(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記組電池は、複数の上記二次電池からなる第1電池群(21)と複数の上記二次電池からなる第2電池群(22)とを含んでおり、上記電池状態推定装置として、上記第1電池群に接続された第1電池状態推定装置(11)と、上記第2電池群に接続された第2電池状態推定装置(12)とを有している、請求項4に記載の電源装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
上記電池状態推定装置の実施形態について、
図1〜
図5を用いて説明する。
本実施形態の電池状態推定装置1は、二次電池2における充放電可能な電力量を推定するものであり、電池情報取得部40、履歴情報取得部41、特性情報記憶部30、特性情報抽出部60、特性値算出部61及び推定部62を有する。
電池情報取得部40は、二次電池2の電池情報を取得する。
履歴情報取得部41は、二次電池2の使用履歴情報を取得する。
特性情報記憶部30は、二次電池2の電池情報と二次電池2における正極の特性値及び負極の特性値との対応関係を示す正極特性情報及び負極特性情報がそれぞれ、二次電池2の使用履歴情報と対応付けられて、予め記憶されている。
特性情報抽出部
60は履歴情報取得部41により取得された使用履歴情報に対応する正極特性情報及び負極特性情報を特性情報記憶部30から抽出する。
特性値算出部
61は、電池情報取得部40により取得された電池情報と、特性情報抽出部
60により抽出された正極特性情報及び負極特性情報とに基づいて、二次電池2の動作範囲内において二次電池2における正極の特性値及び負極の特性値をそれぞれ算出する。
推定部
62は、特性値算出部
61により算出された正極の特性値及び負極の特性値に基づいて、二次電池2における充放電可能な電力量を推定する。
【0014】
以下、本実施形態の電池状態推定装置1について、詳述する。
図1に示すように、電池状態推定装置1は、二次電池2における充放電可能な電力量を推定するものであって、二次電池2に接続されて電源装置100を形成している。電源装置100は電気自動車等に搭載されて、二次電池2の出力電力が電気自動車の回転機や種々のアシスト機に利用されるとともに、回転機の回生エネルギーが二次電池2に入力されるように構成されている。本実施形態では、二次電池2はリチウムイオン電池であって、LiFePO
4からなる鉄系正極と、グラファイトからなる炭素系負極とを有する。
【0015】
図1に示すように、電池状態推定装置1は、記憶部3、取得部4、格納部5、演算部6、報知部7を備える。記憶部3は特性情報記憶部30を有する。特性情報記憶部30は書き換え不能な不揮発性メモリであって、二次電池2の正極特性情報と負極特性情報とが予め記憶されている。
【0016】
特性情報記憶部30に記憶された正極特性情報及び負極特性情報とは、二次電池2の正極の特性及び負極の特性と、二次電池2の電池状態との
対応関係を示す情報である。正極の特性及び負極の特性としては、正極及び負極における容量維持率、抵抗上昇率、電極電位など、正極及び負極に関する種々の情報を採用することができる。二次電池2の電池状態としては、二次電池2における充放電電力量の積算値である積算充放電電力量、電極に流れた電流量の積算値である積算電流量、充放電回数、通電時間、二次電池2が搭載された車両の走行距離、電池温度、電池電圧など、二次電池2の使用に関する種々の情報を採用することができる。本実施形態では、正極特性情報及び負極特性情報として、正極及び負極における容量維持率を採用した。なお、容量維持率とは、正極及び負極における初期の充放電可能な電気容量V
intに対する検出時の充放電可能な電気容量Vの維持率であるV/V
int×100(%)を示す。
【0017】
特性情報記憶部30に記憶された正極特性情報及び負極特性情報は、それぞれ別個に、二次電池2の使用履歴情報に対応付けられた状態で記憶されている。二次電池2の使用履歴情報とは、二次電池2における温度履歴、電力入出力履歴、通電履歴、二次電池2が搭載された車両の走行履歴、充放電履歴、積算充電容量、積算放電容量、総充電容量、総放電容量、平均電池電圧など、二次電池2の使用履歴に関する種々の情報を採用することができる。
【0018】
本実施形態では、特性情報記憶部30には、正極特性情報及び負極特性情報としての正極及び負極における容量維持率と二次電池2における積算充放電電力量との対応関係が、二次電池2の使用履歴情報としての二次電池2の温度履歴に対応付けられて記憶されている。特性情報記憶部30には、本実施形態では、例えば、
図2に示す第1の温度履歴に対応する第1の正極特性情報及び負極特性情報が記憶されており、
図3に示す第2の温度履歴に対応する第2の正極特性情報及び負極特性情報が記憶されている。この場合は、第2の温度履歴では、第1の温度履歴の場合よりも、負極の劣化に比べて正極の劣化が進みやすい温度環境で使用されている。なお、特性情報記憶部30に記憶された正極特性情報及び負極特性情報の形態は特に限定されず、例えば、算出式、マップ、表などの形態とすることができる。なお、特性情報記憶部30に記憶される正極特性情報及び負極特性情報は、測定用の二次電池2を用いて加速劣化試験を行って分解調査して得られた実測定値を基に作成したり、二次電池2のモデルを用いて正極及び負極の状態変化を理論的に導き出す算出式により作成することができる。
【0019】
図1に示すように、取得部4は、電池情報取得部40と履歴情報取得部41とを有する。電池情報取得部40は、電池状態推定装置1に接続された二次電池2から上述の電池情報を取得する。電池情報取得部40は、例えば、各種センサや計測器により構成することができる。本実施形態では、電池情報取得部40は、二次電池2に流れた電流量、二次電池2の電圧値及び流れた時間に基づいて二次電池2において充放電された電力量を計測する計測器からなる。履歴情報取得部41は、電池状態推定装置1に接続された二次電池2から上述の二次電池2の使用履歴情報を取得する。本実施形態では、電池状態推定装置1に接続された二次電池2の使用環境の温度を計測する温度センサからなる。なお、電池情報取得部40が所定のタイミングや間隔で取得して蓄積した情報を二次電池2の使用履歴情報として取得するようにしてもよい。
【0020】
次に、格納部5は、電池情報格納部50と、履歴情報格納部51とを有する。電池情報格納部50は揮発性のメモリであって、電池情報取得部40が取得した電池情報が一次的に格納される。履歴情報格納部51は書き換え可能な不揮発性のメモリであって、履歴情報取得部41が取得した二次電池2の使用履歴情報が蓄積される。
【0021】
演算部6は、特性情報抽出部60、特性値算出部61、推定部62を有する。演算部6はマイコンにより構成され、特性情報抽出部60、特性値算出部61、推定部62としての機能を果たすプログラムを実行可能に構成されている。当該プログラムは演算部6に設けられた図示しないメモリに格納されている。特性情報抽出部60は、特性情報記憶部30から、履歴情報格納部51に格納された二次電池2の使用履歴情報に対応する正極特性情報及び負極特性情報を抽出する。特性値算出部61は、電池情報格納部50に格納された二次電池2の電池情報と、特性情報抽出部60により抽出された正極特性情報及び負極特性情報とに基づいて、二次電池2の動作範囲内において正極の特性値と負極の特性値とを算出する。
【0022】
二次電池2の動作範囲とは、正極及び負極のそれぞれの最大及び最小電気容量から規定される理論範囲内において余裕度を持たせた範囲である。二次電池2はこの動作範囲内で使用することにより、高い安定性を確保できる。そして、本実施形態における特性値算出部61では、二次電池2の動作範囲内において正極の特性値と負極の特性値を算出することにより、二次電池2の高い安定性が確保された範囲内で後述する二次電池2における充放電可能な電力量が推定されるように構成されている。例えば、
図2及び
図3に示すように、正極及び負極における容量維持率と二次電池2における積算充放電電力量との対応関係からなる正極特性情報及び負極特性情報においては、所定の容量維持率が動作範囲の下限として規定される。そして、二次電池2の動作範囲は、容量維持率が当該動作範囲の下限よりも高い、すなわち正極及び負極における劣化が少ない範囲となる。
【0023】
推定部62は、劣化度判定部63と電力量算出部64とを有する。劣化度判定部63は、正極の特性値と負極の特性値とを比較して、どちらが劣化度合いが高いか判定する。
電力量算出部64は、劣化度判定部63において、正極及び負極のうち劣化度合いが高いと判定された方の特性値から二次電池2における充放電可能な電力量を算出する。これにより、推定部62において、二次電池2における充放電可能な電力量が推定される。
【0024】
報知部7は、推定結果表示部70を有する。推定結果表示部70は、推定部62による推定結果を表示して、ユーザに推定結果を報知する。推定結果表示部70は、所定のディスプレイで構成され、推定結果である二次電池2における充放電可能な電力量を表示可能に構成されている。なお、報知部7は、推定結果表示部70に替えて、又はこれとともに、推定部62による推定結果を音声で報知したり、所定のランプで報知する推定結果出力部を備えていてもよい。例えば、推定結果である二次電池2における充放電可能な電力量が所定の基準値よりも高い場合又は低い場合に所定態様の音声を出力したり、所定態様のランプを点灯させるようにしてもよい。
【0025】
次に、電池状態推定装置1の使用態様について、
図4に示すフロー図を用いて説明する。まず、
図4に示すように、ステップS1において、履歴情報取得部41により、二次電池2の使用履歴情報を取得し、履歴情報格納部51に格納する。本実施形態では、履歴情報取得部41は所定間隔で二次電池2の温度を取得し、二次電池2の使用履歴情報として温度履歴情報を履歴情報格納部51に格納する。また、履歴情報取得部41は二次電池2における積算充放電電力量(Wh)も所定間隔で取得し、履歴情報格納部51に格納する。
【0026】
次に、ステップS2において、二次電池2における充放電可能な電力量を推定する電力量推定タイミングが到来したか否かを判定する。当該判定は図示しない判定部により行う。電力量推定タイミングが到来していないと判定された場合は、再度ステップS1に戻る。
【0027】
ステップS2において、電力量推定タイミングが到来していると判定された場合は、ステップS3に進み、電池情報取得部40により、二次電池2の電池情報を取得し、電池情報格納部50に格納する。本実施形態では、電池情報取得部40は、履歴情報格納部51に格納されている電力量推定タイミングまでの二次電池2における積算充放電電力量(Wh)を電池情報として取得する。
【0028】
そして、ステップS4において、特性情報抽出部60により、履歴情報格納部51に格納された温度履歴情報に対応する正極特性情報及び負極特性情報を特性情報記憶部30から抽出する。例えば、履歴情報格納部51に格納された温度履歴情報が第1の温度履歴である場合には、特性情報記憶部30から
図2に示す第1の正極特性情報及び負極特性情報を抽出し、履歴情報格納部51に格納された温度履歴情報が第2の温度履歴である場合には、特性情報記憶部30から
図3に示す第2の正極特性情報及び負極特性情報を抽出する。
【0029】
その後、ステップS5において、特性値算出部61により、電池情報格納部50に格納された二次電池2の電池情報と、特性情報抽出部60により抽出された正極特性情報及び負極特性情報とに基づいて、二次電池2の動作範囲内において正極の特性値と負極の特性値とを算出する。本実施形態では、例えば、履歴情報格納部51に格納された温度履歴情報が第1の温度履歴である場合には、
図2に示す第1の正極特性情報及び負極特性情報と、電池情報格納部50に格納された二次電池2における積算充放電電力量(Wh)とに基づいて、二次電池2の動作範囲内において、正極の特性値及び負極の特性値として、正極の容量維持率(V/V
int)及び負極の容量維持率(V/V
int)を算出する。また、例えば、履歴情報格納部51に格納された温度履歴情報が第2の温度履歴である場合には、
図3に示す第2の正極特性情報及び負極特性情報と、電池情報格納部50に格納された二次電池2における積算充放電電力量(Wh)とに基づいて、二次電池2の動作範囲内において、正極の特性値及び負極の特性値として、正極の容量維持率(V/V
int)及び負極の容量維持率(V/V
int)を算出する。
【0030】
例えば、
図2及び
図3に示すように、電池情報格納部50に格納された二次電池2における積算充放電電力量(Wh)がWh1である場合には、正極の容量維持率(V/V
int)はV1pであり、負極の容量維持率(V/V
int)はV1nである。また、電池情報格納部50に格納された二次電池2における積算充放電電力量(Wh)がWh2である場合には、正極の容量維持率(V/V
int)はV1pであり、負極の容量維持率(V/V
int)はV1nである。
【0031】
そして、
図4に示すステップS6において、推定部62における劣化度判定部63により、特性値算出部61によって算出された正極の特性値及び負極の特性値とを比較して、どちらの劣化度合いが高いか判定する。本実施形態では、劣化度判定部63により、正極の容量維持率と負極の容量維持率とを比較して、容量維持率が低い方を劣化度合いが高いと判定する。
【0032】
例えば、
図2に示すように、第1の温度履歴の場合において、二次電池2の積算充放電電力量がWh1の場合には、負極の特性値V1nが正極の特性値V1pよりも小さいため、劣化度判定部63により負極の方が正極よりも劣化度合いが高いと判定される。また、二次電池2の積算充放電電力量がWh2の場合も負極の特性値V2nが正極の特性値V2pよりも小さいため、劣化度判定部63により負極の方が正極よりも劣化度合いが高いと判定される。また、
図3に示すように、第2の温度履歴の場合においては、二次電池2の積算充放電電力量がWh1の場合には、第1の温度履歴の場合と同様に、負極の特性値V1nが正極の特性値V1pよりも小さいため、劣化度判定部63により負極の方が正極よりも劣化度合いが高いと判定される。しかし、二次電池2の積算充放電電力量がWh2の場合には、正極の特性値V2pが負極の特性値V2nよりも小さいため、劣化度判定部63により正極の方が負極よりも劣化度合いが高いと判定される。
【0033】
その後、
図4に示すステップS7において、推定部62における電力量算出部64により、劣化度判定部63によって正極及び負極のうち劣化度合いが高いと判定された方の特性値から二次電池2における充放電可能な電力量を算出する。本実施形態では、電力量算出部64により、劣化度合いが高い方の電極の容量維持率から劣化度合いが高い方の電極の充放電可能な電力量を算出し、これに基づいて当該二次電池2における充放電可能な電力量を算出する。
【0034】
以上のように、電池状態推定装置1により、二次電池2における充放電可能な電力量を推定することができる。
【0035】
(評価試験1)
次に、電池状態推定装置における使用履歴に関する以下の評価試験1を行った。
試験例の電池状態推定装置として実施形態1の電池状態推定装置1を使用し、比較例として電極非分離方式の推定方法により電池状態を推定する電池状態推定装置を使用した。
比較例の電池状態推定装置は、二次電池における積算充放電電力量(Wh)と二次電池の容量維持率との関係を示す情報である電池特性情報を有している。比較例の電池状態推定装置による二次電池における充放電可能な電力量の推定は、
図5に示すフローに従って行った。まず、ステップS101において、二次電池2における積算充放電電力量を検出し、記憶する。そして、ステップS102において、電力量推定タイミングに到達したか否かを判定する。電力量推定タイミングに到達していないと判定された場合は、再度ステップS101に戻る。一方、ステップS102において電力量推定タイミングに到達していると判定された場合は、測定時点までの二次電池における積算充放電電力量を取得する。そして、ステップS104において、ステップS102で取得した当該二次電池における積算充放電電力量と電池特性情報とに基づいて、ステップS105によって二次電池2の充放電可能な電力量を推定する。
【0036】
評価試験1は以下のように行った。まず、電源装置100が搭載された車両を温度環境が異なる使用履歴A、B及びCにおいて所定期間使用した後、試験例の電池状態推定装置1及び比較例の電池状態推定装置によって二次電池2における充放電可能な電力量を推定した。また、二次電池2において当該推定時点で実際に充放電できた電力量を実測定値として取得した。使用履歴Aは通常温度の市街地で使用した場合であり、使用履歴Bは高温度の地域で使用した場合であり、使用履歴Cは低温度の地域で使用した場合である。そして、試験例1−1及び比較例1−1を使用履歴Aとし、試験例1−2及び比較例1−2を使用履歴Bとし、試験例1−3及び比較例1−3を使用履歴Cとした。評価結果は表1に示した。なお、各試験例及び比較例のいずれにおいても、リン酸
鉄リチウムからなる正極と、非晶質炭素からなる負極とを有する二次電池2を使用した。
【0038】
表1に示すように、試験例1−1、1−2及び1−3のいずれにおいても、推定値と実測定値との差は−0.01〜0.00Ahの範囲内の高い推定精度を示した。一方、比較例1−1、1−2及び1−3では、推定値と実測定
値との差はいずれも試験例の場合よりも大きかった。
以上のように、試験例1−1、1−2及び1−3では推定値と実測定値との差は小さく、その精度は比較例のいずれよりも高いことが確認できた。
【0039】
(評価試験2)
次に、電池状態推定装置と二次電池とを有する電源装置に関する以下の評価試験2を行った。評価試験2では、二次電池の電極の構成を変更した。試験例2−1及び比較例2−1では、正極がリン酸鉄リチウムからなり、負極が非晶質炭素からなる二次電池とした。試験例2−2及び比較例2−2では、正極がニッケル−マンガン−コバルト酸リチウムからなり、負極が非晶質炭素からなる二次電池とした。試験例2−3及び比較例2−3では、正極がニッケル−マンガン−コバルト酸リチウムからなり、負極がチタン酸リチウムからなる二次電池とした。なお、各試験例及び比較例では使用履歴として、評価試験1における高温地域の使用履歴Bを採用し、評価試験1の場合と同様に、二次電池2の充放電可能な電力量を推定するとともに実際に充放電可能な電力量の実測定値を測定した。評価結果は以下の表2に示す。
【0041】
表2に示すように、試験例2−1、2−2及び2−3の全てで、比較例2−1、2−2及び2−3よりも推定値と実測定値との差が小さく、その推定精度が高いことが確認できた。
【0042】
(評価試験3)
次に、電池状態推定装置と二次電池とを有する電源装置に関する以下の評価試験3を行った。評価試験3ではさらに、二次電池の電極の構成を変更した。試験例3−1、3−2、3−3及び比較例3−1、3−2、3−3では、正極をリン酸鉄リチウムからなる二次電池とし、試験例3−4、3−5及び比較例3−4、3−5では正極をニッケル−マンガン−コバルト酸リチウムからなる二次電池とした。また、試験例3−1、3−4及び比較例3−1、3−4では、負極を非晶質炭素からなる二次電池とし、試験例3−2及び比較例3−2では、負極を黒鉛比表面積が1.2m
2/gの高比表面黒鉛からなる二次電池とし、試験例3−3、3−5及び比較例3−3、3−5では、負極を黒鉛比表面積が0.8m
2/gの低比表面黒鉛からなる二次電池とした。なお、各試験例及び比較例では使用履歴として、評価試験1における高温地域の使用履歴Bを採用し、評価試験1の場合と同様に、二次電池の充放電可能な電力量を推定するとともに実際に充放電可能な電力量の実測定値を測定した。評価結果は以下の表3に示す。
【0044】
表3に示すように、すべての試験例において、対応する比較例よりも推定値と実測定値との差が少なくなっており、高い推定精度を示すことが確認できた。特に、負極が低比表面黒鉛からなる場合には十分高い推定精度が得られることが分かった。
【0045】
次に、本実施形態の電池状態推定装置1における作用効果について、詳述する。
電池状態推定装置1においては、正極特性情報及び負極特性情報が使用履歴情報に対応付けられて記憶されている。そして、二次電池2における充放電可能な電力量を推定する際には、当該二次電池2の使用履歴情報に対応する正極特性情報及び負極特性情報を抽出した上で、当該正極特性情報及び負極特性情報に基づいて、二次電池2の動作範囲内において正極の特性値と負極の特性値とを個別に算出する。そして、当該正極の特性値と負極の特性値とから二次電池2における充放電可能な電力量を推定する。これにより、使用履歴に応じて互いに異なる正極及び負極の劣化度合いが反映されるため、二次電池2における充放電可能な電力量を高精度に推定することができる。
【0046】
また、本実施形態では、推定部62は、正極の特性値及び負極の特性値から正極及び負極のどちらが劣化度合いが高いか判定する劣化度判定部63と、正極及び負極のうち劣化度合いが高いと判定された方の特性値から二次電池2における充放電可能な電力量を算出する電力量算出部64とを有する。二次電池2における充放電可能な電力量に対する影響は、二次電池2における正極及び負極のうち、劣化度合いが高い方の電極が優位となる。従って、推定部62は電力量算出部64において、劣化度判定部63において劣化度合いが高いと判定された電極の特性値から二次電池2における充放電可能な電力量を算出することにより、二次電池2における充放電可能な電力量を高精度に推定することができる。
【0047】
また、本実施形態では、推定部62の推定結果を表示する推定結果表示部70を有する。これにより、当該推定結果を容易に視認することができる。
【0048】
また、電池状態推定装置1と、電池状態推定装置1によって充放電可能な電力量が推定される二次電池2とを含む電源装置100は、二次電池2がリチウムイオン二次電池であるとともに、比表面積が3.0m
2/g以下である黒鉛を含む負極を有することが好ましく、1.0m
2/g以下である黒鉛を含む負極を有することがより好ましい。これにより、電池状態推定装置1により二次電池2における充放電可能な電力量が高精度に推定される電源装置100となる。
【0049】
本実施形態では、電源装置100は、一つの二次電池2に一つの電池状態推定装置1が接続されているが、これに替えて、
図6に示す変形形態1のように、電源装置100において、複数の二次電池2が備えられて組電池20を構成していてもよい。
図6に示すように、変形形態1における電源装置100は、組電池20を備えるとともに、電池状態推定装置として、第1電池状態推定装置11及び第2電池状態推定装置12を備えている。第1電池状態推定装置11及び第2電池状態推定装置12は実施形態1における電池状態推定装置1と同一の構成を有する。組電池20は、複数の二次電池2からなる第1電池群21及び第2電池群22を含んでいる。第1電池群21では、複数の二次電池2が並列に接続された状態で第1電池状態推定装置11に接続されている。また、第2電池群22では、複数の二次電池2が並列に接続された状態で第2電池状態推定装置12に接続されている。そして、第1電池状態推定装置11及び第2電池状態推定装置12は、第1電池群21及び第2電池群22ごとの使用履歴情報及び電池情報を取得するとともに、充放電可能な電力量を推定するように構成されている。
【0050】
変形形態1における電源装置100では、監視単位となる第1電池群21及び第2電池群22ごとに、充放電可能な電力量を高精度に推定するようにできる。これにより、多数の二次電池2を備える組電池20において、二次電池2ごとに電池状態推定装置1を使用する場合に比べて電池状態推定装置1の使用数を減らすことができる。さらに、組電池20が使用された環境や使用状況等による監視単位ごとの劣化のバラつきや偏りを考慮して組電池20全体の充放電可能な電力量を高精度に推定することができる。
【0051】
なお、
図7に示す変形形態2のように、組電池20に一つの電池状態推定装置1を接続するようにしてもよい。変形形態2の場合には、電池状態推定装置1の使用数を一層減らすことができる。さらに、複数の二次電池2における充放電可能な電力量を個別に推定することや所定の監視単位ごとに推定することはできないが、組電池20全体における充放電可能な電力量を高精度に推定することができる。
【0052】
なお、変形形態1及び変形形態2において、実施形態1の場合と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0053】
以上のごとく、本実施形態によれば、二次電池2の状態を高精度に推定することができる電池状態推定装置1及び電源装置100が提供される。
【0054】
本発明は上記実施形態及び変形形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。例えば、実施形態1における電源装置100において、電池状態推定装置1が報知部7を有していない構成としてもよい。