特許第6790969号(P6790969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790969
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20201116BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   B41J2/01 301
   B41J2/14 305
   B41J2/14 613
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-73001(P2017-73001)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-171855(P2018-171855A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2019年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 進
【審査官】 上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−250361(JP,A)
【文献】 特開2008−279734(JP,A)
【文献】 特開2017−154473(JP,A)
【文献】 米国特許第06007176(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 2/14
B41J 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に貫通する第1貫通孔が形成された第1フレームと、
液体の流路及び吐出口を有し、前記第1フレームの前記第1方向における一方の表面に固定された流路部材と、
前記第1フレームの前記第1貫通孔の中に、前記流路部材に重ねて配されたアクチュエータと、
前記第1方向に貫通する第2貫通孔が形成され、該第2貫通孔を前記第1貫通孔に合わせて前記第1フレームの前記第1方向における他方の表面に配された第2フレームと、
前記アクチュエータに対向して前記第2貫通孔の中に配され、前記アクチュエータを駆動するICと、
前記第2フレームに支持され、前記第2貫通孔の中で前記アクチュエータの反対側から前記ICと直接または間接的に接する放熱部材と、
前記第1方向において前記アクチュエータと前記ICとの間に配され、前記ICを前記放熱部材に近付く向きに付勢して該放熱部材に押し付ける付勢部材と、を備え、
前記付勢部材は、前記第1フレームの内周面から外周面へ向かって延びる第1部分を有し、
前記第2フレームは、
前記第1部分と対向し、前記第1方向において前記第1部分および前記第1フレームと並ぶ第2部分と、
前記第1方向において前記第2部分に対してオフセットし、前記第1フレームと対向し、前記第1方向において前記第1フレームと並ぶ第3部分と、を有し、
前記第3部分は、前記第1方向からみて前記付勢部材の外周を囲うように環状に形成され、
前記付勢部材の外周を囲む溝と、
前記溝に収容されているガスケットと、を有する
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記ガスケットは、ゴム部材である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1フレームに設けられ、前記第1方向に貫通する第3貫通孔と、
前記第2フレームに設けられ、前記第1方向に貫通し、前記第3貫通孔に連なる第4貫通孔とを備え、
前記溝は、前記第4貫通孔を囲う部分を有し、
前記ガスケットは、前記第4貫通孔の周囲を囲う部分を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第2フレームには、前記ガスケットを囲う部分に、螺子が挿通する挿通孔が設けられ、
前記第1フレームには、前記挿通孔に整合し、前記螺子が螺合する螺子穴が設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記ICと前記付勢部材との間に配され、前記付勢部材側の一面に、前記ICに電気的に接続されている回路部品が実装されている回路基板を備え、
前記付勢部材には、前記第1方向において前記回路部品を囲う凹部が設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一つに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記放熱部材は、金属部材である
ことを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一つに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
記放熱部材の外周面と、前記第2貫通孔の内周面との間を封止するゴム部材と、
を備えていることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一つに記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記第1フレームは金属であり、
前記第2フレームは樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一つに記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記付勢部材は、前記第1部分から前記IC側に向けて突出する板状の弾性部を有することを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一つに記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置は、第1方向に貫通する第1貫通孔が形成された第1フレームと、第1フレームの第1方向における一方の表面に対して固定された流路部材と、第1フレームの第1貫通孔の中に配されたアクチュエータとを備える。また、液体吐出装置は、第1方向に貫通する第2貫通孔が形成され、第1フレームの第1方向における他方の表面に配された第2フレームと、第2貫通孔の中に配されたICとを備える。
【0003】
液体吐出装置において、流路部材には、液体の吐出口と、流路部材内に吐出口に連なるように設けられ、外部から供給される液体が通流する流路とを有する。ICからの駆動信号に基づいてアクチュエータが駆動することにより、流路部材に圧力変化が生じ、吐出口から液体が吐出される。
【0004】
液体吐出装置の駆動に伴って、ICが発熱する為、液体吐出装置は、ICに上側から接する放熱部材を備える場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−202840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、他の装置への組み付けの際等に、放熱部材側から加重を受けた際に、アクチュエータに負荷が加わり、アクチュエータが破壊されてしまう虞がある。
【0007】
本開示は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡素な構造でアクチュエータを保護することができる液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態に係る液体吐出装置は、第1方向に貫通する第1貫通孔が形成された第1フレームと、液体の流路及び吐出口を有し、前記第1フレームの前記第1方向における一方の表面に固定された流路部材と、前記第1フレームの前記第1貫通孔の中に、前記流路部材に重ねて配されたアクチュエータと、前記第1方向に貫通する第2貫通孔が形成され、該第2貫通孔を前記第1貫通孔に合わせて前記第1フレームの前記第1方向における他方の表面に配された第2フレームと、前記アクチュエータに対向して前記第2貫通孔の中に配され、前記アクチュエータを駆動するICと、前記第2フレームに支持され、前記第2貫通孔の中で前記アクチュエータの反対側から前記ICと直接または間接的に接する放熱部材と、前記第1方向において前記アクチュエータと前記ICとの間に配され、前記ICを前記放熱部材に近付く向きに付勢して該放熱部材に押し付ける付勢部材と、を備え、前記付勢部材は、前記第1フレームの内周面から外周面へ向かって延びる第1部分を有し、前記第2フレームは、前記第1部分と対向し、前記第1方向において前記第1部分および前記第1フレームと並ぶ第2部分と、前記第1方向において前記第2部分に対してオフセットし、前記第1フレームと対向し、前記第1方向において前記第1フレームと並ぶ第3部分と、を有し、前記第3部分は、前記第1方向からみて前記付勢部材の外周を囲うように環状に形成され、前記付勢部材の外周を囲む溝と、前記溝に収容されているガスケットと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態によれば、付勢部材により、ICを付勢して放熱部材に押し付けたから、放熱部材側からの加重に対しICに対向配置されたアクチュエータを保護することが可能となる。第2部分と第1フレームとの間に付勢部材の第1部分を収容することで、第2フレーム及び第1フレームに挟んで固定することが可能になるので、付勢部材を固定するための螺子及びねじ止めのスペース等が不要となり、簡素な構造で付勢部材を固定することができる。したがって、簡素な構造でアクチュエータを保護することができる。ガスケットにより第2フレーム及び第1フレーム間を封止して、第2フレーム及び第1フレームの中への異物の侵入を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係るプリンタの構成を示す概略図である。
図2】インクジェットヘッドの構成の概略図である。
図3】ヘッドユニットの斜視図である。
図4】ヘッドユニットの分解斜視図である。
図5図3のV−V線による断面図である。
図6図5のVI−VI線による断面図である。
図7】第2フレームの下面図である。
図8】第2フレームの側面図である。
図9図7のIX−IX線による断面図である。
図10】第2フレームの下面を示す概略図である。
図11】ヘッドユニットの部分拡大断面図である。
図12】アクチュエータ及び流路基板の構造を示す部分拡大断面図である。
図13】アクチュエータ及び流路基板の構造を示す模式的平面図である。
図14】付勢部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1に示すようにプリンタ100は、筐体1と、該筐体1内に配されたプラテン2、4つのインクジェットヘッド3、2つのローラ4、及び制御装置5とを備える。なお、以下の説明において使用する前後、左右及び上下の方向は各図中に示す。
【0012】
プラテン2上には、プリンタ100による印刷が行われる記録用紙101が載置され、前後方向に搬送される。2つのローラ4は、プラテン2の前方及び後方夫々に設置されており、2つのローラ4の回転により記録用紙101が後方から前方に搬送される。
【0013】
各インクジェットヘッド3は、外形が左右方向に長い矩形板状をなし、上下方向においてプラテン2に対向配置されており、記録用紙101がプラテン2上に載置されている場合、記録用紙101の紙面に対向する。4つのインクジェットヘッド3は、プラテン2と所定距離離れるように、左右方向の両端部を保持体3aにより保持されている。4つのインクジェットヘッド3は、二つのローラ4間に前後方向に並設されている。
【0014】
また、4つのインクジェットヘッド3は、夫々が一色に対応しており、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックに対応する。なお、インクジェットヘッド3の個数は、4つに限られない。
【0015】
制御装置5は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)を備える。尚、FPGA、ROM、RAM、EEPROMの図示を省略する。また、制御装置5は、パーソナルコンピュータ等の外部機器と相互通信が可能である。制御装置5は、外部機器又はプリンタ100が備える図示しない操作部からの指示により、前記ROMに格納されたプログラムに従って4つのインクジェットヘッド3及び二つのローラ4の動作を制御する。なお、FPGAに代えてCPU(Central Processing Unit )又はMPU(Microprocessor Unit )を使用してもよい。
【0016】
制御装置5は二つのローラ4を駆動する図示しないモータを作動させて、二つのローラ4の動作を制御し、記録用紙101の搬送を行う。制御装置5は、記録用紙101の搬送中に各インクジェットヘッド3を作動させて、記録用紙101にインクを吐出させる。
【0017】
図2においては、インクジェットヘッド3を下方向から見ている。図2に示すように、インクジェットヘッド3は、矩形の支持板30と、該支持板30に保持された複数のヘッドユニット6(図では9個)とを有する。ヘッドユニット6は、インクジェットヘッド3におけるプラテン2の対向面側に配されている。
【0018】
また、複数のヘッドユニット6は、前方側の列及び後方側の列に分かれて並設されている。図2中においては、前方側の列において、ヘッドユニット6は左右方向に4個並設され、後方側の列において、左右方向に5個並設されている。なお、ヘッドユニット6の個数は、図示の個数に限られない。ヘッドユニット6におけるプラテン2への対向面には、後述するようにインクを吐出する吐出口6aが設けられている。なお、図2は、概略図であり、吐出口6aの個数を省略して記載している。
【0019】
インクジェットヘッド3には、支持板30の上方にインクを貯留するリザーバ(不図示)が重ねられている。リザーバは、図示しないインクカートリッジに接続されており、該インクカートリッジのインクの供給を受け、該インクを所定量貯留する。リザーバは、後述のパイプ64を介して各ヘッドユニット6と接続されており、ヘッドユニット6にインクを供給する。
【0020】
図3〜14を参照し、ヘッドユニット6の構造を説明する。9個のヘッドユニット6は夫々、同様の構造をなしている。ヘッドユニット6は、第1フレーム60と、流路部材61と、第2フレーム62と、ホルダ63と、4本のパイプ64とを備える。
【0021】
第1フレーム60は、金属であり、左右方向に長い矩形枠状をなし、中央に上下方向に貫通する第1大孔60aが設けられている。第1フレーム60には、上下方向に貫通する4つの矩形状の第1小孔60bと、6つの螺子穴60cが設けられている。4つの矩形状の第1小孔60bと、一の螺子穴60cは、第1フレーム60の右辺部に前後方向に沿って並んでいる。この一の螺子穴60cは前後方向における右辺部の中央に位置する。すなわち、2つの第1小孔60bと、他の2つの第1小孔60との間に、一の螺子孔60cが位置している。他の螺子穴60cは、第1フレーム60の4つの角部分夫々と、後辺部の長手方向中央部に位置している。
【0022】
流路部材61は、上下方向に互いに積層された複数の金属板により構成されている。流路部材61は左右方向に長い矩形板状をなし、上面が第1フレーム60の下面に接着剤により固定されている。図12に示すように、流路部材61は、ノズルプレート61a、振動板61bを備える。ノズルプレート61aには、複数の吐出口6aが左右方向(図12の紙面垂直方向)に並んでいる。複数の吐出口6aそれぞれの上側に圧力室61cが形成されている。圧力室61cは後述する共通流路61gに連なる。振動板61bは圧力室61cの上側に設けられており、圧力室61cの上部の開口を塞いでいる。流路部材61は、後述するように、アクチュエータに通電することにより、吐出口6aからインクを吐出する。
【0023】
図13に示すように、流路部材61は、液体が供給される二つの供給口61eを備える。二つの供給口61eは流路部材61の右縁部において前後方向に並んでいる。流路部材61の右縁部において、二つの供給口61eの間に液体を排出する二つの排出口61fが前後方向に並んでいる。
【0024】
一方の供給口61eと、この供給口61eに隣り合う一方の排出口61fとは、平面視U状をなす共通流路61gによって連結されている。共通流路61gは流路部材61の内部に形成されており、各圧力室61cに連なる。また、共通流路61gは、供給口61e及び排出口61fを介して、第1小孔60bに連なる。インクタンクからパイプ64及び第1小孔60等を介して供給口61eに供給されたインクは共通通路61gを通って圧力室61cに至る。
【0025】
また他方の供給口61eと、この供給口61eに隣り合う他方の排出口61fとは、平面視U状をなす共通流路61gによって連結されている。共通流路61gは流路部材61の内部に形成されており、各圧力室61cに連なる。
【0026】
第2フレーム62は、エポキシ樹脂などの樹脂で成型された成型品である。第2フレーム62は、左右方向に長い矩形状をなし、中央に上下方向に貫通する第2大孔62aが設けられている。第2フレーム62には、上下方向に貫通する4つの円形の第2小孔62bと、6つの円形の第1螺子挿通孔62cとが設けられている。4つの第2小孔62bと、一の第1螺子挿通孔62cとは、前後方向に沿って並んでいる。この一の第1螺子挿通孔62cは前後方向における右辺部の中央に位置する。すなわち2つの第1小孔62bと、他の2つの第1小孔62bとの間に、一の第1螺子挿通孔62cが位置している。他の第1螺子挿通孔62cは、第2フレーム62の4つの角部分夫々と、後辺部の長手方向中央部とに位置している。各第1螺子挿通孔62cは、各螺子穴60cに整合している。
【0027】
図7に示すように、第2フレーム62の下面は、2つの平面620(620a,620b)と、4つの平面621(621a〜621d)と、2つの平面625(625a,625b)と、5つの平面626(626a〜626e)とを有する。
【0028】
平面620aは、第2大孔62aの左辺部と、後辺部の左側の部分と、前辺部の左側の部分とを囲むように位置している。平面620bは、第2大孔62aの右辺部と、後辺部の右側の部分と、前辺部の右側の部分とを囲むように位置している。平面625aは、第2大孔62aの後辺部の左右方向における中央部分に隣接する位置に位置している。平面625bは、第2大孔62aの前辺部の左右方向における中央部分に隣接する位置に位置している。即ち、上下方向から見たときに、第2大孔62aは、2つの平面620(620a,620b)と、2つの平面625(625a,625b)とで、囲まれている。尚、2つの平面620と、2つの平面625とは後述のように上下方向の位置が異なる。
【0029】
平面620aは、前後方向において第2大孔62aの前方に位置する前側部と、前後方向において第2大孔62aの後方に位置する後側部と、左右方向において第2大孔62aの左方に位置し、前側部と後側部とを繋ぐ左側部とを有する。平面620aの前側部及び後側部は、左側部よりも幅広に形成されている。
【0030】
平面620bは、前後方向において第2大孔62aの前方に位置する前側部と、前後方向において第2大孔62aの後方に位置する後側部と、左右方向において第2大孔62aの右方に位置し、前側部と後側部とを繋ぐ右側部とを有する。平面620bの前側部及び後側部は、右側部よりも幅広に形成されている。
【0031】
平面625aは左右方向に長く、第2大孔62aの後辺に沿って位置しており、平面620aの後側部と、平面620bの後側部との間に位置している。平面625bは左右方向に長く、第2大孔62aの前辺に沿って位置しており、平面620aの前側部と、平面620bの前側部との間に位置している。また、平面625a,625bは、平面620a,620bよりも上下方向の下側に位置している。
【0032】
5つの平面626a〜626eは、平面620a,620bよりも下側に位置し、また、平面625a,625bよりも下側に位置している。平面626a〜626eは第1フレーム60の上面に接する。上下方向において、平面620a,620bと第1フレーム60の上面とはオフセットしている。ここで、6つの第1螺子挿通孔62cは、後述する第1溝622、第2溝623及び第3溝624を囲う箇所に位置しており、5つの平面626a〜626eは、第1螺子挿通孔62cに対応して設けられている。
【0033】
平面626aは、前後方向に長く、第2フレーム62の下面の右辺部に沿って設けられ、前端部及び後端部は夫々、第1螺子挿通孔62cを囲っている。平面626bは、左右方向に長く、前記下面の後辺部において、左右方向中央部に設けられており、第1螺子挿通孔62cを後側から囲んでいる。平面626cは、前記下面の左後端部に設けられており、対応する第1螺子挿通孔62cの全周を囲んでいる。平面626dは、左前端部に設けられており、対応する第1螺子挿通孔62cを左前側から囲んでいる。平面626eは、前記下面の右辺側中央に位置し、対応する第1螺子挿通孔62cを囲んでいる。
【0034】
平面621aは、下面の左辺に沿って、平面626dと平面626cとの間に位置しており、第2フレーム62の外周面に連なる。平面621bは、下面の左後側に位置し、平面626cと、平面626bとの間に位置する。平面621cは、前記下面の平面626bから、前記下面の後辺、右辺及び前辺に沿って延び、平面626dに至る。平面621dは、平面620bの右側に位置し、平面620bに連なる。4つの平面621は、上下方向において上述の2つの平面620よりも高い位置に位置している。
【0035】
前記下面の右側において、平面621dと、平面621cとの間には、各第2小孔62bを囲うように4つの矩形環状の第1溝622が設けられている。最も前側に位置する第1溝622の後辺部分は、該第1溝622に隣接する第1溝622の前辺部分と連なっている。最も後側に位置する第1溝622の前辺部分は、該第1溝622に隣接する第1溝622の後辺部分と連なっている。中央の2つの第1溝622は、前側の第1溝622の後辺左端部分と、後側の第1溝622の前辺右端部分に連なる第2溝623により、接続されている。
【0036】
最も前側に位置する第1溝622の前辺部分と、最も後側に位置する第1溝622の後辺部分は、第3溝624により接続されている。第3溝624は、第2フレーム62の平面620a,620bを囲うように、第2フレーム62の前辺、左辺及び後辺に沿って延びている。したがって、第1溝622、第2溝623及び第3溝624は、全体として、第2大孔62a、平面620a,620b及び平面625a,625bを囲うように設けられている。尚、第1溝622の底面、第2溝623の底面及び第3溝624の底面は、上下方向において、4つの平面621の位置よりも高い位置にある。
【0037】
平面626a〜626eは、第1フレーム60の上面に接している。平面626a〜626eは、上下方向において、平面620a,620b及び第1フレーム60の距離を維持する。
【0038】
図10に示すように、第1溝622、第2溝623及び第3溝624には、ガスケット9が収容されている。平面620a,620b,625a,625bは、第1溝622、第2溝623及び第3溝624及びガスケット9に囲われる。ガスケット9は、第1フレーム60に接することにより、第2フレーム62及び第1フレーム60間を封止する。これにより、インク等の異物が、第2フレーム62及び第1フレーム60間に侵入することを防止できる。
【0039】
6つの第1螺子挿通孔62cは、第1溝622、第2溝623及び第3溝624を囲う箇所に位置しているので、第1螺子挿通孔62cからインクが漏出した場合であっても、第2フレーム62及び第1フレーム60間に侵入することを防止できる。
【0040】
図4に示すように、ホルダ63は、ステンレス鋼等により形成され、左右方向に長い矩形枠状をなし、中央部に上下方向に貫通する第3貫通孔63aが設けられている。ホルダ63は、上下方向に貫通する4つの第3小孔63bと、6つの第2螺子挿通孔63cを有する。4つの第3小孔63b及び一の第2螺子挿通孔63cは、右辺部に前後方向に沿って並んでいる。この一の第2螺子挿通孔63cは、前後方向における右辺部の中央に位置するように並んでいる。すなわち、2つの第3小孔63bと、他の2つの第3小孔63bの間に、一の第2螺子挿通孔63cが位置している。
【0041】
更に、他の第2螺子挿通孔63cは、ホルダ63の4つの角部分夫々と、後辺側の長手方向中央部に設けられている。各第2螺子挿通孔63cは、螺子穴60c及び第1螺子挿通孔62cに整合している。ホルダ63は、第2フレーム62の上面に載置され、支持板30(図2参照)に支持されている。各第3小孔63bは、各第2小孔62bの径よりも小さな径を有する。
【0042】
各パイプ64は、円筒状をなしており、パイプ64の下端部分は、第2フレーム62の第2小孔62b及びホルダ63の第3小孔63bに嵌合されている。各パイプ64の上端部分は、ホルダ63の上面から突出している。
【0043】
各パイプ64は、その上端部分に取り付けられたチューブを介して、プリンタ1が備えるリザーバと連なっている。リザーバ内のインクは、パイプ64を介して、パイプ64に連なる第1小孔60bから、第1小孔60bに連なる流路部材61の共通流路61gに供給される。また、流路内のインクが、第1小孔60bから、各パイプ64を介して、リザーバに戻される。
【0044】
第1フレーム60と、流路部材61と、第2フレーム62と、ホルダ63とは、6本の螺子600により、互いに固定されている。各螺子600は、第2螺子挿通孔63c及び第1螺子挿通孔62cを挿通し、螺子穴60cに螺合している。
【0045】
ヘッドユニット6は、更に、ヒートスプレッダ70及び支持部材71を備える。ヒートスプレッダ70は、平板状をなし、アルミニウム等の熱伝導率の高い金属により形成されている。支持部材71は、枠状をなし、ゴム等の断熱部材により形成され、枠内にヒートスプレッダ70を収容し、支持している。
【0046】
第2フレーム62には、図4に示すように、枠内の右面に、左側に張り出す支持部62hが設けられている。支持部材71は、第2フレーム62の枠内に配され、支持部62h上に載置される。ヒートスプレッダ70の上面は、ホルダ63の第3大孔62aから露出している。
【0047】
第1フレーム60の枠内において、流路部材61の上面には、シート状のアクチュエータ65が重ねて配されている。また、ヘッドユニット6は、COF(Chip On Film)66と、FPC(Flexible Printed Circuit)67を備える。
【0048】
図12に示すように、アクチュエータ65は振動板61bの上に配置されている。アクチュエータ65には二つの圧電層65cが積層されている。二枚の圧電層65cの間に共通電極65dが設けられている。共通電極65dは常にグランド電位に保持されている。アクチュエータ65は左右方向に並んだ複数の個別電極65bを備える。複数の個別電極65bは上側の圧電層65cに設けられており、複数の圧力室61cの上側にそれぞれ配置されている。複数の個別電極65bはCOF66とそれぞれ接続されている。
【0049】
COF66は、可撓性を有するシート状であり、載置部661と、一対の折返し部662とを含む。載置部661は、アクチュエータ65の上面に載置されており、接合部材を介して接合されている。接合部材としては、両面テープやシート状の接着剤等が挙げられる。載置部661は、複数の接点を有する。アクチュエータ65の上面には複数の個別電極65bに対応する複数の接点や共通電極65dに対応する複数の接点とが形成されている。載置部661の各接点は、アクチュエータ65の上面に形成された個別電極65bの接点とそれぞれバンプで電気的に接続されている。
【0050】
一対の折返し部662は、載置部661の両端からそれぞれ上方に延出して互いに近づく方向に折り返された部分であり、アクチュエータ65の上面に対向している。一対の折返し部662の上面に、一対のドライバIC663がそれぞれ配置されている。
【0051】
FPC67は、下板部671と、延出部672とを有する。延出部672は、下板部671の一面から上方に延出した部分であり、制御装置5(図1参照)と接続される。下板部671の下面には、コンデンサ等の複数の回路部品673が実装されている。
【0052】
図4に示すように、一対の折返し部662の互いに対向する先端部は、FPC67の下板部671と接続されている。下板部671の上面には、複数の接点(図示略)が形成されている。一対の折返し部662の先端部には、下板部671の複数の接点に対応して、複数の接点が形成されている。下板部671の各接点は、一対の折返し部662の各接点と電気的に接続されている。
【0053】
制御装置5からの制御信号は、FPC67及びCOF66を介して一対のドライバIC663に入力される。各ドライバIC663は、上記制御信号に基づいて駆動信号を生成し、当該駆動信号をアクチュエータ65に出力する。
【0054】
ヘッドユニット6は、更に、押え部材68と、付勢部材8とを備える。押え部材68は、矩形板状をなし、載置部661の上面に配され、下面から突出する脚部が載置部661の周縁上に載置されている。載置部661は、押え部材68とアクチュエータ65との間に位置する。押え部材68の上面には、2つの突起680が形成されている。押え部材68によって、載置部661がアクチュエータ65から剥がれることが防止される。
【0055】
図14は、付勢部材8の斜視図である。付勢部材8は、金属等で形成された弾性部材である。付勢部材8は、左右方向に長い矩形状の平板部80と、平板部80の各角部から延びる4つの平板状の延設部81と、延設部81から斜め上方にそれぞれ延びる4つの弾性部82とを有する。平板部80、延設部81及び弾性部82は、一枚の板により形成されている。
【0056】
平板部80には、前辺側及び後辺側に二つの孔80a,80bが貫設されている。孔80aは、円形孔であり、孔80bは、孔80aよりも前後方向に長い長孔である。
【0057】
各延設部81の基端部81aは、平板部80の短辺に平行に延び、先端部81bは、該基端部81aから、左右方向に平行に、平板部80の反対側に延びる。付勢部材8において、平板部80の各長辺及び各長辺の両端部に位置する延設部81の基端部81aにより、凹部83が形成されている。
【0058】
弾性部82は、先端部81bにおける基端部81a側の端面から、前後方向中央部に向けて、斜め上方に突出している。各弾性部82は、平板部80に対して折り曲げられることによって形成されている。また、各弾性部82の先端部は、下方へ折り曲げられている。
【0059】
付勢部材8は、下板部671及びアクチュエータ65間に配され、弾性部82をCOF66の折返し部662側に向けて、延設部81の基端部81aが第1フレーム60の上面及び平面620a,620b間に位置するように配置されている。延設部81の基端部81aは、平面620a,620bの幅広部分に配されている。したがって、平面620a,620bは、付勢部材8の周囲を囲うこととなる。以上より、付勢部材8は、上下方向において、位置決めがされ、固定される。また、平面625aが平面626a〜620eに連なる部分を2つの基端部81aが挟み、平面625bが平面620a,620bに連なる部分を他の2つの基端部81aが挟んでいる。これにより、付勢部材8の左右方向への移動が規制される。
【0060】
孔80a,80bには、押え部材68の2つの突起680が夫々挿通する。これにより、付勢部材8の、押え部材68に対する前後左右方向の位置ずれが抑えられる。また、孔80bが長孔であるので、付勢部材8の前後方向における位置の誤差を吸収できる。更に、下板部671の回路部品673に対応する位置に凹部83が位置するように配されている。これにより、付勢部材8及び回路部品673の干渉を防止することができる。
【0061】
FPC67の下板部671が、COF66の折返し部662と付勢部材8との間に挟まれて配置されている。また、付勢部材8の弾性部82の折れ曲がり部分は、下板部671の下面に接し、弾性部82の基端側の部分の弾性によって、下板部671を押し上げる。これにより、弾性部82は、下板部671を介してドライバIC663を上方(即ち、ドライバIC663がヒートスプレッダ70に近づく方向)に付勢する。
【0062】
上述した構成により、ドライバIC663は、付勢部材8によってヒートスプレッダ70側へ付勢され、ヒートスプレッダ70に押し付けられる。これにより、ドライバIC663で発生した熱がヒートスプレッダ70により放熱される。一方で、付勢部材8の延設部81は、第2フレーム62及び第1フレーム60により固定されている。そのため、付勢部材8の反力は第1フレーム60に受け止められる。
【0063】
上述の如く構成されたプリンタ100は、外部装置又はプリンタ100の操作部からの作動の指示を受け付けた場合、ROMに格納されたプログラムを実行し、次の動作を行う。制御装置5は、二つのローラ4,4を作動させ、プラテン2上において記録用紙101を搬送する。また、制御装置5は、FPC67を介してCOF66のドライバIC663に制御信号を送信し、ドライバIC663は該制御信号を受信する。
【0064】
ドライバIC663は、受信した制御信号に基づいて生成した駆動信号を、アクチュエータ65に出力する。これにより、共通電極65d及び個別電極65bの間に電圧が印加され、圧電層65cが駆動し、振動板61bを振動させる。振動板61bの振動によって、圧力室61c内の圧力が正圧となって、吐出口6aからインクが吐出され、また圧力室61c内の圧力が負圧となって、共通通路61gから圧力室61cにインクが供給される。
【0065】
圧力室61cに供給されなかったインクは、共通流路61gを通って、流路部材61の前縁部又は後縁部に沿って移動し、その後、左縁部にてUターンし、流路部材61の前後方向中央部を右方向に移動し、排出口61fに至る。排出口61fから排出されたインクはパイプ64等を介してインクタンクに戻り、再び供給口61eに供給される。
【0066】
制御装置5は、各インクジェットヘッド3における各ヘッドユニット6の流路部材61に対して、圧力変化を生じさせ、所定量の各色のインクを搬送される記録用紙101の適宜の場所に吐出する。これにより、記録用紙101に所望の画像が印刷される。画像が印刷された記録用紙101は、図示しない出力部を介して筐体12の外部に出力される。
【0067】
上記の構成によれば、付勢部材8により、ドライバIC663をドライバIC663上に配したヒートスプレッダ70に押し当てることができる。これにより、ドライバIC663を上側に付勢し、ドライバIC663の上側からの加重に対し、アクチュエータ65を保護することが可能となる。
【0068】
平面620と第1フレーム60との間に付勢部材8の延設部81を収容することで、第2フレーム62及び第1フレーム60に挟んで固定することが可能になるので、付勢部材8を固定するための螺子部材及びねじ止めのスペース等が不要となり、簡素な構造で付勢部材8を固定することができる。したがって、簡素な構造でアクチュエータ65を保護することができる。
【0069】
ガスケット9により第2フレーム62及び第1フレーム60間を封止して、第2フレーム62及び第1フレーム60の中へのインク等の異物の侵入を防ぐことができる。付勢部材8は、平面626a〜626eに囲われているので、ガスケット9に囲われ、ヘッドユニット6の封止性が向上する。また、第2小孔62bの周囲をガスケット9により封止して、第2小孔62bを通流するインクが、第2小孔62bの外部へ漏れることを防ぐことができる。
【0070】
ガスケット9を囲う位置において螺子止めすることにより第1フレーム60及び第2フレーム63を固定するので、螺子600が挿通する第2螺子挿通孔63cは及び第1螺子挿通孔62cからの異物の侵入をガスケット9により防ぎ、良好に異物の侵入を防ぐことができる。
【0071】
第1フレーム60及び流路部材61を金属製とすることにより、第1フレーム60及び流路部材61における線膨張の影響を低減することができる。第2フレーム62は、樹脂製であるので加工が容易であり、また、ドライバIC663の熱を第1フレーム60及び流路部材61側に伝導することを抑制できる。
【0072】
尚、上述のガスケット9はゴム部材である。しかし、ガスケットとしてゴム以外の材質のものを採用してもよい。また、付勢部材8に代えて、周縁部にゴム部材を配した平板を配してもよく、ゴム部材は、弾性部82に対応する箇所に設ければよい。さらに前記ゴム部材に代えて、スプリング又はスポンジを配してもよい。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。即ち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
6 ヘッドユニット(液体吐出装置)
60 第1フレーム
60a 第1大孔(第1貫通孔)
60b 第1小孔(第3貫通孔)
60c 螺子穴
600 螺子
61 流路部材
62 第2フレーム
62a 第2大孔(第2貫通孔)
62b 第2小孔(第4貫通孔)
62c 第1螺子挿通孔(挿通孔)
622 第1溝(溝)
623 第2溝(溝)
624 第3溝(溝)
620a,620b 平面(第2部分)
626a〜626e 平面(第3部分)
65 アクチュエータ
663 ドライバIC(IC)
671 下板部(回路基板)
673 回路部品
70 ヒートスプレッダ(放熱部材、金属部材)
71 支持部材
8 付勢部材
81 延設部(第1部分)
82 弾性部
83 凹部
9 ガスケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14