特許第6790910号(P6790910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6790910車両用マッドガードのブラケットおよびその固定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790910
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】車両用マッドガードのブラケットおよびその固定方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/18 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   B62D25/18 B
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-32479(P2017-32479)
(22)【出願日】2017年2月23日
(65)【公開番号】特開2018-135062(P2018-135062A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2020年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 悠滋
(72)【発明者】
【氏名】森 直樹
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平5−49574(JP,U)
【文献】 特開2013−107516(JP,A)
【文献】 特開2017−65592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 − 25/08
B62D 25/14 − 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドフレームの外側面にキャブリアメンバが固定された車両で用いられるブラケットであって、
前記キャブリアメンバの後面に第一締結具で固定される第一基端部と、前記第一基端部から前記車両の側方において離れた位置にある第一先端部と、を有する第一ステー部と、
前記キャブリアメンバを前記第一ステー部と共に挟み込む第二ステー部であって、前記キャブリアメンバまたは前記サイドフレームに第二締結具で固定される第二基端部と、前記第一先端部と重なり合った状態で前記第一先端部に第三締結具で取り付けられる第二先端部と、を有する第二ステー部と、
前記第一ステー部または前記第二ステー部に取り付けられ、車輪後方に配置されたマッドガードを支持するフレーム部と、
を備えたブラケット。
【請求項2】
前記第一ステー部には、前記車両の側方に向かうスリットが形成されている、
請求項1に記載のブラケット。
【請求項3】
前記第一ステー部および前記スリットは、前記車両の側方に向かって延在した後に屈曲する、
請求項2に記載のブラケット。
【請求項4】
前記サイドフレームには、前記キャブリアメンバが第四締結具で締結される場合、前記スリットは、前記第四締結具から前記車両の側方に延びる仮想線に沿うように形成される、請求項3に記載のブラケット。
【請求項5】
前記第一ステー部は、
前記スリットによって上下方向に分割された上側ステー部および下側ステー部と、
前記上側ステー部および前記下側ステー部の内向面に形成された上側リブおよび下側リブと、
を有する請求項3に記載のブラケット。
【請求項6】
請求項1に記載のブラケットの固定方法であって、
前記キャブリアメンバの後面に、前記第一ステー部の前記第一基端部を前記第一締結具で締結する工程と、
前記第一ステー部と前記第二ステー部とで前記キャブリアメンバを挟み込んだ状態で、前記キャブリアメンバまたは前記サイドフレームに、前記第二ステー部の前記第二基端部を前記第二締結具で締結する工程と、
前記第一先端部および前記第二先端部を重ね合わせて前記第三締結具で締結する工程と、
を備えた固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用マッドガードのブラケットおよびその固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、キャブオーバ型のトラックにはマッドガードが備わる。マッドガードは、樹脂製の板体によって形成され、前輪の後方に配置されて支持パイプやブラケット等を介してサイドフレームに固定される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−164014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、サイドフレームへの固定が容易なブラケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態は、サイドフレームの外側面にキャブリアメンバが固定された車両で用いられるブラケットであって、前記キャブリアメンバの後面に第一締結具で固定される第一基端部と、前記第一基端部から前記車両の側方において離れた位置にある第一先端部と、を有する第一ステー部と、前記キャブリアメンバを前記第一ステー部と共に挟み込む第二ステー部であって、前記キャブリアメンバまたは前記サイドフレームに第二締結具で固定される第二基端部と、前記第一先端部と重なり合った状態で前記第一先端部に第三締結具で取り付けられる第二先端部と、を有する第二ステー部と、前記第一ステー部または前記第二ステー部に取り付けられ、車輪後方に配置されたマッドガードを支持するフレーム部と、を備えたブラケットに向けられる。
【0006】
本開示の他の形態は、上記ブラケットの固定方法であって、前記キャブリアメンバの後面に、前記第一ステー部の前記第一基端部を前記第一締結具で締結する工程と、前記第一ステー部と前記第二ステー部とで前記キャブリアメンバを挟み込んだ状態で、前記キャブリアメンバまたは前記サイドフレームに、前記第二ステー部の前記第二基端部を前記第二締結具で締結する工程と、前記第一先端部および前記第二先端部を重ね合わせて前記第三締結具で締結する工程と、を備えた固定方法に向けられる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、サイドフレームへの固定が容易なブラケットを提供出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は一般的なキャブオーバ型車両を示す模式図である。
図2図2は、図1のブラケットを左斜め上後方から見た斜視図である。
図3図3は、図2のキャブリアメンバの下端部および第一ステー部の周辺を示す側面図である。
図4図4は、図2のキャブリアメンバの下端部および第一ステー部の周辺を左斜め後方から見た斜視図である。
図5図5は、図2のキャブリアメンバの下端部および第一ステー部の周辺を左斜め上前方から見た斜視図である。
図6図6は、図2の第一ステー部および第二ステー部の周辺を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、上記図面を参照して、本開示の遮蔽構造について詳説する。
【0010】
<1.定義>
各図において、x軸、y軸およびz軸は互いに直交する。x軸は、キャブオーバ型車両(以下、単に車両という)Vの前から後に向かう前後方向を示す。y軸方向は、車両Vの左から右に向かう左右方向を示す。また、z軸方向は、車両Vの下から上に向かう上下方向を示す。
【0011】
<2.キャブオーバ型車両の概要>
各図において、車両Vは、キャブ11、エンジン13およびキャブリアメンバ23に加え、車両Vの縦中心面(以下、単に縦中心面ということがある)の左側に、前輪15と、マッドガード17と、ブラケット19と、サイドフレーム21と、を備えている。
【0012】
右側の前輪、マッドガード、ブラケットおよびサイドフレームは、縦中心面を基準として、左側の前輪15、マッドガード17、ブラケット19およびサイドフレーム21と実質的に対称な形状を有するため、それぞれの図示および説明を省略する。
【0013】
キャブ11は、車両Vの運転席等がある箱状の部分である。
エンジン13や前輪15はキャブ11の下方に設けられる。
【0014】
マッドガード17は、前輪15の後方に取り付けられ、車両Vが走行中に前輪15から跳ね上げられる水や泥等が飛散することを防止する。
【0015】
ブラケット19は、例えば金属で作製され、マッドガード17を支持するとともに、後述のサイドフレーム21に固定する。なお、ブラケット19の詳細な構成については後述する。
【0016】
サイドフレーム21は、上記部品11〜19を固定する等のために使用される。各サイドフレーム21は、車両Vの左側方を臨む外側面SS1を有する。また、外側面SS1には、複数の第二ネジ締結具B2(図6等を参照)や複数の第四ネジ締結具B4(図3等を参照)のための複数のネジ穴(図示せず)が形成される。
【0017】
キャブリアメンバ23は、縦中心面を基準として互いに実質的に対称な形状を有し、キャブ11(後述)の後部を支持するために、例えば、左側のサイドフレーム21および右側のサイドフレームから上方に延在し、両者の間に架け渡される。
【0018】
また、キャブリアメンバ23において、左側の下端部EP1は、図2等から分かるように、概ね四角柱形状を有し、前後方向に相対向する前面および後面と、左右方向において相対向する内側面および外側面を有する。なお、これら四面のうち、本開示の要部は後面である。よって、以下の説明では、後面に参照符号RS1を付ける。
【0019】
下端部EP1はさらに、図2図5から分かるように、キャブリアメンバ23をサイドフレーム21に締結し固定するために、前方および後方に突出する板状形状を有する。これら板状部分には、上記第四ネジ締結具B4(図2等を参照)のための複数の貫通孔(図示せず)が形成される。
【0020】
また、下端部EP1の後面RS1には、後述の第一ステー部191をキャブリアメンバ23に複数の第一ネジ締結具B1(図2等を参照)で締結し固定するために複数のネジ穴が形成される。
【0021】
ここで、下端部EP1周辺の狭小スペースを有効利用するため、上記各貫通孔および各ネジ穴は、それらのz軸方向位置が異なるように形成される。
【0022】
なお、右側の下端部は、車両Vの縦中心面を基準として、下端部EP1と実質的に対称な形状を有するため、その図示および説明を省略する。
【0023】
<3.ブラケットの詳細な構成>
ブラケット19は、例えば金属で作製され、キャブリアメンバ23の下端部EP1を跨ぐように配置されて、キャブリアメンバ23を介してサイドフレーム21の外側面SS1に固定される。ブラケット19は、自身の前方に配置されるマッドガード17を支持する。
【0024】
上記機能・目的のために、図2図5に示すように、ブラケット19は、大略的に、第一ステー部191と、第二ステー部193と、フレーム部195と、を含んでいる。
【0025】
第一ステー部191は、大略的には、下端部EP1から車両Vの左側方に向かって延在して車両Vの前方に向かって屈曲する板状の部材であって、第一基端部BP1と、第一先端部TP1と、第一中間部IP1と、を有する。
【0026】
第一基端部BP1は、yz平面に概ね平行な主面を有し、下端部EP1の後面RS1と当接する。この第一基端部BP1には、第一ステー部191を下端部EP1に複数の第一ネジ締結具B1(図2等を参照)で締結し固定するために、上下方向に並ぶ複数の貫通孔(図示せず)が形成される。
【0027】
第一先端部TP1は、zx平面に概ね平行な主面を有し、第一基端部BP1から車両Vの左側方において離れた位置にある。この第一先端部TP1と、後述の第二先端部TP2とが重なり合った状態で第三ネジ締結具B3(図2等を参照)を用いて締結されて固定されるように、第一先端部TP1には、上下方向に並ぶ複数の貫通孔TH3(図3等を参照)が形成される。
【0028】
第一中間部IP1は、上記第一基端部BP1および第一先端部TP1を接続する。
【0029】
また、本開示では、好ましい構成として、第一ステー部191には、上下方向の中央部分にスリットSL1が形成される。スリットSL1は、本開示では、第一基端部BP1の右端から、第一先端部TP1の前端直前に至るまでの間に形成される。換言すると、スリットSL1は、右端から車両Vの左側方に向かって延在して屈曲し、車両Vの前方に向かって延在する。このスリットSL1により、第一ステー部191は、上下方向において二分割されることになる。
【0030】
また、本開示では、図2等に示すように、ブラケット19が車両Vに取り付け完了すると、少なくとも一つの第四ネジ締結具B4のz軸方向位置は、第一ステー部191のz軸方向位置に含まれる。ここで、対象となる第四ネジ締結具B4から車両Vの左側方にy軸と平行に延在する仮想線を定義すると、スリットSL1は、この仮想線に沿うように形成されることが好ましい。
【0031】
また、図5に示すように、第一中間部IP1の前面から第一先端部TP1の右側面にかけて二個のリブLB1が設けられることが好ましい。具体的には、上記の通り、第一ステー部191は上下二分割されるが、一方のリブLB1は上部分に、他方のリブLB1は下部分に形成される。
【0032】
第二ステー部193は、大略的には、図6等に示すように、外側面SS1上の前端部分から車両Vの後方に向かって延在してから車両Vの左側方に向かって延在して屈曲し、その後、車両Vの後方に向かって延在する板状部分を含み、第二基端部BP3と、第二先端部TP3と、第二中間部IP3と、を有する。
【0033】
第二基端部BP3は、zx平面に概ね平行な主面を有し、キャブリアメンバ23の直ぐ前方においてサイドフレーム21の外側面SS1と当接する。この第二基端部BP3には、第二ステー部193を外側面SS1に複数の第二ネジ締結具B2で締結し固定するために、上下方向に並ぶ複数の貫通孔(図示せず)が形成される。
【0034】
第二先端部TP3は、zx平面に概ね平行な主面を有し、第二基端部BP3から車両Vの左側方において離れた位置にある。この第二先端部TP3と、前述の第一先端部TP1(図3等を参照)とが重なり合った状態で第三ネジ締結具B3(図2等を参照)で締結されて固定されるように、第二先端部TP3には、上下方向に並ぶ複数の貫通孔(図示せず)が形成される。
【0035】
第二中間部IP3は、上記第二基端部BP3および第二先端部TP3を接続する。また、本開示では、第二中間部IP3と、前述の第一基端部BP1とがキャブリアメンバ23を挟み込む。
【0036】
フレーム部195は、図2等に示すように、本開示ではU字形状に折り曲げ加工された金属管であって、第一ステー部191および第二ステー部193の少なくとも一方に固定されて、自身の前方に配置されるマッドガード17を支持する。
【0037】
<4.ブラケットによるマッドガードの固定方法>
次に、各図を参照して、ブラケット19を用いてマッドガード17をサイドフレーム21に固定する工程について説明する。
【0038】
まず、キャブリアメンバ23および第一ステー部191が準備される。第一基端部BP1に形成された貫通孔のそれぞれに第一ネジ締結具B1が通され、下端部EP1の後面RS1に形成されたネジ穴に位置決めされた後、工具を用いて第一ステー部191がキャブリアメンバ23に締結され固定される。
【0039】
次に、キャブリアメンバ23の前後への突出部分にある貫通孔のそれぞれに第四ネジ締結具B4が通され、サイドフレーム21の外側面SS1に形成されたネジ穴に位置決めされた後、工具を用いてキャブリアメンバ23がサイドフレーム21に締結され固定される。
【0040】
次に、第二ステー部193が準備される。第二ステー部193は、キャブリアメンバ23の前方から、キャブリアメンバ23を第一ステー部191と共に挟み込む。その状態で、第二基端部BP3にある貫通孔のそれぞれに第二ネジ締結具B2が通され、外側面SS1に形成されたネジ穴に位置決めされた後、工具を用いて第二ステー部193がサイドフレーム21に締結され固定される。
【0041】
次に、第一ステー部191の第一先端部TP1上に第二ステー部193の第二先端部TP3が重ね合わされる。その状態で、両者に形成された貫通孔のそれぞれに、第三ネジ締結具B3が通された後、工具を用いて、両先端部TP1,TP3が締結され固定される。
【0042】
次に、フレーム部195にマッドガード17が取り付けられる。マッドガード17の取り付けについては、本開示の要部ではなく公知技術を適用可能であるため、その説明を省略する。
【0043】
<5.ブラケットの作用・効果>
前述の通り、サイドフレーム21には様々な部品が取り付けられる。サイドフレーム21の外側面SS1において、キャブリアメンバ23の前方には、マッドガード17が取り付けられるまでは、相対的に広い作業スペースが存在する。それに対し、外側面SS1においてキャブリアメンバ23の後方には、エンジンマウント等が外側面SS1より更に側方に突出していることもあり、狭小な作業スペースしかないことがある。
【0044】
しかし、本開示のブラケット19によれば、キャブリアメンバ23がサイドフレーム21に取り付けられる前に、第一ステー部191がキャブリアメンバ23の後面RS1に固定される。よって、工具がエンジンマウント等と干渉することが無い。
【0045】
また、第一ステー部191をキャブリアメンバ23に先に取り付けるため、たとえエンジンマウント等が存在していても、第一ステー部191およびキャブリアメンバ23を一括的にサイドフレーム21に固定できる。
【0046】
以上のことから、サイドフレーム21への固定が容易なブラケット19を提供することが可能となる。
【0047】
また、第一ステー部191には、第四ネジ締結具B4から車両Vの左側方にy軸と平行に延在する仮想線に沿ってスリットSL1が形成される。このスリットSL1は、第一ステー部191と共に、車両Vの側方に向かって延在してから屈曲する。これらの特徴により、第四ネジ締結具B4の工具が第一ステー部191に干渉することが防止されるので、ブラケット19のサイドフレーム21への固定がさらに容易になる。
【0048】
また、スリットSL1を設けることで第一ステー部191の剛性が低減する。よって、第三ネジ締結具B3で両先端部TP1,TP3を締結中、第一ステー部191が撓むため、第二先端部TP3が第一先端部TP1の面上に正確に着座する。
【0049】
また、リブLB1を設けることで、第一ステー部191の剛性が過度に低減することを抑制することが出来る。よって、車両Vの走行中にマッドガード17が振動することを抑制することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示のブラケットおよびその固定方法は、サイドフレームへの固定が容易であり、車両用途に好適である。
【符号の説明】
【0051】
V キャブオーバ型車両
19 ブラケット
191 第一ステー部
193 第二ステー部
195 フレーム部
SL1 スリット
LB1 リブ
21 サイドフレーム
23 キャブリアメンバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6