(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゲル化剤Aが、下記の一般式(G1)及び(G2)で表される化合物のうちの少なくとも1つの化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の活性光線硬化型インクジェットインク。
一般式(G1):R1−CO−R2
一般式(G2):R3−COO−R4
(R1〜R4は、それぞれ独立に、炭素数12〜26の直鎖部分を含み、さらに分岐部分を含んでもよいアルキル基を表す。)
前記光重合性化合物が、分子量が280〜1500、ClogP値が4.0〜7.0を満たす(メタ)アクリレートである光重合性化合物Aをインク全質量に対して10質量%〜40質量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の活性光線硬化型インクジェットインク。
顔料分散剤をさらに含有し、前記顔料分散剤が、3級アミンを有するくし型ブロックコポリマーを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク。
白色インクとしての請求項1〜4のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインクをインク吐出用記録ヘッドから吐出して記録媒体上に付着させる工程、および付着した前記活性光線硬化型インクジェットインクに活性光線を照射する工程を含むことを特徴とするインクジェット画像形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者が鋭意検討したところ、記録媒体に付着した後の白色インクのインク表面の平滑性が低くなると活性光線の光透過率が低くなり、白色インクに対する活性光線の光透過率が低くなると白色インクの硬化性も低くなることが見出された。また、直鎖部分の炭素数が12〜26のアルキル鎖を含むゲル化剤Aを含有する白色インクではインク表面の平滑性がより低くなり、白色インクの硬化性がより低くなることが見いだされた。
【0016】
つまり、白色インクが記録媒体に付着したときのインク表面の平滑性が低く、インク表面の凹凸が大きいと、インク表面での活性光線の光散乱が顕著になり、白色インクに対する活性光線の光透過率が悪くなる。これにより、白色インクを硬化させるために十分な量の活性光線が白色インクの内部にまで到達せず、白色インクの硬化性が低下するものと推察される。
【0017】
特にゲル剤を含有する白色インクでインク表面の平滑性が低い原因を本発明者がさらに検討したところ、直鎖部分の炭素数が12〜26のアルキル鎖を含むゲル化剤Aを含有する白色インクは、ゲル化剤の結晶が他のインクよりも大きくなりやすいことが、その原因であると推察された。酸化チタンは、他の色で用いられる顔料に比べ極性が高く、脂溶性が高い(極性が低い)ゲル化剤とは相互作用しにくいため、顔料によるゲル化剤の結晶成長の抑制が酸化チタンを含有するインクでは起こりにくく、ゲル化剤の結晶が大きくなりやすい。この大きなゲル化剤の結晶がインク表面の近傍に存在すると、インク表面の形状がゲル化剤の結晶によって変化させられ、インク表面の平滑性が低下すると考えられる。
【0018】
これに対し、本発明者は、酸化チタンの含有量に対する、直鎖部分の炭素数が12〜26のアルキル鎖を含むゲル化剤Aの含有量を5質量%以上35質量%以下とすることで、付着後のインクのゲル化により色混じりを抑制しつつ、白色インク表面の凹凸を小さくでき、白色インクの表面をより平滑にできることを見出した。
【0019】
酸化チタン量に対してゲル化剤A量が35%以上(酸化チタンの量に対してゲル化剤の量が多い場合)であると、白色インクではゲル化剤の結晶成長の抑制が起こりにくいため、ゲル化剤の結晶が大きくなり、表面の凹凸が大きくなってしまうと推察される。なお、酸化チタン量に対してゲル化剤A量が5%未満(酸化チタンの量に対してゲル化剤の量が少ない場合)であると、分散されている酸化チタン同士の凝集作用が高まることに起因して、ゲル化剤の結晶成長が抑制され、インクのゲル化が不十分となる。インクのゲル化が不十分であると、記録媒体に付着したインク液滴が大きく濡れ広がってしまい、色混じりが生じやすくなる。
【0020】
たとえば、特許文献1に記載の白色インクでは、酸化チタン量に対してゲル化剤量が多いため、ゲル化剤量が酸化チタンに対して過剰となり、ゲル化剤の結晶成長が大きくなるため、平滑性が良好な白色インクを得ることができない。
【0021】
本発明の活性光線硬化型インクジェットインク(以下において、「TiO
2ゲルインク」ともいう)は、少なくとも光重合性化合物、光開始剤、ゲル化剤および白色顔料を含有する活性光線硬化型インクジェットインクであって、前記白色顔料は、少なくとも酸化チタンを含有し、前記ゲル化剤は、直鎖部分の炭素数が12〜26のアルキル鎖を含むゲル化剤Aを少なくとも一種含有し、前記ゲル化剤Aの含有量は前記酸化チタンの含有量に対して5質量%〜35質量%であることを特徴とする。
【0022】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本発明において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0023】
[TiO
2ゲルインク]
TiO
2ゲルインクは、活性光線により硬化可能なインク組成物である。「活性光線」とは、その照射によりインク組成物中に開始種を発生させるエネルギーを付与できる光線であり、α線、γ線、X線、紫外線、電子線などを包含する。中でも、硬化感度をより高める観点及び照射装置の入手容易性をより高める観点から紫外線及び電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
【0024】
以下において、TiO
2ゲルインクを構成する各成分等について詳細な説明をする。
【0025】
[ゲル化剤]
TiO
2ゲルインクは、ゲル化剤を含有する。本発明においてゲル化剤とは、「常温で固体、加熱すると液体となる有機物であり、インクを温度により可逆的にゾルゲル相転移させる機能を有する化合物」と定義される。
【0026】
TiO
2ゲルインクは、ゲル化剤として、炭素数が12〜26の直鎖アルキル基を含むゲル化剤Aを含有する。炭素数が12〜26の直鎖アルキル基を含むゲル化剤を含有するインクにおいて、酸化チタンの含有量に対するゲル化剤Aの含有量を5質量%以上35質量%以下とすると、酸化チタンを含有するインク中で、ゲル化剤の結晶が大きくなりにくく、画像の光沢が高くなると考えられる。ゲル化剤は、構造中に分岐鎖を有していてもよい。
【0027】
TiO
2ゲルインクは、ゲル化剤Aを、酸化チタンの含有量に対して5質量%〜35質量%含有する。ゲル化剤Aの含有量が、酸化チタンの含有量に対して5質量%〜35質量%であると、ゲル化剤が酸化チタンと適度に相互作用して、ゲル化しつつ表面凹凸が小さい平滑性の良好な白色インクが得られる。ゲル化剤Aの含有量が、酸化チタンの含有量に対して5質量%未満だと、ゲル化剤の量が少なすぎてインクのゲル化が不十分となる。ゲル化剤Aの含有量が、酸化チタンの含有量に対して35質量%を超えると、ゲル化剤量が酸化チタンに対して過剰となり、ゲル化剤の結晶が成長しすぎてしまい、表面凹凸が小さい平滑性の良好な白色インクが得られない。
【0028】
ゲル化剤がインク中で結晶化するときに、ゲル化剤の結晶化物である結晶が三次元的に囲む空間を形成し、空間に光重合性化合物を内包することが好ましい。このように、ゲル化剤の結晶が三次元的に囲む空間に光重合性化合物が内包された構造を「カードハウス構造」ということがある。カードハウス構造が形成されると、液体の光重合性化合物をカードハウス構造内に保持することができ、インク液滴のピニング性を高めることができる。それにより、液滴同士の色混じりをより抑制することができる。カードハウス構造を形成するには、インク中で溶解している光重合性化合物とゲル化剤とが相溶していることが好ましい。
【0029】
TiO
2ゲルインクの液滴をインクジェット記録装置から安定に吐出するためには、ゾル状のインク(高温時、例えば80℃程度)において、光重合性化合物とゲル化剤との相溶性が良好であることが好ましい。
【0030】
このようなゲル化剤の例には、
脂肪族ケトン化合物;脂肪族エステル化合物;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス;キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、ホホバ固体ロウ、およびホホバエステル等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリンおよび鯨ロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、および水素化ワックス等の鉱物系ワックス;硬化ヒマシ油または硬化ヒマシ油誘導体;モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体またはポリエチレンワックス誘導体等の変性ワックス;ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、およびエルカ酸等の高級脂肪酸;ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシステアリン酸;12-ヒドロキシステアリン酸誘導体;ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、12-ヒドロキシステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド(例えば日本化成社製 ニッカアマイドシリーズ、伊藤製油社製 ITOWAXシリーズ、花王社製 FATTYAMIDシリーズ等);N-ステアリルステアリン酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミド等のN-置換脂肪酸アミド;N,N'-エチレンビスステアリルアミド、N,N'-エチレンビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、およびN,N'-キシリレンビスステアリルアミド等の特殊脂肪酸アミド;ドデシルアミン、テトラデシルアミンまたはオクタデシルアミンなどの高級アミン;ステアリルステアリン酸、オレイルパルミチン酸、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル化合物(例えば日本エマルジョン社製 EMALLEXシリーズ、理研ビタミン社製 リケマールシリーズ、理研ビタミン社製 ポエムシリーズ等);ショ糖ステアリン酸、ショ糖パルミチン酸等のショ糖脂肪酸のエステル(例えばリョートーシュガーエステルシリーズ 三菱化学フーズ社製);ポリエチレンワックス、α−オレフィン無水マレイン酸共重合体ワックス等の合成ワックス(Baker−Petrolite社製 UNILINシリーズ等);ダイマー酸;ダイマージオール(CRODA社製 PRIPORシリーズ等);ステアリン酸イヌリン等の脂肪酸イヌリン;パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン等の脂肪酸デキストリン(千葉製粉社製 レオパールシリーズ等);ベヘン酸エイコサン二酸グリセリル;ベヘン酸エイコサンポリグリセリル(日清オイリオ社製 ノムコートシリーズ等);N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジブチルアミド、N-(2-エチルヘキサノイル)-L-グルタミン酸ジブチルアミド等のアミド化合物(味の素ファインテクノより入手可能);1,3:2,4-ビス-O-ベンジリデン-D-グルシトール(ゲルオールD 新日本理化より入手可能)等のジベンジリデンソルビトール類;特開2005−126507号公報、特開2005−255821号公報および特開2010−111790号公報に記載の低分子オイルゲル化剤;等が含まれる。
【0031】
炭素数が12〜26の直鎖アルキル基を含むゲル化剤の具体例には、炭素数が12〜26の直鎖アルキル基を有する、脂肪族ケトン化合物、脂肪族エステル化合物、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸アミド等が含まれる。
【0032】
析出するゲル化剤の結晶を板状にしやすくして、記録媒体に付着したTiO
2ゲルインクの表面の平滑性をより高める観点からは、ゲル化剤は、脂肪族ケトン化合物または脂肪族エステル化合物であることが好ましい。つまり、下記一般式(G1)または(G2)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(G1):R
1−CO−R
2
一般式(G2):R
3−COO−R
4
【0033】
一般式(G1)及び(G2)中、R
1〜R
4は、それぞれ独立に、炭素数12〜26の直鎖部分を含むアルキル基を表す。R
1〜R
4は、分岐部分を含んでもよい。
【0034】
一般式(G1)において、R
1及びR
2で表されるアルキル基は、特に制限されないが、炭素数12〜26の直鎖部分を含み、分岐鎖を有さないアルキル基であることが好ましい。
【0035】
上記一般式(G1)で表される脂肪族ケトン化合物の例には、ジリグノセリルケトン(C24−C24)、ジベヘニルケトン(C22−C22)、ジステアリルケトン(C18−C18)、ジエイコシルケトン(C20−C20)、ジパルミチルケトン(C16−C16)、ジミリスチルケトン(C14−C14)、ジラウリルケトン(C12−C12)、ラウリルミリスチルケトン(C12−C14)、ラウリルパルミチルケトン(C12−C16)、ミリスチルパルミチルケトン(C14−C16)、ミリスチルステアリルケトン(C14−C18)、ミリスチルベヘニルケトン(C14−C22)、パルミチルステアリルケトン(C16−C18)、バルミチルベヘニルケトン(C16−C22)、ステアリルベヘニルケトン(C18−C22)等が含まれる。
【0036】
一般式(G1)で表される化合物の市販品の例には、18−Pentatriacontanon(Alfa Aeser社製)、Hentriacontan−16−on(Alfa Aeser社製)、カオーワックスT1(花王株式会社製)等が含まれる。TiO
2ゲルインクが含有する脂肪族ケトン化合物は、一種類のみであってもよく、二種類以上の混合物であってもよい。
【0037】
一般式(G2)において、R
3及びR
4で表されるアルキル基は、特に制限されないが、炭素数12〜26の直鎖部分を含み、分岐鎖を有さないアルキル基であることが好ましい。
【0038】
一般式(G2)で表される脂肪族エステル化合物の例には、ベヘニン酸ベヘニル(C21−C22)、イコサン酸イコシル(C19−C20)、ステアリン酸ステアリル(C17−C18)、ステアリン酸パルミチル(C17−C16)、ステアリン酸ラウリル(C17−C12)、パルミチン酸セチル(C15−C16)、パルミチン酸ステアリル(C15−C18)、ミリスチン酸ミリスチル(C13−C14)、ミリスチン酸セチル(C13−C16)、ミリスチン酸オクチルドデシル(C13−C20)、オレイン酸ステアリル(C17−C18)、エルカ酸ステアリル(C21−C18)、リノール酸ステアリル(C17−C18)、オレイン酸ベヘニル(C18−C22)、セロチン酸ミリシル(C25−C16)、リノール酸アラキジル(C17−C20等が含まれる。
【0039】
一般式(G2)で表される脂肪族エステル化合物の市販品の例には、ユニスターM−2222SL(日油株式会社製)、エキセパールSS(花王株式会社製)、EMALEX CC−18(日本エマルジョン株式会社製)、アムレプスPC(高級アルコール工業株式会社製)、エキセパール MY−M(花王株式会社製)、スパームアセチ(日油株式会社製)、EMALEX CC−10(日本エマルジョン株式会社製)等が含まれる。これらの市販品は、二種類以上の混合物であることが多いため、必要に応じて分離・精製してもよい。
【0040】
TiO
2ゲルインクが含有するゲル化剤は二種類以上の混合物であってもよい。ゲル化剤の混合物は、下記の表1に示す化合物の中から選択されるゲル化剤の混合物であることが好ましい。
【0042】
TiO
2ゲルインク中におけるゲル化剤の含有量は0.5〜10質量%が好ましく、さらに好ましくは2〜5質量%である。
【0043】
2種類以上のゲル化剤を併用する場合の添加比率としては、各々のゲル化剤がゲル化剤全体の質量に対して5質量%以上95質量%未満の比率、より好ましくは20質量%以上80質量%未満となるように調整することが好ましい。
【0044】
[光重合性化合物]
TiO
2ゲルインクは、光重合性化合物を含有する。光重合性化合物は、活性光線を照射されることにより架橋又は重合する化合物である。光重合性化合物は、ラジカル重合性化合物又はカチオン重合性化合物であり得る。好ましくはラジカル重合性化合物である。
【0045】
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマーあるいはこれらの混合物)である。TiO
2ゲルインクはラジカル重合性化合物を一種のみ含有してもよく、二種以上含有してもよい。
【0046】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例には、不飽和カルボン酸とその塩、不飽和カルボン酸エステル化合物、不飽和カルボン酸ウレタン化合物、不飽和カルボン酸アミド化合物およびその無水物、アクリロニトリル、スチレン、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等が挙げられる。不飽和カルボン酸の例には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸などが含まれる。
【0047】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」には、アクリル酸およびメタクリル酸が含まれ、「(メタ)アクリレート」には、アクリレートモノマーおよびアクリレートオリゴマー、ならびにメタアクリレートモノマーおよびメタアクリレートオリゴマーが含まれる。
【0048】
なかでも、ラジカル重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレートであることがより好ましい。(メタ)アクリレートは、後述するモノマーだけでなく、オリゴマー、モノマーとオリゴマーの混合物、変性物、重合性官能基を有するオリゴマーなどであってよい。
【0049】
(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル−フタル酸、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の単官能モノマー;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等の二官能モノマー;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート等の三官能以上の多官能モノマー等が含まれる。
【0050】
(メタ)アクリレートは、感光性などの観点から、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0051】
(メタ)アクリレートは、少なくとも一部がエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレートまたはプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレートであることが好ましい。エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレートおよびプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレートは感光性が高く、インクが低温下でゲル化する際に、カードハウス構造を形成しやすい。また、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレートおよびプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレートは、高温下で他のインク成分に対して溶解しやすく、硬化収縮も少ないことから、画像形成時に印刷物のカールが起こりにくい。
【0052】
エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレートの例には、Sartomer社製の4EO変性ヘキサンジオールジアクリレートCD561(分子量358)、3EO変性トリメチロールプロパントリアクリレートSR454(分子量429)、6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレートSR499(分子量560)、4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレートSR494(分子量528);新中村化学社製のポリエチレングリコールジアクリレートNKエステルA−400(分子量508)、ポリエチレングリコールジアクリレートNKエステルA−600(分子量742)、ポリエチレングリコールジメタクリレートNKエステル9G(分子量536)、ポリエチレングリコールジメタクリレートNKエステル14G(分子量770);大阪有機化学社製のテトラエチレングリコールジアクリレートV#335HP(分子量302);Cognis社製の3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレートPhotomer 4072(分子量471);新中村化学社製の1,10−デカンジオールジメタクリレート NKエステルDOD−N(分子量310)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート NKエステルA−DCP(分子量304)およびトリシクロデカンジメタノールジメタクリレート NKエステルDCP(分子量332)等が含まれる。
【0053】
(メタ)アクリレートは、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性(メタ)アクリレート;およびカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のカプロラクタム変性(メタ)アクリレート等の、その他の変性物であってもよい。
【0054】
(メタ)アクリレートは、重合性オリゴマーであってもよい。重合性オリゴマーの例には、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、および直鎖(メタ)アクリルオリゴマー等が含まれる。
【0055】
カチオン重合性化合物の例には、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、およびオキセタン化合物等が含まれる。カチオン重合性化合物は、本発明による活性光線硬化型インクジェットインクは、カチオン重合性化合物を一種のみ含有してもよく、二種類以上含有してもよい。
【0056】
エポキシ化合物は、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、または脂肪族エポキシド等であり、硬化性を高めるためには、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが好ましい。
【0057】
芳香族エポキシドは、多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体と、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるジまたはポリグリシジルエーテルでありうる。反応させる多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体の例には、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体等が含まれる。アルキレンオキサイド付加体におけるアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等でありうる。
【0058】
脂環式エポキシドは、シクロアルカン含有化合物を過酸化水素や過酸等の酸化剤でエポキシ化して得られる、シクロアルカンオキサイド含有化合物でありうる。シクロアルカンオキサイド含有化合物におけるシクロアルカンは、シクロヘキセンまたはシクロペンテンでありうる。
【0059】
脂肪族エポキシドは、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体と、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるジまたはポリグリシジルエーテルでありうる。脂肪族多価アルコールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコール等が含まれる。アルキレンオキサイド付加体におけるアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等でありうる。
【0060】
ビニルエーテル化合物の例には、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル-o-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物;
エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジまたはトリビニルエーテル化合物等が含まれる。これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性や密着性などを考慮すると、ジまたはトリビニルエーテル化合物が好ましい。
【0061】
オキセタン化合物は、オキセタン環を有する化合物であり、その例には、特開2001−220526号公報、特開2001−310937号公報、特開2005−255821号公報に記載のオキセタン化合物等が含まれる。なかでも、特開2005−255821号公報の段落番号0089に記載の一般式(1)で表される化合物、同号公報の段落番号0092に記載の一般式(2)で表される化合物、段落番号0107の一般式(7)で表される化合物、段落番号0109の一般式(8)で表される化合物、段落番号0116の一般式(9)で表される化合物等が挙げられる。特開2005−255821号公報に記載された一般式(1)、(2)、(7)、(8)、(9)を以下に示す。
【0063】
TiO
2ゲルインクにおける光重合性化合物の含有量は、1〜97質量%であることが好ましく、30〜95質量%であることがより好ましい。
【0064】
(光重合性化合物A)
TiO
2ゲルインクは、光重合性化合物として、以下の(メタ)アクリレート(以下、「光重合性化合物A」ともいう)を少なくとも一種類含有することが好ましい。光重合性化合物Aは、光重合性基を二以上有することが好ましい。光重合性化合物Aが光重合性基を二以上有する場合、少なくとも1つの光重合性基は(メタ)アクリロイル基である。
【0065】
光重合性化合物Aは、ゲル化剤Aと相溶しやすい。そのため、光重合性化合物Aは、ゲル化剤Aの結晶成長速度を抑制して、記録媒体に付着したTiO
2ゲルインクの表面の平滑性をより高めることができると考えられる。
【0066】
光重合性化合物Aの分子量は、280〜1500の範囲内にある。光重合性化合物Aの分子量は、300〜800の範囲内にあることがより好ましい。
【0067】
光重合性化合物AのClogP値は、4.0〜7.0の範囲内にある。光重合性化合物AのClogP値は、4.5〜6.0の範囲内にあることがより好ましい。
【0068】
ここで「logP値」とは、水と1-オクタノールに対する有機化合物の親和性を示す係数である。1-オクタノール/水分配係数Pは、1-オクタノールと水の二液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPで示す。すなわち、「logP値」とは、1-オクタノール/水の分配係数の対数値であり、分子の親疎水性を表す重要なパラメータとして知られている。
【0069】
「ClogP値」とは、計算により算出したlogP値である。ClogP値は、フラグメント法や、原子アプローチ法等により算出されうる。より具体的に、ClogP値を算出するには、文献(C.Hansch及びA.Leo、“Substituent Constants for Correlation Analysis in Chemistry and Biology”(John Wiley & Sons, New York, 1969))に記載のフラグメント法を用いればよい。フラグメント法によるClogP値の計算は、下記市販のソフトウェアパッケージ1又は2をコンピュータに実行させることで、行うことができる。
ソフトウェアパッケージ1:MedChem Software (Release 3.54,1991年8月、Medicinal Chemistry Project, Pomona College,Claremont,CA)
ソフトウェアパッケージ2:Chem Draw Ultra ver.8.0.(2003年4月、CambridgeSoft Corporation,USA)
【0070】
本発明に記載したClogP値の数値は、ソフトウェアパッケージ2を用いて計算した「ClogP値」である。
【0071】
光重合性化合物Aの含有量は、特に限定されるわけではないが、TiO
2ゲルインクの全質量に対して10〜40質量%の範囲内であることが好ましい。
【0072】
分子量及びClogP値が上述した範囲内の化合物の中でも、光重合性化合物Aは分子内に(−C(CH
3)H−CH
2−O−)で表されるユニット構造を、3〜14個有している三官能以上のメタクリレート又はアクリレートまたは分子内に環状構造を持つ二官能以上のメタクリレート又はアクリレートであることが好ましい。
【0073】
光重合性化合物Aの市販品の例には、Cognis社製3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレートPhotomer 4072(分子量471、ClogP4.90)、新中村化学社製1,10−デカンジオールジメタクリレート NKエステルDOD−N(分子量310、ClogP5.75)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート NKエステルA−DCP(分子量304、ClogP4.69)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート NKエステルDCP(分子量332、ClogP5.12)、Miwon社製ノニルフェノール8EO変性アクリレート Miramer M166(分子量626、ClogP値6.42)及び、Miwon社製トリメチロールプロパン3PO変性トリアクリレートMiramer M360(分子量471、ClogP値4.90)が含まれる。
【0074】
[光開始剤]
TiO
2ゲルインクは、光開始剤を含有する。
【0075】
光開始剤は、光重合性化合物がラジカル重合性化合物であり場合はラジカル重合開始剤であり、光重合性化合物がカチオン重合性化合物であり場合は光酸発生剤である。ラジカル重合開始剤には分子内結合開裂型と分子内水素引き抜き型とがある。
【0076】
分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類;2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系;ベンジルおよびメチルフェニルグリオキシエステル等が含まれる。
【0077】
分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4'-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3',4,4'-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系;ミヒラーケトン、4,4'-ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系;10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が含まれる。
【0078】
TiO
2ゲルインクにおける光開始剤の含有量は、活性光線や光重合性化合物の種類などにもよるが、0.01質量%〜10質量%であることが好ましい。
【0079】
光酸発生剤の例には、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。
【0080】
[白色顔料]
TiO
2ゲルインクは、白色顔料である酸化チタンを含有する。
【0081】
白色顔料としては酸化チタンが一般的に用いられており、結晶形によってアナターゼ型とルチル型に分類される。塗料やインクでは可視光領域における屈折率が高く、隠蔽率のより高いルチル型が用いられることが多い。
【0082】
酸化チタンの重量平均粒子径は、50nm以上500nm以下であることが好ましく、100nm以上300nm以下であることがより好ましい。酸化チタンの重量平均粒子径を50nm以上とすることで、十分な隠蔽性を有するインクが得られる。一方、酸化チタンの重量平均粒子径を500nm以下とすることで、酸化チタンを安定して分散させることができ、インクの保存性や射出安定性を高めることができる。
【0083】
本発明における平均粒子径とは、顔料の二次体積平均粒径である。体積平均粒子径は、例えば、光散乱法、電気泳動法、レーザー ドップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により測定することができる。具体的な粒径測定装置としては、例えば、島津製作所製のレーザー回折式粒径測定装置 SLAD1100、粒径測定機(HORIBA LA−920)、マルバーン社製ゼータサイザー1000等を挙げることができる。
【0084】
酸化チタンの市販品の例には、CR−EL(石原産業株式会社)、CR−50(石原産業株式会社)、CR−80(石原産業株式会社)、CR−90(石原産業株式会社)、R−780(石原産業株式会社)、R−930(石原産業株式会社)、TCR−52(堺化学工業株式会社)、R−310(堺化学工業株式会社)、R−32(堺化学工業株式会社)、KR−310(チタン工業株式会社)、KR−380(チタン工業株式会社)、KR−380N(チタン工業株式会社)等が含まれる。
【0085】
TiO
2ゲルインクは、酸化チタン以外の公知の白色顔料を含有してもよい。これらの公知の白色顔料には、無機白色顔料、有機白色顔料および白色の中空ポリマー微粒子等が含まれる。
【0086】
また、TiO
2ゲルインクは、色調を整えるため、染料または白色以外の顔料を含有してもよい。
【0087】
TiO
2ゲルインク中における白色顔料の含有量は、3質量%〜20質量%とすることができ、10質量%〜15質量%であることが好ましい。白色顔料に含まれる酸化チタンの含有量は、70質量%〜100質量%が好ましい。
【0088】
[顔料分散剤]
TiO
2ゲルインクは、顔料分散剤を含有してもよい。インクに顔料分散剤を含有することで、顔料の分散性を高めることができる。顔料分散剤に、3級アミンを有するくし型ブロックコポリマー(以下、単にコポリマーともいう。)を含むとより好ましい。なお、本発明において、くし型ブロックコポリマーとは、主鎖を形成する直鎖状のポリマーに対し、主鎖を構成するモノマーの1単位ごとに側鎖として別の種類のポリマーがグラフト重合したコポリマーをいう。
【0089】
コポリマーは、3級アミンを有することで、顔料への吸着性を有する官能基であるアミンの電子密度が増大し、強い塩基性が発揮されるため、顔料表面の酸性基に強固に吸着することができる。そのため、インクジェットインクが射出される85℃近傍でも、本発明に係るコポリマーは顔料から解離しにくい。また、本発明に係るコポリマーとして、主鎖に3級アミンを有するものを用いると、側鎖が光重合性化合物と相溶し、分散剤そのものが分散しやすいので、顔料分散剤が吸着した顔料の分散性をよくすることもできる。そのため、インク中における酸化チタン濃度のムラが減少することで、ゲル化剤の結晶がより均一に析出して、記録媒体に付着したTiO
2ゲルインクの表面の平滑性がより高まるため、TiO
2ゲルインクへの活性光線の光透過率が良好になり、光沢がより良好となると考えられる。
【0090】
アミンの置換基は特に限定されないが、炭素数1または2のアルキル基等が好ましい。
【0091】
コポリマーは、上記条件を満たす顔料分散剤であれば、その種類は特に限定されない。このような顔料分散剤の好ましい例には、ビックケミー社製のBYK−2164、BYK−168、BYK N−22024、アルタナ社製のBYK JET−9150、BYK JET−9151、BASF社製のEFKA 4310、EFKA 4320、EFKA 4401、Avecia社のSOLSPERSE 39000、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPB−821等が含まれる。
【0092】
コポリマーは、2級または1級のアミンを有するくし型ブロックコポリマーのアミンが有する水素を、公知の方法で他の置換基で置き換えてアミンを3級化して、製造してもよい。たとえば、くし型ブロックコポリマーが有する2級アミンまたは1級アミンを、還元触媒の存在下でデシルアルコール等のアルコールと反応させて、アルキル基で置換された3級アミンとすることができる。
【0093】
顔料分散剤は、コポリマーの他に、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびステアリルアミンアセテート等の顔料分散剤を含有してもよい。顔料分散剤の市販品の例には、Avecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズ等が含まれる。
【0094】
TiO
2ゲルインク中における顔料分散剤の含有量は、限定されないが、2.0質量%〜8.0質量%であることが好ましい。顔料分散剤の含有量は、2.0質量%〜5.0質量%であることがより好ましい。
【0095】
[その他の成分]
TiO
2ゲルインクは、必要に応じて分散助剤をさらに含有してもよい。分散助剤は、顔料に応じて選択されればよい。TiO
2ゲルインクは、必要に応じて顔料を分散させるための分散媒体をさらに含有してもよい。分散媒体は光重合性化合物以外の溶剤でもよいが、形成された画像における溶剤の残留を抑制するためには、光重合性化合物が分散媒体であることが好ましい。
【0096】
TiO
2ゲルインクは、必要に応じて光開始剤助剤や重合禁止剤などをさらに含有してもよい。光開始剤助剤は、第3級アミン化合物であってよく、芳香族第3級アミン化合物が好ましい。芳香族第3級アミン化合物の例には、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステル、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、トリエチルアミンおよびN,N-ジメチルヘキシルアミン等が含まれる。なかでも、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステルが好ましい。本発明の活性光線硬化型インクジェット白色インクは、光開始剤助剤を、一種のみ含有してもよく、二種類以上含有してもよい。
【0097】
重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等が含まれる。
【0098】
TiO
2ゲルインクは、硬化物の耐候性を高めるために、紫外線吸収剤および酸化防止剤の少なくとも一方をさらに含んでいてもよい。
【0099】
紫外線吸収剤は、耐光性やオゾン耐性の観点から、吸収波長の長波端が410nm以下であることが好ましい。紫外線吸収剤の吸収波長は、紫外可視吸収スペクトルを測定することにより求めることができる。TiO
2ゲルインク中における紫外線吸収剤の含有量は、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。紫外線吸収剤の含有量を2質量%以下とすることで、紫外線吸収剤による硬化性の低下および、硬化物の着色を生じにくくすることができる。一方、照射された紫外線を吸収して、無機白色顔料の光触媒作用を十分に低減するためには、TiO
2ゲルインク中における紫外線吸収剤の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましい。
【0100】
TiO
2ゲルインク中における酸化防止剤の含有量は、0.8質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。酸化防止剤の含有量を0.8質量%以下とすることで、酸化防止剤による硬化性の低下を抑制することができる。一方、インクの硬化膜に発生したラジカルを捕捉し、樹脂などの酸化を十分に抑制するためには、TiO
2ゲルインク中における酸化防止剤の含有量は0.05質量%以上であることが好ましい。
【0101】
TiO
2ゲルインク中における紫外線吸収剤と酸化防止剤の合計量は、2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましい。TiO
2ゲルインクにおける紫外線吸収剤と酸化防止剤の合計量を2.0質量%以下とすることで、インクの粘度を好ましい範囲に調整して、射出安定性および硬化性を良好に保ちやすくなる。
【0102】
TiO
2ゲルインクは、必要に応じて他の成分をさらに含有してもよい。他の成分は、各種添加剤や他の樹脂等であってよい。添加剤の例には、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、赤外線吸収剤、抗菌剤、インクの保存安定性を高めるための塩基性化合物等も含まれる。塩基性化合物の例には、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などが含まれる。
他の樹脂の例には、硬化膜の物性を調整するための樹脂などが含まれ、例えばポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、およびゴム系樹脂等が含まれる。
【0103】
[TiO
2ゲルインクの調製]
TiO
2ゲルインクは、光重合性化合物、光開始剤、ゲル化剤および白色顔料と、任意の各成分とを、加熱下において混合することにより得ることができる。得られた混合液を所定のフィルターで濾過することが好ましい。このとき、顔料および分散剤を含有する分散体をあらかじめ調製しておき、これに残りの成分を添加して加熱しながら混合してもよい。
【0104】
顔料の分散は、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、およびペイントシェーカー等により行うことができる。
【0105】
[TiO
2ゲルインクの物性]
TiO
2ゲルインクは、ゲル化剤を含有するため、温度により可逆的にゾルゲル相転移することができる。ゾルゲル相転移型の活性光線硬化型インクは、高温(例えば80℃程度)ではゾルであるため、インク吐出用記録ヘッドから吐出することができるが、記録媒体に付着した後、自然冷却されてゲル化する。これにより、隣り合うドット同士の合一を抑制し、画質を高めることができる。
【0106】
TiO
2ゲルインクの射出性を高めるためには、高温下におけるインクの粘度が一定以下であることが好ましい。具体的には、80℃におけるインクの粘度が3〜20mPasであることが好ましく、6.0〜15.0mPasであることがより好ましく、7.0〜12.0mPasであることがさらに好ましい。一方、隣り合うドットの合一を抑制するためには、付着後の常温下におけるインクの粘度が一定以上であることが好ましい。具体的には、TiO
2ゲルインクの25℃における粘度は1000mPas以上であることが好ましい。
【0107】
TiO
2ゲルインクのゲル化温度は、40℃以上70℃以下であることが好ましく、50℃以上65℃以下であることがより好ましい。射出温度が80℃近傍である場合に、インクのゲル化温度を70℃以下とすることで、射出時のゲル化による射出性の低下を生じにくくすることができる。一方、ゲル化温度を40℃以上とすることで、記録媒体に付着後、速やかにゲル化させることができる。ゲル化温度とは、ゾル状態にあるインクを冷却する過程において、ゲル化して流動性が低下するときの温度である。
【0108】
TiO
2ゲルインクの80℃における粘度、25℃における粘度およびゲル化温度は、レオメータにより、インクの動的粘弾性の温度変化を測定することにより求めることができる。具体的には、インクを100℃に加熱し、剪断速度11.7(1/s)、降温速度0.1℃/sの条件で25℃まで冷却したときの、粘度の温度変化曲線を得る。そして、80℃における粘度と25℃における粘度は、粘度の温度変化曲線において80℃、25℃における粘度をそれぞれ読み取ることにより求めることができる。ゲル化温度は、粘度の温度変化曲線において、粘度が200mPasとなる温度として求めることができる。
【0109】
レオメータは、Anton Paar社製 ストレス制御型レオメータ PhysicaMCRシリーズを用いることができる。コーンプレートの直径は75mm、コーン角は1.0°とすることができる。
【0110】
[TiO
2ゲルインクを含有するインクセット]
白色インクとしてのTiO
2ゲルインクと、白色以外の色を呈する色インク、とを組み合わせて、インクセットとしてもよい。インクセットに用いられる色インクは特に限定されることはなく、目的とする画像にあわせて適当なインクを選択することができる。画像形成の容易さから、色インクは、TiO
2ゲルインクと同様にインクジェットによって吐出可能なインクであることが好ましく、光重合性化合物、光開始剤および色材を含有する活性光線硬化型のインクであることがより好ましい。また、色インクは、ゲル化剤を含有することによりゾルゲル相転移が可能な活性光線硬化型のインクであってもよい。なお、TiO
2ゲルインクは記録媒体に付着後、ゲル化するため、記録媒体上で色インクとの混色を生じにくい。
【0111】
色インクが含有し得る光重合性化合物、光開始剤、ゲル化剤およびその他の成分は、TiO
2ゲルインクが含有し得る光重合性化合物、光開始剤、ゲル化剤およびその他の成分と同一のものとし得る。
【0112】
色インクが含有し得る色材の例には、公知の顔料および染料が含まれる。耐候性の良好な画像を得る観点からは、色材は顔料であることが好ましい。顔料は、形成すべき画像の色等に応じて、たとえば、黄顔料、赤またはマゼンタ顔料、青またはシアン顔料および黒顔料から選択することができる。
【0113】
色インクの物性は、所望の付与方法に応じて任意に定めることができる。たとえば、色インクが含有することによりゾルゲル相転移が可能な活性光線硬化型のインクである場合、色インクの物性は、TiO
2ゲルインクについて上述した範囲内とすることが好ましい。
【0114】
上記インクセットによれば、後述する画像形成方法の一態様において、色インクを付着させる前または後にTiO
2ゲルインクを付着させて、画像の上塗り部分または下塗り部分を形成させることができる。
【0115】
色インクは、たとえばブラック、シアン、マゼンタおよびイエローならびにその他の色のインクとすることができる。
【0116】
[インクジェット画像形成方法]
本発明のインクジェット画像形成方法は、(a)TiO
2ゲルインクをインク吐出用記録ヘッドから吐出して記録媒体上に付着させる工程、および(b)付着したTiO
2ゲルインクに活性光線を照射する工程、を有する。
【0117】
(a)TiO
2ゲルインクをインク吐出用記録ヘッドから吐出させて記録媒体上に付着させるとき、インクの吐出性を高めるためには、インク吐出用記録ヘッド内のTiO
2ゲルインクの温度を、インクのゲル転移温度より10〜30℃高い温度に設定することが好ましい。インク吐出用記録ヘッド内のTiO
2ゲルインクの温度を、ゲル化温度+10℃以上とすることで、インク吐出用記録ヘッド内もしくはノズル表面でのインクのゲル化を防止し、インク液滴を安定して吐出することができる。一方、インク吐出用記録ヘッド内のTiO
2ゲルインクの温度を、ゲル化温度+30℃以下とすることで、インクが高温になることによるインク成分の劣化を防ぐことができる。TiO
2ゲルインクは、インクジェット記録装置のインク吐出用記録ヘッド、インク吐出用記録ヘッドに接続したインク流路、またはインク流路に接続したインクタンク等で加熱することができる。
【0118】
インク吐出用記録ヘッドの各ノズルから吐出されるTiO
2ゲルインク1滴あたりの液滴量は、TiO
2ゲルインクの粘度等にもよるが、0.5〜10plであることが好ましく、所望の領域のみに吐出するためには、0.5〜4.0plであることがより好ましく、1.5〜4.0plであることがさらに好ましい。このような量のインクを付着させても、TiO
2ゲルインクではゾルゲル相転移が行われるため、インクが過剰に濡れ広がらず、所望の箇所にのみ吐出することができる。
【0119】
記録媒体上に付着したTiO
2ゲルインクの液滴は冷却されてゾルゲル相転移により速やかにゲル化する。これにより、TiO
2ゲルインクの液滴が過剰に濡れ広がらずに、ピニングすることができる。さらに、液滴が速やかにゲル化するため、液滴中に酸素が入り込みにくく、光重合性化合物の硬化が酸素によって阻害されにくい。
【0120】
TiO
2ゲルインクの液滴が付着する際の記録媒体の温度は、当該インクのゲル化温度よりも10〜20℃低い温度に設定されていることが好ましい。記録媒体の温度が低すぎると、TiO
2ゲルインクの液滴が過剰に迅速にゲル化してピニングしてしまう。一方で、記録媒体の温度が高すぎると、TiO
2ゲルインクの液滴がゲル化しにくくなり、インク液滴の隣り合うドット同士が混じりあうことがある。記録媒体の温度を適切に調整することで、隣り合うドットのインク液滴同士が混じり合わない程度の適度な平滑性(レベリング)と、適切なピニングとが実現される。
【0121】
(b)付着したTiO
2ゲルインクに活性光線を照射する工程において、記録媒体に付着したTiO
2ゲルインクの液滴に活性光線を照射することで、TiO
2ゲルインクが含有する光重合性化合物を架橋又は重合させて、各インク液滴を硬化させる。
【0122】
記録媒体に付着したTiO
2ゲルインクの液滴に照射する活性光線は、メタルハライドランプまたはLED光源等からの紫外線とすることができる。これらの光源のうち、LEDを用いることで、光源の輻射熱によるTiO
2ゲルインクの液滴の軟化を抑制し、インク液滴の硬化膜表面に硬化不良が生じることを抑制できる。LEDの例には、Phoseon Technology社製 395nm、水冷LED等が含まれる。
【0123】
光源は、360〜410nmの紫外線を画像表面におけるピーク照度が0.5〜10W/cm
2となるように設置され、1〜5W/cm
2となるように設置することが好ましい。
【0124】
記録媒体は、紙であってもよく、樹脂フィルムであってもよい。紙の例には、印刷用コート紙、印刷用コート紙Bなどが含まれる。また、樹脂フィルムの例には、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリプロピレンフィルム、塩化ビニルフィルムなどが含まれる。
【0125】
記録媒体は、透明性が高い記録媒体であることが好ましい。透明性が高いとは、可視光への透過率が70%以上であることを意味する。透明性が高い記録媒体の例には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルムおよび塩化ビニルフィルムが含まれる。
【0126】
記録媒体の搬送速度は、30〜120m/sであることが好ましい。搬送速度が速いほど画像形成速度が速まるので好ましいが、搬送速度が速すぎると、画像品質が低下したり、TiO
2ゲルインクの光硬化が不十分になったりする。
【0127】
(TiO
2ゲルインクと色インクとを用いて行うインクジェット画像形成方法)
本発明のインクジェット画像形成方法は、TiO
2ゲルインクと色インクとを用いて行うこともできる。
【0128】
色インクは、ロールコーター等によって塗布してもよいし、インクジェットインクとして、インク吐出用記録ヘッドから吐出して記録媒体上に付着させてもよい。
【0129】
色インクは、TiO
2ゲルインクをインク吐出用記録ヘッドから吐出して記録媒体上に付着させる前に、記録媒体上に付着させてもよいし、TiO
2ゲルインクをインク吐出用記録ヘッドから吐出して記録媒体上に付着させた後に、記録媒体上に付着させてもよい。TiO
2ゲルインクを付着させる前に色インクを付着させるとき、TiO
2ゲルインクは、画像の上塗り部分となる。TiO
2ゲルインクを付着させた後に色インクを付着させるとき、TiO
2ゲルインクは、画像の下塗り部分となる。
【0130】
色インクが光重合性化合物、光開始剤および色材を含有する活性光線硬化型インクジェットインクであるときは、一方のインクを記録媒体に付着させた後、活性光線を照射してそのインクを硬化させてから、他方のインクを記録媒体に付着させてもよい。また、一方のインクを記録媒体に付着させた後、そのインクが未硬化のうちに、他方のインクを記録媒体に付着させ、両者のインクが硬化するように活性光線を照射してもよい。
【0131】
後者の場合、本発明のインクジェット画像形成方法の一態様は、TiO
2ゲルインクおよび色インクの少なくとも一方のインクをインク吐出用記録ヘッドから吐出して、記録媒体の画像を形成すべき領域に付着させる、第1のインク吐出工程と、記録媒体に付着させた前記インクが未硬化のうちに、前記TiO
2ゲルインクおよび前記色インクの他方をインク吐出用記録ヘッドから吐出して、前記インクが付着した前記記録媒体の領域にさらに付着させる、第2のインク吐出工程と、活性光線を前記TiO
2ゲルインクおよび前記色インクが付着した前記記録媒体の領域に照射する工程と、を含む。
【0132】
このとき、第1のインク吐出工程で、TiO
2ゲルインクをインク吐出用記録ヘッドから吐出して、記録媒体の画像を形成すべき領域に付着させ、前記第2のインク吐出工程で、色インクをインク吐出用記録ヘッドから吐出して、TiO
2ゲルインクが付着した前記記録媒体の領域にさらに付着させてもよいし、第1のインク吐出工程で、色インクをインク吐出用記録ヘッドから吐出して、記録媒体の画像を形成すべき領域に付着させ、第2のインク吐出工程で、TiO
2ゲルインクをインク吐出用記録ヘッドのノズルから吐出して、色インクが付着した前記記録媒体の領域にさらに付着させてもよい。特に後者の場合に、酸化チタンを含有する従来の活性光線硬化型インクジェットインクでは、インクの硬化性が低いことがあった。しかし、TiO
2ゲルインクを用いることで、インクの硬化性をより高めることができる。
【0133】
色インクがインクジェットインクである場合、色インク液滴の吐出性を高めるために、インク吐出用記録ヘッド内のインクジェットインクの温度を、上記TiO
2ゲルインクの吐出時の温度と同程度にすることが好ましく、TiO
2ゲルインクの温度の上下10℃以内とすることがより好ましい。
【0134】
インク吐出用記録ヘッドの各ノズルから吐出される色インク1滴あたりの液滴量は、画像の解像度にもよるが、0.5〜10plであることが好ましく、高精細な画像を形成するためには、0.5〜4.0plであることがより好ましい。
【0135】
硬化後の総インク液滴膜厚は、1〜20μmであることが好ましい。「総インク液滴膜厚」とは、記録媒体に付着し、硬化したTiO
2ゲルインク(および任意に色インク)の硬化膜からなる厚みの最大値である。
【0136】
[画像形成された記録媒体]
本発明の記録媒体は、TiO
2ゲルインクが付着し、硬化した記録媒体である。TiO
2ゲルインクが付着し、硬化したことは、公知の化学分析により検出することができる。TiO
2ゲルインクは、本発明のインクジェット画像形成方法によって付着および硬化することが好ましい。
【0137】
本発明の記録媒体は、さらに色インクを付着させて画像を形成するために用いてもよい。また、本発明の記録媒体は、TiO
2ゲルインクが十分に硬化しているため、こすれなどによる白色の濃度の低下が生じにくい。本発明の記録媒体は、TiO
2ゲルインクおよび色インクが付着していてもよい。本発明の記録媒体がTiO
2ゲルインクおよび色インクが付着している場合、TiO
2ゲルインクによる上塗りまたは下塗りによって良好な視認性を有する。
【0138】
[インクジェット記録装置]
インクセットを用いて、TiO
2ゲルインクの付着および定着、ならびに活性光線硬化型の色インクの付着および定着を単一のインクジェット記録装置で行う場合、
図1〜
図3に記載のような構成の装置を用いることができる。なお、活性光線硬化型インクジェット方式のインクジェット記録装置には、ライン記録方式(シングルパス記録方式)のものと、シリアル記録方式のものとがある。求められる画像の解像度や記録速度に応じていずれの方式を選択してもよいが、高速記録の観点では、ライン記録方式(シングルパス記録方式)が好ましい。
【0139】
図1Aはライン記録方式のインクジェット記録装置の要部の構成の一例の側面図であり、
図1Bはその上面図である。また
図2Aはライン記録方式のインクジェット記録装置の要部の構成の他の例の側面図であり、
図2Bはその上面図である。
【0140】
図1A、
図1Bおよび
図2A、
図2Bに示されるように、インクジェット記録装置10は、複数のインク吐出用記録ヘッド14を収容するヘッドキャリッジ16(16a、16b)と、ヘッドキャリッジ16に接続したインク流路30と、インク流路30を通じて供給するインクを貯留するインクタンク31と、記録媒体12の全幅を覆い、かつヘッドキャリッジ16の(記録媒体の搬送方向)下流側に配置された光照射部18と、記録媒体12の下面に配置された温度制御部19と、を有する。
【0141】
インクジェット記録装置10のヘッドキャリッジ16には、色インク用のヘッドキャリッジ16aおよびTiO
2ゲルインク用のヘッドキャリッジ16bが含まれる。色インク用のヘッドキャリッジ16aには、各色用のヘッドキャリッジが含まれる。ヘッドキャリッジ16aおよび16bは、例えば
図1Bに示すように、記録媒体12の全幅を覆うように固定配置され、複数のインク吐出用記録ヘッド14を収容する。インク吐出用記録ヘッド14には、インクタンク31から色インクもしくはTiO
2ゲルインクが供給されるようになっている。
【0142】
インク吐出用記録ヘッド14は、色ごとに、記録媒体12の搬送方向に複数配置される。記録媒体12の搬送方向に配置されるインク吐出用記録ヘッド14の数は、インク吐出用記録ヘッド14のノズル密度と、印刷画像の解像度によって設定される。例えば、液滴量2pl、ノズル密度360dpiのインク吐出用記録ヘッド14を用いて1440dpiの解像度の画像を形成する場合には、記録媒体12の搬送方向に対して4つのインク吐出用記録ヘッド14をずらして配置すればよい。また、液滴量6pl、ノズル密度360dpiのインク吐出用記録ヘッド14を用いて720×720dpiの解像度の画像を形成する場合には、2つのインク吐出用記録ヘッド14をずらして配置すればよい。dpiとは、2.54cm当たりのインク液滴(ドット)の数を表す。
【0143】
インクタンク31は、ヘッドキャリッジ16に、インク流路30を介して接続されている。インク流路30は、インクタンク31中のインクをヘッドキャリッジ16に供給する経路である。インク液滴を安定して吐出するため、インクタンク31、インク流路30、ヘッドキャリッジ16およびインク吐出用記録ヘッド14のインクを所定の温度に加熱して、ゲル状態を維持する。
【0144】
光照射部18は、記録媒体12の全幅を覆い、かつ記録媒体の搬送方向についてヘッドキャリッジ16の下流側に配置されている。光照射部18は、インク吐出用記録ヘッド14により吐出されて、記録媒体12の上に付着したインク液滴に光を照射し、液滴を硬化させる。
【0145】
温度制御部19は、記録媒体12の下面に配置されており、記録媒体12を所定の温度に維持する。温度制御部19は、例えば
図1Aに示すように、色インク用ヘッドキャリッジ16a側と、TiO
2ゲルインク用ヘッドキャリッジ16b側とで、分割されていてもよい。温度制御部19は、例えば各種ヒータ等でありうる。
【0146】
以下、ライン記録方式のインクジェット記録装置10を用いたインクジェット画像形成方法を説明する。
図1Aおよび
図1Bの記録装置では、記録媒体12を、インクジェット記録装置10のカラーインク用のヘッドキャリッジ16aと温度制御部19との間に搬送する。一方で、記録媒体12を、温度制御部19により所定の温度に調整する。次いで、色インク用のヘッドキャリッジ16aのインク吐出用記録ヘッド14から高温のインク液滴を吐出して、記録媒体12上に付着(着弾)させる。
【0147】
さらに、記録媒体12に、TiO
2ゲルインク用のヘッドキャリッジ16bのインク吐出用記録ヘッド14から高温のインク液滴を吐出して、記録媒体12上に付着させる。その後、光照射部18により、記録媒体12上に付着したTiO
2ゲルインクのインク液滴に光を照射して硬化させる。
【0148】
図2Aおよび
図2Bの記録装置では、記録媒体12を、インクジェット記録装置10のTiO
2ゲルインク用のヘッドキャリッジ16bと温度制御部19との間に搬送する。一方で、記録媒体12を、温度制御部19により所定の温度に調整する。次いで、TiO
2ゲルインク用のヘッドキャリッジ16bのインク吐出用記録ヘッド14から高温のインク液滴を吐出して、記録媒体12上に付着させる。
【0149】
さらに、記録媒体12に、色インク用のヘッドキャリッジ16aのインク吐出用記録ヘッド14から高温のインク液滴を吐出して、記録媒体12上に付着させる。その後、光照射部18により、記録媒体12上に付着した色インクのインク液滴に光を照射して硬化させる。
【0150】
図3は、シリアル記録方式のインクジェット記録装置20の要部の構成の一例を示す図である。
図3に示されるように、インクジェット記録装置20は、記録媒体の全幅を覆うように固定配置されたヘッドキャリッジ16aおよび16bの代わりに、記録媒体の全幅よりも狭い幅であり、かつ複数のインク吐出用記録ヘッド24aおよび24bをそれぞれ収容するヘッドキャリッジ26aおよび26bと、ヘッドキャリッジ26を記録媒体12の幅方向に可動させるためのガイド部27aおよび27bと、を有する以外は
図1A、
図1Bと同様に構成されうる。
【0151】
シリアル記録方式のインクジェット記録装置20では、ヘッドキャリッジ26がガイド部27に沿って記録媒体12の幅方向に移動しながら、ヘッドキャリッジ26に収容されたインク吐出用記録ヘッド24からインク液滴を吐出する。ヘッドキャリッジ26が記録媒体12の幅方向に移動しきった後(パス毎に)、記録媒体12を搬送方向に送る。これらの操作以外は、前述のライン記録方式のインクジェット記録装置10とほぼ同様にして画像を記録する。
【0152】
図3に示す構成のインクジェット記録装置20では、色インクおよびTiO
2ゲルインクの液滴を、光照射部28で一括して露光する。また、
図3では色インクを付着させるヘッドキャリッジ26aがより上流に配置されているが、TiO
2ゲルインクを付着させるヘッドキャリッジ26bをヘッドキャリッジ26aよりも上流に配置してもよい。
【実施例】
【0153】
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、これらの記載によって本発明の範囲は限定して解釈されない。
【0154】
[W顔料分散液の調製]
以下の手順でW顔料分散液1を調整した。以下2種の化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間加熱攪拌溶解した。
【0155】
(顔料分散剤)PB824(味の素ファインテクノ社製) 9質量部
(光重合性化合物)トリプロピレングリコールジアクリレート (APG−200、新中村化学社製) 71質量部
【0156】
室温まで冷却した後、これに顔料として酸化チタン(堺化学工業社製、TCR−52)60質量部を加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて5時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去した。
【0157】
顔料分散剤をPB824から3級アミンを有するブロックコポリマーであるBYKJET−9151(BYK社製)に変更した以外はW顔料分散液1と同様にして、W顔料分散液2を調製した。
【0158】
[Y顔料分散液の調製]
以下の手順でY顔料分散液を調整した。以下2種の化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間加熱攪拌溶解した。
【0159】
(顔料分散剤)PB824(味の素ファインテクノ社製) 9質量部
(光重合性化合物)トリプロピレングリコールジアクリレート (APG−200、新中村化学社製) 71質量部
【0160】
室温まで冷却した後、これに顔料としてPigment Yellow 180(大日精化製、クロモファインイエロー6280JC)20質量部を加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて5時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去した。
【0161】
[M顔料分散液の調製]
顔料をPigment Red 122(大日精化製、クロモファインレッド6112JC)に変更したこと以外はY顔料分散液と同様にしてM顔料分散液を調製した。
【0162】
[C顔料分散液の調製]
顔料をPigment Blue 15:4(大日精化製、クロモファインブルー6332JC)に変更したこと以外はY顔料分散液と同様にしてC顔料分散液を調製した。
【0163】
[K顔料分散液の調製]
顔料をPigment Black 7(三菱化学社製、#52)に変更したこと以外はY顔料分散液と同様にしてK顔料分散液を調製した。
【0164】
[インクの調製]
下記の表2〜4に記載されたインクの組成にしたがって、以下に示す各成分と上記顔料分散液とを混合して、80℃に加熱して攪拌した。加熱下において、ADVANTEC社製テフロン(登録商標)3μmメンブランフィルターで得られた溶液の濾過を行い、Y、M、C、KインクおよびWインク1〜13を得た。なお、各表の成分の単位は質量%である。
【0165】
[ゲル化剤]
(ゲル化剤A)
ラウリル酸アミド(ダイヤミッドY:日本化成社製、C12)
ジステアリン酸エチレングリコール(EMALEX EG−di−S:日本エマルジョン社製、C18−C18)
(ゲル化剤A(G1))
ジステアリルケトン(カオーワックスT1:花王社製、C18−C18)
(ゲル化剤A(G2))
ベヘニン酸ベヘニル(ユニスターM−2222SL:日油社製、C21−C22)
(その他のゲル化剤)
グリセリンモノカプリレート (ポエムM200:理研ビタミン、C10)
【0166】
[光重合性化合物]
(光重合性化合物A)
3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(Miramer M360:Miwon社製、分子量 471、ClogP 4.9)
(その他の光重合性化合物)
ポリエチレングリコール#400ジアクリレート(NKエステルA−400:新中村化学社製、分子量 508、ClogP 0.5)
6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(SR499:SARTOMER社製、分子量 560、ClogP 3.6)
【0167】
[顔料分散剤]
(3級アミンを有するブロックコポリマー)
BYKJET−9151(BYK社製)
(その他の顔料分散剤)
PB824(味の素ファインテクノ社製)
【0168】
[重合禁止剤]
Irgastab UV10(BASF社製)
【0169】
[光開始剤]
光開始剤1: TPO(BASF社製)
光開始剤2: Irg819(BASF社製)
【0170】
[界面活性剤]
KF−352(信越化学社製)
【0171】
【表2】
【0172】
【表3】
【0173】
【表4】
【0174】
[インクジェット画像形成方法]
調製したインク組成物YMCK、Wインク1のインクセットを、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録ヘッドを有するライン方式のインクジェット記録装置に装填した。
インク供給系は、インクタンク、インク流路、インクジェット記録ヘッド直前のサブインクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、インクタンクからヘッド部分までは100℃、記録媒体の搬送台は40℃になるように加温した。
【0175】
(インクジェット画像形成方法1(白上塗り))
幅300mmで厚さ50μmの透明なロール状のPET(ポリエチレンテレフタレート)の上に、Kインクを用いて50×200mmのサイズの100%ベタ画像を形成した後、Kインクで形成された画像と重なるように、Wインク1を用いて100×200mmのサイズの100%ベタ画像を形成し、その後5秒以内に後述する紫外線で露光することでインクを硬化させた。なお、記録ヘッドは、6〜42plのマルチドロップ、360dpiの解像度のヘッドを各色1個ずつ用いて、360 × 360 d p i の解像度で吐出し、Kインクの付量が9.5g/m
2、Wインクの付量が10.0g/m
2となるように、適宜、駆動波形、電圧を調整した。
【0176】
(インクジェット画像形成方法2(白下塗り))
画像形成方法1において、インクの付着順を入れ替え、Wインクを用いて100×200mmのサイズの100%ベタ画像を形成した後、Kインクを用いて50×200mmのサイズの100%ベタ画像を先に付着させたWインク重なるように形成したことを以外は同様にして、画像を形成した。
【0177】
(インクジェット画像形成方法3)
画像形成方法2において、記録媒体をA4サイズのアルミ蒸着紙(ハイピカ#75F 特種東海ホールディングス社製)に変更したこと以外は同様にして画像を形成した。
【0178】
なお、いずれのインクジェット画像形成方法においても、Yインク、MインクおよびCインクはインクジェットヘッドから吐出しなかった。
【0179】
(露光方法)
各インクは、紫外線照射ユニット(Phoseon Technology社製LEDランプ)から光を照射して(395nm、4W/cm
2、water cooled unit)硬化させた。積算光量は、600mJ/cm2となるように記録媒体の搬送速度を可変することで適宜調整し、浜松ホトニクス社製 紫外線積算光量計C9536、H9958を用いて測定した。
【0180】
[光透過率の測定]
上記画像形成方法にて出力した画像サンプルのWインクとKインクが重なって付着した部分を用いて、紫外可視分光光度計(V−650、日本分光社製)により、画像サンプルの395nmにおける光透過率を測定した。なお、測定の際には、積分球(ISV−722、日本分光社製)を併用した。
【0181】
[画像評価方法]
(Wインクの平滑性)
出力された画像サンプルの表面粗さを、非接触3次元表面形状粗さ計(WYKO NT9300、VEECO社製)を用いて、VSI方式、倍率5倍(1.3×0.9mm)の条件にて測定を行い、以下の下記基準に従って評価した。
◎:平均算術粗さRaが50nm以上150nm未満
○:平均算術粗さRaが150nm以上250nm未満
△:平均算術粗さRaが250nm以上350nm未満
×:平均算術粗さRaが350nm以上
※△以上が実用上問題ないレベルである
【0182】
(硬化性)
出力された画像サンプルについて、WインクとKインクが重なって付着した部分をコート紙で500gの加重をかけて30回擦った後の状態を目視観察し、下記の基準で評価した。
◎:画像の変化は全くない
○:画像濃度がわずかに低下しているが、実用上問題ないレベル
△:画像濃度が低下している
×:著しく画像濃度が低下している
※○以上が実用上問題ないレベルである
【0183】
(色混じり)
出力された画像サンプルについて、白画像と黒画像が重なった部分の表面、裏面を目視観察し、下記の基準で評価した。
○:重ねうちしたWインクとKインクが混じり合うことなく、表側と裏側の色の違いを明確に認識できる。
△:重ねうちしたWインクとKインクが部分的に混じり合ってしまっている。
×:重ねうちしたWインクとKインクが完全に混じり合ってしまっている。
※○が実用上問題ないレベルである
【0184】
(光沢)
出力された画像サンプルの表面を、光沢計(PG−II、日本電色工業)を用いて60°光沢値を測定し、下記の基準で評価した。
○:60°光沢が30以上60未満の範囲である
△:60°光沢が20以上30未満、もしくは60以上90未満である
×:60°光沢が20未満もしくは90以上である
※△以上が実用上問題ないレベルである
【0185】
評価結果を表5〜表6に示す。
【0186】
【表5】
【0187】
【表6】
【0188】
実施例1〜9、比較例1〜6は、Wインクの平滑性と相関するように、395nmにおける光透過率が変化していることがわかる。すなわち、Wインクの平滑性が高い水準ほど、395nmにおける光透過率は向上し、その結果、Wインク内部まで届く光の量が増加するため、硬化性が高まるものと推察される。実施例1〜9は本発明に係るインクおよび画像形成方法による結果であり、所望の画質を得ることができる。
【0189】
Wインクの平滑性は、ゲル化剤/酸化チタンの配合比率と相関がみられることがわかる。例えば、実施例1と比較例2、実施例2と比較例1を比較すると、ゲル化剤に対して酸化チタンが多い場合(ゲル化剤/酸化チタンが5.0質量%未満の場合)に平滑性は満足するものの色まじりが顕著となっている。これはインクのゲル化が不十分であることが示唆されている。また、実施例3と比較例3、実施例4と比較例4を比較すると、酸化チタンに対してゲル化剤が多い場合(ゲル化剤/酸化チタンが35質量%を超える場合)には、平滑性が大きく低下していると同時に、395nmにおける光透過率も低下していることがわかる。一方、本発明に係る実施例1〜7は、ゲル化剤/酸化チタンが5質量%以上35質量%以下の範囲であり、この範囲においてはWインクの平滑性が向上していることがわかる。
【0190】
実施例1、4と2、3、5との比較から、使用されるゲル化剤の構造は、一般式(G1)、(G2)で表される構造である方がより高い平滑性を得る観点から好ましいことが示唆される。すなわち、析出するゲル化剤の結晶の形状が板状であるため、結晶がインク表面に局在化しても比較的凹凸の小さい表面を形成しやすいと推測される。
【0191】
また、実施例6と実施例7の比較から、ClogP値で示される脂溶性が高い光重合性化合物Aを含有するインクの方が、より高い平滑性を得る観点から好ましいことが示唆される。
【0192】
また、実施例1と実施例7の比較から、顔料分散剤が3級アミンを有するくし型ブロックコポリマーであると、光沢がより好ましい範囲となることがわかる。
【0193】
使用されるゲル化剤が本発明の範囲外となる比較例5、およびゲル化剤を含有しない比較例6では、所望する画質を得ることができない。特に、比較例6は平滑性や硬化性が高いものの、ゲル化剤を含有しないために色混じりが顕著に発生していることがわかる。
【0194】
また、画像形成方法において、インク付着順が実施例1と逆になる実施例8でも、本発明の効果が奏されることがわかる。また、実施例9のように、記録媒体がフィルム以外の場合でも、同様に本発明の効果が得られることがわかる。