(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップおよび外部接続装置を用いた半導体装置は、電子機器、自動車等多くの製品に用いられている。そして、それらの製品の高性能化、小型化、軽量化が進むなかで、半導体装置の小型化、多ピン化、外部接続端子のファインピッチ化が求められている。従来、半導体基板の材料としては、エポキシ樹脂およびそれをガラス繊維に含浸させたガラエポ材料など、有機材料が多く用いられてきたが、有機材料においては、その多くは、吸水率が比較的高かったり、シリコン製の半導体チップと比較して、温度による収縮、膨張が大きかったりするため、半導体チップとスケールの整合をとった微細配線の形成が困難であり、半導体チップと接続した後の信頼性の確保という面で、大きな問題を有していた。
【0003】
そこで、有機材料に代わる半導体基板の材料として、シリコンやガラスが注目されている。これらは、吸湿、温度による伸縮が、有機材料と比べて、大きく低減されているため、微細配線の形成および、半導体チップとの接続信頼性という面で、大きなメリットを有している。
【0004】
両者を比較すると、シリコンを材料とする基板は、半導体チップ製造のノウハウを利用して、ガラス基板よりもさらに微細な配線形成が可能であり、さらに貫通電極(TSV:Through−Silicon−Via)形成プロセスも確立されている反面、その形状が円盤型に限定され、ウエハー周辺部が利用できなかったり、大型サイズでの製造が困難であったりという短所もある。これに対して、ガラス基板においては、まだ製造プロセスが確立していない反面、ディスプレイ材料などでのノウハウを利用しての大型化が可能である。
【0005】
さらに、電気特性での比較を考えると、シリコン基板が半導体なのに対し、ガラス基板は絶縁体であるので、高速伝送回路においても、寄生素子発生の懸念がなく、より電気特性に優れているといえる。そもそも、ガラス基板の場合は、その表面に絶縁膜を形成する工程自体が不要であるため、本質的に絶縁信頼性が高く、また工程の短縮という点においても有利である。
【0006】
以上のように、多くの利点を持つガラス基板であるが、製造プロセスがまだ十分に確立していないという問題がある。とくに、その脆性ゆえに、表面の電気的導通をとるのに必要な貫通電極(TGV:Through−Glass−Via)の形成に困難性が伴う点と、配線材料の主流である銅との密着が弱いことによる、配線形成の確実性が高くない点とに課題がある。
【0007】
現在広く用いられている、ガラス基板を用いた配線基板の製造方法としては、以下のようなものがある。
図11(a)〜
図12(l)に、従来技術に係る配線基板の製造方法を説明する断面図を示す。
(1)初めに、ガラス基板1(
図11(a))に、レーザー加工、エッチング等の方法により貫通穴2を開ける(
図11(b))。
(2)スパッタリング、真空蒸着などの方法により、上記貫通穴2の側壁およびガラス基板1の表裏面に導電シード層3を形成する(
図11(c))。
(3)貫通穴2側壁、ガラス基板1表裏面に導電シード層4(無電解メッキ層、たとえば銅)を形成する(
図11(d))。
(4)貫通穴2側壁、ガラス基板1表裏面に、導電層5(たとえば銅)を形成する(
図11(e))。
(5)スクリーン印刷等の方法により、貫通穴2内部に絶縁樹脂7を充填する(
図11(f))。
(6)CMP(物理化学研磨)等の方法により、ガラス基板1表裏面の絶縁樹脂7および各導電層を除去する(
図11(g))。
(7)ガラス基板1表裏面に、導電層5との導通をとるべく、スパッタ、真空蒸着などの方法により、ガラス基板1表裏面に導電シード層10を積層する(
図11(h))。
(8)フォトリソグラフィー等により、ガラス基板1表裏面にレジストパターン13を形成する(
図11(i))。
(9)電解めっき(たとえば銅)等により、配線パターンをメッキアップして配線層6を形成する(
図11(j))。
(10)レジストパターン13を剥離する(
図12(k))。
(12)エッチングにより露出した導電シード層10を除去する(
図12(l))。
多層配線基板を製造する場合には、これに加えて、ビルドアップ層形成、最外層へのメッキ加工などへと続いてゆく。
【0008】
以上の工程によって、
図9に示した様な断面構成を持つ配線基板200が完成する。また、この配線基板200の表裏面にビルドアップ法により、層間絶縁層8と接続穴9、導電シード層10、配線層12、導電層11等を形成することにより、多層配線基板201を作製することができる。
【0009】
上記の配線基板の製造工程において問題となるのが、(7)と(9)の工程における、導電層5とガラス基板1の表裏面の配線層6との電気的接続の信頼性確保である。
図13に示すように、ガラス基板1の表裏面の貫通穴2の開口部などの絶縁樹脂7や、導電層5およびその下地の導電シード層3、4を除去して(
図11(f)、(g)参照)、ガラス基板1の表裏面と、絶縁樹脂7等の露出面が、ほぼ同一平面内にある場合、続く工程にて形成される導電シード層10と導電層5との接点は、導電層5の露出した断面のみとなり、両者の接触面積が低減する(
図13右側の拡大図参照)。そのため、加工コスト、加工速度などの要請により、導電層5を薄くおさえる場合には、更に接触面積が減ることとなり、接続信頼性が不十分になる虞がある。
【0010】
このように、2つの導体を接触させて電気的な導通をとる構造における接続信頼性を高める技術として、例えば特許文献1には、両面フレキシブルプリント配線板の絶縁フィルムの表裏面に形成されている導体配線の導通をとる構造として、表裏面の導体配線が重なる部位において、片面または両面に拡開した導電体圧入孔を設け、その導電体圧入孔に隙間なく圧入された導電体により、導電体圧入孔が擂鉢(すりばち)状に変形した層間接続部において、一方の面に形成された導体配線層と導電体が接合し、且つ他方の配線層より突出して表面の一部が被覆、接合されているか、または導電体が導電体圧入孔の鼓(つづみ)状に変形した両面の導体配線層と接合している層間接続構造が開示されている。
【0011】
この層間接続構造では、導電体圧入孔の鼓状に変形した導体配線層と導電体圧入孔の導電体が接合されているため、接触面積が増加するため、接続信頼性を高めることが可能となる。
しかしながら、
図11に示したような絶縁性基板の貫通穴に絶縁性樹脂を充填する構成においては、この技術を適用することはできない。
【0012】
そのため、ガラス基板に貫通穴を形成した後、ガラス基板の表裏面と貫通穴の内壁面に導電体を形成し、更に貫通穴に絶縁樹脂を充填した構成のガラス基板を用いた配線基板において、表裏面の導体配線をガラス基板に形成した貫通穴の層間接続構造の接続信頼性を高めた配線基板が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、ガラス基板の表裏面の配線層と貫通穴内の導電層との間の接続信頼性を向上させたガラス配線基板及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決する手段として、本発明の請求項1に記載の発明は、ガラス基板の表裏面に形成された配線層を電気的に接続する貫通穴を備えた配線基板であって、
貫通穴の内壁面には、導電シード層と導電層が備えられており、
前記導電層の内側には、絶縁性物質が充填されており、
ガラス基板の表裏面の貫通穴には、貫通穴の内壁面から延伸した突出部が備えられており、
突出部の側面には、導電層と導電シード層が少なくとも備えられており、またガラス基板の表裏面に面した突出部の頂部には、導電シード層を介して配線層が備えられていることを特徴とする配線基板である。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の配線基板の片面または両面に、ビルドアップ層を有することを特徴とする多層配線基板である。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、ガラス基板に貫通穴を設ける工程と、
ガラス基板の表裏面および貫通穴の内壁に、導電シード層と導電層をこの順に設ける工程と、
貫通穴に絶縁性物質を充填する工程と、
ガラス基板の表裏面に付着した絶縁性物質と導電シード層と導電層を除去することにより、ガラス面を露出させる工程と、
ガラス基板の表裏面のガラスをエッチング除去して所定の寸法だけ薄くする工程と、
ガラス基板の表裏面に導電シード層を設ける工程と、
その導電シード層の表面に、形成する配線パターンのネガパターンからなるレジストパターンを設ける工程と、
レジストパターンが形成されていない導電シード層上に配線層を設ける工程と、を備えていることを特徴とする配線基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の配線基板によれば、導電層と配線層との接触面積を大きくすることができるため、ガラス基板表面上の配線層形成時に両者の接続がとれない不良を低減し、さらに、配線基板完成後の使用環境において、導電層と配線層との断線が起きる可能性が低減する。
【0019】
また、本発明の製造方法によれば、いったんガラス基板表裏面上の絶縁性物質、導電層を除去して、絶縁性物質の上下端面とガラス基板表裏面を露出させるため、ガラスを選択的にエッチングして、導電層の一部を突出させることができ、そのことから導電層と配線層との接触面積を大きくすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る配線基板、多層配線基板、及びその製造方法について、図面を参考にして、詳細に説明する。
【0022】
<配線基板>
本発明の配線基板は、ガラス基板の表裏面に形成された配線層を電気的に接続する貫通穴を備えた配線基板である。
本発明の配線基板の貫通穴の内壁面には、導電シード層と導電層がこの順に備えられている。貫通穴の導電層の内側には、絶縁性物質である絶縁樹脂が充填されている。ガラス基板の表裏面の貫通穴には、貫通穴の内壁面から延伸した突出部が備えられている。
突出部の側面には、導電シード層と導電層がこの順に備えられており、またガラス基板の表裏面に面した突出部の頂部には、導電シード層を介して配線層が備えられている。
【0023】
図1及び
図2に、本発明の実施形態に係る配線基板100の要部断面図を示し、
図1及び
図2に示すように、配線基板100は、貫通穴2を有するガラス基板1と、貫通穴2の側壁に積層された導電層5と、貫通穴2内を満たす絶縁樹脂7とを含む。ガラス基板1の表裏面には、導電シード層3及び配線層6が形成され、ガラス基板1の貫通穴2の側壁には、導電層5の下層に導体シード層3、4が積層されている。絶縁樹脂7および、その側壁面を覆う導体層(導電シード層3、4および導電層5)は、ガラス基板1の表裏面から所定の高さだけ突出するように形成されている。ガラス基板1の表裏面に、配線層6が積層され、配線層6と導電層5とは導電シード層30を介して電気的に接続されている。
【0024】
図2に示すように、貫通穴2に充填された絶縁樹脂7およびその側壁面を覆う導体層が、貫通穴2の入り口より突出した位置にあり、ガラス基板1の表裏面と絶縁樹脂7の露出面との間に段差16がある。ガラス基板1の表面の配線層6と導電層5とは、この段差16を形成する側壁に沿って接続できるため、段差16がない場合と比較すると、接続面積を増加させることができる。この段差16を形成する貫通穴2からガラス基板1の表面に直交する方向に延伸する凸部を突出部と呼ぶことにする。
【0025】
図3に、本発明の実施形態に係る多層配線基板110の要部断面図を示す。
図3に示すように、多層配線基板110は、配線基板100の片面または両面に、接続穴9を有する層間絶縁層8と配線層12とを導電シード10を介して交互に積層し、配線層6と配線層12間の導通を、層間絶縁層8の接続穴9内に形成した導体層11によって行う。配線層12上には、めっき層15が形成されている。
【0026】
次に、配線基板100及び多層配線基板110の製造方法について、
図4〜
図6を参照して、詳細に説明する。
【0027】
まず、ガラス基板1(
図4(a))の所望の位置に、貫通穴2を開ける(
図4(b))。ガラスの種類としては、とくに限定せず、たとえば、石英ガラスや無アルカリガラス、硼珪酸ガラスなどを用いることができる。形成する手段としてもとくに限定せず、ウエットエッチング、ドライエッチング、レーザー加工、放電加工などを使用することができる。
【0028】
次に、少なくともガラス基板1に開けた貫通穴2の内部に、導電シード層3、4を形成する(
図4(c)、
図4(d))。導電シード層3、4としては、無電解めっき層、スパッタ層、真空蒸着層などが考えられるが、ガラス基板1との密着性を確保するという点から、ガラス基板1と直接接する面には、Tiをスパッタ加工にて積層するのが望ましい。そして、その上に銅層を積層する場合には、Ti層の上に、同じくスパッタ加工にて銅層を積層しておくのが、密着性の面で望ましい。
【0029】
なお、貫通穴2の中に導体シード層3、4を形成する場合、貫通穴2の中のみに形成し、予めレジスト層を形成しておくなどの手段をもって、ガラス基板1の表裏面には導体が付着しないようにすることも考えられる。しかしながら工程が複雑になるのと、後に電解メッキをする際に、基板全体が導通していたほうが都合がよいため、この説明においては、ガラス基板1の表裏面にも、いったん導体シード層3、4を形成し、のちに除去する工程を説明するが、これに限定する訳では無い。
【0030】
次に、少なくとも貫通穴2内に強固な導電層5を形成すべく、電解メッキを施す(
図4(e))。電解メッキする金属としては、限定するものではないが、コスト、電気的性質、加工性などの面に優れる銅であることが望ましい。
【0031】
これまでの工程を経て、貫通穴2の内部は、その側壁に導電シード層3、4および導電層5が積層した中空の状態になっている。これは、後の工程や基板完成後の使用環境において、破裂や導体剥離の原因となるため、次の工程において、この中空部の封止をする(
図4(f))。封止をする材料については、有機ポリマーなどを主成分とする絶縁性物質、銀粒子などを分散した導電性ペーストなどの両方がありうる。ここでは、それ以前の工程において、貫通穴2の側壁に導電層5を形成しているため、絶縁樹脂7を充填しているが、導電性ペーストを充填しても良い。絶縁樹脂7については、とくに限定するものではないが、絶縁性、加工性などの面から、エポキシ系樹脂が望ましい。
【0032】
絶縁樹脂7の充填方法については、とくに限定するものではなく、プレス法、印刷法、モールド法などがあるが、加工の簡便性、加工品質の高さなどから、シルクスクリーンマスクを用いての印刷法が好適に用いられる。なお、この方法を用いた場合、絶縁樹脂7は、貫通穴2を満たしたうえで、ガラス基板1の表裏面上にあふれることになる。あふれた樹脂は、均一な厚さの層となって、ガラス基板1の表裏面上に積層しうるが、多くの場合は、厚さの不均一な島状に点在することとなる。
【0033】
ここまでの工程で、ガラス基板1の表裏面上には、導電層5が積層され、その上に、貫通穴2内からあふれた絶縁樹脂7が形成された状態である。次に、このガラス基板1の表裏面上を研磨してこれらを除去する。この手段については、とくに限定されるものではないが、加工品質の高さ、加工の簡便性などから、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)が好適である。CMPは、ガラス基板1の表裏面が完全に露出するまで行う(
図4(g))。
【0034】
これまでの工程によって、ガラス基板1の表裏面と、導電層5及び絶縁樹脂7の露出面とは、ほぼ面一の状態にある。次に、絶縁樹脂7およびその側壁面を覆う導体層(導電シード層3、4および導電層5)を、ガラス基板1の表裏面から突出させる。この方法については、とくに限定されるものではないが、マスク、レジスト等でガラス基板1の表裏面を覆うことなく、簡便に実施する方法として、ガラス表面の選択的エッチングがある。具体的には、フッ化水素酸を主成分とするガラスエッチング液に、適切な条件にて、
図4(g)に示した状態のガラス基板1全体を浸漬することにより、絶縁樹脂7や導体層は影響をうけることなく、ガラスのみがエッチングされるため、結果として、ガラス基板1の表面より絶縁樹脂7およびその側壁面を覆う導体層が突出する(
図4(h))。なお、めっき液の種類にもよるが、ガラス基板1の表裏面と、ガラスエッチングが進行して突出した状態の絶縁樹脂7およびその側壁面を覆う導体層の露出面(突出部)とでは、めっきの成長速度が異なる。したがって、コンフォーマル形状を仮定して、このTGV(Through Glass Via、ガラス貫通電極)入り口付近の突出部の高さは、少なくとも、導電層5の厚みと同程度は必要である。一方、この突出部が高すぎると、樹脂の埋め込み性や、メッキのつきまわり等との関係で弊害が生じるおそれがある。そのため、突出部の高さ(段差16)は、ガラス基板1上に形成される配線層6の厚みの0.25倍以上あることが好ましい。そして、より好ましくは0.5倍以上である。
【0035】
次に、ガラス基板1の表裏面、導電シード層3、4、導電層5、絶縁樹脂7上に、ふたたび導電シード層30を積層する。方法については、とくに限定されるものではないが、本実施形態では、スパッタ法によるTiと銅との成膜を採用した(
図4(i))。この工程において、前工程において、ガラス表面からの突出部を設けた効果で、新たにガラス基板1の表裏面上に形成した導電シード層30が、より広い接触面積にて、導電層5と接合している。
【0036】
次にガラス基板1の表裏面の導電シード層30の上に、フォトリソグラフィー法によりレジストパターン13を形成する(
図4(J))。レジストパターン13をガラス基板1の表面全面に塗布した後に、所定のマスクを介して露光し、現像によってレジストの余分なパターンを除去することにより、レジストパターン13が形成される。この場合のレジストパターン13の厚さは、後の電解メッキ加工において、所望するメッキ厚よりも厚く形成することが必要である。また、この場合のレジストパターン13は、後の配線形成工程において、セミアディティブ法を採用する場合は、配線の必要な部分のレジストが除去されている、いわゆるネガパターンであり、サブトラクティブ法を採用する場合においては、逆にポジパターンである。
【0037】
次に、導電シード層3の上に、配線層6を形成する。この図においては、セミアディティブ法を採用しているが、これに限るものではない。本実施形態においては、電解メッキにて導体を導電シード層30の上に、所望の厚さまで成長させる(
図5(k))。
【0038】
次に、レジストパターン13を除去する(
図5(l))。続いて、導電シード層30を除去し、配線パターンを完成させる(
図5(m))。導電シード層30の除去においては、層を構成する物質にあわせて、逐次選択エッチングする方法が好適であるが、これに限るものではない。本実施形態において、導電シード層30は外側からみて、スパッタ銅、スパッタTiの順であるから、まず銅のエッチング液、具体的には硫酸−過酸化水素系エッチング液等を用いて、導電シード層30の銅を除去する。この際に、配線層6を形成する銅も溶解されるため、導電シード層30の銅は完全除去され、かつ配線層6の銅の溶解は、問題とならない条件にて、エッチングを行うことが必要である。次にTiのエッチングを行うが、この場合は、Tiに選択性のあるエッチング液を用いれば、配線層6の溶解を懸念する必要はない。
【0039】
以上にて、配線基板100が完成した。続いて、ビルドアップ層の加工についての説明を行う。
【0040】
<多層配線基板>
本発明の多層配線基板は、本発明の配線基板の片面または両面に、ビルドアップ層を形成した多層配線基板である。
【0041】
本発明の多層配線基板の製造方法について説明する。
まず、配線基板100の表裏面の上に、層間絶縁層8を形成する(
図5(n))。材料としては、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、SiO
2膜などがありうるが、これらに限定されるものではない。積層方法についても、ゾルゲル法、真空蒸着法、スピンコート、ラミネート、プレスなどがありうるが、これらに限定されるものではない。本実施形態においては、エポキシ系のフィルム状絶縁体を真空プレスによってラミネートし、形成することを想定している。層間絶縁層8の厚さについては、突出部を確実に覆うことのできる厚さを選択する。
【0042】
続いて、層間絶縁層8に、下の配線層6との電気的導通をとるためのビアホールを形成する。まずレーザー加工、ドリル加工などによって、層間絶縁層8に接続穴9を開ける(
図5(o))。この接続穴9の中に導電性物質を充填することによって、ビアホールが完成するが、本実施形態においては、これを層間絶縁層8上の配線パターン形成と同時進行にて行う。
【0043】
層間絶縁層8に接続穴9を設けたあとに、接続穴9内および層間絶縁層8表面に、導電シード層10を設ける。形成の方法にはとくに限定はないが、本実施形態においては無電解銅めっきを用いる(
図5(p))。
【0044】
次に、導電シード層10上にレジストパターン14を形成する(
図5(q))。詳細な方法については、先に説明した、ガラス基板1上へのレジストパターン13の形成と同様である。上記にて無電解銅めっきを施した接続穴9に関しては、レジストパターン14において、配線を形成する箇所と同様に扱う。
【0045】
次に、レジストパターン14どおりに、配線層12を成長させる(
図5(r))。この実施形態においては、ガラス基板1上へ導電層6を形成した場合と同様に、電解メッキによることを想定しているが、とくにこれに限定するものではない。ただし、本工程は、配線パターンの他に、層間絶縁層8にもうけた接続穴9への導電物質の埋め込みによる導電層11の形成も目的としているため、電解メッキを行う場合の、メッキ液、メッキ条件の選定においては、接続穴9の内部が完全に配線層12で満たされるよう、いわゆるフィルドメッキの条件によって行う。
【0046】
次に、レジストパターン14を除去し(
図6(s))、次いで、その上に配線層12のない導電シード層10の除去を行う(
図6(t))。この説明においては、ガラス基板1上への導体パターン形成の場合と同様に、選択的エッチングによることを想定しているが、とくにこれに限定されるものではない。
【0047】
図6(t)においては、ガラス基板1の表裏面に、それぞれ1層の層間絶縁層8及び配線層12を設けた構造を説明しているが、さらに積層したい場合には、上記説明の層間絶縁層8形成の工程から、配線層12形成の工程を繰り返せばよい。
【0048】
最後に、ワイヤボンディング、半田ボール接続法などによって、半導体素子、プリント配線板などと接続するために、配線層12の所定の部分に、めっき加工を施してめっき層15を形成する(
図6(u))。メッキの種類については、とくに限定するものではなく、Au、銀、ニッケル、パラジウム、錫、亜鉛、それらの合金、あるいはそれらの積層構造などから、用途に合わせて適宜選択してよい。後の接続の際に、最外層の一部をマスキングしたほうがよい場合には、最外層のさらに上に、ソルダーレジスト層を設けてもよい。以上によって、多層配線基板110が完成する。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施の形態に基づく実施例について説明する。
【0050】
<実施例1>
ガラス基板1として400μm厚で直径300mmの無アルカリガラスを用意(
図4(a))し、
図4(b)に示した様に、両面からのレーザー加工によって直径100μmの貫通穴2を、所望の位置に設けた。続いて、
図4(c)、(d)に示した様に、片側ずつ両面にスパッタ加工にて、チタン、銅の順に、それぞれ0.05μm、0.3μmの厚さの導電シード層3、4である薄膜を形成した。さらに
図4(e)に示した様に、無電解メッキプロセスによって、0.3μmの厚さでニッケル層を積層した。この際に、貫通穴2の内部にも液がとどいて内壁への積層が行われるよう、液攪拌および液噴流を利用した。続いて、電解銅メッキプロセスにおいて、10μmの厚さにて銅を積層した。
【0051】
これまでの工程において、貫通穴2の側壁への導電層5の積層が完了し、次いで、
図4(f)に示した様に、貫通穴2内に絶縁樹脂7を充填した。充填に際しては、充填対象の貫通穴2部分を開口したメタルマスクを使用して、絶縁樹脂7である穴埋めインクを印刷加工にて充填した。インクとしては、山栄化学社製の「PHP900IF10F」を使用した。印刷はガラス基板1の一方の面から行い、反対面側から真空吸着することによって、ボイドなく充填することができた。充填加工後において、余分な絶縁樹脂7が、ガラス基板1の表裏面に島状に点在した。
【0052】
次いで、
図4(g)に示した様に、ガラス基板1の表裏面に点在している絶縁樹脂7ならびにその下に積層されている導電層5、導電シード層3、4を、CMP加工にて除去した。加工はガラス基板1の表裏面が完全に露出するまで行った。この段階で、ガラス基板1の表裏面に露出した導電シード層3、4、導電層5、絶縁樹脂7は、ガラス基板1の表裏面と同一平面上にあるようにCMP加工を行った。
【0053】
次いで、
図4(h)に示した様に、ガラス基板1を、フッ化水素酸を主成分とするガラスエッチング液に浸漬することによって、ガラス基板をエッチングした。エッチングする狙い厚は10μmとし、予備実験によって、浸漬時間による除去厚を調べ、その結果をもって、加工条件設定を行った。
【0054】
次いで、
図4(i)に示した様に、露出したガラス基板1の表裏面、導電シード層3、4、導電層5、及び絶縁樹脂7に、貫通穴2と同様のスパッタ処理を行い、チタン層、銅層からなる導電シード層3、4を形成した。続いて
図4(j)に示した様に、、両面にネガ型ドライフィルムレジストをラミネートし、所定のマスクを介して露光を行い、現像処理を経て、ガラス基板1の両面に配線パターンのネガ像を形成した。後に電解メッキによって配線形成をする際の配線層6の厚さを考慮し、ドライフィルムレジストの厚さは25μmとした。続いて、
図5(k)に示した様に、電解銅メッキにより、配線層6を形成した。配線層6の厚さとしては、15μmを目標膜厚とした。
【0055】
次いで、
図5(l)に示した様に、水酸化ナトリウムを主成分とする剥離液に、基板を浸漬することによって、ドライフィルムレジストの剥離を行い、さらに
図5(m)に示した様に、硫酸と過酸化水素水とを主成分とするエッチング液による処理を短時間行うことによって、ドライフィルムレジストによる配線ネガパターンの下にあった導電シード層のうちのスパッタ銅層を溶解除去した。続いて、フッ化アンモニウムと過酸化水素水を主成分とするチタンエッチング液によって、スパッタチタン層を溶解除去した。ここまでの工程によって、ガラス基板1の表裏面の配線層6が完成した。
【0056】
ところで、このガラス基板1の表裏面の配線層6のパターンの設計に際しては、貫通穴2内の導電層5とガラス基板1の表裏面の配線層6との接続性を検証すべく、貫通穴2の端部付近に導通チェック用の電極を設けたテストパターン17を設けている。
図7に、テストパターン17の配置を示したガラスウエファーの平面図(
図7(a))及び拡大図(
図7(b))を示し、
図8に、テストパターン17の断面図(上側の図)及び平面図(下側の図)を示す。テストパターン17は、
図7(a)に示すように、ガラスウエファー上の5箇所に、それぞれ100個ずつ設けた(
図7(b))。各テストパターン17は、
図8に示すように、配線層に形成した導電層5上のパッド18と、測定用端子を接触させるパッド20と、これらの間の配線19とから構成され、次工程に進む前に、ハンドテスターにて全数の導通チェックを行った。
【0057】
続いて、
図5(n)に示した様に、基板の両面に、層間絶縁層8を積層した。具体的には、味の素ファインテクノ社製の層間絶縁フィルム「ABF−GX13」(厚さ25μm)を両面にラミネートした。次いで、
図5(o)に示した様に、層間絶縁層8上から、レーザー加工によって接続穴9を形成した。接続穴9はガラス基板1の表裏面の配線層6の所定の位置に合せて形成し、その後、加工残渣除去のためのデスミア処理を行った。
【0058】
続いて、
図5(p)に示した様に、層間絶縁層8上に形成する配線層12と層間絶縁層8に設けた接続穴9内部の導電層11のためのシード層10として、無電解銅メッキ層を形成した(
図5(r)参照)。次いで、
図5(q)に示した様に、両面にドライフィルムレジストを貼付し、所定のマスクを介して露光を行い、現像することによって、配線ネガパターンを形成した。続いて、
図5(r)に示した様に、電解銅メッキ加工によって、配線層12を積層し、続いて、
図6(s)に示した様に、ドライフィルムレジストの剥離除去を行い、さらに、
図6(t)に示した様に、電解シード層である無電解銅メッキ層を、フラッシュエッチング処理によって溶解除去した。以上によって、層間絶縁層8上の配線層12の形成が完了した。
【0059】
最後に、
図6(u)に示した様に、最外層の配線層12にメッキ処理を行い、めっき層15を形成した。具体的には、無電解メッキにて、ニッケル5μm、パラジウム0.05μm、金0.1μmを、この順にて積層した。以上をもって、多層配線基板110の作製が終了した。
【0060】
<比較例1>
図4(g)に示した様に、CMP加工によって、ガラス基板1の表裏面を露出させた後に、
図4(h)に示した様な、ガラスエッチング液によるガラス基板1のエッチングを行わなかったことを除いては、実施例1と同じ方法にて、多層配線基板を作製した。
【0061】
実施例1および比較例1の多層配線基板について、そのガラス基板1の表裏面に直接配線を施した後に、ガラス基板1の導電層5と配線層6との接続をチェックした。具体的には、導電層5の両端に接続された配線層6中のパッド20を、日置電機社製テスター「3540 mΩ HiTESTER」にて導通チェックした。導通チェックのタイミングとしては、基板作製直後に室温環境下にて行うのと、冷熱保存後(−55℃、15分→25℃、5分→120℃、15分→25℃、5分を1サイクルとし、それを1000サイクル繰り返す)に行った。合否の判定は、パッド間の抵抗値が、1Ω未満を合格、1Ω以上を示した場合、接続に問題があるとみなして不合格とした。測定結果を表1に示す。実施例1においては、1つのガラスウェハの中の各100個の試験箇所で、不合格となったものが無かったのに対し、比較例1においては、作製後でも不合格なものが出たが、冷熱試験後においては、全ての試験箇所で不合格になったものが出た。
【0062】
【表1】
【0063】
以上説明したように、本発明によれば、ガラス基板内の導電層とガラス表面上の配線層との接続の信頼性が高く、ひいては全体として高い信頼性をもつ配線基板を提供することができる。