(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790963
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフ
(51)【国際特許分類】
G01N 30/46 20060101AFI20201116BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
G01N30/46 E
G01N30/26 M
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-68461(P2017-68461)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-169350(P2018-169350A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保永 研壱
【審査官】
倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−256652(JP,A)
【文献】
米国特許第06641783(US,B1)
【文献】
特開2015−166724(JP,A)
【文献】
特開2013−200231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/02,30/46,30/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 3つ以上である複数のカラムと、
b) 前記複数のカラムの入口側流路のそれぞれに設けられ、該複数のカラムの入口側流路のそれぞれに所定の溶液を送給する送液部と、
c) 前記複数のカラムの入口側流路のうちの1つに選択的に試料を注入可能な試料注入部と、
d) 前記複数のカラムの出口側に配置された流路切替部であって、該流路切替部の下流側に配置される検出器につながる流路に前記複数のカラムの出口側流路を択一的に接続するとともに、他のカラムの出口側流路を廃液流路に接続する流路切替部と
を備え、
前記流路切替部が、複数の周辺ポートと1つの共通ポートを備え、前記複数の周辺ポートのうちの1つを前記共通ポートに接続して該1つ以外の全ての周辺ポートを互いに連通させる流路切替バルブであり、前記複数の周辺ポートが、前記複数のカラムの出口側流路と前記廃液流路に個別に接続され、前記共通ポートが前記検出器に接続されていること特徴とする液体クロマトグラフ。
【請求項2】
さらに、
e) 前記複数のカラムを択一的に用いて試料を測定する、複数の測定条件が保存された記憶部と、
f) 前記記憶部から前記複数の測定条件を順に読み出し、当該測定条件において用いるカラムの出口側流路を前記検出器につながる流路に接続するように前記流路切替部を制御し、当該カラムの入口側流路に試料を注入するように前記試料注入部を制御する測定制御部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の液体クロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフに関する。特に、それぞれが送液部及びカラムを備える複数の測定ブロックを択一的に用いて複数の条件で試料を測定する液体クロマトグラフに関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフでは、試料を移動相とともにカラムに導入し、該カラムにおいて液体試料中の成分を時間的に分離して測定する。
【0003】
液体クロマトグラフは移動相を送液する送液部、移動相に液体試料を導入するオートサンプラ、液体試料中の成分を時間的に分離するカラム、及び分離された成分を測定する検出部を備えている。液体試料に含まれる成分の極性等によって、各成分を分離可能な移動相やカラムの種類が異なる(例えば特許文献1)。
【0004】
1台の液体クロマトグラフにおいて、液体試料を測定するたびに、移動相を送液する送液部やカラムを交換するには手間と時間がかかる。しかし、極性の高い成分を含む液体試料の測定に用いる液体クロマトグラフと、極性の低い成分を含む液体試料の測定に用いる液体クロマトグラフを別体で備えようとすると、費用が高くなる。特に、オートサンプラや、検出器の1つである質量分析装置を複数備えるとコストが高くなってしまう。
【0005】
そこで、送液部とカラムをそれぞれ備えた2つの測定ブロックを構成し、該2つの測定ブロックでオートサンプラと質量分析装置を共有する、デュアル液体クロマトグラフ質量分析システムと呼ばれるものが、従来用いられている。
【0006】
図5に、デュアル液体クロマトグラフ質量分析システムの要部構成を示す。このシステムは、第1送液部211と第1カラム212を有する第1測定ブロックと、第2送液部221と第2カラム222を有する第2測定ブロックを備えており、これら2つの測定ブロックがオートサンプラ230と検出器240を共有している。オートサンプラ230及び検出器240にはそれぞれ第1六方バルブ251と第2六方バルブ252が接続されており、これらの六方バルブ251、252の流路を切り替えることにより、第1測定ブロックを用いた測定を実行可能な流路(
図5(a))と、第2測定ブロックを用いた測定を実行可能な流路(
図5(b))を切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−166724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
液体クロマトグラフで分析される試料に含まれる成分の特性は多種多様である。こうした成分を高精度に分析するには当該成分の極性だけでなく、親水性/疎水性や分子サイズなど種々の特性を考慮する必要があるが、
図5に示すような従来の液体クロマトグラフ質量分析システムではカラムや移動相が異なる測定ブロックを2つしか用いることができないという問題があった。ここでは検出器として質量分析装置を用いる場合を例に挙げて説明したが、吸光光度計等、他の検出器を用いる場合にも上記同様の問題があった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、それぞれが測定対象の液体試料の特性に応じたカラムを備え該カラムに移動相を送液することが可能な3つ以上の測定ブロックによりオートサンプラと検出器を共用することができる液体クロマトグラフを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために成された本発明に係る液体クロマトグラフは、
a) 3つ以上である複数のカラムと、
b) 前記複数のカラムの入口側流路のそれぞれに設けられ、
該複数のカラムの入口側流路のそれぞれに所定の溶液を送給する送液部と、
c) 前記複数のカラムの入口側流路のうちの1つに選択的に試料を注入可能な試料注入部と、
d) 前記複数のカラムの出口側に配置された流路切替部であって、該流路切替部の下流側に配置される検出器につながる流路に前記複数のカラムの出口側流路を択一的に接続するとともに、他のカラムの出口側流路を廃液流路に接続する流路切替部
と
を備え
、
前記流路切替部が、複数の周辺ポートと1つの共通ポートを備え、前記複数の周辺ポートのうちの1つを前記共通ポートに接続して該1つ以外の全ての周辺ポートを互いに連通させる流路切替バルブであり、前記複数の周辺ポートが、前記複数のカラムの出口側流路と前記廃液流路に個別に接続され、前記共通ポートが前記検出器に接続されていること特徴とする。
【0011】
本発明に係る液体クロマトグラフでは、まず、前記複数のカラムのうち、測定に使用するカラム(測定カラム)の出口側流路が検出器につながる流路に接続されるように流路切替部を操作する。そして、3つ以上である複数のカラムの入口側流路のそれぞれに所定の溶液(例えば移動相)を並行して送給する。また、測定カラムの入口側流路に試料注入部から試料を注入する。
こうして、測定カラムには試料が移動相とともに導入され、該試料に含まれる各種成分が該測定カラム内で時間的に分離される。測定カラムから溶出した成分は順次、検出器で測定される。
その間、前記複数のカラムのうち測定カラム以外の2つ以上のカラム(待機カラム)にも所定の溶液(例えば移動相)が送給される。そのため、測定カラムを用いた試料の測定と並行して待機カラムに所定の処理(例えば平衡化)が施される。
ここでは、所定の溶液が移動相である場合を例に挙げたが、洗浄液を送液してカラムを洗浄する等の処理を行うこともできる。
【0012】
図5に示すような従来の液体クロマトグラフでは、2ポジション6方バルブ252を用いていたため2つの測定ブロック(カラム)間で流路を切り替えることしかできなかったのに対し、本発明に係る液体クロマトグラフでは、複数のカラムの出口側流路を択一的に検出器に接続し、それ以外の出口側流路を全て廃液流路に接続するという、新たな発想に基づく流路切替部を用いる。つまり、測定に用いるカラム以外のカラムを、その数に関係なく全て廃液流路に接続するものであり、使用可能なカラムの数に制限がない。
【0013】
ところで、
図5に示す構成において、例えば2ポジション6方バルブ252に代えて7ポート6ポジションバルブ(1つの共通ポートと6つの周辺ポートを備えたバルブ)を用い、該6つの周辺ポートにそれぞれカラムの出口を接続することにより、6つのカラムの出口側流路を択一的に検出器に接続することが可能である。しかし、この場合には1つの測定カラムを用いた試料の測定中に他の5つのカラムに移動相等を送給することができないため、測定カラムを切り替えるたびに該測定カラムの平衡化や洗浄と試料の測定を順に繰り返し行わなければならなかった。これに対し、本発明に係る液体クロマトグラフでは、前記特徴を有する流路切替部を用いるため、試料の測定と並行して、待機カラムを平衡化(次の測定で使用するカラムを平衡化)したり、洗浄(前の測定で使用したカラムを洗浄)したりすることができる。そのため、測定カラムを切り替えたあと、すぐに試料の測定を行うことができ測定のスループットが向上する。
【0014】
本発明に係る液体クロマトグラフは、さらに、
e) 前記複数のカラムを択一的に用いて試料を測定する、複数の測定条件が保存された記憶部と、
f) 前記記憶部から前記複数の測定条件を順に読み出し、当該測定条件において用いるカラムの出口側流路を前記検出器につながる流路に接続するように前記流路切替部を制御し、当該カラムの入口側流路に試料を注入するように前記試料注入部を制御する測定制御部と
を備えることができる。
【0015】
この態様の液体クロマトグラフでは、使用者により予め記憶部に保存された複数の測定条件に基づいて自動的に測定カラムが検出器に接続され、また該測定カラムに自動的に試料が注入されるため、より一層効率的に試料を測定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る液体クロマトグラフを用いることにより、それぞれが測定対象の液体試料の特性に応じたカラムを備え移動相を送液する3つ以上の測定ブロックによりオートサンプラと検出器を共用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る液体クロマトグラフの一実施例の流路構成図。
【
図2】本実施例の液体クロマトグラフの制御部を説明する図。
【
図3】本実施例の液体クロマトグラフにおいて用いられるメソッドファイルの例。
【
図4】本実施例の液体クロマトグラフにおいて
図3のメソッドファイルを実行する際の流れを説明する図。
【
図5】従来の液体クロマトグラフの流路構成の一例。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る液体クロマトグラフの実施例について、以下、図面を参照して説明する。本実施例の液体クロマトグラフは、液体クロマトグラフ部1と制御部2から構成される。
【0019】
図1は、本実施例の液体クロマトグラフ部1の流路構成図である。この液体クロマトグラフ部1は、6つの測定ブロック10〜60を備えており、これらを択一的に用いて試料を測定する。
図1には2つの測定ブロック10、20のみ内部の構成を示しているが、他の測定ブロック30〜60もこれらと同様の構成を備えている。なお、図中の7ポート6ポジションバルブ93、96の外周のポートから延びる流路の一部(いずれも測定ブロック30〜60に延びる流路)、及び8ポート7ポジションバルブ73、83の外周のポートから延びる流路の一部(いずれも測定ブロック30〜60に延びる流路)の図示を省略している。また、6ポート2ポジションバルブ16、26、8ポート7ポジションバルブ73、100において矢印で示す流路は廃液流路である。
【0020】
測定ブロック内部の構成について、測定ブロック10を例に説明する。測定ブロック10は、移動相送液部11、2つの6ポート2ポジションバルブ15、16、分析カラム17、流路接続部18、及び前処理カラム19を備えている。移動相送液部11では、液体容器12a、12bにそれぞれ収容された溶液が送液ポンプ13a、13bにより送液され、ミキサー14で混合されて6ポート2ポジションバルブ15のポートの1つに送液される。
図1に示す流路接続状態では、6ポート2ポジションバルブ15に送液される移動相は、さらに6ポート2ポジションバルブ16を通って分析カラム17に送液される。
【0021】
試料は、6ポート2ポジションバルブ71とインジェクションポート72を有するオートサンプラ70から導入される。
【0022】
図1に示す流路接続状態では、液体容器81に収容された試料導入溶液が送液ポンプ82により送液され、8ポート7ポジションバルブ83を経て、オートサンプラ70に流れ込む。そして、オートサンプラ70において採取・計量された試料が、8ポート7ポジションバルブ73を通り、6ポート2ポジションバルブ15から測定ブロック10に流れ込む。
【0023】
続いて、試料は流路接続部18において、液体容器91に収容され送液ポンプ92によって送液される希釈液と合流し、即ち希釈されつつ、6ポート2ポジションバルブ16を介して前処理カラム19に導入され、その内部に試料中の成分(試料成分)が吸着される。前処理カラム19に吸着されない不要成分は試料導入溶液とともに6ポート2ポジションバルブ16を通って廃液される。
【0024】
試料成分を前処理カラム19内に吸着したあと、6ポート2ポジションバルブ16の流路を切り替えて(
図1に示す状態から60度回転した流路接続状態に切り替えて)、移動相送液部11から移動相を前処理カラム19に送液する。そして、この移動相によって前処理カラム19内の試料成分を溶出させる。前処理カラム19から溶出した試料成分は、6ポート2ポジションバルブ16を通って分析カラム17に導入され、成分ごとに分離され溶出する。分析カラム17から順次溶出した試料成分は、8ポート7ポジションバルブ100を通って検出部101に送られて測定される。8ポート7ポジションバルブ100は、外周部に7つ、中央に1つのポートを有するバルブであり、該中央のポートを外周部のポートに択一的に接続するとともに、外周部の他のポートが連通するような流路を形成する。外周部のポートのうちの6つには測定ブロック10〜60の分析カラムの出口側流路が接続され、残りの1つは廃液流路に接続される。中央の1つのポートは検出部101に接続されている。
【0025】
上記のようにして測定ブロック10で試料を測定している間、他の測定ブロック20〜60では、それぞれの移動相送液部21(測定ブロック20以外は図示略)から分析カラム27(測定ブロック20以外は図示略)に移動相を送液し、分析カラム27の内部を平衡化することができる。分析カラム27の平衡化は、測定実行中の測定ブロック10以外の全ての測定ブロック20〜60(待機測定ブロック)で同時に行うこともできる。測定ブロック20〜60の分析カラム27を通過した移動相は、8ポート7ポジションバルブ100を通って廃液される。
【0026】
また、試料の測定を行っている測定ブロック10以外の測定ブロック20〜60では、オートサンプラ70から試料を導入して前処理カラム29に吸着させる処理や、液体容器94に収容され送液ポンプ95により送液される洗浄液によりオートランプラ70から各測定ブロック20への試料の導入流路を洗浄する処
理等を行うこと
もできる。ただし、本実施例の構成では試料の導入に測定ブロック10〜60に共通の流路を用いるため、試料を導入する処理や、試料の導入に使用する流路の洗浄は、待機測定ブロック20〜60のいずれか1つにおいてのみ実行可能である。もちろん、各測定ブロック10〜60にそれぞれ試料を導入するための流路を設けるように構成してもよい。
【0027】
図2に示すように、上記液体クロマトグラフ部1は制御部2に接続されており、該制御部2により各送液ポンプの送液動作、各バルブの流路切替動作が制御される。制御部2は、記憶部2aと、機能ブロックである測定制御部2bを備えている。制御部2の実体は一般的なコンピュータであり、そのCPUで適宜のプログラムを実行させることにより測定制御部2bが具現化される。また、制御部2には入力部2c及び表示部2dが接続されている。
【0028】
本実施例の液体クロマトグラフでは、使用者が、連続して実行する複数の測定条件を記載したメソッドファイルを作成し、予め記憶部2aに保存しておく。このメソッドファイルには、例えば
図3に示すように、測定ブロック10〜60の分析カラムを1度ずつ順に用いてグラジエント分析を行うといった測定条件が記載される(実際の測定条件には、使用するカラムや移動相以外のパラメータも適宜に含まれる)。グラジエント分析では、分析カラムの平衡化、測定、洗浄が順に行われる。本実施例の液体クロマトグラフにおいてこの測定条件を用いて順次試料を測定する流れについて、
図4を参照して説明する。なお、
図4では測定ブロック10〜
30において各種動作を実行する時間帯1〜6のみを記載し、それ以降の時間帯、及び測定ブロック40〜60の記載を省略している。
【0029】
使用者が測定開始を指示すると、測定制御部2bは記憶部2aからメソッドファイルを読み出す。そして、最初の測定条件に設定されている測定ブロック10の分析カラム17にグラジエント分析(グラジエントa)における測定開始時の混合比(初期混合比)の移動相を導入して分析カラム17を平衡化する(平衡化。時間帯1−2)。分析カラム17の平衡化開始後、所定時間が経過すると前処理カラム19に試料成分が導入される(試料導入。時間帯2)。
【0030】
分析カラム17の平衡化及び前処理カラム19への試料の導入が完了すると、6ポート2ポジションバルブ16の流路接続状態を切り替える。そして、移動相送液部11から前処理カラム19に移動相を送液して前処理カラム19から試料成分を溶出させ分析カラム17に導入して測定を行う(測定。時間帯3)。また、試料成分の測定と並行して8ポート7ポジションバルブ73及び8ポート7ポジションバルブ83の流路接続状態を切り替える。そして、液体容器94に収容されている洗浄液を、6ポート2ポジションバルブ15、8ポート7ポジションバルブ83、オートサンプラ70、及び8ポート7ポジションバルブ73を通る流路に送液して試料導入流路を洗浄する(流路洗浄。時間帯3)。このとき、8ポート7ポジションバルブ73のドレインに洗浄液を排出してもよく、さらに6ポート2ポジションバルブ15及び6ポート2ポジションバルブ16を経由する流路も洗浄して同バルブ16のドレインに洗浄液を排出してもよい。
【0031】
時間帯3では、測定ブロック10において上記操作を行うのと並行して、測定ブロック20において分析カラム27の平衡化を開始する(平衡化。時間帯3−4)。
【0032】
測定ブロック10における試料の測定完了後、8ポート7ポジションバルブ100の流路接続状態を切り替え、測定ブロック10の分析カラム17をドレインに接続し、測定ブロック20の分析カラム27を検出器に接続する。そして、測定ブロック10において移動相送液部11から前処理カラム19及び分析カラム17に移動相を送液する。これにより両カラムが洗浄される(カラム洗浄。時間帯4)。また、これと並行して、測定ブロック20の前処理カラム29に試料を導入する(試料導入。時間帯4)。
【0033】
測定ブロック20において分析カラム27の平衡化及び前処理カラム29への試料の導入が完了すると、測定ブロック20で測定が開始される(測定。時間帯5)。これと並行して、測定ブロック20につながる試料導入流路の洗浄、及び測定ブロック3における分析カラムの平衡化が行われる。
【0034】
測定制御部2bは、以降も上記同様に、各測定ブロックで順次、カラムの平衡化、試料の導入、測定、流路の洗浄、カラムの洗浄を実行する。そして、測定ブロック60を用いた試料の測定を行ったあと、該測定ブロック60の分析カラムを洗浄して各部の動作を停止させる。
【0035】
従来の液体クロマトグラフでは、1つの分析カラムを用いた試料の測定中、他の分析カラムに移動相を送給することができないため、使用する分析カラムを切り替えたあと、該分析カラムの平衡化と試料の測定を順に1つずつ繰り返し行わなければならなかった。グラジエント分析では特に、平衡化に時間を要する。これに対し、本実施例の液体クロマトグラフでは、ある測定ブロック10における試料の測定及びカラムの洗浄と並行して、次に使用する測定ブロック20の分析カラム27を平衡化することができるため、測定のスループットが向上する。
【0036】
上記実施例は一例であって、本発明の趣旨に沿って適宜に変更することができる。
上記実施例は6つの測定ブロックを備えた構成としたが、この数は適宜に変更することができる。また、測定ブロック内の構成や、他の流路構成についても適宜に変更することができる。さらに、上記実施例では検出器101の種類を特定しなかったが、従来用いられている種々の検出器(質量分析装置、吸光光度計等)を用いることができる。
【0037】
上記実施例において
図4を参照して説明した各測定ブロックにおける動作の組み合わせは一例であって、流路構成から実行可能な動作を適宜に組み合わせることができる。例えば、測定ブロック1において液体容器94に収容されている洗浄液を、6ポート2ポジションバルブ15、6ポート2ポジションバルブ16を経由する流路に送液してカラム19を洗浄する動作と、他の測定ブロックにおいて試料を導入する動作を組み合わせることができる。
【0038】
上記実施例では、前処理カラム19を用いて試料の前処理を行ったり、液体容器91に収容された希釈液により試料導入用液を希釈したり、あるいは液体容器94に収容された洗浄液により流路やカラムを洗浄する構成を説明したが、これは好ましい態様の1つに過ぎず、これらを含まずに構成することもでき、その場合、例えば6ポート2ポジションバルブ16、流路接続部18等は不要である。
【符号の説明】
【0039】
1…液体クロマトグラフ部
10〜60…測定ブロック
101…検出部
11、21…移動相送液部
110…測定ブロック
111…流路接続部
112a〜112f…分析カラム
113…オートサンプラ
12a、12b、22a、22b、81、91、94…液体容器
13a、13b、23a、23b、82、92、95…送液ポンプ
14…ミキサー
15、16、25、26、71…6ポート2ポジションバルブ
17、27、112a〜112f…分析カラム
18、28、111…流路接続部
19、29…前処理カラム
2…制御部
2a…記憶部
2b…測定制御部
2c…入力部
2d…表示部
70…オートランプラ
72…インジェクションポート
73、83…8ポート7ポジションバルブ
93、96…7ポート6ポジションバルブ
100、100’…8ポート7ポジションバルブ