(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シール部材は、外周に沿って外壁を有し、該外壁を前記流路隔離部材と前記第2のケース側の構成部材とにそれぞれ当接して密着させることにより、前記接続部が配置された空間を封止することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記構成において、上側ケース部材は下側ケース部材に対してケースの下部側から例えばネジ止めやカシメ止めにより固定されているだけであるため、上下ケース部材の内部は気密性・液密性が確保されたものではない。また、シール部材として用いられる一般的なエラストマーは、ガスバリア性が高められたものではないため、液体流路内の水分(溶媒成分)が、上記大気開放路以外にもシール部材の素材を水蒸気として透過して大気に拡散してしまう。そのため、特に流路部材における液体流路内の液体の増粘が進行してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、流路部材における液体流路内の液体の増粘を抑制することが可能な液体噴射ヘッド、および、液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体噴射ヘッドは、上記目的を達成するために提案されたものであり、液体流路が形成された流路部材を収容する第1のケースと、
ヘッドユニットを有する第2のケースと、
前記第1のケース側の前記液体流路と前記第2のケース側の液体流路とをシールして液密に接続する接続部を有するシール部材と、
を備え、前記流路部材からの液体を前記ヘッドユニットのノズルから噴射させる液体噴射ヘッドであって、
前記シール部材と比較して高いガスバリア性を有する流路隔離部材が、前記第1のケースと前記シール部材との間に配置され、
前記流路部材は、前記第1のケースに前記流路隔離部材が接合されて当該第1のケース内に画成される封止空間内に配置されたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、流路部材が、第1のケースに高いガスバリア性を有する流路隔離部材が接合されて当該第1のケース内に画成される封止空間内に配置されたので、封止空間内に配置された流路部材における液体流路内の液体の水分(溶媒成分)が蒸発することが抑制される。これにより、流路部材における液体流路内の液体の増粘が抑制される。
【0009】
上記構成において、前記第1のケースは、前記シール部材と比較して高いガスバリア性を有する構成を採用することが望ましい。
【0010】
この構成によれば、シール部材と比較してガスバリア性が高い第1のケースに流路離隔部材が接合されて封止空間が画成されるので、封止空間内に配置された流路部材における液体流路内の液体の水分が蒸発することがより確実に抑制される。
【0011】
上記構成において、前記シール部材は、外周に沿って外壁を有し、該外壁を前記流路隔離部材と前記第2のケース側の構成部材とにそれぞれ当接して密着させることにより、前記接続部が配置された空間を封止する構成を採用することが望ましい。
【0012】
この構成によれば、シール部材外壁が流路隔離部材と第2のケース側の構成部材とにそれぞれ当接して密着することにより、接続部が配置された空間がシールされるので、つまり、第1のケース側の液体流路と第2のケース側の液体流路との接続部が、二重にシールされるので、第1のケース側の液体流路と第2のケース側の液体流路との接続部から液体流路内の液体の水分(溶媒)の蒸発が抑制される。
【0013】
上記構成において、前記流路隔離部材は、前記シール部材の前記外壁が当接される部分に外周に沿って延在する溝を有し、当該部分に前記外壁が当接されることで抵抗通路が形成され、
前記抵抗通路は、前記封止空間と連通するとともに大気と繋がる大気開放路と連通する構成を採用することができる。
【0014】
この構成によれば、抵抗通路により封止空間内の液体流路からの水分蒸発を抑えつつ(高湿度状態を維持しつつ)封止空間を大気開放するので、封止空間内の圧力変化を緩和することができる。
【0015】
上記構成において、前記第1のケースは、前記流路部材の配置位置を規定する位置決めピンを有し、
前記流路部材は、前記位置決めピンが挿通される挿通孔を有し、
前記流路隔離部材は、前記位置決めピンの先端部が嵌合する凹部を有し、
前記位置決めピンは、前記挿通孔に挿通されて前記凹部に嵌合することにより、前記流路部材および前記流路隔離部材により覆われた状態で前記封止空間内に配置されている構成を採用することができる。
【0016】
この構成によれば、位置決めピンは、挿通孔に挿通されて凹部に嵌合することにより、流路部材および流路隔離部材により覆われた状態で封止空間内に配置されているので、位置決めピンが挿通される挿通孔を通じて封止空間が大気と連通することが防止され、封止空間の気密性・液密性を確保しつつ、位置決めピンによる流路部材および流路隔離部材の位置決めが可能となる。
【0017】
また、前記第1のケースは、前記流路部材の配置位置を規定する位置決めピンを有し、
前記流路部材および前記流路隔離部材は、前記位置決めピンが挿通される挿通孔を有し、
前記位置決めピンは、前記挿通孔に挿通され、当該挿通孔から露出した先端部が封止材により封止された状態で前記封止空間内に配置されている構成を採用することもできる。
【0018】
この構成によれば、位置決めピンは、挿通孔に挿通され、当該挿通孔から露出した先端部が封止材により封止された状態で封止空間内に配置されているので、位置決めピンが挿通される挿通孔を通じて封止空間が大気と連通することが防止され、封止空間の気密性・液密性を確保しつつ、位置決めピンによる流路部材および流路隔離部材の位置決めが可能となる。
【0019】
上記構成において、前記流路部材は、複数の流路構成部材が積層されて構成され、
前記流路構成部材のうちの1つが前記流路隔離部材である構成を採用することが望ましい。
【0020】
この構成によれば、流路構成部材のうちの1つが流路隔離部材であるため、流路部材を構成する流路構成部材の他に流路隔離部材を別途設ける必要がなく、液体噴射ヘッドの小型化が可能となる。また、材料コストの削減も可能となる。
【0021】
そして、本発明の液体噴射装置は、上記何れかの構成の液体噴射ヘッドを備えることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、流路部材の液体の増粘が抑制されるので、ノズルから噴射される液体の重量や飛翔速度等の噴射特性が液体の増粘により変動することが抑制される。このため、信頼性が向上する。また、液体噴射ヘッドのノズル面をキャップにより封止して吸引することによりノズルから増粘した液体を排出するメンテナンス動作における液体の消費量を低減することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッド3と称する。)を搭載したインクジェット式プリンター(以下、単にプリンター1と称する。)を例に挙げて説明する。
【0025】
まず、本実施形態におけるプリンター1の構成について、
図1を参照して説明する。プリンター1は、記録紙等の記録媒体2の表面に対し、液体状のインクを噴射して画像等の記録を行う装置である。このプリンター1は、記録ヘッド3、この記録ヘッド3が取り付けられるキャリッジ4、キャリッジ4を主走査方向に移動させるキャリッジ移動機構5を備えている。また、プリンター1は、記録媒体2を副走査方向に搬送する搬送機構等を備えている。ここで、上記のインクは、本発明における液体の一種であり、液体供給源あるいは液体貯留容器としてのインクカートリッジ7に貯留されている。このインクカートリッジ7は、記録ヘッド3に対し着脱可能に装着される。なお、インクカートリッジ7がプリンター1の本体側に配置され、当該インクカートリッジ7からインク供給チューブを通じて記録ヘッド3に供給される構成を採用することもできる。
【0026】
プリンター1において、キャリッジ4の主走査方向における一端側には、キャリッジ4の待機位置であるホームポジションが設けられている。このホームポジションにはキャッピング機構6(メンテナンス機構の一種)が配設されている。キャッピング機構6は、記録ヘッド3のノズル75(
図9参照)が形成されたノズル面に当接し得るトレイ状のキャップ6′(封止部材)を有する。このキャッピング機構6では、キャップ6′の上面側の開口に記録ヘッド3のノズル75を臨ませた状態でノズル面に密着可能に構成されている。ノズル面にキャップ6′が密着した封止状態とすることで、キャップ6′内には封止空部が画成される。キャップ6′には、図示しないポンプユニットが接続されている。ポンプユニットは、例えば、チューブポンプ等の吸引ポンプを備え、この吸引ポンプの作動によって封止空部内を負圧化することができる。そして、ノズル面への密着状態で吸引ポンプを作動し、封止空部(密閉空間)内を負圧化すると、ノズル75から記録ヘッド3内のインクや気泡が吸引されてキャップ6′の封止空部内に排出されるようになっている。つまり、このキャッピング機構6は、記録ヘッド3のインク流路内の増粘したインクや気泡を強制的に吸引排出するメンテナンス動作の一種であるクリーニング動作を行う。
【0027】
図2は、上記記録ヘッド3の構成を示す分解斜視図、
図3は、記録ヘッド3の断面図である。以下においては、記録ヘッド3のノズル面を基準とし当該ノズル面に直交する方向を上下方向とする。本実施形態における記録ヘッド3は、上側の第1のケース10と下側の第2のケース11とを備え、これらの第1のケース10および第2のケース11の内部に、流路部材9、シール部材18、回路基板17、流路接続部材19、複数のヘッドユニット13等が積層されて収容されている。また、流路部材9は、複数の流路構成部材、具体的には、第1の流路部材14、フィルター基板16、および、第2の流路部材15が積層されて構成されている。第1のケース10と第2のケース11とは、上記各構成部材を内部に収容した状態で、例えば、ネジあるいはカシメピン等の締結部材30により相互に固定される。
【0028】
第1のケース10は、複数の導入針22が立設された部材であり、例えば、ガラスフィラー等を含有する変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE:ザイロン(登録商標))等のシール部材18と比較してガスバリア性が高められた合成樹脂から作製されている。また、本実施形態において流路部材9を構成している各流路構成部材(第1の流路部材14、フィルター基板16、および第2の流路部材15)も、同様にシール部材18と比較してガスバリア性の高められた合成樹脂から作製されている。なお、流路部材9の流路構成部材のうちの少なくとも第2の流路部材15がシール部材18と比較してガスバリア性の高められた合成樹脂から作製されていればよく、これ以外の流路構成部材については必ずしもガスバリア性が高められた合成樹脂でなくてもよい。
【0029】
本実施形態においては各色のインクカートリッジ7のインクに対応させて合計4本の導入針22が、記録ヘッド3の走査方向に対応する方向に沿って横並びに第1のケース10における導入針基板21の上面に設けられている。この導入針22は、インクカートリッジ7内に挿入される中空針状の部材であり、インクカートリッジ7内に貯留されたインクを、図示しない内部の針流路を通じて第1の流路部材14側に導入する。なお、インクカートリッジ7から記録ヘッド3内にインクを導入する構成としては、導入針22を用いるものには限られず、例えば、インクの供給側と受側にそれぞれインクを吸収可能な多孔質部材を設け、この多孔質部材同士を接触させることで、インクを授受する構成を採用することも可能である。
【0030】
また、
図3に示すように、本実施形態における第1のケース10において導入針基板21の四方の縁からは上方および下方(第2のケース11側)に向けて側壁23が形成されている。この側壁23と導入針基板21とにより囲まれた空間に、流路部材9における流路構成部材のうちの第1の流路部材14およびフィルター基板16が収容される。また、この第1の流路部材14およびフィルター基板16が収容された空間の下面側の開口を塞ぐように、第2の流路部材15(本発明における流路隔離部材の一種)が側壁23の下端面と接着剤によって接合される。この接着剤としては、接合部分の気密性・液密性を確保することが可能なもの、例えば、エポキシ系接着剤が用いられる。これにより、第1のケース10と第2の流路部材15とにより、外気から隔離された封止空間12が画成される。したがって、流路部材9の内部の液体流路(後述する案内流路31、フィルター室24、および供給流路33を含む一連の流路)は、封止空間12内に収容される。この封止空間12は、内部の液体流路から当該液体流路を形成する壁面の一部を透過した水分の過剰な蒸発を抑制する水分蒸発管理空間として機能する。なお、封止空間12は、完全に密閉された空間ではなく、後述する大気開放経路を通じて大気開放されている。この大気開放経路の一部の抵抗通路によって大気開放されつつも流路からの水分蒸発が抑制される。この点については後述する。
【0031】
図4は、位置決めピン26の周辺における断面図である。第1のケース10における導入針基板21の下面には、下方(第2のケース11側)に向けて位置決めピン26が複数突設されている。この位置決めピン26は、流路部材9における流路構成部材の積層方向に直交する方向の相対位置(配置位置)を規定するためのピンである。これに対応して、第1の流路部材14には、位置決めピン26が挿通可能な位置決め孔27(本発明における挿通孔に相当)が板厚方向を貫通する状態で開設されている。同様に、フィルター基板16にも位置決めピン26が挿通可能な位置決め孔28(本発明における挿通孔に相当)が板厚方向を貫通する状態で開設されている。一方、本実施形態における第2の流路部材15には、位置決めピン26の先端部が嵌合可能な位置決め凹部29(本発明における凹部に相当)が形成されている。すなわち、この位置決め凹部29は、第2の流路部材15の上面(第1のケース10側の面)における前記位置決めピン26の先端部に対応する位置から第2の流路部材15の下面(第2のケース11側の面)側に向けて、第2の流路部材15の厚さ方向に貫通することなく窪んだ状態に形成されている。そして、位置決めピン26が、第1の流路部材14およびフィルター基板16の位置決め孔27,28にそれぞれ挿通され、その先端部が第2の流路部材15の位置決め凹部29に嵌合した状態で第1の流路部材14、フィルター基板16および第2の流路部材15が積層されると、これらの流路構成部材の相対位置が規定される。また、位置決めピン26は、第1の流路部材14、フィルター基板16および第2の流路部材15により覆われた状態で封止空間12に配置される。このため、位置決めピン26が挿通される位置決め孔27,28を通じて封止空間12が大気と連通することが防止され、封止空間12の気密性・液密性を確保しつつ、位置決めピン26による流路構成部材の位置決めが可能となる。
【0032】
流路構成部材の一つである第1の流路部材14は、導入針22から導入されたインクをフィルター基板16のフィルター室24(後述)に案内する案内流路31が、上記導入針22に対応して複数形成された合成樹脂製の部材である。各案内流路31は、第1の流路部材14の上面において上記導入針22にそれぞれ連通する。また、各案内流路31は、第1の流路部材14の面方向において互いに交わることなくそれぞれ独立した流路として延在し、途中で2本の分岐流路に分岐する。各分岐流路は、第1の流路部材14の下面にそれぞれ開口して2つのフィルター室24に連通する。本実施形態においては、4本の導入針22に対応して合計8本の分岐流路が第1の流路部材14に形成されている。
【0033】
流路構成部材の一つであるフィルター基板16は、フィルター25が配設されるフィルター室24が形成された部材である。フィルター室24は、上面側が開口した空部である。このフィルター室24の底の部分にフィルター25が固定されている。フィルター25は、インク流路を流下するインクを濾過する部材であり、例えば、金属をメッシュ状に細かく編み込んだものや、薄手の金属製板材に塑性加工により多数の貫通孔を形成したものが用いられる。インクに気泡や異物が混入されている場合に、当該気泡や異物が、フィルター25によってフィルター室24内に捕捉され、ヘッドユニット13側に流れ込むことが防止される。また、フィルター室24の底部には、導出口32が開口している。この導出口32は、フィルター基板16の下面において第2の流路部材15の供給流路33と連通する。
【0034】
流路構成部材の一つであって流路隔離部材の一種である第2の流路部材15は、フィルター室24側から導入されたインクを各ヘッドユニット13のヘッド流路に供給する供給流路33が複数形成された部材である。本実施形態においては、合計8条の供給流路33が、第2の流路部材15の面方向において互いに交わることなくそれぞれ独立した流路として延在している。各供給流路33は、当該第2の流路部材15の上面において上記フィルター室24の導出口32と連通するとともに、第2の流路部材15の板厚方向を貫通した連通口34と連通する。連通口34のうちの一部は、後述するシール部材18の連通孔37を介して流路接続部材19の流路接続部35内の接続流路36と連通し、さらに接続流路36を介して第2のケース11の導入流路50と連通する。また、連通口34のうちの残りは、シール部材18の連通孔37を介して第2のケース11の導入部49と連通することで導入流路50と連通する。すなわち、シール部材18は、第1のケース10側の液体流路と第2のケース11側の液体流路とをシールして液密に連通する。なお、シール部材18の連通孔37を境界としてこれよりも上流側を第1のケース10側の液体流路とし、同じく下流側を第2のケース11側の液体流路とする。また、シール部材18において連通孔37により第1のケース10側の液体流路と第2のケース11側の液体流路とが接続される部分が、本発明における接続部に相当する。
【0035】
図5は、第2の流路部材15の下面図である。また、
図6は、
図5におけるA−A線断面図である。さらに
図7は、
図5におけるB−B線断面図である。第2の流路部材15の下面において、複数の連通口34が開設された領域を囲むように第1の周壁38が下方(第2のケース11側)に向けて立設されており、さらにこの第1の周壁38との間に所定の間隔を隔てた外側に第2の周壁39が同様に立設されている。この第1の周壁38と第2の周壁39との間に第2の流路部材15の外周に沿って形成された窪み(
図5においてハッチングで示す部分)は、シール部材18の外壁51が嵌合される嵌合部40として機能する。この嵌合部40には、当該嵌合部40の延在方向に沿って細長い溝41が形成されている。
図6に示すように、溝41は、嵌合部40にシール部材18の外壁51が嵌合されて当該外壁51の上端面が当接されることで大気開放経路の一部である抵抗通路を画成する。この抵抗通路は、水分の通過に対して抵抗となるように通路断面積および全長が定められた通路である。また、溝41においてそれぞれ異なる位置に第1貫通口42と第2貫通口43が開口している。これらの第1貫通口42および第2貫通口43は、第2の流路部材15の厚さ方向を貫通する貫通孔である。
図7に示すように、第1貫通口42は、第1の流路部材14およびフィルター基板16が配置された封止空間12と連通する。すなわち、封止空間12は、第1貫通口42を通じて大気開放経路と連通する。
【0036】
図8は、第1のケース10および流路部材9の大気開放経路について説明する断面図である。上記の第2貫通口43は、フィルター基板16、第1の流路部材14、第1のケース10に形成された大気開放路44と連通している。大気開放路44は、フィルター基板16に設けられた第1大気連通路45と、第1の流路部材14に設けられた第2大気連通路46と、第1のケース10の導入針基板21に設けられた第3大気連通路47と、が一連に繋がることで構成された、大気開放経路の一部である。大気開放路44の通路断面積は、上記抵抗通路の通路断面積よりも十分に大きく設定されている。また、この大気開放路44の上記第2貫通口43と連通する一端とは反対側の他端は、第1のケース10の大気開放口48から大気と連通している。このように、封止空間12は、第1貫通口42から抵抗通路、第2貫通口43、および大気開放路44を通り大気開放口48から大気開放されている。これにより、封止空間12内の液体流路からの水分蒸発を抑えつつ(高湿度状態を維持しつつ)、封止空間12内の圧力変化を緩和することができる。
【0037】
第1のケース10の第2の流路部材15と第2のケース11との間には、シール部材18、回路基板17、および、流路接続部材19が配置される。シール部材18は、例えば、エラストマーなどの弾性材によって作製された部材であり、第2の流路部材15の連通口34に対応する位置には連通孔37が開設されている。連通孔37は、第2の流路部材15の連通口34の下端開口と第2のケース11の導入部49の上端開口との間、若しくは連通口34の下端開口と流路接続部材19の流路接続部35との間、すなわち、第1のケース10側の液体流路と第2のケース11側の液体流路との間に配置される。そして、これらの流路の開口の周縁部に対して連通孔37の開口周縁部が弾性によりそれぞれ密着することでシール(封止)して、第1のケース10側の液体流路と第2のケース11側の液体流路とを液密状態で連通する。連通孔37の上下の開口周縁部には、第1のケース10側および第2のケース11側に向けて突出した円筒状の囲い壁37a(
図2および
図3参照)が形成されている。この囲い壁37aの上端面および下端面が、それぞれ第2の流路部材15および回路基板17に密着することにより、第1のケース10側の液体流路と第2のケース11側の液体流路との接続部をシールする。
【0038】
また、シール部材18の外周縁には当該外周縁から第1のケース10側および第2のケース11側に向けてそれぞれ延出した外壁51が設けられている。シール部材18が、第2の流路部材15と回路基板17との間に位置決めされた状態で配置されると、外壁51の上端部は第2の流路部材15の上記嵌合部40に嵌合して当該第2の流路部材15の溝41が形成された部分と当接して上記の抵抗通路を形成する。また、外壁51の下端部は回路基板17の上面と当接する。記録ヘッド3の各構成部材が積層されて組み付けられた状態では、シール部材18の外壁51が第2の流路部材15と回路基板17との間で押しつぶされて両者に弾性によりそれぞれ密着する。これにより、第1のケース10側の液体流路と第2のケース11側の液体流路との接続部が配置された流路接続空間52(
図3参照)の周囲を囲むようにシール部材18の外壁51によりシール(封止)される。つまり、第1のケース10側の液体流路と第2のケース11側の液体流路との接続部は、二重にシールされることになる。これにより、第1のケース10側の液体流路と第2のケース11側の液体流路との接続部から液体流路内のインクの水分(溶媒)の蒸発が抑制される。また、本実施形態においては、囲い壁37aと外壁51とにより接続部がさらに(三重に)シールされるので、接続部から液体流路内のインクの水分(溶媒)の蒸発がより効果的に抑制される。
【0039】
回路基板17は、所謂プリント基板である。本実施形態における回路基板17は、プリンター本体側からのフレキシブルフラットケーブル(FFC)8(
図1参照)が接続されるコネクター54を備え、このFFC8を通じてプリンター本体側から駆動信号等の制御信号を受けてフレキシブル基板55を通じてヘッドユニット13の圧電素子71(
図9参照)に印加する。即ち、回路基板17は、駆動素子(能動素子)としての圧電素子71を駆動するための駆動信号を中継する基板である。コネクター54は、上記シール部材18の外壁51の下端面が当接されて封止される位置よりも外側に配置されている。これにより、上記接続部が配置された流路接続空間52の封止状態を維持しつつコネクター54に対してFFC8の抜き差しができる。この回路基板17には、フレキシブル基板55や、第2のケース11の導入部49や、流路接続部材19の流路接続部35が挿通される逃げ穴56が開設されている。そして、回路基板17は、流路接続部材19を介在させて第2のケース11の流路接続部材19が配置された領域の上面側開口を塞ぐ状態で、当該第2のケース11に配置される。
【0040】
流路接続部材19は、回路基板17と第2のケース11との間に配置される合成樹脂製の部材である。本実施形態における流路接続部材19の上面には、複数の円筒状の流路接続部35が突設されている。本実施形態における記録ヘッド3には、合計8列のノズル列が設けられており、そのうちの4列に対応する合計4つの流路接続部35が流路接続部材19に設けられている。上述したように、各流路接続部35の内部には接続流路36が形成されている。そして、接続流路36の一端は、上述したようにシール部材18の連通孔37を介して第2の流路部材15の連通口34と連通し、接続流路36の他端は、第2のケース11においてノズル面と平行に延在する図示しない平面流路を介して導入流路50と連通する。また、流路接続部材19には、フレキシブル基板55や、第2のケース11の導入部49が挿通される逃げ穴57が開設されている。
【0041】
第2のケース11は、内部に形成された収容室59に複数のヘッドユニット13を収容する箱体状部材である。この第2のケース11には、収容室59内のヘッドユニット13におけるケース流路64(後述)と連通する導入流路50がヘッドユニット13の各ノズル列に対応して形成されている。また、第2のケース11は、区画壁60により上下の領域、すなわち、上記の流路接続部材19が配置される領域と収容室59が形成された領域とに区画されている。この区画壁60の上面には、上記の8つのノズル列のうちの残りの4列に対応する合計4つの円筒状の導入部49が、導入流路50の上端部分として突設されている。そして、各導入部49は、上述したようにシール部材18の連通孔37を介して第2の流路部材15の連通口34と連通する。この区画壁60の上面には、各導入部49を流路接続部材19の逃げ穴57に挿通させた状態で当該流路接続部材19が配置される。また、区画壁60には、上記平面流路の一端が開口しており、この開口部分に上記流路接続部材19の接続流路36が連通される。さらに、区画壁60には、フレキシブル基板55が挿通される基板挿通口61が開設されている。ヘッドユニット13の圧電素子71に一端が接続されたフレキシブル基板55の他端部は、この基板挿通口61および上記逃げ穴56,57を通じて回路基板17の上面側に引き出されて当該回路基板17の端子に電気的に接続される。
【0042】
第2のケース11の収容室59は、当該第2のケース11の下面側に開口している。この収容室59には、本実施形態においては合計4つのヘッドユニット13が主走査方向に相当する方向に横並びに位置決めされた状態で収容される。なお、収容室59に収容されるヘッドユニット13の数は4つに限られない。収容室59内の各ヘッドユニット13の下面(より具体的には、後述するコンプライアンス基板68の下面)は、これらのヘッドユニット13にそれぞれ対応した4つの開口部62が開設された金属製のヘッドカバー20に接着剤により固定される。また、このヘッドカバー20は、第2のケース11の下面にも接着剤により接合される。これにより、このヘッドカバー20と上記のシール部材18とにより、第2のケース11内の空間が封止される。
【0043】
図9は、ヘッドユニット13の内部構成の一例を示す要部断面図である。本実施形態におけるヘッドユニット13は、複数のヘッドユニット構成部材が積層された状態で合成樹脂製のヘッドケース65に取り付けて構成されている。ヘッドユニット構成部材は、ノズルプレート66、コンプライアンス基板68、連通基板67、圧力室形成基板69、振動板70、圧電素子71(駆動素子の一種)、および保護基板72等からなる。
【0044】
圧力室形成基板69は、シリコン単結晶基板(以下、単にシリコン基板とも言う。)から作製されている。この圧力室形成基板69には、圧力室73を区画するための空部が、シリコン基板に対する異方性エッチング処理によって複数形成されている。この空部は、圧力室形成基板69の厚さ方向を貫通して形成されており、一方の開口部が振動板70で封止されるとともに他方の開口部が連通基板67で封止されることで圧力室73が画成される。以下、この空部を含めて圧力室73と称する。本実施形態における各ヘッドユニット13のノズルプレート66には、ノズル75が複数列設されてなるノズル列がそれぞれ2条形成されているので、圧力室形成基板69には、圧力室73の列が各ノズル列に対応して2条形成されている。圧力室73は、ノズル75の並設方向(ノズル列方向)に交差(本実施形態においては直交)する方向に長尺な空部である。圧力室形成基板69が後述する連通基板67に対して位置決めされた状態で接合されると、圧力室73の長手方向の一端部は、連通基板67のノズル連通路74を介してノズル75と連通する。また、圧力室73の長手方向の他端部は、連通基板67の個別連通口76を介して共通液室77と連通する。
【0045】
圧力室形成基板69の上面(連通基板67との接合面とは反対側の面)には、圧力室73の上部開口を封止する状態で振動板70が形成されている。この振動板70は、例えば厚さが約1μmの二酸化シリコンから構成される。また、この振動板70上には、図示しない絶縁膜が形成される。この絶縁膜は、例えば、酸化ジルコニウムから成る。そして、この振動板70および絶縁膜上における各圧力室73に対応する位置に、圧電素子71がそれぞれ形成される。本実施形態における圧電素子71は、所謂撓みモードの圧電素子である。この圧電素子71は、振動板70および絶縁膜上に、金属製の下電極膜、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層、および、金属製の上電極膜(何れも図示せず)が順次積層されて圧力室73毎にパターニングされている。そして、上電極膜または下電極膜の一方が共通電極とされ、他方が個別電極とされる。また、振動板70、絶縁膜、および下電極膜が、圧電素子71の駆動時に駆動領域として機能する。
【0046】
各圧電素子71からはリード電極が振動板70上にそれぞれ延出されており、これらのリード電極の電極端子に相当する部分に、フレキシブル基板55の一端側の端子が接続される。このフレキシブル基板55は、例えば、ポリイミド等のベースフィルムの表面に銅箔等で導体パターンを形成し、この導体パターンをレジストで被覆した構成とされる。フレキシブル基板55の表面には、圧電素子71の駆動に係る駆動IC78(
図3参照)が実装されている。各圧電素子71は、上電極膜および下電極膜間に駆動信号(駆動電圧)が駆動IC78の制御により選択的に印加されることで、撓み変形する。
【0047】
圧力室形成基板69の下面に接合される連通基板67は、圧力室形成基板69と同様にシリコン基板から作製された板材である。この連通基板67には、圧力室列の各圧力室73に共通な空部である共通液室77(リザーバーあるいはマニホールドとも呼ばれる)が、異方性エッチングによって形成されている。導入針22から導入されたインクは、第1のケース10側の液体流路、すなわち、案内流路31、フィルター室24、供給流路33を流下し、第2の流路部材15の連通口34およびシール部材18の連通孔37を通り、第2のケース11側の液体流路、すなわち、接続流路36、導入流路50、およびケース流路64を順次流下して共通液室77に流入する。共通液室77に流入したインクは、各圧力室73に対応して形成された個別連通口76を通じて圧力室73にそれぞれ供給される。
【0048】
連通基板67の下面には、コンプライアンス基板68が接合される。このコンプライアンス基板68は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等のような薄手のコンプライアンスシート80と、このコンプライアンスシート80を支持する金属製のシート支持板81とからなる複合材である。このシート支持板81の共通液室77に対向する領域には、この共通液室77の下面開口に倣った形状にシート支持板81の一部が除去されたコンプライアンス開口83が形成されている。このため、共通液室77の下面側の開口は、可撓性を有するコンプライアンスシート80のみで封止されている。換言すると、コンプライアンスシート80は、共通液室77の一部を区画している。
【0049】
シート支持板81の下面におけるコンプライアンス開口83に対応する部分は、ヘッドカバー20によって封止される。これにより、コンプライアンスシート80の可撓領域と、これに対向するヘッドカバー20との間には、コンプライアンス空間84が形成されている。そして、このコンプライアンス空間84におけるコンプライアンスシート80の可撓領域が、インク流路内、特に共通液室77内の圧力変動に応じて共通液室77側またはコンプライアンス空間84側に変位する。また、コンプライアンス基板68の中央部には、ノズルプレート66の外形に倣った基板開口部82が開設されている。すなわち、連通基板67にコンプライアンス基板68およびノズルプレート66が接合された状態では、この基板開口部82内にノズルプレート66が配置される。なお、コンプライアンスシート80としては、インク流路(共通液室77)内の圧力変化に応じて撓むことが可能な可撓部材であれば、例えば、ごく薄いステンレス鋼等の金属板を用いることもできる。
【0050】
上記圧電素子71が形成された圧力室形成基板69の上面には保護基板72が配置される。この保護基板72は中空箱体状の部材であり、例えば、シリコン基板等から作製される。この保護基板72の中央部分には、基板厚さ方向を貫通した配線空部85が形成されている。この配線空部85内には、圧電素子71の上記リード電極とフレキシブル基板55の一端部との接続部分が配置される。また、この保護基板72において圧電素子71に対向する領域、より具体的には圧力室並設方向に直交する方向における配線空部85の両側には、当該圧電素子71の駆動を阻害しない程度の大きさの収容空間86が形成されている。この収容空間86は、保護基板72の下面(圧力室形成基板69との接合面)から上面側に向けて基板厚さ方向の途中まで形成された空間である。
【0051】
上記のノズルプレート66は、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル75を列状に開設した板材である。このノズルプレート66には、所定のピッチで複数のノズル75が列設されてノズル列が構成されている。本実施形態においては各ヘッドユニット13のノズルプレート66に2条のノズル列がそれぞれ形成されている。同一ヘッドユニット13の2条のノズル列には、同じ種類(色)のインクが割り当てられる。これらのノズル列の組においては、それぞれのノズル75のノズル列方向における位置が互い違いとなるように配置されているので、ノズル75の形成ピッチの2倍の記録解像度で記録を行うことができる。本実施形態におけるノズルプレート66はシリコン基板から作製されている。そして、当該基板に対してドライエッチングを施すことにより円筒形状のノズル75が形成されている。このノズルプレート66の縦横の寸法に関し、コンプライアンス基板68の基板開口部82およびヘッドカバー20の開口部62の縦横の寸法よりも小さく設定されている。そして、ノズルプレート66が連通基板67に対し位置決めされた状態で接合されると、これらの開口部62,82内にノズルプレート66が配置される。また、この状態では、連通基板67のノズル連通路74とノズル75とが連通する。
【0052】
ヘッドケース65は、合成樹脂製の箱体状部材であり、その下面側には連通基板67が接合される。このヘッドケース65の中央部分には、ヘッドケース65の高さ方向を貫通する状態で貫通空部88(配線空間の一部)が形成されている。この貫通空部88は、保護基板72の配線空部85と連通して、フレキシブル基板55が収容される空部を形成する。また、ヘッドケース65の下面側には、当該下面からヘッドケース65の高さ方向の途中まで後退した収容空部79が形成されている。この収容空部79は、ヘッドケース65と連通基板67とが位置決めされて接合された状態で、当該連通基板67上の圧力室形成基板69、圧電素子71、および保護基板72等を収容可能な程度の大きさに設定されている。上記の貫通空部88の下端は、収容空部79の天井面に開口している。
【0053】
また、ヘッドケース65には、ヘッドケース65の高さ方向を貫通するケース流路64が形成されている。ケース流路64は、ヘッドケース65における収容空部79に対し、圧力室並設方向に直交する方向における外側に外れた位置に形成されている。より具体的には、連通基板67の各共通液室77にそれぞれ対応して、収容空部79の両側にそれぞれ1つずつ、合計2つのケース流路64が形成されている。そして、ヘッドケース65に連通基板67が接合された状態では、各ケース流路64は、それぞれ対応する共通液室77と連通する。
【0054】
ヘッドカバー20は、例えば、ステンレス鋼等の金属製の板材である。本実施形態におけるヘッドカバー20には、上述したようにノズルプレート66に対応する位置に、当該ノズルプレート66に形成されたノズル75を露出させるため、ノズルプレート66の外形に倣った形状の開口部62が厚さ方向を貫通する状態で形成されている。本実施形態では、このヘッドカバー20におけるヘッドカバー20の下面と開口部62におけるノズルプレート66の露出部分とによりノズル面が構成されている。
【0055】
そして、上記構成の記録ヘッド3では、共通液室77から圧力室73を通ってノズル75に至るまでの流路内がインクで満たされた状態で、駆動IC78からの駆動信号に従い圧電素子71が駆動されることにより、圧力室73内のインクに圧力変動が生じ、この圧力振動によって所定のノズル75からインクが噴射される。
【0056】
このように本発明に係る記録ヘッド3では、第1のケース10に高いガスバリア性を有する流路隔離部材である第2の流路部材15が接合されて当該第1のケース10内に画成される封止空間12内に流路部材9が配置されたので、すなわち、ガスバリア性の高い素材により封止空間12が形成されたので、封止空間12内に配置された流路部材9における液体流路内のインクの水分(溶媒成分)が蒸発することが抑制される。これにより、流路部材9における液体流路内のインクの増粘が抑制される。また、この構成によれば、流路部材9のインクの増粘が抑制されるので、ノズル75から噴射されるインクの重量や飛翔速度等の噴射特性がインクの増粘により変動することが抑制される。このため、プリンター1の信頼性が向上する。また、プリンター1では、記録ヘッド3のノズル面をキャップ6′により封止して吸引することによりノズル75から増粘したインクを排出するメンテナンス動作におけるインクの消費量を低減することが可能となる。
また、流路部材9の流路構成部材のうちの1つが流路隔離部材としても機能する第2の流路部材15であるため、流路構成部材の他に流路隔離部材を別途設ける必要がなく、記録ヘッド3の小型化が可能となる。また、材料コストの削減も可能となる。
そして、本実施形態においては、シール部材18と比較してガスバリア性が高い第1のケース10に第2の流路部材15が接合されて封止空間12が画成されるので、封止空間12内に配置された流路部材9における液体流路内のインクの水分が蒸発することがより確実に抑制される。
【0057】
ところで、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
【0058】
図10は、第2の実施形態における位置決めピン周辺の要部断面図である。上記第1の実施形態においては、流路部材9の流路構成部材うち流路隔離部材としても機能する第2の流路部材15に位置決めピン26の先端部が嵌合可能な位置決め凹部29が形成され、これにより、位置決めピン26は、第1の流路部材14、フィルター基板16および第2の流路部材15により覆われた状態で封止空間12に配置される構成を例示したが、これには限られない。本実施形態における第2の流路部材15には、第1の流路部材14およびフィルター基板16と同様に、位置決めピン26が挿通可能な位置決め孔89(本発明における挿通孔に相当)が板厚方向を貫通する状態で開設されている。そして、位置決めピン26が、これらの流路構成部材の位置決め孔27,28,89にそれぞれ挿通され、その先端部が第2の流路部材15の位置決め孔89において流路部材9の外側(第2の流路部材15の下面側)に露出する。本実施形態においては、この位置決め孔89において露出した位置決めピン26の先端部が、エポキシ系接着剤等の封止材90により封止されている。これにより、位置決めピン26が、第1の流路部材14、フィルター基板16、第2の流路部材15、および封止材90により覆われた状態で封止空間12に配置される。このため、位置決めピン26が挿通される位置決め孔27,28,89を通じて封止空間12が大気と連通することが防止され、封止空間12の気密性・液密性を確保しつつ、位置決めピン26による流路構成部材の位置決めが可能となる。なお、その他の構成については第1の実施形態と同様である。
【0059】
また、上記各実施形態においては、大気開放経路における抵抗通路が、第2の流路部材15に形成された溝41にシール部材18の外壁51が密着することで形成された構成を例示したが、これには限られず、例えば流路構成部材同士の接合により抵抗通路が形成される構成とすることもできる。この場合、例えば、流路構成部材の少なくとも一方に上記溝41と同様な溝が形成され、接着剤により他方の流路構成部材が接合されて溝の開口を封止することにより抵抗通路を画成することができる。この構成によれば、よりガスバリア性の高い流路構成部材同士の接合により抵抗通路が形成されることで、抵抗通路から水分が蒸発することがより低減される。
【0060】
また、流路部材9を構成する流路構成部材として、上記実施形態においては、第1の流路部材14、フィルター基板16、および、第2の流路部材15を例示したが、これには限られない。要するに、少なくとも1以上の流路構成部材と流路隔離部材とを備える構成であればよい。
【0061】
そして、以上では、液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド3(ヘッドユニット13)を例に挙げて説明したが、本発明は、流路部材を備える他の液体噴射ヘッドにも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも本発明を適用することができる。