(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ブチルゴムおよびハロゲン化ブチルゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種を合計70質量%以上含有するゴム成分およびガラス転移温度が60℃以下のテルペン系樹脂を含有するゴム組成物であって、
前記ガラス転移温度が60℃以下のテルペン系樹脂の含有量がゴム成分100質量部に対して2〜40質量部であり、
前記ガラス転移温度が60℃以下のテルペン系樹脂を除く樹脂であり、ガラス転移温度が50℃以上の非テルペン樹脂をゴム成分100質量部に対して合計1〜30質量部含有し、
空気透過係数が4.6×10-11cm3・cm/(cm2・s・Pa)以下であるゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分およびガラス転移温度が60℃以下のテルペン系樹脂を含有するゴム組成物であり、所定の空気遮断性指数を示すゴム組成物である。
【0020】
<ゴム成分>
本発明に係るゴム成分としては、例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムやブチル系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐空気透過性および耐熱性に優れるという理由から、ブチル系ゴムを含有することが好ましい。
【0021】
ブチル系ゴムとしては、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、ブチルゴム(IIR)、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体(Exxon Mobil Chemical社製のExxpro 3035)などが挙げられる。ブチルゴム(IIR)は、いわゆるレギュラーブチルゴムとして知られる非ハロゲン化ブチルゴムや再生ブチル系ゴムをいう。IIRとしては、通常、タイヤ工業で使用されるものをいずれも好適に使用することができる。
【0022】
前記ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)とは、レギュラーブチルゴムの分子内にハロゲンを導入したものである。当該ハロゲン化ブチルゴムとしては、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)などを使用することができる。なかでも、天然ゴムを含有せずとも硫黄架橋が進行しやすいという理由から、Br−IIRが好ましい。
【0023】
ゴム成分がIIRおよびX−IIRからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む場合のゴム成分100質量%中の合計含有量は、耐空気透過性に優れるという理由から、70質量%以上が好ましく、81質量%以上がより好ましく、100質量%とすることがさらに好ましい。また、IIRおよびCRの配合系を用いる場合、適度な架橋密度を確保することができるという理由から、IIRのゴム成分100質量%中の含有量は、90〜98質量%が好ましく、94〜97質量%がより好ましい。
【0024】
前記イソプレン系ゴムとしては、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、改質天然ゴム等が挙げられる。NRには、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(HPNR)も含まれ、改質天然ゴムとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等が挙げられる。また、NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0025】
ゴム成分がNRを含む場合のゴム成分100質量%中の含有量は、低燃費性、成形加工性、耐空気透過性の観点から、5〜30質量%が好ましく、10〜19質量%がより好ましい。
【0026】
<ガラス転移温度が60℃以下のテルペン系樹脂>
本発明に係るゴム組成物はガラス転移温度(Tg)が60℃以下のテルペン系樹脂を含有することを特徴とする。Tgが60℃以下のテルペン系樹脂はブチル系ゴム相溶性に優れる。Tgが60℃以下のテルペン系樹脂を含有することにより、耐久性および耐空気透過性に優れたゴム組成物とすることができる。
【0027】
本発明に係るTgが60℃以下のテルペン系樹脂としては、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ジペンテンなどのテルペン原料から選ばれる少なくとも1種からなるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする芳香族変性テルペン樹脂、テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とするテルペンフェノール樹脂などのテルペン系樹脂などが挙げられる。ここで、芳香族変性テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエンなどが挙げられ、また、テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。
【0028】
Tgが60℃以下のテルペン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、ゴム組成物のガラス転移温度が高くなり、耐クラック性、特に耐低温クラック性が悪化することを防ぐという理由から、60℃以下であり、50℃以下が好ましい。また、前記テルペン系樹脂のガラス転移温度の下限は特に限定されないが、オイルと同等以上の重量平均分子量(Mw)にでき、かつ難揮発性を確保できるという理由から、5℃以上が好ましい。また、水素添加されたテルペン系樹脂の重量平均分子量は、高温時の揮発性を、プロセスオイルより低くするという観点から、200以上が好ましく、テルペン系樹脂の重量平均分子量は、使用時のゴム製品の柔軟性を保つという観点から、400以上がさらに好ましい。
【0029】
Tgが60℃以下のテルペン系樹脂は、水素添加されたテルペン系樹脂であることが好ましい。つまり、Tgが60℃以下であり、かつ水素添加されたテルペン系樹脂が好ましい。さらに、テルペン系樹脂は水素添加されることで、そのSP値が低下するため、特に他のゴム成分と比較してSP値が低いブチル系ゴムなどとの相溶性がより向上する。テルペン系樹脂への水素添加処理は、公知の方法で行うことができ、また、本発明においては、市販の水素添加されたテルペン系樹脂を使用することもできる。
【0030】
Tgが60℃以下のテルペン系樹脂の軟化点は、不純物やテルペン構造以外の構造体の含有量にもよるが、通常100℃以下である。軟化点が100℃以下の場合は、水添テルペンとなって構造の可動性が増し、SP値が減じたとしてもブチル系ゴムとの相溶性が向上しない傾向がある。なお、本発明における樹脂の軟化点は、フローテスター((株)島津製作所製、CFT−500D)を用い、試料として1gの樹脂を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出し、温度に対するフローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度とした。
【0031】
Tgが60℃以下のテルペン系樹脂のSP値は、ブチル系ゴムのSP値7.7〜8.1に近いことが好ましく、8.60以下が好ましく、8.50以下がより好ましい。なお、SP値は、化合物の構造に基づいてHoy法によって算出された溶解度パラメーター(Solubility Parameter)を意味する。Hoy法とは、例えば、K.L.Hoy “Table of Solubility Parameters”, Solvent and Coatings Materials Research and Development Department, Union Carbites Corp.(1985)に記載された計算方法である。
【0032】
Tgが60℃以下のテルペン系樹脂のゴム成分100質量部に対する含有量は、本発明の効果が良好に得られるという理由から2質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましい。また、Tgが60℃以下のテルペン系樹脂の含有量は、破断強度、Hs、成形加工性および耐久性の観点から、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
【0033】
<その他の配合剤>
本発明に係るゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般的に使用される配合剤、例えば、カーボンブラック、シリカ、その他の無機フィラー、Tgが60℃以下のテルペン系樹脂以外の樹脂成分、オイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0034】
前記カーボンブラックとしては、特に限定されず、タイヤ工業において一般的に用いられるSAF、ISAF、HAF、FF、FEF、GPF、SRF−LMなどが挙げられる。
【0035】
なかでも、窒素吸着比表面積(N
2SA)が40m
2/g以下の大粒径カーボンブラックが、耐空気透過性および耐久性に優れるという理由から好ましい。大粒径カーボンブラックのN
2SAの下限は特に限定されないが、20m
2/g以上が好ましい。大粒径カーボンブラックの、具体例としては、キャボットジャパン(株)製のショウブラックN762(N
2SA:29m
2/g)や、Jiangix Black Cat社製のStatexN660(N
2SA:35m
2/g)、キャボットジャパン(株)製のショウブラックN660(N
2SA:35m
2/g)などが挙げられる。これらのカーボンブラックは、単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、ASTMD3037−81に準拠してBET法で測定される値である。
【0036】
なお、本発明のゴム組成物により構成されたタイヤ加硫用ブラダーとする場合は、耐空気透過性よりもカーボンブラックによりゴム強度を向上させて耐久性に優れたゴム組成物が求められるという観点から、窒素吸着比表面積(N
2SA)が40〜200m
2/gのカーボンブラックを用いることが好ましい。
【0037】
カーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、カーボンブラックを含有することによる補強効果が良好に得られるという理由から20質量部以上が好ましく、25質量部以上がより好ましい。また、カーボンブラックの含有量は、補強効果を確保するという理由から70質量部以下が好ましく、65質量部以下がより好ましい。
【0038】
前記シリカとしては、タイヤ工業において一般的に用いられるものを配合してもよい。しかし、シリカと共にシランカップリング剤を配合するためコストが高くなる、押出しシート作成時にシランカップリング剤に覆われていないシリカが再凝集してシート加工性が悪化することから、使用しないことが好ましい。
【0039】
前記その他の無機フィラーとしては、タルク、マイカ、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。なかでも、耐空気透過性に優れることから偏平無機フィラーが好ましく、さらに成形加工性においても優れるという理由から偏平水酸化アルミニウムが好ましい。
【0040】
偏平水酸化アルミニウムとしては、工業的にボーキサイトから製造された偏平率5〜30であり平均粒子径が1.0μm以下の偏平水酸化アルミニウムが、耐空気透過性、成形粘着性により優れるという理由から好ましい。
【0041】
偏平水酸化アルミニウムの平均粒子径は、1.0μm以下が好ましく、0.9μm以下がより好ましい。また、平均粒子径の下限は特に限定されない。なお、水酸化アルミニウムの平均粒子径は2次凝集分布測定の累積カーブ得られたd50の値である。
【0042】
偏平水酸化アルミニウムの偏平率は、5〜30が好ましく、10〜30がより好ましい。なお、水酸化アルミニウムの偏平率は、SEM画像から回析した値である。
【0043】
偏平水酸化アルミニウムの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、再凝集しにくく、単粒子でも破壊核になりにくいという理由から、3〜100m
2/gが好ましく、10〜60m
2/gがより好ましい。なお、水酸化アルミニウムの窒素吸着比表面積は、ASTMD3037−81に準拠してBET法で測定される値である。
【0044】
また、偏平水酸化アルミニウムのモース硬度は、設備摩耗が少ないという理由から、3以下が好ましい。なお、モース硬度とは、材料の機械的性質の一つで古くから鉱物関係で広く用いられている測定法であり、以下の10種類の鉱物で順次引っ掻いて傷つけばその鉱物よりも硬度が低いとする方法である。硬度の低い方から、1:タルク(滑石)、2:石膏、3:方解石、4:螢石、5:アパタイト(リン灰石)、6:正長石、7:水晶、8:トパーズ(黄玉)、9:コランダム、10:ダイヤモンドが使用される。
【0045】
本発明のゴム組成物は、Tgが60℃以下のテルペン系樹脂に加え、「Tgが60℃以下のテルペン系樹脂」以外の樹脂を適宜配合することができる。なかでも、Tgが50℃以上のテルペン系樹脂以外の樹脂(非テルペン系樹脂)を含有することが、成形加工性や耐空気透過性の観点から好ましい。なお、本明細書における軟化点とは、樹脂が変形し始める温度をいう。本発明において、軟化点は、JIS K2207の軟化点試験方法に記載の軟化点試験器に準じた自動軟化点試験器を使用し、JIS K5902に記載の軟化点測定方法に準じて測定される値である。
【0046】
Tgが50℃以上の非テルペン系樹脂としては、混合樹脂、非反応性アルキルフェノール樹脂、C5系石油樹脂およびクマロンインデン樹脂のうちTgが50℃以上のものが挙げられる。なかでも、空気遮断性および成形加工性に優れるという理由からは、混合樹脂を含むことが好ましい。また、成形加工性(粘着性)に優れるという理由からは非反応性アルキルフェノール樹脂を含むことが好ましい。
【0047】
前記混合樹脂とは、2種以上のモノマーの共重合体をいう。混合樹脂を配合することで、カーボンなどの補強材とポリマーとの空隙を埋めることにより、空気遮断性をより改善することができる。混合樹脂に使用するモノマーとしては、例えば、フェノール性粘着モノマー、クマロン、インデンなどの芳香族炭化水素系モノマー、C5、C8、C9などの脂肪族炭化水素系モノマーなどが挙げられ、これらのなかから2種以上を選択して共重合させたものを使用することができる。なかでも、芳香族系モノマーおよび脂肪族系モノマーを含むことが好ましく、芳香族炭化水素系モノマーと脂肪族炭化水素系モノマーとの組み合わせがより好ましく、高分子芳香族炭化水素モノマーと脂肪族炭化水素モノマーとの組み合わせがさらに好ましい。
【0048】
混合樹脂として具体的には、ストラクトール社製のストラクトール40MS、ラインケミー社(Rhein Chemie Corp.)のレノジン145A、フローポリマー社(Flow Polymers Inc.)のプロミックス400などが挙げられる。
【0049】
混合樹脂を含有する場合のゴム成分100質量部に対する混合樹脂の含有量は、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。混合樹脂の含有量が3質量部未満の場合は、混合樹脂を配合することによる効果が得られにくくなる傾向がある。また、混合樹脂の含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。混合樹脂の含有量が20質量部を超える場合は、耐空気透過性が飽和となる一方、ゴム組成物の耐クラック性、特に耐低温クラック性が低下する傾向がある。
【0050】
前記非反応性アルキルフェノール樹脂とは、鎖中のベンゼン環の水酸基のオルト位およびパラ位(特にパラ位)にアルキル鎖を有し、加硫時に架橋反応への寄与が小さいものをいう。なお、非反応性アルキルフェノール樹脂は、前記混合樹脂とは別に配合される樹脂である。非反応性アルキルフェノール樹脂として具体的には、ストラクトール社製のTH110、スケネクタディ社製のSP1068レジンなどが挙げられ、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
前記C5系石油樹脂は、前記混合樹脂とは別に配合される樹脂であり、具体的には、丸善石油化学(株)のマルカレッツT−100ASなどが挙げられる。また、前記クマロンインデン樹脂は、クマロンおよびインデンを含む樹脂であり、混合樹脂とは別に配合される樹脂であり、具体的には、日塗化学(株)製のニットレジン クマロンG−90(軟化点:90℃)、Rutgers Chemicals社製のNOVARES C10(軟化点:10℃)などが挙げられる。一般的にこれらの樹脂成分は、前記非反応性アルキルフェノールより粘着力に劣る傾向があるが、低燃費性に優れる。
【0052】
非反応性アルキルフェノール樹脂、C5系石油樹脂およびクマロンインデン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量(併用する場合は合計配合量)は、成形加工性向上の観点および耐空気透過性悪化の防止の観点から、0.2〜3質量部とすることが好ましいが、含有しないことがより好ましい。
【0053】
また、Tgが50℃以上の非テルペン系樹脂を含有する場合のゴム成分100質量部に対する当該樹脂成分の含有量(併用する場合は合計配合量)は、耐空気透過性を最大限としながら、耐クラック性を確保するという観点から、6〜40質量部が好ましく、8〜30質量部がより好ましい。
【0054】
前記オイルとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的に用いられるプロセスオイルやミネラルオイルなどのパラフィンオイル、TDAEオイルなどが挙げられる。また、本発明のゴム組成物により構成されたタイヤ加硫用ブラダーとする場合は、キャスターオイル(ヒマシ油)などを用いることができる。
【0055】
プロセスオイルおよびミネラルオイルなどのパラフィン成分が多いオイルは、ブチル系ゴムとの相溶性に優れ、シート加工性などの成形加工性に優れるが、耐空気透過性を悪化させる傾向があることから、ゴム成分100質量部に対する含有量は3質量部以下が好ましく、含有しないことがより好ましい。一方、TDAEオイルはブチルゴムと相溶せず、ゴム組成物の表面に過度にブリードしてしまい、粘着性が悪化する傾向があるため、含有しないことが好ましい。
【0056】
<ゴム組成物およびタイヤ>
本発明に係るゴム組成物は、一般的な方法で製造できる。例えば、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどの一般的なゴム工業で使用される公知の混練機で、前記各成分のうち、架橋剤および加硫促進剤以外の成分を混練りした後、これに、架橋剤および加硫促進剤を加えてさらに混練りし、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0057】
本発明に係るゴム組成物は、下記の空気透過係数および/または空気遮断性指数を示すことを特徴とする。
【0058】
前記空気透過係数は、JIS K7126−1:2006に記載のガスクロマトグラフ法によるガス透過度試験方法に従って測定される空気透過量から算出される空気透過係数である。空気透過量は、ガス透過率測定装置(例えば、GTRテック(株)製のGTR−11A/31Aなど)を用いて、20℃での窒素ガス(N
2)および酸素ガス(O
2)のガス透過量を測定し、この測定結果から空気(N
2:O
2=80:20)の透過量を算出することができる。
【0059】
本発明に係るゴム組成物の空気透過係数は、インナーライナー用ゴム組成物またはブラダー用ゴム組成物として優れた耐空気透過性を示すという観点から、5.1×10
-11cm
3・cm/(cm
2・s・Pa)以下が好ましく、4.6×10
-11cm
3・cm/(cm
2・s・Pa)以下がより好ましい。当該空気透過係数の下限は特に限定されず、値が低いほど好ましい。
【0060】
前記空気遮断性指数は、JIS K7126−1:2006に従って空気透過量を測定し、下記式(1)により算出される指数である。空気遮断性指数が大きいほど、加硫ゴム組成物の空気透過量が小さく、空気遮断性に優れることを示す。なお、式(1)中、「比較例1」は後述の表1に記載の比較例1であり、「前記ゴム組成物」は本発明に係るゴム組成物である。
式(1):(空気遮断性指数)=(比較例1のゴム組成物の空気透過量)/(前記ゴム組成物の空気透過量)×100
【0061】
本発明に係るゴム組成物の式(1)による空気遮断性指数は、インナーライナー用ゴム組成物またはブラダー用ゴム組成物として優れた耐空気透過性を示すという観点から、110以上が好ましく、120以上がより好ましい。当該空気遮断性指数の上限は特に限定されず、値が高いほど好ましい。
【0062】
本発明のタイヤは、前記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造できる。すなわち、ゴム組成物をインナーライナーの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成形機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することで本発明のタイヤを製造することができる。また、本発明のタイヤ加硫用ブラダーは、前記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造できる。
【実施例】
【0063】
実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定して解釈されるものではない。
【0064】
実施例
、参考例および比較例で使用した各種薬品について説明する。
Br−IIR:エクソン化学(株)製のブロモブチルゴム2255(SP値:7.8、Tg:−71)
NR:マレーシア産のTSR20(SP値:8.05、Tg:−74)
カーボンブラック1:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN660(N
2SA:35m
2/g)
カーボンブラック2:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN762(N
2SA:29m
2/g)
水酸化アルミニウム1:住友化学(株)製のAth#B(平均粒子径:0.6μm、偏平率:15、N
2SA:15m
2/g、モース硬度:3)
水酸化アルミニウム2:住友化学(株)製のAth#E(平均粒子径:0.3μm、偏平率:25、N
2SA:33m
2/g、モース硬度:3)
水酸化アルミニウム3:住友化学(株)製のC301N(平均粒子径:1.0μm、偏平率:10、N
2SA:4m
2/g、モース硬度:3)
水酸化アルミニウム4:住友化学(株)製のC302N(平均粒子径:2.5μm、偏平率:5、N
2SA:2m
2/g、モース硬度:3)
プロセスオイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスPA32(パラフィン成分:67質量%、ナフテン成分:28質量%、アロマ成分:5質量%、SP値:7.8、Tg:−66)
C5系石油樹脂:丸善石油化学(株)製のマルカレッツT−100AS(SP値:8.5、軟化点102℃、Tg:62)
アルキルフェノール樹脂:スケネクタディ社製のSP1068レジン(SP値:11、軟化点:94℃、Tg:60、重量平均分子量(Mw):2225、数平均分子量(Mn):1053)
非水添ポリテルペン1:ヤスハラケミカル(株)製のPX1150N(SP値:8.42、軟化点:115℃、Tg:62)
非水添ポリテルペン2:ヤスハラケミカル(株)製のPX800(SP値:8.42、軟化点:80℃、Tg:42)
非水添ポリテルペン3:ヤスハラケミカル(株)製のダイマロン(SP値:8.42、液状)
非水添テルペン芳香族:ヤスハラケミカル(株)製のTO85(SP値:8.73、軟化点:85℃、Tg:41)
AMS樹脂:アリゾナケミカル社製のSA85(SP値:9.1、軟化点:85℃、Tg:43)
混合樹脂:ストラクトール社製の40MS(エチレン/プロピレン/スチレンからなる三元共重合体、SP値:8.9、軟化点:101℃、Tg:58℃)
水添ポリテルペン1:ヤスハラケミカル(株)製のP85(SP値:8.36、軟化点:85℃、Tg:43)
水添ポリテルペン2:ヤスハラケミカル(株)製のP105(SP値:8.36、軟化点:105℃、Tg:55)
水添ポリテルペン3:ヤスハラケミカル(株)製のP125(SP値:8.36、軟化点:125℃、Tg:67)
水添ポリテルペン4:ヤスハラケミカル(株)製のP150(SP値:8.36、軟化点:150℃、Tg:90)
水添テルペン芳香族1:ヤスハラケミカル(株)製のM105(SP値:8.52、軟化点:105℃、Tg:55)
水添テルペン芳香族2:ヤスハラケミカル(株)製のM125(SP値:8.52、軟化点:125℃、Tg:65)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸 椿
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック224(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
硫黄:細井化学工業(株)製のHK−200−5(オイル分5質量%)
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM(ジ−2−ベンゾチア
ゾリルジスルフィド)
【0065】
実施例
、参考例および比較例
表1〜3に示す配合処方に従い、配合材料のうち、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、5分間、排出温度160℃になるまで混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に、硫黄および加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて、4分間、95℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を所定の形状に押し出し成形し、170℃で12分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。なお、未加硫ゴム組成物および加硫ゴム組成物により、以下の各試験目的に応じたゴム試験片を作成し、評価した。
【0066】
成形加工性試験
下記の「粘着性試験」および「シート平坦性試験」を行い、各結果の総合評価を比較例1の評価と比較し、比較例1の結果を100とした指数で示す。指数が大きいほど、成形加工性に優れることを示す。本発明において、成形加工性(指数)は90以上を性能目標値とする。
【0067】
「粘着性試験」
前記未加硫ゴム組成物をロールを用いて厚み1mmのシート状に押し出し、得られたゴムシートについて、タックテスター((株)東洋精機製作所製「タックテスターII」)を用いて、金属平板センサーとゴム板間の粘着性(タッキネス)を測定した。
【0068】
「シート平坦性試験」
前記未加硫ゴム組成物をロールを用いて厚み2mmのシート状に押し出し、得られたゴムシートの平坦性を目視にて観察した。
【0069】
耐久性試験
各加硫ゴム組成物からJIS−K6251に準じて3号ダンベル試験片を作製し、引っ張り試験を実施した。破断時の伸び(EB)を測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数の値が高いほど、ゴム強度が高く、耐久性に優れることを示す。
【0070】
空気遮断性試験
各加硫ゴム組成物の20℃での空気透過量を、JIS K7126−1:2006に従い、ガス透過率測定装置(GTRテック(株)製のGTR−11A/31A)を用いて測定し、空気透過量から算出された空気透過係数を示す。空気透過係数が小さいほど、加硫ゴム組成物の空気透過量が小さく、空気遮断性に優れることを示す。また、下記式により、各配合の空気透過量を指数表示した。空気遮断性指数が大きいほど、加硫ゴム組成物の空気透過量が小さく、空気遮断性に優れることを示す。本発明において、空気遮断性(指数)は110以上を性能目標値とする。
(空気遮断性指数)=(比較例1のゴム組成物の空気透過量)/(各配合の空気透過量)×100
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
表1〜3の結果より、本発明のゴム組成物が、耐空気透過性、成形加工性、および耐久性に優れたゴム組成物であることが分かる。