(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記囲い部材は、前記囲い部材の外側から前記クリールスタンドに設けられた前記複数のボビンへアクセスするための開口部であるボビンアクセス部を有することを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載のフィラメントワインディング装置。
前記囲い部材の側面に設けられた開口部のうち、前記出入口及び前記ボビンアクセス部以外の開口部が覆い部材で覆われていることを特徴とする請求項5に記載のフィラメントワインディング装置。
前記第2の仕切りは、テンションが付与された状態で、前記レールに沿って張られたケーブル状部材であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のフィラメントワインディング装置。
前記制御装置は、前記制限モードを実行する前の前記ライナーへの繊維束の巻付態様を維持しつつ、前記制限モードを実行することを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のフィラメントワインディング装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなフィラメントワインディング装置では、ライナーの交換、フープ巻ユニットの繊維束ボビンの交換、ライナーへの繊維束の糸端の固定等の作業のため、オペレータが支持ユニット、ヘリカル巻ユニット、フープ巻ユニット等にアクセスできるように、各ユニットが配置されている。圧力容器等の量産時には、生産効率を上げるために支持ユニットやフープ巻ユニットは非常に高速で動作することがあるため、不容易にオペレータが稼動領域に近づかないための安全対策が必要である。その一方で、ライナーに対する繊維束の巻付角度及び巻付範囲(カバー率)等は、圧力容器等の耐圧性能を決める重要なパラメータであるところ、これらのパラメータの最適化や研究のため、巻付動作中にオペレータがライナーに近づいて巻付状況を目視で確認したいという要求もある。
【0005】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、オペレータの安全を確保しながら、オペレータによる巻付状況の目視確認が可能なフィラメントワインディング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、レールが固設された基台上で稼動することで、ライナーに繊維束を巻き付ける巻付装置と、前記巻付装置を内側に包含し、前記巻付装置へアクセスするための開口部である出入口を有する囲い部材と、前記巻付装置の動作を制御する制御装置と、前記出入口に設けられた第1の仕切りと、前記巻付装置の稼動領域と前記第1の仕切りとの間に設けられた第2の仕切りと、前記第1の仕切りが外されたことを検知する第1の検知部と、前記第2の仕切りが外されたことを検知する第2の検知部と、を備え、前記制御装置は、前記第1の検知部で前記第1の仕切りが外されたことが検知されると、前記巻付装置の動作速度を制限する制限モードを実行し、前記第2の検知部で前記第2の仕切りが外されたことが検知されると、前記巻付装置の動作を停止する、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の第1態様によれば、オペレータが第1の仕切りを外して囲い部材の内側に入った場合には、巻付装置の動作速度が制限されるので、オペレータが巻付装置に安全に近づくことができる。また、オペレータが巻付装置の稼動領域に近づきすぎると、第2の仕切りが外れることによって巻付装置の動作が停止されるので、オペレータの安全を確保することができる。したがって、オペレータの安全を確保しながら、オペレータによる巻付状況の目視確認が可能となる。
【0008】
本発明の第2態様は、基台に固設されるレールと、前記レール上を往復移動可能であり、ライナーを自転可能に支持する支持ユニットと、繊維束が巻かれた複数のボビンを有するクリールスタンドと、前記基台に固設され、前記複数のボビンから引き出される複数の繊維束を前記ライナーにヘリカル巻きするヘリカル巻ユニットと、前記レール上を往復移動可能であり、繊維束ボビンを前記ライナーの軸周りに公転可能に支持し、前記繊維束ボビンを公転させることで前記繊維束ボビンから引き出された繊維束を前記ライナーにフープ巻きするフープ巻ユニットと、少なくとも前記支持ユニット及び前記フープ巻ユニットを内側に包含し、前記支持ユニット及び前記フープ巻ユニットへアクセスするための開口部である出入口を有する囲い部材と、前記支持ユニット及び前記フープ巻ユニットの動作を制御する制御装置と、前記出入口に設けられた第1の仕切りと、前記支持ユニット及び前記フープ巻ユニットの少なくとも何れか1つが前記レール上で稼働する稼動領域と前記第1の仕切りとの間に設けられた第2の仕切りと、前記第1の仕切りが外されたことを検知する第1の検知部と、前記第2の仕切りが外されたことを検知する第2の検知部と、を備え、前記制御装置は、前記第1の検知部で前記第1の仕切りが外されたことが検知されると、前記支持ユニット及び前記フープ巻ユニットの前記少なくとも何れか1つの動作速度を制限する制限モードを実行し、前記第2の検知部で前記第2の仕切りが外されたことが検知されると、前記支持ユニット及び前記フープ巻ユニットの前記少なくとも何れか1つの動作を停止する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の第2態様によれば、オペレータが第1の仕切りを外して囲い部材の内側に入った場合には、支持ユニット及び/又はフープ巻ユニットの動作速度が制限されるので、オペレータがライナーに安全に近づくことができる。また、オペレータが支持ユニット及び/又はフープ巻ユニットの稼動領域に近づきすぎると、第2の仕切りが外れることによって支持ユニット及び/又はフープ巻ユニットの動作が停止されるので、オペレータの安全を確保することができる。したがって、オペレータの安全を確保しながら、オペレータによる巻付状況の目視確認が可能となる。
【0010】
本発明の第2態様において、前記稼動領域は、前記レール上における前記フープ巻ユニットの移動領域を含む領域であるとよい。
【0011】
この場合、オペレータが稼動領域に近づきすぎると、第2の仕切りが外れてフープ巻ユニットの動作が停止されるので、オペレータの安全を確保することができる。
【0012】
本発明の第2態様において、前記稼動領域は、前記レール上における前記支持ユニットの移動領域を含む領域であるとよい。
【0013】
この場合、オペレータが稼動領域に近づきすぎると、第2の仕切りが外れて支持ユニットの動作が停止されるので、オペレータの安全を確保することができる。
【0014】
本発明の第2態様において、前記囲い部材は、前記囲い部材の外側から前記クリールスタンドに設けられた前記複数のボビンへアクセスするための開口部であるボビンアクセス部を有するとよい。
【0015】
ボビンアクセス部を設けることで、オペレータが囲い部材の外側から直接的にクリールスタンドにアクセスすることができるため、ボビンの交換等の作業効率を向上させることができる。
【0016】
本発明の第2態様において、前記囲い部材の側面に設けられた開口部のうち、前記出入口及び前記ボビンアクセス部以外の開口部が覆い部材で覆われているとよい。
【0017】
こうすれば、出入口及びボビンアクセス部以外の開口部から囲い部材の内側にオペレータがアクセスできないので、安全性を向上させることができる。
【0018】
本発明の第2態様において、前記覆い部材は、透明のプラスチック部材であるとよい。
【0019】
覆い部材が透明であれば、囲い部材の外側からでもライナーへの巻付状況等を確認しやすくなる。
【0020】
本発明において、前記第1の仕切りは、前記出入口を覆う開閉可能なカーテン状部材であるとよい。
【0021】
こうすれば、オペレータがカーテン状部材を開くという行為をしない限り、囲い部材の内側に入ることができないので、オペレータが不用意に囲い部材の内側に入ることをより確実に回避することができる。
【0022】
本発明において、前記第1の仕切りは、前記出入口を閉鎖する着脱可能なチェーン状部材であるとよい。
【0023】
こうすれば、出入口が完全に第1の仕切りで覆われることがなく、囲い部材の外側からでもライナーへの巻付状況等を確認しやすくなる。
【0024】
本発明において、前記第2の仕切りは、テンションが付与された状態で、前記レールに沿って張られたケーブル状部材であるとよい。
【0025】
こうすれば、第2の仕切りを簡易に構成できるとともに、オペレータがライナーへの巻付状況等を目視確認する際に第2の仕切りが妨げとなることがない。また、第2の仕切りのコストを抑えることもできる。
【0026】
本発明において、前記制御装置は、前記制限モードを実行する前の前記ライナーへの繊維束の巻付態様を維持しつつ、前記制限モードを実行するとよい。
【0027】
制限モードで動作速度が変化することにより、ライナーへの繊維束の巻付態様(例えば、ライナーに対する繊維束の巻付角度及び巻付範囲等)が変化してしまうと、オペレータが本来確認したかった制限モード実行前の巻付態様を見れなくなるおそれがある。そこで、制限モード実行前の巻付態様を維持するように制限モードを実行することで、オペレータの意図する巻付態様をライナーに近づいて目視確認することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[本実施形態]
(フィラメントワインディング装置)
本発明の一実施形態に係るフィラメントワインディング装置について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、フィラメントワインディング装置1は、巻付装置2と、クリールスタンド3と、コントロールパネル4と、を備える。以下では、説明の便宜上、
図1に示す方向語を使用する。フィラメントワインディング装置1は、全体として概ね左右対称に構成されている。
【0030】
巻付装置2は、ライナーLに繊維束(図示省略)を巻き付けるための装置である。繊維束は、例えば炭素繊維等の繊維材料に、熱硬化性の合成樹脂材が含浸されたものである。巻付装置2で圧力容器(圧力タンク)を製造する場合、ライナーLとして、
図1に示すような、円筒部と、円筒部の両側のドーム部と、を有する形状のものが用いられる。また、巻付装置2でパイプを製造する場合、ライナーLとして、円筒形状のものが用いられる。ライナーLは、高強度アルミニウム、金属、樹脂等で形成される。ライナーLに繊維束を巻き付けた後、焼成等の熱硬化工程を経ることにより、高強度の圧力容器やパイプ等を製造することができる。なお、巻付装置2の詳細については、後述する。
【0031】
クリールスタンド3は、支持フレーム11と、多数のボビン12とを有する。支持フレーム11の左右方向における中央部には、巻付装置2の一部が配設される配設空間13が形成されている。なお、図が煩雑になることを避けるため、
図1では、巻付装置2のうち配設空間13に配設された部分については、図示を省略している。支持フレーム11には、多数のボビン12が回転可能に取り付けられている。このボビン12には、上述の繊維束が巻かれている。クリールスタンド3は、多数のボビン12から多数の繊維束を巻付装置2に供給する役割を有する。
【0032】
コントロールパネル4は、制御装置21と、表示部22と、操作部23とを有する。制御装置21は、巻付装置2の各部の動作を制御する。表示部22は、巻付装置2によるライナーLへの繊維束の巻付条件等を表示する。操作部23は、オペレータが巻付装置2による巻付条件等を制御装置21に入力するための部位である。なお、表示部22と操作部23とを別々に設けることは必須ではなく、表示部22と操作部23とが一体となったタッチパネル等を採用してもよい。
【0033】
(巻付装置)
次に、
図2を参照しつつ、巻付装置2の詳細について説明する。巻付装置2は、基台30と、支持ユニット40(第1支持ユニット41及び第2支持ユニット42)と、フープ巻ユニット50と、ヘリカル巻ユニット60と、を備える。
【0034】
基台30は、支持ユニット40、フープ巻ユニット50、及び、ヘリカル巻ユニット60を支持する。基台30の上面には、前後方向に延びる複数のレール31が配設されている。支持ユニット40及びフープ巻ユニット50は、レール31上に配置され、レール31上を前後方向に往復移動可能である。一方、ヘリカル巻ユニット60は、クリールスタンド3の配設空間13の前端部において、基台30に固設されている(
図1参照)。第1支持ユニット41、フープ巻ユニット50、ヘリカル巻ユニット60、及び、第2支持ユニット42は、この順番で前側から後側に配置されている。
【0035】
支持ユニット40は、フープ巻ユニット50よりも前側に配置される第1支持ユニット41と、ヘリカル巻ユニット60よりも後側に配置される第2支持ユニット42と、を有する。支持ユニット40は、ライナーLの軸方向(前後方向)に延びる支持軸43を介して、ライナーLを軸周りに自転可能に支持する。支持ユニット40は、
図3に示すように、支持ユニット40をレール31に沿って前後方向に移動させるための移動用モータ44と、ライナーLを軸周りに回転させるための回転用モータ45と、を有する。移動用モータ44及び回転用モータ45は、制御装置21によって駆動制御される。
【0036】
フープ巻ユニット50は、ライナーLに対して繊維束をフープ巻きする。フープ巻きとは、ライナーLに対して軸方向に略直角な方向(軸方向に直交する面から多少傾いた方向でもよい)に繊維束を巻き付ける巻き方のことである。フープ巻ユニット50は、本体部51と、回転部材52と、複数の繊維束ボビン53と、を有する。本体部51は、レール31上に配置されており、回転部材52をライナーLの軸周りに回転可能に支持する。円盤状の回転部材52の中央部には、ライナーLが通過可能な円形の通過穴54が形成されている。複数の繊維束ボビン53は、回転部材52の周方向に等間隔で配置されており、各繊維束ボビン53には、繊維束が巻かれている。
【0037】
フープ巻ユニット50は、
図3に示すように、フープ巻ユニット50をレール31に沿って前後方向に移動させるための移動用モータ55と、回転部材52を回転させるための回転用モータ56と、を有する。移動用モータ55及び回転用モータ56は、制御装置21によって駆動制御される。ライナーLが相対的に通過穴54を通過するように、フープ巻ユニット50をレール31に沿って往復移動させながら、回転部材52を回転させることで、複数の繊維束ボビン53がライナーLの周囲を軸周りに公転し、複数の繊維束ボビン53から引き出された複数の繊維束が同時にライナーLの表面にフープ巻きされる。
【0038】
ヘリカル巻ユニット60は、ライナーLに対して繊維束をヘリカル巻きする。ヘリカル巻きとは、ライナーLに対して軸方向に略平行な方向(軸方向に対して多少傾いた方向でもよい)に繊維束を巻き付ける巻き方のことである。ヘリカル巻ユニット60は、本体部61と、多数のガイド62と、多数のノズル63と、を有する。本体部61は、基台30に固設されている。本体部61の中央部には、ライナーLが通過可能な円形の通過穴64が形成されている。多数のガイド62及び多数のノズル63は、通過穴64の周方向に沿って配置されている。クリールスタンド3の多数のボビン12から引き出された多数の繊維束は、多数のガイド62を経由して、多数のノズル63に通される。ノズル63は、径方向に沿って延びており、繊維束は径方向外側から径方向内側に通される。また、ノズル63は、同軸で入れ子状に配置された径の異なる複数の管状部材を有し、径方向に伸縮可能に構成されている。
【0039】
ヘリカル巻ユニット60は、
図3に示すように、多数のノズル63を伸縮させるためのノズル用モータ65を有する。ノズル用モータ65は、制御装置21によって駆動制御される。ライナーLが通過穴64を通過するように、支持ユニット40をレール31に沿って往復移動させながら、多数のノズル63をライナーLの外形に合わせて伸縮させることで、多数のノズル63から引き出された多数の繊維束が同時にライナーLの表面にヘリカル巻きされる。
【0040】
巻付装置2でライナーLへの繊維束の巻き付けを開始する際には、まず、オペレータが繊維束の糸端をライナーLにテープ等で固定する。あるいは、繊維束の糸端の固定等を自動化するための装置を設けてもよい。繊維束の糸端をライナーLに固定したら、制御装置21が各モータ44、45、55、56、65(
図3参照)を駆動制御することで、支持ユニット40に支持されたライナーLに対して、フープ巻ユニット50によってフープ巻きを施すことができるとともに、ヘリカル巻ユニット60によってヘリカル巻きを施すことができる。
【0041】
(安全装置)
このように構成されたフィラメントワインディング装置1では、圧力容器等の量産時には、生産効率を上げるために巻付装置2(特に支持ユニット40及びフープ巻ユニット50)が非常に高速で動作することがある。このため、不容易にオペレータが巻付装置2の稼動領域に近づかないための安全対策が要求される。その一方で、ライナーLに対する繊維束の巻付角度及び巻付範囲等は、圧力容器等の耐圧性能を決める重要なパラメータであるところ、これらのパラメータの最適化や研究のため、巻付装置2の稼動中に、オペレータがライナーLに近づいて、繊維束の巻付状況を目視で確認したいという要求もある。これらの要求を両立するため、フィラメントワインディング装置1には、安全装置70が設けられている。
【0042】
図4及び
図5を参照しつつ、安全装置70について説明する。なお、
図4では、図が煩雑になることを避けるため、巻付装置2を二点鎖線で、クリールスタンド3を一点鎖線で、それぞれ簡易的に図示している。安全装置70は、安全柵71、カーテン76、ケーブル81、第1スイッチ77、第3スイッチ82等を有する。
【0043】
安全柵71は、複数の長尺状の構造部材が縦横に組み合わされた構成となっており、巻付装置2を内側に包含する。安全柵71は、クリールスタンド3の前側に配置された第1安全柵72と、クリールスタンド3の後側に配置された第2安全柵73とを有する。換言すると、前後方向において第1安全柵72と第2安全柵73との間の開口部74にクリールスタンド3が配置されている。この開口部74は、オペレータがクリールスタンド3のボビン12にアクセスするためのボビンアクセス部74として機能する。
【0044】
第1安全柵72には、左右方向に開口する2つの開口部75が形成されている。この開口部75は、オペレータが第1安全柵72の外側から巻付装置2にアクセスするための出入口75として機能する。出入口75には、出入口75を覆う開閉可能な折り畳み式のカーテン76が設けられている。カーテン76は、透明のプラスチック部材で作製されており、カーテン76で出入口75が覆われているときでも、カーテン76の外側から巻付装置2を確認することが可能となっている。カーテン76には、カーテン76が開けられたことを検知する第1スイッチ77が設けられている。第1スイッチ77からの信号は、制御装置21に送られる。制御装置21は、カーテン76が開けられたことを示す信号を第1スイッチ77から受け取ると、巻付装置2の動作速度を制限する制限モードを実行する。制限モードについては、後で説明する。
【0045】
第2安全柵73には、前後方向に開口する開口部78が形成されている。この開口部78は、オペレータが第2安全柵73の外側から配設空間13(
図1参照)に入るための第2出入口78として機能する。第2出入口78には、ドア79が設けられている。ドア79には、ドア79が開けられたことを検知する第2スイッチ80が設けられている。第2スイッチ80からの信号は、制御装置21に送られる。制御装置21は、ドア79が開けられたことを示す信号を第2スイッチ80から受け取ると、巻付装置2の動作を停止する。
【0046】
なお、安全柵71の側面に形成された開口部のうち、ボビンアクセス部74、出入口75、及び、第2出入口78以外の開口部(
図4においてハッチングを付している部分)は、透明のプラスチック部材からなる覆い部材83で覆われている。
【0047】
安全装置70は、さらに、左右方向においてカーテン76と巻付装置2の稼動領域R(
図5参照)との間に設けられた2本のケーブル81を有する。稼動領域Rは、支持ユニット40のレール31上での移動領域と、フープ巻ユニット50のレール31上での移動領域と、を含む領域である。ケーブル81は、テンションが付与された状態で、左右方向において稼動領域Rのすぐ両外側に、巻付装置2のレール31に沿って略水平に張られている。ケーブル81の前端部は、第1安全柵72の前端部に固定され、ケーブル81の後端部は、第2安全柵73に取り付けられた第3スイッチ82に接続されている。オペレータが稼動領域Rに近づきすぎてケーブル81に接触すると、ケーブル81が第3スイッチ82から外れ、そのことを示す信号が制御装置21に送られる。制御装置21は、ケーブル81が外れたことを示す信号を第3スイッチ82から受け取ると、巻付装置2の動作を停止する。
【0048】
(制限モード)
次に、カーテン76が開けられたことを示す信号を第1スイッチ77から受け取ったときに、制御装置21が実行する制限モードについて説明する。制限モードにおいて制限対象となる動作速度としては、支持ユニット40がレール31上を往復移動する速度、支持ユニット40がライナーLを自転させる速度、フープ巻ユニット50がレール31上を往復移動する速度、フープ巻ユニット50が回転部材52を回転させる速度、及び、ヘリカル巻ユニット60がノズル63を伸縮させる速度がある。制御装置21は、制限モードにおいて、各モータ44、45、55、56、65(
図3参照)の駆動を制限することによって、上述の各動作速度を減速する。
【0049】
上述の動作速度を、一律に安全速度に減速すると、制限モード実行中のライナーLへの繊維束の巻付態様(例えば、フープ巻き及びヘリカル巻きにおける巻付角度、並びに、繊維束の巻付範囲等)が、制限モード実行前の巻付態様と比べて変わってしまうことがある。オペレータは制限モード実行前の巻付態様の目視確認を望むのが通常であるが、そのためにカーテン76を開けて、ライナーLに近づいたときに、巻付態様が制限モード実行前と異なっていると、オペレータの意図に沿わないことになる。そこで、本実施形態では、制御装置21は、制限モードにおいて、制限モード実行前のライナーLへの繊維束の巻付態様が維持されるように、各モータ44、45、55、56、65を減速制御する。つまり、制限モード実行時には、制限モード実行前と比べて巻付速度は遅くなるものの、その他の条件は変わらないように、具体的には各モータ44、45、55、56、65の動作速度のそれぞれに1以下の共通の係数を乗算するような制御がされる。
【0050】
なお、本実施形態の安全装置70は、オペレータがカーテン76を開けて安全柵71の内側に入った後、安全柵71の外側に出るまでは、カーテン76を開けっ放しにしておくように運用される。これによって、オペレータが安全柵71の内側にいる間は、制限モードが継続され、オペレータの安全を確保することができる。ただし、オペレータが誤って安全柵71の内側からカーテン76を閉めてしまった場合に備えて、オペレータが安全柵71の外側に出た状態でないと、第1スイッチ77をリセット(制限モードを解除)できないような構成としてもよい。あるいは、カーテン76とケーブル81との間に存在するオペレータを検知可能なセンサを設け、このセンサがオペレータを検知している間は、制限モードが継続されるようにしてもよい。
【0051】
(効果)
本実施形態では、制御装置21は、第1スイッチ77(第1の検知部)でカーテン76(第1の仕切り)が開かれた(外された)ことが検知されると、巻付装置2の動作速度を制限する制限モードを実行し、第3スイッチ82(第2の検知部)でケーブル81(第2の仕切り)が外されたことが検知されると、巻付装置2の動作を停止する。したがって、オペレータがカーテン76を開いて、安全柵71(囲い部材)の内側に入った場合には、巻付装置2の動作速度が制限されるので、オペレータがライナーLに安全に近づくことができる。また、オペレータが巻付装置2の稼動領域Rに近づきすぎると、ケーブル81が外れることによって、巻付装置2の動作が停止されるので、オペレータの安全を確保することができる。したがって、オペレータの安全を確保しながら、オペレータによる巻付状況の目視確認が可能となる。また、このような構成であれば、例えばエリアセンサのような高価な装置を用いる必要がないので、安全装置70のコストダウンを図ることができる。さらに、オペレータが視覚的に仕切りを認識できるので、オペレータが不用意に安全柵71の内側に入ったり、稼動領域Rに近づきすぎることを抑えることができる。
【0052】
本実施形態では、稼動領域Rは、レール31上におけるフープ巻ユニット50の移動領域を含む領域とされている。このため、オペレータが稼動領域Rに近づきすぎると、ケーブル81が外れてフープ巻ユニット50の動作が停止されるので、オペレータの安全を確保することができる。
【0053】
本実施形態では、稼動領域Rは、レール31上における支持ユニット40の移動領域を含む領域とされている。このため、オペレータが稼動領域Rに近づきすぎると、ケーブル81が外れて支持ユニット40の動作が停止されるので、オペレータの安全を確保することができる。
【0054】
本実施形態では、安全柵71は、安全柵71の外側からクリールスタンド3に設けられた複数のボビン12へアクセスするための開口部であるボビンアクセス部74を有している。このため、オペレータが安全柵71の外側から直接的にクリールスタンド3にアクセスすることができ、ボビン12の交換等の作業効率を向上させることができる。
【0055】
本実施形態では、安全柵71の側面に設けられた開口部のうち、出入口75、78及びボビンアクセス部74以外の開口部が覆い部材83で覆われている。このため、出入口75、78及びボビンアクセス部74以外の開口部から安全柵71の内側にオペレータがアクセスできないので、安全性を向上させることができる。
【0056】
本実施形態では、覆い部材83は、透明のプラスチック部材とされているので、安全柵71の外側からでもライナーLへの巻付状況等を確認しやすくなる。
【0057】
本実施形態では、本発明における第1の仕切りが、出入口75を覆う開閉可能なカーテン76(カーテン状部材)とされている。このため、オペレータがカーテン76を開くという行為をしない限り、安全柵71の内側に入ることができないので、オペレータが不用意に安全柵71の内側に入ることをより確実に回避することができる。
【0058】
本実施形態では、本発明における第2の仕切りが、テンションが付与された状態で、レール31に沿って張られたケーブル81(ケーブル状部材)とされている。このため、第2の仕切りを簡易に構成できるとともに、オペレータがライナーLへの巻付状況等を目視確認する際に第2の仕切りが妨げとなることがない。また、第2の仕切りのコストを抑えることもできる。
【0059】
本実施形態では、制御装置21は、制限モードを実行する前のライナーLへの繊維束の巻付態様を維持しつつ、制限モードを実行する。制限モードで動作速度が変化することにより、ライナーLへの繊維束の巻付態様(例えば、ライナーに対する繊維束の巻付角度及び巻付範囲等)が変化してしまうと、オペレータが本来確認したかった制限モード実行前の巻付態様を見れなくなるおそれがある。そこで、制限モード実行前の巻付態様を維持するように制限モードを実行することで、オペレータの意図する巻付態様をライナーLに近づいて目視確認することが可能となる。
【0060】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上記実施形態に限られるものではなく、以下に例示するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【0061】
上記実施形態では、カーテン76が透明のプラスチック部材からなる折り畳み式のものとした。しかしながら、カーテン76は透明のプラスチック部材以外の部材からなるものとしてもよいし、カーテン76は例えばスライド式のものでもよい。
【0062】
上記実施形態では、本発明における第1の仕切りが、カーテン76であるものとした。しかしながら、第1の仕切りの具体的態様はカーテン状のものに限定されない。例えば、
図6に示すように、出入口75を閉鎖する着脱可能なチェーン89(チェーン状部材)としてもよい。チェーン89は、クリールスタンド3に取り付けられた第1スイッチ77に接続されている。オペレータが安全柵71の内側に入る際にチェーン89が外されると、そのことを示す信号が第1スイッチ77から制御装置21に送られ、制御装置21は制限モードを実行する。第1の仕切りとしてチェーン89を採用することで、出入口75が完全に覆われることがなく、安全柵71の外側からでもライナーLへの巻付状況等を確認しやすくなる。
【0063】
上記実施形態では、本発明における囲い部材が、安全柵71であるものとした。しかしながら、囲い部材の具体的態様は柵状のものに限定されない。例えば、囲い部材が、塀状のものなどでもよい。
【0064】
上記実施形態では、安全柵71にボビンアクセス部74を設けるものとした。しかしながら、ボビンアクセス部74を設けず、安全柵71がクリールスタンド3を完全に内側に包含するように構成してもよい。
【0065】
上記実施形態では、安全柵71の側面に設けられた開口部のうち、出入口75、78及びボビンアクセス部74以外の開口部が、透明のプラスチック部材からなる覆い部材83で覆われているものとした。しかしながら、覆い部材83を透明のプラスチック部材以外の部材からなるものとしてもよい。また、覆い部材83を省略することも可能である。
【0066】
上記実施形態では、制限モードの実行時に、制限モード実行前のライナーLへの繊維束の巻付態様を維持するものとした。しかしながら、このように制限モードを実行することは必須ではない。
【0067】
上記実施形態のフィラメントワインディング装置1は、フープ巻ユニット50及びヘリカル巻ユニット60によって、複数の繊維束を同時にライナーLに巻き付けるマルチフィラメントワインディング装置であるものとした。しかしながら、本発明は、巻付装置によって1本又は少数本の繊維束をライナーLに巻き付けるフィラメントワインディング装置に適用することも可能である。