる。
【0052】
以上に例示したプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体を包含し得る。なお、非一過性の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く任意の記録媒体を含み、揮発性の記録媒体を除外するものではない。また、通信網を介した配信の形態でプログラムをコンピュータに提供することも可能である。
【0053】
(8)以上に例示した形態から、例えば以下の態様が把握される。
<態様1>
本発明の好適な態様(態様1)に係る電波状態解析方法は、音響信号を無線により受信する1以上の受信装置を含む音響システムが設置される場所の電波状態を取得するステップと、前記電波状態が観測された時間を示す時間情報と前記音響システムの位置を示す位置情報との少なくとも一方を含む条件情報と、前記電波状態を示す電波情報との関係を示す関係情報を生成するステップとを含む。以上の態様では、音響システムが設置される場所の電波状態を示す電波情報と、当該電波状態が観測された時間および位置を示す条件情報との関係を示す関係情報が生成される。したがって、音響システムの実際の使用状況で想定される電波状態を推定することが可能である。
<態様2>
態様1の好適例(態様2)において、前記電波状態を取得するステップは、相異なる複数の時点において実行され、前記関係情報を生成するステップにおいては、前記条件情報と、前記複数の時点について取得した前記電波状態を示す前記電波情報との関係を示す前記関係情報を生成する。以上の態様では、複数の時点における電波状態が電波情報に反映されるから、音響システムの使用状況で想定される電波状態を高精度に推定できるという利点がある。
<態様3>
態様2の好適例(態様3)では、前記関係情報を生成するステップにおいて、前記条件情報と、前記複数の時点のうち一部の時点について取得した前記電波状態を示す前記電波情報との関係を示す前記関係情報を生成する。
<態様4>
本発明の好適な態様(態様4)に係る電波状態解析方法は、音響信号を無線により受信する1以上の受信装置を含む音響システムが使用される時間を示す時間情報と当該音響システムの位置を示す位置情報との少なくとも一方を含む条件情報を生成するステップと、電波状態を示す電波情報と条件情報との関係を示す関係情報を利用して前記条件情報に応じた電波情報を特定するステップとを含む。以上の構成では、電波状態を示す電波情報と音響システムの使用条件を示す条件情報との関係を示す関係情報を利用して、音響システムの実際の使用状況に対応する電波情報が特定される。電波情報が示す電波状態を参照することで、音響システムの使用する電波が外部機器の妨害電波と干渉する可能性を低減できるという利点がある。
<態様5>
態様4の好適例(態様5)では、前記電波情報を特定するステップで特定した電波情報を利用して、前記音響システムの受信装置が使用する周波数を設定する。以上の態様によれば、受信装置が使用する周波数が電波情報に応じて設定されるから、音響システムが使用する電波が外部機器の妨害電波と干渉する可能性を有効に低減できるという利点がある。
<態様6>
態様5の好適例(態様6)では、前記電波情報を特定するステップにおいて、前記音響システムが設置される場所について生成された前記関係情報を利用して前記電波情報を特定する。以上の態様では、音響システムが設置される場所について生成された関係情報が電波情報の特定に利用される。したがって、音響システムの場所における妨害電波の電波状態を高精度に推定できるという利点がある。
<態様7>
態様4または態様5の好適例(態様7)では、前記電波情報を特定するステップにおいて、前記音響システムが設置される場所の近傍の他の場所(例えば当該音響システムから500m以内等の特定の範囲内の場所、または、当該音響システムが設置された施設に隣接する施設など)について生成された前記関係情報を利用して前記電波情報を特定する。以上の態様では、音響システムが設置される場所の近傍の他の場所について生成された関係情報が電波情報の特定に利用される。したがって、音響システムが妨害電波の電場状態を検出する必要がないという利点がある。
<態様8および態様9>
態様1から態様7の何れかの好適例(態様8)において、前記電波情報は、周波数特性を表す。また、態様1から態様7の何れかの好適例(態様9)において、前記電波情報は、電波強度が閾値を上回るか否かを周波数帯域毎に示す情報である。以上の態様では、電波情報のデータ量を容易に削減できるという利点がある。