特許第6790965号(P6790965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790965
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】車両用電源システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20201116BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20201116BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20201116BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20201116BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   B60L3/00 J
   B60L50/16
   B60L50/60
   H02J7/00 P
   B60R16/03 A
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-69849(P2017-69849)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-174625(P2018-174625A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2019年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平島 茂雄
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−005622(JP,A)
【文献】 特開2010−036594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00
B60L 50/16
B60L 50/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(6)に搭載された車両用電源システム(1)であって、
メインバッテリ(2)と、
上記メインバッテリの直流電力を交流電力に変換する電力変換装置(3)と、
上記メインバッテリと上記電力変換装置との間の通電、遮断を切り替えるスイッチ(4a、4b)と、
上記スイッチと上記電力変換装置との間の電源配線(11P、11N)に接続された第1DC−DCコンバータ(51)と、
上記スイッチと上記メインバッテリとの間の電源配線(12P、12N)に接続された第2DC−DCコンバータ(52)と、を有し、
上記第1DC−DCコンバータと上記第2DC−DCコンバータとは、上記車両における互いに離れた部位に搭載されており、
上記第1DC−DCコンバータと上記第2DC−DCコンバータとは、一方が、上記車両の車室(62)外に搭載されており、他方が、上記車両における上記車室内に搭載されている、車両用電源システム。
【請求項2】
上記第1DC−DCコンバータ及び上記第2DC−DCコンバータの少なくとも一方は、双方向DC−DCコンバータである、請求項1に記載の車両用電源システム。
【請求項3】
車両(6)に搭載された車両用電源システム(1)であって、
メインバッテリ(2)と、
上記メインバッテリの直流電力を交流電力に変換する電力変換装置(3)と、
上記メインバッテリと上記電力変換装置との間の通電、遮断を切り替えるスイッチ(4a、4b)と、
上記スイッチと上記電力変換装置との間の電源配線(11P、11N)に接続された第1DC−DCコンバータ(51)と、
上記スイッチと上記メインバッテリとの間の電源配線(12P、12N)に接続された第2DC−DCコンバータ(52)と、を有し、
上記第1DC−DCコンバータと上記第2DC−DCコンバータとは、上記車両における互いに離れた部位に搭載されており、
上記第1DC−DCコンバータ及び上記第2DC−DCコンバータの少なくとも一方は、双方向DC−DCコンバータである、車両用電源システム。
【請求項4】
上記第1DC−DCコンバータと上記第2DC−DCコンバータとは、上記車両におけるキャビンを挟んで反対側の位置に搭載されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用電源システム。
【請求項5】
上記第1DC−DCコンバータと上記第2DC−DCコンバータとは、一方が、上記車両のエンジンルーム(61)に搭載されており、他方が、上記車両の車室(62)内に搭載されている、請求項4に記載の車両用電源システム。
【請求項6】
上記第1DC−DCコンバータは、上記エンジンルームに搭載されており、上記第2DC−DCコンバータは、上記車室内に搭載されている、請求項5に記載の車両用電源システム。
【請求項7】
上記第1DC−DCコンバータは、上記電力変換装置と一体に設けられている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両用電源システム。
【請求項8】
上記第2DC−DCコンバータは、上記メインバッテリと一体に設けられている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両用電源システム。
【請求項9】
上記第2DC−DCコンバータは、上記スイッチと一体に設けられている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の車両用電源システム。
【請求項10】
上記第2DC−DCコンバータは、上記メインバッテリを監視、制御するバッテリ監視ユニット(14)と一体に設けられている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の車両用電源システム。
【請求項11】
上記第1DC−DCコンバータと上記第2DC−DCコンバータとは、互いに出力電力が異なる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の車両用電源システム。
【請求項12】
上記第2DC−DCコンバータは、上記第1DC−DCコンバータよりも、出力電力が小さい、請求項11に記載の車両用電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された車両用電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車等の車両に搭載された、車両用電源システムがある。車両用電源システムとしては、メインバッテリの直流電力を交流電力に変換するインバータと、メインバッテリの直流電力を降圧するDC−DCコンバータとを備えたものがある。そして、メインバッテリとインバータとの間には、両者間の通電、非通電を切り替えるスイッチが設けてある。
【0003】
特許文献1には、スイッチとインバータとの間の電源配線に接続された第1DC−DCコンバータと、メインバッテリとスイッチとの間の電源配線に接続された第2DC−DCコンバータとを備えた電源システムが、開示されている。
上記のような構成の電源システムとすることで、スイッチが故障した場合にも、第2DC−DCコンバータによってサブバッテリへの給電を行うことができる。また、第1DC−DCコンバータと第2DC−DCコンバータとのいずれか一方が故障した場合にも、他方のDC−DCコンバータを介して、サブバッテリへの給電を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−132402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記電源システムにおいても、第1DC−DCコンバータと第2DC−DCコンバータとの双方が故障した場合には、サブバッテリへの給電が行えず、車両の停止を招くこととなる。また、DC−DCコンバータ自体の故障ではなくても、DC−DCコンバータと他の機器との間の配線が断線した場合にも、車両の停止につながる。
【0006】
DC−DCコンバータの故障原因としては、例えば、車両衝突、被水、外来の強電波の影響などが考えられる。その一方で、2つのDC−DCコンバータを車両に搭載する場合、配線等の関係上、同一部位に搭載することが考えられる。そうすると、上記のような故障原因を考えると、2つのDC−DCコンバータが共に故障する事態は充分に考えられる。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、非常時においても車両の運行可能な状態を維持しやすい、電源システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、車両(6)に搭載された車両用電源システム(1)であって、
メインバッテリ(2)と、
上記メインバッテリの直流電力を交流電力に変換する電力変換装置(3)と、
上記メインバッテリと上記電力変換装置との間の通電、非通電を切り替えるスイッチ(4a、4b)と、
上記スイッチと上記電力変換装置との間の電源配線(11P、11N)に接続された第1DC−DCコンバータ(51)と、
上記スイッチと上記メインバッテリとの間の電源配線(12P、12N)に接続された第2DC−DCコンバータ(52)と、を有し、
上記第1DC−DCコンバータと上記第2DC−DCコンバータとは、上記車両における互いに離れた部位に搭載されており、
上記第1DC−DCコンバータと上記第2DC−DCコンバータとは、一方が、上記車両の車室(62)外に搭載されており、他方が、上記車両における上記車室内に搭載されている、車両用電源システムにある。
本発明の他の態様は、車両(6)に搭載された車両用電源システム(1)であって、
メインバッテリ(2)と、
上記メインバッテリの直流電力を交流電力に変換する電力変換装置(3)と、
上記メインバッテリと上記電力変換装置との間の通電、遮断を切り替えるスイッチ(4a、4b)と、
上記スイッチと上記電力変換装置との間の電源配線(11P、11N)に接続された第1DC−DCコンバータ(51)と、
上記スイッチと上記メインバッテリとの間の電源配線(12P、12N)に接続された第2DC−DCコンバータ(52)と、を有し、
上記第1DC−DCコンバータと上記第2DC−DCコンバータとは、上記車両における互いに離れた部位に搭載されており、
上記第1DC−DCコンバータ及び上記第2DC−DCコンバータの少なくとも一方は、双方向DC−DCコンバータである、車両用電源システムにある。
【発明の効果】
【0009】
上記車両用電源システムにおいては、上記第1DC−DCコンバータと上記第2DC−DCコンバータとが、車両における互いに離れた部位に搭載されている。そのため、2つのDC−DCコンバータが共に故障する事態を避けやすい。そして、上記のように設けられた第1DC−DCコンバータと第2DC−DCコンバータとの少なくとも一方が機能することで、車両の運行が可能な状態を維持することができる。それゆえ、非常時においても、車両の運行可能な状態を維持しやすい。
【0010】
以上のごとく、上記態様によれば、非常時においても車両の運行可能な状態を維持しやすい、電源システムを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1における、車両用電源システムの回路図。
図2】実施形態1における、第1DC−DCコンバータ及び第2DC−DCコンバータの車両への搭載位置を示す説明図。
図3】実施形態1における、パワーコントロールユニット及びバッテリーパックの構成を説明する、車両用電源システムの回路図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
車両用電源システムに係る実施形態について、図1図3を参照して説明する。
本実施形態の車両用電源システム1は、車両に搭載された電源システムである。
車両用電源システム1は、図1に示すごとく、メインバッテリ2と、電力変換装置3と、スイッチ4a、4bと、第1DC−DCコンバータ51と、第2DC−DCコンバータ52と、を有する。
【0013】
電力変換装置3は、メインバッテリ2の直流電力を交流電力に変換する。スイッチ4a、4bは、メインバッテリ2と電力変換装置3との間の通電、遮断を切り替える。第1DC−DCコンバータ51は、スイッチ4a、4bと電力変換装置3との間の電源配線11P、11Nに接続されている。第2DC−DCコンバータ52は、スイッチ4a、4bとメインバッテリ2との間の電源配線12P、12Nに接続されている。
【0014】
図2に示すごとく、第1DC−DCコンバータ51と第2DC−DCコンバータ52とは、車両6における互いに離れた部位に搭載されている。
具体的には、第1DC−DCコンバータ51と第2DC−DCコンバータ52とは、一方が、車両6のエンジンルーム61に搭載されており、他方が、車両6におけるエンジンルーム61とは異なる部位に搭載されている。さらに具体的には、第1DC−DCコンバータ51と第2DC−DCコンバータ52とは、一方が、エンジンルーム61に搭載されており、他方が、車両6の車室62内に搭載されている。
本実施形態においては、第1DC−DCコンバータ51が、エンジンルーム61に搭載されており、第2DC−DCコンバータ52が、車室62内に搭載されている。
【0015】
ここで、車室62とは、乗員が乗り込む居住空間(いわゆるキャビン)のみならず、トランクルーム、ラゲッジスペース、さらには、キャビンとトランクルームあるいはラゲッジスペースとの間の空間等も含む。図2においては、キャビンとトランクルームとの間の空間に、第2DC−DCコンバータ52が搭載された態様を示す。
【0016】
また、第2DC−DCコンバータ52は、車両6の前後方向において、その全長の中央よりも後側に配置されている。一方、第1DC−DCコンバータ51は、車両6の中央よりも前側に配置されている。
車室62内における第2DC−DCコンバータ52の具体的な配置位置としては、上記の箇所に限らず、例えば、シートの下側、運転席と助手席との間、センターコンソールなどとすることもできる。或いは、トランクルーム、ラゲッジスペース等に、第2DC−DCコンバータ52を配置してもよい。
【0017】
本実施形態の車両用電源システム1は、ハイブリッド自動車に搭載される。
ハイブリッド自動車は、図1に示すごとく、交流の回転電機131と、エンジン132とを備える。そして、回転電機131とエンジン132との少なくとも一方によって、駆動輪133を駆動するよう構成されている。
【0018】
電力変換装置3は、出力配線31を介して、交流の回転電機13に接続されている。そして、電力変換装置3は、電源配線11P、11Nから供給される直流電力を交流電力に変換して、出力配線31を介して、回転電機13を駆動することができるよう構成されている。すなわち、電力変換装置3は、インバータを備える。
【0019】
メインバッテリ2と電力変換装置3とは、正極の電源配線12P、11Pと、負極の電源配線12N、11Nとによって、接続されている。正極の電源配線12P、11Pにスイッチ4aが設けられ、負極の電源配線12N、11Nにスイッチ4bが設けられている。すなわち、スイッチ4aが、正極の電源配線12P、11Pにおける通電、遮断を切り替える。スイッチ4bが、負極の電源配線12N、11Nにおける通電、遮断を切り替える。2つのスイッチ4a、4bは、一体化されて、システムメインリレー4(以下において「SMR4」という。)を構成している。
【0020】
メインバッテリ2とスイッチ4a、4bとの間の電源配線12P、12Nに、メインバッテリ2を監視、制御するバッテリ監視ユニット14が接続されている。
第1DC−DCコンバータ51は、スイッチ4a、4bと電力変換装置3との間の、正負一対の電源配線11P、11Nに接続されている。第1DC−DCコンバータ51における、電源配線11P、11Nと反対側には、サブバッテリ15が接続されている。そして、第1DC−DCコンバータ51は、メインバッテリ2の直流電力を降圧してサブバッテリ15に供給することができる。
【0021】
また、第1DC−DCコンバータ51は、サブバッテリ15の直流電力を昇圧して、電源配線11P、11Nへ供給することもできる。第1DC−DCコンバータ51から電源配線11P、11Nへ供給された電力は、電力変換装置3に供給されて回転電機131の駆動に用いられ、或いは、メインバッテリ2の充電に用いられる。
このように、第1DC−DCコンバータ51は、電源配線11P、11N側からサブバッテリ15側へ降圧することができると共に、サブバッテリ15側から電源配線11P、11N側へ昇圧することができるよう構成された、双方向DC−DCコンバータである。
【0022】
第2DC−DCコンバータ52は、メインバッテリ2とスイッチ4a、4bとの間の、正負一対の電源配線12P、12Nに接続されている。第2DC−DCコンバータ52における、電源配線12P、12Nと反対側には、サブバッテリ15が接続されている。つまり、第1DC−DCコンバータ51と、第2DC−DCコンバータ52との双方が、サブバッテリ15に接続されている。
【0023】
第2DC−DCコンバータ52も、メインバッテリ2の直流電力を降圧してサブバッテリ15に供給することができる。
第2DC−DCコンバータ52における低圧側は、第1DC−DCコンバータ51における低圧側と接続されている。つまり、第1DC−DCコンバータ51と第2DC−DCコンバータ52とは、その低圧側において互いに接続されると共に、サブバッテリ15に接続されている。
第2DC−DCコンバータ52は、第1DC−DCコンバータ51と同様に、双方向DC−DCコンバータであってもよいし、降圧のみを行うDC−DCコンバータであってもよい。
【0024】
サブバッテリ15は、メインバッテリ2よりも低電圧のバッテリである。例えば、メインバッテリ2の電圧は300V程度であり、サブバッテリ15の電圧は12V程度である。サブバッテリ15は、例えば、パワーステアリング、エアコン、ランプ等の補機16に電気的に接続されている。また、サブバッテリ15の電力は、例えば、車両用のECU(電子制御ユニット)の作動、ハイブリッドシステムの起動にも用いられる。
【0025】
また、第1DC−DCコンバータ51と第2DC−DCコンバータ52とは、互いに出力電力が異なる。本実施形態においては、第2DC−DCコンバータ52は、第1DC−DCコンバータ51よりも、出力電力が小さい。そして、正常運転時においては、主として、第1DC−DCコンバータ51によって、サブバッテリ15への充電が行われる。第2DC−DCコンバータ52は、補助的に、サブバッテリ15への充電を行う。或いは、第2DC−DCコンバータ52は、非常時のバックアップ用として、正常運転時においては稼働しないように制御することもできる。
【0026】
図3に示すごとく、第1DC−DCコンバータ51は、電力変換装置3と一体に設けられている。例えば、第1DC−DCコンバータ51は、電力変換装置3と共にパワーコントロールユニット101を構成し、一つの筐体に収容された構成とすることができる。
また、第2DC−DCコンバータ52は、メインバッテリ2と一体に設けられている。例えば、第2DC−DCコンバータ52は、メインバッテリ2と共に、バッテリーパック102内に搭載された構成とすることができる。本実施形態においては、バッテリーパック102に、メインバッテリ2及び第2DC−DCコンバータ52のほか、SMR4及びバッテリ監視ユニット14も、搭載されている。つまり、第2DC−DCコンバータ52は、スイッチ4a、4bとも、バッテリ監視ユニット14とも、一体に設けられている。
【0027】
そして、図2に示すごとく、パワーコントロールユニット101は、車両6のエンジンルーム61に搭載されている。また、バッテリーパック102は、車両6の車室62に搭載されている。
【0028】
次に、本実施形態の作用効果につき説明する。
上記車両用電源システム1においては、第1DC−DCコンバータ51と第2DC−DCコンバータ52とが、車両6における互いに離れた部位に搭載されている。そのため、2つのDC−DCコンバータが共に故障する事態を避けやすい。すなわち、仮に、2つのDC−DCコンバータが車両6の同一部位に搭載されていると、例えば、車両衝突、被水、外来の強電波の影響などがあった場合、2つのDC−DCコンバータが共に故障する可能性が比較的高い。
【0029】
これに対して、上記のような、第1DC−DCコンバータ51及び第2DC−DCコンバータ52の車両6への搭載とすることで、2つのDC−DCコンバータが共に故障する可能性を低減することができる。また、DC−DCコンバータと他の機器との間の配線の断線についても、2つのDC−DCコンバータが同一部位に搭載されている場合よりも、回避しやすい。
そして、上記のように設けられた第1DC−DCコンバータ51と第2DC−DCコンバータ52との少なくとも一方が機能することで、車両6の運行が可能な状態を維持することができる。それゆえ、非常時においても、車両6の運行可能な状態を維持しやすい。
【0030】
例えば、第1DC−DCコンバータ51が故障した場合を考える。
この場合、第2DC−DCコンバータ52を介して、サブバッテリ15への充電を行うことができる。
すなわち、メインバッテリ2の高圧の直流電力を、第2DC−DCコンバータ52にて降圧して、サブバッテリ15へ供給する。これにより、サブバッテリ15の電力が不足することなく、車両動作を継続させることができる。
【0031】
第2DC−DCコンバータ52が故障した場合は、第1DC−DCコンバータ51を介して、サブバッテリ15への充電を行うことができる。
【0032】
また、SMR4が故障して、スイッチ4a、4bの少なくとも一方が通電状態とできない状態となった場合には、第2DC−DCコンバータ52と第1DC−DCコンバータ51とを介して、メインバッテリ2から電力変換装置3へ電力を供給する。これにより、車両6の運行が可能となる。なお、サブバッテリ15への充電は、第2DC−DCコンバータ52を介して、行うことができる。
【0033】
第1DC−DCコンバータ51と第2DC−DCコンバータ52とは、一方が、車両6のエンジンルーム61に搭載されており、他方が、車両6におけるエンジンルーム61とは異なる部位に搭載されている。これにより、2つのDC−DCコンバータが共に故障することを、より効果的に避けやすくなる。
【0034】
第1DC−DCコンバータ51と第2DC−DCコンバータ52とは、一方が、エンジンルーム61に搭載されており、他方が、車室62内に搭載されている。車室62内は、比較的故障の要因の少ない環境であるため、車室62内に搭載されたDC−DCコンバータの故障を抑制することができる。その結果、2つのDC−DCコンバータが共に故障する事態を、より効果的に防ぐことができる。
【0035】
特に、本実施形態においては、第1DC−DCコンバータ51がエンジンルーム61に搭載され、第2DC−DCコンバータ52が車室62内に搭載されている。これにより、2つのDC−DCコンバータの車両6への搭載性を確保しつつ、DC−DCコンバータと他の機器との間の配線の簡素化等を図りやすい。すなわち、電力変換装置3や回転電機131は通常、エンジンルーム61に搭載されるため、電力変換装置3に接続される第1DC−DCコンバータ51をエンジンルーム61に搭載することで、配線の簡素化を図ることができる。一方、メインバッテリ2は車室62内に一般的に搭載されるため、メインバッテリ2に接続される第2DC−DCコンバータ52を車室62内に搭載することで、配線の簡素化を図ることができる。
【0036】
また、第1DC−DCコンバータ51は、電力変換装置3と一体に設けられている。これにより、第1DC−DCコンバータ51と電力変換装置3との間の配線をより短くすることができる。それゆえ、この配線に起因するノイズの低減を図ることができる。また、第1DC−DCコンバータ51と電力変換装置3との間の断線などの可能性も、低減することができる。
【0037】
第2DC−DCコンバータ52は、メインバッテリ2、スイッチ4a、4b、及びバッテリ監視ユニット14と一体に設けられている。これにより、第2DC−DCコンバータ52と、メインバッテリ2、スイッチ4a、4b、及びバッテリ監視ユニット14との間の配線をより短くすることができる。それゆえ、これらの配線に起因するノイズの低減を図ることができる。また、これらの配線の断線などの可能性も、低減することができる。
【0038】
第1DC−DCコンバータ51と第2DC−DCコンバータ52とは、互いに出力電力が異なる。具体的には、第2DC−DCコンバータ52は、第1DC−DCコンバータ51よりも、出力電力が小さい。これにより、第2DC−DCコンバータ52の体格を小さくすることができ、その結果、車両6への第2DC−DCコンバータ52の搭載性を向上させることができる。特に、第2DC−DCコンバータ52を車室62内に搭載する際に、その配置自由度を向上させることができる。また、第2DC−DCコンバータ52の出力電力を小さくすることで、第2DC−DCコンバータ52の冷却手段を簡素化したり、廃止したりすることも考えられる。例えば、第1DC−DCコンバータ51の冷却を液冷式とするのに対して、第2DC−DCコンバータ52の冷却を空冷式とすることもできる。その結果、さらに第2DC−DCコンバータ52の搭載性を向上させることができる。
【0039】
以上のごとく、本実施形態によれば、非常時においても車両の運行可能な状態を維持しやすい、電源システムを提供することができる。
【0040】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
例えば、上記実施形態においては、ハイブリッド自動車に搭載した車両用電源システムについて説明したが、例えば、電気自動車、燃料電池車等に搭載した車両用電源システムとすることもできる。
【0041】
また、上記実施形態においては、第2DC−DCコンバータを、メインバッテリ、SMR及びバッテリ制御部と一体に設けた構成を示したが、第2DC−DCコンバータを、メインバッテリ、SMR、バッテリ制御部のうちのいずれか1つ又は2つと一体に設けてもよい。
【0042】
また、上記実施形態においては、DC−DCコンバータとして、第1DC−DCコンバータと第2DC−DCコンバータとの2つを備えた車両用電源システムを示したが、DC−DCコンバータを3つ以上備えた車両用電源システムとすることもできる。
【符号の説明】
【0043】
1 車両用電源システム
11P、11N、12P、12N 電源配線
2 メインバッテリ
3 電力変換装置
4a、4b スイッチ
51 第1DC−DCコンバータ
52 第2DC−DCコンバータ
6 車両
図1
図2
図3