(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、特開2005−342763号公報に開示された鋼板搬送用絶縁ロールの絶縁性が、長期間の使用によって低下する原因を調査した。その結果、リングの回転による摺動によって芯金とリングとの間に形成されている絶縁膜が摩耗し、絶縁性が低下していることを明らかにした。
【0011】
本発明は、上記の知見に基づいて完成された。以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0012】
[鋼板搬送用絶縁ロールの構成]
図1は、本発明の一実施形態による鋼板搬送用絶縁ロール10の構成を示す斜視図である。鋼板搬送用絶縁ロール10は、概略円柱形状のロール胴部11と、ロール胴部11と同軸に形成された軸部121及び122と、ロール胴部11の外周に配置された概略円筒形状のリング21〜24及びスリーブ41〜44とを備えている。
【0013】
リング21〜24とスリーブ41〜44とは、リング21とリング22とが隣り合っていることを除いて、ロール胴部11の軸方向(x方向)に沿って交互に配置されている。具体的には、軸部122側から軸部121側に向かって、スリーブ44、リング24、スリーブ42、リング22、リング21、スリーブ41、リング23、及びスリーブ43が、この順番で配置されている。
【0014】
スリーブ41〜44の外径は、リング21〜24の外径よりも小さい。そのため、鋼板搬送用絶縁ロール10によって搬送される鋼板は通常、リング21〜24とのみ接し、スリーブ41〜44とは接しない。
【0015】
鋼板搬送用絶縁ロール10は、リング21及び22の回転を防止するためのキー31、リング23の回転を防止するためのキー32、並びにリング24の回転を防止するためのキー33をさらに備えている。
【0016】
図2〜
図5を参照して、各部材の構成をより詳しく説明する。
【0017】
図2は、鋼板搬送用絶縁ロール10の構成から、ロール胴部11及び軸部121、122を抜き出して示す斜視図である。ロール胴部11と軸部121及び122とは、例えば溶接によって固定されている。
【0018】
ロール胴部11は、金属製で、概略円柱形状を有している。ロール胴部11には、外周面111に開口した溝11a〜11cが形成されている。
【0019】
ロール胴部11の外周面111には、絶縁膜が形成されている。本実施形態では、溝11a〜11cには、絶縁膜は形成されていない。
【0020】
ロール胴部11の外周面111の絶縁膜は、例えば、アルミナやジルコニア等のセラミックの膜を溶射することによって形成することができる。溶射に用いる材料は、例えば、Al
2O
3−TiO
3、Al
2O3−ZrO
2等である。後述するように、鋼板搬送用絶縁ロール10は、外部から冷却水が噴射される場合がある。そのため、絶縁膜としてセラミックの膜を用いる場合、封孔処理を施しておくこと好ましい。封孔処理は、セラミックの膜に例えばSiO
2系の化合物を含浸させることによって行うことができる。封孔処理された絶縁膜は水の浸入を遮断できる。
【0021】
図3は、鋼板搬送用絶縁ロール10の構成から、リング21〜24及びスリーブ41〜44を抜き出して示す斜視図である。
図3では、各部材の形状を見やすくするため、部材間の距離を
図1と変えて図示している。リング21とスリーブ41、スリーブ41とリング23、リング23とスリーブ43、リング22とスリーブ42、スリーブ42とリング24、リング24とスリーブ44は、実際には互いの端面が接するように配置される。
【0022】
リング21〜24及びスリーブ41〜44は、いずれも金属製で、概略円筒形状を有している。リング21〜24及びスリーブ41〜44の内径は、いずれもロール胴部11(
図2)の外径と概略等しい。
【0023】
リング21〜24は、それぞれ溝21a〜24aを有している。溝21a〜24aの各々は、当該リングの内周面及び一方の端面に開口している。溝21a〜24aの各々は、当該リングの軸方向(x方向)と交差する端面を有する。換言すれば、溝21a〜24aの各々は、当該リングを軸方向に貫通していない。より具体的には、溝21a及び溝24aは、軸部122(
図2)側に開口しているが、軸部121(
図2)側には開口していない。また、溝22a及び溝23aは、軸部121側に開口しているが、軸部122側には開口していない。
【0024】
リング21〜24の各々は、両側の端面に絶縁膜が形成されている。具体的には、リング21の端面211及び212、リング22の端面221及び222、リング23の端面231及び232、並びにリング24の端面241及び242に、それぞれ絶縁膜が形成されている。本実施形態では、溝21a〜24aには、絶縁膜は形成されていない。
【0025】
リング21〜24の絶縁膜は例えば、ロール胴部11の絶縁膜と同様の方法で形成することができる。リング21〜24の絶縁膜も、封孔処理が施されていることが好ましい。
【0026】
図4は、キー31の斜視図である。キー31は、ロール胴部11の溝11a(
図2)、リング21の溝21a(
図3)、及びリング22の溝22a(
図3)に嵌合される。
【0027】
キー31は金属製であるが、すべての面に絶縁膜が形成されている。キー31の絶縁膜は例えば、ロール胴部11の絶縁膜と同様の方法で形成することができる。キー31の絶縁膜も、封孔処理が施されていることが好ましい。
【0028】
図5は、キー32の斜視図である。キー32は、ロール胴部11の溝11b(
図2)、リング23の溝23a(
図3)に嵌合される。
【0029】
キー32は、第1部材321と第2部材322とを含んでいる。第1部材321は、側面視(xz側面視)L字型の形状を有している。第1部材321は、より具体的には、第1部分3211と、第1部分3211よりも厚さ(z方向の寸法)が小さい第2部分3212とを含んでいる。第1部材321の第2部分3212及び第2部材322は、後述するように、スリーブ43(
図3)の内周面に接するように配置される。
【0030】
キー32は金属製であるが、すべての面に絶縁膜が形成されている。より具体的には、第1部材321及び第2部材322のすべての面に絶縁膜が形成されている。キー32の絶縁膜は例えば、ロール胴部11の絶縁膜と同様の方法で形成することができる。キー32の絶縁膜も、封孔処理が施されていることが好ましい。
【0031】
図示は省略するが、キー33は、キー32と同じ構成を有している。
【0032】
図6は、
図1のVI−VI線に沿った断面図である。
図6には、鋼板搬送用絶縁ロール10の構成と併せて、鋼板搬送用絶縁ロール10の周りに配置される熱間圧延ラインの設備の一部を二点鎖線で示している。
【0033】
軸部121及び122は、軸受け51を介して、支持台52に支持される。軸部122は、図示しない駆動装置(例えばモータ)と連結される。鋼板搬送用絶縁ロール10は、この駆動装置によって、ロール胴部11の軸方向(x方向)のまわりに回転する。
【0034】
ロール胴部11及び軸部121は、軸方向にそれぞれ貫通孔11d及び121aが形成されている。ロール胴部11の貫通孔11dの内部には、管13が配置されている。ロール胴部11は、この二重管構造によって、内部に冷却水を循環させることができるように構成されている。また、鋼板搬送用絶縁ロール10は、外部に配置されたノズル53によって、外側からも水冷されるように構成されている。
【0035】
[鋼板搬送用絶縁ロール10の製造方法]
次に、
図7A〜
図7Dを参照して、鋼板搬送用絶縁ロール10の製造方法(組み立て手順)を説明する。
【0036】
まず、
図7Aに示すように、キー31をロール胴部11の溝11aに嵌合させる。その後、リング21及び22を、溝21a及び溝22aがキー31に接するまで移動させる。これによって、キー31が、溝11a、溝21a、溝22aに嵌合する。この構成によれば、リング21及びリング22が、ロール胴部11の軸方向(x方向)のまわりに回転するのを防止できる。また、この構成によれば、リング21及びリング22によって、ロール胴部11の径方向(x方向と垂直な方向)外側へのキー31の移動が規制される。これによって、キー31が溝11aから落下しないようにすることができる。
【0037】
溝21aは、ロール胴部11の軸方向(x方向)において、キー31側に開口しているが、その反対側には開口していない。そのため、キー31によって、リング21のリング22側への移動が規制される。同様に、キー31によって、リング22のリング21側への移動が規制される。すなわち、キー31は、リング21の端面とリング22の端面とが接しないようにする、スペーサとしても役割も果たしている。
【0038】
次に、
図7Bに示すように、リング21の端面に接するようにスリーブ41を移動させ、さらにスリーブ41の端面と接するようにリング23を移動させる。図示は省略するが、スリーブ42及びリング24(
図2)についても同様に、リング22の端面に接するようにスリーブ42を移動させ、さらにスリーブ42の端面と接するようにリング24を移動させる。
【0039】
このとき、
図7Cに示すように、ロール胴部11の溝11bは、平面視(xy平面視)において一部だけが開口した状態となる。この開口にキー32の第1部材321を挿入し、キー31側にスライドさせて溝23aに嵌合させる。その後、
図7Dに示すように、溝11bの残りの部分にキー32の第2部材322を嵌合させる。図視は省略するが、同様の手順でキー33をロール胴部11の溝11c(
図2)及びリング24の溝24a(
図3)に嵌合させる。
【0040】
その後、リング23の端面に接するようにスリーブ43を移動させる。スリーブ44(
図2)も同様に、リング24(
図2)の端面に接するように移動させる。
【0041】
このとき、キー32は、スリーブ43の内周面と接する。この構成によれば、リング23及びスリーブ43によって、ロール胴部11の径方向(x方向と垂直な方向)外側へのキー32の移動が規制される。そのため、キー32が溝11bから落下しないようにすることができる。同様に、キー33は、スリーブ44の内周面と接する。これによって、キー33が溝11cから落下しないようにすることができる。
【0042】
スリーブ43及び44は、例えば焼きばめによってロール胴部11に固定することができる。具体的には、スリーブ43及び44をロール胴部11よりも熱膨張率の低い材料で形成し、ロール胴部11を加熱して熱膨張させることで、スリーブ43及び44とロール胴部11とを強固に締結させることができる。鋼板搬送用絶縁ロール10の中央付近に配置されるリング21及び22は、使用時に高温になるため、焼きばめによる締結が維持されない場合がある。一方、鋼板搬送用絶縁ロール10の端部側に配置されるスリーブ43及び44は、使用時の温度が比較的低いため、焼きばめによる締結が維持されやすい。
【0043】
スリーブ43及び44は、他の方法、例えば、L字型の金具を溶接することでロール胴部11に固定してもよい。
【0044】
[鋼板搬送用絶縁ロール10の効果]
次に、
図8〜
図10を参照して、鋼板搬送用絶縁ロール10の効果を説明する。
【0045】
図8は、鋼板搬送用絶縁ロール10が配置される熱間圧延ラインの一例を模式的に示す斜視図である。この熱間圧延ラインでは、搬送中の鋼板Sをエッジヒータ55によって誘導加熱している。鋼板Sと鋼板搬送用絶縁ロール10とが導通していると、エッジヒータ55の漏れ磁束によって、鋼板S、鋼板搬送用絶縁ロール10、支持台52、及び大地を通じて、
図8中に矢印で示すようなループ電流が発生する。この状態で、例えば鋼板Sの端部が鋼板搬送用絶縁ロール10を通過することによって導通が途切れると、その部分でスパークが発生する場合がある。
【0046】
図9は、
図8のA−A線に沿った断面図であって、リング21及び22の近傍を拡大して示す図である。
図10は、
図8のA−A線に沿った断面図であって、リング23の近傍を拡大して示す図である。
【0047】
本実施形態によれば、ロール胴部11の外周面111に絶縁膜が形成されている。これによって、リング21〜24の内周面と、ロール胴部11の外周面111との間が絶縁されている。また、キー31〜33は、すべての面に絶縁膜を有しているため、キー31〜33を介して、リング21〜24とロール胴部11とが導通することもない。この構成によって、
図8に示すようなループ電流の発生を抑制することができる。
【0048】
漏れ磁束によるループ電流は、
図10中に矢印で示すように、鋼板Sの搬送方向(y方向)のまわりにも発生する。このループ電流も、スパークの原因となりうる。ループの幅(x方向の長さ)が大きいほど、導通が途切れてスパークが発生する確率が高まるため、ループの幅をできるだけ小さくすることが好ましい。
【0049】
本実施形態によれば、リング21とリング23との間に、リング21及び23よりも外径の小さいスリーブ41が配置されている。また、リング21には、スリーブ41と接する端面211に絶縁膜が形成されており、リング23には、スリーブ41と接する端面232に絶縁膜が形成されている。そのため、スリーブ41を介してリング21とリング23とが導通することもない。リング22とリング24とについても同様に、間にスリーブ42が配置され、リング22の端面222及びリング24の端面242に絶縁膜が形成されている。この構成によって、鋼板Sの搬送方向(y方向)のまわりに発生するループ電流を分割し、ループの幅(x方向の長さ)を小さくすることができる。
【0050】
上述のとおり、リング21とリング22との間の距離は、キー31によって規制されている。この構成によれば、スリーブ41〜44のような部材を用いずに、リング21とリング22とを離間させて、ループの幅を小さくすることができる。
【0051】
もっとも、このような構成に代えて、リング21とリング22との間に別のスリーブを配置してもよい。また、リング21の溝21aがリング21をロール胴部11の軸方向(x方向)に貫通するようにしてもよいし、リング22の溝22aがリング22をロール胴部11の軸方向(x方向)に貫通するようにしてもよい。
【0052】
本実施形態によれば、キー31〜33によって、リング21〜24がロール胴部11の軸方向(x方向)のまわりに回転するのを防止できる。この構成によれば、ロール胴部11の外周面111に形成された絶縁膜が、リング21〜24との摺動によって摩耗するのを抑制することができる。そのため、鋼板搬送用絶縁ロール10の構成によれば、長期間使用しても安定した絶縁性を確保することができる。
【0053】
[鋼板搬送用絶縁ロール10の変形例]
図11は、鋼板搬送用絶縁ロール10の変形例の一つである鋼板搬送用絶縁ロール10Aの構成を示す断面図である。鋼板搬送用絶縁ロール10ではロール胴部11の外周面111に絶縁膜が形成されているのに対し(
図9を参照)、鋼板搬送用絶縁ロール10Aではリング21の内周面213、リング22の内周面223、リング23の内周面(不図視)、及びリング24の内周面(不図視)に絶縁膜が形成されている。この構成によっても、ロール胴部11とリング21〜24とを絶縁することができる。また、ロール胴部11の外周面とリング21〜24の内周面の両方に絶縁膜が形成されていてもよい。
【0054】
すなわち、ロール胴部11の外周面111、及びリング21〜24の内周面の少なくとも一方に絶縁膜が形成されていればよい。なお、ロール胴部11の外周面111に絶縁膜を形成する方が、リング21〜24の内周面に絶縁膜を形成する場合と比較して、絶縁膜を形成した後の研磨がしやすく、寸法精度をより高くすることができる。そのため、ロール胴部11の外周面111に絶縁膜を形成することがより好ましい。
【0055】
また、ロール胴部11の溝111a〜111c(
図2)、及びリング21〜24の溝21a〜24a(
図3)には、絶縁膜を形成しないことが好ましい。溝111a〜111cや溝21a〜24aは、絶縁膜を形成した後の研磨がしにくく、寸法精度を高くすることが困難なためである。溝111a〜111cや溝21a〜24aに絶縁膜を形成せずにロール胴部11の外周面111やリング21〜24の内周面に絶縁膜を形成するには、例えば、溝111a〜111cや溝21a〜24aをマスクして、ロール胴部11の外周面111やリング21〜24の内周面に絶縁膜を溶射すればよい。
【0056】
図12は、鋼板搬送用絶縁ロール10の変形例の一つである鋼板搬送用絶縁ロール10Bの構成を示す断面図である。鋼板搬送用絶縁ロール10ではキー31のすべての面に絶縁膜が形成されているに対し(
図9を参照)、鋼板搬送用絶縁ロール10Bでは、キー31は、リング21の溝と接する面311、及びリング22の溝と接する面312だけに絶縁膜が形成されている。この構成によっても、キー31を介して、リング21やリング22がロール胴部11と導通することを防止することができる。
【0057】
図13は、鋼板搬送用絶縁ロール10の変形例の一つである鋼板搬送用絶縁ロール10Cの構成を示す断面図である。鋼板搬送用絶縁ロール10Cでは、キー31は、ロール胴部11の溝と接する面313だけに絶縁膜が形成されている。この構成によっても、キー31を介して、リング21やリング22がロール胴部11と導通することを防止することができる。
【0058】
このように、キー31は、リング21やリング22の溝と接する面、及びロール胴部11の溝と接する面の少なくとも一方に絶縁領域を有していれば、リング21やリング22がロール胴部11と導通することを防止することができる。キー32及びキー33についても同様で、リング23やリング24の溝と接する面、及びロール胴部11の溝と接する面の少なくとも一方に、絶縁領域を有していればよい。
【0059】
なお、鋼板搬送用絶縁ロール10Cの構成(
図13)の場合、キー31を介してリング21とリング22とが導通する。そのため、鋼板の搬送方向(y方向)のまわりに発生するループ電流を分割し、ループの幅(x方向の長さ)を小さくするという観点では、鋼板搬送用絶縁ロール10Bの構成(
図12)の方がより好ましい。すなわち、キー31は、リング21やリング22の溝と接する面に絶縁膜を有している方がより好ましい。また、絶縁膜を形成する箇所を間違えたり、キー31を配置する向きを間違えたりすることを防止する観点から、キー31のすべての面、すなわち、すべての外表面に絶縁膜を有していることがより好ましい。キー32及びキー33についても同様である。
【0060】
図14は、鋼板搬送用絶縁ロール10の変形例の一つである鋼板搬送用絶縁ロール10Dの構成を示す断面図である。鋼板搬送用絶縁ロール10Dでは、キー31が絶縁体である。この構成によっても、キー31を介して、リング21やリング22がロール胴部11と導通することを防止することができる。
【0061】
図15は、鋼板搬送用絶縁ロール10の変形例の一つである鋼板搬送用絶縁ロール10Eの構成を示す断面図である。鋼板搬送用絶縁ロール10Eでは、リング21の端面211には絶縁膜が形成されているが、端面212には絶縁膜が形成されていない。同様に、リング22の端面222には絶縁膜が形成されているが、端面221には絶縁膜が形成されていない。この構成によっても、リング21とリング22とはキー31によって離間しているので、リング21とリング22とが導通することはない。そのため、鋼板の搬送方向(y方向)のまわりに発生するループ電流を分割することができる。
【0062】
すなわち、リング21及びリング22は、スリーブ41又はスリーブ42と接する側の端面に絶縁膜を有していればよい。ただし、絶縁膜を形成する箇所を間違えること等を防止する観点からは、リング21及びリング22の各々は、両側の端面に絶縁膜を有していることがより好ましい。
【0063】
図16は、鋼板搬送用絶縁ロール10の変形例の一つである鋼板搬送用絶縁ロール10Fの構成を示す断面図である。鋼板搬送用絶縁ロール10Fでは、リング21の端面211及びリング22の端面222に代えて、スリーブ41の端面411及びスリーブ42の端面421に絶縁膜が形成されている。この構成によっても、リング21とスリーブ41、及びリング22とスリーブ42とを絶縁することができる。そのため、鋼板の搬送方向(y方向)のまわりに発生するループ電流を分割することができる。また、リング21の端面211及びリング22の端面222、並びにスリーブ41の端面411及びスリーブ42の端面421の両方に絶縁膜が形成されていてもよい。
【0064】
すなわち、リング21とスリーブ41とに関しては、リング21の端面211及びスリーブ41の端面411の少なくとも一方に絶縁膜が形成されていればよい。同様に、リング22とスリーブ42とに関しては、リング22の端面222及びスリーブ42の端面421の少なくとも一方に絶縁膜が形成されていればよい。
【0065】
スリーブは、リングよりも径が小さいため、スリーブ表面とリング端面の境界部に水滴が付着した際に、通電される可能性がある。この観点から、リングの端面に絶縁膜が形成されていることがより好ましい。
【0066】
上記した「絶縁膜」、「絶縁領域」、「絶縁体」は、例えばセラミックであるが、電気抵抗率が金属であるロール胴部11と比較して十分に大きければ特に限定されない。「絶縁膜」、「絶縁領域」、「絶縁体」の体積抵抗率は、例えば、ロール胴部11を構成する金属の体積抵抗率の10
14倍以上であり、好ましくは10
16倍以上である。
【0067】
以上、本発明の実施の形態を説明した。上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。