(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半導体基板が、前記第1アノード領域と前記第1カソード領域の間に配置されており、前記第1カソード領域よりもn型不純物濃度が低いn型のドリフト領域を有しており、
前記第2抵抗層の抵抗率が、前記ドリフト領域の抵抗率よりも高い、
請求項1〜6のいずれか一項の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜3は、実施形態の半導体装置10を示している。半導体装置10は、半導体基板12を有している。半導体基板12は、シリコン製の基板である。
図1に示すように、半導体基板12の上部に、上部主電極14とセンスアノード電極50が配置されている。上部主電極14の下部の半導体基板12に、素子領域18が設けられている。後に詳述するが、素子領域18内に、IGBTと還流ダイオードが設けられている。また、センスアノード電極50の下部の半導体基板12に、センス領域70が設けられている。後に詳述するが、センス領域70内に、センスダイオードが設けられている。素子領域18の面積は、センス領域70の面積よりも遥かに大きい。なお、以下の説明において、半導体基板12の厚み方向をz方向といい、半導体基板12の上面に平行な一方向(z方向に直交する一方向)をx方向といい、z方向及びx方向に直交する方向をy方向という。
【0013】
図2に示すように、センス領域70内の半導体基板12の上面は、層間絶縁膜36によって覆われている。また、センス領域70の上部に、センスアノード電極50、第2抵抗層52及び配線層54が配置されている。
【0014】
第2抵抗層52は、不純物がドープされたポリシリコンによって構成されている。第2抵抗層52は、センスアノード電極50及び配線層54よりも高い抵抗率を有している。第2抵抗層52は、層間絶縁膜36上に配置されている。第2抵抗層52の下部の層間絶縁膜36に、コンタクトホール36cが設けられている。コンタクトホール36c内に、配線層54が配置されている。配線層54は、Al(アルミニウム)またはAlSi(アルミニウムとシリコンの合金)によって構成されている。配線層54は、第2抵抗層52に接している。配線層54は、半導体基板12の上面に接している。すなわち、配線層54によって、第2抵抗層52が半導体基板12に接続されている。センスアノード電極50は、AlまたはAlSiによって構成されている。センスアノード電極50は、第2抵抗層52上に配置されている。センスアノード電極50は、第2抵抗層52の上面全体を覆っている。センスアノード電極50の上面は、ボンディングパッドである。センスアノード電極50の上面に、ワイヤー17の端部がボンディングされている。ワイヤー17の他端は、外部回路に接続されている。
【0015】
第2抵抗層52と配線層54によって、センスアノード電極50と半導体基板12(より詳細には、後述するアノード領域60)とを接続する電流経路が構成されている。上述したように、第2抵抗層52の抵抗率は、センスアノード電極50の抵抗率及び配線層54の抵抗率よりも高い。このため、ボンディングパッドから半導体基板12に至る電流経路において、第2抵抗層52の抵抗は、センスアノード電極50の抵抗及び配線層54の抵抗よりも高い。
【0016】
上部主電極14は、AlまたはAlSiによって構成されている。
図2、3に示すように、上部主電極14は、素子領域18内で半導体基板12の上面に接している。
図2に示すように、上部主電極14とセンスアノード電極50の間には、間隔が設けられている。
【0017】
図2に示すように、素子領域18とセンス領域70の間に位置する半導体基板12の上面は、層間絶縁膜36に覆われている。この部分の層間絶縁膜36上に、第1抵抗層51が配置されている。第1抵抗層51は、不純物がドープされたポリシリコンによって構成されている。第1抵抗層51の上面は、層間絶縁膜36に覆われている。第1抵抗層51上の層間絶縁膜36に、コンタクトホール36a、36bが設けられている。センスアノード電極50は、コンタクトホール36bまで伸びている。センスアノード電極50は、コンタクトホール36b内で第1抵抗層51を覆っている。上部主電極14は、コンタクトホール36aまで伸びている。上部主電極14は、コンタクトホール36a内で第1抵抗層51を覆っている。第1抵抗層51を介して、センスアノード電極50が上部主電極14に接続されている。
【0018】
図2、3に示すように、半導体基板12の下面には、下部主電極16が配置されている。下部主電極16は、半導体基板12の下面の略全域に接している。
【0019】
図2に示すように、センス領域70内に、アノード領域60、ドリフト領域27及びカソード領域62が配置されている。
【0020】
アノード領域60は、p型領域である。アノード領域60は、半導体基板12の上面に露出する範囲に配置されている。アノード領域60は、配線層54の下に配置されている。アノード領域60は、配線層54に接している。アノード領域60は、配線層54と第2抵抗層52を介してセンスアノード電極50に接続されている。
【0021】
ドリフト領域27は、n型不純物濃度が低いn型領域である。ドリフト領域27は、アノード領域60の下に配置されている。第2抵抗層52の抵抗率は、伝導度変調現象が生じていないときのドリフト領域27の抵抗率よりも高いことが好ましい。
【0022】
カソード領域62は、ドリフト領域27よりもn型不純物濃度が高いn型領域である。カソード領域62は、アノード領域60の下部において、ドリフト領域27の下に配置されている。カソード領域62は、半導体基板12の下面に露出する範囲に配置されている。カソード領域62は、下部主電極16に接している。
【0023】
センス領域70内には、アノード領域60、ドリフト領域27及びカソード領域62によって、センスダイオードが設けられている。
【0024】
図3に示すように、素子領域18は、IGBTが設けられているIGBT範囲20と、還流ダイオードが設けられているダイオード範囲40を有している。IGBT範囲20とダイオード範囲40は互いに隣接している。素子領域18内には、IGBT範囲20とダイオード範囲40がy方向において交互に繰り返すように配置されている。
【0025】
素子領域18内の半導体基板12の上面には、複数のトレンチ38が設けられている。半導体基板12の上面において、複数のトレンチ38は、x方向に沿って平行に伸びている。
図3に示す断面においては、各トレンチ38は、半導体基板12の上面からz方向に沿って伸びている。IGBT範囲20とダイオード範囲40のそれぞれに、複数のトレンチ38が設けられている。各トレンチ38の内面は、ゲート絶縁膜32によって覆われている。各トレンチ38内に、ゲート電極34が配置されている。各ゲート電極34は、ゲート絶縁膜32によって半導体基板12から絶縁されている。各ゲート電極34の上面は、層間絶縁膜36によって覆われている。各ゲート電極34は、層間絶縁膜36によって上部主電極14から絶縁されている。IGBT範囲20内の各ゲート電極34は、図示しないゲート配線に接続されている。ダイオード範囲40内の各ゲート電極34は、ゲート配線に接続されていてもよいし、上部主電極14等に接続されたダミー電極であってもよい。
【0026】
2つのトレンチ38に挟まれた各範囲に、エミッタ領域22とp型領域24が配置されている。IGBT範囲20内及びダイオード範囲40内に、エミッタ領域22とp型領域24が配置されている。エミッタ領域22は、n型領域である。エミッタ領域22は、半導体基板12の上面に露出する範囲に配置されている。エミッタ領域22は、上部主電極14に接している。エミッタ領域22は、トレンチ38の上端部においてゲート絶縁膜32に接している。p型領域24は、高濃度領域24aと低濃度領域24bを有している。高濃度領域24aは、低濃度領域24bよりも高いp型不純物濃度を有している。高濃度領域24aは、半導体基板12の上面に露出する範囲に配置されている。高濃度領域24aは、上部主電極14に接している。低濃度領域24bは、高濃度領域24aとエミッタ領域22の下に配置されている。低濃度領域24bは、エミッタ領域22の下でゲート絶縁膜32に接している。IGBT範囲20内のp型領域24は、IGBTのボディ領域として機能する。また、ダイオード範囲40内のp型領域24は、還流ダイオードのアノード領域として機能する。なお、
図3ではダイオード範囲40内にエミッタ領域22が配置されているが、ダイオード範囲40内にエミッタ領域22が配置されていなくてもよい。
【0027】
IGBT範囲20内及びダイオード範囲40内のp型領域24の下に、ドリフト領域27が配置されている。すなわち、ドリフト領域27は、センス領域70とIGBT範囲20とダイオード範囲40に跨って分布している。ドリフト領域27は、p型領域24の下でゲート絶縁膜32に接している。ドリフト領域27は、p型領域24によってエミッタ領域22から分離されている。
【0028】
IGBT範囲20内のドリフト領域27の下に、コレクタ領域30が配置されている。コレクタ領域30は、p型領域である。コレクタ領域30は、半導体基板12の下面に露出する範囲に配置されている。コレクタ領域30は、下部主電極16に接している。コレクタ領域30は、ドリフト領域27によってp型領域24から分離されている。
【0029】
ダイオード範囲40内のドリフト領域27の下に、カソード領域44が配置されている。カソード領域44は、ドリフト領域27よりもn型不純物濃度が高いn型領域である。カソード領域44は、半導体基板12の下面に露出する範囲に配置されている。カソード領域44は、下部主電極16に接している。
【0030】
IGBT範囲20内には、エミッタ領域22、p型領域24(すなわち、ボディ領域)、ドリフト領域27、コレクタ領域30、ゲート電極34及びゲート絶縁膜32等によってIGBTが構成されている。IGBTとして動作する場合には、上部主電極14がエミッタ電極として機能し、下部主電極16がコレクタ電極として機能する。
【0031】
ダイオード範囲40内には、p型領域24(すなわち、アノード領域)、ドリフト領域27、カソード領域44等によって、還流ダイオードが構成されている。還流ダイオードとして機能する場合には、上部主電極14がアノード電極として機能し、下部主電極16がカソード電極として機能する。
【0032】
図2に示すように、素子領域18とセンス領域70の間には、ドリフト領域27が分布している。ドリフト領域27によって、p型領域24(ボディ領域)がアノード領域60から分離されている。以下では、p型領域24とアノード領域60の間に位置するドリフト領域27を、分離領域27aという場合がある。第1抵抗層51の抵抗率は、分離領域27aの抵抗率よりも低いことが好ましい。
【0033】
図4は、半導体装置10の内部回路を示している。
図4において、IGBT82はIGBT範囲20内に設けられているIGBTを示しており、還流ダイオード84はダイオード範囲40内に設けられている還流ダイオードを示しており、センスダイオード80はセンス領域70内に設けられているセンスダイオードを示している。IGBT82のコレクタは下部主電極16に接続されており、IGBT82のエミッタは上部主電極14に接続されている。還流ダイオード84のアノードは上部主電極14に接続されており、還流ダイオード84のカソードは下部主電極16に接続されている。すなわち、還流ダイオード84は、IGBT82に対して逆並列に接続されている。センスダイオード80のカソードは、下部主電極16に接続されている。また、センスダイオード80のアノードは、センスアノード電極50に接続されている。センスアノード電極50は、ワイヤー17(
図1参照)等を介して外部回路90に接続されている。外部回路90は、センスアノード電極50の電位に応じて、IGBT82のゲート電極の電位を制御する。センスアノード電極50の電位は、下部主電極16の電位に応じて変化する。下部主電極16の電位が所定値以下だと、センスダイオード80がオンし、センスアノード電極50の電位が下部主電極16と略同電位(より詳細には、センスダイオード80の順方向電圧降下分だけ下部主電極16の電位よりも高い電位)となる。また、下部主電極16の電位が所定値よりも高いと、センスダイオード80がオフする。この場合、センスアノード電極50は下部主電極16の電位から独立した電位(例えば、外部回路90の内部で定まる電位)となる。したがって、外部回路90は、センスアノード電極50の電位を検出することで、IGBT82の動作状態を検知することができる。このため、外部回路90は、IGBT82を好適に制御することができる。また、
図1、2に示すように、センスアノード電極50は、上部主電極14の近くに配置されている。このため、センスアノード電極50と上部主電極14の間に、寄生容量が存在している。
図4では、この寄生容量を、容量86として示している。また、
図2に示すように、センスアノード電極50と下部主電極16は、半導体基板12を挟んで対向している。このため、センスアノード電極50と下部主電極16の間に、寄生容量が存在している。
図4では、この寄生容量を、容量88として示している。また、センスアノード電極50は、第1抵抗層51によって上部主電極14に接続されている。
図4では、第1抵抗層51を、抵抗51として示している。
【0034】
センスアノード電極50の電位が、寄生容量86、88を介した容量結合によって変化する場合がある。例えば、上部主電極14の電位が急激に変化すると、寄生容量88を介した容量結合によって、センスアノード電極50の電位が変化する。また、下部主電極16の電位が急激に変化すると、寄生容量86を介した容量結合によって、センスアノード電極50の電位が変化する。容量結合によってセンスアノード電極50の電位が変化すると、センスダイオード80に高い負荷が加わる。例えば、センスアノード電極50の電位が容量結合によって過度に上昇すると、センスダイオード80に順方向に過電圧が印加される。このため、センスダイオード80に順方向に過電流が流れる。また、センスアノード電極50の電位の上昇によってセンスダイオード80に順方向に電流が流れている間に、アノード領域60からドリフト領域27にホールが注入される。その後にセンスアノード電極50の電位が低下すると、センスダイオード80に印加される電圧が順方向電圧から逆方向電圧に切り換わる。すると、ドリフト領域27内に存在するホールが、センスアノード電極50に排出される。このため、センスダイオード80にリカバリ電流が流れる。順方向電流が大きいほど、その後に流れるリカバリ電流は大きくなり、センスダイオード80に対する負荷が大きくなる。また、センスアノード電極50の電位が過度に上昇すると、センスアノード電極50と上部主電極14の間の絶縁膜の絶縁性が劣化する場合がある。
【0035】
これに対し、本実施形態の半導体装置10では、第1抵抗層51と第2抵抗層52によって、センスダイオード80への負荷が軽減される。以下、詳細に説明する。
【0036】
上述したように、第1抵抗層51は、センスアノード電極50と上部主電極14を接続している。容量結合によってセンスアノード電極50の電位が上昇すると、第1抵抗層51を介してセンスアノード電極50から上部主電極14へ微小電流が流れる。これによって、センスアノード電極50の電位がそれ以上上昇することが抑制される。このため、センスダイオード80への過電圧の印加が抑制される。また、センスアノード電極50と上部主電極14の間の絶縁膜の絶縁性の劣化を抑制することができる。なお、第1抵抗層51の抵抗が低すぎると、センスアノード電極50の電位が上部主電極14の電位に固定され、外部回路90が正常に動作できなくなる。これに対し、本実施形態では、第1抵抗層51が比較的高い抵抗を有している。このため、センスアノード電極50の電位が、上部主電極14の電位からある程度独立して変動することができる。このため、外部回路90は、センスアノード電極50の電位に応じて、IGBT82を適切に制御することができる。なお、センスアノード電極50から上部主電極14へ流れる微小電流は、半導体基板12の内部ではなく、第1抵抗層51に流れる。このため、半導体基板12の発熱が抑制され、半導体基板12に対するストレスが軽減される。
【0037】
また、上述したように、抵抗が高い第2抵抗層52が、センスアノード電極50とアノード領域60の間に配置されている。このため、センスダイオード80の順方向電圧降下が大きい。このため、順電圧が印加されたときに、センスダイオード80に順方向電流が流れ難い。これによって、センスダイオード80に過電流が流れることが抑制される。また、センスダイオードに順方向電流が流れ難いので、センスダイオード80に印加される電圧が順方向電圧から逆方向電圧に切り換わるときに、センスダイオード80にリカバリ電流が流れ難い。
【0038】
以上に説明したように、本実施形態の半導体装置10では、センスダイオード80に過電圧が印加され難い。また、本実施形態の半導体装置10では、センスダイオード80に過電流及びリカバリ電流が流れ難い。このため、センスダイオード80に加わる負荷が軽減され、センスダイオード80の信頼性が向上する。
【0039】
なお、半導体装置10を構成する各部材の構成を、例として、以下に記載する。ドリフト領域27は、不純物としてリンを含み、40〜100Ωcmの抵抗率を有し、80〜165μmの厚みを有することができる。上部主電極14は、AlまたはAlSiにより構成された層の上面に積層されたチタン層、ニッケル層及び金(Au)層を有し、3〜30μmの厚みを有することができる。下部主電極16は、AlまたはAlSiにより構成された層の下面に積層されたチタン層、ニッケル層及び金層を有することができる。または、下部主電極16は、チタン層、ニッケル層及び金層によって構成されていてもよい。下部主電極16は、1〜30μmの厚みを有することができる。p型領域24は、不純物としてボロンを含み、1×10
16〜1×10
19cm
−3のピーク不純物濃度を有し、0.2〜5.0μmの厚みを有することができる。エミッタ領域22は、不純物としてヒ素またはリンを含み、1×10
18〜1×10
21cm
−3のピーク不純物濃度を有し、0.2〜1.5μmの厚みを有することができる。カソード領域44は、不純物としてリンを含み、1×10
18〜1×10
21cm
−3のピーク不純物濃度を有し、0.2〜3.0μmの厚みを有することができる。コレクタ領域30は、不純物としてボロンを含み、1×10
15〜1×10
19cm
−3のピーク不純物濃度を有し、0.2〜3.0μmの厚みを有することができる。トレンチ38は、4〜7μmの深さを有することができる。第1抵抗層51は、500〜2000nmの厚みを有し、1×10
8〜1×10
18Ωcmの抵抗率を有することができる。
【0040】
なお、第1抵抗層51の抵抗が高すぎると容量結合の影響が大きくなる一方で、第1抵抗層51の抵抗が低すぎるとセンスアノード電極50の電位が固定される。このため、第1抵抗層51の抵抗は、適切な値に設定されている必要がある。例えば、第1抵抗層51の厚みを調節して、第1抵抗層51の抵抗を調節することができる。また、第1抵抗層51の抵抗を調節するために、
図5〜8の構成を採用してもよい。
【0041】
図5の構成では、第1抵抗層51が複数に分離されている。
図5の構成では、
図1の構成よりも、第1抵抗層51の電流経路が狭くなる。したがって、第1抵抗層51の抵抗を高くすることができる。
【0042】
図6の構成では、第1抵抗層51が蛇行しており、その両端で第1抵抗層51と上部主電極14に接続されている。
図6の構成では、
図1の構成よりも、第1抵抗層51の電流経路が狭くなるとともに長くなる。したがって、第1抵抗層51の抵抗を高くすることができる。
【0043】
図7の構成では、センスアノード電極50の輪郭の2辺において、上部主電極14がセンスアノード電極50に隣接している。それら2辺において、第1抵抗層51がセンスアノード電極50と上部主電極14を接続している。
図7の構成では、
図1の構成よりも、第1抵抗層51の電流経路が広くなる。したがって、第1抵抗層51の抵抗を低くすることができる。
【0044】
図8の構成では、センスアノード電極50が上部主電極14に囲まれている。センスアノード電極50の周囲全体において、第1抵抗層51がセンスアノード電極50と上部主電極14を接続している。
図8の構成では、
図1の構成よりも、第1抵抗層51の電流経路が広くなる。したがって、第1抵抗層51の抵抗を低くすることができる。なお、
図8では、ワイヤー17の図示を省略している。
【0045】
また、上述した実施形態では、上部主電極14が第1抵抗層51の上面の一部(コンタクトホール36aの部分)を覆っており、センスアノード電極50が第1抵抗層51の上面の一部(コンタクトホール36bの部分)を覆っている。しかしながら、
図9に示すように、第1抵抗層51が上部主電極14の上面の一部と、センスアノード電極50の上面の一部を覆っていてもよい。
【0046】
また、上述した実施形態では、アノード領域60がボンディングパッド(すなわち、センスアノード電極50)の下部に配置されていた。しかしながら、
図10に示すように、アノード領域60が、ボンディングパッドの下部に配置されておらず、ボンディングパッドの外側に配置されていてもよい。この場合、第2抵抗層52が、ボンディングパッドの下部に位置する部分52aと、その部分52aからボンディングパッドの外側まで引き出された部分52bを有していてもよい。アノード領域60は、第2抵抗層52の部分52bを介してセンスアノード電極50に接続されていてもよい。この構成によれば、ワイヤーボンディング時の衝撃が、アノード領域60に加わり難い。これによって、アノード領域60に欠陥等が生じることを抑制することができる。このため、センスダイオード80のリーク電流等を抑制することができる。また、ボンディングパッドの下部に、ポリシリコンによって構成されている第2抵抗層52が配置されているので、ワイヤーボンディング時にポリシリコン層によって半導体基板12を保護することができる。これによって、ワイヤーボンディング時に半導体基板12へのダメージを軽減することができる。
【0047】
また、上述した実施形態では、第2抵抗層52が配線層54を介して半導体基板12(すなわち、アノード領域60)に接続されていた。しかしながら、
図11に示すように、第2抵抗層52が、半導体基板12に直接接していてもよい。この場合において、第2抵抗層52を、ポリシリコンにより構成することが特に好ましい。
図11に示す構成において、第2抵抗層52をポリシリコンにより構成すると、センスダイオード80に逆電圧が印加された時に、アノード領域60から第2抵抗層52にホールが流入する。ポリシリコン中のキャリアライフタイムは短い。このため、第2抵抗層52内をホールが流れるときに、多くのホールが再結合によって消滅する。これによって、リカバリ電流をさらに低減することができる。
【0048】
また、上述した実施形態では、第1抵抗層51と第2抵抗層52がポリシリコンにより構成されていた。ポリシリコン中の不純物濃度を調整することによって、ポリシリコンの抵抗率を容易に調整することができる。したがって、第1抵抗層51と第2抵抗層52の抵抗率を所望の抵抗率に調整し易い。また、第1抵抗層51が、SInSiN(semi-insulating silicon nitride)膜(半絶縁性窒化珪素膜)により構成されていてもよい。SInSiN膜は、半導体基板の表面保護や半導体基板内部の電界安定のための保護膜として半導体基板の上面に設けられる場合がある。第1抵抗層51がSInSiN膜である場合には、保護膜としてのSInSiN膜と同時に、第1抵抗層51を形成することができる。
図9に示すように上部主電極14とセンスアノード電極50の上部に第1抵抗層51が配置され、第1抵抗層51がSInSiN膜である場合には、以下のように半導体装置10を製造することができる。まず、上部主電極14とセンスアノード電極50を形成する。次に、半導体基板の表面にSInSiN膜を形成する。次に、SInSiN膜をパターニングする。このとき、保護膜及び第1抵抗層51として必要な箇所に、SInSiN膜を残存させる。この方法によれば、保護膜と第1抵抗層51を同時に形成することができる。
【0049】
また、第1抵抗層51と第2抵抗層52は、同じ材料によって構成されていてもよいし、異なる材料によって構成されていてもよい。但し、第1抵抗層51と第2抵抗層52が同じ材料であれば、製造工程において第1抵抗層51と第2抵抗層52を同時に形成することができる。この場合、第1抵抗層51と第2抵抗層52の抵抗率が略等しくなる。
【0050】
また、上述した実施形態では、素子領域18内にIGBTが設けられていたが、IGBTに代えてMOSFET等の他のスイッチング素子が素子領域18内に設けられていてもよい。
【0051】
また、上述した実施形態では、センスアノード電極50の上面全体がボンディングパッドであったが、センスアノード電極50の上面の一部がボンディングパッドであってもよい。
【0052】
上述した実施形態の構成要素と、請求項の構成要素との関係について説明する。実施形態のアノード領域60は、請求項の第1アノード領域の一例である。実施形態のカソード領域62は、請求項の第1カソード領域の一例である。実施形態のダイオード範囲40内のp型領域24は、請求項の第2アノード領域の一例である。実施形態のカソード領域44は、請求項の第2カソード領域の一例である。
【0053】
本明細書が開示する技術要素について、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0054】
本明細書が開示する一例の半導体装置では、スイッチング素子が、上部主電極に接続されているp型のボディ領域を有していてもよい。また、半導体基板が、ボディ領域を第1アノード領域から分離しているn型の分離領域を有していてもよい。第1抵抗層の抵抗率が、分離領域の抵抗率よりも低くてもよい。
【0055】
この構成によれば、センスアノード電極と上部主電極の間の抵抗を低くすることができる。これによって、センスダイオードへの過電圧の印加をより効果的に抑制することができる。
【0056】
本明細書が開示する一例の半導体装置では、第1抵抗層が、上部主電極の上面の一部と、センスアノード電極の上面の一部を覆っていてもよい。
【0057】
本明細書が開示する別の一例の半導体装置では、上部主電極が、第1抵抗層の上面の一部を覆っていてもよい。また、センスアノード電極が、第1抵抗層の上面の一部を覆っていてもよい。
【0058】
本明細書が開示する一例の半導体装置では、第1抵抗層が、ポリシリコンによって構成されていてもよい。
【0059】
この構成によれば、ポリシリコン中の不純物濃度を調整することで、第1抵抗層の抵抗率を調整することができる。
【0060】
本明細書が開示する一例の半導体装置は、半導体基板の上部に配置されており、センスアノード電極よりも高い抵抗率を有する第2抵抗層をさらに有していてもよい。第1アノード領域が、第2抵抗層を介して前記センスアノード電極に接続されていてもよい。
【0061】
この構成によれば、センスダイオードに電流が流れ難くなる。したがって、センスダイオードの順方向電流及びリカバリ電流を抑制することができる。
【0062】
第2抵抗層を有する一例の半導体装置では、センスアノード電極が、ワイヤーがボンディングされるボンディングパッドを有していてもよい。第2抵抗層が、ボンディングパッドの下部でセンスアノード電極に接続されている第1部分と、第1部分からボンディングパッドの外側まで伸びている第2部分を有していてもよい。第1アノード領域が、ボンディングパッドの下部に配置されておらず、第2部分を介してセンスアノード電極に接続されていてもよい。
【0063】
この構成によれば、ワイヤーボンディング時の衝撃が第1アノード領域に加わり難く、第1アノード領域に欠陥が生じることを抑制することができる。
【0064】
第2抵抗層がボンディングパッドの下部に配置されている構成においては、第2抵抗層が、ポリシリコンにより構成されていてもよい。
【0065】
衝撃に強いポリシリコンをボンディングパッドの下に配置することで、ワイヤーボンディング時の衝撃から半導体基板を保護することができる。
【0066】
第2抵抗層を有する一例の半導体装置は、半導体基板の上部に配置されており、第2抵抗層よりも低い抵抗率を有し、第1アノード領域に接する配線層をさらに有していてもよい。第1アノード領域が、配線層を介して第2抵抗層に接続されていてもよい。
【0067】
また、第2抵抗層を有する他の一例の半導体装置では、第1アノード領域が、第2抵抗層に接していてもよい。この場合に、第2抵抗層が、ポリシリコンにより構成されていてもよい。
【0068】
ポリシリコン中のキャリアライフタイムは短い。この構成では、センスダイオードに逆電圧が印加された時に半導体基板からセンスアノード電極に排出されるホールが、ポリシリコンによって構成されている第2抵抗層を通る。このため、第2抵抗層中でホールが再結合によって消滅し易い。このため、リカバリ電流をさらに抑制することができる。
【0069】
また、第2抵抗層を有する一例の構成では、半導体基板が、第1アノード領域と第1カソード領域の間に配置されており、第1カソード領域よりもn型不純物濃度が低いn型のドリフト領域を有していてもよい。第2抵抗層の抵抗率が、ドリフト領域の抵抗率よりも高くてもよい。
【0070】
この構成によれば、センスダイオードのリカバリ電流をさらに抑制することができる。
【0071】
また、本明細書が開示する一例の構成では、半導体基板が、還流ダイオードをさらに有していてもよい。還流ダイオードが、上部主電極に接続されているp型の第2アノード領域と、下部主電極に接続されているn型の第2カソード領域を有していてもよい。
【0072】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。