【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
実施例1におけるモータユニットAは、車両の走行用駆動源としてのインホイールモータに適用されるものである。なお、車両は、インホイールモータを車輪毎に設け、それぞれのモータの駆動力を個別に制御するように構成される。以下、実施例1の構成を、「モータユニットの全体構成」と、「モータユニットの要部構成」に分けて説明する。
【0011】
[モータユニットの全体構成]
図1は、実施例1におけるモータユニットの全体構成図を示す。以下、
図1に基づいて、実施例1のモータユニットの全体構成を説明する。
【0012】
前記モータユニットAは、モータハウジング1と、インナーフレーム2と、モータ3を有する。モータ3は、モータシャフト31と、ロータ32と、ステータ33と、を有する。
【0013】
前記モータハウジング1は、インナーフレーム2と、モータ3と、を収容する。モータハウジング1は、円筒形状である。なお、モータハウジング1とインナーフレーム2との固定は後述する。
【0014】
前記インナーフレーム2は、円筒部21と、円板部22と、から構成される。インナーフレーム2は鋳物等で製造される。
【0015】
前記モータシャフト31とモータハウジング1との間には、軸受4が配置される。モータシャフト31は、軸受4に回転可能に支持される。
【0016】
前記ロータ32は、モータシャフト31の外周に固定される。ロータ32は、内部に、周方向に間隔を空けて複数の永久磁石34を備える。このため、モータユニットAのモータ3は同期型モータである。ロータ32は、円筒形状である。
【0017】
前記ステータ33は、ロータ32の外周面32aとの間にエアギャップ35を介して配置される。ステータ33には、ステータコイル36が巻線される。ステータコイル36には、例えば三相交流が印加される。このため、モータユニットAのモータ3は三相交流同期型モータである。ステータ33は、円筒形状である。ステータ33は、インナーフレーム2の内周面2b(円筒部21の内面21b)に焼嵌めにより固定される。即ち、円筒部21の内面21bとステータ33の外周面33aが全周留めになる。
【0018】
[モータユニットの要部構成]
図2は、実施例1におけるモータユニットの要部拡大図を示す。
図3は、実施例1におけるモータユニットのインナーフレームの斜視図を示す。以下、
図1〜
図3に基づいて、実施例1のモータユニットの要部構成を説明する。まず、要部構成について説明し、次いで、モータハウジング1とインナーフレーム2の関係について説明する。
【0019】
モータハウジング1の外径側には、
図2に示すように、軸方向CLに固定用ボルト孔1c(例えば、7つ)が開けられる。この固定用ボルト孔1cの位置は、モータハウジング1の周方向CDに均等配列とする。
【0020】
インナーフレーム2の円筒部21は、
図1に示すように、ステータ33の外周に設けられる。
【0021】
インナーフレーム2の円板部22は、
図1に示すように、円筒部21の片側開口に設けられると共に、円筒部21の片側開口を塞ぐ。円板部22の形状は、
図3に示すように、円板部22の中心部が開いたドーナツ形状である。このため、円板部22は、
図1に示すように、その片側開口の一部を塞ぐ。この円板部22は、
図2と
図3に示すように、第1スリット孔23と第2スリット孔24を有する。また、円板部22には、
図3に示すように、複数の固定部25と複数の連結部26が設けられる。
【0022】
前記第1スリット孔23は、
図2と
図3に示すように、各固定部25の内径側に配置される。第1スリット孔23は、
図3に示すように、円板部22の周方向CDに開けられた孔である。前記第2スリット孔24は、
図2と
図3に示すように、各固定部25の外径側に配置される。第2スリット孔24は、
図3に示すように、円筒部21と円板部22の周方向CDに開けられた孔である。
【0023】
前記複数の固定部25は、
図1と
図2に示すように、インナーフレーム2をモータハウジング1に固定するものである。この複数の固定部25の数は、ステータ33に流れる電流の相数(例えば、3相)と、2の倍数(永久磁石34の極数との関係)と、を避けた数にする。このため、複数の固定部25の数は、
図3に示すように、例えば7つにする。この複数の固定部25の位置は、
図3に示すように、円板部22の外径側であり、円板部22の周方向CDに均等配列とする。各固定部25は、
図3に示すように、円板部22の径方向Rにおいて、第1スリット孔23と第2スリット孔24との間に配置される。各固定部25の形状は、
図2に示すように、円板部22の外面22aからモータハウジング1側へ突き出る突出形状である。また、各固定部25の中心部には、
図2と
図3に示すように、軸方向CLに固定ボルト孔25aが開けられる。このため、複数の固定部25は、ボス構造となる。
【0024】
前記複数の連結部26は、
図3に示すように、各固定部25の周方向CDの左右に連結される。このため、複数の連結部26は、
図3に示すように、円板部22の周方向CDにおいて、各固定部25と円板部22とを連結する。なお、複数の固定部25と複数の連結部26はインナーフレーム2と一体に構成される。
【0025】
続いて、モータハウジング1とインナーフレーム2の関係について説明する。
インナーフレーム2は、
図1に示すように、隙間Sを確保するためのOリング5を介して、モータハウジング1にフローティング支持される。即ち、モータハウジング1に対して、インナーフレーム2を音振上浮かせた状態で支持する。言い換えると、
図1に示すように、インナーフレーム2の外周面2a(円筒部21の外面21a)とモータハウジング1の内面1bとの間に隙間Sが設けられた状態で、かつ、モータハウジング1とインナーフレーム2との間にOリング5が配置された状態で支持する。
【0026】
また、インナーフレーム2は、
図1と
図2に示すように、モータハウジング1に固定される。即ち、まず、モータハウジング1の内側では、
図2に示すように、各固定部25の固定面25bを、モータハウジング1の内面1bに接触させると共に、固定用ボルト孔1cと固定ボルト孔25aとの位置を合わせる。
次いで、
図2に示すように、モータハウジング1の外側では、ワッシャ6を固定ボルト7に挿通させる。続いて、モータハウジング1の外側から、固定ボルト7を固定用ボルト孔1cと固定ボルト孔25aに締め付ける。これにより、インナーフレーム2は、
図2に示すように、モータハウジング1に固定される。
【0027】
次に、作用を説明する。
実施例1のモータユニットAにおける作用を、「ノーダルポイント作用」と、「モータユニットの特徴作用」に分けて説明する。
【0028】
[ノーダルポイント作用]
図4は、実施例1におけるモータユニットのインナーフレームにシミュレーションにより並進振動が入力される場合の模式図である。なお、モータシャフト31とロータ32は図示を省略する。また、
図4の振動モード図(振動入力前)のI‐I断面図では、固定部25等の図示を省略する。振動モード図(振動入力中)も同様である。以下、
図4に基づいて、「ノーダルポイント作用」を説明する。
【0029】
図4に示すように、インナーフレーム2に並進振動(周方向CDは含まれない)が入力される振動モード図(振動入力前)は、円筒部21も円板部22も変形しない。
【0030】
しかし、モータ3が動作すると、ロータ32とステータ33との間に反発と吸着が発生する。このとき、ステータ33は、膨張・収縮する。このステータ33の膨張・収縮が、インナーフレーム2にステータ33の並進振動として入力される。インナーフレーム2に並進振動が入力されると、
図4の振動モード図(振動入力中)に示すように、円筒部21は径方向Rに広がる。このインナーフレーム2に並進振動が入力されると、
図4の振動モード図(振動入力中)に示すように、円板部22の一部は基準線Lに対して軸方向CL等に変形する。また、インナーフレーム2に並進振動が入力されると、
図4の振動モード図(振動入力中)に示すように、円板部22の残りの一部(円板部22の内径側と外径側の一部)は基準線Lに対して軸方向CLにほとんど変形しない。このように、インナーフレーム2に並進振動が入力されると、
図4の振動モード図(振動入力中)に示すように、径方向Rや軸方向CLへ変形する。一方、ほとんど変形しないその残りの一部が、
図4に示すように、インナーフレーム2のノーダルポイントNPに相当する。このノーダルポイントNPは、円板部22の周方向CDの同じ位置に発生する。ここで、「基準線L」とは、振動モード図(振動入力前)の円板部22の軸方向CLに対する位置を表す。また、「ノーダルポイント」とは、並進振動(振幅)が最小となる位置である。なお、
図4の振動モード図(振動入力中)における変形は、実際には約0.1〜1.0μm程度である。
【0031】
このため、実施例1では、
図4の振動モード図(振動入力前)に示すように、外径側のノーダルポイントNPに固定部25が設けられる。これにより、固定部25では並進振動が最小となるので、インナーフレーム2からモータハウジング1への並進振動の入力(伝達)が抑えられる。
【0032】
[モータユニットの特徴作用]
例えば、従来、ハイブリッド駆動ユニットでは、ステータが固定されるモータケースに端壁が設けられている。この端壁の外周部に複数の孔が設けられている。また、端壁に複数のフランジが設けられている。このフランジは、端壁の径方向外方へ突出されている。各フランジにボルト孔が穿設されている。そして、モータケースをユニットケースの内周に嵌合した後、ボルト孔にねじ込んだボルトにより、端壁がユニットケースに対し取着されている。端壁の外周部の孔によって、端壁の径方向剛性が低減され、ステータ径方向振動に対して端壁の径方向振動を低減するようにしている。
【0033】
しかし、従来のユニットにあっては、モータケースの端壁分の軸方向スペースが必要となる。また、モータケースに端壁が設けられ、この端壁とユニットケースが複数のボルトで留められているので、その留めた留め点にしたがって振動モードが複雑化する。このため、ユニットケースの軸方向長さが長くなってしまうと共に、振動モードが複雑化してしまう、という課題がある。
【0034】
これに対し、実施例1では、インナーフレーム2の外周面2aとモータハウジング1の内面1bとの間に隙間Sが設けられる。また、複数の固定部25は、インナーフレーム2の円板部22に設けられる。
即ち、モータハウジング1とインナーフレーム2とを複数の固定部25で固定するので、端壁分の軸方向CLスペース(軸方向スペース)が不要となる。また、インナーフレーム2の外周面2aとモータハウジング1の内面1bとの間に隙間Sが設けられるので、インナーフレーム2の外周面2aからモータハウジング1への振動入力が抑制される。さらに、複数の固定部25はインナーフレーム2に設けられるので、端壁とユニットケースが複数のボルトで留められている場合とは異なり、対策しなければならない径方向モードを最小限にすることができ、振動モードの複雑化が抑制される。
この結果、モータハウジング1の軸方向CL長さを短縮しつつ、振動モードの複雑化を抑制することができる。
【0035】
実施例1では、複数の固定部25の位置は、円板部22の外径側のノーダルポイントNPである。
即ち、円板部22の外径側付近は、ノーダルポイントNPであり並進振動が小さい。このノーダルポイントNPの位置に固定部25が設けられることで、モータハウジング1への振動入力を低減することができる。言い換えると、インナーフレーム2の並進振動が小さいノーダルポイントNPと、モータハウジング1と、を複数の固定部25で固定するので、インナーフレーム2からモータハウジング1への並進振動の入力が抑制される。
従って、モータハウジング1への並進振動の入力を低減することができる。加えて、モータハウジング1への並進振動の入力が小さいことから、各固定部25の剛性を必要以上に低減しなくて良い。
【0036】
実施例1では、インナーフレーム2は、各固定部25の内径側に周方向CDの第1スリット孔23と、各固定部25の外径側に周方向CDの第2スリット孔24と、を有する。
【0037】
例えば、従来のハイブリッド駆動ユニットにあっては、ステータ径方向振動に対して端壁の径方向振動は低減されるが、フランジでは軸方向振動が発生する。この軸方向振動はユニットケースに伝達される。その軸方向振動を低減するために、フランジの軸方向剛性を低減すると、周方向(トルク方向)へのフランジの剛性も低下する。さらに、路面の段差乗り越え等の衝撃入力に対する強度の確保が困難となる。このため、ユニットケースへの軸方向振動の入力を低減しつつ、周方向の剛性と衝撃入力に対する強度を確保することが困難になってしまう、という課題がある。
【0038】
これに対し、実施例1では、インナーフレーム2は、各固定部25の内径側に周方向CDの第1スリット孔23と、各固定部25の外径側に周方向CDの第2スリット孔24と、を有する。
即ち、第1スリット孔23と第2スリット孔24により、各固定部25の軸方向CLの剛性が低減される。このため、各固定部25における軸方向振動が低減される。一方、各固定部は、円板部22の周方向CDにおいて、円板部22と連結される。このため、周方向の剛性は確保される。また、各固定部25の周方向は円板部22と連結されるので、路面の段差乗り越え等の衝撃入力に対する強度(例えば、上下方向の剛性)も確保される。
従って、モータハウジング1への軸方向振動の入力(伝達)を低減しつつ、周方向CDの剛性と衝撃入力に対する強度を確保することができる。
【0039】
実施例1では、複数の固定部25(留め点)の数は、ステータ33に流れる電流の相数(3相)と、2の倍数と、を避けた数にする。
即ち、電流の相数と永久磁石34の極数により発生する電磁気力のモードを避ける。
従って、電磁気力モードに関連する振動モードを励起しにくくすることができる。
【0040】
実施例1では、複数の固定部25は、周方向CDに均等配列とする。
例えば、留め点が偏ることで振動モードが複雑化する。
これに対し、実施例1では、複数の固定部25は、周方向CDに均等配列とする。
即ち、均等配列することで、振動モードが複雑化しない。
従って、対策しなければならない並進モードを最小限にすることができる。
【0041】
次に、効果を説明する。
実施例1におけるモータユニットAにあっては、下記に列挙する効果が得られる。
【0042】
(1) ロータ32と、ロータ32の外周側に配置されるステータ33と、ロータ32とステータ33が収容されるモータハウジング1と、インナーフレーム2と、を備える。
インナーフレーム2は、ステータ33の外周に設けられる円筒部21と、円筒部21の片側開口を塞ぐ円板部22と、から構成される。
インナーフレーム2の外周面2aと、モータハウジング1の内面1bと、の間に隙間Sが設けられる。
インナーフレーム2をモータハウジング1に固定する複数の留め点(固定部25)は、インナーフレーム2の円板部22に設けられる(
図1〜
図3)。
このため、モータハウジング1の軸方向CL長さを短縮しつつ、振動モードの複雑化を抑制することができる。
【0043】
(2) 複数の留め点(固定部25)の位置は、円板部22の外径側のノーダルポイントNPである(
図1〜
図4)。
このため、(1)の効果に加え、モータハウジング1への並進振動の入力を低減することができる。
【0044】
(3) インナーフレーム2は、留め点(固定部25)の内径側に周方向CDの第1スリット孔23と、留め点(固定部25)の外径側に周方向CDの第2スリット孔24と、を有する(
図2と
図3)。
このため、(1)〜(2)の効果に加え、モータハウジング1への軸方向振動の入力(伝達)を低減しつつ、周方向CDの剛性と衝撃入力に対する強度を確保することができる。
【0045】
(4) 複数の留め点(固定部25)の数は、ステータ33に流れる電流の相数(3相)と、2の倍数と、を避けた数(7つ)にする(
図3)。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、電磁気力モードに関連する振動モードを励起しにくくすることができる。
【0046】
(5) 複数の留め点(固定部25)は、周方向CDに均等配列とする(
図3)。
このため、(1)〜(4)の効果に加え、対策しなければならない並進モードを最小限にすることができる。
【実施例2】
【0047】
実施例2では、固定用ボルト孔1cがモータハウジング1の内径側に開けられる例である。また、実施例2では、第1スリット孔23と第2スリット孔24と固定部25の位置が、円板部22の内径側に配置される例である。
【0048】
まず、構成を説明する。
実施例2におけるモータユニットBは、車両の走行用駆動源としてのインホイールモータに適用されるものである。なお、車両は、インホイールモータを車輪毎に設け、それぞれのモータの駆動力を個別に制御するように構成される。以下、実施例2の構成を、「モータユニットの全体構成」と、「モータユニットの要部構成」に分けて説明する。
【0049】
[モータユニットの全体構成]
図5は、実施例2におけるモータユニットの全体構成図を示す。また、実施例2の「モータユニットの全体構成」の説明は、実施例1の「モータユニットの全体構成」と同様であるので、対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
[モータユニットの要部構成]
図6は、実施例2におけるモータユニットの円板部の概略図を示す。以下、
図5と
図6に基づいて、実施例2の「モータユニットの要部構成」を説明する。なお、実施例1の「モータユニットの要部構成」と同様の説明は、対応する構成に同一符号を付して省略する。
【0051】
モータハウジング1の内径側には、
図5に示すように、軸方向CLに固定用ボルト孔1c(例えば、7つ)が開けられる。
【0052】
インナーフレーム2の円板部22は、
図5と
図6に示すように、第1スリット孔23と第2スリット孔24を有する。また、円板部22には、
図5と
図6に示すように、複数の固定部25が設けられる。
【0053】
第2スリット孔24は、
図5と
図6に示すように、各固定部25の外径側であって、円板部22の周方向CD(
図6)に開けられた孔である。
【0054】
複数の固定部25の位置は、
図5と
図6に示すように、円板部22の内径側である。各固定部25の中心位置は、
図6に示すように、円板部22の内側から径方向に約3分の1の位置である。また、複数の連結部26の位置も、
図6に示すように、円板部22の内径側である。
【0055】
次に、作用を説明する。
実施例2のモータユニットBにおける作用を、「ノーダルポイント作用」と、「モータユニットの特徴作用」に分けて説明する。
【0056】
[ノーダルポイント作用]
図7は、実施例2におけるモータユニットのインナーフレームにシミュレーションにより並進振動が入力される場合の模式図である。なお、モータシャフト31とロータ32は図示を省略する。また、
図7の振動モード図(振動入力前)のII‐II断面図では、固定部25等の図示を省略する。振動モード図(振動入力中)も同様である。この
図7において、インナーフレーム2に並進振動が入力される振動モード図(振動入力前)と振動モード図(振動入力中)の説明は、実施例1の「ノーダルポイント作用」と同様であるので、対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
このため、実施例2では、
図7の振動モード図(振動入力前)に示すように、内径側のノーダルポイントNPに固定部25が設けられる。これにより、固定部25では並進振動が最小となるので、インナーフレーム2からモータハウジング1への並進振動の入力(伝達)が抑えられる。
【0058】
[モータユニットの特徴作用]
実施例2の「モータユニットの特徴作用」は、実施例1のモータユニットAを、モータユニットBに置き換えると、実施例1と同様の「モータユニットの特徴作用」を示す。なお、実施例2の複数の固定部25の位置は、実施例1と異なり、円板部22の内径側のノーダルポイントNPである。しかし、円板部22の内径側付近は、円板部22の外径側付近と同様に、ノーダルポイントNPであり並進振動が小さい。このため、実施例2において、実施例1と同様の「モータユニットの特徴作用」を示す。
【0059】
よって、実施例2におけるモータユニットBにあっては、実施例1と同様に、(1),(3)〜(5)に記載した効果が得られる。
【実施例3】
【0060】
実施例3では、ステータ33の外周面33aとモータハウジング1の内面1bとの間に隙間Sが設けられる例である。また、実施例3では、インナーフレーム2とステータ33の締結部Fはステータ33のヨーク部332にする例である。
【0061】
まず、構成を説明する。
実施例3におけるモータユニットCは、車両の走行用駆動源としてのインホイールモータに適用されるものである。なお、車両は、インホイールモータを車輪毎に設け、それぞれのモータの駆動力を個別に制御するように構成される。以下、実施例3の構成を、「モータユニットの全体構成」と、「モータユニットの要部構成」に分けて説明する。
【0062】
[モータユニットの全体構成]
図8は、実施例3におけるモータユニットの全体構成図を示す。
図9は、実施例3におけるモータユニットのステータの概略図を示す。なお、実施例1の「モータユニットの全体構成」と同様の説明は、対応する構成に同一符号を付して省略する。
【0063】
ステータ33は、
図8に示すように、インナーフレーム2の内周面2b(円筒部21の内面21b)に固定されない。即ち、円筒部21の内面21bとステータ33の外周面33aとは接触しない。ステータ33は、
図9に示すように、複数のティース部331と、ヨーク部332と、から構成される。前記複数のティース部331は、
図9に示すように、ヨーク部332からステータ33の内径側に突出する。各ティース部331には、
図9に示すように、ステータコイル36が巻線される。前記ヨーク部332は、
図9に示すように、複数のティース部331外周側を構成する。即ち、ヨーク部332は、円周状である。
【0064】
[モータユニットの要部構成]
図10は、インナーフレームとステータとの締結を説明する概略説明図を示す。以下、
図8〜
図10に基づいて、実施例3のモータユニットの要部構成を説明する。まず、要部構成について説明し、次いで、インナーフレーム2とステータ33の締結について説明する。続いて、モータハウジング1とステータ33の関係について説明する。なお、実施例1の
図2と
図3に基づく「モータユニットの要部構成」の説明は、実施例1と同様であるから図示及び説明を省略する。また、その他、実施例1の「モータユニットの要部構成」と同様の説明は省略する。
【0065】
インナーフレーム2の円筒部21は、
図8と
図10に示すように、ステータ33の外周に設けられると共に、ステータ33から軸方向CLにずらした位置に配置される。円筒部21の片側開口の他方側には、リング部材211が設けられる。リング部材211は、
図8に示すように、円筒部21の縁に沿って設けられる。このリング部材211は、リング形状である。リング部材211には、
図10に示すように、締結用ボルト穴211a(例えば、8つ)が開けられる。この締結用ボルト穴211aの位置は、リング部材211の周方向に均等配列とする。
【0066】
ステータ33には、
図9と
図10に示すように、貫通孔333(例えば、8つ)が開けられる。この貫通孔333の位置は、ヨーク部332の内径側であって、かつ、ティース部331とティース部331との間に開けられる。この貫通孔333は、ステータ33の周方向CDに均等配列とする。
【0067】
次いで、インナーフレーム2とステータ33の締結について説明する。
インナーフレーム2とステータ33は、
図8と
図10に示すように、締結される。即ち、まず、
図10に示すように、締結用ボルト穴211aと貫通孔333との位置を合わせる。次いで、軸方向CLにおいてインナーフレーム2とは反対方向のステータ33側(
図10の右側)から、締結ボルト8を貫通孔333に挿通させる。続いて、締結ボルト8を締結用ボルト穴211aに締め付ける。このため、
図9と
図10に示すように、インナーフレーム2とステータ33の締結部Fは、ヨーク部332の内径側であって、かつ、ティース部331とティース部331との間(
図9参照)になる。また、締結部Fは、
図10に示すように、リング部材211とステータ33の接触部分である。
【0068】
続いて、モータハウジング1とステータ33の関係について説明する。
ステータ33は、
図8に示すように、隙間Sを確保するためのOリング5を介して、モータハウジング1にフローティング支持される。即ち、モータハウジング1に対して、ステータ33を音振上浮かせた状態で支持する。言い換えると、
図8に示すように、ステータ33の外周面33aとモータハウジング1の内面1bとの間に隙間Sが設けられた状態で、かつ、モータハウジング1とステータ33との間にOリング5が配置された状態で支持する。なお、インナーフレーム2は、モータハウジング1にフローティング支持されない。また、インナーフレーム2は、
図8に示すように、モータハウジング1に固定される。この固定については、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0069】
次に、作用を説明する。
実施例3のモータユニットCにおける作用を、「ノーダルポイント作用」と、「モータユニットの特徴作用」に分けて説明する。
【0070】
[ノーダルポイント作用]
図11は、実施例3におけるモータユニットのインナーフレームにシミュレーションにより並進振動が入力される場合の模式図である。なお、モータシャフト31とロータ32は図示を省略する。また、
図11の振動モード図(振動入力前)のIII‐III断面図では、固定部25等の図示を省略する。その他の振動モード図(振動入力中)や焼嵌め固定等も同様である。以下、
図11に基づいて、「ノーダルポイント作用」を説明する。
【0071】
例えば、
図11の焼嵌め固定等に示すように、ステータ33において逆相に径方向振動が発生することがある。ここで、「逆相に径方向振動」とは、
図11の焼嵌め固定等に示すように、ステータ33の軸方向CLの端面が膨張・収縮する。即ち、
図11の焼嵌め固定等に示すように、ステータ33の軸方向CLにおける左側(円板部22側)の第1端面33cが収縮し(矢印CO)、ステータ33の軸方向CLにおける右側の第2端面33dが膨張する(矢印EX)。また、第1端面33cが膨張すれば、第2端面33dが収縮する。このように、第1端面33cと第2端面33dが膨張・収縮を繰り返す。このため、ステータ33がインナーフレーム2の内周面2bに焼嵌め等により固定される場合に、逆相の径方向振動が発生すると、円板部22の残りの一部(実施例1や実施例2参照)がノーダルポイントNPにならない。即ち、
図11の焼嵌め固定等に示すように、逆相に径方向振動が発生すると、インナーフレーム2にその振動が入力され、円板部22の残りの一部が軸方向CL等に振動する。この場合、円板部22の残りの一部が基準線LからずれてノーダルポイントNPにならない。言い換えると、実施例1の
図4や実施例2の
図7と同様の位置(円板部22の残りの一部)が、ノーダルポイントNPにならない。それゆえ、インナーフレーム2の軸方向振動により、インナーフレーム2からモータハウジング1へ振動が入力する。
【0072】
また、その逆相の径方向振動が発生する場合、逆相の径方向振動に対するステータ・ノーダルポイントNP1は、
図11の振動モード図(振動入力中)に示すように、ステータ33の内部となる。この「ステータ・ノーダルポイントNP1」は、ステータ33の動きが少ないポイント(ところ)である。このため、実施例3において、締結部Fは、ヨーク部332の内径側であって、かつ、ティース部331とティース部331との間にされる(
図9と
図10参照)。これにより、その逆相の径方向振動が発生する場合であっても、
図11の振動モード図(振動入力中)に示すように、円板部22の残りの一部が基準線Lからずれることなく、ノーダルポイントNPになる。それゆえ、実施例3では、実施例1と同様に、外径側のノーダルポイントNPに固定部25が設けられる。従って、固定部25では並進振動が最小となるので、インナーフレーム2からモータハウジング1への振動入力(伝達)が抑えられる。
【0073】
[モータユニットの特徴作用]
実施例3の「モータユニットの特徴作用」は、実施例1のモータユニットAを、モータユニットCに置き換えると、実施例1と同様の「モータユニットの特徴作用」を示す。
このため、実施例3では、ステータ33の外周面33aとモータハウジング1の内面1bとの間に隙間Sが設けられる。加えて、以下に、実施例3の「モータユニットの特徴作用」を説明する。
【0074】
実施例3では、ヨーク部332の内径側を、円筒部21の片側開口の他方側とステータ33の締結部Fにする。
例えば、上述したとおり、ステータ33において逆相に径方向振動が発生することがある。このため、ステータ33が円筒部21の内面21bに焼嵌め等により固定される場合、インナーフレーム2からモータハウジング1へ振動が入力するおそれがある。
これに対し、実施例3では、ヨーク部332の内径側を、円筒部21の片側開口の他方側とステータ33の締結部Fにする。
即ち、締結部Fをヨーク部332の内径側にする。これにより、ステータ33において逆相に径方向振動が発生する場合でも、円板部22の外径側や内径側(残りの一部)の軸方向振動を抑制することができる。
従って、インナーフレーム2からモータハウジング1への振動入力を低減することができる。
【0075】
実施例3では、締結部Fを、ヨーク部332の内径側であって、かつ、ティース部331とティース部331との間にする。
即ち、ティース部331は磁束密度が高い(また、磁束の通り道)ので、ティース部331を締結部Fにしない。磁束密度が高い部分や磁束の通り道を締結部Fとすると、モータ3出力へ影響してしまう。一方、ヨーク部332の中でも、ヨーク部332の内径側であって、かつ、ティース部331とティース部331との間は、磁束密度が低い。このため、締結部Fを、磁束密度が低い部分とする。
従って、モータ3出力への影響を小さくすることができる。
【0076】
次に、効果を説明する。
実施例3のモータユニットCにあっては、実施例1と同様に、実施例1の(1)〜(5)に記載した効果が得られる。なお、実施例3では、ステータ33の外周面33aとモータハウジング1の内面1bとの間に隙間Sが設けられる。また、実施例3のモータユニットCにあっては、下記(6)と(7)の効果を得ることができる。
【0077】
(6) ステータ33の外周面33aと、モータハウジング1の内面1bと、の間に隙間Sが設けられる。
ステータ33は、ステータ33のティース部331外周側を構成するヨーク部332を有する。
ヨーク部332の内径側を、円筒部21の片側開口の他方側とステータ33の締結部Fにする(
図8〜
図10)。
このため、上記(1)〜(2)の効果に加え、インナーフレーム2からモータハウジング1への振動入力を低減することができる。
【0078】
(7) ステータ33は、ヨーク部332からステータ33の内径側に突出する複数のティース部331を有する。
締結部Fを、ヨーク部332の内径側であって、かつ、ティース部331とティース部331との間にする(
図9と
図10)。
このため、上記(6)の効果に加え、モータ3出力への影響を小さくすることができる。
【0079】
以上、本開示のモータユニットを実施例1〜実施例3に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、実施例1〜実施例3に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0080】
実施例1〜実施例3では、複数の固定部25の数を7つにする例を示した。しかし、複数の固定部25の数は5つでも良い。要するに、複数の固定部25の数は、ステータ33に流れる電流の相数と、2の倍数(偶数)と、を避けた数とすれば良い。言い換えると、複数の固定部25の数は、奇数であって、ステータ33に流れる電流の相数を避けた数とすれば良い。なお、電流の相数は3相に限られない。
【0081】
実施例1〜実施例3では、インナーフレーム2が、隙間Sを確保するためのOリング5を介して、モータハウジング1にフローティング支持される例を示した。しかし、Oリング5に限らず、隙間Sを確保するための板バネでも良いし、隙間Sを確保するための樹脂でも良い。要するに、インナーフレーム2を、モータハウジング1にフローティング支持することができる部材であれば良い。
【0082】
実施例3では、複数の固定部25の位置を円板部22の外径側のノーダルポイントNPとする例を示した。しかし、外径側のノーダルポイントNPに限らず、実施例2のように、複数の固定部25の位置は、円板部22の内径側のノーダルポイントNPでも良い。
【0083】
実施例3では、締結部Fを、ヨーク部332の内径側であって、かつ、ティース部331とティース部331との間にする例を示した。しかし、締結部Fを、ティース部331とティース部331との間にせず、ヨーク部332の内径側にしても良い。また、締結部Fを、ステータ33の外径と内径の中間位置(ステータ33の径方向の中間位置)にしても良い。要するに、磁束密度が高い部分や磁束の通り道を避け、磁束密度が低い部分を締結部Fをすれば良い。
【0084】
実施例1〜実施例3では、本開示のモータユニットA〜Cを、インホイールモータに適用する例を示した。しかし、ハイブリッド車両や電気自動車等のモータに対しても本開示のモータユニットを適用しても良い。また、車両のモータに限らず、電気機械器具(洗濯機など)のモータに対しても本開示のモータユニットを適用しても良い。要するに、モータであれば、本開示のモータユニットを適用することができる。