(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
本発明に係る制動性能の評価方法は、走行試験機において、ABSを搭載した車両におけるタイヤの制動性能を、簡易に評価するための方法である。ここでは、この制動性能が評価されるタイヤは、試験タイヤと称される。
【0018】
走行している車両がブレーキをかけると、タイヤが地面に対してスリップすることが起こる。車両の走行速度と車輪速度とに差が生じる。この走行速度と車輪速度との差(走行速度−車輪速度)は、「滑り速度」と称される。滑り速度とその時の摩擦係数との関係は、タイヤの制動性能に大きく影響する。滑り速度とその時の摩擦係数との関係は、「μ−S特性」と称される。
【0019】
この制動性能の評価方法では、試験タイヤの走行試験機における評価において、試験タイヤの、ABS搭載車両におけるμ−S特性が見積もられる。
図1には、μ−S特性見積もりのフローが示されている。この図では、この処理の中で実施される工程に加え、各工程の入出力データが併せて示されている。
【0020】
試験タイヤの、ABS搭載車両におけるμ−S特性の見積もりにおいては、試験タイヤとは別に、基準となるタイヤ(基準タイヤ)が定められる。通常、基準タイヤとして、試験タイヤと同じ用途のタイヤが選ばれる。試験タイヤが乗用車用であれば、基準タイヤも乗用車用である。試験タイヤがトラック用であれば、基準タイヤもトラック用である。基準タイヤのサイズは、試験タイヤのサイズと同じでなくてもよい。この評価では、通常複数の基準タイヤが使用される。
【0021】
本評価方法では、これらの基準タイヤを用いて、走行試験機での摩擦係数と、ABS搭載車両での摩擦係数との相関データが取得される。
図1の(A1)、(A2)及び(A3)の工程で、これらの基準タイヤを用いた相関データの取得が行われる。
図1の(A4)及び(A5)の工程で、試験タイヤの評価が行われる。通常、(A1)、(A2)及び(A3)の工程は一度だけ実施される。(A4)及び(A5)の工程は、試験タイヤ毎に実施される。
【0022】
図1で示されるとおり、試験タイヤのABS搭載車両におけるμ−S特性を見積もるためのフローは、
(A1)基準タイヤを走行試験機で走行させて、μ−S特性を計測する工程、
(A2)基準タイヤをABSを搭載した車両に装着しこの車両を走行させて、μ−S特性を計測する工程、
(A3)走行試験機での摩擦係数と、ABSを搭載した車両での摩擦係数との相関を表すデータを取得する工程、
(A4)試験タイヤを走行試験機で走行させて、μ−S特性を計測する工程
及び
(A5)上記(A4)の工程で得られたμ−S特性を、試験タイヤのABSを搭載した車両におけるμ−S特性に変換する工程
を有している。
【0023】
上記(A1)の工程では、基準タイヤを走行試験機で走行させて、滑り速度Vsと摩擦係数Bμ
DRUMとの関係が計測される。それぞれの基準タイヤについて、走行試験機にてμ−S特性が計測される。
図2には、走行試験機2でμ−S特性が計測されている状況が模式的に示されている。この実施形態では、インサイドドラム型の走行試験機2が使用されている。
図2には、基準タイヤ4とこの走行試験機2のドラム6のみが示されている。このドラム6では、その内面で基準タイヤ4が走行する。このドラム6の内面が走行面8である。この基準タイヤ4は、正規リムに装着され、空気が充填されている。
【0024】
この工程では、基準タイヤ4が走行試験機2にセットされる。これにより、基準タイヤ4とドラム6の走行面8とが接触される。基準タイヤ4が、ドラム6の走行面8に押し付けられる。
図2の矢印Fzが、このときタイヤに負荷された荷重である。基準タイヤ4には、所定の荷重が負荷される。ドラム6が矢印Aの方向に回転させられる。基準タイヤ4は、矢印Bの方向に回転する。これにより、基準タイヤ4が走行面8上を走行する。ドラム6の回転速度は調整可能である。すなわち、ドラム6の走行面8の走行速度Vcは調整可能である。車輪の速度Vt(基準タイヤ4の走行速度)も調整可能である。この差(Vc−Vt)が滑り速度Vsである。走行速度Vcと車輪の速度Vtとを調整することで、種々の滑り速度Vsが実現される。
【0025】
この試験機では、基準タイヤ4の周方向の力(
図2のFx)が計測される。これは、基準タイヤ4と走行面8との間の摩擦力である。摩擦係数Bμ
DRUMは、摩擦力Fxと荷重Fzとの比(Fx/Fz)である。この工程では、所定の走行速度Vcにおける、種々の滑り速度Vsでの摩擦係数Bμ
DRUMが測定される。
図3に、基準タイヤ4の一つについて、測定された滑り速度Vsと摩擦係数Bμ
DRUMの関係を表すグラフが示されている。このグラフは、この基準タイヤ4の、走行速度Vcにおける走行試験機2でのμ−S特性を表す。このμ−S特性を表す曲線は、μ−Sカーブと称される。
【0026】
滑り速度Vsと摩擦係数Bμ
DRUMとの関係は、走行速度Vcにより異なる。この工程では、複数の走行速度Vcについて、上記のμ−S特性が測定される。
図3のグラフでは、走行速度Vcが15km/h、40km/h、60km/h及び85km/hでμ−S特性が測定されている。基準タイヤ4が複数の場合は、それぞれの基準タイヤ4について
図3のμ−S特性が測定される。この結果が、
図1の符号D1で表された走行試験機2でのμ−S特性である。これにて、走行試験機2での、基準タイヤ4のμ−S特性の計測が終了する。
【0027】
この実施形態では、走行試験機としてドラム型走行試験機2が使用された。走行試験機は、ドラム型に限られない。他の走行試験機を使用してもよい。
【0028】
上記(A2)の工程では、上記の基準タイヤ4がABSを搭載した車両に装着される。この車両を走行させることで、それぞれの基準タイヤ4について、滑り速度Vsと摩擦係数Bμ
ABSとの関係が計測される。この車両で計測した、走行速度Vcと、車輪速度Vtとの差(Vc−Vt)が滑り速度Vsである。通常、滑り速度Vsは変動する。走行速度Vcにおいて、種々の滑り速度Vsが出現する。この基準タイヤ4には、六分力計が取り付けられている。これにより、基準タイヤ4に負荷される鉛直方向の力(Fz)と基準タイヤ4の進行方向と逆向きの力(Fx)が測定される。摩擦係数Bμ
ABSは、力Fxと力Fzとの比(Fx/Fz)である。この工程では、車両の走行速度がVcの場合における、種々の滑り速度Vsでの摩擦係数Bμ
ABSが測定される。
図4に、基準タイヤ4の一つについて、測定された滑り速度Vsと摩擦係数Bμ
ABSの関係を表すグラフが示されている。このグラフは、この基準タイヤ4の、走行速度VcにおけるABS搭載車両でのμ−S特性を表す。
【0029】
滑り速度Vsと摩擦係数Bμ
ABSとの関係は、車両の走行速度Vcにより、異なる。この工程では、複数の走行速度Vcについて、上記のμ−S特性が測定される。この走行速度Vcは、上記(A1)の工程でのドラム6の走行面8の走行速度Vcと同じとされる。
図4のグラフでは、車両の走行速度Vcが15km/h、40km/h、60km/h及び85km/hで上記μ−S特性が測定されている。基準タイヤ4が複数の場合は、それぞれのタイヤについて
図4のμ−S特性が測定される。この結果が、
図1の符号D2で表されたABS搭載車両でのμ−S特性である。これにて、ABS搭載車両での、基準タイヤ4のμ−S特性の計測が終了する。
【0030】
上記(A3)の工程では、摩擦係数Bμ
DRUMと摩擦係数Bμ
ABSとの相関が求められる。
図3及び4で示されるように、滑り速度Vsが小さい領域では、滑り速度Vsが大きくなるにつれて摩擦係数は大きくなる。この領域はμ−S特性の立ち上がり域と称される。さらに滑り速度Vsが大きくなると、摩擦係数は徐々に小さくなる。この領域は、μ−S特性の滑り域と称される。摩擦係数Bμ
DRUMと摩擦係数Bμ
ABSとの相関は、立ち上がり域と、滑り域とで分けて求められる。
【0031】
立ち上がり域では、走行試験機2でのμ−Sカーブは、原点を通る直線で近似される。一つの基準タイヤ4について、μ−Sカーブの頂点の摩擦係数(摩擦係数の最大値)の90%となるμ−Sカーブ上の点(滑り速度Vsが小さい方)がPとされたとき、この直線は、原点と、点Pとを結ぶ直線である。この近似は、それぞれの走行速度Vcで実施される。走行速度Vcにおけるこの直線の傾きがBK
DRUM(Vc)とされたとき、この直線は以下の式となる。
Bμ
DRUM(Vc)=BK
DRUM(Vc)×Vs
この基準タイヤ4について、ABS搭載車両におけるμ−Sカーブについても、同様に、原点を通る直線で近似される。この直線の傾きをK
ABS(Vc)とすると、
Bμ
ABS(Vc)=BK
ABS(Vc)×Vs
となる。
【0032】
傾きBK
ABS(Vc)と、BK
DRUM(Vc)との比α(Vc)が計算される。
α(Vc)=BK
ABS(Vc)/BK
DRUM(Vc)
基準タイヤ4が複数存在する場合は、それぞれのタイヤでこの比が計算され、その平均値がα(Vc)とされる。それぞれの車両速度Vcで、比α(Vc)が計算される。上記の例では、α(15)、α(40)、α(60)及びα(85)が、計算される。これらが、立ち上がり域における摩擦係数Bμ
DRUMと、上記摩擦係数Bμ
ABSとの相関を表すデータである。これらは、立ち上がり域における相関データである。
【0033】
滑り域では、それぞれの走行速度Vcについて、複数の滑り速度Vsにおいて、走行試験機2での摩擦係数Bμ
DRUMと、ABS搭載車両での摩擦係数Bμ
ABSとの相関を表すデータが求められる。具体的には、一つの基準タイヤ4について、走行速度Vc、滑り速度Vsのときの走行試験機2での摩擦係数Bμ
DRUMがBμ
DRUM(Vc、Vs)とされ、このときのこの基準タイヤ4のABS搭載車両での摩擦係数Bμ
ABSがBμ
ABS(Vc、Vs)とされたとき、以下のとおり、摩擦係数Bμ
ABS(Vc、Vs)は、摩擦係数Bμ
DRUM(Vc、Vs)の一次式として表されると仮定される。
Bμ
ABS(Vc、Vs)= β(Vc、Vs)×Bμ
DRUM(Vc、Vs)
+γ(Vc、Vs) (式1)
【0034】
上記の(式1)は、それぞれの走行速度Vcと滑り速度Vsとの組み合わせについて、基準タイヤ4の数だけ得られる。基準タイヤ4が一つのとき、それぞれの走行速度Vcと滑り速度との組み合わせについて、上記(式1)は、1つ得られる。このとき、γ(Vc、Vs)は0とされ、β(Vc、Vs)はBμ
ABS(Vc、Vs)とBμ
DRUM(Vc、Vs)との比とされる。基準タイヤ4の数が2のとき、上記(式1)は、2つ得られる。これらを連立方程式として解くことで、β(Vc、Vs)及びγ(Vc、Vs)が得られる。基準タイヤ4の数が3以上のとき、上記(式1)は、3以上得られる。この場合は、最小二乗法にて、(式1)にて計算されるBμ
ABS(Vc、Vs)と、実測のBμ
ABS(Vc、Vs)との誤差が最も小さくなるβ(Vc、Vs)及びγ(Vc、Vs)が求められる。このβ(Vc、Vs)及びγ(Vc、Vs)が、滑り域における摩擦係数Bμ
DRUMと、上記摩擦係数Bμ
ABSとの相関を表すデータである。
【0035】
例えば、上記の例では、Vcが85km/hにおいて、滑り速度Vsが、4km/h、6km/h、8km/h及び10km/hで、β(Vc、Vs)及びγ(Vc、Vs)がが求められる。具体的には、係数β(85、4)、β(85、6)、β(85、8)、β(85、10)及び、γ(85、4)、γ(85、6)、γ(85、8)、γ(85、10)が求められる。同様に、Vcが60km/h、Vcが40km/h及びVcが15km/hにおいて、β(Vc、Vs)及びγ(Vc、Vs)が求められる。この場合、16個のβ(Vc、Vs)及び16個のγ(Vc、Vs)が得られる。
【0036】
上記で求められたα(Vc)、β(Vc、Vs)及びγ(Vc、Vs)が、走行試験機2での摩擦係数Bμ
DRUMと、ABS搭載車両での摩擦係数Bμ
ABSとの相関を表すデータである。これらが、
図1の符号D3で表された相関データである。以上で基準タイヤ4を用いた相関データの取得が終了する。
【0037】
上記の例では、滑り域において、一つの走行速度Vcについて、4つの滑り速度(4km/h、6km/h、8km/h及び10km/h)で相関データβ(Vc、Vs)及びγ(Vc、Vs)が求められた。後述する(A5)の工程で精度良くμ−S特性を見積もるとの観点から、一つの走行速度Vcにおいて相関データを求める滑り速度Vsの数は、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましい。効率良く評価を実施するとの観点から、この数は20以下が好ましい。
【0038】
上記の例では、滑り域において、一つの走行速度Vcについて、相関データを取得する滑り速度の間隔は、2km/hであった。後述する(A5)の工程で精度良くμ−S特性を見積もるとの観点から、相関データを求める滑り速度Vsの間隔は、5km/h以下が好ましく、4km以下がより好ましく、3km以下がさらに好ましい。効率良く評価を実施するとの観点から、この間隔は1km/h以上が好ましい。
【0039】
図示されないが、Vst
DRUMは、走行速度Vcにおいて、走行試験機2でのμ−Sカーブの頂点における滑り速度である。Vsmは、走行速度Vcにおいて、滑り域で相関データを取得する滑り速度の最小値である。前述の例では、最小の滑り速度Vsmは、4km/hである。後述する(A5)の工程で精度良くμ−S特性を見積もるとの観点から、滑り速度Vsmと滑り速度Vst
DRUMとの差は、5km以下が好ましく、4km以下がより好ましく、3km以下がさらに好ましい。この観点から、この差は1km/h以上が好ましい。
【0040】
図示されないが、Vst
ABSは、走行速度Vcにおいて、ABS搭載車両でのμ−Sカーブの頂点における滑り速度である。後述する(A5)の工程で精度良くμ−S特性を見積もるとの観点から、上記滑り速度Vsmと滑り速度Vst
ABSとの差は、5km以下が好ましく、4km以下がより好ましく、3km以下がさらに好ましい。この観点から、この差は1km/h以上が好ましい。
【0041】
上記(A4)の工程では、試験タイヤについて、走行試験機2にてμ−S特性が計測される。計測の方法は、上記(A1)の工程と同じである。この際のドラム6の走行面8の走行速度は、基準タイヤ4でμ−Sカーブを測定した走行速度Vcと同じである。上記の例では、走行速度Vcが85km/h、60km/h、40km/h及び15km/hで、試験タイヤのμ−Sカーブが作成される。この結果が、
図1の符号D4で表された走行試験機2での試験タイヤのμ−S特性である。
【0042】
上記(A5)の工程では、上記(A4)の工程で得られたμ−S特性が、試験タイヤのABS搭載車両におけるμ−S特性に変換される。この変換には、上記相関データD3が使用される。
図5において、符号Uは、上記(A4)の工程で測定された、試験タイヤの走行速度Vcにおけるμ−Sカーブである。符号Tは、この工程で変換された試験タイヤのABS搭載車両におけるμ−Sカーブである。このμ−SカーブTは、図で示されるように、立ち上がり域でのμ−S特性を表す直線Tbと、滑り域でのμ−S特性を表す直線Tsとからなっている。以下、直線Tb及び直線Tsを得る方法が説明される。
【0043】
立ち上がり域においては、走行試験機2にて測定した試験タイヤのμ−SカーブUが、上記(A3)の工程と同様にして、直線で近似される。これが
図5の直線Ubである。この直線Ubの傾きK
DRUM(Vc)が求められる。これから、この試験タイヤのABS搭載車両における摩擦係数μ
ABS(Vc、Vs)が、相関データα(Vc)を用いて、以下の式で見積もられる。
μ
ABS(Vc、Vs) = α(Vc)×K
DRUM(Vc)×Vs (式2)
これが、
図5の直線Tbである。これが、立ち上がり域における、走行速度Vcでのμ−S特性の変換結果である。
【0044】
滑り域においては、走行速度Vcにおいて、走行試験機2における試験タイヤの摩擦係数μ
DRUM(Vc、Vs)が、ABS搭載車両での試験タイヤの摩擦係数μ
ABS(Vc、Vs)に、以下の式で変換される。
μ
ABS(Vc、Vs)= β(Vc、Vs)×μ
DRUM(Vc、Vs)+γ(Vc、Vs)
この変換は、相関データを取得した滑り速度Vsにおいて、実施される。前述の例では、滑り速度4km/h、6km/h、8km/h及び10km/hで、この変換が実施される。
図5の例では、上記の式により、μ−SカーブU上の点u1、u2、u3及びu4が、それぞれ点t1、点t2、t3及びt4に変換されている。この変換後の点(
図5の例では、点t1、点t2、t3及びt4)から、滑り速度Vsと摩擦係数μ
ABS(Vc、Vs)との関係を表す直線が、最小二乗法で決められる。
μ
ABS(Vc、Vs) = Q(Vc)×Vs + R(Vc) (式3)
上記(式3)の定数Q(Vc)及びR(Vc)は、最小二乗法により決められた定数である。これが、
図5の直線Tsである。これが、滑り域における、走行速度Vcでのμ−S特性の変換結果である。これが、滑り域における、ABS搭載車両での滑り領域でのμ−Sカーブである。
【0045】
上記直線Tb及び直線Tsの交点での滑り速度がVsbとされたとき、Vsb以下の滑り速度Vsについては直線Tbが、Vsbより大きい滑り速度Vsについては直線Tsが、使用される。これが、走行速度Vcでの、走行試験機2におけるμ−S特性の、ABS搭載車両におけるμ−S特性への変換結果である。複数の走行速度Vcにおいて、このμ−S特性の変換がされる。上記の例では、走行速度Vcが85km/h、60km/h、40km/h及び15km/hのそれぞれにおいて、直線Tb及び直線Tsが求められる。これにより、試験タイヤのABS搭載車両におけるμ−S特性の見積もりが終了する。
【0046】
上記の実施形態では、上記(A5)の工程で、試験タイヤのABS搭載車両におけるμ−S特性は、直線による近似で得られた。高次のスプライン補間等の補間処理を使用して、μ−S特性を得てもよい。
【0047】
なお、工程(A1)から(A5)は、必ずしもこの順番に実施されなくてもよい。工程(A3)を実施するまでに工程(A1)及び(A2)が実施されていればよい。工程(A1)と工程(A2)の実施の順序は問われない。工程(A5)を実施するまでに工程(A3)及び工程(A4)が実施されていればよい。工程(A4)と、工程(A1)、(A2)及び(A3)の実施の順序は問われない。
【0048】
上記のμ−S特性は、この試験タイヤのABS搭載車両における種々の制動性能の評価に利用することができる。この実施形態では、上記のμ−S特性を用いて、試験タイヤが装着されたABS搭載車両において、ブレーキをかけてこの車両が速度IVから速度EVに減速するまでの走行距離が見積もられる。これにより、タイヤの制動性能が評価される。例えば、速度が100km/hから0km/hに減速するまでの走行距離(すなわち、制動距離)が見積もられる。
【0049】
図6に、ABS搭載車両において速度IVから速度EVに減速するまでの走行距離による制動性能の評価方法が示されている。この方法は、
(1)nが1以上の整数とされたとき、速度IVから速度EVまでの領域をn個の領域に分割して、それぞれの領域を代表する走行速度を決める工程、
(2)上記走行速度での、試験タイヤのABS搭載車両におけるμ−S特性を見積もる工程
及び
(3)上記μ−S特性から、ABS搭載車両における速度IVから速度EVまで減速するときの走行距離を計算する工程
を備えている。上記(2)の工程は、
図1で示された工程である。上記(2)の工程では、前述した(A1)−(A5)の工程が実施される。
【0050】
上記(1)の工程では、nが1以上の整数とされたとき、速度IVから速度EVまでの領域が、n個の領域DVj(1≦j≦n)に分割される。例えば、速度が100km/hから0km/hに減速するときの制動距離の見積もりにおいては、100km/hから0km/hの領域は、次の4つの領域DV1、DV2、DV3及びDV4に分割される。
DV1 : 100km/hから70km/h
DV2 : 70km/hから50km/h
DV3 : 50km/hから30km/h
DV4 : 30km/hから0km/h
これが、
図6の符号D6で示されるデータのうちの、分割領域DVjである。
【0051】
さらに、それぞれの領域DVjを代表する走行速度MVjが決められる。ここでは、領域DVjを代表する走行速度MVjは、領域DVjの中央値とされる。例えば、上記の領域DV1の中央値85km/hが走行速度MV1とされ、領域DV2の中央値60km/hが走行速度MV2とされ、領域DV3の中央値40km/hが走行速度MV3とされ、領域DV4の中央値15km/hが走行速度MV4とされる。これが、
図6のデータD6のうちの、走行速度MVjである。
【0052】
なお、上記の分割数nは、1を含む。分割数nが1のときは、実際には速度IVから速度EVまでの領域は、分割されない。このときは、速度IVから速度EVまでの領域全体が領域DV1となる。この工程では、この領域を代表する走行速度MV1が決められる。
【0053】
上記(2)の工程では、走行速度MVjのそれぞれについて、これを走行速度Vcとして、上記(A1)から上記(A5)の工程が実施される。それぞれの走行速度MVjについて、摩擦係数μ
ABSと滑り速度Vsとの関係が見積もられる。走行速度MVjでの試験タイヤのABS搭載車両におけるμ−S特性が見積もられる。上記の例では、走行速度MV1、MV2、MV3及びMV4について、この試験タイヤのABS搭載車両におけるμ−S特性が見積もられる。
【0054】
図7に、上記(3)の工程のフローが示されている。上記(3)の工程においても、基準タイヤ4が使用される。これは、上記(A1)−(A3)の工程で使用された基準タイヤ4のいずれか、または全てである。
図7の(B1)の工程で、この基準タイヤ4を使用して、滑り速度の出現確率のデータが取得される。
図7の(B2)から(B4)の工程で、この出現確率のデータと、上記(2)の工程で見積もられた試験タイヤのμ−S特性から、試験タイヤのABS搭載車両における走行距離が計算される。通常、(B1)の工程は一度だけ実施される。(B2)から(B4)の工程は、試験タイヤ毎に実施される。
【0055】
図7に示されるように、上記(3)の工程は、
(B1)上記基準タイヤ4を上記車両に装着して走行させて、上記走行速度MVjにおいて出現する滑り速度と、この滑り速度の出現確率とを計測する工程、
(B2)上記(B1)の工程での計測結果と、上記(2)の工程で見積もられた摩擦係数μ
ABSと滑り速度Vsとの関係から、走行速度MVjでの平均摩擦係数Aμ
ABSjを見積もる工程、
(B3)上記平均摩擦係数Aμ
ABSjから、領域DVjの初期速度から最終速度まで減速するときに車が走行する距離Xjを見積もる工程
及び
(B4)全ての領域DVjについての距離Xjの和を計算する工程
を含む。
【0056】
上記(B1)の工程では、基準タイヤ4をABS搭載車両に装着し、この車両を走行させる。走行速度MVjにおける滑り速度Vsが測定される。このとき、滑り速度は、一定ではない。滑り速度は、変化する。このとき出現する滑り速度Vsと、その出現確率P(Vs)とが計測される。基準タイヤ4が複数の場合は、複数のタイヤでの測定データが併せられる。これが、
図7の符号D8で示されているデータである。
図8(a)、(b)、(c)及び(d)には、この測定結果の例が示されている。この例では、上記のMV1、MV2、MV3及びMV4の走行速度のそれぞれについて、滑り速度Vsが1km/hごとに、その出現確率P(Vs)が測定されている。
【0057】
上記(B2)の工程では、試験タイヤについて、それぞれの走行速度MVjにおける平均の摩擦係数Aμ
ABSjが見積もられる。上記(2)の工程で見積もったこの試験タイヤのμ−S特性が使用される。このμ−S特性から、走行速度MVjにおける滑り速度Vsでの摩擦係数μ
ABSが求められる。この摩擦係数をμ
ABS(Vs)とすると、走行速度MVjでの平均摩擦係数Aμ
ABSjは、以下の式で計算される。
Aμ
ABSj=Σμ
ABS(Vs)×P(Vs)
出現した全ての滑り速度Vsで、上記(μ
ABS(Vs)×P(Vs))の和がとられる。例えば、走行速度MV1において、1km/hから15km/hまでの滑り速度Vsが出現し、1km/hステップでその出現確率P(Vs)が測定されたとすると、平均摩擦係数Aμ
ABSjは、
Aμ
ABSj=μ
ABS(1)×P(1)+μ
ABS(2)×P(2)+ ・・・
+μ
ABS(15)×P(15)
で計算される。全ての走行速度MVjにおいて、上記の式で平均摩擦係数Aμ
ABSjが計算される。上記の例では、平均摩擦係数Aμ
ABS1、Aμ
ABS2、Aμ
ABS3及びAμ
ABS4が計算される。
【0058】
上記(B3)の工程では、上記領域DVjで、その初期速度IVjから最終速度EVjまで減速するときに車が走行する距離Xjが見積もられる。この見積もりでは、この領域DVjにおいて、試験タイヤには、上記の平均摩擦係数Aμ
ABSjによる一定の摩擦力が働いていると仮定される。すなわち、重力加速度をgとして、このタイヤには、一定の加速度(Aμ
ABSj×g)が働いていると仮定される。エネルギー保存の法則から、次の式が成り立つ。
2×Aμ
ABSj×g×Xj=IVj
2−EVj
2
よって、上記領域DVjで、車が走行する距離Xjは、以下の式で求められる。
Xj=(IVj
2−EVj
2)/(2×Aμ
ABSj×g)
例えば、領域DV1では、初期速度IV1が100km/hで、最終速度EV1が70km/hであるので、
X1=(100
2−70
2)/(2×Aμ
ABS1×g)
となる。同様にして、それぞれの領域DVjで、走行距離Xjが見積もられる。上記の例では、以下となる。
X2=(70
2−50
2)/(2×Aμ
ABS2×g)
X3=(50
2−30
2)/(2×Aμ
ABS3×g)
X4=(30
2−0
2)/(2×Aμ
ABS4×g)
【0059】
上記(B4)の工程では、それぞれの領域での距離Xjが足し合わされる。これにより、車両が速度IVから速度EVまで減速するときの走行距離が得られる。上記の例では、試験タイヤを装着したABS搭載車両が、100km/hから0km/hとなるまでに走行する距離(制動距離)Xが、以下の式で求められる。
X=X1+X2+X3+X4
これの距離Xが、
図6及び7における、符号D7で表されるデータである。この距離Xにより、タイヤの制動性能が判断される。この距離Xが小さいほど、ABS搭載車両での制動性能が優れると判断される。
【0060】
なお、工程(B1)は、必ずしも工程(A1)−(A5)の後に実施されなくてもよい。工程(B1)と、工程(A1)−(A5)の実施の順番は問われない。例えば、工程(A2)と(B1)とが併せて実施されてもよい。すなわち、工程(A2)でのABS搭載車両でのμ−S特性計測の際に、工程(B1)の滑り速度の出現確率が併せて計測されてもよい。
【0061】
以下、本発明の作用効果が説明される。
【0062】
本発明に係る制動性能の評価方法では、基準タイヤ4において、走行試験機2で測定したμ−S特性と、ABSを搭載した車両で測定したμ−S特性とから、走行試験機2での摩擦係数Bμ
DRUMとABSを搭載した車両での摩擦係数Bμ
ABSとの相関が求められる。試験タイヤの評価では、走行試験機2でμ−S特性が計測される。これと、基準タイヤ4で求めておいた上記相関とにより、この試験タイヤの、ABSを搭載した車両でのμ−S特性が見積もられる。この方法では、走行試験機2による制動性能の評価において、実際のABS搭載の車両で測定されたこのABSがタイヤの摩擦係数に与える影響が考慮されている。この方法では、走行試験機2による評価において、ABSを備えた車両でのタイヤの制動性能が、精度よく評価できる。この方法では、ABSの動きを模擬するハードウエアは必要ない。この方法の評価コストは低い。さらに、この方法は、簡易である。この方法では、ABSを搭載した車両におけるタイヤの制動性能が、簡易に評価できる。
【0063】
上記(A1)及び(A2)の工程での計測に使用される基準タイヤ4の数Nは、2以上が好ましい。これらの計測結果から(A3)の工程において、前述の摩擦係数Bμ
DRUMと、摩擦係数Bμ
ABSとの相関を求めるのが好ましい。基準タイヤ4の数Nを2以上とすることで、摩擦係数Bμ
DRUMと摩擦係数Bμ
ABSとの相関を表すデータが精度良く得られる。この方法では、ABSを備えた車両におけるタイヤの制動性能が、精度よく評価できる。この観点から、基準タイヤ4の数Nは3以上がより好ましい。基準タイヤ4の数Nは、10以下が好ましい。基準タイヤ4の数Nを10以下とすることで、効率的に評価ができる。
【0064】
上記(B1)の工程の計測に使用される基準タイヤ4の数Mは、2以上が好ましい。基準タイヤ4の数Mを2以上とすることで、滑り速度とその出現確率とが精度良く得られる。この方法では、ABSを備えた車両におけるタイヤの制動性能が、精度よく評価できる。この観点から、基準タイヤ4の数Mは3以上がより好ましい。基準タイヤ4の数Mは、10以下が好ましい。基準タイヤ4の数Mを10以下とすることで、効率的に評価ができる。
【0065】
それぞれの領域DVjにおける初期速度IVjと最終速度EVjとの差は、40km/h以下が好ましい。この差を40km/h以下となるように領域分割をすることで、上記(B3)の工程でにおいて、初期速度IVjから最終速度EVjまで減速するときに車が走行する距離Xjが、精度よく見積もられる。この方法では、ABSを備えた車両におけるタイヤの制動性能が、精度よく評価できる。この観点から、この差は30km/h以下がより好ましい。初期速度IVjと最終速度EVjとの差は、10km/h以上が好ましい。このように領域分割をすることで、効率的に評価ができる。
【0066】
前述のとおり、領域DVjを代表する走行速度MVjは、領域DVjの中央値とするのが好ましい。このようにすることで、上記(B3)の工程において、初期速度IVjから最終速度EVjまで減速するときの、車が走行する距離Xjが、精度よく見積もられる。この方法では、ABSを備えた車両におけるタイヤの制動性能が、精度よく評価できる。
【0067】
なお、本明細書において正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【実施例】
【0068】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0069】
[基準タイヤ及び評価タイヤの準備]
基準タイヤと、タイヤA、タイヤB及びタイヤCの3種類の評価タイヤとが準備された。これらは、いずれも乗用車用である。それぞれのタイヤのトレッドのゴムの組成は表1のとおりである。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示された各成分の詳細は次の通りである。
1) SBR(スチレンブタジエンゴム):SBR1502
2) ジエン系ゴム:宇部興産(株)製の商品名「BR700」
3) シリカ:EVONIK−DEGUSSA社製の商品名「ウルトラシルVN3」
4) カーボンブラック:昭和キャボット(株)製の商品名「ショウブラックN110」
5) オイル:(株)ジャパンエナジー製の商品名「プロセスX−260」
6) カップリング剤:EVONIK−DEGUSSA社製の商品名「Si69」
7) ステアリン酸:日本油脂(株)製の商品名「椿」
8) 酸化亜鉛:三井金属工業(株)製の商品名「亜鉛華1号」
9) 老化防止剤:住友化学(株)製の商品名「アンチゲン6C」
10) ワックス:大内新興化学工業(株)製の商品名「サンノックN」
11) 硫黄:(株)軽井沢製錬所社製の商品名「粉末硫黄」
12) 加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製の商品名「ノクセラーCZ」
13) 加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製の商品名「ノクセラーD」
【0072】
[実施例]
図1、
図6及び
図7に示された方法で、タイヤA、タイヤB及びタイヤCの制動性能の評価を行った。それぞれのタイヤについて、100km/hから0km/hまで減速する際の、制動距離が見積もられた。
【0073】
[領域分割と代表する走行速度の決定]
上記100km/hから0km/hまでが、次の4つの領域DV1、DV2、DV3及びDV4に分割された。
DV1 : 100km/hから70km/h
DV2 : 70km/hから50km/h
DV3 : 50km/hから30km/h
DV4 : 30km/hから0km/h
それぞれの領域DVjを代表する走行速度MVjは、領域DVjの中央値とされた。すなわち、走行速度MV1が85km/hとされ、走行速度MV2が60km/hとされ、走行速度MV3が40km/hとされ、走行速度MV4が15km/hとされた。
【0074】
[基準タイヤの走行試験機でのμ−S特性測定]
上記(A1)の工程が実施された。この工程で評価に使用される基準タイヤの数Nは、5であった。それぞれの基準タイヤを正規リムに装着し、内圧が0.2MPaとなるように空気を充填した。このタイヤを
図2のドラム式走行試験機に装着し、4.52kNの縦荷重をタイヤに負荷した。ドラムを、走行面の走行速度が85km/h、60km/h、40km/h及び15km/hとなるように回転させた。それぞれの走行速度について、滑り速度が0km/hから10km/hとなるように、タイヤを回転させた。例えば、走行面の走行速度が85km/hのときは、車輪速度を85km/hから75km/hまで変化させた。このときの摩擦係数が測定された。前述した
図3は、5つの基準タイヤの一つについて、この工程で測定されたμ−S特性である。
【0075】
[基準タイヤのABS搭載車両でのμ−S特性測定及び滑り速度の出現確率の測定]
上記の5つの基準タイヤについて、上記(A2)の工程及び(B1)の工程が、併せて実施された。それぞれの基準タイヤを正規リムに装着し、内圧が0.2MPaとなるように空気を充填した。このタイヤをABSを搭載した市販の乗用車に装着した。この車両を、水膜厚みが1mmである濡れたアスファルトの路面上を走行させた。この路面の温度は、20℃であった。車両を100km/hの速度で走行させた後、減速させた。車両速度が85km/h、60km/h、40km/h及び15km/hにおける滑り速度と摩擦係数が測定された。測定には、東京測器社製デジタルテレメータ型車軸6分力測定システムを用いた。前述した
図4は、5つの基準タイヤの一つについて、この工程で測定されたμ−S特性である。さらに、滑り速度の出現確率が測定された。前述した
図8は、この5つの基準タイヤで測定された、滑り速度とその出現確率である。
【0076】
[相関データの取得]
上記(A3)の工程が実施された。走行試験機での摩擦係数Bμ
DRUMと、ABS搭載車両での摩擦係数Bμ
ABSとの相関を表すデータが取得された。
【0077】
[試験タイヤの走行試験機でのμ−S特性測定]
上記(A4)の工程が実施された。タイヤA、タイヤB及びタイヤCの3種の試験タイヤのそれぞれについて、上記(A1)の工程での基準タイヤの測定と同じ測定方法及び同じ測定条件で、μ−S特性が測定された。
【0078】
[試験タイヤのABS搭載車両でのμ−S特性への変換]
上記(A5)の工程が実施された。タイヤA、タイヤB及びタイヤCの3種の試験タイヤのそれぞれについて、上記(A4)の工程で測定されたμ−S特性が、ABS搭載車両でのμ−S特性に変換された。車両速度が85km/h、60km/h、40km/h及び15km/hにおけるABS搭載車両でのμ−S特性が見積もられた。
図9に、タイヤCについて、得られたμ−S特性が示されている。
【0079】
[試験タイヤのABS搭載車両での制動距離の見積もり]
上記(B2)−(B4)の工程が実施された。表2には、工程(B2)で見積もられたそれぞれの試験タイヤについての平均摩擦係数Aμ
ABSjが示されている。これにて、試験タイヤA、B及びCの、ABS搭載車両での制動距離が得られた。
【0080】
【表2】
【0081】
[制動距離の見積もり値とABS搭載車両での実測値との比較]
タイヤA、タイヤB及びタイヤCのそれぞれを上記のABS搭載車両に装着し、制動距離が実測された。この実測では、それぞれの試験タイヤを正規リムに装着し、内圧が0.2MPaとなるように空気を充填した。このタイヤを、上記のABSを搭載した車両に装着した。この車両を、水膜厚みが1mmである濡れたアスファルトの路面上を走行させた。この路面の温度は、20℃であった。車両を100km/hの速度で走行させた後に停止させて、制動距離が計測された。この結果と、本手法で見積もられた制動距離との相関が
図10に示されている。
図10には、回帰式及び決定係数R
2の値も示されている。
【0082】
図10に示されるように、本手法で見積もられたABS搭載車両での制動距離は、実測の制動距離と強い正の相関を示している。本方法では、ABSを備えた車両におけるタイヤの制動性能が、精度よく評価できている。この結果から、本発明の優位性は明らかである。