特許第6790966号(P6790966)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790966
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 13/00 20060101AFI20201116BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20201116BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   F25B13/00 A
   F25B49/02 570Z
   F25B1/00 396B
   F25B1/00 396Z
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-70186(P2017-70186)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-173196(P2018-173196A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 英二
(72)【発明者】
【氏名】岩田 育弘
(72)【発明者】
【氏名】岡本 哲也
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/157764(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/140874(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/114774(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/140883(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/174054(WO,A1)
【文献】 特開2002−267232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 13/00
F25B 1/00
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(21)、室外熱交換器(23)及びレシーバ(24)を有している室外ユニット(2)と室内ユニット(3a、3b)とが接続されることによって構成された冷媒回路(10)と、前記冷媒回路の動作を制御する制御部(19)と、を有しており、不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素を含む非共沸混合冷媒が前記冷媒回路に封入された空気調和装置において、
前記制御部は、前記冷媒回路のうち前記室外ユニットの前記室外熱交換器及び前記レシーバに前記非共沸混合冷媒を集めるポンプダウン運転を行い、前記ポンプダウン運転によって前記室外ユニットに集められた前記非共沸混合冷媒の、前記圧縮機の吐出側における圧力及び前記室外熱交換器又は前記レシーバにおける温度により特定される点を圧力と温度とをパラメータとするグラフにプロットした場合に、前記点が、前記非共沸混合冷媒の組成比が前記不均化反応に対する許容範囲の上限値である場合の飽和圧力及び飽和温度の関係を示した曲線に対し、前記不均化反応を起こす領域に存在する場合に警告を発報する処理を行う、
空気調和装置(1)。
【請求項2】
前記制御部は、前記ポンプダウン運転及び前記処理を定期的に行う、
請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記処理として、前記圧縮機の吐出側における前記非共沸混合冷媒の圧力、及び、前記室外熱交換器又は前記レシーバにおける前記非共沸混合冷媒の温度に基づいて、前記非共沸混合冷媒の組成比を得る組成比検知を行い、前記組成比検知によって得られた前記非共沸混合冷媒の組成比が前記不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成の許容範囲を外れた状態であるか否かの判断を行前記組成比検知によって得られた前記非共沸混合冷媒の組成比が前記不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成の許容範囲を外れた状態である場合に警告を発報する、
請求項1又は2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記レシーバは、前記非共沸混合冷媒を抽出するためのサンプリングポート(29)を有している、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気調和装置。
【請求項5】
前記非共沸混合冷媒は、HFO−1123を含んでいる、
請求項1〜のいずれか1項に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気調和装置の冷媒回路に封入される冷媒として、オゾン層の破壊を防止するために、HFC−32(ジフルオロメタン)や、HFC−32及びHFC−125(ペンタフルオロエタン)の混合物からなるHFC−410A、HFC−134a(1、1、1、2−テトラフルオロエタン)、等が使用されている。しかし、これらの冷媒は、GWP(地球温暖化係数)が大きいという問題がある。
【0003】
これに対して、特許文献1(国際公開第2012/157764号)に示されるように、HFO−1123(1、1、2−トリフルオロエチレン)が、オゾン層及び地球温暖化に対する影響が少ないことが知られている。そして、特許文献1では、HFO−1123にHFC−32等を混合した混合冷媒を冷媒回路に封入して空気調和装置を構成することが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HFO−1123は、高圧、高温の条件下で何らかのエネルギーが付与されると、不均化反応(自己分解反応)を起こす性質を有している。そして、冷媒回路内でHFO−1123が不均化反応を起こすと、急激な圧力上昇や急激な温度上昇が発生し、これにより、冷媒回路を構成する機器や配管が損傷して、冷媒や反応生成物が冷媒回路外に放出されるおそれがある。このため、不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素を冷媒として冷媒回路に封入して空気調和装置を構成する場合には、不均化反応を起こしにくくする必要がある。これに対して、不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素に他の冷媒を混合した混合冷媒を使用すれば、混合冷媒中における不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成が小さくなり、不均化反応を起こすおそれを小さくすることができる。
【0005】
しかし、不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素に混合される冷媒が、不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素と沸点が異なると、不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素と他の冷媒との混合冷媒は、低沸点冷媒と高沸点冷媒とが混合された非共沸混合冷媒となる。このため、非共沸混合冷媒を使用した空気調和装置では、冷房運転や暖房運転のような空調運転時の放熱や蒸発を伴う非共沸混合冷媒の循環によって、冷媒回路において、低沸点冷媒リッチの組成比になる部分と高沸点冷媒リッチの組成比になる部分とが発生し、その結果、冷媒回路の各部に不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素が偏在することになる。そして、このような状態において非共沸混合冷媒の漏洩が発生した場合には、冷媒回路において、非共沸混合冷媒の漏洩が発生していない状態ではあり得ない程度まで、非共沸混合冷媒中における不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成が大きくなるおそれがあり、これにより、不均化反応を起こすおそれがある。また、充填不良によって冷媒回路に封入された非共沸混合冷媒の組成比が所望の組成比になっていない場合にも、冷媒回路において、所望の組成比の非共沸混合冷媒が冷媒回路に充填されている状態ではあり得ない程度まで、非共沸混合冷媒中における不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成が大きくなるおそれがあり、これにより、不均化反応を起こすおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、冷媒回路に不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素を含む非共沸混合冷媒が封入された空気調和装置において、非共沸混合冷媒の漏洩や充填不良が発生しても、不均化反応を起こすことを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点にかかる空気調和装置は、室外ユニットと室内ユニットとが接続されることによって構成された冷媒回路と、冷媒回路の動作を制御する制御部と、を有しており、不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素を含む非共沸混合冷媒が冷媒回路に封入されている。制御部は、冷媒回路のうち室外ユニットに含まれる部分に非共沸混合冷媒を集めるポンプダウン運転を行い、ポンプダウン運転によって室外ユニットに集められた非共沸混合冷媒の圧力及び温度に基づいて非共沸混合冷媒の組成比を得る組成比検知を行い、組成比検知によって得られた非共沸混合冷媒の組成比が不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成の許容範囲を外れた組成比である場合に警告を発報する。
【0008】
ここでは、上記のように、まず、ポンプダウン運転によって非共沸混合冷媒を室外ユニットに集めるようにしている。ここで、ポンプダウン運転とは、室外ユニットから室内ユニットへの冷媒の流れを止めた状態で室内ユニットから室外ユニットに冷媒を流す運転である。そして、ポンプダウン運転によって、冷媒回路の各部に偏在している不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素を含む非共沸混合冷媒のほぼ全てを室外ユニットに集めて、次に行われる組成比検知に適した状態にすることができる。そして、次に、上記のように、ポンプダウン運転によって室外ユニットに集められた非共沸混合冷媒の圧力及び温度に基づいて非共沸混合冷媒の組成比を得る組成比検知を行うようにしている。ここで、組成比検知は、非共沸混合冷媒の組成比毎に飽和圧力及び飽和温度の関係式やデータテーブルを準備しておき、室外ユニットに集められた非共沸混合冷媒の圧力及び温度から非共沸混合冷媒の組成比を得るものである。そして、上記のように、組成比検知によって得られた非共沸混合冷媒の組成比が不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成の許容範囲を外れた組成比である場合には、不均化反応を起こすおそれがあるものと判定して、警告を発報し、空気調和装置の運転を停止することができる。ここで、警告は、空気調和装置に表示するものであってもよいし、空気調和装置がサービスセンタ等にネットワーク接続されている場合には、サービスセンタ等に知らせるものであってもよい。一方、組成比検知によって得られた非共沸混合冷媒の組成比が不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成の許容範囲内の組成比である場合には、不均化反応を起こすおそれがないものと判定して、空気調和装置の運転を継続することができる。このように、ここでは、非共沸混合冷媒の漏洩や充填不良によって非共沸混合冷媒に含まれる不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成が許容範囲を外れた状態になっていないかどうかをチェックすることができる。
【0009】
これにより、ここでは、冷媒回路に不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素を含む非共沸混合冷媒が封入された空気調和装置において、非共沸混合冷媒の漏洩や充填不良が発生しても、不均化反応を起こすことを抑えることができる。
【0010】
第2の観点にかかる空気調和装置は、第1の観点にかかる空気調和装置において、制御部が、ポンプダウン運転及び組成比検知を定期的に行う。
【0011】
ここでは、上記のように、ポンプダウン運転及び組成比検知を定期的に行うようにしているため、不均化反応に対する信頼性を向上させることができる。
【0012】
第3の観点にかかる空気調和装置は、第1又は第2の観点にかかる空気調和装置において、室外ユニットが、圧縮機、室外熱交換器及びレシーバを有しており、ポンプダウン運転は、室外熱交換器及びレシーバに非共沸混合冷媒を集める運転である。
【0013】
ここでは、上記のように、ポンプダウン運転が室外熱交換器及びレシーバに非共沸混合冷媒を集める運転であるため、高圧の液状態で大量の非共沸混合冷媒を集めることができ、これにより、組成比検知の精度を向上させることができる。
【0014】
第4の観点にかかる空気調和装置は、第3の観点にかかる空気調和装置において、組成比検知が、圧縮機の吐出側における非共沸混合冷媒の圧力、及び、室外熱交換器又はレシーバにおける非共沸混合冷媒の温度に基づいて、非共沸混合冷媒の組成比を得る。
【0015】
ここでは、ポンプダウン運転によって非共沸混合冷媒が高圧の飽和液状態で集められるため、非共沸混合冷媒の飽和圧力及び飽和温度は、圧縮機の吐出側における非共沸混合冷媒の圧力、及び、室外熱交換器又はレシーバにおける非共沸混合冷媒の温度に近い値である。このため、ここでは、上記のように、圧縮機の吐出側における非共沸混合冷媒の圧力、及び、室外熱交換器又はレシーバにおける非共沸混合冷媒の温度に基づいて、正確な非共沸混合冷媒の組成比を得ることができる。
【0016】
第5の観点にかかる空気調和装置は、第3又は第4の観点にかかる空気調和装置において、レシーバが、非共沸混合冷媒を抽出するためのサンプリングポートを有している。
【0017】
ここでは、上記のように、レシーバが非共沸混合冷媒を抽出するためのサンプリングポートを有しているため、必要に応じて、非共沸混合冷媒の組成比を詳細に分析することができる。
【0018】
第6の観点にかかる空気調和装置は、第1〜第5の観点のいずれかにかかる空気調和装置において、非共沸混合冷媒が、HFO−1123を含んでいる。
【0019】
HFO−1123は、不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の一種であり、沸点がHFC−32等の他の冷媒よりも低い。このため、HFO−1123を含む非共沸混合冷媒では、HFO−1123が低沸点冷媒となって、冷媒回路の各部に偏在することになる。
【0020】
しかし、ここでは、上記のポンプダウン運転によって、冷媒回路の各部に偏在するHFO−1123を含む非共沸混合冷媒のほぼ全てを室外ユニットに集めることができ、そして、上記の組成比検知によって、HFO−1123を含む非共沸混合冷媒の組成比を得ることができる。
【0021】
これにより、ここでは、冷媒回路に不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素としてHFO−1123を含む非共沸混合冷媒が封入された空気調和装置において、非共沸混合冷媒の漏洩や充填不良が発生しても、不均化反応を起こすことを抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、ポンプダウン運転及び組成比検知を行うことによって、非共沸混合冷媒に含まれる不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成が許容範囲を外れた状態になっていないかどうかをチェックすることができるため、非共沸混合冷媒の漏洩や充填不良が発生しても、不均化反応を起こすことを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態にかかる空気調和装置の概略構成図である。
図2】不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素を含む混合冷媒が不均化反応を起こす圧力及び温度の関係を示す図である。
図3】ポンプダウン運転及び組成比検知を示すフローチャートである。
図4】不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素を含む非共沸混合冷媒の飽和温度と飽和圧力の関係を示す図である。
図5】変形例1にかかる空気調和装置の概略構成図である。
図6】変形例2にかかる空気調和装置の概略構成図である。
図7】変形例3にかかる空気調和装置の概略構成図である。
図8】変形例3にかかる空気調和装置を構成する室外ユニットの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明にかかる空気調和装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。尚、本発明にかかる空気調和装置の実施形態の具体的な構成は、下記の実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0025】
(1)構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる空気調和装置1の概略構成図である。
【0026】
<全体>
空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことによって、建物等の室内の冷房及び暖房を行うことが可能な装置である。空気調和装置1は、主として、室外ユニット2と、室内ユニット3a、3bと、室外ユニット2と室内ユニット3a、3bとを接続する液冷媒連絡管4及びガス冷媒連絡管5と、室外ユニット2及び室内ユニット3a、3bの構成機器を制御する制御部19と、を有している。そして、空気調和装置1の蒸気圧縮式の冷媒回路10は、室外ユニット2と、室内ユニット3a、3bとが冷媒連絡管4、5を介して接続されることによって構成されている。
【0027】
<室内ユニット>
室内ユニット3a、3bは、室内や天井裏に設置されており、冷媒回路10の一部を構成している。尚、室内ユニット3aと室内ユニット3bとは同様の構成であるため、ここでは、室内ユニット3aの構成のみ説明し、室内ユニット3bの構成については、それぞれ、室内ユニット3aの各部を示す添え字「a」の代わりに添え字「b」を付して、各部の説明を省略する。室内ユニット3aは、主として、室内膨張弁31aと、室内熱交換器32aと、室内ファン33aと、を有している。
【0028】
室内膨張弁31aは、冷媒の減圧を行う膨張機構であり、ここでは、電動膨張弁が使用されている。
【0029】
室内熱交換器32aは、液冷媒連絡管4及びガス冷媒連絡管5を通じて室外ユニット2とやりとりされる冷媒と室内空気との熱交換を行う熱交換器である。室内熱交換器32aの液側は、液冷媒連絡管4に接続されており、室内熱交換器32aのガス側は、ガス冷媒連絡管5に接続されている。
【0030】
室内ファン33aは、室内空気を室内熱交換器32aに送るファンである。室内ファン33aは、室内ファン用モータ34aによって駆動される。
【0031】
<室外ユニット>
室外ユニット2は、室外に設置されており、冷媒回路10の一部を構成している。室外ユニット2は、主として、圧縮機21と、四路切換弁22と、室外熱交換器23と、レシーバ24と、室外膨張弁25と、液側閉鎖弁26と、ガス側閉鎖弁27と、室外ファン28と、を有している。
【0032】
圧縮機21は、冷媒を圧縮するための機器であり、例えば、容積式の圧縮要素(図示せず)が圧縮機用モータ21aによって回転駆動される圧縮機が使用されている。圧縮機21の吸入側及び吐出側は、四路切換弁22に接続されている。
【0033】
四路切換弁22は、室外熱交換器23を冷媒の放熱器として機能させる場合(以下、「放熱状態」とする)には圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23のガス側とを接続し(図1の四路切換弁22の実線を参照)、室外熱交換器23を冷媒の蒸発器として機能させる場合(以下、「蒸発状態」とする)には圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23のガス側とを接続するように(図1の四路切換弁22の破線を参照)、冷媒回路10内における冷媒の流れを切り換えることが可能な切換機構である。
【0034】
室外熱交換器23は、液冷媒連絡管4及びガス冷媒連絡管5を通じて室内ユニット3とやりとりされる冷媒と室外空気との熱交換を行う熱交換器である。室外熱交換器23の液側は、レシーバ24に接続されており、室外熱交換器23のガス側は、四路切換弁22に接続されている。
【0035】
レシーバ24は、液冷媒連絡管4を通じて室内ユニット3とやりとりされる冷媒を一時的に溜めるための容器である。レシーバ24の一端側は、室外熱交換器23の液側に接続されており、レシーバ24の他端側は、室外膨張弁25に接続されている。
【0036】
室外膨張弁25は、冷媒の減圧を行う膨張機構であり、ここでは、電動膨張弁が使用されている。室外膨張弁25の一端側は、レシーバ24に接続されており、室外膨張弁25の他端側は、液側閉鎖弁26に接続されている。
【0037】
液側閉鎖弁26は、室外ユニット2と液冷媒連絡管4との接続部に設けられた弁機構であり、ここでは、冷媒充填等に使用されるサービスポート26a付きの手動弁が使用されている。液側閉鎖弁26の一端側は、室外膨張弁25に接続されており、液側閉鎖弁26の他端側は、液冷媒連絡管4に接続されている。ガス側閉鎖弁27は、室外ユニット2とガス冷媒連絡管5との接続部に設けられた弁機構であり、ここでは、冷媒充填等に使用されるサービスポート27a付きの手動弁が使用されている。ガス側閉鎖弁27の一端側は、四路切換弁22に接続されており、ガス側閉鎖弁27の他端側は、ガス冷媒連絡管5に接続されている。尚、サービスポート26a、27aは、冷媒回路10のうち室外ユニット2に含まれる部分に設けられていればよく、閉鎖弁26、27に設けられたものに限定されない。
【0038】
室外ファン28は、室外空気を室外熱交換器23に送るファンである。室外ファン28は、室外ファン用モータ28aによって駆動される。
【0039】
室外ユニット2には、各種のセンサが設けられている。具体的には、室外ユニット2には、圧縮機21の吐出側における冷媒の圧力Pdを検出する吐出圧力センサ11が設けられている。また、室外ユニット2には、室外熱交換器23における冷媒の温度Tlを検出する室外熱交温度センサ12と、が設けられている。
【0040】
<冷媒連絡管>
冷媒連絡管4、5は、空気調和装置1を建物等の設置場所に設置する際に、現地にて施工される冷媒管である。液冷媒連絡管4の一端側は、室内ユニット2の液側閉鎖弁26に接続され、液冷媒連絡管5の他端側は、室内ユニット3a、3bの室内膨張弁31a、31bに接続されている。ガス冷媒連絡管5の一端側は、室内ユニット2のガス側閉鎖弁27に接続され、ガス冷媒連絡管5の他端側は、室内ユニット3a、3bの室内熱交換器32a、32bのガス側に接続されている。
【0041】
<制御部>
制御部19は、室外ユニット2や室内ユニット3a、3bに設けられた制御基板やリモコン等(図示せず)が通信接続されることによって構成されている。尚、図1においては、便宜上、室外ユニット2や室内ユニット3a、3bとは離れた位置に図示している。制御部19は、空気調和装置1(ここでは、室外ユニット2や室内ユニット3a、3b)の構成機器21、22、25、31a、31b、33a、33bの制御、すなわち、冷媒回路10の動作を含む空気調和装置1全体の運転制御を行うようになっている。
【0042】
<冷媒回路に封入される冷媒>
冷媒回路10には、不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素を含む冷媒が封入されている。このような冷媒として、オゾン層及び地球温暖化への影響がともに少なく、OHラジカルによって分解されやすい炭素−炭素二重結合を有するエチレン系のフッ化炭化水素(ヒドロフルオロオレフィン)がある。そして、ここでは、ヒドロフルオロオレフィン(HFO)の中でも、優れた性能を有するHFO−1123を含む冷媒が採用されている。
【0043】
しかし、冷媒回路内でHFO−1123が不均化反応を起こすと、急激な圧力上昇や急激な温度上昇が発生し、これにより、冷媒回路10を構成する機器や配管が損傷して、HFO−1123を含む冷媒や反応生成物が冷媒回路10外に放出されるおそれがある。
【0044】
このため、HFO−1123のような不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素を冷媒として冷媒回路10に封入する場合には、不均化反応を起こしにくくする必要がある。これに対して、不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素に他の冷媒を混合した混合冷媒を使用すれば、混合冷媒中における不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成が小さくなり、不均化反応を起こすおそれを小さくすることができる。ここで、図2は、不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素を含む混合冷媒が不均化反応を起こす圧力及び温度の関係を示す図である。図2に示される複数の曲線は、混合冷媒が不均化反応を起こす圧力及び温度の境界を示しており、不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成が小さいほど、曲線が高圧、高温の領域(図の右上側)にシフトしている。そして、これら曲線上及び上側の領域では冷媒が不均化反応を起こし、曲線よりも下側の領域では冷媒が不均化反応を起こさないことを示している。すなわち、上記のように、不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素に他の冷媒(不均化反応を起こす性質を有しない冷媒)を混合した混合冷媒を使用し、不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成を小さくすることによって、不均化反応を起こすおそれを小さくすることができるのである。ここでは、不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素としてのHFO−1123を含む冷媒として、HFO−1123と他の冷媒との混合冷媒が使用される。そして、HFO−1123と他の冷媒との混合冷媒としては、HFO−1123とHFC−32との混合物がある。ここで、HFO−1123とHFC−32の組成(wt%)は、40:60である。また、HFO−1123とHFC−134aやHFO−1234yf(2、3、3、3−テトラフルオロプロペン)等との混合物もある。ここで、HFO−1123は、他の冷媒(HFC−32等)と沸点が異なるため、このような混合冷媒は、低沸点冷媒と高沸点冷媒とが混合された非共沸混合冷媒となる。また、HFO−1123は、HFC−32等の他の冷媒よりも沸点が低いため、HFO−1123を低沸点冷媒とし、かつ、他の冷媒を高沸点冷媒とする非共沸混合冷媒となる。尚、HFO−1123に混合される他の冷媒としては、HFC−32等に限定されるものではなく、不均化反応を起こす性質を有しない冷媒であればよい。また、HFO−1123に混合される他の冷媒は、1つだけでなく2つ以上であってもよい。また、不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素としては、HFO−1123に限定されるものではなく、不均化反応を起こす性質のエチレン系やアセチレン系のフッ化炭化水素であってもよく、この場合に、不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素が他の冷媒よりも沸点が高い高沸点冷媒であってもよい。
【0045】
(2)空調運転
空気調和装置1では、空調運転として、冷房運転及び暖房運転が行われる。尚、空調運転は、制御部19によって行われる。
【0046】
<冷房運転>
冷房運転時には、四路切換弁22が放熱状態(図1の実線で示される状態)に切り換えられる。冷媒回路10において、冷凍サイクルの低圧のガス状態の非共沸混合冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルの高圧になるまで圧縮された後に吐出される。圧縮機21から吐出された高圧のガス状態の非共沸混合冷媒は、四路切換弁22を通じて、室外熱交換器23に送られる。室外熱交換器23に送られた高圧のガス状態の非共沸混合冷媒は、非共沸混合冷媒の放熱器として機能する室外熱交換器23において、室外ファン28によって冷却源として供給される室外空気と熱交換を行って放熱して、高圧の液状態の非共沸混合冷媒になる。室外熱交換器23において放熱した高圧の液状態の非共沸混合冷媒は、レシーバ24に一時的に溜められた後に、室外膨張弁25、液側閉鎖弁26及び液冷媒連絡管4を通じて、室内膨張弁31a、31bに送られる。室内膨張弁31a、31bに送られた非共沸混合冷媒は、室内膨張弁31a、31bによって冷凍サイクルの低圧まで減圧されて、低圧の気液二相状態の非共沸混合冷媒になる。室内膨張弁31a、31bで減圧された低圧の気液二相状態の非共沸混合冷媒は、室内熱交換器32a、32bに送られる。室内熱交換器32a、32bに送られた低圧の気液二相状態の非共沸混合冷媒は、室内熱交換器32a、32bにおいて、室内ファン33a、33bによって加熱源として供給される室内空気と熱交換を行って蒸発する。これにより、室内空気は冷却され、その後に、室内に供給されることで室内の冷房が行われる。室内熱交換器32a、32bにおいて蒸発した低圧のガス状態の非共沸混合冷媒は、ガス冷媒連絡管5、ガス側閉鎖弁27及び四路切換弁22を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。
【0047】
暖房運転>
暖房運転時には、四路切換弁22が蒸発状態(図1の破線で示される状態)に切り換えられる。冷媒回路10において、冷凍サイクルの低圧のガス状態の非共沸混合冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルの高圧になるまで圧縮された後に吐出される。圧縮機8から吐出された高圧のガス状態の非共沸混合冷媒は、四路切換弁22、ガス側閉鎖弁27及びガス冷媒連絡管5を通じて、室内熱交換器32a、32bに送られる。室内熱交換器32a、32bに送られた高圧のガス状態の非共沸混合冷媒は、室内熱交換器32a、32bにおいて、室内ファン33a、33bによって冷却源として供給される室内空気と熱交換を行って放熱して、高圧の液状態の非共沸混合冷媒になる。これにより、室内空気は加熱され、その後に、室内に供給されることで室内の暖房が行われる。室内熱交換器32a、32bで放熱した高圧の液状態の非共沸混合冷媒は、室内膨張弁31a、31b、液冷媒連絡管4及び液側閉鎖弁26を通じて、室外膨張弁25に送られる。室外膨張弁25に送られた非共沸混合冷媒は、室外膨張弁25によって冷凍サイクルの低圧まで減圧されて、低圧の気液二相状態の非共沸混合冷媒になる。室外膨張弁25で減圧された低圧の気液二相状態の非共沸混合冷媒は、レシーバ24に一時的に溜められた後に、室外熱交換器23に送られる。室外熱交換器23に送られた低圧の気液二相状態の非共沸混合冷媒は、非共沸混合冷媒の蒸発器として機能する室外熱交換器23において、室外ファン28によって加熱源として供給される室外空気と熱交換を行って蒸発して、低圧のガス状態の非共沸混合冷媒になる。室外熱交換器23で蒸発した低圧のガス状態の非共沸混合冷媒は、四路切換弁22を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。
【0048】
(3)冷媒の不均化反応への対策(非共沸混合冷媒の組成比の検知)
不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素(ここでは、HFO−1123)を含む非共沸混合冷媒が冷媒回路10に封入された空気調和装置1では、冷房運転や暖房運転のような空調運転時の放熱や蒸発を伴う非共沸混合冷媒の循環によって、冷媒回路10において、低沸点冷媒(ここでは、HFO−1123)リッチの組成比になる部分と高沸点冷媒(ここでは、HFC―32等)リッチの組成比になる部分とが発生する。このため、冷媒回路10の各部には、不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素(ここでは、低沸点冷媒であるHFO−1123)が偏在することになる。そして、このような状態において非共沸混合冷媒の漏洩が発生した場合には、冷媒回路10において、非共沸混合冷媒の漏洩が発生していない状態ではあり得ない程度まで、非共沸混合冷媒中における不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成が大きくなるおそれがあり(図2参照)、これにより、不均化反応を起こすおそれがある。また、充填不良によって冷媒回路10に封入された非共沸混合冷媒の組成比が所望の組成比になっていない場合にも、冷媒回路10において、所望の組成比の非共沸混合冷媒が冷媒回路10に充填されている状態ではあり得ない程度まで、非共沸混合冷媒中における不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成が大きくなるおそれがあり(図2参照)、これにより、不均化反応を起こすおそれがある。このため、非共沸混合冷媒の漏洩や充填不良が発生しても、不均化反応を起こすことを抑える必要がある。
【0049】
そこで、ここでは、以下に説明するように、冷媒回路10のうち室外ユニット2に含まれる部分に非共沸混合冷媒を集めるポンプダウン運転を行い、室外ユニット2に集められた非共沸混合冷媒の圧力及び温度に基づいて非共沸混合冷媒の組成比を得る組成比検知を行い、非共沸混合冷媒の組成比が不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成の許容範囲を外れた組成比である場合に警告を発報するようにしている。
【0050】
<ポンプダウン運転及び組成比検知>
次に、ポンプダウン運転及び組成比検知について、図1図4を用いて説明する。ここで、図3は、ポンプダウン運転及び組成比検知を示すフローチャートである。図4は、不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素を含む非共沸混合冷媒の飽和温度と飽和圧力の関係を示す図である。尚、以下に説明するポンプダウン運転及び組成比検知は、空調運転と同様に、制御部19によって行われる。また、ここでは、冷媒回路10に封入される冷媒として、HFO−1123とHFC−32との混合冷媒のような不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素を低沸点冷媒として含む2成分系の非共沸混合冷媒を採用した場合を例に挙げて説明する。
【0051】
まず、制御部19は、ステップST1において、前回の組成比検知からの時間(例えば、空調運転を行った時間の積算値等)が所定の検知時間を経過したかどうかを判定する。すなわち、制御部19は、ポンプダウン運転及び組成比検知を定期的に行う。尚、初回の組成比検知である場合には、空気調和装置1の設置後に検知時間を経過したかどうかを判定すればよい。そして、制御部19は、ステップST1において、検知時間を経過したと判定した場合には、次のステップST2の処理に移行する。
【0052】
次に、制御部19は、ステップST2において、ポンプダウン運転を行う。ポンプダウン運転は、上記のように、冷媒回路10のうち室外ユニット2に含まれる部分に非共沸混合冷媒を集める運転であり、室外ユニット2から室内ユニット3a、3bへの冷媒の流れを止めた状態で室内ユニット3a、3bから室外ユニット2に冷媒を流すことによって行われる。具体的には、冷房運転時と同様に、四路切換弁22を放熱状態(図1の実線で示される状態)に切り換えて、室外熱交換器23を非共沸混合冷媒の放熱器として機能させる。但し、冷房運転時とは異なり、室外膨張弁25を全閉状態にすることによって、室外ユニット2から室内ユニット3a、3bへの冷媒の流れを止めた状態にする。この場合、冷房運転時と同様、圧縮機21から吐出された高圧のガス状態の非共沸混合冷媒は、室外熱交換器23において放熱して、高圧の液状態の非共沸混合冷媒になり、圧縮機21の吐出側と室外膨張弁25との間に位置する室外熱交換器23及びレシーバ24に溜まる。一方で、液冷媒連絡管4、室内ユニット3a、3b及びガス冷媒連絡管5に存在する非共沸混合冷媒は、圧縮機21に吸入されることによって減少し、室外ユニット2(主として、室外熱交換器23及びレシーバ24)に集められる。そして、制御部19は、ステップST2において、ポンプダウン運転終了条件が成立した場合に、ポンプダウン運転を終了して、次のステップST3の処理に移行する。ここで、ポンプダウン運転終了条件としては、ポンプダウン運転が開始されてから所定時間(非共沸混合冷媒の室外ユニット2への移動が十分に行われたものとみなすことができる時間)が経過した場合、及び/又は、冷媒回路10における非共沸混合冷媒の圧力や温度(例えば、圧縮機21の吐出側における冷媒の圧力Pd)が所定値に達した場合等が挙げられる。このポンプダウン運転によって、冷媒回路10の各部に偏在している不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素を含む非共沸混合冷媒のほぼ全てを室外ユニット2に集めて、続いて行われる組成比検知に適した状態にしている。
【0053】
次に、制御部19は、ステップST3、ST4において、組成比検知を行い、組成比検知によって得られた非共沸混合冷媒の組成比が不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成の許容範囲を外れた組成比であるかどうかを判定する。組成比検知は、上記のように、ポンプダウン運転によって室外ユニット2に集められた非共沸混合冷媒の圧力及び温度に基づいて非共沸混合冷媒の組成比を得る処理である。具体的には、図4に示すような不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素を含む非共沸混合冷媒の飽和温度と飽和圧力の関係を、非共沸混合冷媒の組成比毎に飽和圧力及び飽和温度の関係式やデータテーブルとして準備しておく。図4においては、非共沸混合冷媒の組成比が正常値である場合の飽和圧力及び飽和温度の関係(実線)、及び、非共沸混合冷媒の組成比が不均化反応に対する許容範囲の上限値である場合の飽和圧力及び飽和温度の関係(破線)を示している。そして、室外ユニット2に集められた非共沸混合冷媒の圧力及び温度から非共沸混合冷媒の組成比を得る。ここでは、ポンプダウンによって非共沸混合冷媒が高圧の飽和液状態で集められるため、非共沸混合冷媒の飽和圧力及び飽和温度は、圧縮機21の吐出側における非共沸混合冷媒の圧力Pd、及び、室外熱交換器23における非共沸混合冷媒の温度Tlに近い値である。そして、制御部19は、これらの圧力Pd及び温度Tlを非共沸混合冷媒の飽和温度と飽和圧力の関係式やデータテーブルに当てはめることによって、非共沸混合冷媒の組成比を得る。そして、制御部19は、組成比検知によって得られた非共沸混合冷媒の組成比が、不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成の許容範囲を外れた組成比であるかどうかを判定する。具体的には、組成比検知によって得られた非共沸混合冷媒の組成比が、図4の破線(すなわち、不均化反応に対する許容範囲の上限値)を超えているかどうかを判定する。例えば、組成比検知によって得られた非共沸混合冷媒の組成比が圧力Pa及び温度Taに対応する点Aである場合には、図4の実線(非共沸混合冷媒の組成比の正常値)上の位置にあり、非共沸混合冷媒の漏洩や充填不良が発生しておらず正常である。また、組成比検知によって得られた非共沸混合冷媒の組成比が圧力Pb及び温度Taに対応する点Bである場合には、図4の実線と破線(不均化反応に対する許容範囲の上限値)との間の位置にあり、非共沸混合冷媒の漏洩や充填不良が発生しているが許容範囲内である。また、組成比検知によって得られた非共沸混合冷媒の組成比が圧力Pc及び温度Taに対応する点Cである場合には、図4の破線を超える位置にあり、非共沸混合冷媒の漏洩や充填不良が発生し許容範囲から外れている。そして、制御部19は、組成比検知によって得られた非共沸混合冷媒の組成比が不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成の許容範囲を外れた組成比である場合には、不均化反応を起こすおそれがあるものと判定して、次のステップST5の処理に移行する。一方、制御部19は、組成比検知によって得られた非共沸混合冷媒の組成比が不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成の許容範囲内の組成比である場合には、不均化反応を起こすおそれがないものと判定して、ステップST1の処理に戻り、空気調和装置1の運転(空調運転)を継続する。この組成比検知を含む処理によって、非共沸混合冷媒の漏洩や充填不良によって非共沸混合冷媒に含まれる不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成が許容範囲を外れた状態になっていないかどうかがチェックされる。
【0054】
次に、制御部19は、ステップST5において、非共沸混合冷媒が不均化反応を起こすおそれがある組成比になっている旨の警告を発報する。そして、制御部19は、空気調和装置1の運転を停止する。ここで、警告は、空気調和装置1に表示するものであってもよいし、空気調和装置1がサービスセンタ等にネットワーク接続されている場合には、サービスセンタ等に知らせるものであってもよい。
【0055】
<特徴>
上記のように、本実施形態では、まず、ポンプダウン運転によって非共沸混合冷媒を室外ユニット2に集めるようにしている。このポンプダウン運転によって、冷媒回路10の各部に偏在している不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素を含む非共沸混合冷媒のほぼ全てを室外ユニット2に集めて、次に行われる組成比検知に適した状態にすることができる。そして、次に、上記のように、ポンプダウン運転によって室外ユニット2に集められた非共沸混合冷媒の圧力Pd及び温度Tlに基づいて非共沸混合冷媒の組成比を得る組成比検知を行うようにしている。そして、上記のように、組成比検知によって得られた非共沸混合冷媒の組成比が不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成の許容範囲を外れた組成比である場合には、不均化反応を起こすおそれがあるものと判定して、警告を発報し、空気調和装置1の運転を停止することができる。一方、組成比検知によって得られた非共沸混合冷媒の組成比が不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成の許容範囲内の組成比である場合には、不均化反応を起こすおそれがないものと判定して、空気調和装置1の運転を継続することができる。このように、ここでは、非共沸混合冷媒の漏洩や充填不良によって非共沸混合冷媒に含まれる不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成が許容範囲を外れた状態になっていないかどうかをチェックすることができる。
【0056】
これにより、ここでは、冷媒回路10に不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素を含む非共沸混合冷媒が封入された空気調和装置1において、非共沸混合冷媒の漏洩や充填不良が発生しても、不均化反応を起こすことを抑えることができる。
【0057】
また、ここでは、上記のように、ポンプダウン運転及び組成比検知を定期的に行うようにしているため、不均化反応に対する信頼性を向上させることができる。
【0058】
また、ここでは、上記のように、ポンプダウン運転が室外熱交換器23及びレシーバ24に非共沸混合冷媒を集める運転であるため、高圧の液状態で大量の非共沸混合冷媒を集めることができ、これにより、組成比検知の精度を向上させることができる。
【0059】
また、ここでは、上記のように、圧縮機21の吐出側における非共沸混合冷媒の圧力Pd、及び、室外熱交換器23における非共沸混合冷媒の温度Tlに基づいて、正確な非共沸混合冷媒の組成比を得ることができる。
【0060】
(4)変形例1
上記実施形態では、組成比検知において使用される非共沸混合冷媒の温度として、室外熱交換器23における非共沸混合冷媒の温度Tlを使用しているが、これに限定されるものではない。
【0061】
例えば、図5に示すように、レシーバ24にレシーバ24における非共沸混合冷媒の温度を検出するレシーバ温度センサ13を設けて、このレシーバ温度センサ13によって検出される非共沸混合冷媒の温度Tlを組成比検知において使用される非共沸混合冷媒の温度として使用してもよい。
【0062】
この場合においても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0063】
(5)変形例2
上記実施形態及び変形例1の構成(図1及び図5参照)において、図6に示すように、レシーバ24に非共沸混合冷媒を抽出するためのサンプリングポート29を設けるようにしてもよい。ここで、サンプリングポート29には、手動で開閉されるサンプリング弁29aが設けられている。
【0064】
ここでは、上記のように、レシーバ24が非共沸混合冷媒を抽出するためのサンプリングポート29を有しているため、必要に応じて、非共沸混合冷媒の組成比を詳細に分析することができる。例えば、組成比検知によって非共沸混合冷媒の組成比が不均化反応に対する許容範囲内であるものと判定されたが、その組成比が不均化反応に対する許容範囲の上限値(図4の破線)に非常に近い場合には、サンプリングポート29から非共沸混合冷媒を抽出して、詳細な組成比分析を行うことができる。
【0065】
(6)変形例3
上記実施形態及び変形例1、2では、充填不良によって非共沸混合冷媒に含まれる不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素の組成が許容範囲を外れた状態になっていないかどうかを組成比検知によってチェックするようにしている。
【0066】
ここで、このような充填不良は、ボンベから非共沸混合冷媒を冷媒回路10に充填する際に、ガス状態で充填することによって起こることが多い。なぜなら、ボンベ内には、正常な組成比の非共沸混合冷媒が入っているが、ボンベの上部には、低沸点冷媒を多く含むガス状態の非共沸混合冷媒が存在しているからである。すなわち、ボンベから非共沸混合冷媒をガス状態で冷媒回路10に充填すると、冷媒回路10には、低沸点冷媒を多く含む非共沸混合冷媒が充填されることになり、正常な組成比からずれてしまうのである。このような充填不良を防ぐためには、ボンベから非共沸混合冷媒を液状態で冷媒回路10に充填することが好ましい。
【0067】
そこで、ここでは、図7に示すように、正常な組成比の非共沸混合冷媒が入ったボンベ6として、ボンベ6の底部付近から液状態の非共沸混合冷媒を取り出すためのサイフォン管6aを有するものを準備し、室外ユニット2のサービスポート(図7では、サービスポート26aを使用)を通じて冷媒回路10に非共沸混合冷媒を充填するようにしている。ここで、ボンベ6がサイフォン管6aを有しないものである場合には、ボンベ6を上下逆さまにして冷媒回路10に非共沸混合冷媒を充填するようにしてもよい。これにより、冷媒回路10に正常な組成比の非共沸混合冷媒を充填することができる。
【0068】
また、ボンベ6から非共沸混合冷媒を液状態で冷媒回路10に充填する作業を作業者に確実に行わせるために、室外ユニット2に、非共沸混合冷媒をガス状態で充填しない旨、又は、非共沸混合冷媒を液状態で充填する旨の警告情報が表示されたラベルを設けることが好ましい。例えば、図8に示すように、室外ユニット2の外表面に、非共沸混合冷媒をガス状態で充填しない旨、又は、非共沸混合冷媒を液状態で充填する旨の警告情報が表示されたラベル2aを設けるのである。このとき、作業者への注意喚起を促すために、ラベル2aを冷媒充填に使用されるサービスポート26a、27a付近に設けることが好ましい。尚、ここでは、室外熱交換器23の上側に室外ファン28が配置された型式の室外ユニット2にラベル2aを設けた例を挙げて説明しているが、室外ユニット2の型式はこれに限定されるものではなく、他の型式の室外ユニット2にラベル2aを設けてもよい。
【0069】
(7)他の変形例
上記実施形態及び変形例1〜3では、冷房運転及び暖房運転を切り換えて行うことが可能な冷暖切替式の空気調和装置1を例に挙げて、本発明を適用した例を説明したが、本発明を適用可能な空気調和装置はこれに限定されるものではなく、冷房のみが可能な空気調和装置や冷暖同時運転可能な空気調和装置にも適用可能である。また、上記実施形態及び変形例1〜3では、室外ユニット2に複数の室内ユニット3a、3bが接続された室内マルチ式の空気調和装置1を例に挙げたが、これに限定されるものではなく、室外ユニット2に1つの室内ユニットが接続されたペア式の空気調和装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、冷媒回路に不均化反応を起こす性質のフッ化炭化水素を含む非共沸混合冷媒が封入された空気調和装置に対して、広く適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 空気調和装置
2 室外ユニット
3a、3b 室内ユニット
10 冷媒回路
19 制御部
21 圧縮機
23 室外熱交換器
24 レシーバ
29 サンプリングポート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【特許文献1】国際公開第2012/157764号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8