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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790981
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】スピーカ素子及びアレイスピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 7/06 20060101AFI20201116BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20201116BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   H04R7/06
   H04R17/00
   H04R1/40 310
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-79686(P2017-79686)
(22)【出願日】2017年4月13日
(65)【公開番号】特開2018-182533(P2018-182533A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I−PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健治
(72)【発明者】
【氏名】池田 義文
(72)【発明者】
【氏名】黒木 省吾
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 泰数
(72)【発明者】
【氏名】渡部 嘉之
【審査官】 須藤 竜也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−086941(JP,A)
【文献】 特開2012−015635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 7/06
H04R 1/40
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面に沿って外方に突出して他の部材と接続する接続片が前記主面の外縁に複数配設された振動板と、
前記振動板に積層され、電圧が加えられて変形して前記振動板を振動させる圧電素子と、
を備え、
前記主面に直交する方向における前記接続片の厚さは、前記圧電素子が積層された部分の前記振動板の板厚よりも大きくすることで、前記接続片自体の変形が抑制され
前記接続片は、前記主面に対して前記主面に直交する方向に突出している、
スピーカ素子。
【請求項2】
前記振動板の主面の外縁に沿って環状に形成され、前記主面に対して前記主面に直交する方向に突出して前記接続片と前記主面に平行な面に沿って面一で連接する環状壁が形成されている、
請求項1に記載のスピーカ素子。
【請求項3】
前記環状壁には、
前記接続片と接続する部分において、前記主面の中心を向く内壁が前記主面の中心に向かって張り出した張出部が設けられている、
請求項2に記載のスピーカ素子。
【請求項4】
前記張出部は、
前記主面に直交する方向から見て曲線状に張り出している、
請求項3に記載のスピーカ素子。
【請求項5】
前記張出部は、
前記振動板の主面の中心から延びて前記接続片を均等に分割する直線に対して線対称な形状を有する、
請求項4に記載のスピーカ素子。
【請求項6】
前記接続片は、前記振動板の主面の外縁に沿って均等配置されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載のスピーカ素子。
【請求項7】
前記接続片は、前記振動板の主面の外縁に沿って少なくとも6個設けられている、
請求項6に記載のスピーカ素子。
【請求項8】
前記接続片は、前記振動板の主面の外縁に沿って12個設けられている、
請求項7に記載のスピーカ素子。
【請求項9】
前記振動板および前記圧電素子は、前記主面に直交する方向から見て円形である、
請求項1から8のいずれか一項に記載のスピーカ素子。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の複数のスピーカ素子が2次元配列されている、
アレイスピーカ。
【請求項11】
互いに隣接する4つの前記スピーカ素子がそれぞれ正方形の頂点に位置するように配列されている、
請求項10に記載のアレイスピーカ。
【請求項12】
互いに隣接する3つの前記スピーカ素子がそれぞれ正三角形の頂点に位置するように配列されている、
請求項10に記載のアレイスピーカ。
【請求項13】
前記スピーカ素子の配列の周囲を囲み、前記スピーカ素子が有する接続片のうち、対向する接続片と接続して前記スピーカ素子を支持する外枠を備え、
前記外枠に接続されていない前記接続片同士をつないで、前記スピーカ素子同士が連結されている、
請求項10から12のいずれか一項に記載のアレイスピーカ。
【請求項14】
前記スピーカ素子の配列の周囲を囲み、前記スピーカ素子が有する接続片のうち、対向する接続片と接続して前記スピーカ素子を支持する外枠と、
前記スピーカ素子間の隙間に配置され、前記スピーカ素子が有する接続片のうち、対向する接続片と接続して前記スピーカ素子を支持する補助部材と、
を備える請求項10から12のいずれか一項に記載のアレイスピーカ。
【請求項15】
前記外枠の内縁から延出し、前記接続片と接続する延出部をさらに備える、
請求項13又は14に記載のアレイスピーカ。
【請求項16】
個々の前記スピーカ素子の周囲を囲み、前記スピーカ素子が有する接続片と接続する支持枠が設けられている、
請求項10から12のいずれか一項に記載のアレイスピーカ。
【請求項17】
主面に沿って外方に突出して他の部材と接続する接続片が前記主面の外縁に複数配設された振動板と、前記振動板に積層され、電圧が加えられて変形して前記振動板を振動させる圧電素子と、を備えるスピーカ素子の配列が形成され、
前記スピーカ素子が有する接続片のうち、対向する接続片と接続して前記スピーカ素子を支持する外枠が、前記スピーカ素子の配列の周囲を囲んでおり、
前記スピーカ素子が有する接続片のうち、対向する接続片と接続して前記スピーカ素子を支持する補助部材が、前記スピーカ素子間の隙間に配置されている、
アレイスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ素子及びアレイスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧電セラミックス、円形の金属板、ケースを備え、圧電セラミックスの伸縮運動に応じて、圧電セラミックスおよび金属板が圧電セラミックスの厚み方向に振動する圧電電気音響変換器が開示されている。
【0003】
この圧電電気音響変換器では、金属板に突出部を設けることで、振動時において、金属板の周縁部における応力の周方向への伝達を抑制可能である。従って、従来の圧電型電気音響変換器に比べて共振周波数を、より一層低周波数側にシフトさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3123435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の圧電型電気音響変換器では、金属板の振動を規制する部分が、突出部とケースとの接続部分に限られる。このため、金属板の全周を固定する場合に比べ、金属板の振動の規制が少なく、圧電セラミックスの振動によって金属板が自由に振動する。
【0006】
したがって、金属板(振動体)に生じる振動の定常波の模様が、音に対応する電圧信号に従って変形する圧電セラミックス(圧電素子)の外形とは無関係となり(圧電セラミックスの外形とは例えば相似形にならず)、圧電型電気音響変換器から出力される音波に乱れが生じるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、音波の乱れを抑制して音質を向上することができるスピーカ素子およびアレイスピーカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係るスピーカ素子は、
主面に沿って外方に突出して他の部材と接続する接続片が前記主面の外縁に複数配設された振動板と、
前記振動板に積層され、電圧が加えられて変形して前記振動板を振動させる圧電素子と、
を備え、
前記主面に直交する方向における前記接続片の厚さは、前記圧電素子が積層された部分の前記振動板の板厚よりも大きくすることで、前記接続片自体の変形が抑制され
前記接続片は、前記主面に対して前記主面に直交する方向に突出している。
【0009】
この場合、前記振動板の主面の外縁に沿って環状に形成され、前記主面に対して前記主面に直交する方向に突出して前記接続片と前記主面に平行な面に沿って面一で連接する環状壁が形成されている、
こととしてもよい。
【0010】
また、前記環状壁には、
前記接続片と接続する部分において、前記主面の中心を向く内壁が前記主面の中心に向かって張り出した張出部が設けられている、
こととしてもよい。
【0011】
前記張出部は、
前記主面に直交する方向から見て曲線状に張り出している、
こととしてもよい。
【0012】
前記張出部は、
前記振動板の主面の中心から延びて前記接続片を均等に分割する直線に対して線対称な形状を有する、
こととしてもよい。
【0013】
前記接続片は、前記振動板の主面の外縁に沿って均等配置されている、
こととしてもよい。
【0014】
前記接続片は、前記振動板の主面の外縁に沿って少なくとも6個設けられている、
こととしてもよい。
【0015】
前記接続片は、前記振動板の主面の外縁に沿って12個設けられている、
こととしてもよい。
【0016】
前記振動板および前記圧電素子は、前記主面に直交する方向から見て円形である、
こととしてもよい。
【0017】
本発明の第2の観点に係るアレイスピーカは、
本発明の複数のスピーカ素子が2次元配列されている。
【0018】
この場合、互いに隣接する4つの前記スピーカ素子がそれぞれ正方形の頂点に位置するように配列されている、
こととしてもよい。
【0019】
また、互いに隣接する3つの前記スピーカ素子がそれぞれ正三角形の頂点に位置するように配列されている、
こととしてもよい。
【0020】
前記スピーカ素子の配列の周囲を囲み、前記スピーカ素子が有する接続片のうち、対向する接続片と接続して前記スピーカ素子を支持する外枠を備え、
前記外枠に接続されていない前記接続片同士をつないで、前記スピーカ素子同士が連結されている、
こととしてもよい。
また、前記スピーカ素子の配列の周囲を囲み、前記スピーカ素子が有する接続片のうち、対向する接続片と接続して前記スピーカ素子を支持する外枠と、
前記スピーカ素子間の隙間に配置され、前記スピーカ素子が有する接続片のうち、対向する接続片と接続して前記スピーカ素子を支持する補助部材と、
を備えることとしてもよい。
前記外枠の内縁から延出し、前記接続片と接続する延出部をさらに備える、
こととしてもよい。
【0021】
個々の前記スピーカ素子の周囲を囲み、前記スピーカ素子が有する接続片と接続する支持枠が設けられている、
こととしてもよい。
また、本発明の第3の観点に係るアレイスピーカは、
主面に沿って外方に突出して他の部材と接続する接続片が前記主面の外縁に複数配設された振動板と、前記振動板に積層され、電圧が加えられて変形して前記振動板を振動させる圧電素子と、を備えるスピーカ素子の配列が形成され、
前記スピーカ素子が有する接続片のうち、対向する接続片と接続して前記スピーカ素子を支持する外枠が、前記スピーカ素子の配列の周囲を囲んでおり、
前記スピーカ素子が有する接続片のうち、対向する接続片と接続して前記スピーカ素子を支持する補助部材が、前記スピーカ素子間の隙間に配置されている、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、振動板を他の部材と接続する接続片の厚さが、圧電素子が積層された部分の振動板の板厚よりも大きい。これにより、接続片が振動板を安定して支持することができるので、振動板に生じる振動の定常波の模様を、音に対応する電圧信号に従って変形する圧電素子の外形にあわせることができる。この結果、振動板に余計な振動を生じさせないようにすることができるため、音波の乱れを抑制して音質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1(A)は、本発明の実施の形態1に係るスピーカ素子を一部破砕して構造を示す斜視図である。図1(B)は、図1(A)のスピーカ素子を逆から見た斜視図である。
図2図1(B)の断面に合わせたスピーカ素子の構造を示す断面図である。
図3】スピーカ素子を駆動する信号系の構成を示す図である。
図4図4(A)及び図4(B)は、スピーカ素子の変形を説明する図である。
図5図5(A)、図5(B)、図5(C)および図5(D)は、振動板に形成される接続片の数と応力分布との関係を示す図である。
図6】主面に圧電素子が配設されたスピーカ素子の斜視図である。
図7】環状壁が設けられていないスピーカ素子の斜視図である。
図8】本発明の実施の形態2に係るスピーカ素子の構成を示す上面図である。
図9】張出部付近の拡大上面図である。
図10】張出部付近の拡大斜視図である。
図11】張出部の変形例を示す上面図である。
図12】本発明の実施の形態3に係るアレイスピーカの構成を示す上面図である。
図13】本発明の実施の形態4に係るアレイスピーカの構成を示す上面図である。
図14】本発明の実施の形態5に係るアレイスピーカの構成を示す上面図である。
図15】本発明の実施の形態6に係るアレイスピーカの構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態に係るスピーカ素子及びアレイスピーカについて図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
実施の形態1.
図1(A)及び図1(B)に示すように、本実施の形態に係るスピーカ素子1Aは、積層された各層の厚みが均一な円板状の基板2に形成される。基板2における中心Oを含む中央の領域には、円板状の振動板3が形成されている。振動板3は基板2と同心に形成されている。
【0026】
振動板3では、+z側の円形の面を主面3Aとし、−z側の円形の面を裏面3Bとする。基板2における各層の厚みは均一なので、主面3Aと裏面3Bとは平行となる。また、振動板3の外周には、環状かつ振動板3と同心の外枠4(他の部材)が振動板3から間隔を置いて配置されている。
【0027】
振動板3と外枠4とは、12本の接続片5を介して接続されている。言い換えると、接続片5は、主面3A(裏面3B)に沿って外方に突出しており(主面3A(裏面3B)の外縁から基板2の半径方向外側に突出しており)、その先端で外枠4と接続する。接続片5は、振動板3の主面3A、裏面3Bの外縁に沿って30度間隔で均等配置されている。
【0028】
外枠4は、不図示の固定部材に固定されている。振動板3は、可撓性を有しており、接続片5を介して外枠4に支持されつつ、振動可能となっている。このように、均等に配置された複数の接続片5で振動板3を支持することにより、振動板3をその外周全面で支持したときに比べ、振動板3を安定的に支持しつつ、振動板3の振動における振幅を大きくすることができるうえ、振動板3の共振周波数を低く設定することができる。
【0029】
図1(B)に示すように、振動板3の裏面3Bの中央には、圧電素子6が積層されている。電圧が加えられると圧電素子6は、その電圧に応じて変形し、振動板3を振動させる。この振動板3の振動により音が発生する。本実施の形態では、接続片5が配設された振動板3と、圧電素子6とで、スピーカ素子1Aが構成される。圧電素子6は、振動板3の主面3A、裏面3Bに直交する方向(z軸方向)から見て円形であり、基板2および振動板3と同心である。
【0030】
実際には、基板2は、SOI(Silicon On Insulator)基板から形成されている。SOI基板とは、埋込酸化膜であるBOX層と、BOX層上の半導体層であるシリコン(SOI)層とから成る積層構造を有する半導体基板であり、酸化膜を内包するウエハである。BOX層は、シリコン酸化膜(SiO)で形成されており、厚みは例えば数μmである。SOI基板は、半導体製造に用いられるものであり、各層の厚みは均一である。
【0031】
図2に示すように、基板2は、基体ウエハ及びBOX層から成るSi支持層10が積層されて構成されている。Si支持層10には、素子ウエハ活性層であるSi活性層11が積層されている。Si活性層11は、シリコン(Si)で形成されており、厚みは例えば150μmである。
【0032】
本実施の形態では、図1(A)に示すように、振動板3は、Si活性層11で形成されており、外枠4及び接続片5は、Si支持層10とSi活性層11とで形成されている。このため、接続片5は、振動板3の主面3Aに対して+z方向に突出しており、振動板3のz軸方向における接続片5の厚さは、圧電素子6が積層された部分の振動板3の板厚よりも大きくなっている。これにより、接続片5は、より安定して振動板3を支持することができる。また、接続片5の厚みは外枠4と同じであり、接続片5と外枠4とは面一で連接しているため、局所的な応力の発生を低減し、接続片5の破損の可能性を低減している。
【0033】
また、本実施の形態では、振動板3の主面3Aの外縁に沿って環状の壁である環状壁7が形成されている。環状壁7は、振動板3の主面3Aに対して+z方向に突出して接続片5と面一で連接している。環状壁7が、振動板3を支持する接続片5を連接しているので、接続片5の間の相対位置関係の変動を最小限に留めることができ、接続片5が振動板3をより安定して支持することができる。
【0034】
Si活性層11には、圧電素子6、すなわち第1の電極層12、圧電素子層13及び第2の電極層14が積層されている。第1の電極層12は、白金、金等の導電性のある部材で形成されており、その厚みは1μm以下である。圧電素子層13は、電圧を加えることによって伸縮する圧電材料で形成されており、その厚みは数μmである。圧電体の材質としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O:PZT)等が採用されている。第2の電極層14は、白金、金等の導電性のある部材で形成されており、その厚みは1μm以下である。
【0035】
スピーカ素子1Aには、再生する音に対応する電圧信号を供給する信号系が接続されている。この信号系は、図3に示すように、音声信号出力部20と、信号変調部21とを備える。
【0036】
音声信号出力部20は、スピーカ素子1Aに再生させる音に対応する電圧信号を出力する。この電圧信号の周波数は可聴域である。
【0037】
信号変調部21は、音声信号出力部20から出力された電圧信号を、所定の変調周波数で変調する。所定の変調周波数としては、例えば40kHz近辺の周波数が用いられる。信号変調部21の変調方式としては例えばAM変調(振幅変調)が用いられる。
【0038】
信号変調部21で変調された電圧信号は、第2の電極層14及び第1の電極層12の間の電圧信号として圧電素子6に印加される。この電圧信号により、圧電素子6が振動して音波が発生する。
【0039】
例えば、図4(A)に示すように、第2の電極層14に正の電圧が印加され、第1の電極層12に負の電圧を印加すると、圧電素子層13は、矢印に示すようにxy方向に伸張する。しかしながら、Si活性層11は伸張しないため、圧電素子6は、−z方向に凸に湾曲する。
【0040】
一方、図4(B)に示すように、第2の電極層14に負の電圧を印加し、第1の電極層12に正の電圧を印加すると、圧電素子層13は、矢印に示すようにxy方向に収縮する。しかしながら、Si活性層11は伸縮しないため、圧電素子6は+z方向に凸に湾曲する。
【0041】
なお、圧電素子層13の極性によっては、印加される電圧に対する伸縮が逆になる場合もある。この場合、圧電素子層13は、図4(A)及び図4(B)に示す方向とは逆に湾曲する。
【0042】
上記電圧信号は、正負を繰り返して振動する信号であるため、圧電素子層13は、その電圧信号に応じて図4(A)及び図4(B)に示す状態を繰り返し、振動する。この振動により、+z方向に進む音波が発生する。
【0043】
本実施の形態に係るスピーカ素子1Aでは、振動板3が接続片5を介して支持されているので、振動板3の振動変位を大きくすることができる。これにより、圧電素子6に印加される電圧で振動板3を振動させたときの電気機械結合係数を大きくすることができる。
【0044】
さらに、このスピーカ素子1Aによれば、振動板3を外枠4と接続する接続片5の厚さが、圧電素子6が積層された部分の振動板3の板厚よりも大きい。これにより、接続片5自体の変形が抑制され、接続片5が振動板3を安定して支持することができるので、振動板3に生じる振動の定常波の模様を、音に対応する電圧信号に従って変形する圧電素子6の外形にあわせることができる(圧電素子6の外形と例えば相似形にできる)。この結果、振動板3をその外周全面で支持したスピーカ素子(振動板3と外枠4との間に開口が無いスピーカ素子)と比較して、周波数帯域を低く設定することができるうえ、振動板3に余計な振動を生じさせないようにすることができるため、音波の乱れを抑制して音質を向上することができる。
【0045】
なお、本実施の形態では、接続片5の数を12とした。しかしながら、本発明はこれには限られない。例えば、接続片5の数は、図5(A)、図5(B)、図5(C)及び図5(D)に示すように、3〜10本であってもよい。ただし、いずれの場合でも、接続片5は振動板3の周方向に沿って等間隔に配設される。
【0046】
図5(A)〜図5(D)では、振動板3に生じる応力分布が示されている。図5(A)に示すように、接続片5の数を3本(120度間隔)とした場合には、応力分布は、その半径方向によって異なったものとなる。また、図5(B)に示すように、接続片5の数を4本(90度間隔)としたときにも、応力分布は、その半径方向によって異なったものとなる。
【0047】
一方、図5(C)に示すように、接続片5の数を6本(60度間隔)としたときには、応力は、半径方向にかかわらず、同じように変化する。また、図5(D)の接続片5の数が10本(36度間隔)である場合にも同様である。このように、接続片5の数が増えれば増えるほど、振動板3の半径方向に関する応力の変化を均一なものとすることができる。
【0048】
接続片5の数が、6本以上であるときには、半径方向に関する応力変化は半径方向に関わらず同じとなる。このため、接続片5は、振動板3の主面3Aの外縁に沿って少なくとも6個設けられているのが望ましい。
【0049】
また、本実施の形態では、裏面3Bに圧電素子6を設けたが、本発明はこれには限られない。例えば、図6に示すように、圧電素子6を主面3Aに設けるようにしてもよい。この構成の場合は、例えば次のように製造すればよい。即ち、スピーカ素子1Aから圧電素子6を除いた、振動板3、外枠4、接続片5、環状壁7を、微細加工を実現する半導体製造技術であるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を用いて製造する。そして、製造された振動板3の裏面3Bに、例えばセラミックスからなる圧電素子6を貼り付ければよい。
【0050】
また、図7に示すように、環状壁7は設けられていなくてもよい。この場合でも、接続片5が振動板3の他の部分よりも厚く形成されているので、接続片5が振動板3を安定して支持することができる。
【0051】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
【0052】
図8に示すように、本実施の形態に係るスピーカ素子1Bは、環状壁7の形状が上記実施の形態と異なる他は、上記実施の形態1に係るスピーカ素子1Aと同じである。スピーカ素子1Bでは、環状壁7には、接続片5と接続する部分に張出部7Aが設けられている。
【0053】
張出部7Aは、振動板3の主面3Aの中心Oを向く内壁が主面3Aの中心に向かって張り出している。具体的には、図9に示すように、張出部7Aは、z軸方向から見て曲線状に張り出している。すなわち、張出部7Aの内壁から中心Oまでの長さは連続的に変化している。
【0054】
さらに具体的には、張出部7Aは、振動板3の主面3Aの中心Oから延びて接続片5を均等に分割する直線Aに対して線対称な形状を有している。張出部7Aは、直線AからL2離れた位置から張り出し始め、直線A上での張り出しの長さは、L1で最大となっている。言い換えれば、張出部7Aの内壁から中心Oまでの長さは、張り出しの長さがL1を示す位置で、最小となっている。
【0055】
仮に、張出部7Aがない場合には、接続片5が形成された部分における環状壁7の内壁と振動板3との接合位置に対応する領域B1,B2(図10参照)の応力が振動板3の他の部分よりも大きくなる。これに対し、環状壁7に張出部7Aを設けることによって、領域B1,B2における応力をより低減することができる。
【0056】
なお、張出部7Aの形状は、図9に示すものに限られない。例えば、図11に示すように、z軸方向から見た張出部7Aの内壁の盛り上がった部分が、一部切り欠かれていてもよい(例えば直線状であってもよい)。このような張出部7Aの形状は、領域B1,B2に発生する応力のように、振動板3に局所的に発生する応力を低減できる形状であればよい。
【0057】
本実施の形態によれば、張出部7Aにより、振動板3に局所的に生じる応力を低減することができる。これにより、振動板3による振動を安定的なものとして、圧電素子6に入力される電圧信号に対応する音をより忠実に再生することができる。また、局所的に発生する応力により振動板3の破損を防止することができる。
【0058】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3について説明する。
【0059】
上記実施の形態1、2では、単体のスピーカ素子1A,1Bの構成について説明した。本実施の形態では、図12に示すように、複数のスピーカ素子1Aが2次元配列されて構成されるアレイスピーカ100Aについて説明する。
【0060】
アレイスピーカ100Aには、全体として円板状であり、その最も外周には円環状の外枠4が設けられている。外枠4は、不図示の固定部材に固定されている。この外枠4の内周壁で囲まれた領域に、複数のスピーカ素子1Aが配列されている。複数のスピーカ素子1Aは、発生する音の向きが同じ+z方向となるように配列されている。
【0061】
スピーカ素子1Aは、互いに隣接する3つのスピーカ素子1Aがそれぞれ正三角形の頂点に位置するように配列されている。外枠4は、スピーカ素子1Aが有する接続片5のうち、外枠4に対向する接続片5と接続してスピーカ素子1Aを支持する。また、隣接するスピーカ素子1Aの間には、それぞれの接続片5が接続される。これにより、個々のスピーカ素子1Aがお互いを支持し合う構造となっている。
【0062】
スピーカ素子1Aは、接続片5が30度間隔で12本設けられているので、スピーカ素子1Aを正三角形の頂点に位置するように配列すると、隣接するスピーカ素子1A同士の接続片5の位置が合致する。したがって、位置が合致する接続片5同士をつないで、スピーカ素子1Aを容易に連結することができる。
【0063】
本実施の形態によれば、スピーカ素子1A同士を直接接続しているので、発生する音の向きが同じ+z方向である複数のスピーカ素子1Aを密集して配列することができ、より高い指向性を実現することができる。
【0064】
本実施の形態では、配列されるスピーカ素子1Aの数を6つとしたが、本発明はこれには限られない。スピーカ素子1Aの数は、6つより少なくともよいし、7つ以上であってもよい。また、スピーカ素子1Aに変えて、スピーカ素子1B(図8参照)を配列するようにしてもよい。
【0065】
実施の形態4.
本発明の実施の形態4について説明する。
【0066】
本実施の形態に係るアレイスピーカ100Bでも、図13に示すように、複数のスピーカ素子1Aが2次元配列されている。上記実施の形態3に係るアレイスピーカ100Aでは、隣接するスピーカ素子1Aが正三角形状の交点に配列されたが、アレイスピーカ100Bでは、互いに隣接する4つのスピーカ素子1Aがそれぞれ正方形の頂点に位置するように配列されている。
【0067】
アレイスピーカ100Bには、全体として正方形状であり、スピーカ素子1Aに向かって半円状の突出した部分を備える内周壁を有する環状の外枠4が、最も外周に設けられている。外枠4は、不図示の固定部材に固定されている。この外枠4の内周壁で囲まれた領域に、複数のスピーカ素子1Aが配列されている。
【0068】
外枠4は、スピーカ素子1Aが有する接続片5のうち、外枠4に対向する接続片5と接続してスピーカ素子1Aを支持する。また、隣接するスピーカ素子1Aの間には、円形の補助部材8が配置されている。補助部材8は、スピーカ素子1Aが有する接続片5のうち、補助部材8に対向する接続片5と接続してスピーカ素子1Aを支持する。アレイスピーカ100Bでは、接続片5が、固定部材に固定された外枠4以外にも、固定部材に固定された補助部材8と接続されるので、より安定してスピーカ素子1Aを支持することが可能となる。なお、補助部材8は、固定部材に固定されていなくてもよい。
【0069】
また、外枠4の内縁には、補助部材8に対応して、接続片5と接続する半円状又は4分円状の延出部4Aが設けられている。これにより、スピーカ素子1Aを、バランス良く支持することができる。
【0070】
スピーカ素子1Aでは、前述の通り、接続片5が30度間隔で12本設けられているので、スピーカ素子1Aが、正方形の頂点に位置するように配列されると、隣接するスピーカ素子1A同士の接続片5の位置が合致する。したがって、位置が合致する接続片5同士をつないで、スピーカ素子1Aを容易に連結することができる。
【0071】
複数のスピーカ素子1Aは、発生する音の向きが同じ+z方向となるように配列されている。これにより、アレイスピーカ100Bは、指向性の高いスピーカとなる。さらに、音の向きが同じである複数のスピーカ素子1Aを直接接続して密集して配列しているので、より高い指向性を実現することができる。
【0072】
本実施の形態では、配列されるスピーカ素子1Aの数を4つとしたが、本発明はこれには限られない。スピーカ素子1Aの数は、4つより少なくともよいし、5つ以上であってもよい。また、スピーカ素子1Aに変えて、スピーカ素子1Bを配列するようにしてもよい。
【0073】
実施の形態5.
本発明の実施の形態5について説明する。
【0074】
図14に示すように、上記実施の形態3に係るアレイスピーカ100Aでは、隣接するスピーカ素子1A同士が、それぞれの接続片5で接続された。本実施の形態に係るアレイスピーカ100Cでは、隣接するスピーカ素子1Aの接続片5が、三角形の補助部材8を介して接続される。
【0075】
補助部材8は、外枠4と同様に、不図示の固定部材に固定されている。補助部材8は、スピーカ素子1A間の隙間に配置され、スピーカ素子1Aが有する接続片5のうち、補助部材8に対向する接続片5と接続してスピーカ素子1Aを支持する。アレイスピーカ100Cでは、接続片5が、固定部材に固定された外枠4以外にも、固定部材に固定された補助部材8と接続されるので、より安定してスピーカ素子1Aを支持することが可能となる。なお、補助部材8は、固定部材に固定されていなくてもよい。
【0076】
実施の形態6.
本発明の実施の形態6について説明する。
【0077】
図15に示すように、本実施の形態6に係るアレイスピーカ100Dでは、互いに隣接する4つのスピーカ素子1Aが、正方形の頂点に位置するように配列されている。さらに、アレイスピーカ100Dには、支持枠9が設けられている。支持枠9は、個々のスピーカ素子1Aの周囲を囲み、スピーカ素子1Aが有する接続片5と接続する。
【0078】
支持枠9は、不図示の固定部材に固定されている。支持枠9は、スピーカ素子1A間にも配置されており、スピーカ素子1Aが有する全ての接続片5と接続してスピーカ素子1Aを支持する。アレイスピーカ100Dでは、全ての接続片5が支持枠9で支持されるようになるので、より安定してスピーカ素子1Aを支持することが可能となる。
【0079】
上記各実施の形態では、振動板3は、円板状であったが、本発明はこれには限られない。例えば、振動板3は、楕円板状であってもよいし、矩形や他の多角形状であってもよい。
【0080】
スピーカ素子1A,1B及びアレイスピーカ100A〜100Dの各種材質及び寸法は、あくまで例示であり、これに限定されない。そのサイズは、実装する各種機器に応じて適宜調整可能である。
【0081】
上記各実施の形態では、圧電材料をPZTとしたが、他の圧電材料を用いてもよい。BaTiO、PbTiO等の他の圧電材料であってもよいし、水晶やニオブ酸リチウム等の圧電単結晶を用いてもよい。また、酸化亜鉛(ZnO)、フッ化ビニリデン、三フッ化エチレン重合体等の圧電高分子膜を用いてもよい。
【0082】
上記各実施の形態では、音声信号の変調方式をAM変調としたが、FM方式(周波数変調方式)を採用するようにしてもよい。
【0083】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、スマートフォン等の携帯機器などの各種電気機器に取り付けられ、高い指向性が要求される音等を再生するスピーカに適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1A,1B スピーカ素子、2 基板、3 振動板、3A 主面、3B 裏面、4 外枠、4A 延出部、5 接続片、6 圧電素子、7 環状壁、7A 張出部、8 補助部材、9 支持枠、10 Si支持層、11 Si活性層、12 第1の電極層、13 圧電素子層、14 第2の電極層、20 音声信号出力部、21 信号変調部、100A,100B,100C,100D アレイスピーカ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15