(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第5封止部及び前記第6封止部における前記磁性粒子と前記樹脂材料との含有比は、質量基準で70:30〜20:80であることを特徴とする請求項7に記載の磁気センサ装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る磁気センサ装置の概略構成を示す平面図であり、
図2は、本実施形態に係る磁気センサ装置の概略構成を示す、
図1におけるA−A線断面図であり、
図3〜
図5は、本実施形態に係る磁気センサ装置の他の態様の概略構成を示す断面図である。なお、本実施形態に係る磁気センサ装置において、必要に応じ、いくつかの図面中、「X、Y及びZ軸方向」を規定している。ここで、X軸方向及びY軸方向は、磁気センサチップの面内における互いに直交する方向であり、Z軸方向は、磁気センサチップの厚さ方向である。
【0020】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る磁気センサ装置1は、磁気センサチップ2が搭載される搭載面を有するダイパッド3と、導電性ペースト、絶縁性ペースト、DAF(ダイアタッチフィルム)等を介してダイパッド3の搭載面上に固定される磁気センサチップ2と、ダイパッド3の周囲に配置されており、インナーリード41及びアウターリード42をそれぞれ含む複数(本実施形態においては8個)のリード4と、磁気センサチップ2の端子とインナーリード41とを電気的に接続する、金線等のボンディングワイヤ等からなる配線部5と、磁気センサチップ2、ダイパッド3、配線部5及びインナーリード41を一体的に封止する封止体6とを備える。
【0021】
磁気センサチップ2は、平面視において略方形状であり、互いに対向する第1側面21及び第2側面22と、第1側面21(第2側面22)に直交し、互いに対向する第3側面23及び第4側面24と、ダイパッド3の搭載面に当接する底面26及びそれに対向する天面25とを有する。磁気センサチップ2の感度軸(磁気センサ素子の感度軸)は、第1側面21と第2側面22との間の方向(X軸方向)であってもよいし、第3側面23と第4側面24との間の方向(Y軸方向)であってもよいし、天面25と底面26との間の方向(Z軸方向)であってもよい。
【0022】
封止体6は、磁気センサチップ2を一体として封止する樹脂(例えば、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、ABS樹脂等)により構成され、磁性粒子7を含有する。後述するように、磁性粒子7が封止体6に混入されていることで、磁気センサチップ2に対する磁気ヨーク又は磁気シールドとしての機能が奏される。そのような観点から、磁性粒子7は、相対的に高い透磁率(例えば、2×10
-5〜8×10
-4(H/m)程度の透磁率)を有する軟磁性材料により構成されるのが好ましく、例えば、MnZnフェライト、NiZnフェライト、CuZnフェライト等のスピネルフェライト;バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の六方晶フェライト;YIG(イットリウム・鉄・ガーネット)等のガーネットフェライト;γ−Fe
2O
3(マグヘマイト)等が挙げられる。
【0023】
磁性粒子7の粒子径は、特に限定されるものではないものの、例えば、200μm以上であればよく、好適には200〜600μm程度である。本実施形態に係る磁気センサ装置1において、後述するように、封止体6の一部に磁性粒子7を実質的に存在させない。磁性粒子7が実質的に存在しない部分は、封止体6の厚みを磁性粒子7の粒子径未満とすることにより形成される。磁性粒子7の粒子径が200μm未満であると、磁性粒子7を実質的に存在させない部分における封止体6の厚みが当該粒子径未満(200μm未満)となることで、磁気センサ装置1の強度が不足するおそれがある。一方、磁性粒子7の粒子径が600μmを超えると、封止体6を構成する樹脂に均一に分散させるのが困難となるおそれがある。なお、磁性粒子7の粒子径は、例えば、電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定され得る。所定の粒子径の磁性粒子7は、所定の目開きの篩を用いた分粒処理により得られる。すなわち、磁性粒子7の粒子径は、分粒処理を通じて得られる、所定の粒度分布を有する磁性粒子7の最小の粒子径である。なお、最小の粒子径とは、上記電子顕微鏡(SEM)を用いて磁性粒子7の粒子径を複数視野(例えば5視野程度)にて測定した結果の最少粒子径の平均値を意味するものとする。
【0024】
封止体6は、平面視略方形状の磁気センサチップ2の第1側面21及び第2側面22側にそれぞれ位置する第1封止部61及び第2封止部62と、当該第1側面21及び第2側面22以外の4つの面(第3側面23、第4側面24、天面25及び底面26)側にそれぞれ位置する第3〜第6封止部63〜66とを含む。第1封止部61、第2封止部62、第5封止部65及び第6封止部66は、磁性粒子7を含まない磁性粒子非含有封止部であり、第3封止部63及び第4封止部64は、磁性粒子7を含む磁性粒子含有封止部である。
【0025】
第1封止部61及び第2封止部62の厚さT
61,T
62は、磁性粒子7の粒子径よりも小さい。これにより、第1封止部61及び第2封止部62を、磁性粒子7を実質的に含まない磁性粒子非含有封止部とすることができる。一方、第3封止部63及び第4封止部64の厚さT
63,T
64は、磁性粒子7の粒子径よりも大きい。これにより、第3封止部63及び第4封止部64に磁性粒子7を存在させることができ、磁性粒子含有封止部とすることができる。このような構成を有することで、第3封止部63及び第4封止部64に存在する磁性粒子7が、X軸方向の磁界の磁場強度を低減させる磁気シールドとしての機能を果たし得るとともに、Y軸方向の磁界の磁場強度を増大させる磁気ヨークとしての機能をも果たし得る。
【0026】
なお、
図5に示す磁気センサ装置1においては、第3側面23及び第4側面24側にそれぞれ位置する第3封止部63及び第4封止部64の厚さT
63,T
64は、磁性粒子7の粒子径よりも小さい。この結果、当該第3封止部63及び第4封止部64に磁性粒子7を実質的に存在させず、当該第3封止部63及び第4封止部64を磁性粒子非含有封止部とすることができる。一方、天面25側及び底面26側にそれぞれ位置する第5封止部65及び第6封止部66の厚さT
65,T
66は、磁性粒子7の粒子径よりも大きく、当該第5封止部65及び第6封止部66を磁性粒子含有封止部とすることができる。したがって、
図5に示す磁気センサ装置1においては、磁気センサチップ2の感度軸(磁気センサ素子の感度軸)が天面25と底面26との間の方向(Z軸方向)である場合(例えば、磁気センサ素子がホール素子等である場合)、第5封止部65及び第6封止部66に存在する磁性粒子7が、Z軸方向の磁界の磁場強度を増大させる磁気ヨークとしての機能を果たし得る。
【0027】
図2〜
図4に示す磁気センサ装置1において、磁気センサチップ2の感度軸(磁気センサ素子の感度軸)が第3側面23と第4側面24との間の方向(Y軸方向)である場合、天面25及び底面26側にそれぞれ位置する第5封止部65及び第6封止部66の厚さT
65,T
66は、磁性粒子7の粒子径より小さくてもよいし(
図2、
図3参照)、当該粒子径より大きくてもよい(
図4参照)。第5封止部65及び第6封止部66の厚さT
65,T
66が磁性粒子7の粒子径よりも小さいことで、第5封止部65及び第6封止部66に磁性粒子7を実質的に存在させなくすることができ、第5封止部65及び第6封止部66を磁性粒子非含有封止部とすることができる(
図2、
図3参照)。
【0028】
一方、磁気センサチップ2の感度軸(磁気センサ素子の感度軸)が第1側面21と第2側面22との間の方向(X軸方向)である場合、第5封止部65及び第6封止部66の厚さT
65,T
66は、磁性粒子7の粒子径より小さいのが好ましい(
図2、
図3参照)。第5封止部65及び第6封止部66の厚さT
65,T
66が磁性粒子7の粒子径よりも大きく、第5封止部65及び第6封止部66に磁性粒子7を存在させ、第5封止部65及び第6封止部66を磁性粒子含有封止部とすると(
図4参照)、X軸方向の磁場強度を低減させる磁気シールドとしての機能が効果的に奏されず、当該X軸方向の磁場強度を磁気センサ素子の使用磁場範囲内に調整するのが困難となるおそれがある。
【0029】
磁気センサチップ2の第3側面23及び第4側面24側にそれぞれ位置する第3封止部63及び第4封止部64が磁性粒子含有封止部である場合(
図2〜
図4参照)、第3封止部63及び第4封止部64における磁気センサ装置1の厚さT
1は、それ以外の部分における磁気センサ装置1の厚さと実質的に同一であってもよいし(
図2及び
図4参照)、それ以外の部分における磁気センサ装置1の厚さよりも厚くてもよい(
図3参照)。
図3に示すように、第3封止部63及び第4封止部64における磁気センサ装置1の厚さT
1が、それ以外の部分における厚さよりも厚いことで、X軸方向の磁界の磁場強度をより効果的に低減させることができるとともに、Y軸方向の磁界の磁場強度をより効果的に増大させることができる。
【0030】
図2〜
図4における第3側面23及び第4側面24側にそれぞれ位置する第3封止部63及び第4封止部64、並びに
図4及び
図5における天面25及び底面26側にそれぞれ位置する第5封止部65及び第6封止部66、すなわち磁性粒子含有封止部における磁性粒子7と樹脂材料との含有比(質量基準)は、90:10〜10:90であるのが好ましい。特に、磁気センサチップ2の感度軸がX軸方向である場合であって、X軸方向の磁界の磁場強度が磁気センサチップ2に含まれる磁気センサ素子の使用磁場範囲の最大値よりも大きい場合、磁性粒子含有封止部(第3封止部63及び第4封止部64)における磁性粒子7と樹脂材料との含有比(質量基準)は80:20〜25:75であるのがより好ましい。一方、磁気センサチップ2の感度軸がY軸方向である場合であって、Y軸方向の磁界の磁場強度が磁気センサチップ2に含まれる磁気センサ素子の使用磁場範囲の最小値よりも小さい場合、磁性粒子含有封止部(第3〜第6封止部63〜66)における磁性粒子7と樹脂材料との含有比(質量基準)は70:30〜20:80であるのがより好ましい。磁性粒子含有封止部における磁性粒子7と樹脂材料との含有比が上記範囲外であると、磁気センサチップ2の感度軸方向の磁界の磁場強度が、磁気センサチップ2に含まれる磁気センサ素子の使用磁場範囲からはずれてしまうおそれがある。
【0031】
本実施形態における磁気センサチップ2は、少なくとも1つの磁気センサ素子を含む。磁気センサチップ2は、少なくとも1つの磁気センサ素子として、直列に接続された一対の磁気センサ素子を含んでいてもよい。この場合において、磁気センサチップ2は、直列に接続された第1及び第2磁気センサ素子MR11,MR12と、直列に接続された第3及び第4磁気センサ素子MR13,MR14とを含む第1ホイートストンブリッジ回路C11及び第2ホイートストンブリッジ回路C21を有する。
【0032】
図6に示すように、磁気センサチップ2が有する第1ホイートストンブリッジ回路C11は、電源ポートV11と、グランドポートG11と、2つの出力ポートE11,E12と、直列に接続された第1及び第2磁気センサ素子MR11,MR12と、直列に接続された第3及び第4磁気センサ素子MR13,MR14とを含む。第1及び第3磁気センサ素子MR11,MR13の各一端は、電源ポートV11に接続される。第1磁気センサ素子MR11の他端は、第2磁気センサ素子MR12の一端と出力ポートE11とに接続される。第3磁気センサ素子MR13の他端は、第4磁気センサ素子MR14の一端と出力ポートE12とに接続される。第2及び第4磁気センサ素子MR12,MR14の各他端は、グランドポートG11に接続される。電源ポートV11には、所定の大きさの電源電圧が印加され、グランドポートG11はグランドに接続される。
【0033】
図7に示すように、第2ホイートストンブリッジ回路C21は、電源ポートV21と、グランドポートG21と、2つの出力ポートE21,E22と、直列に接続された第1及び第2磁気センサ素子MR21,MR22と、直列に接続された第3及び第4磁気センサ素子MR23,MR24とを含む。第1及び第3磁気センサ素子MR21,MR23の各一端は、電源ポートV21に接続される。第1磁気センサ素子MR21の他端は、第2磁気センサ素子MR22の一端と出力ポートE21とに接続される。第3磁気センサ素子MR23の他端は、第4磁気センサ素子MR24の一端と出力ポートE22とに接続される。第2及び第4磁気センサ素子MR22,MR24の各他端は、グランドポートG21に接続される。電源ポートV21には、所定の大きさの電源電圧が印加され、グランドポートG21はグランドに接続される。
【0034】
本実施形態において、第1及び第2ホイートストンブリッジ回路C11,C21に含まれる第1〜第4磁気センサ素子MR11〜MR14,MR21〜MR24として、ホール素子、AMR素子、GMR素子、TMR素子等を用いることができ、特にTMR素子を用いるのが好ましい。
【0035】
図6及び
図7において、TMR素子R11〜R14,R21〜R24の磁化固定層83(
図9参照)の磁化方向を塗りつぶした矢印で表す。第1ホイートストンブリッジ回路C11において、TMR素子R11〜R14の磁化固定層83の磁化方向は第1の方向D1に平行であって、TMR素子R11,R14の磁化固定層83の磁化方向と、TMR素子R12,R13の磁化固定層83の磁化方向とは、互いに反平行方向である。第2ホイートストンブリッジ回路C21において、TMR素子R21〜R24の磁化固定層83の磁化方向は第2の方向D2に平行であって、TMR素子R21,R24の磁化固定層83の磁化方向と、TMR素子R22,R23の磁化固定層83の磁化方向とは、互いに反平行方向である。
【0036】
図8に示すように、TMR素子は、複数の下部リード電極91と、複数のTMR積層体80と、複数の上部リード電極92とを有する。下部リード電極91及び上部リード電極92は、例えば、Cu、Al、Au、Ta、Ti等のうちの1種の導電材料又は2種以上の導電材料の複合膜により構成され、その厚さは、それぞれ0.3〜2.0μm程度である。
【0037】
複数の下部リード電極91は、基板(図示せず)上に設けられている。複数の下部リード電極91は、それぞれ細長い略長方形状を有しており、アレイ状に配列された複数のTMR積層体80の電気的な直列方向において隣接する2つの下部リード電極91の間に所定の隙間を有するように設けられている。下部リード電極91の長手方向の両端近傍のそれぞれに、TMR積層体80が設けられている。すなわち、複数の下部リード電極91上には、それぞれ、2つのTMR積層体80が設けられている。なお、TMR素子は、アレイ状に配列された複数のTMR積層体80が電気的に直列接続されていなくてもよく、1つの下部リード電極91、1つのTMR積層体80及び1つの上部リード電極92により構成されるものであってもよい。また、
図8に示すTMR積層体80の平面視形状は、略円形状であるが、この態様に限定されるものではなく、所望とする範囲で抵抗値を変化させ得るのであれば他の形状、例えば略方形状等であってもよい。
【0038】
本実施形態におけるTMR積層体80は、
図9に示すように、磁化方向が固定された磁化固定層83と、印加される磁界の方向に応じて磁化方向が変化する自由層81と、磁化固定層83及び自由層81の間に配置される非磁性層82と、反強磁性層84とを有する。
【0039】
TMR積層体80は、下部リード電極91側から順に自由層81、非磁性層82、磁化固定層83及び反強磁性層84が積層された構造を有する。自由層81は、下部リード電極91に電気的に接続され、反強磁性層84は、上部リード電極92に電気的に接続されている。自由層81及び磁化固定層83を構成する材料としては、例えば、NiFe、CoFe、CoFeB、CoFeNi、Co
2MnSi、Co
2MnGe、FeO
X(Feの酸化物)等が挙げられる。自由層81及び磁化固定層83の厚さは、それぞれ、1〜10nm程度である。
【0040】
非磁性層82は、トンネルバリア層であり、TMR積層体80にトンネル磁気抵抗効果(TMR効果)を発現させるための必須の膜である。非磁性層82を構成する材料としては、Cu、Au、Ag、Zn、Ga、TiO
X、ZnO、InO、SnO、GaN、ITO(Indium Tin Oxide)、Al
2O
3、MgO等を例示することができる。非磁性層82は、2層以上の積層膜により構成されていてもよい。例えば、非磁性層82は、Cu/ZnO/Cuの3層積層膜や、一つのCuをZnで置換したCu/ZnO/Znの3層積層膜により構成され得る。なお、非磁性層82の厚さは、0.1〜5nm程度である。
【0041】
反強磁性層84は、例えば、Pt,Ru,Rh,Pd,Ni,Cu,Ir,Cr及びFeのグループの中から選ばれる少なくとも1種の元素と、Mnとを含む反強磁性材料により構成される。この反強磁性材料におけるMnの含有量は、例えば35〜95原子%程度である。反強磁性材料により構成される反強磁性層84は、磁化固定層83との間での交換結合により、磁化固定層83の磁化の方向を固定する役割を果たす。
【0042】
複数の上部リード電極92は、複数のTMR積層体80上に設けられている。各上部リード電極92は、細長い略長方形状を有する。上部リード電極92は、アレイ状に配列された複数のTMR積層体80の電気的な直列方向において隣接する2つの上部リード電極92の間に所定の隙間を有するように、かつ複数のTMR積層体80を直列に接続するように配置され、隣接する2つのTMR積層体80の反強磁性層84同士を電気的に接続する。なお、TMR積層体80は、下部リード電極91側から順に反強磁性層84、磁化固定層83、非磁性層82及び自由層81が積層されてなる構成を有していてもよい。また、自由層81と下部リード電極91又は上部リード電極92との間にキャップ層(保護層)を有していてもよい。
【0043】
TMR積層体80において、自由層81の磁化の方向が磁化固定層83の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°(互いの磁化方向が平行)のときに抵抗値が最小となり、180°(互いの磁化方向が反平行)のときに抵抗値が最大となる。
【0044】
配線部5は、磁気センサチップ2の端子とインナーリード41とを電気的に接続するものであり、本実施形態においては、ボンディングワイヤが用いられている。リード4は、磁気センサチップ2にて生成される信号を磁気センサ装置1の外部に取り出すために用いられる電極であって、配線部5を介して磁気センサチップ2の端子に電気的に接続されるインナーリード41と、磁気センサ装置1の実装用部材として機能するアウターリード42とを含む。インナーリード41は、リード4のうち、封止体6内に封止されている部分であり、アウターリード42は、封止体6外に露出している部分である。
【0045】
ダイパッド3及びリード4を構成する材料としては、特に限定されるものではなく、公知の導電性材料(例えば、銅、ステンレス、アルミニウム、鉄、ルテニウム、銀等)等が用いられ得る。
【0046】
本実施形態において、リード4(インナーリード41及びアウターリード42)は、ダイパッド3と同一平面上に位置していてもよいし、ダイパッド3とは異なる平面上、特に磁気センサチップ2と同一平面上に位置していてもよい。
【0047】
上記磁気センサ装置1は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、フレーム部101と、フレーム部101内に位置するダイパッド3と、ダイパッド3及びフレーム部101間に連続する吊りリード102と、フレーム部101に連続し、ダイパッド3の周囲に配置されている複数のリード4とを備えるリードフレーム100(
図10参照)を準備する。なお、本実施形態において、リードフレーム100としては、1つのダイパッド3を有するものを例に挙げているが、かかる態様に限定されるものではなく、複数のダイパッド3を有する、いわゆる多面付けのものであってもよい。
【0048】
次に、リードフレーム100のダイパッド3の搭載面に磁気センサチップ2を固定するとともに磁気センサチップ2の端子とインナーリード41とを配線部5にて電気的に接続し(
図11(A)参照)、当該リードフレーム100を成形金型内に収容し、アウターリード42を外部に露出させるようにして、磁気センサチップ2、ダイパッド3、インナーリード41、吊りリード102及び配線部5を封止体6により封止する(
図11(B)参照)。
【0049】
上記の内壁と磁気センサチップ2の第1側面21及び第2側面22との間の空隙に充填される樹脂により第1側面21及び第2側面22側にそれぞれ第1封止部61及び第2封止部62が形成されるため、当該空隙のサイズが、第1封止部61及び第2封止部62に磁性粒子7を存在させないようなサイズの成形金型が用いられる。より具体的には、当該内壁と第1側面21及び第2側面22との間の空隙のサイズが、磁性粒子7の粒子径未満である成形金型が用いられる。これにより、成形金型内に、磁性粒子7を含む樹脂を注入し、硬化させることで、磁気センサチップ2の第1側面21及び第2側面22側にそれぞれ形成される第1封止部61及び第2封止部62に磁性粒子7を実質的に存在させないようにすることができる。
【0050】
また、当該成形金型として、その内壁と磁気センサチップ2の第3側面23及び第4側面24との間の空隙のサイズ、並びに/又は当該内壁と天面25及び底面26との間の空隙のサイズが、磁性粒子7の粒子径を超えるものが用いられ得る。これにより、磁気センサチップ2の第3側面23及び第4側面24側にそれぞれ形成される第3封止部63及び第4封止部64、並びに/又は天面25及び底面26側にそれぞれ形成される第5封止部65及び第6封止部66に磁性粒子を存在させるようにすることができる(
図2〜
図4参照)。
【0051】
上記成形金型として、内壁と磁気センサチップ2の第1〜第4側面21〜24との間の空隙のサイズが、当該第1〜第4側面21〜24側にそれぞれ形成される第1〜第4封止部61〜64に磁性粒子7を存在させないようなサイズ、すなわち当該内壁と第1〜第4側面21〜24との間の空隙のサイズが磁性粒子7の粒子径未満であって、内壁と天面25及び底面26との間の空隙のサイズが磁性粒子7の粒子径を超えるものが用いられてもよい。これにより、磁気センサチップ2の第1〜第4側面21〜24側にそれぞれ形成される第1〜第4封止部61〜64に磁性粒子を実質的に存在させず、天面25及び底面26側に形成される第5封止部65及び第6封止部66に磁性粒子を存在させるようにすることができる(
図5参照)。
【0052】
その後、封止体6により封止されたリードフレーム100を成形金型から取り出し、アウターリード42を外部に露出させるようにして、リード4及び吊りリード102を切断する。このようにして、本実施形態に係る磁気センサ装置1が製造される。
【0053】
上述した本実施形態に係る磁気センサ装置1によれば、磁気センサチップ2の感度軸がX軸方向である場合に被検出磁界が磁気センサチップ2に導入され得る第1側面21及び第2側面22上にそれぞれ位置する第1封止部61及び第2封止部62は磁性粒子7を実質的に含まず、第3封止部63及び第4封止部64は磁性粒子7を含むため、当該磁性粒子7を含む第3封止部63及び第4封止部64によって、X軸方向の磁界の磁場強度を低減させる磁気シールドとしての機能が奏される。なお、第5封止部65及び第6封止部66に磁性粒子7を含ませると、X軸方向の磁界の磁場強度を磁気センサ素子の使用磁場範囲内に調整するのが困難となるため、第5封止部65及び第6封止部66には磁性粒子7を含ませない(存在させない)のが望ましい。一方、磁気センサチップ2の感度軸がY軸方向である場合には、磁性粒子7を含む第3封止部63及び第4封止部64によって、Y軸方向の磁界の磁場強度を増大させる磁気ヨークとしての機能が奏される。また、磁気センサチップ2の感度がZ軸方向である場合には、磁性粒子7を含む第5封止部65及び第6封止部66によって、Z軸方向の磁界の磁場強度を増大させる磁気ヨークとしての機能が奏される。そして、そのような磁気シールド機能や磁気ヨーク機能を奏させるための磁気シールドや磁気ヨークを別途設ける必要がないため、磁気センサ装置1の全体サイズをコンパクトにすることができるとともに、当該磁気センサ装置1を安価に製造することができる。
【0054】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0055】
上記実施形態においては、磁気センサチップ2の第3側面23及び第4側面24側のそれぞれに位置する第3封止部63及び第4封止部64に磁性粒子7が存在する態様を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、
図12に示すように、いずれか一方の側面(例えば第3側面23)側に位置する封止部(第3封止部63)には磁性粒子7が存在するが、他方の側面(例えば第4側面24)側に位置する封止部(第4封止部64)には磁性粒子7が実質的に存在していなくてもよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0057】
〔実施例1〕
図11(A)及び(B)に示す製造方法に従い、
図3に示す構成を有する磁気センサ装置1を作製した。磁性粒子7としてγ−Fe
2O
3粒子(目開き212μmの篩(65メッシュ)を用いて分粒した粒子)を用い、封止体6を構成する樹脂材料としてエポキシ樹脂を用いた。なお、第1封止部61及び第2封止部62の厚さT
61,T
62が200μm、第3封止部63及び第4封止部64(磁性粒子含有封止部)の厚さT
63,T
64が600μm、第5封止部65及び第6封止部66(磁性粒子非含有封止部)の厚さT
65,T
66が200μm、当該磁性粒子含有封止部(第3封止部63及び第4封止部64)における磁気センサ装置1の厚さT
1が1mmとなるような成形金型を用い、磁性粒子含有封止部における磁性粒子7と樹脂材料との含有比(質量基準)が90:10となるように、成形金型に注入する樹脂材料中における磁性粒子7の含有量を調整した。
【0058】
〔実施例2〕
磁性粒子含有封止部における磁性粒子7と樹脂材料との含有比(質量基準)が80:20となるように、成形金型に注入する樹脂材料中における磁性粒子7の含有量を調整した以外は、実施例1と同様にして磁気センサ装置1を作製した。
【0059】
〔実施例3〕
磁性粒子含有封止部における磁性粒子7と樹脂材料との含有比(質量基準)が70:30となるように、成形金型に注入する樹脂材料中における磁性粒子7の含有量を調整した以外は、実施例1と同様にして磁気センサ装置1を作製した。
【0060】
〔実施例4〕
磁性粒子含有封止部における磁性粒子7と樹脂材料との含有比(質量基準)が50:50となるように、成形金型に注入する樹脂材料中における磁性粒子7の含有量を調整した以外は、実施例1と同様にして磁気センサ装置1を作製した。
【0061】
〔実施例5〕
磁性粒子含有封止部における磁性粒子7と樹脂材料との含有比(質量基準)が25:75となるように、成形金型に注入する樹脂材料中における磁性粒子7の含有量を調整した以外は、実施例1と同様にして磁気センサ装置1を作製した。
【0062】
〔実施例6〕
磁性粒子含有封止部における磁性粒子7と樹脂材料との含有比(質量基準)20:80となるように、成形金型に注入する樹脂材料中における磁性粒子7の含有量を調整した以外は、実施例1と同様にして磁気センサ装置1を作製した。
【0063】
〔実施例7〕
磁性粒子含有封止部における磁性粒子7と樹脂材料との含有比(質量基準)が10:90となるように、成形金型に注入する樹脂材料中における磁性粒子7の含有量を調整した以外は、実施例1と同様にして磁気センサ装置1を作製した。
【0064】
〔実施例8〕
図4に示す構成に変更し、第5封止部65及び第6封止部66(磁性粒子非含有封止部)の厚さT
65,T
66が600μmとなるような成形金型を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気センサ装置1を作製した。
【0065】
〔実施例9〕
図4に示す構成に変更し、第5封止部65及び第6封止部66(磁性粒子非含有封止部)の厚さT
65,T
66が600μmとなるような成形金型を用いた以外は、実施例2と同様にして磁気センサ装置1を作製した。
【0066】
〔実施例10〕
図4に示す構成に変更し、第5封止部65及び第6封止部66(磁性粒子非含有封止部)の厚さT
65,T
66が600μmとなるような成形金型を用いた以外は、実施例3と同様にして磁気センサ装置1を作製した。
【0067】
〔実施例11〕
図4に示す構成に変更し、第5封止部65及び第6封止部66(磁性粒子非含有封止部)の厚さT
65,T
66が600μmとなるような成形金型を用いた以外は、実施例4と同様にして磁気センサ装置1を作製した。
【0068】
〔実施例12〕
図4に示す構成に変更し、第5封止部65及び第6封止部66(磁性粒子非含有封止部)の厚さT
65,T
66が600μmとなるような成形金型を用いた以外は、実施例5と同様にして磁気センサ装置1を作製した。
【0069】
〔実施例13〕
図4に示す構成に変更し、第5封止部65及び第6封止部66(磁性粒子非含有封止部)の厚さT
65,T
66が600μmとなるような成形金型を用いた以外は、実施例6と同様にして磁気センサ装置1を作製した。
【0070】
〔実施例14〕
図4に示す構成に変更し、第5封止部65及び第6封止部66(磁性粒子非含有封止部)の厚さT
65,T
66が600μmとなるような成形金型を用いた以外は、実施例7と同様にして磁気センサ装置1を作製した。
【0071】
〔比較例1〕
第1封止部61及び第2封止部62の厚さT
61,T
62が300μm、第3〜第6封止部63〜66の厚さT
63,T
64,T
65,T
66が300μm、磁気センサ装置の高さT
1が300μmとなるような成形金型を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気センサ装置を作製した。
【0072】
〔比較例2〕
磁性粒子を含有しない樹脂材料(エポキシ樹脂)を用いた以外は、比較例1と同様にして磁気センサ装置を作製した。
【0073】
〔試験例1〕
実施例1〜14及び比較例1〜2の磁気センサ装置に関し、静磁場強度200mT(X軸方向の磁場強度:200mT,Y軸方向の磁場強度:5mT)の外部磁界雰囲気において、磁気センサチップに導入されるX軸方向及びY軸方向の磁界の磁場強度(mT)を測定した。結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に示す結果から明らかなように、磁気センサチップ2の第1側面21及び第2側面22側にそれぞれ位置する第1封止部61及び第2封止部62、並びに天面25及び底面26側にそれぞれ位置する第5封止部65及び第6封止部66に磁性粒子7を含有させず、第3側面23及び第4側面24側にそれぞれ位置する第3封止部63及び第4封止部64に磁性粒子7を含有させ、第3封止部63及び第4封止部64を磁性粒子含有封止部とすることで、磁気シールドを別途設けることなく、X軸方向の磁界の磁場強度を低減させる磁気シールド機能が奏されるとともに、Y軸方向の磁界の磁場強度を増大させる磁気ヨーク機能が奏されることが確認された。一方、天面25及び底面26側にそれぞれ位置する第5封止部65及び第6封止部66にも磁性粒子7を含有させ、第5封止部65及び第6封止部66も磁性粒子含有封止部とすると、X軸方向の磁界の磁場強度を調整するのは困難であるが、少なくともY軸方向の磁界の磁場強度を増大させる磁気ヨーク機能が奏されることが確認された。
【0076】
この結果から、例えば、実施例1〜7の磁気センサ装置1(磁気センサチップ2の感度軸がX軸方向であって、磁気センサ素子が相対的に高感度のGMR素子やTMR素子である磁気センサ装置1)を、2軸(X軸及びY軸)地磁気センサや、3軸(X軸、Y軸及びZ軸)地磁気センサにおけるX軸用磁気センサ装置として用いることで、磁気センサ素子(GMR素子やTMR素子)の使用磁場範囲(例えば20〜80mT,好適には20〜50mT)を超える磁場強度(200mT)のX軸方向の磁界を、当該使用磁場範囲内に調整(低減)して磁気センサチップ2に導入することができると考えられる。また、上記結果から、磁気センサチップ2の感度軸がY軸方向であって、磁気センサ素子が相対的に高感度のGMR素子やTMR素子である磁気センサ装置1を、2軸地磁気センサや3軸地磁気センサのY軸用磁気センサ装置として用いることで、磁気センサ素子の使用磁場範囲未満の微弱な磁場強度(5mT)のY軸方向の磁界を、当該使用磁場範囲内に調整(増大)して磁気センサチップ2に導入することができると考えられる。
【0077】
また、実施例8〜12の磁気センサ装置1の磁気センサチップ2の感度軸がY軸方向であって、磁気センサ素子が相対的に高感度のGMR素子やTMR素子である磁気センサ装置1を、2軸地磁気センサや3軸地磁気センサのY軸用磁気センサ装置として用いることで、磁気センサ素子の使用磁場範囲未満の微弱な磁場強度(5mT)のY軸方向の磁界を、当該使用磁場範囲内に調整(増大)して磁気センサチップ2に導入することができると考えられる。
【0078】
さらに、実施例1〜7において、それぞれ、第3側面23側に位置する第3封止部63を磁性粒子含有封止部とし、第4側面24側に位置する第4封止部64を磁性粒子非含有封止部とした磁気センサ装置1を別途作製し(実施例15〜21)、各磁気センサ装置1における磁気センサチップ2に導入されるX軸方向及びY軸方向の磁界の磁場強度(mT)を同様にして求めたところ、Y軸方向の磁界の磁場強度(mT)は実施例1〜7と同様の結果となったが、X軸方向の磁界の磁場強度(mT)は実施例1〜7ほどには低減されなかった。この結果から、Y軸方向の磁界の磁場強度を増大させる磁気ヨーク機能に関しては、第3封止部63及び第4封止部64のいずれか一方に磁性粒子7を存在させることで十分に奏され得ることが確認された。一方、X軸方向の磁界の磁場強度を低減させる磁気シールド機能に関しては、第3封止部63及び第4封止部64のいずれか一方に磁性粒子7を存在させることで十分に奏され得るものの、両方に磁性粒子7を存在させるのが望ましいことが確認された。