特許第6790983号(P6790983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790983
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】電池配線モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/20 20060101AFI20201116BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   H01M2/20 Z
   H01M2/10 S
   H01M2/10 M
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-80873(P2017-80873)
(22)【出願日】2017年4月14日
(65)【公開番号】特開2018-181651(P2018-181651A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋
(72)【発明者】
【氏名】森 亮太
【審査官】 儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−004501(JP,A)
【文献】 特開2014−233160(JP,A)
【文献】 特開平08−149653(JP,A)
【文献】 特開平09−137822(JP,A)
【文献】 特開2013−097962(JP,A)
【文献】 特開2013−178969(JP,A)
【文献】 特開2014−060044(JP,A)
【文献】 特開2013−033707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/20
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用の二次電池に装着されるハウジングを備え、前記ハウジングの底面から立設されている仕切壁によって、前記二次電池と電気的に接続された配線を収容するための配線収容室が仕切られている電池配線モジュールであって、
前記ハウジングの底面から立設されている壁部の上端には、当該壁部の上端に対して回動可能にカバーが連結されており、
前記カバーには、当該カバーを前記配線収容室を上側から覆うように閉じた状態において下側へ向かって突出する第1係止部が設けられており、
前記仕切壁には、前記第1係止部と係合して前記カバーを閉じた状態に保持する第2係止部が設けられており、
前記カバーには、当該カバーを閉じた状態において下側に向かって突出する案内部が設けられており、
前記案内部は、前記第1係止部に対して前記カバーの回動中心側に連結されているとともに、前記回動中心側に向かうほど前記カバーからの突出長が小さくなる傾斜面を有しており、
前記カバーを閉じた状態において、前記第1係止部は前記仕切壁よりも前記回動中心側に位置している
ことを特徴とする電池配線モジュール。
【請求項2】
前記第1係止部は、前記カバーにおける前記回動中心とは反対側の縁から突出しており、
前記第2係止部は、前記仕切壁から前記カバーの回動中心側に向かって突出するように設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の電池配線モジュール。
【請求項3】
前記ハウジングの底面からは、前記仕切壁よりも前記回動中心側において前記仕切壁と対向するように規制壁が立設されており、
前記規制壁には、当該規制壁の上端から下側に向かって延びているスリットが設けられており、
前記カバーが閉じた状態において、前記第1係止部が前記仕切壁と前記規制壁との間に位置しているとともに、前記案内部が前記スリットに挿入されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池配線モジュール。
【請求項4】
前記カバーを前記回動中心を中心として回動させたときの前記傾斜面における突出先端側の頂点の軌跡よりも、前記規制壁の前記回動中心とは反対側の側面の方が、前記回動中心とは反対側に位置している
ことを特徴とする請求項3に記載の電池配線モジュール。
【請求項5】
前記カバー、前記第1係止部、及び前記案内部は、樹脂による一体成形物であり、
前記案内部は、前記第1係止部の突出先端面と面一な平坦面を有する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電池配線モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用の二次電池に装着される電池配線モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車載用の二次電池に装着される電池配線モジュールが開示されている。特許文献1の電池配線モジュールは、二次電池の上側に装着される箱状のハウジングを備えている。このハウジングの底面からは仕切壁が立設されている。この仕切壁によってハウジングの内部に、二次電池と電気的に接続された配線を収容するための配線収容室が仕切られている。また、ハウジングにおける底面の外縁からは、外周壁部が立設されている。この外周壁部の上端には、当該外周壁部の上端に対して回動可能にカバーが連結されている。特許文献1の電池配線モジュールは、カバーを回動させて閉じることにより、カバーによって配線収容室を上側から覆うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−65863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電池配線モジュールにおいては、ハウジングにおける配線収容室内に複数の配線が収容される。そのため、複数の配線を配線収容室内に収容しようとする際に、一部の配線が配線収容室の外側にはみ出して配置されることがある。また、配線収容室に収容される配線に折り癖等がついている場合にも、配線を配線収容室内に収容しようとする際に、配線が配線収容室の外側にはみ出して配置されることがある。このように、配線が配線収容室からはみ出して配置された状態で、カバーを回動させて配線収容室を上側から覆うと、カバーとハウジングの壁(例えば仕切壁)との間に配線が挟まれたままカバーが閉じられることがある。そして、カバーとハウジングの壁との間に配線が挟まれると、当該配線に断線等が生じるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、車載用の二次電池に装着されるハウジングを備え、前記ハウジングの底面から立設されている仕切壁によって、前記二次電池と電気的に接続された配線を収容するための配線収容室が仕切られている電池配線モジュールであって、前記ハウジングの底面から立設されている壁部の上端には、当該壁部の上端に対して回動可能にカバーが連結されており、前記カバーには、当該カバーを前記配線収容室を上側から覆うように閉じた状態において下側へ向かって突出する第1係止部が設けられており、前記仕切壁には、前記第1係止部と係合して前記カバーを閉じた状態に保持する第2係止部が設けられており、前記カバーには、当該カバーを閉じた状態において下側に向かって突出する案内部が設けられており、前記案内部は、前記第1係止部に対して前記カバーの回動中心側に連結されているとともに、前記回動中心側に向かうほど前記カバーからの突出長が小さくなる傾斜面を有している。
【0006】
上記構成によれば、カバーを回動させて閉じる際に配線収容室よりも上側に配線がはみ出していても、カバーを閉じる過程で、そのはみ出している配線が案内部の傾斜面に当接し得る。そして、案内部の傾斜面によって、仕切壁よりもカバーの回動中心側に位置する配線収容室に配線が押し出されて収容される。したがって、カバーを閉じる際に、カバーとハウジングの壁との間に配線が挟まれることを抑制できる。
【0007】
上記の発明において、前記第1係止部は、前記カバーにおける前記回動中心とは反対側の縁から突出しており、前記第2係止部は、前記仕切壁から前記カバーの回動中心側に向かって突出するように設けられており、前記カバーを閉じた状態において、前記第1係止部は前記仕切壁よりも前記回動中心側に位置していてもよい。
【0008】
上記構成によれば、電池配線モジュールの上側から手指や工具を差し入れて、仕切壁における第2係止部が設けられている箇所をカバーの回動中心側とは反対側に撓ませることで、閉じた状態のカバーの保持状態を解除できる。したがって、閉じた状態のカバーの保持状態を解除するにあたって、二次電池が位置している下側から手指や工具を差し入れるのに比較して操作を行いやすい。
【0009】
上記の発明において、前記ハウジングの底面からは、前記仕切壁よりも前記回動中心側において前記仕切壁と対向するように規制壁が立設されており、前記規制壁には、当該規制壁の上端から下側に向かって延びているスリットが設けられており、前記カバーが閉じた状態において、前記第1係止部が前記仕切壁と前記規制壁との間に位置しているとともに、前記案内部が前記スリットに挿入されていてもよい。
【0010】
上記構成によれば、カバーが撓むなどして第1係止部が回動中心側に移動したとしても、第1係止部が規制壁に当接して、それ以上第1係止部がカバーの回動中心側に移動することは規制される。したがって、カバーが過度に撓んで、第1係止部が第2係止部から外れてしまい、意図せず閉じた状態のカバーの保持状態が解除されることは抑制できる。なお、規制壁にはスリットが設けられていてこのスリットに案内部が挿入されるので、カバーを回動させて閉じる際に案内部と規制壁とが干渉することはない。
【0011】
上記の発明において、前記カバーを前記回動中心を中心として回動させたときの前記傾斜面における突出先端側の頂点の軌跡よりも、前記規制壁の前記回動中心とは反対側の側面の方が、前記回動中心とは反対側に位置していてもよい。
【0012】
上記構成によれば、配線収容室よりも上側にはみ出している配線が、ハウジングにおける規制壁と案内部との間に挟まれたり、案内部によって規制壁と仕切壁との間の空間に押し出されたりすることを抑制できる。したがって、配線収容室よりも上側にはみ出している配線を、確実に、規制壁よりもカバーの回動中心側の配線収容室に案内できる。
【0013】
上記の発明において、前記カバー、前記第1係止部、及び前記案内部は、樹脂による一体成形物であり、前記案内部は、前記第1係止部の突出先端面と面一な平坦面を有していてもよい。
【0014】
上記構成によれば、案内部と第1係止部とが連結している部分において、肉厚が過度に小さくなることがない。したがって、金型のキャビティ内に樹脂を充填して、カバー、第1係止部、及び案内部を一体成形する際に、案内部と第1係止部との連結部分に対応するキャビティ部分に確実に樹脂を行きわたらせることができる。したがって、電池配線モジュールの歩留まりを高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電池モジュールにおいてカバーを閉じる際に、ハウジングの壁とカバーとの間に配線が挟まれることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】二次電池及び電池配線モジュールの斜視図。
図2】電池配線モジュールの上面図。
図3】電池配線モジュールの断面図。
図4】カバーを閉じるときの説明図。
図5】カバーを閉じるときの説明図。
図6】変更例のカバーの一部斜視図。
図7】変更例の電池配線モジュールの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、電池配線モジュールの実施形態を図1図5に従って説明する。
なお、以下の説明では、図1中の互いに直交する3つの方向X、Y、Zのうち、方向Xを電池配線モジュールの奥行方向、方向Yを電池配線モジュールの幅方向、方向Zを上下方向として説明する。
【0018】
図1に示すように、電池配線モジュールMは、略直方体状の二次電池BTの上面に装着されている。なお、二次電池BTは、電動車両やハイブリッド車両等に搭載されるものであり、車両の走行用モータに電力を供給する。また、二次電池BTは、充電状態や車両の運転状態に応じて、走行用モータや発電用モータからの電力の供給を受ける。二次電池BTの内部には、図示しない複数の単位電池が収容されており、各単位電池の正極・負極の各端子TLが上側へと突出している。
【0019】
電池配線モジュールMは、略四角箱状の外形のハウジング10を備えている。ハウジング10の底壁部11は、幅方向の寸法よりも奥行方向の寸法の方が長い長方形板状になっている。底壁部11の奥行方向の一方側(図1において左上側)の縁からは、奥行方向の一方側に向かって板状の延出部12が延びている。延出部12は、底壁部11と面一に延びている。底壁部11及び延出部12の上面(ハウジング10の底面)における外周縁からは、上側に向かって外周壁部13が立設されている。この実施形態では、底壁部11の外周縁のうち幅方向の中央部分及び延出部12の先端縁部分に、外周壁部13が立設されていない箇所が設けられている。この外周壁部13が設けられていない箇所を介して、ハウジング10の内部から外部に配線Lを引き出したり、ハウジング10の外部から内部に配線Lを引き入れたりできるようになっている。なお、図1では、配線Lの図示を省略している。
【0020】
図2に示すように、ハウジング10の内部には、二次電池BTの各端子TLに対応して複数の端子室R1が区画されている。端子室R1は、ハウジング10の幅方向の中央を挟んで一方側(図2において下側)に5つ、他方側(図2において上側)に4つ、合計9つ設けられている。各端子室R1内における底壁部11には、当該底壁部11を貫通する貫通孔が設けられていて、この貫通孔に二次電池BTの端子TLが下側から挿通されている。各端子室R1内における底壁部11上には、二次電池BTの端子TLと電気的に接続された板状のバスバーBが設置されている。
【0021】
図1及び図2に示すように、各端子室R1は、底壁部11の上面から立設された区画壁15によって区画されている。区画壁15は、奥行方向に延びている縦壁部15Xを有している。縦壁部15Xの幅方向外側の面からは、複数の横壁部15Yが幅方向外側へ向かって延びている。横壁部15Yは、外周壁部13の内面にまで延びている。縦壁部15X及び各横壁部15Yの底壁部11からの立設長(高さ)は、外周壁部13の底壁部11からの立設長(高さ)よりも僅かに小さくなっている。区画壁15の縦壁部15Xには、端子室R1毎に1箇所ずつ開口部15aが設けられている。区画壁15(縦壁部15X及び複数の横壁部15Y)は、幅方向両側の各端子室R1に対応して幅方向の両側に設けられている。なお、図1及び図2では、複数の横壁部15Yのうちの一部にのみ符号を付している。
【0022】
図2に示すように、ハウジング10の内部において、各端子室R1よりも幅方向の中央側には、二次電池BTと電気的に接続された配線Lを収容するための配線収容室R2が仕切られている。配線収容室R2は、幅方向一方側の端子室R1に対応して1つ、幅方向他方側の端子室R1に対応して1つ、合計2つ仕切られている。各配線収容室R2には、縦壁部15Xの開口部15aを介して、各端子室R1内のバスバーBから延びる配線Lが引き込まれている。
【0023】
図2に示すように、各配線収容室R2は、底壁部11の上面から立設された仕切壁16によって仕切られている。仕切壁16は、区画壁15の縦壁部15Xよりも幅方向中央側において奥行方向に沿って延びている。仕切壁16は、底壁部11の奥行方向の全体に亘って延びている。この実施形態では、ハウジング10の内部のうち、端子室R1よりも幅方向中央側の空間が仕切壁16によって仕切られており、仕切壁16よりも幅方向外側であって区画壁15における縦壁部15Xの幅方向内側が配線収容室R2として機能する。仕切壁16は、幅方向両側の各端子室R1に対応して間隔を開けて2つ設けられている。なお、2つの仕切壁16の間の空間は、外部から引き込まれる配線を通すための空間として利用される。
【0024】
図1に示すように、底壁部11の上面からは、上側に向かって規制壁17が立設されている。規制壁17は、仕切壁16よりも幅方向外側において奥行方向に延びている。規制壁17と仕切壁16との間隔は、規制壁17と区画壁15の縦壁部15Xとの間隔よりも短くなっている。
【0025】
区画壁15における縦壁部15Xの上端には、ヒンジ部21を介して小カバー22が連結されている。小カバー22は、長方形板状になっている。小カバー22における奥行方向の寸法は、端子室R1の奥行方向の寸法の半分以下になっている。小カバー22における縦壁部15Xの上端からの延設長さは、縦壁部15Xと仕切壁16との間隔とほぼ同じになっている。ヒンジ部21の厚みは、縦壁部15X及び小カバー22の厚みよりも薄くなっていて、縦壁部15X及び小カバー22よりも曲げ剛性が低くなっている。すなわち、ヒンジ部21は、いわゆる薄肉ヒンジとして機能する。そして、小カバー22は、縦壁部15Xの上端に対して、ヒンジ部21を回動中心として回動可能になっている。小カバー22を幅方向内側に向けて回動させて閉じた状態にすると、この小カバー22によって配線収容室R2が部分的に上側から覆われる。この実施形態では、各配線収容室R2に対応して、幅方向の両側に1つずつ合計2つの小カバー22が設けられている。
【0026】
小カバー22の先端縁(ヒンジ部21とは反対側の縁)からは、略U字状の係止片23が突出している。係止片23は、U字の両端が小カバー22の先端縁に連結されたような形状になっている。係止片23は、小カバー22を閉じた状態において下側に向かうように、小カバー22に対して直角に突出している。係止片23の小カバー22からの突出長は、区画壁15における縦壁部15Xの底壁部11からの立設長よりも短くなっている。
【0027】
各仕切壁16には、当該仕切壁16の上端から下側に向かって延びている一対の第1スリット16aが設けられている。一対の第1スリット16aの間隔は、上述した係止片23の奥行方向の寸法よりも短くなっている。また、一対の第1スリット16aは、奥行方向において小カバー22に対応する箇所に位置している。
【0028】
図1に示すように、仕切壁16のうち、一対の第1スリット16aに挟まれた箇所には、第1係止爪18が設けられている。第1係止爪18は、仕切壁16の幅方向外側の面から幅方向外側に向かって突出している。小カバー22をヒンジ部21を回動中心として幅方向中央側に向けて回動させて、当該小カバー22を閉じた状態にすると、略U字状の係止片23の中央の空間に第1係止爪18が嵌まり込んで、係止片23と第1係止爪18とが係合した状態になる。この係止片23と第1係止爪18とが係合した状態においては、小カバー22が閉じた状態に保持されている。
【0029】
各規制壁17には、当該規制壁17の上縁から下側に向かって切り欠かれたような形状の凹部17aが設けられている。凹部17aの規制壁17の上縁からの切欠深さは、小カバー22の厚みとほぼ同一になっている。また、凹部17aは、奥行方向において小カバー22に対応する箇所に位置している。凹部17aの奥行方向における切欠範囲は、小カバー22の奥行方向の寸法とほぼ同一になっている。小カバー22を閉じた状態においては、凹部17aに小カバー22が嵌め合わされ、閉じた状態における小カバー22の上面と凹部17aが設けられていない箇所の規制壁17の上端とが面一になる。
【0030】
図1に示すように、外周壁部13のうち奥行方向に延びている部分の上端には、ヒンジ部31を介して長方形板状の大カバー32が連結されている。大カバー32の奥行方向の寸法は、底壁部11の奥行方向の寸法と同じになっている。すなわち、大カバー32は、外周壁部13のうち奥行方向に延びている部分の全体に亘って設けられている。大カバー32における外周壁部13の上端からの延設長さは、外周壁部13における奥行方向に延びている部分と仕切壁16との間隔とほぼ同じになっている。ヒンジ部31の厚みは、外周壁部13及び大カバー32の厚みよりも薄くなっていて、外周壁部13及び大カバー32よりも曲げ剛性が低くなっている。すなわち、ヒンジ部31は、いわゆる薄肉ヒンジとして機能する。そして、大カバー32は、外周壁部13の上端に対して、ヒンジ部31を回動中心として回動可能になっている。大カバー32を幅方向内側に向けて回動させて閉じた状態にすると、この大カバー32によって、各端子室R1及び配線収容室R2の全体が上側から覆われる。
【0031】
大カバー32の先端縁(ヒンジ部31とは反対側の縁)からは、略U字状の係止片33が突出している。係止片33は、U字の両端が大カバー32の先端縁に連結されたような形状になっている。係止片33は、大カバー32を閉じた状態において下側に向かうように、大カバー32に対して直角に突出している。係止片33の大カバー32からの突出長は、外周壁部13の底壁部11からの立設長よりも短くなっている。係止片33は、1つの大カバー32につき、奥行方向に互いに離間して2つ設けられている。なお、この実施形態では、係止片33が第1係止部に相当する。
【0032】
各仕切壁16には、当該仕切壁16の上端から下側に向かって延びている一対の第2スリット16bが二対設けられている。一対の第2スリット16bの間隔は、上述した係止片33の奥行方向の寸法よりも短くなっている。また、各対の第2スリット16bは、奥行方向において、係止片33に対応する箇所に位置している。
【0033】
図1及び図3に示すように、仕切壁16のうち、一対の第2スリット16bに挟まれた箇所には、係止片33が係合する第2係止爪19が設けられている。図3に示すように、第2係止爪19は、仕切壁16の幅方向外側の面からヒンジ部31側(図3において右側)に向かって突出している。大カバー32をヒンジ部31を回動中心として幅方向中央側に向けて回動させて、当該大カバー32を閉じた状態にすると、略U字状の係止片33の中央の空間に第2係止爪19が嵌まり込んで、係止片33と第2係止爪19とが係合した状態になる。この係止片33と第2係止爪19とが係合した状態においては、大カバー32は閉じた状態に保持されている。この実施形態では、第2係止爪19が第2係止部に相当する。なお、図3では、配線収容室R2における端子TLやバスバーBの図示を省略している。
【0034】
図1及び図3に示すように、大カバー32には、当該大カバーを閉じた状態において下側に向かって突出する案内部34が設けられている。案内部34は、略板状になっている。案内部34は、係止片33におけるヒンジ部31側のうち、奥行方向の中央部に連結されている。案内部34は、奥行方向から平面視すると台形状になっていて、その最大高さ(大カバー32からの最大突出長)は、係止片33の大カバー32からの突出長と同じになっている。したがって、案内部34は、係止片33の先端面と面一な平坦面34aと、その平坦面34aのヒンジ部31側の端からヒンジ部31側に向かうほど突出長が小さくなる傾斜面34bとを備えている。
【0035】
図3に示すように、大カバー32を閉じた状態において、傾斜面34bにおける突出先端側の頂点Pは、規制壁17におけるヒンジ部31とは反対側の側面(図3において左側の側面)よりもヒンジ部31側に位置している。また、この実施形態では、大カバー32をヒンジ部31を回動中心として回動させたときの傾斜面34bの頂点Pの軌跡Tよりも、規制壁17のヒンジ部31とは反対側の側面の方が、ヒンジ部31とは反対側に位置するように、案内部34の形状が設定されている。
【0036】
図1及び図3に示すように、各規制壁17には、当該規制壁17の上縁から下側へと向かって延びているスリット17bが設けられている。図3に示すように、上下方向におけるスリット17bの長さは、係止片33における大カバー32からの突出長と略同じになっている。また、奥行き方向におけるスリット17bの幅は、案内部34の厚みよりもわずかに長くなっている。また、スリット17bは、奥行方向において案内部34に対応する位置に設けられている。
【0037】
上記のように構成された電池配線モジュールMは、金型内に形成されているキャビティに樹脂を流し込んで硬化させることにより、一体成形物として成形される。なお、電池配線モジュールMの材質としては、例えばポリプロピレン等が挙げられる。
【0038】
上記のように構成された電池配線モジュールMを二次電池BTに装着する際の作用について説明する。
電池配線モジュールMにおけるハウジング10は、二次電池BTの上側に装着される。ハウジング10を二次電池BTの上側に装着した状態では、二次電池BTの各端子TLが、ハウジング10内に区画されている各端子室R1内に突出し、各端子室R1内のバスバーBに電気的に接続される。そして、各端子室R1内のバスバーBから延びる配線Lを、区画壁15の開口部15aを介して配線収容室R2内へと引き出すとともに、延出部12側へと引き出す。このように各配線Lを配線収容室R2へと配置したら、小カバー22及び大カバー32を幅方向中央側へと回動させて閉じた状態にする。これにより、配線収容室R2内に配置された各配線Lが小カバー22によって上側から押さえ付けられるとともに、配線収容室R2及び各端子室R1が大カバー32によって上側から覆われた状態になる。
【0039】
ここで、配線収容室R2内に各配線Lを配置させる際に、図4に示すように、配線Lの一部が配線収容室R2よりも上側にはみ出して配置されることがある。この状態のまま、大カバー32を幅方向中央側へ回動させると、例えば、大カバー32と規制壁17との間に配線Lが挟まったり、係止片33の先端と第2係止爪19の先端との間に配線Lが挟まったりすることがある。仮に、配線Lが挟まってしまうと、当該配線Lにおいて断線等が発生するおそれがある。
【0040】
この点、上記実施形態によれば、配線収容室R2よりも上側における規制壁17寄りの部分に配線Lが位置していたとしても、図5に示すように、大カバー32を回動させていく過程で案内部34の傾斜面34bに配線Lが当接する。そして、案内部34の傾斜面34bは、回動中心であるヒンジ部31側に向かうほど突出長が短くなるような面である。そのため、案内部34の傾斜面34bに当接した配線Lは、ヒンジ部31側斜め下方に押し出されて、配線収容室R2内に案内される。
【0041】
図3において二点鎖線で図示するように、大カバー32を底壁部11に対して略平行となるまで回動させると、仕切壁16から突出する第2係止爪19と大カバー32から突出する係止片33とが係合し、大カバー32が閉じた状態に保持される。大カバー32を開ける際には、仕切壁16における一対の第2スリット16bに挟まれている部分に対して、手指や工具を上側から押し付けて、仕切壁16における一対の第2スリット16bに挟まれている部分をヒンジ部31とは反対側に撓ませる。これにより、第2係止爪19と係止片33との係合が解除されて、大カバー32を回動させることが可能となる。この点、小カバー22についても同様で、仕切壁16における一対の第1スリット16aに挟まれている部分に対して、手指や工具を上側から押し付けて、仕切壁16をヒンジ部31とは反対側に撓ませることで、小カバー22を回動させることが可能になる。
【0042】
上記実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)上記実施形態では、大カバー32を回動させて閉じる際に、配線収容室R2よりも上側に配線Lがはみ出していても、大カバー32を閉じる過程で、そのはみ出している配線Lが案内部34の傾斜面34bに当接し得る。そして、案内部34の傾斜面34bによって、規制壁17よりもヒンジ部31側の配線収容室R2に配線Lが押し出されて収容される。したがって、大カバー32を閉じる際に、大カバー32とハウジング10の規制壁17や仕切壁16等との間に配線Lが挟まれることを抑制できる。
【0043】
(2)上記実施形態では、案内部34が係止片33に連結されているため、案内部34が、係止片33や大カバー32における係止片33の近傍部分の強度を向上させるための補強リブとしても機能する。したがって、例えば、大カバー32を繰り返し開閉させるなどした際に、係止片33の強度が低下する「へたり」等が生じにくい。
【0044】
(3)上記実施形態とは別の第2係止爪19と係止片33との係合関係として、仕切壁16から幅方向中央側に第2係止爪19が突出しており、大カバー32を閉じた状態において係止片33が仕切壁16よりも幅方向中央側に位置している係合関係が考えられる。また、この係合関係の場合、第2係止爪19と係止片33との係合関係を解除するためには、係止片33の先端に下側から手指や工具を当てて、係止片33の先端を幅方向中央側に撓ませることが考えられる。しかし、電池配線モジュールMにおいては、ハウジング10(底壁部11)の下側に、二次電池BTが位置しているため、係止片33の先端に下側から手指や工具を当てるのは難しい。
【0045】
この点、上記実施形態では、電池配線モジュールMの上側から手指や工具を差し入れて、仕切壁16における第2係止爪19が設けられている箇所をヒンジ部31とは反対側に撓ませることで、閉じた状態の大カバー32の保持状態を解除できる。したがって、閉じた状態の大カバー32の保持状態を解除するにあたって、二次電池BTが位置している下側から手指や工具を差し入れるのに比較して操作を行いやすい。
【0046】
(4)上記実施形態では、大カバー32が撓むなどして係止片33がヒンジ部31側に移動したとしても、例えば係止片33の突出先端部が規制壁17に当接して、それ以上係止片33がヒンジ部31側に移動することは規制される。したがって、大カバー32が過度に撓んで、係止片33が第2係止爪19から外れてしまい、意図せず閉じた状態のカバーの保持状態が解除されることは抑制できる。
【0047】
(5)上記実施形態では、規制壁17にスリット17bが設けられていて、大カバー32が閉じた状態において、当該スリット17bに案内部34が挿入される。したがって、大カバー32を回動させて閉じる際に案内部34と規制壁17とが干渉することはない。
【0048】
(6)上記実施形態において、仮に案内部34が平坦面34aを有してなく、傾斜面34bの突出先端側の頂点Pが係止片33の先端面に位置していたとする。この場合、配線収容室R2の上側にはみ出している配線Lが傾斜面34bの頂点Pの近傍に当接すると、配線Lを規制壁17よりもヒンジ部31側へと案内することができず、配線Lが案内部34における傾斜面34bと規制壁17の上端との間に挟まってしまったり規制壁17と仕切壁16との間の空間に案内されてしまったりすることが有る。
【0049】
上記実施形態では、ヒンジ部31を回動中心として大カバー32を回動させたときの案内部34の頂点Pの軌跡Tよりも、規制壁17におけるヒンジ部31とは反対側の面の方が、ヒンジ部31とは反対側に位置している。したがって、配線収容室R2よりも上側にはみ出している配線Lを、確実に、規制壁17よりもヒンジ部31側に配置できる。その結果、上述したように、配線Lが案内部34における傾斜面34bと規制壁17の上端との間に挟まってしまったり規制壁17と仕切壁16との間の空間に案内されてしまったりすることが抑制できる。
【0050】
(7)上記実施形態において、仮に案内部34が平坦面34aを有していない場合、案内部34における傾斜面34bの頂点Pの近傍箇所において、肉厚(例えば図3において左右方向の肉厚)が小さくなる箇所が生じる。上記実施形態のように、金型のキャビティ内に樹脂を流し込んで電池配線モジュールMを一体成形する場合、電池配線モジュールMにおける肉厚の小さい部分に相当するキャビティ部分に樹脂を充填しにくくなる。仮に、キャビティ内の一部に樹脂が充填されないまま成形されてしまえば、その電池配線モジュールMは不良品となり、歩留まりが低くなってしまう。
【0051】
上記実施形態によれば、案内部34が係止片33の先端面と面一な平坦面34aを有しており、案内部34においても相応の肉厚が確保されている。すなわち、案内部34と係止片33とが連結している部分において、肉厚が過度に小さくなることがない。したがって、金型のキャビティ内に樹脂を充填して電池配線モジュールMを一体成形する際に、金型のキャビティ内における案内部34の頂点Pに相当する箇所に、確実に樹脂を行きわたらせることができる。したがって、電池配線モジュールMの歩留まりを高めることができる。
【0052】
上記実施形態は、次のように変更できる。
・上記実施形態の電池配線モジュールMにおける端子室R1や配線収容室R2の数や配置は例示であり、適宜変更できる。また、例えば、同一又は類似の電池配線モジュールMを複数奥行方向に連結させて、一体的なモジュールとして使用することもある。
【0053】
・電池配線モジュールMは、一体成形物に限らない。例えば、ハウジング10と小カバー22や大カバー32とをそれぞれ別体で成形し、これらを組み付けてもよい。また、電池配線モジュールMの材質は必ずしも樹脂でなくてもよく、バスバーBや配線Lに対する絶縁性を確保できる材質であればよい。
【0054】
・案内部34は、必ずしも平坦面34aを有していなくてもよい。例えば、案内部34は、当該案内部34を奥行方向から平面視した場合に略直角三角形状に形成されていてもよい。
【0055】
・ヒンジ部31を回動中心として大カバー32を回動させたときの案内部34の頂点Pの軌跡Tが、規制壁17におけるヒンジ部31とは反対側の面よりも、ヒンジ部31とは反対側に位置していてもよい。例えば、配線収容室R2内に配置される配線Lが比較的に太い物なのであれば、上記のように構成されていても、配線Lが案内部34によって仕切壁16と規制壁17との間に押し出されてしまう可能性は低い。
【0056】
・規制壁17を省略してもよい。上述したように、係止片33には案内部34が連結されていて係止片33や大カバー32における係止片33の近傍の強度の向上が図られている。そのため、規制壁17を省略したとしても、係止片33や大カバー32における係止片33の近傍が撓んで係止片33と第2係止爪19との係合関係が解除される可能性は低い。
【0057】
・上記実施形態では、大カバー32の先端縁から係止片33が突出していたが、これに限らない。すなわち、係止片33は、大カバー32の先端縁に対してヒンジ部31側に離間した箇所から突出していてもよい。係止片33の位置は、係止片33が係止される第2係止爪19の位置や、大カバー32の寸法等を勘案して適宜決定すればよい。
【0058】
・上記実施形態では、1つの係止片33に対して1つの案内部34が連結していたが、複数の案内部が連結されていてもよい。例えば、図6に示す例では、1つの係止片33に対して2つの案内部61が連結されている。各案内部61は、平坦面61aと当該平坦面61aからヒンジ部31側(図6において左下側)に向かうほど突出長が小さくなる傾斜面61bとを有している。また、各案内部61は同形同大になっている。各案内部61は、係止片33における奥行方向の両端部に連結されている。なお、この例の場合、2つの案内部61に対応して、規制壁17におけるスリット17bを2つ設ければよい。
【0059】
・1つの係止片33に対して2つの案内部61が連結されている構成において、仕切壁16から突出する係止爪の突出方向を変えてもよい。例えば、図7に示す例では、仕切壁16のヒンジ部31とは反対側の面(図7において左側の面)からヒンジ部31とは反対側に向かって係止爪71が突出している。また、この変更例では、2つの案内部61が仕切壁16における一対の第2スリット16bに挿入されており、大カバー32を回動させる際に各案内部61が仕切壁に干渉することはない。
【0060】
この変更例の場合であっても、係止片33が略U字状に形成されていれば、そのU字の間の空間を介して手指や工具を係止爪71に当てることができる。そして、手指や工具で仕切壁16をヒンジ部31側へと撓ませることで、係止片33と係止爪71との係合関係を解除できる。なお、この変更例の場合、仕切壁16よりもヒンジ部31側に規制壁17を設けても、当該規制壁17によって係止片33の過度な撓みを抑制できるとは考えにくい。そこで、図7に示すように、規制壁17を省略してもよい。
【0061】
・大カバー32から突出する係止片33に案内部34を連結するのに代えて、又は加えて、小カバー22から突出する係止片23に案内部を連結してもよい。この場合、規制壁17における凹部17aの上端から下側に向かって延びるスリットを設け、小カバー22が閉じたときに係止片23に連結されている案内部が当該スリットに挿入されるようにすればよい。
【0062】
・上記実施形態では、大カバー32を、外周壁部13の上端に対して回動可能に構成したが、これに限らない。仕切壁16よりも幅方向外側において立設されていて奥行方向に延びている壁部が他に存在するのであれば、その壁部の上端に対して回動可能に大カバー32を連結してもよい。
【0063】
・係止片33(第1係止部)の形状は、略U字状に限らない。例えば、大カバー32の先端縁から突出する板状の第1係止部を設け、この第1係止部のヒンジ部31側の面に凹部を設けてもよい。この変更例の場合でも、第1係止部の凹部内に係止片33が嵌まり込んで両者が係合する。
【0064】
・また、例えば、大カバー32の先端縁から突出する板状部材と、その板状部材のヒンジ部31側の面からヒンジ部31側へと突出する突起部とで第1係止部を構成してもよい。この場合、仕切壁16に、係止爪に代えて上記突起部が嵌まり込む窪み部を設ければよい。
【符号の説明】
【0065】
BT…二次電池、TL…端子、M…電池配線モジュール、L…配線、B…バスバー、R1…端子室、R2…配線収容室、P…傾斜面の頂点、T…軌跡、10…ハウジング、11…底壁部、12…延出部、13…外周壁部、15…区画壁、15X…縦壁部、15Y…横壁部、15a…開口部、16…仕切壁、16a…第1スリット、16b…第2スリット、17…規制壁、17a…凹部、17b…スリット、18…第1係止爪、19…第2係止爪、21…ヒンジ部、22…小カバー、23…係止片、31…ヒンジ部、32…大カバー、33…係止片、34…案内部、34a…平坦面、34b…傾斜面、61…案内部、61a…平坦面、61b…傾斜面、71…係止爪。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7