特許第6790931号(P6790931)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790931
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】電池状態推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/36 20200101AFI20201116BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20201116BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20201116BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20201116BHJP
【FI】
   G01R31/36
   H01M10/48 P
   H02J7/00 P
   H02J7/00 X
   B60L3/00 S
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-48001(P2017-48001)
(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公開番号】特開2018-151269(P2018-151269A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草野 賢和
(72)【発明者】
【氏名】大平 耕司
(72)【発明者】
【氏名】粟野 直実
【審査官】 田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−242281(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/106588(WO,A1)
【文献】 特開平11−283677(JP,A)
【文献】 特開2007−240524(JP,A)
【文献】 特開2012−163434(JP,A)
【文献】 特開2000−294299(JP,A)
【文献】 特開2011−091940(JP,A)
【文献】 特開2014−052296(JP,A)
【文献】 特開2013−128370(JP,A)
【文献】 特開2003−111204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/36−31/396、
H01M 10/42−10/48、
H02J 7/00−7/12、
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池(2)の電池状態を周期的に推定する電池状態推定装置(1)であって、
上記二次電池に流れた電流値を取得する電流値取得部(30)と、
少なくとも一つの電流閾値が予め記憶された閾値記憶部(50)と、
上記電流値取得部が取得した電流値と、上記閾値記憶部に記憶された上記電流閾値とを比較する電流値比較部(60)と、
該電流値比較部の比較結果に基づいて、上記二次電池の状態を推定する周期である推定周期を設定する周期設定部(61)と、
該周期設定部により設定された上記推定周期に基づいて、上記二次電池の電池状態を周期的に推定する電池状態推定部(62)と、
を有し、
上記閾値記憶部には、上記電流閾値の一つとして、外部から上記二次電池に電力が供給されて充電されているときの上記二次電池における電流値が予め記憶されている、電池状態推定装置。
【請求項2】
上記推定周期ごとに上記二次電池の電池状態の変化量を取得する変化量取得部(31)と、該変化量取得部が取得した上記変化量と予め設定された基準値とを比較する変化量比較部(63)と、
上記変化量比較部の比較結果に基づいて、上記推定周期を変更するか否か判定する変更判定部(64)と、を備え、
上記周期設定部は、上記変更判定部の判定結果に基づいて、上記推定周期を設定する、請求項に記載の電池状態推定装置。
【請求項3】
二次電池(2)の電池状態を周期的に推定する電池状態推定装置(1)であって、
上記二次電池に流れた電流値を取得する電流値取得部(30)と、
少なくとも一つの電流閾値が予め記憶された閾値記憶部(50)と、
上記電流値取得部が取得した電流値と、上記閾値記憶部に記憶された上記電流閾値とを比較する電流値比較部(60)と、
該電流値比較部の比較結果に基づいて、上記二次電池の状態を推定する周期である推定周期を設定する周期設定部(61)と、
該周期設定部により設定された上記推定周期に基づいて、上記二次電池の電池状態を周期的に推定する電池状態推定部(62)と、
上記推定周期ごとに上記二次電池の電池状態の変化量を取得する変化量取得部(31)と、該変化量取得部が取得した上記変化量と予め設定された基準値とを比較する変化量比較部(63)と、
上記変化量比較部の比較結果に基づいて、上記推定周期を変更するか否か判定する変更判定部(64)と、を備え、
上記周期設定部は、上記変更判定部の判定結果に基づいて、上記推定周期を設定する、電池状態推定装置。
【請求項4】
上記変更判定部は、上記変化量比較部の比較結果が上記変化量取得部により取得された上記変化量が上記基準値よりも大きいことを示す場合に、上記推定周期を短くすると判定する、請求項2又は3記載の電池状態推定装置。
【請求項5】
上記変化量取得部が取得する上記変化量は、上記二次電池の出力値の変化量である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の電池状態推定装置。
【請求項6】
上記電流値比較部は上記電流値取得部が取得した電流値の絶対値と、上記閾値記憶部に記憶された上記電流閾値とを比較し、
上記周期設定部は、上記電流値比較部の比較結果が上記電流値の絶対値が上記電流閾値よりも小さいことを示す場合は、上記推定周期を長く設定する、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電池状態推定装置。
【請求項7】
上記二次電池は車両に設けられており、
上記閾値記憶部には、上記電流閾値の一つとして、上記車両がアイドリングストップしているときの上記二次電池における電流値が予め記憶されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電池状態推定装置。
【請求項8】
上記閾値記憶部には、上記電流閾値の一つとして、上記二次電池が充放電していないときの上記二次電池における電流値が予め記憶されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の電池状態推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池状態推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池の電池状態を推定する装置として、二次電池の電気化学モデルを使用した演算を行うものがある。かかる演算は演算負荷が比較的高いため、装置の演算部における消費電力が高くなる。そこで、特許文献1に開示の構成では、電気化学モデルに線形近似式を組み込むことにより演算負荷を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−243373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、線形近似式を使用しているため、推定精度が低下するおそれがあり、二次電池の使われ方によっては推定精度の低下が顕著となる場合がある。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、二次電池の電池状態を低消費電力でかつ高精度に推定できる電池状態推定装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、二次電池(2)の電池状態を周期的に推定する電池状態推定装置(1)であって、
上記二次電池に流れた電流値を取得する電流値取得部(30)と、
少なくとも一つの電流閾値が予め記憶された閾値記憶部(50)と、
上記電流値取得部が取得した電流値と、上記閾値記憶部に記憶された上記電流閾値とを比較する電流値比較部(60)と、
該電流値比較部の比較結果に基づいて、上記二次電池の状態を推定する周期である推定周期を設定する周期設定部(61)と、
該周期設定部により設定された上記推定周期に基づいて、上記二次電池の電池状態を周期的に推定する電池状態推定部(62)と、
を有し、
上記閾値記憶部には、上記電流閾値の一つとして、外部から上記二次電池に電力が供給されて充電されているときの上記二次電池における電流値が予め記憶されている、電池状態推定装置にある。
また、本発明の他の態様は、二次電池(2)の電池状態を周期的に推定する電池状態推定装置(1)であって、
上記二次電池に流れた電流値を取得する電流値取得部(30)と、
少なくとも一つの電流閾値が予め記憶された閾値記憶部(50)と、
上記電流値取得部が取得した電流値と、上記閾値記憶部に記憶された上記電流閾値とを比較する電流値比較部(60)と、
該電流値比較部の比較結果に基づいて、上記二次電池の状態を推定する周期である推定周期を設定する周期設定部(61)と、
該周期設定部により設定された上記推定周期に基づいて、上記二次電池の電池状態を周期的に推定する電池状態推定部(62)と、
上記推定周期ごとに上記二次電池の電池状態の変化量を取得する変化量取得部(31)と、該変化量取得部が取得した上記変化量と予め設定された基準値とを比較する変化量比較部(63)と、
上記変化量比較部の比較結果に基づいて、上記推定周期を変更するか否か判定する変更判定部(64)と、を備え、
上記周期設定部は、上記変更判定部の判定結果に基づいて、上記推定周期を設定する、電池状態推定装置にある。
【発明の効果】
【0007】
二次電池は流れる電流値に応じて二次電池における電池反応の進み易さが異なる。そして、上記電池状態推定装置においては、二次電池に流れた電流値と、閾値記憶部に記憶された電流閾値とを比較した結果に基づいて、二次電池の状態の推定周期が設定される。これにより、二次電池における電池反応の進み易さを考慮して、二次電池の推定周期を設定して電池状態推定部における計算負荷を調整することができる。その結果、二次電池における電池反応の進み易さに考慮せずに電池状態推定部が常に演算負荷が高い演算を行う場合に比べて、電池状態推定部における計算精度を維持しつつ、消費電力を低減することが可能となる。
【0008】
以上のごとく、本発明によれば、二次電池の電池状態を低消費電力でかつ高精度に推定できる電池状態推定装置を提供することができる。
【0009】
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1における、電池状態推定装置の構成を示すブロック図。
図2】実施形態1における、電池状態推定装置の制御態様を示すフロー図。
図3】実施形態1における、二次電池に流れる電流値を示す概念図。
図4】変形形態1における、電池状態推定装置の構成を示すブロック図。
図5】実施形態2における、電池状態推定装置の構成を示すブロック図。
図6】実施形態2における、電池状態推定装置の制御態様を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
上記電池状態推定装置の実施形態について、図1図3を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態の電池状態推定装置1は、二次電池2の電池状態を周期的に推定するものである。電池状態推定装置1は、電流値取得部30、閾値記憶部50、電流値比較部60、周期設定部61、電池状態推定部62を有する。
電流値取得部30は、二次電池2に流れた電流値を取得する。
閾値記憶部50には、少なくとも一つの電流閾値が予め記憶されている。
電流値比較部60は、電流値取得部30が取得した電流値と、閾値記憶部50に記憶された電流閾値とを比較する。
周期設定部61は、電流値比較部60の比較結果に基づいて、二次電池2の状態を推定する周期である推定周期を設定する。
電池状態推定部62は、周期設定部61により設定された推定周期に基づいて二次電池2の電池状態を周期的に推定する。
【0012】
以下、本実施形態の電池状態推定装置1について、詳述する。
図1に示す電池状態推定装置1は、電気自動車等の車両におけるバッテリ制御ユニットに搭載された二次電池2の電池状態を推定するものである。そして、電池状態推定装置1は、取得部3、格納部4、記憶部5、演算部6を有する。
【0013】
図1に示すように、取得部3は、電流値取得部30を有する。電流値取得部30は電流計からなり、二次電池2に接続されて、二次電池2に流れる電流値を検出する。電流値を取得するタイミングは特に限定されず、常時又は所定間隔で行うようにしてもよいし、後述する推定周期に合わせて取得するようにしてもよい。
【0014】
図1に示すように、格納部4は、電流値格納部40を有する。電流値格納部40は書き換え可能な不揮発性メモリからなり、電流値取得部30によって取得された電流値が格納される。
【0015】
図1に示すように、記憶部5は、閾値記憶部50を有する。閾値記憶部50は書き換え不能な不揮発性メモリからなり、少なくとも一つの電流閾値が予め記憶されている。本実施形態では、電流閾値として、二次電池2が搭載された車両がアイドリングストップしているときの二次電池2における電流値が予め記憶されている。
【0016】
図1に示すように、演算部6は、電流値比較部60、周期設定部61、電池状態推定部62を有する。演算部6は、電流値比較部60、周期設定部61、電池状態推定部62としての機能を果たすプログラムを実行可能に構成されている。当該プログラムは演算部6に設けられた図示しないメモリに格納されている。
【0017】
図1に示す電流値比較部60は、電流値格納部40に格納された電流値を抽出するとともに、閾値記憶部50に記憶された電流閾値を抽出し、両者を比較する。電流値格納部40に複数の電流値が格納されている場合は、電流値比較部60は、例えば、最新の電流値を抽出することができる。また、閾値記憶部50に複数の電流閾値が記憶されている場合は、電流値比較部60は、複数の電流閾値をすべて抽出することができる。また、電流値比較部60が抽出する電流閾値をユーザが選択可能に構成し、当該ユーザが選択した一つ又は複数の電流閾値を抽出するようにしてもよい。電流値比較部60が複数の電流閾値を抽出した場合、電流値比較部60は、抽出した複数の電流閾値のすべてと、電流値格納部40から抽出した電流値とを比較する。電流値比較部60が比較を行うタイミングは、後述する推定周期ごとに行うようにすることができる。本実施形態では、電流値比較部60は、電流値格納部40から抽出された電流値の絶対値と電流閾値とを比較し、比較結果として電流値の絶対値と電流閾値との大小関係を示す。
【0018】
図1に示す周期設定部61は、電流値比較部60の比較結果に基づいて、二次電池2の状態を推定する推定周期を設定する。推定周期として予め初期値を設定しておくことができる。そして、例えば、周期設定部61は、電流値比較部60の比較結果が電流値比較部60が抽出した電流値の絶対値が電流値比較部60が抽出した電流閾値よりも小さいことを示すものであった場合は、推定周期を初期値より長く設定することができる。また、周期設定部61は、電流値比較部60の比較結果が電流値比較部60が抽出した電流値が電流値比較部60が抽出した電流閾値よりも小さくないことを示すものであった場合には、推定周期を変更せずに初期値を維持するように設定することができる。
【0019】
そして、電池状態推定部62は、周期設定部61で設定された推定周期に基づいて周期的に二次電池2の電池状態を推定する。電池状態推定部62が推定する二次電池2の電池状態は特に限定されず、二次電池2における充電状態(SOC)、入出力電力、充放電可能電力量、入出力抵抗などを推定することができる。
【0020】
次に、電池状態推定装置1における制御態様について、図2に示すフロー図を用いて説明する。まず、図2に示すように、ステップS1において、電流値取得部30により、二次電池2の電流値を取得する。そして、取得した電流値を電流値格納部40に格納する。本実施形態では、電流値取得部30は、図3に示すように、常時、二次電池2に流れる電流値を取得している。
【0021】
その後、図2に示すように、ステップS2において、電流値比較部60により、電流値格納部40に格納された最新の電流値を抽出するとともに、閾値記憶部50に記憶された電流閾値を抽出し、両者を比較する。本実施形態では、電流値格納部40に格納された電流値の絶対値と、電流閾値としての車両がアイドリングストップしているときの二次電池2における電流値とを比較する。そして、電流値比較部60により比較結果として電流値の絶対値と電流閾値との大小関係が示される。
【0022】
そして、電流値比較部60の比較結果が電流値の絶対値が電流閾値よりも小さくないことを示す場合、すなわち、図3において電流閾値がI1であるときに第1区間T1及び第3区間T3で示された状態である場合、図2に示すように、ステップS2のNoに進み、ステップS3において、周期設定部61において設定される推定周期を初期値にする。なお、すでに推定周期が初期値である場合には、変更することなく初期値を維持する。その後、ステップS5において、電池状態推定部62により初期値の推定周期に基づいて周期的に二次電池2の電池状態を推定し、この制御を終了する。
【0023】
一方、ステップS2において、電流値比較部60の比較結果が電流値の絶対値が電流閾値よりも小さいことを示す場合、すなわち、図3において第2区間T2で示された状態である場合、ステップS2のYesに進み、図2に示すように、ステップS4において、周期設定部61は推定周期を初期値よりも長く設定する。その後、ステップS5において、電池状態推定部62によりステップS3において初期値よりも長く設定された推定周期に基づいて周期的に二次電池2の電池状態を推定し、この制御を終了する。
【0024】
なお、ステップS5の後、再度ステップS1に戻ってもよい。この場合は、再度のステップS2で電流値が電流閾値よりも小さい場合において、前回ステップS4を実施している場合は、再度ステップS4を実施せずに現在の推定周期を維持して、ステップS5に進むようにすることができる。
【0025】
なお、車両のイグニッションがオフの場合には、図2におけるステップS1において電流値取得部30で取得される電流値を0として、ステップS2に進み、ステップS2では当該電流値が電流閾値よりも小さいとして、ステップS4に進むようにすることができる。
【0026】
次に、本実施形態の電池状態推定装置1における作用効果について、詳述する。
電池状態推定装置1においては、二次電池2に流れた電流値と、閾値記憶部50に記憶された電流閾値とを比較した結果に基づいて、二次電池2の状態の推定周期を設定される。これにより、二次電池2における電池反応の進み易さを考慮して、二次電池2の推定周期を設定して電池状態推定部62における計算負荷を調整することができる。その結果、二次電池2における電池反応の進み易さに考慮せずに、電池状態推定部62が常に演算負荷が高い演算を行う場合に比べて、電池状態推定部62における計算精度を維持しつつ、消費電力を低減することが可能となる。
【0027】
本実施形態では、電流値比較部60は電流値取得部30が取得した電流値の絶対値と、閾値記憶部50に記憶された電流閾値とを比較する。そして、周期設定部61は、電流値比較部60の比較結果が電流値の絶対値が電流閾値よりも小さいことを示す場合に、推定周期を長く設定する。電流値の絶対値が電流閾値よりも小さい状態においては、二次電池2における電池反応は穏やかに進むため、推定周期を長くしても電池状態推定部62における推定精度を維持したまま、電池状態推定部62における演算負荷を低減することができる。
【0028】
また、本実施形態では、二次電池2は車両に設けられており、閾値記憶部50には、電流閾値として、車両がアイドリングストップしているときの二次電池2における電流値が予め記憶されている。車両がアイドリングストップしているときの二次電池2における電流値は低い値であるため、二次電池2における電池反応は穏やかに進む。そのため、閾値記憶部50に記憶された電流閾値として、アイドリングストップしているときの二次電池2における電流値とすることにより、電池状態推定部62における推定精度を維持したまま、電池状態推定部62における演算負荷を低減することができる。
【0029】
以上のごとく、本実施形態によれば、二次電池2の電池状態を低消費電力でかつ高精度に推定できる電池状態推定装置1を提供することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、電流値比較部60において、電流閾値と比較する対象となる電流値として、電流値格納部40に格納された最新の電流値を採用したが、これに替えて、電流値格納部40に格納された最新の電流値を含む所定期間の平均電流値を電流閾値と比較する対象となる電流値としてもよい。
【0031】
なお、電池状態推定装置1は、推定周期として長さの異なる複数の推定周期が予め記憶された周期記憶部を有し、周期設定部61は、電流値比較部60の比較結果に基づいて、周期記憶部から所定長さの推定周期を抽出して推定周期を設定するようにしてもよい。
【0032】
なお、本実施形態では、閾値記憶部50には電流閾値として、二次電池2が搭載された車両がアイドリングストップしているときの二次電池2における電流値が予め記憶されていることとしたが、これに替えて変形形態1では、閾値記憶部50には電流閾値として、二次電池2が充放電していないときの二次電池2における電流値が予め記憶されている。変形形態1におけるその他の構成は実施形態1と同様である。当該変形形態1では、二次電池2が充放電していない状態すなわち二次電池2が休止中である状態において、電池状態推定装置1による推定周期を長くすることとなる。二次電池2は休止中では電池反応の進度は非常に緩やかであるため、推定周期を長くすることにより、推定精度を維持しつつ、演算負荷を低減して消費電力を低減することができる。そして、当該変形形態1においても、実施形態1と同等の作用効果を奏する。
【0033】
また、更なる変形形態2として、閾値記憶部50には電流閾値として、外部から二次電池2に電力が供給されて充電されるときの二次電池2における電流値が予め記憶されている。そして、変形形態2の電池状態推定装置1では、図4に示すように、二次電池2が外部接続部20に接続されている。外部接続部20は二次電池2が搭載された車両に設けられており、車両の外部にある図示しない給電装置と接続可能に構成されている。二次電池2は外部接続部20を介して給電装置から充電可能に構成されている。変形形態2におけるその他の構成要素は実施形態1の場合と同様であり、変形形態2においても実施形態1の場合と同一の符号を用いてその説明を省略する。
【0034】
当該変形形態2では、二次電池2が充電中である状態において、電池状態推定装置1による推定周期を長くすることとなる。二次電池2は充電中は電池反応の進度は非常に緩やかであるため、推定周期を長くすることにより、推定精度を維持しつつ、演算負荷を低減して消費電力を低電することができる。そして、本実施形態においても、実施形態1と同等の作用効果を奏する。
【0035】
(実施形態2)
実施形態2の電池状態推定装置1では、図1に示す実施形態1の構成に加えて、図5に示すように、取得部3が変化量取得部31を有し、格納部4が変化量格納部41を有し、記憶部5が基準値記憶部51を有し、演算部6が変化量比較部63及び変更判定部64を有する。その他の構成要素は実施形態1の場合と同様であり、本実施形態においても実施形態1の場合と同一の符号を用いてその説明を省略する。
【0036】
図5に示す変化量取得部31は、二次電池2の電池状態の変化量を取得するように構成されている。本実施形態では、変化量取得部31は、二次電池2の出力値として電圧を検出する電圧計を有している。変化量取得部31が出力値を検出するタイミングは特に限定されないが、変化量取得部31が推定周期ごとの変化量を取得可能なように、推定周期ごとに出力値を検出するようにすることができる。なお、本実施形態では、演算部6が図示しない変化量算出部を有しており、当該変化量算出部により、変化量取得部31において検出された出力値から、その変化量が算出される。そして、図5に示す変化量格納部41は書き換え可能な不揮発性メモリからなり、変化量取得部31により取得された変化量がそれぞれ格納される。
【0037】
図5に示す基準値記憶部51は、後述する変化量比較部63において使用される変化量の基準値が予め記憶されている。本実施形態では、基準値として、二次電池2の出力値が過度に大きくなったときの出力値の変化量に相当する値が記憶されている。
【0038】
図5に示す変化量比較部63は変化量取得部31が取得した変化量と予め設定された基準値とを比較する。当該変化量は変化量格納部41から抽出される。変化量格納部41に複数の変化量が格納されている場合は、変化量比較部63は、例えば、最新の変化量を抽出することができる。また、基準値記憶部51に複数の変化量が記憶されている場合は、変化量比較部63は、複数の変化量をすべて抽出することができる。また、変化量比較部63が抽出する基準値をユーザが選択可能に構成されており、当該ユーザが選択した一つ又は複数の基準値を抽出することができる。変化量比較部63が複数の基準値を抽出した場合、変化量比較部63は、抽出した複数の基準値の全てと、変化量格納部41から抽出した変化量とを比較する。変化量比較部63が比較を行うタイミングは、推定周期ごとに行うようにすることができる。本実施形態では、変化量比較部63は、変化量格納部41から抽出された変化量と基準値とを比較し、比較結果として変化量と基準値との大小関係を示す。
【0039】
図5に示す変更判定部64は、変化量比較部63の比較結果に基づいて、推定周期を変更するか否か判定する。本実施形態では、変更判定部64は、変化量比較部63の比較結果が、変化量格納部41から抽出された変化量が基準値よりも大きいことを示す場合、推定周期を短くするように変更すると判定し、そうでない場合は推定周期を変更しないと判定する。そして、周期設定部61は、変更判定部64の判定結果に基づいて、推定周期を設定する。
【0040】
次に、実施形態2における電池状態推定装置1の使用態様について、図6に示すフロー図を用いて説明する。まず、図2に示す実施形態1の場合と同様に、図6に示すように、ステップS1〜S5を実施する。
【0041】
図6に示すように、ステップS5の実施後、ステップS10において、変化量取得部31により、二次電池2における出力値の変化量を取得する。そして、取得した変化量を変化量格納部41に格納する。その後、ステップS11において、変化量比較部63が変化量格納部41に格納された変化量を抽出するとともに、基準値記憶部51に格納された基準値を抽出し、両者を比較する。そして、変化量比較部63により比較結果として出力値の変化量と基準値との大小関係が示される。
【0042】
そして、変化量比較部63の比較結果が出力値の変化量が基準値よりも大きいことを示す場合は、ステップS11のYesに進み、ステップS12において、周期設定部61は推定周期を短く設定する。その後、ステップS14において、電池状態推定部62によりステップS12において短く設定された推定周期に基づいて周期的に二次電池2の電池状態を推定し、この制御を終了する。
【0043】
一方、ステップS11において、変化量比較部63の比較結果が出力値の変化量が基準値よりも大きくないことを示す場合は、ステップS11のNoに進み、ステップS13において、周期設定部61において設定される推定周期を変更することなく維持する。その後、ステップS14において、電池状態推定部62によりステップS13において維持された推定周期に基づいて周期的に二次電池2の電池状態を推定し、この制御を終了する。
【0044】
なお、実施形態1の場合と同様に、ステップS14の後、再度ステップS1に戻ってもよい。この場合は、再度のステップS11で比較結果が変化量が基準値よりも大きいことを示す場合において、前回ステップS12を実施している場合は、再度ステップS12を実施せずに現在の推定周期を維持して、ステップS14に進むようにすることができる。
【0045】
実施形態2の電池状態推定装置1によれば、二次電池2の出力値の変化量が過度に大きい場合には、推定周期を短くする。二次電池2の出力値の変化量が過度に大きい場合は、当該周期における二次電池2の電池反応による状態変化が大きいと考えられるため、推定周期を短くすることで、電池状態の検出精度を高めて二次電池2の電池状態をより正確に推定することができる。そして、本実施形態では、二次電池2の電池状態の推定周期を長くした後に二次電池2の出力値が過剰に大きい場合に推定周期を短くしているため、演算負荷を低減しつつ必要に応じて演算精度を高めることができる。また、本実施形態においても実施形態1の場合と同等の作用効果を奏する。なお、二次電池2の電池状態の推定周期を短くした後に推定周期を長くする際には推定周期を初期値に戻すこととしてもよいし、初期値とは異なる長さにすることとしてもよい。
【0046】
かかる変形形態の電池状態推定装置1によれば、二次電池2の端子電圧の変化量が過度に大きくなって、当該周期における二次電池2の電池反応による状態変化が大きいと考えられる場合においても本実施形態と同等の作用効果を奏する。また、かかる変形形態においても実施形態1と同等の作用効果を奏する。
【0047】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。例えば、閾値記憶部50が実施形態1における車両がアイドリングストップしているときの電流値と、変形形態1における外部から充電される際の電流値と、変形形態2における二次電池2が充放電していない状態の電流値のうち、任意の二つ又は全部が予め記憶されているようにしてもよい。また、実施形態1、2及び変形形態1、2の構成を任意に組み合わせた構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 電池状態推定装置
2 二次電池
30 電流値取得部
31 変化量取得部
50 閾値記憶部
51 基準値記憶部
60 電流値比較部
61 周期設定部
62 電池状態推定部
63 変化量比較部
64 変更判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6